JP7357548B2 - アンカー、アンカーを取り付けた足掛け具およびアンカーの固定方法 - Google Patents

アンカー、アンカーを取り付けた足掛け具およびアンカーの固定方法 Download PDF

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Description

本発明は、既設のコンクリート壁等に埋め込まれて、構造部品等を取り付ける手段として使用されるアンカー、該アンカーを取り付けた足掛け具およびアンカーの固定方法に関わる。
コンクリート壁を昇降するために間隔を置いて足掛け具を設置することがある。例えば、マンホールは、下水道管等を点検清掃する作業員が出入りするために地上に開口させて地中に設けられているが、内部のコンクリートの側壁に作業員が昇降するための平面視がコ字形をなす足掛け具が設けられている。図6に示すように、従来の足掛け具20は、足踏み部21とその両側に取り付けられた脚部22および脚部22に接続された埋め込み部(アンカー)23から構成され、埋め込み部(アンカー)は、割り溝によって先端部が拡開可能になっており、マンホールのコンクリート壁100に穿設された取付用孔に埋め込まれて固定される。足掛け具20の脚部22と埋め込み部(アンカー)23には軸芯に沿って、挿通孔24が形成され、挿通孔は足踏み部21まで直線状に貫通しており、そして、この挿通孔24に先端部が先の尖った楔状であるピン25を打ち込んで挿通し、埋め込み部(アンカー)23の先端部を拡開させて、埋め込み部(アンカー)がコンクリート壁100の取付用孔に固定されて、足掛け具20はコンクリート壁100に固定されて取り付けられる。なお、埋め込み部(アンカー)の先端部外周面には、通常、複数の円環状の段部(不図示)が形成されている。
上記の従来の足掛け具をマンホールのコンクリート壁に固定するには、特許文献1、2に記載されているような足掛け具取付装置を用いていた。
足掛け具取付装置を使用して、マンホールのコンクリート壁に足掛け具を固定して取り付けるには、以下の工程を経る。
1)穿孔手段のドリルにより、コンクリート壁100に足掛け具の埋め込み部(アンカー)23と外径と同じ程度の径の取付用孔を穿設する。
2)挿入押込手段により、足掛け具20の2つの埋め込み部(アンカー)23を取付用孔に挿入して押し込む。
3)打込み手段により、挿通孔24を介して、先端部が先の尖った楔状であるピン25を打ち込む。
このことにより、埋め込み部(アンカー)23の先端部が拡開して取付用孔の内周側面に食い込み、足掛け具20が固定される。
4)足掛け具の足踏み部21に形成された挿通孔にキャップ蓋あるいはパテ26を施して防水する。
以上の工程により、足掛け具20をマンホールのコンクリート壁100に固定することができる。
上記の工程では、足掛け具20の固定には、アンカー23を取付用孔に挿入して押し込む工程、次いで、先端部が先の尖った楔状であるピン25を打ち込む工程を必要とする。また、足掛け具の足踏み部21の両端には、先端部が先の尖った楔状のピン25を挿入するための孔(挿通孔)24を穿設する前工程が必要であり、足掛け具の固定後はこの挿通孔やピンが露出することのないようにキャップ蓋やパテ26を施して防水する必要がある。
コンクリート壁に埋め込み固定されるアンカーには、先端部が先の尖った楔状であるピンを使用しないアンカー、例えば、グリップアンカーと呼ばれるものが知られている。
図7に示すように、グリップアンカー30は円筒体31と拡開コーン32からなる。円筒体31は、円管状であり、その一方の端部を含む部位には、通常、4本の割り溝(スリット)33が円周に等間隔で軸方向に形成されている。また、円筒体31の割り溝33が形成されている部位の外周面には、固定強度をより高めるために、円環状の段部34が形成されている。なお、円筒体31の他方の端部を含む部位の内周側面には、通常、雌ネジ溝35が形成されている。拡開コーン32は、円錐台状の形状であり、外径の小さい側の端部を、円筒体31の割り溝(スリット)33が形成された一方の端部に挿入した状態で〔図8(a)参照〕、コンクリート壁の取付用孔に挿入して使用される〔図8(c)参照〕。
