本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
〔1.本発明の一実施形態の技術的思想〕
本発明者は、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する混合工程と、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させることにより、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物との混合物を得る粒子移動工程と、を含むことにより、粒子含有組成物を提供することができる、ことを独自に見出した。
ここで、本発明者は、混合工程と粒子移動工程とを複数回繰り返した場合、および/または、粒子移動工程を長時間実施した場合、第二の組成物中の粒子(A)の濃度は一定程度増加するものの、一定程度以上増加しなくなる、ということを独自に見出した。すなわち、上述した製造方法では、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができない。この原因について、本発明者は、第二の組成物と第二の溶液との粘度差が原因ではないかと推察した。混合工程と粒子移動工程とを複数回繰り返した場合、および/または、粒子移動工程を長時間実施した場合、粒子(A)により第二の組成物の粘度が上昇し、第二の組成物と第二の溶液との粘度差が大きくなることを、本発明者は独自に見出した。さらに、本発明者は、上述した製造方法では、以下のような問題点があることを独自に見出した:(1)例えば、ホモミキサーを設置したタンクを用いて粒子移動工程を長時間実施する場合、第二の組成物がタンクの壁面に付着し、実質的に第二の溶液のみが攪拌され、その結果、第二の組成物中の粒子(A)の濃度が一定以上、上昇し得ないこと;および(2)粒子移動工程を一定時間(長時間ではない)実施した後、第二の溶液および第二の組成物の混合物を輸送して、再度混合工程および粒子移動工程に供する態様を繰り返す場合、第二の組成物が輸送配管に付着したり、混合工程で第二の組成物が浮遊するなどして、第二の組成物よりも粘度の低い第二の溶液のみが粒子移動工程に供され、その結果、第二の組成物中の粒子(A)の濃度が一定以上、上昇し得ないこと。
本発明者は、かかる課題を解決するために、さらに鋭意検討した結果、粒子移動工程で得られた第二の溶液および第二の組成物を分離し、それぞれ別々に混合工程に供することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
樹脂に対する粒子の配合は、粒子による樹脂の諸物性の改良を期待して行われる。粒子による樹脂の諸物性の改良効果が発揮されるためには、粒子および樹脂を含む粒子含有組成物において、樹脂中で粒子は均一に分散していることが好ましい。本発明の一実施形態は、さらに、樹脂中で粒子が均一に分散している粒子含有組成物を提供することも追加の課題とする。
〔2.粒子含有組成物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造方法は、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する混合工程と、第一の溶液中の前記粒子(A)を第一の組成物中へ移動させることにより、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物との混合物を得る粒子移動工程と、粒子移動工程で得られた混合物を、第二の溶液と第二の組成物とに分離する分離工程と、第二の溶液を輸送し、混合工程に供給する溶液輸送工程と、第二の組成物を輸送し、混合工程に供給する組成物輸送工程と、を含む。本発明の一実施形態の分離工程において、分離直後の第二の組成物の粘度は、分離直後の第二の溶液の粘度よりも高い。
本発明者は、第一の溶液と第一の組成物との混合物中にて、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させることにより、粒子(A)が樹脂(B)に均一に分散した状態で、第一の組成物より多くの粒子(A)を含む、第二の組成物が得られることを独自に見出した。本発明者は、さらに、分離された第二の溶液および第二の組成物をそれぞれ独立して輸送することにより、第二の溶液および第二の組成物を一緒に輸送することと比較して、(a)輸送装置(例えば、配管)に第二の組成物が付着する虞、および(b)第二の組成物よりも粘度が低い第二の溶液のみが輸送される虞、がないことを独自に見出した。
「本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造方法」を、「本製造方法」と称する場合もある。
本明細書において「X℃におけるYの粘度」(ここで、Xは任意の数値であり、Yは任意の物質名である。)とは、「X℃であるYの粘度」ともいえる。
本製造方法によれば、粒子含有量の多い粒子含有組成物を提供できる。
また、本製造方法によれば、樹脂(B)中で粒子(A)が均一に分散している粒子含有組成物を提供できる。本製造方法は、有機溶剤の使用を必須の構成としない。そのため、本製造方法は、環境負荷が小さいという利点も有する。本製造方法は、凝固剤等の塩の使用を必須の構成としない。そのため、本製造方法によれば、低夾雑物(低不純物)である粒子含有組成物を提供することができる。また、本製造方法によれば、第一の溶液が粒子(A)および液状物以外の物質(例えば乳化剤)を含んでいる場合であっても、第二の組成物への乳化剤等の巻き込みが少ないため、乳化剤由来物質等(不純物)の含有量が少ない粒子含有組成物を提供することができる。
以下、本実施形態に関する各工程について、図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造方法の概略を示す図である。図1に示すように、本製造方法は、混合工程1、粒子移動工程2、分離工程3、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5を備える。混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3はこの順で実施される。分離工程3の後に、溶液輸送工程4と組成物輸送工程5とが、独立かつ並行して実施される。溶液輸送工程4および組成物輸送工程5の後に、再度混合工程1が実施されることにより、本製造方法は、再度、混合工程1から繰り返して実施され得る。
(2-1.混合工程1)
混合工程1は、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する工程である。混合工程1では、第一の溶液と第一の組成物との混合物11が得られる。「第一の溶液と第一の組成物との混合物11」を、「第一の混合物11」と称する場合もある。
第一の溶液と第一の組成物とを混合する方法(手段)としては、種々の方法が利用でき、特に限定されない。当該方法としては、例えば、(a)第一の溶液と第一の組成物とを、配管で合流させる方法、(b)続く粒子移動工程で使用する装置に、第一の溶液と第一の組成物とを別々に供給することでこれらを合流させる方法等を挙げることができる。第一の溶液と第一の組成物との混合は、第一の溶液と第一の組成物とを単に合わせる(合流させる)だけであってもよい。
混合工程1は、粒子移動工程2に供するための第一の混合物11を調製する工程ともいえる。混合工程1は、長時間行う必要はない。特に、第一の溶液の粘度よりも第一の組成物の粘度が大きく、またそれらの粘度差が大きい場合、混合工程1の時間は、短いことが好ましく、単に第一の溶液と第一の組成物とを合わせるだけでよく、攪拌等を行わなくてもよい。具体的に、混合工程1が第一の溶液と第一の組成物とを配管で合流させる方法で行われる場合、当該配管の長さを短く設定することにより、換言すれば、後述する混合装置の長さを短く設定することにより、混合工程1の時間を短くすることができる。混合工程1の時間が短い場合、第一の組成物が配管に付着する虞がなく、第一の溶液および第一の組成物が共に、続く粒子移動工程に移送されるという利点を有する。
(2-2.粒子移動工程2)
粒子移動工程2は、混合工程1で得られた第一の混合物11を使用して、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させる工程である。粒子移動工程では、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液13と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物14との混合物12が得られる。「第二の溶液13と第二の組成物14との混合物12」を、「第二の混合物12」と称する場合もある。
液状物の相が、樹脂(B)の相と異なる場合、粒子移動工程2は、液状物中に存在する粒子(A)を、当該液状物の相と異なる相である樹脂(B)中に移動させる工程ともいえる。粒子移動工程2は、粒子(A)の液状物に対する親和性を低下させ、粒子(A)の樹脂(B)に対する親和性を増加させる工程ともいえる。液状物が水であり、樹脂(B)が熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)である場合、粒子移動工程2は、粒子(A)の性質を、親水性から疎水性に変える工程ともいえる。
第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させる方法としては、特に限定されない。当該方法としては、例えば、混合工程1で得られた第一の混合物11を、化学的に処理する方法、物理的に処理する方法、および、化学的かつ物理的に処理する方法が挙げられる。
混合工程1で得られた第一の混合物11を化学的に処理する方法としては、当該第一の混合物11を加熱する方法、当該第一の混合物11のpHを変化させる方法、当該第一の混合物11に塩を添加し粒子(A)を凝集させる方法、当該第一の混合物11に任意の成分を添加し粒子(A)表面の改質等を引き起こす方法などが挙げられる。液状物が水であり、粒子(A)が乳化剤の作用によって第一の溶液中に存在する場合、第一の混合物11を化学的に処理する方法としては、乳化剤を吸着剤に吸着させることにより、粒子(A)の乳化力を弱めるなどの方法も挙げられる。
混合工程1で得られた第一の混合物11を物理的に処理する方法としては、第一の混合物11に衝撃を加える方法が挙げられる。第一の混合物11を物理的に処理する方法の具体例としては、第一の混合物11に剪断応力を加える方法、第一の混合物11を圧縮する方法、第一の混合物11を凍結および解凍する方法、第一の混合物11に超音波を照射する方法、および第一の混合物11にマイクロ波を照射する方法などが挙げられる。粒子移動工程2は、混合工程1で得られた第一の混合物11に衝撃を加える工程をさらに含むことが好ましく、混合工程1で得られた第一の混合物11に剪断応力を加える工程をさらに含むことがより好ましい。粒子移動工程2は、混合工程1で得られた第一の混合物11に剪断応力を加える工程であることがより好ましい。当該構成によると、第一の溶液から第一の組成物中へ、効率よく粒子(A)を移動させることができる。
混合工程1で得られた第一の混合物11に剪断応力を加える方法については特に限定されず、第一の混合物11を攪拌する方法、第一の混合物11を混練する方法など種々の技術を用いることができる。第一の混合物11に剪断応力を加える方法としては、例えば、第一の混合物11を、ホモミキサーにより3000rpm~25000rpmで撹拌する方法、高剪断乳化機により500rpm~12000rpmで撹拌する方法、高圧式ホモジナイザーで攪拌する方法、ニーダーで混練する方法、押出機で混練する方法、スタティックミキサーで混合する方法、自転公転ミキサーで混合する方法、バイブロミキサーで混合する方法、ピンミキサーで混合する方法、コロイドミルで処理する方法などを挙げることができる。第一の混合物11をコロイドミルで処理する方法は、第一の混合物11を圧縮する方法ともいえる。また、混合工程1と粒子移動工程2とを同時に行ってもよい。例えば、上述した各装置へ、第一の混合物11の代わりに、第一の溶液および第一の組成物をそれぞれ別々に供給して、第一の溶液および第一の組成物を当該装置で処理してもよい。
粒子(A)の第一の溶液から第一の組成物へ移動速度の観点から、粒子移動工程2においてホモミキサーにより第一の混合物11を攪拌する場合は、第一の混合物11を、5000rpm~25000rpmで撹拌することが好ましく、7000rpm~20000rpmで撹拌することがより好ましく、8000rpm~20000rpmで撹拌することがさらに好ましい。粒子(A)の第一の溶液から第一の組成物へ移動速度の観点から、粒子移動工程2において高剪断乳化機により第一の混合物11を撹拌する場合は、第一の混合物11を、1000rpm~12000rpmで撹拌することが好ましく、2000rpm~20000rpmで撹拌することがより好ましく、2500rpm~20000rpmで撹拌することがさらに好ましい。
混合工程1で得られた第一の混合物11を凍結する方法において、凍結速度は特に限定されない。第一の混合物11を凍結する方法は、第一の混合物11を急速に凍結する方法であってもよく、第一の混合物11をゆっくり凍結する方法であってもよい。第一の混合物11を急速に凍結する具体的な方法については特に限定されず、瞬間冷凍、急速冷凍に関する種々の技術を利用できる。当該方法としては、例えば、-80℃~-10℃に冷却した金属面に第一の混合物11を接触させる方法、スプレークーラーを用いて第一の混合物11を冷気中に噴霧することにより、瞬間的に冷却・凝固させる方法、液体窒素、冷却したアルコール等の溶剤に第一の混合物11を入れる方法、ドライアイスおよび/またはコールドストーンに第一の混合物11を接触させる方法等を好ましく例示できる。第一の混合物11をゆっくり凍結する具体的な方法については特に限定されず、例えば、第一の混合物11を-10℃~-80℃の冷凍庫で凍結する方法、トンネル式・スパイラル式フリーザーで第一の混合物11を凍結する方法等を挙げることができる。
第一の混合物11を解凍する具体的な方法については特に限定されず、公知の解凍技術を利用できる。例えば、凍結された第一の混合物11を常温または加熱した加温庫に放置して回答する方法、直接または間接的に第一の混合物11に蒸気を噴きかける方法、第一の混合物11に熱水をかける方法、第一の混合物11を湯せんする方法、第一の混合物11を加熱した金属面に接触させる方法、第一の混合物11を加熱した液体に投入する方法、第一の混合物11にマイクロ波を照射する方法を好ましく例示できる。
混合工程1で得られた第一の混合物11に超音波を照射する方法、または当該第一の混合物11にマイクロ波を照射する方法については特に限定されず、種々の技術を用いることができる。当該方法としては、電子レンジで処理する方法および工業用の超音波(マイクロ波)発生装置で処理するなどの方法が挙げられる。
第一の溶液において、液状物が水であり、当該水中に粒子(A)が乳化剤によって乳化している態様、すなわち、第一の溶液が粒子(A)の水性ラテックスである態様を考える。この態様において本発明者は以下のことを独自に見出した。混合工程1で得られる、第一の混合物11に剪断応力を加えることにより、第一の溶液中の粒子(A)の乳化効果が弱まる。これにより、(a)第一の溶液から第一の組成物中へ粒子(A)が効率的に移動する。その結果樹脂(B)中で粒子(A)が均一に分散している第二の組成物14を得ることができる。
粒子移動工程2において、第一の混合物11に対して、化学的処理と物理的処理とを組み合わせて適用してもよい。例えば、混合工程1で得られた第一の混合物11を加熱するとともに、第一の混合物11に剪断応力を加えてもよい。また、物理的処理の結果、例えば、第一の混合物11に剪断応力を加えた結果として、第一の混合物11に熱が加えられてもよい。
粒子移動工程2において、混合工程1で得られた第一の混合物11の温度、例えば第一の混合物11の加熱温度は、特に限定されない。第一の混合物11の温度(加熱温度)としては、粒子(A)の劣化を低減できることから、例えば、10℃~90℃が好ましく、10℃~80℃がより好ましく、10℃~70℃がさらに好ましい。
粒子移動工程2では、第一の溶液から第一の組成物へ粒子(A)が移動することにより、第一の組成物より粘度の高い第二の組成物14が得られる場合がある。第一の溶液から第一の組成物へ粒子(A)が移動することにより、第一の組成物より粘度の高い第二の組成物14が得られる理由としては、以下のように推察される:例えば、樹脂(B)に含まれる粒子(A)同士の摩擦力等の相互作用により、組成物の粘度が増加する。ただし、本発明は、かかる推察に限定されるものではない。
粒子移動工程2は、第二の溶液13と、第一の組成物よりも粘度の高い前記第二の組成物14との混合物12(第二の混合物12)を得る工程であることが好ましい。換言すれば、粒子移動工程2で得られる第二の組成物14は、第一の組成物よりも粘度が高いことが好ましい。当該構成によると、粒子移動工程2で得られる第二の溶液13と第二の組成物14との粘度差は、第一の溶液と第一の組成物との粘度差よりも大きくなる。これにより、続く分離工程3において、第二の溶液13と第二の組成物14との分離が容易となる。
粒子移動工程2は、気液界面の存在下で、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させる工程であることが好ましい。当該構成によると、第一の溶液から第一の組成物中へ、効率よく粒子(A)を移動させることができる。粒子移動工程2において気液界面の存在下で、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させるためには、第一の混合物11中に気泡(エアーまたはバブルとも称する。)が存在すればよい。換言すれば、混合工程1は、第一の溶液と第一の組成物と気体(例えば、空気、二酸化炭素および窒素)とを一緒に混合することにより、第一の溶液と第一の組成物と気泡とを有する第一の混合物11を得る工程であることが好ましい。第一の混合物11中に気泡(エアーまたはバブルとも称する。)が存在する場合、第一の混合物11中には気液界面が存在する。当該気液界面では、粒子(A)が濃縮され得る。その結果、気液界面の存在下で、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させることにより、第一の溶液から第一の組成物中へ、効率よく粒子(A)を移動させることができる。
(2-3.分離工程3)
分離工程3は、粒子移動工程2で得られた混合物12(第二の混合物12)を、第二の溶液13と第二の組成物14とに分離する工程である。
第二の溶液13と第二の組成物14とを分離する方法については特に限定されない。例えば、(a)ろ過装置を使用してろ過する、(b)圧搾脱水する、(c)遠心分離機を用いて遠心分離する、(d)デカンタを用いて、第二の溶液13をデカントする、並びに、(e)スクリューコンベア、スクリュープレス、フィルタープレスおよび/またはベルトプレス等の分離装置を用いる、等の方法が挙げられる。スクリューコンベアは、第二の溶液13と第二の組成物14との粘度差を利用して、第二の溶液13と第二の組成物14とを分離する分離装置である。本製造方法の分離工程3では、分離直後の第二の組成物14の粘度は、分離直後の第二の溶液13の粘度よりも高いため、分離工程3においてスクリューコンベアを好適に利用できる。
(2-4.溶液輸送工程4/組成物輸送工程5)
溶液輸送工程4は、分離工程3で得られた第二の溶液13を混合工程1に供給する工程である。組成物輸送工程5は、分離工程3で得られた第二の組成物14を混合工程1に供給する工程である。
溶液輸送工程4および組成物輸送工程5は、それぞれ独立して実施される限り、その他の態様は特に限定されない。通常、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5は、同時に、並列して実施される。
本製造方法では、第二の溶液13および第二の組成物14を、それぞれ、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5により、別々に輸送する。当該構成によると、第二の溶液13と第二の組成物14との粘度差が大きいものであっても、第二の溶液13および第二の組成物14の両方を安定的に、輸送することができる。具体的には、第二の溶液13と第二の組成物14とを別々に輸送することにより、1つの輸送管(例えば配管)には、粘度差のない物質(第二の溶液13または第二の組成物14)が流れることとなる。その結果、第二の溶液13および第二の組成物14のいずれも、滞りなく流すことができる。
溶液輸送工程4において、第二の溶液13を輸送する手段は特に限定されず、例えばスクリューコンベアなどのコンベア、ポンプおよび配管を用いる方法が挙げられる。組成物輸送工程5において、第二の組成物14を輸送する手段は特に限定されず、例えばスクリューコンベアなどのコンベア、ポンプおよび配管を用いる方法が挙げられる。
前記分離工程3は、第二の溶液13と第二の組成物14とを完全に分離するものでなくてもよい。換言すれば、溶液輸送工程4における第二の溶液13は第二の組成物14を含んでいてもよく、組成物輸送工程5における第二の組成物14は第二の溶液13を含んでいてもよい。
溶液輸送工程4における第二の溶液13は、全100重量%中、第二の組成物14を50重量%以下含んでいてもよい。溶液輸送工程4における第二の溶液13の全100重量%中、第二の組成物14の含有量は少ないほど好ましく、第二の組成物14の含有量は30重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以下であることが特に好ましい。
組成物輸送工程5における第二の組成物14は、全100重量%中、第二の溶液13を50重量%以下含んでいてもよい。組成物輸送工程5における第二の組成物14の全100重量%中、第二の溶液13の含有量は少ないほど好ましく、第二の溶液13の含有量は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましく、5重量%以下であることが特に好ましい。