グリップアンカー30をコンクリート壁に固定するには、図8(a)~(d)に模式的に示すように、以下の工程1)~3)を経る。なお、図8では、グリップアンカー30の割り溝33や段部34は省略して図示していない。
1)ドリルにより、コンクリート壁100に、グリップアンカー30の円筒体31と外径が同じ程度の径の取付用孔50を穿設する〔図8(b)参照〕。
2)挿入手段により、グリップアンカー30を一方の端部(円筒体31の拡開コーン32が挿入された端部、すなわち割り溝33が形成された側の端部)から取付用孔50に挿入し、拡開コーン32の底部をコンクリート壁100の取付用孔50の底に接近あるいは接触させる〔図8(c)参照〕。このとき、円筒体31の他方の端部(円筒体31の拡開コーン32が挿入されていない端部、すなわち割り溝33が形成されていない端部)はコンクリート壁100から飛び出ている〔図8(c)参照〕。
3)円筒体31の他方の端部を直接的あるいは間接的にハンマーなどで強打して、円筒体31の他方の端部端面がコンクリート壁100の表面近くあるいは表面と面一になるように押し込む。
工程3)により、グリップアンカー30の円筒体31に挿入されている拡開コーン32の底部が取付用孔50の底部を強打し、その反力で拡開コーン32が円筒体31の内部にさらに深く進入して、割り溝33が形成された部位が拡開して取付用孔50の内周側面に食い込み、グリップアンカー30をコンクリート壁に固定することができる〔図8(d)参照〕。
そして、コンクリート壁100の取付用孔50に固定されたグリップアンカー30の雌ネジ溝35(図7参照)に構造部材などのネジ部を螺合させて、コンクリート壁100に構造部材などを取り付けることができる。
グリップアンカーを上述の足掛け具の両側の2つの脚部のおのおのに接続して足掛け具をコンクリート壁に固定することができる。足掛け具の脚部にグリップアンカーを接続した場合、グリップアンカーをコンクリート壁に挿入した後に、足掛け部の足踏み部を強打してコンクリート壁に固定することになる。
アンカーにグリップアンカーを使用した場合、アンカーを直接にあるいは間接的に強打して取付用孔に挿入して固定しなければならないが、先端部が先の尖った楔状であるピンを打ち込む従来のアンカーに比べて、先の尖った楔状であるピンを打ち込む工程を必要とせず、また、足掛け具に使用した場合に、該ピンを挿入するための挿通孔を足掛け具の足踏み部に穿設する前工程や挿通孔やピンが露出することのないようにキャップ蓋やパテを施して防水する工程を省略することができる。
しかし、グリップアンカー30を使用すると、グリップアンカー30の強打により拡開コーン32が取付用孔の底部に衝撃的な力を与えるため、コンクリート壁100を損傷、破壊する危険性がある。また、上記の工程1)での取付用孔50の深さを、上記の工程2)に示したように、拡開アンカーが取付用孔50の底に接近あるいは接触するように、比較的正確な深さの取付用孔50をコンクリート壁100に穿設しなければならない。この深さが深すぎると円筒体の割り溝が形成された端部が十分に拡開しないで強固にアンカーを固定することができない。逆にこの深さが浅すぎると、コンクリート壁を損傷、破壊する危険性がさらに高まる。
特許第2559534号公報 特許第2741343号公報
本発明は、従来技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリート壁に固定する工程が比較的少なく、しかもコンクリート壁を損傷・破壊する恐れがなく、かつ固定する作業が容易であるアンカー、該アンカーを使用した足掛け具およびアンカーの固定方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