溶液輸送工程4および組成物輸送工程5によって、第二の溶液13および第二の組成物14は、それぞれ、混合工程1に供給される。その結果、本製造方法は、再度、混合工程1から順次実施される。本製造方法の2回目では、粒子移動工程2において、第二の溶液13よりも粒子(A)の含有量が少ない第三の溶液と、第二の組成物14よりも粒子(A)の含有量が多い第三の組成物との混合物が得られる。本製造方法の2回目では、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5によって、第三の溶液および第三の組成物は、それぞれ、混合工程1に供給される。その結果、本製造方法は、再度、混合工程1から順次実施される。このようにして、本製造方法は、複数回実施されてもよい。本製造方法がn回実施される場合(nは1以上の自然数)、n回目において、第一の溶液および第一の組成物は、それぞれ、第nの溶液および第nの組成物となり、第二の溶液13および第二の組成物14は、それぞれ、第n+1の溶液および第n+1の組成物となる。
本製造方法は、混合工程1、粒子移動工程2、分離工程3、並びに、並行して溶液輸送工程4および組成物輸送工程5を、この順で、2回以上実施することが好ましく、5回以上実施することがより好ましく、7回以上実施することがさらに好ましく、10回以上実施することが特に好ましい。当該構成によると、本製造方法は、粒子含有量のより多い粒子含有組成物を提供することができる。
2回目以降の製造方法の混合工程1において、(a)粒子(A)および液状物を含む溶液、(b)樹脂(B)、および/または、(c)粒子(A)および樹脂(B)を含む組成物、をさらに添加してもよい。すなわち、2回目以降の製造方法の混合工程1は、(a)粒子(A)および液状物を含む第二の溶液13と、(b)粒子(A)および樹脂(B)を含む第二の組成物14と、(c)(c-1)粒子(A)および液状物を含む、第二の溶液13以外の溶液、(c-2)樹脂(B)、および/または、(c-3)粒子(A)および樹脂(B)を含む第二の組成物14以外の組成物と、を混合する工程であってもよい。
本製造方法をn回実施し、第n+1の組成物中の、粒子(A)の濃度が所望の濃度に達した後、本製造方法を終えてもよい。分離工程3で得られた第n+1の組成物を、組成物輸送工程5に供することなく回収することにより、本製造方法を終え、粒子含有組成物を得ることができる。
(2-5.洗浄工程)
本製造方法は、分離工程3で得られた第n+1の組成物を洗浄する洗浄工程を含むことが好ましい。組成物を洗浄することにより、夾雑物等の含有量がより少ない粒子含有組成物が得られる。洗浄工程は、水で洗浄することがより好ましく、イオン交換水または純水で洗浄することがさらに好ましい。
洗浄工程は、組成物を洗浄する工程であればよく、具体的な方法について特に限定されない。例えば、組成物と水とを混合して攪拌機、ホモミキサー、高せん断乳化機等によりせん断を加えて撹拌する方法、組成物と水とをニーダーを用いて混練する方法、自転公転ミキサーで混合する方法等の方法を挙げることができる。ニーダーとしては、バッチ式ニーダー、連続式ニーダー、押出機等、各種利用できる。
洗浄の時間は特に限定されず、例えば、1秒間~60分間を挙げることができるが、1秒間~45分間であることが好ましく、1秒間~30分間であることがより好ましい。
洗浄の回数は特に限定されず、例えば、1~10回を挙げることができるが、1~6回であることが好ましく、1~4回であることがより好ましい。
洗浄水の量は特に限定されず、例えば、組成物1重量部に対して、10重量部~1000重量部であることを挙げることができるが、15重量部~500重量部であることが好ましく、20重量部~200重量部であることがより好ましい。また、ニーダーを用いた混練により洗浄する場合、洗浄水を少なくできるため、より好ましい。
洗浄水の温度も限定されず、例えば、常温のもの、加熱した温水を適宜使用し得る。温水の温度としては、例えば、10℃~100℃を挙げることができるが、15℃~90℃であることが好ましく、20℃~85℃であることがより好ましい。洗浄効果は温水の方が高いため、加熱した洗浄水を使用することが好ましい。
また、洗浄した水を除く方法も限定されず、例えば、洗浄水の払い出し、減圧濾過、油水分離、圧搾脱水等の方法を挙げることができる。
(2-6.その他の工程)
本製造方法は、上述した工程以外に、得られた組成物を加熱し、脱揮・乾燥させる工程を備えていてもよい。例えば、本製造方法のn回目の実施のとき、分離工程3で得られた第n+1の組成物を回収し、得られた第n+1の組成物を加熱し、脱揮・乾燥させてもよい。組成物を加熱し、脱揮・乾燥させる工程も種々の方法を利用でき、特に限定されない。例えば、組成物を加熱および/または真空脱揮する等の方法が挙げられる。
本製造方法は、第一の溶液および/または第二の溶液13中の液状物を蒸発させる、濃縮工程をさらに有することが好ましい。濃縮工程は、本製造方法が実施される間、常に実施されていてもよい。濃縮工程における液状物の蒸発は、例えば、後述する溶液保持装置において、装置を加熱して装置内の温度を上昇させる、装置内を減圧するなどして、実施することができる。本製造方法は、濃縮工程をさらに有することにより、第一の溶液および/または第二の溶液13中の液状物を蒸発させることにより、第一の溶液および/または第二の溶液13中の粒子(A)を濃縮して粒子(A)の濃度を上昇させることができる。本製造方法は、濃縮工程をさらに有することにより、第一の溶液中の粒子(A)の濃度が高いため、粒子移動工程において、粒子(A)と樹脂(B)との接触頻度が高くなる。その結果、粒子移動工程において、第一の溶液から第一の組成物中へより多くの粒子(A)を効率的に移動させることができる。
以下、本実施形態に関する各成分について説明する。
(2-7-1.液状物)
液状物としては、特に限定されない。液状物は、樹脂(B)と相溶しないことが好ましく、樹脂(B)と相分離することが好ましい。換言すれば、液状物の相は、樹脂(B)の相と異なることが好ましい。
液状物としては、水および有機溶剤などを好適に挙げることができる。液状物における有機溶剤としては、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類等を挙げることができる。炭化水素類の有機溶剤としては、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-デカン、n-ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、デカリン、ホワイトスピリット、ナフサ等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類の有機溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン等が挙げられる。エーテル類の有機溶剤としては、ジオキサン、エチルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルジグリコール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名;PMAC)等が挙げられる。エステル類の有機溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、メトキシプロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、n-ブチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート等が挙げられる。ケトン類の有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン(別名;MIBK)、メチルイソアミルケトン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。アルコール類の有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、(イソ)プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。有機溶媒としては、上述したアルコールと水との混合物を用いることもできる。有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルピロリドン等も挙げられる。これらの液状物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
液状物としては、樹脂(B)と相分離することから、水が好ましい。
(2-7-2.粒子(A))
粒子(A)の形状としては特に限定されない。粒子(A)の形状は粒子状(球形)であってもよく、または桿状、繊維状、円柱状、錘状、錐状、などであってもよい。粒子(A)は、固形物(A)と称することもできる。
粒子(A)としては、特に限定されない。粒子(A)としては、例えば、無機物を含む物質、無機物からなる物質、有機物を含む物質、有機物からなる物質、などを挙げることができる。
前記無機物を含む物質および前記無機物からなる物質としては、ケイ酸、ケイ酸塩、ドロマイト、補強性充填材、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、金、五酸化アンチモンなどを挙げることができる。
ケイ酸としては、湿式シリカおよび乾式シリカが挙げられる。乾式シリカはヒュームドシリカとも称される。乾式シリカとしては、表面無処理の親水性ヒュームドシリカと、親水性ヒュームドシリカのシラノール基部分にシランおよび/またはシロキサンで化学的に処理することによって製造された疎水性ヒュームドシリカとが挙げられる。
ケイ酸塩としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、タルク、などが挙げられる。
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムおよび膠質炭酸カルシウムなどが挙げられる。
前記有機物を含む物質および前記有機物からなる物質としては、重合体微粒子、セルロースナノファイバー、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブなどを挙げることができる。
(重合体微粒子)
粒子(A)は、重合体微粒子を含むことが好ましく、重合体微粒子であることがより好ましい。当該構成によると、得られる粒子含有組成物が提供する硬化物または成形体は、(a)樹脂(B)が有する耐熱性および剛性と同程度の耐熱性および剛性を有し、かつ(b)破壊靭性、接着強度、および面衝撃性に優れる。
重合体微粒子は、重合により得られる微粒子であればよく、その他の構成は特に限定されない。重合体微粒子は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含むことが好ましい。当該構成によると、得られる粒子含有組成物が提供する硬化物または成形体は、(a)樹脂(B)が有する耐熱性および剛性と同程度の耐熱性および剛性を有し、かつ(b)破壊靭性、接着強度、および面衝撃性により優れる。
(弾性体)
当該弾性体は、特に限定されず、天然ゴム、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体などを含んでいてもよい。弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。当該構成によると、得られる粒子含有組成物が提供する硬化物または成形体は、(a)樹脂(B)が有する耐熱性および剛性と同程度の耐熱性および剛性を有し、かつ(b)破壊靭性、接着強度、および面衝撃性により優れる。弾性体は、ゴム粒子と言い換えることもできる。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。ポリシロキサンゴム系弾性体は、オルガノシロキサン系ゴムと称される場合もある。
弾性体がジエン系ゴムを含む場合(場合A)について説明する。場合Aにおいて、得られる粒子含有組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。
前記ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。前記ジエン系単量体は、共役ジエン系単量体と言い換えることもできる。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位100重量%中、ジエン系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、およびジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Aにおいて、ジエン系ゴムは、構成単位として、ジエン系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
ジエン系単量体としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2-クロロ-1,3-ブタジエンなどが挙げられる。これらのジエン系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ジエン系単量体と共重合可能なジエン系単量体以外のビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体A」とも称する。)としては、例えば、(a)スチレン、α-メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレンなどのビニルアレーン類;(b)アクリル酸、メタクリル酸などのビニルカルボン酸類;(c)アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;(d)塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;(e)酢酸ビニル;(f)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのアルケン類;(g)ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性単量体、などが挙げられる。上述したビニル系単量体Aは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述したビニル系単量体Aの中でも、特に好ましくはスチレンである。
場合Aにおいて、ジエン系ゴムとしては、1,3-ブタジエンに由来する構成単位からなるブタジエンゴム(ポリブタジエンゴムとも称する。)、または、1,3-ブタジエンとスチレンとの共重合体であるブタジエン-スチレンゴム(ポリスチレン-ブタジエンとも称する。)が好ましく、ブタジエンゴムがより好ましい。前記構成によると、重合体微粒子がジエン系ゴムを含むことによる所望の効果がより発揮され得る。また、ブタジエン-スチレンゴムは、屈折率の調整により、得られる硬化物または成形体の透明性を高めることができる点においても、より好ましい。
弾性体が(メタ)アクリレート系ゴムを含む場合(場合B)について説明する。場合Bでは、多種の単量体の組合せにより、弾性体の幅広い重合体設計が可能となる。
前記(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を含む弾性体である。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位100重量%中、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位を50~100重量%、および(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体に由来する構成単位を0~50重量%、含むものであってもよい。場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムは、構成単位として、(メタ)アクリレート系単量体に由来する構成単位よりも少ない量において、ジエン系単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
(メタ)アクリレート系単量体としては、例えば、(a)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類;(b)フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環含有(メタ)アクリレート類;(c)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(d)グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアルキル(メタ)アクリレートなどのグリシジル(メタ)アクリレート類;(e)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;(f)アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレートなどのアリルアルキル(メタ)アクリレート類;(g)モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート類などが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリレート系単量体の中でも、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、および2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
場合Bにおいて、(メタ)アクリレート系ゴムとしては、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴムおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレートゴムがより好ましい。エチル(メタ)アクリレートゴムはエチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、ブチル(メタ)アクリレートゴムはブチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムであり、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴムは2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構成単位からなるゴムである。当該構成によると、弾性体のTgは低い。そのため、(a)得られる重合体微粒子、および、(b)得られる粒子含有組成物が提供する硬化物または成形体は、弾性率が低いという利点を有する。
(メタ)アクリレート系単量体と共重合可能な(メタ)アクリレート系単量体以外のビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体B」、とも称する。)としては、前記ビニル系単量体Aにおいて列挙した単量体が挙げられる。ビニル系単量体Bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビニル系単量体Bの中でも、特に好ましくはスチレンである。
弾性体がポリシロキサンゴム系弾性体を含む場合(場合C)について説明する。場合Cにおいて、得られる粒子含有組成物は、十分な耐熱性を有し、かつ低温での耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。
ポリシロキサンゴム系弾性体としては、例えば、(a)ジメチルシリルオキシ、ジエチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ、ジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体、および(b)側鎖のアルキルの一部が水素原子に置換されたオルガノハイドロジェンシリルオキシなどの、アルキルもしくはアリール1置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサン系重合体、が挙げられる。これらのポリシロキサン系重合体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書において、ジメチルシリルオキシ単位から構成される重合体をジメチルシリルオキシゴムと称し、メチルフェニルシリルオキシ単位から構成される重合体をメチルフェニルシリルオキシゴムと称し、ジメチルシリルオキシ単位とジフェニルシリルオキシ単位とから構成される重合体をジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムと称する。場合Cにおいて、ポリシロキサンゴム系弾性体としては、(a)得られる粒子含有組成物が耐熱性に優れる塗膜を提供することができることから、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴムおよびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択させる1種以上であることが好ましく、(b)容易に入手できて経済的でもあることから、ジメチルシリルオキシゴムであることがより好ましい。
場合Cにおいて、重合体微粒子は、重合体微粒子に含まれる弾性体100重量%中、ポリシロキサンゴム系弾性体を80重量%以上含有していることが好ましく、90重量%以上含有していることがより好ましい。前記構成によると、得られる粒子含有組成物は、耐熱性に優れる硬化物または成形体を提供することができる。
本発明の一実施形態において、弾性体は、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブタジエン-(メタ)アクリレートゴム、エチル(メタ)アクリレートゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートゴム、ジメチルシリルオキシゴム、メチルフェニルシリルオキシゴム、およびジメチルシリルオキシ-ジフェニルシリルオキシゴムからなる群より選択される1種以上であることが好ましく、ブタジエンゴム、ブタジエン-スチレンゴム、ブチル(メタ)アクリレートゴム、およびジメチルシリルオキシゴムからなる群より選択させる1種以上であることがより好ましい。