[1]円筒体と拡開コーンからなるアンカーであって、円筒体の一方の端部を含む部位には、円周において互いに対向する位置に同じ長さの割り溝が形成され、拡開コーンは本体とコーンピンからなり、本体は、形状が円錐台状であり、一方の端部の断面の外径が円筒体の内径よりも小さいとともに、他方の端部の断面の外径が円筒体の内径よりも大きく、コーンピンは、本体の軸方向に対して直角の方向に本体の頭部を貫通してその両端部が本体外に飛び出ており、円筒体の一方の端部を含む部位に形成された割り溝にコーンピンの両端部を収めて、拡開コーンの本体をその頭部側から円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位に進入させることにより、円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位が拡開することを特徴とするアンカー。
[2]前記円筒体の一方の端部を含む部位の外周部に、円環状の段部を形成したことを特徴とする[1]に記載のアンカー。
[3]コンクリート壁に固定される足掛け具であって、足踏み部とその両側に脚部を有し、脚部には[1]または[2]に記載のアンカーが接続されていることを特徴とする足掛け具。
[4][1]または[2]に記載のアンカーをコンクリート壁に固定する方法であって、コンクリート壁に穿設した取付用孔に、アンカーを、拡開コーンが挿入された前記円筒体の割り溝が形成された一方の端部の方から、該割り溝に前記コーンピンの両端部を収めて挿入し、次いで、円筒体の他方の端部を直接的あるいは間接的に押し、コーンピンを円筒体の割り溝の付け根部に達するまで円筒体を取付用孔に埋め込み、円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位を拡開させることにより、アンカーをコンクリート壁に固定することを特徴とする、[1]または[2]に記載のアンカーをコンクリート壁に固定する方法。
本発明のアンカーおよび該アンカーを取り付けた足掛け具は、楔状のピンをアンカーの先端部に挿入する必要がなく、アンカーの固定作業の工程数が比較的少なくて済み、しかもアンカーの拡開コーンがコンクリート壁に穿設された取付用孔の底部を強打することがないので、コンクリート壁を損傷・破壊することがない。また、アンカーの取付用孔を比較的容易に穿設することができ、固定に際しても、押すだけであるので、コンクリート壁にアンカーを固定する作業が容易である。
本発明の実施形態に係るアンカーの外観斜視図を示す。 本発明の実施形態に係るアンカーに使用される拡開コーン本体の2つの形状(a)、(b)を示す。 (a)~(d)の模式図により本発明の実施形態に係るアンカーのコンクリート壁への取り付け手順を示す。 本発明の実施形態に係る足掛け具を示す。 マンホールのコンクリート壁に取り付けられた本発明に実施形態に係る足掛け具を示す。 マンホールのコンクリート壁に取り付けられた足掛け具(従来例)を示す。 グリップアンカーの外観斜視図を示す。 (a)~(d)の模式図によりグリップアンカーのコンクリート壁への取り付け手順を示す。
以下、図面に基づいて本発明のコンクリート壁に固定されるアンカー、アンカーを取り付けた足掛け具およびアンカーの固定方法の実施形態を具体的に説明する。
図1にアンカーの外観斜視図を示した。ここで、1はアンカー、2は円筒体、3~5は、それぞれ円筒体に形成された割り溝、段部、雌ネジ溝であり、6は拡開コーン、7は拡開コーンの本体、8はコーンピンである。以下、アンカー1を構成する部材について詳述する。
拡開コーン6は、後述するように、本体7の外径の小さい側の端部を、円筒体2の割り溝(スリット)3が形成された一方の端部に挿入した状態で、コンクリート壁の取付用孔に挿入して使用される(図3参照)。
円筒体2は、円管状の部材であり、一方の端部を含む部位には、円周において互いに対向する位置に、同じ長さの割り溝(スリット)3が形成されている。すなわち、円周方向に180°の間隔をおいて2本の割り溝3が形成されている。後述するように、この2本の割り溝には拡開コーン6の本体7を貫通するコーンピン8の両端部が収まることになる。したがって、円筒体2の割り溝3の幅はコーンピン8の直径よりも大きくする。
割り溝3は、円筒体2の円周方向に90°の間隔で4本形成すると、円周において互いに対向する位置に形成される割り溝の組が2組できる。本発明においては、このような組の割り溝を少なくとも1組以上必要であり、複数組の割り溝を形成してもよいが、コーンピン8の両端部が収まることになるのはこのうちの一組の割り溝である。