(弾性体の架橋構造)
重合体微粒子の熱硬化性樹脂中での分散安定性を保持できることから、弾性体には、架橋構造が導入されていることが好ましい。弾性体に対する架橋構造の導入方法としては、一般的に用いられる手法を採用することができ、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、弾性体の製造において、弾性体を構成し得る単量体に、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を混合し、次いで重合する方法が挙げられる。本明細書において、弾性体など重合体を製造することを、重合体を重合する、とも称する。
また、ポリシロキサンゴム系弾性体に架橋構造を導入する方法としては、次のような方法も挙げられる:(a)ポリシロキサンゴム系弾性体を重合するときに、多官能性のアルコキシシラン化合物を他の材料と共に一部併用する方法、(b)ビニル反応性基、メルカプト基などの反応性基をポリシロキサンゴム系弾性体に導入し、その後ビニル重合性の単量体または有機過酸化物などを添加してラジカル反応させる方法、または、(c)ポリシロキサンゴム系弾性体を重合するときに、多官能性単量体および/またはメルカプト基含有化合物などの架橋性単量体を他の材料と共に混合し、次いで重合を行う方法、など。
多官能性単量体は、同一分子内にラジカル重合性反応基を2以上有する単量体ともいえる。前記ラジカル重合性反応基は、好ましくは炭素-炭素二重結合である。多官能性単量体としては、ブタジエンは含まれず、アリルアルキル(メタ)アクリレート類およびアリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類のような、エチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレートなどが例示される。(メタ)アクリル基を2つ有する単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。前記ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレートなどが例示される。また、3つの(メタ)アクリレート基を有する単量体として、アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類、グリセロールプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなどが例示される。アルコキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、4つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、などが例示される。またさらに、5つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが例示される。またさらに、6つの(メタ)アクリル基を有する単量体として、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレートなどが例示される。多官能性単量体としては、また、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等も挙げられる。
メルカプト基含有化合物としては、アルキル基置換メルカプタン、アリル基置換メルカプタン、アリール基置換メルカプタン、ヒドロキシ基置換メルカプタン、アルコキシ基置換メルカプタン、シアノ基置換メルカプタン、アミノ基置換メルカプタン、シリル基置換メルカプタン、酸基置換メルカプタン、ハロ基置換メルカプタンおよびアシル基置換メルカプタン等が挙げられる。アルキル基置換メルカプタンとしては、炭素数1~20のアルキル基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1~10のアルキル基置換メルカプタンがより好ましい。アリール基置換メルカプタンとしては、フェニル基置換メルカプタンが好ましい。アルコキシ基置換メルカプタンとしては、炭素数1~20のアルコキシ基置換メルカプタンが好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基置換メルカプタンがより好ましい。酸基置換メルカプタンとしては、好ましくは、カルボキシル基を有する炭素数1~10のアルキル基置換メルカプタン、または、カルボキシル基を有する炭素数1~12のアリール基置換メルカプタン、である。
(弾性体のガラス転移温度)
優れた靱性を有する硬化物または成形体が得られることから、弾性体のガラス転移温度(以下、単に「Tg」と称する場合がある)は、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下が更に好ましく、-60℃以下であることが特に好ましい。
一方、得られる硬化物または成形体の弾性率(剛性)の低下を抑制することができる、すなわち十分な弾性率(剛性)を有する硬化物または成形体が得られることから、弾性体のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
弾性体のTgは、弾性体に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、弾性体を製造(重合)するときに使用する単量体の組成を変化させることにより、得られる弾性体のTgを調整することができる。
ここで、1種類の単量体のみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃よりも大きいTgを有する単独重合体を提供する単量体の群を、単量体群aとする。また、1種類の単量体のみを重合させてなる単独重合体としたとき、0℃未満のTgを有する単独重合体を提供する単量体の群を、単量体群bとする。単量体群aから選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を50~100重量%(より好ましくは、65~99重量%)、および単量体群bから選択される少なくとも1種の単量体に由来する構成単位を0~50重量%(より好ましくは、1~35重量%)含む弾性体を、弾性体Xとする。弾性体Xは、Tgが0℃よりも大きい。また、弾性体が弾性体Xを含む場合、得られる粒子含有組成物は、十分な剛性を有する硬化物または成形体を提供することができる。
弾性体のTgが0℃よりも大きい場合も、弾性体に架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造の導入方法としては、前記の方法が挙げられる。
前記単量体群aに含まれ得る単量体としては、以下に限るものではないが、例えば、(a)スチレン、2-ビニルナフタレンなどの無置換ビニル芳香族化合物類;(b)α―メチルスチレンなどのビニル置換芳香族化合物類;(c)3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6―トリメチルスチレンなどの環アルキル化ビニル芳香族化合物類;(d)4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレンなどの環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;(e)2-クロロスチレン、3―クロロスチレンなどの環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;(f)4-アセトキシスチレンなどの環エステル置換ビニル芳香族化合物類;(g)4-ヒトロキシスチレンなどの環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類;(h)ビニルベンゾエート、ビニルシクロヘキサノエートなどのビニルエステル類;(i)塩化ビニルなどのビニルハロゲン化物類;(j)アセナフタレン、インデンなどの芳香族単量体類;(k)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート類;(l)フェニルメタクリレートなどの芳香族メタクリレート;(m)イソボルニルメタクリレート、トリメチルシリルメタクリレートなどのメタクリレート類;(n)メタクリロニトリルなどのメタクリル酸誘導体を含むメタクリル単量体;(o)イソボルニルアクリレート、tert-ブチルアクリレートなどのある種のアクリル酸エステル;(p)アクリロニトリルなどのアクリル酸誘導体を含むアクリル単量体、などが挙げられる。さらに、前記単量体群aに含まれ得る単量体としては、アクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、1-アダマンチルアクリレート及び1-アダマンチルメタクリレート、など、単独重合体としたとき120℃以上のTgを有する単独重合体を提供し得る単量体が挙げられる。これらの単量体aは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記単量体bとしては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。これらの単量体bは、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの単量体bの中でも、特に好ましくは、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートである。
(弾性体の体積平均粒子径)
弾性体の体積平均粒子径は0.03μm~2μmが好ましく、0.05μm~1μmがより好ましく、0.1μm~0.8μmがさらに好ましく、0.1μm~0.5μmが特に好ましい。弾性体の体積平均粒子径が(a)0.03μm以上である場合、所望の体積平均粒子径を有する弾性体を安定的に得ることができ、(b)2μm以下である場合、得られる硬化物または成形体の耐熱性および耐衝撃性が良好となる。弾性体の体積平均粒子径は、弾性体を含む水性ラテックスを試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。弾性体の体積平均粒子径の測定方法については、下記実施例にて詳述する。
(弾性体の割合)
重合体微粒子中に占める弾性体の割合は、重合体微粒子全体を100重量%として、40~97重量%が好ましく、60~95重量%がより好ましく、70~93重量%がさらに好ましい。弾性体の前記割合が、(a)40重量%以上である場合、得られる粒子含有組成物は、靱性および耐衝撃性に優れる硬化物または成形体を提供することができ、(b)97重量%以下である場合、重合体微粒子は容易には凝集しない(凝集しにくい)ため、粒子含有組成物が高粘度となることがなく、その結果、得られる粒子含有組成物は取り扱い易いものとなり得る。
(弾性体のゲル含量)
弾性体は、適切な溶媒に対して膨潤し得るが、実質的には溶解しないものであることが好ましい。弾性体は、使用する熱硬化性樹脂に対して、不溶であることが好ましい。
弾性体は、ゲル含量が60重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、95重量%以上であることが特に好ましい。弾性体のゲル含量が前記範囲内である場合、得られる粒子含有組成物は、靱性に優れる硬化物または成形体を提供できる。
本明細書においてゲル含量の算出方法は下記の通りである。先ず、重合体微粒子(B)を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、重合体微粒子(B)の粉体を得る。水性ラテックスから重合体微粒子(B)の粉体を得る方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)当該水性ラテックス中の重合体微粒子(B)を凝集させ、(ii)得られる凝集物を脱水し、(iii)さらに凝集物を乾燥することにより、重合体微粒子(B)の粉体を得る方法が挙げられる。次いで、重合体微粒子(B)の粉体2.0gをメチルエチルケトン(以下、MEKとも称する。)50mLに溶解する。その後、得られたMEK溶解物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。具体的には、遠心分離機(日立工機(株)社製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間、得られたMEK溶解物を遠心分離に供し、当該溶解物を、MEK可溶分とMEK不溶分とに分離する。ここで、遠心分離作業は合計3セット実施する。得られたMEK可溶分とMEK不溶分との重量を測定し、次式よりゲル含量を算出する。
ゲル含量(%)=(メチルエチルケトン不溶分の重量)/{(メチルエチルケトン不溶分の重量)+(メチルエチルケトン可溶分の重量)}×100。
(弾性体の変形例)
本発明の一実施形態において、弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種類であり、かつ同一の組成の構成単位を有する1種の弾性体のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、弾性体は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種の弾性体からなってもよい。
本発明の一実施形態において、弾性体が複数種の弾性体からなる場合について説明する。この場合、複数種の弾性体のそれぞれを、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nとする。ここで、nは2以上の整数である。弾性体は、それぞれ別々に重合された弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nを混合して得られる混合物を含んでいてもよい。弾性体は、弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nをそれぞれ順に重合して得られる重合体を含んでいてもよい。このように、複数の重合体(弾性体)をそれぞれ順に重合することを、多段重合とも称する。複数種の弾性体を多段重合して得られる重合体を、多段重合弾性体とも称する。多段重合弾性体の製造方法については、後に詳述する。
弾性体1、弾性体2、・・・、および弾性体nからなる多段重合弾性体について説明する。当該多段重合弾性体において、弾性体nは、弾性体n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合弾性体において、弾性体nの一部は弾性体n-1の内側に入り込んでいることもある。
多段重合弾性体において、複数の弾性体のそれぞれが、層構造を有していてもよい。例えば、多段重合弾性体が、弾性体1、弾性体2、および弾性体3からなる場合、弾性体1を最内層とし、弾性体1の外側に弾性体2の層が存在し、さらに弾性体2の層の外側に弾性体3の層が弾性体における最外層として存在する態様も、本発明の一態様である。このように、複数の弾性体のそれぞれが層構造を有する多段重合弾性体は、多層弾性体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、弾性体は、複数種の弾性体の混合物、多段重合弾性体および/または多層弾性体を含んでいてもよい。
(グラフト部)
本明細書において、弾性体に対してグラフト結合された重合体をグラフト部と称する。グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体であることが好ましい。グラフト部は、前記構成を有するため、種々の役割を担うことができる。「種々の役割」とは、例えば、(a)重合体微粒子と樹脂(B)および/または混合対象のマトリクス樹脂との相溶性を向上させること、(b)樹脂(B)および/または混合対象のマトリクス樹脂中の重合体微粒子の分散性を向上させること、および(c)粒子含有組成物またはその硬化物もしくはその成形体において重合体微粒子が一次粒子の状態で分散することを可能にすること、などである。
芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、およびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
ビニルシアン単量体の具体例としては、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどが挙げられる。
(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、およびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上述した、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、構成単位として、芳香族ビニル単量体に由来する構成単位、ビニルシアン単量体に由来する構成単位および(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位を合計で、全構成単位100重量%中に、10~95重量%含むことが好ましく、30~92重量%含むことがより好ましく、50~90重量%含むことがさらに好ましく、60~87重量%含むことが特に好ましく、70~85重量%含むことが最も好ましい。
グラフト部は、構成単位として、反応性基含有単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記反応性基含有単量体は、エポキシ基、オキセタン基、水酸基、アミノ基、イミド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状エステル、環状アミド、ベンズオキサジン基、およびシアン酸エステル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を含有する単量体であることが好ましく、エポキシ基、水酸基、およびカルボン酸基からなる群から選択される1種以上の反応性基を含有する単量体であることがより好ましい。前記構成によると、粒子含有組成物中で重合体微粒子のグラフト部と熱硬化性樹脂とを化学結合させることができる。これにより、粒子含有組成物中またはその硬化物もしくはその成形体中で、重合体微粒子を凝集させることなく、重合体微粒子の良好な分散状態を維持することができる。
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、およびアリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニル単量体が挙げられる。
水酸基を有する単量体の具体例としては、例えば、(a)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ直鎖アルキル(メタ)アクリレート(特に、ヒドロキシ直鎖C1-6アルキル(メタ)アクリレート);(b)カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート;(c)α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどのヒドロキシ分岐アルキル(メタ)アクリレート;(d)二価カルボン酸(フタル酸など)と二価アルコール(プロピレングリコールなど)とから得られるポリエステルジオール(特に飽和ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
カルボン酸基を有する単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸などのモノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸などのジカルボン酸などが挙げられる。カルボン酸基を有する単量体としては、前記モノカルボン酸が好適に用いられる。
上述した反応性基含有単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、グラフト部100重量%中、反応性基含有単量体に由来する構成単位を、0.5~90重量%含むことが好ましく、1~50重量%含むことがより好ましく、2~35重量%含むことがさらに好ましく、3~20重量%含むことが特に好ましい。グラフト部が、グラフト部100重量%中、反応性基含有単量体に由来する構成単位を、(a)0.5重量%以上含まれている場合、得られる粒子含有組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、(b)90重量%以下含まれている場合、得られる粒子含有組成物は、十分な耐衝撃性を有する硬化物を提供することができ、かつ、当該粒子含有組成物の貯蔵安定性が良好となるという利点を有する。
反応性基含有単量体に由来する構成単位は、グラフト部に含まれることが好ましく、グラフト部にのみ含まれることがより好ましい。
グラフト部は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。グラフト部が、多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合、(a)粒子含有組成物中において重合体微粒子の膨潤を防止することができる、(b)粒子含有組成物の粘度が低くなるため、粒子含有組成物の取扱い性が良好となる傾向がある、および(c)熱硬化性樹脂中の重合体微粒子の分散性が向上する、などの利点を有する。
グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含まない場合、グラフト部が多官能性単量体に由来する構成単位を含む場合と比較して、得られる粒子含有組成物は、靱性および耐衝撃性により優れる硬化物または成形体を提供することができる。