図1に示される円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部を含む部位の外周表面には、円環状の段部4が複数条形成されている。
段部4は、アンカー1がコンクリート壁に固定されたときに、円筒体2の割り溝が形成された部位が拡開して、コンクリート壁の取付用孔の内周側壁に食い込み、固定強度をより高めるためのものである。十分な固定強度が得られる場合は段部4を設けなくともよい。
段部4の外径は、円筒体2の外径と同じであり、このような段部は、円筒体(円管)の表面を切削して円環状の凹部を複数条形成するなどして付与することができる。
円筒体2の他方の端部を含む部位には割り溝3は形成されていない。この部位の内周面や外周面には、アンカーに構造部品等を取り付けるために、これらに設けられたネジ部材のネジ溝と螺合する雌ネジ溝や雄ネジ溝を形成することができる。図1では、内周面に雌ネジ溝5が形成されているものが示されている。
円筒体2は、上記の円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部を含む部位と円筒体2の割り溝3が形成されていない他方の端部を含む部位とからなるが、両部位は同じ長さに限るものではない。円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部を含む部位が円筒体2の割り溝3が形成されていない他方の端部を含む部位より短い場合も、長い場合もあり得る。
拡開コーン6は、本体7と本体7を貫通するコーンピン8からなり、円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部を含む部位に進入させて、該部位を拡開させて、コンクリート壁の取付用孔に挿入されたアンカーをコンクリート壁に固定するためのものである。
本体7は、形状が円錐台状であり、断面(軸方向に対して直角方向の断面)が円形であり、一方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも小さく、他方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも大きい。ここでの円錐台状とは、数学で定義される円錐台の厳密さを要求するものではない。例えば、図2(a)に示すように、拡開コーン6の本体7が円錐台であってもよいし、図2(b)に示すように、本体7の上記の一方の端部を含む部位が円柱状であり、この部位以外の部位が円錐台であってもよい。
拡開コーン6の端面の角部にはアール(丸み)を付けることが望ましい。
以下においては、上記の拡開コーン6の本体7の外径が円筒体2の内径よりも小さい一方の端部および該端部近傍を含む部位を「頭部」(図2においては、本体7の上部に位置する)、他方の端部および該端部近傍を含む部位を「底部」(図2においては、本体7の下部に位置する)ということにする。
形状が図2(a)に示されるように円錐台である場合は、本体7は、一方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも小さく、他方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも大きい。そして、一方の端部から他方の端部に向かって行くにしたがって断面の外径が増大している。また、本体7の形状が図2(b)に示される形状である場合は、頭部側の円柱状の部位の断面の外径が円筒体2の内径よりも小さく、本体7の該円柱状の部位を除く部位が円錐台であり、底部側の端部の断面の外径は円筒体2の内径よりも大きい。
図2に示したものは2つの実施形態であり、円錐台状の本体7はこの2つに限るものではない。
このように、拡開コーン6の本体7は、一方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも小さいとともに、他方の端部の断面の外径が円筒体2の内径よりも大きいものであるが、断面の外径が円筒体2の内径より小さい一方の端部の方から、円筒体2の割り溝3が形成された部位の内部に挿入されて、断面の外径が円筒体2の内径より大きい本体7の部位が円筒体2の割り溝3が形成された部位に進入すると、円筒体2の割り溝3が形成された部位が拡開する。