グラフト部の重合に用いられ得る多官能性単量体としては、上述の多官能性単量体と同じ単量体が挙げられる。それら多官能性単量体の中でも、グラフト部の重合に好ましく用いられ得る多官能性単量体としては、アリルメタクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら多官能性単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
グラフト部は、グラフト部100重量%中、多官能性単量体に由来する構成単位を、1~20重量%含むことが好ましく、5~15重量%含むことがより好ましい。
グラフト部の重合において、上述した単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト部は、構成単位として、上述した単量体に由来する構成単位の他に、他の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
また、グラフト部は、弾性体に対してグラフト結合された重合体であることが好ましい。
(グラフト部のグラフト率)
本発明の一実施形態において、重合体微粒子は、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を有していてもよい。本明細書において、グラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない重合体を、非グラフト重合体とも称する。当該非グラフト重合体も、本発明の一実施形態に係る重合体微粒子の一部を構成するものとする。前記非グラフト重合体は、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合していないものともいえる。
本明細書において、グラフト部の重合において製造された重合体のうち、弾性体に対してグラフト結合された重合体、すなわちグラフト部の割合を、グラフト率と称する。グラフト率は、(グラフト部の重量)/(グラフト部の重量)+(非グラフト重合体の重量)×100で表される値、ともいえる。
グラフト部のグラフト率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。グラフト率が70%以上である場合、粒子含有組成物の粘度が高くなりすぎないという利点を有する。
本明細書において、グラフト率の算出方法は下記の通りである。先ず、重合体微粒子を含有する水性ラテックスを得、次に、当該水性ラテックスから、重合体微粒子の粉体を得る。水性ラテックスから重合体微粒子の粉体を得る方法としては、具体的には、(i)前記水性ラテックス中の重合体微粒子を凝析し、(ii)得られる凝析物を脱水し、(iii)さらに凝析物を乾燥することにより、重合体微粒子の粉体を得る方法が挙げられる。次いで、重合体微粒子の粉体2gをメチルエチルケトン50mLに溶解する。その後、得られたMEK溶解物を、MEKに可溶な成分(MEK可溶分)とMEKに不溶な成分(MEK不溶分)とに分離する。具体的には、遠心分離機(日立工機(株)社製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間、得られたMEK溶解物を遠心分離に供し、当該溶解物を、MEK可溶分とMEK不溶分とに分離する。ここで、遠心分離作業は合計3セット実施する。次に、濃縮したMEK可溶分20mlをメタノール200mlと混合し、塩化カルシウム0.01gを水に溶かした塩化カルシウム水溶液を添加し1時間攪拌した。その後、メタノール可溶分とメタノール不溶分に分離し、メタノール不溶分の重量をフリー重合体(FP)量とした。
次式よりグラフト率を算出する。
グラフト率(%)=100-[(FP量)/{(FP量)+(MEK不溶分の重量)}]/(グラフト部の重合体の重量)×10000。
なお、グラフト部以外の重合体の重量は、グラフト部以外の重合体までを構成する単量体の仕込み量である。グラフト部以外の重合体は、例えば弾性体である。また、重合体微粒子が後述する表面架橋重合体を含む場合、グラフト部以外の重合体は、弾性体および表面架橋重合体の両方を含む。グラフト部の重合体の重量は、グラフト部の重合体を構成する単量体の仕込み量である。また、グラフト率の算出において、重合体微粒子を凝析する方法は特に限定されず、溶剤を用いる方法、凝析剤を用いる方法、水性ラテックスを噴霧する方法などが用いられ得る。
(グラフト部の変形例)
本発明の一実施形態において、グラフト部は、同一の組成の構成単位を有する1種のグラフト部のみからなってもよい。本発明の一実施形態において、グラフト部は、それぞれ異なる組成の構成単位を有する複数種のグラフト部からなってもよい。
本発明の一実施形態において、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合について説明する。この場合、複数種のグラフト部のそれぞれを、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nとする(nは2以上の整数)。グラフト部は、それぞれ別々に重合されたグラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nを混合して得られる混合物を含んでいてもよい。グラフト部は、グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nを多段重合して得られる重合体を含んでいてもよい。複数種のグラフト部を多段重合して得られる重合体を、多段重合グラフト部とも称する。多段重合グラフト部の製造方法については、後に詳述する。
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、これら複数種のグラフト部の全てが弾性体に対してグラフト結合されていなくてもよい。少なくとも1種のグラフト部の少なくとも一部が弾性体に対してグラフト結合されていればよく、その他の種(その他の複数種)のグラフト部は、弾性体に対してグラフト結合されているグラフト部にグラフト結合されていてもよい。また、グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部と同じ構成を有する重合体であり、かつ弾性体に対してグラフト結合されていない複数種の重合体(複数種の非グラフト重合体)を有していてもよい。
グラフト部1、グラフト部2、・・・、およびグラフト部nからなる多段重合グラフト部について説明する。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nは、グラフト部n-1の少なくとも一部を被覆し得るか、またはグラフト部n-1の全体を被覆し得る。当該多段重合グラフト部において、グラフト部nの一部はグラフト部n-1の内側に入り込んでいることもある。
多段重合グラフト部において、複数のグラフト部のそれぞれが、層構造を有していてもよい。例えば、多段重合グラフト部が、グラフト部1、グラフト部2、およびグラフト部3からなる場合、グラフト部1をグラフト部における最内層とし、グラフト部1の外側にグラフト部2の層が存在し、さらにグラフト部2の層の外側にグラフト部3の層が最外層として存在する態様も、本発明の一態様である。このように、複数のグラフト部のそれぞれが層構造を有する多段重合グラフト部は、多層グラフト部ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、グラフト部は、複数種のグラフト部の混合物、多段重合グラフト部および/または多層グラフト部を含んでいてもよい。
重合体微粒子の製造において弾性体とグラフト部とがこの順で重合される場合、得られる重合体微粒子において、グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆し得る。弾性体とグラフト部とがこの順で重合されるとは、換言すれば、弾性体とグラフト部とが多段重合されるともいえる。弾性体とグラフト部とを多段重合して得られる重合体微粒子は、多段重合体ともいえる。
重合体微粒子が多段重合体である場合、グラフト部は弾性体の少なくとも一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。重合体微粒子が多段重合体である場合、グラフト部の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。
重合体微粒子が多段重合体である場合、弾性体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層とも称する。)とし、弾性体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層とも称する。)として存在する態様も、本発明の一態様である。弾性体をコア層とし、グラフト部をシェル層とする構造はコアシェル構造ともいえる。このように、弾性体およびグラフト部が層構造(コアシェル構造)を有する重合体微粒子は、多層重合体またはコアシェル重合体ともいえる。すなわち、本発明の一実施形態において、重合体微粒子は、多段重合体であってもよく、かつ/または、多層重合体もしくはコアシェル重合体であってもよい。ただし、グラフト部を有している限り、重合体微粒子は前記構成に制限されるわけではない。
グラフト部の少なくとも一部分は、弾性体の少なくとも一部分を被覆していることが好ましい。換言すれば、グラフト部の少なくとも一部分は、重合体微粒子の最も外側に存在することが好ましい。
(表面架橋重合体)
重合体微粒子は、弾性体、および、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部以外に、表面架橋重合体を有することが好ましい。前記構成によると、(a)重合体微粒子の製造において、耐ブロッキング性を改善することができるとともに、(b)熱硬化性樹脂中の重合体微粒子の分散性がより良好となる利点を有する。これらの理由としては、特に限定されないが、以下のように推測され得る:表面架橋重合体が弾性体の少なくとも一部を被覆することにより、重合体微粒子の弾性体部分の露出が減り、その結果、弾性体同士が引っ付きにくくなるため、重合体微粒子の分散性が向上する。
重合体微粒子が弾性体およびグラフト部に加えて、さらに表面架橋重合体を有する場合、さらに以下の効果も有し得る:(a)本粒子含有組成物の粘度を低下させる効果、(b)弾性体における架橋密度を上げる効果、および(c)グラフト部のグラフト効率を高める効果。弾性体における架橋密度とは、弾性体全体における架橋構造の数の程度を意味する。
表面架橋重合体は、構成単位として、多官能性単量体に由来する構成単位を30~100重量%、およびその他のビニル系単量体に由来する構成単位を0~70重量%、合計100重量%含む重合体からなる。