コンクリート壁の取付用孔内で、円筒体2の割り溝3が形成された部位が拡開して、該部位が取付用孔の内周側壁に食い込むことにより、アンカー1をコンクリート壁に固定することができる。
したがって、断面の外径が円筒体2の内径よりも大きい本体7の部位の断面の外径は、円筒体2の割り溝3が形成された部位が拡開してアンカー1がコンクリート壁の取付用孔に堅固に固定されるのに十分な外径の大きさを有していなければならない(後述の図3参照)。
コーンピン8は、棒状の部材であり、拡開コーン6の本体7の断面の外径が円筒体2の内径よりも小さい一方の端部の近傍を含む部位(本体7の頭部)を、本体7の軸方向に対して直角の方向に本体7の軸と交差するように貫通して取り付けられ、コーンピン8の両端部は、図1、2から分かるように、本体7から飛び出ている。
コーンピン8は、拡開コーン6に貫通させて取付け、接着剤や溶接などで固定するすることができる。
円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部から円筒体2の内部に向かって、拡開コーン6の頭部を進入させて、コーンピン8の本体7から飛び出ている2つの部位(両端部)のそれぞれを円筒体2の2つの割り溝3のそれぞれに収めつつ、拡開コーン6をさらに円筒体2の内部に進入させると、コーンピン8は、割り溝3に沿って本体7とともに、円筒体2の割り溝3が形成された部位の内部を移動することになる(図1、図3参照)。このように、コーンピン8は、円筒体2の割り溝3が形成された部位の内部に本体7を案内する機能を有している。
拡開コーン6を円筒体2の内部に進入させると、拡開コーン6の本体7の断面の外径が円筒体2の内径以下である部位は滑らかに円筒体の内部に挿入される。そして、それに続く外径が円筒体2の内径よりも少し大きくなる部位が円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部の端面に達すると、強い力をかけない限り、拡開コーン6の円筒体2の内部への進入は阻止される。
このとき、図3(a)、(c)に示すように、拡開コーン6の本体7の断面の外径が円筒体2の内径よりも大きい部位の大部分は円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部の端面からはみ出ているとともに、コーンピン8は、円筒体2の割り溝3の付け根部〔図3(a)において、割り溝3の上端部〕には達していない状態になる。したがって、図3(d)から分かるように、割り溝3の長さは、コーンピン8が割り溝3の付け根部に達したときに、拡開コーンの本体7の外径が円筒体2の内径よりも大きい底部の底面が円筒体2の割り溝が形成された一方の端部の端面近傍に位置する長さにすることが望ましい。図3(d)では、本体7の底面が円筒体2の一方の端部(下端部)の端面から少しはみ出ている。
なお、コーンピン8は、図3(a)では紙面に垂直の方向に、図3(c)、(d)では紙面に平行にそれぞれ描かれている。
本発明のアンカー1をコンクリート壁100に穿設された取付用孔50に固定する手順(方法)を以下に示す。この手順は以下の工程1および2)を経る。
アンカー1は、コーンピン8の両端が円筒体2の割り溝3に収められた状態で、円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部に本体7の断面の外径が円筒体の内径以下である部位が挿入された状態にある〔図3(a)参照〕。
1)コンクリート壁100に円筒体2の外径と同程度の径を有する取付用孔50を穿設する〔図3(b)参照〕。取付用孔50の深さは、本体7のコーンピン8の位置(厳密には該ピン8のコンクリート壁100表面に接する位置)から本体7の底部の底面までの長さより大きくする〔図3(c)参照〕。
2)アンカー1を、拡開コーン6が挿入されている円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部の方から、割り溝3にコーンピン8の両端部が収められた状態で、取付用孔50に挿入するとともに、円筒体の他方の端部(割り溝が形成されていない方の端部)に直接的あるいは間接的に外力を加えて押し、コーンピン8が円筒体2の割り溝3の付け根部に達するまで円筒体2を取付用孔50に埋め込み〔図3(d)参照〕、円筒体2の割り溝3が形成された一方の端部を含む部位を拡開させる。
工程2)では、コーンピン8は、コンクリート壁100の表面に接触した後に〔図3(c)参照〕、コンクリート壁100の表面に接触した状態で、円筒体2がさらに埋め込まれて、円筒体2の割り溝3の付け根部に達する〔図3(d)参照〕。
この円筒体2がさらに埋め込まれるときに、本体7の外径が円筒体2の内径よりも大きい部位が円筒体2の一方の端部を含む部位(割り溝3が形成されている部位)に進入して拡開する。
したがって、工程2)において、コーンピン8がコンクリート壁100の表面に接した後は、本体7はコーンピン8によりコンクリート壁100の表面で支持された状態になり、取付用孔50の深さ方向に向かって移動することはないので、本体7の底部の底面が取付用孔50の底に触れることはない。
工程2)により、拡開コーン6の本体7の断面の外径が円筒体2の内径よりも大きい部位が円筒体2の内部に進入するので、円筒体2の割り溝3が形成された部位が拡開して取付用孔50の内周側面に食い込むことになり、アンカー1は堅固にコンクリート壁100に固定される。このとき、拡開コーン6の本体7の底部の端面が取付用孔50の底に触れないので〔図3(d)参照〕、コンクリート壁100を損傷・破壊することはない。
工程1)と2)の間に、取付用孔50に接着剤を注入して、足掛け具の固定強度をより高めてもよい。
また、工程2)において、円筒体2の他方の端部を含む部位の内周面に雌ネジ溝を形成しておき、該ネジ溝に螺合するボルトなど装着して、該ボルトなどを強く押して、間接的に円筒体2を強く押してもよい。アンカーを構造部材など(例えば足掛け具)に溶接して取り付けた場合も、構造部材などを強く押して、アンカーを固定すればよい。
取付用孔50の深さは、本体7のコーンピン8の位置(厳密には該ピン8のコンクリート壁100に接する位置)から本体7の底部の底面までの長さより大きくするだけであるから〔図3(c)、(d)参照〕、比較的正確な深さの取付用孔を穿設するグリップアンカーの場合よりも、取付用孔50の穿設は比較的容易である。また、先端部が先の尖った楔状であるピンを打ち込む従来のアンカーに比べて、該ピンを打ち込む工程や該ピンを挿入するための挿通孔を足掛け具の足踏み部に穿設する前工程、挿通孔やピンが露出することのないようにキャップ蓋やパテを施して防水する工程を省略することができる。
次に、本発明のアンカーを使用した足掛け具について以下に説明する。
図4に示すように、足掛け具10は、足踏み部11とその両側に連なる脚部12および脚部12に接続されたアンカー1から構成される。ここでは、足踏み部11と脚部12は一体ものであるが、図4、5に示されるように、足踏み部11と脚部12とを接合したものでもよい。
なお、図4では、脚部12の端部がアンカー1の円筒部2の他方の端部(割り溝3が形成されていない端部)に挿入されて接合されている。
脚部12とアンカー1との接続は、溶接やネジ溝の螺合を利用すればよい。
ネジ溝の螺合を利用する場合は、例えば、アンカー1の円筒体2の割り溝3が形成されていない部位(他方の端部を含む部位)の内周面に雌ネジ溝を形成するとともに、足掛け具10の脚部12の外周面に雄ネジ溝を形成しておき、両ネジ溝を螺合させて、脚部12にアンカー1を接合することができる。
図5にマンホールのコンクリート壁100に固定された足掛け具10を示した。
足掛け具10をコンクリート壁100に固定するには、上述の1)~2)に記載したアンカーを固定する方法と同様に行えばよく、例えば、足掛け具10の両脚の間隔に保持された2本のドリルを備える穿孔手段で、取付用孔50を穿設し、次いで、足掛け具10の両脚部12に接続されたアンカー1を同時に挿入し、押し込めば、コンクリート壁100にアンカー1を固定でき、同時に足掛け具10も固定することができる。
取付用孔50の穿設も、上述したアンカー1を固定する場合と同様であり、その深さは本体7のコーンピン8の位置(厳密には該ピン8のコンクリート壁100に接する位置)から本体7の底部の底面までの長さより大きくするだけであり、拡開コーン6の底部の端面が取付用孔50の底を触れないので、コンクリート壁100を損傷・破壊することはない。
アンカー1を押し込むには、足掛け具10の足踏み部11をコンクリート壁に向かって押圧するか、軽く複数回叩くことにより行うことができ、グリップアンカーの場合のように強打する必要はない。
また、先端部が先の尖った楔状であるピンを打ち込む従来の足掛け具に比べて、該ピンを打ち込む工程や該ピンを挿入するための挿通孔を足掛け具の足踏み部に穿設する前工程、挿通孔やピンが露出することのないようにキャップ蓋やパテを施して防水する工程を省略することができる。
アンカー1のコンクリート壁100に埋め込まれている部位を除く足掛け具10の足踏み部11や脚部12、アンカー1のコンクリート壁100から飛び出している部位には、合成樹脂の被覆を施してもよい。さらに、足踏み部の合成樹脂の上面には滑り止めの凹凸を形成したり、足踏み部の合成樹脂の側面には波形の握り部を形成したりしてもよい。
アンカー1を構成する部材の材料は、コーンピンも含めて、特に限定しないが、強度が高い材料から製作することが望ましい。また、腐食性ガスが発生しやすいマンホール内などでは、強度が高く、かつ耐食性のよい材料が望ましく、例えば、オーステナイト系のステンレス鋼や鋼をニッケル・クロムめっきしたものが好適である。
1:(本発明の)アンカー
2:円筒体
3:割り溝
4:段部
5:雌ネジ溝
6:拡開コーン
7:本体
8:コーンピン
10:(本発明の)足掛け具
11:足踏み部
12:脚部
20:(従来例の)足掛け具
21:足踏み部
22:脚部
23:埋め込み部(アンカー)
24:挿通孔
25:先端部が先の尖った楔状であるピン
26:キャップ蓋またはパテ
30:グリップアンカー
31:円筒体
32:拡開コーン
33:割り溝
34:段部
35:雌ネジ溝
50:取付用孔
100:コンクリート壁

Claims (4)

  1. 円筒体と拡開コーンからなるアンカーであって、
    円筒体の一方の端部を含む部位には、円周において互いに対向する位置に同じ長さの割り溝が形成され、
    拡開コーンは本体とコーンピンからなり、
    本体は、形状が円錐台状であり、一方の端部の断面の外径が円筒体の内径よりも小さいとともに、他方の端部の断面の外径が円筒体の内径よりも大きく、
    コーンピンは、本体の軸方向に対して直角の方向に本体の頭部を貫通してその両端部が本体外に飛び出ており、
    円筒体の一方の端部を含む部位に形成された割り溝にコーンピンの両端部を収めて、拡開コーンの本体をその頭部側から円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位に進入させることにより、円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位が拡開することを特徴とするアンカー。
  2. 前記円筒体の一方の端部を含む部位の外周部に、円環状の段部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のアンカー。
  3. コンクリート壁に固定される足掛け具であって、
    足踏み部とその両側に脚部を有し、脚部には請求項1または2に記載のアンカーが接続されていることを特徴とする足掛け具。
  4. 請求項1または2に記載のアンカーをコンクリート壁に固定する方法であって、
    コンクリート壁に穿設した取付用孔に、アンカーを、拡開コーンが挿入された前記円筒体の割り溝が形成された一方の端部の方から、該割り溝に前記コーンピンの両端部を収めて挿入し、次いで、円筒体の他方の端部を直接的あるいは間接的に押し、コーンピンが円筒体の割り溝の付け根部に達するまで円筒体を取付用孔に埋め込み、円筒体の割り溝が形成された一方の端部を含む部位を拡開させることにより、アンカーをコンクリート壁に固定することを特徴とする、請求項1または2に記載のアンカーをコンクリート壁に固定する方法。
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