表面架橋重合体の重合に用いられ得る多官能性単量体としては、上述の多官能性単量体と同じ単量体が挙げられる。それら多官能性単量体の中でも、表面架橋重合体の重合に好ましく用いられ得る多官能性単量体としては、アリルメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えばジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールなど)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、およびポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類が挙げられる。これら多官能性単量体は、1種類のみが用いられてもよく、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
重合体微粒子は、ゴム含有グラフト共重合体の重合とは独立して重合された表面架橋重合体を含んでいてもよく、または、ゴム含有グラフト共重合体と共に重合された表面架橋重合体を含んでいてもよい。重合体微粒子は、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体であってもよい。これらいずれの態様においても、表面架橋重合体は弾性体の少なくとも一部を被覆し得る。
表面架橋重合体は、弾性体の一部とみなすこともできる。重合体微粒子が表面架橋重合体を含む場合、グラフト部は、(a)表面架橋重合体以外の弾性体に対してグラフト結合されていてもよく、(b)表面架橋重合体に対してグラフト結合されていてもよく、(c)表面架橋重合体以外の弾性体および表面架橋重合体の両方に対してグラフト結合されていてもよい。重合体微粒子が表面架橋重合体を含む場合、上述した弾性体の体積平均粒子径とは、表面架橋重合体を含む弾性体の体積平均粒子径を意図する。
重合体微粒子が、弾性体と表面架橋重合体とグラフト部とをこの順に多段重合して得られる多段重合体である場合(場合D)について説明する。場合Dにおいて、表面架橋重合体は、弾性体の一部を被覆し得るか、または弾性体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、表面架橋重合体の一部は弾性体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、グラフト部は、表面架橋重合体の一部を被覆し得るか、または表面架橋重合体の全体を被覆し得る。場合Dにおいて、グラフト部の一部は表面架橋重合体の内側に入り込んでいることもある。場合Dにおいて、弾性体、表面架橋重合体およびグラフト部が、層構造を有していてもよい。例えば、弾性体を最内層(コア層)とし、弾性体の外側に表面架橋重合体の層が中間層として存在し、表面架橋重合体の外側にグラフト部の層が最外層(シェル層)として存在する態様も、本発明の一態様である。
(重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv))
重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)は、所望の粘度を有し、かつ高度に安定した粒子含有組成物を得ることができることから、10μm以下であることが好ましく、0.05~10μmであることが好ましく、0.05~8μmであることがより好ましく、0.05~6μmであることがより好ましく、0.05~4μmであることがより好ましく、0.05~2μmであることがより好ましく、0.05~1μmであることがより好ましく、0.1~0.8μmであることがより好ましい。重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)は、熱硬化性樹脂中の重合体微粒子の分散性が良好となることから、0.1~0.5μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において、「重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)」とは、特に言及する場合を除き、重合体微粒子の1次粒子の体積平均粒子径を意図する。重合体微粒子の体積平均粒子径は、重合体微粒子を含む水性ラテックス(例えば第一の溶液)を試料として、動的光散乱式粒子径分布測定装置などを用いて、測定することができる。重合体微粒子の体積平均粒子径については、下記実施例にて詳述する。重合体微粒子の体積平均粒子径は、粒子含有組成物の硬化物または成形体を切断し、切断面を電子顕微鏡などを用いて撮像し、得られた撮像データ(撮像画像)を用いて測定することもできる。
熱硬化性樹脂中における重合体微粒子の粒子径の個数分布は、低粘度であり取り扱い易い粒子含有組成物が得られることから、体積平均粒子径の0.5倍以上1倍以下の半値幅を有することが好ましい。
(重合体微粒子のガラス転移温度)
優れた靱性を有する硬化物または成形体が得られることから、重合体微粒子のTgは、0℃以下であることが好ましく、-20℃以下がより好ましく、-40℃以下が更に好ましく、-60℃以下であることが特に好ましい。得られる硬化物または成形体の弾性率(剛性)の低下を抑制することができる、すなわち十分な弾性率(剛性)を有する硬化物または成形体が得られることから、重合体微粒子のTgは、0℃よりも大きいことが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましく、120℃以上であることが最も好ましい。
重合体微粒子のTgは、重合体微粒子に含まれる、弾性体および/またはグラフト部の各々に含まれる構成単位の組成などによって、決定され得る。換言すれば、重合体微粒子を製造(重合)するときに使用する単量体の組成を変化させることにより、得られる重合体微粒子のTgを調整することができる。
(重合体微粒子の製造方法)
重合体微粒子は、任意の重合体を重合した後、当該重合体の存在下にて重合体に対してグラフト部を構成する重合体をグラフト重合することによって、製造できる。以下、弾性体を重合した後、弾性体の存在下にて弾性体に対してグラフト部を構成する重合体をグラフト重合することによって、重合体微粒子を製造する場合を例に挙げて、重合体微粒子の製造方法の一例を説明する。
重合体微粒子は、公知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができる。具体的には、重合体微粒子における弾性体の重合、グラフト部の重合(グラフト重合)、表面架橋重合体の重合は、公知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができる。これらの中でも特に、(a)重合体微粒子の組成設計が容易である、(b)工業生産が容易である、および(c)本粒子含有組成物の製造に好適に用いられ得る第一の溶液としての重合体微粒子の水性ラテックスが容易に得られる、ことから、重合体微粒子の製造方法としては、乳化重合が好ましい。以下、重合体微粒子に含まれ得る弾性体、グラフト部、および任意の構成である表面架橋重合体の製造方法について、説明する。
(弾性体の製造方法)
弾性体が、ジエン系ゴムおよび(メタ)アクリレート系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種以上を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2005/028546号公報に記載の方法を用いることができる。
弾性体が、ポリシロキサンゴム系弾性体を含む場合を考える。この場合、弾性体は、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などの方法により製造することができ、その製造方法としては、例えばWO2006/070664号公報に記載の方法を用いることができる。
弾性体が複数種の弾性体(例えば弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体n)からなる場合の、弾性体の製造方法について説明する。この場合、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されることにより、複数種の弾性体を有する弾性体が製造されてもよい。または、弾性体1、弾性体2、・・・、弾性体nは、それぞれ順に多段重合され、複数種の弾性体を有する弾性体が製造されてもよい。
弾性体の多段重合について、具体的に説明する。例えば、(1)弾性体1を重合して弾性体1を得る;(2)次いで弾性体1の存在下にて弾性体2を重合して2段弾性体1+2を得る;(3)次いで弾性体1+2の存在下にて弾性体3を重合して3段弾性体1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、弾性体1+2+・・・+(n-1)の存在下にて弾性体nを重合して多段重合弾性体1+2+・・・+nを得る。
(グラフト部の製造方法)
グラフト部は、例えば、グラフト部の形成に用いる単量体を、公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。(a)弾性体、または(b)弾性体および表面架橋重合体を含む重合体微粒子前駆体、を水性ラテックスとして得た場合には、グラフト部の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。グラフト部は、例えば、WO2005/028546号公報に記載の方法に従って製造することができる。
グラフト部が複数種のグラフト部(例えばグラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部n)からなる場合の、グラフト部の製造方法について説明する。この場合、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ別々に上述の方法により重合され、その後混合されることにより、複数種のグラフト部を有するグラフト部が製造されてもよい。または、グラフト部1、グラフト部2、・・・、グラフト部nは、それぞれ順に多段重合され、複数種のグラフト部を有するグラフト部が製造されてもよい。
グラフト部の多段重合について、具体的に説明する。例えば、(1)グラフト部1を重合してグラフト部1を得る;(2)次いでグラフト部1の存在下にてグラフト部2を重合して2段グラフト部1+2を得る;(3)次いでグラフト部1+2の存在下にてグラフト部3を重合して3段グラフト部1+2+3を得る;(4)以下、同様に行った後、グラフト部1+2+・・・+(n-1)の存在下にてグラフト部nを重合して多段重合グラフト部1+2+・・・+nを得る。
グラフト部が複数種のグラフト部からなる場合、複数種のグラフト部を有するグラフト部を重合した後、弾性体にそれらグラフト部をグラフト重合して、重合体微粒子を製造してもよい。弾性体の存在下にて、弾性体に対して複数種のグラフト部構成する複数種の重合体を順に多段グラフト重合して、重合体微粒子を製造してもよい。
(表面架橋重合体の製造方法)
表面架橋重合体は、表面架橋重合体の形成に用いる単量体を公知のラジカル重合により重合することによって形成することができる。弾性体を水性ラテックスとして得た場合には、表面架橋重合体の重合は乳化重合法により行うことが好ましい。
重合体微粒子の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子の製造には、公知の乳化剤(分散剤)を用いることができる。
重合体微粒子の製造方法として、乳化重合法を採用する場合、重合体微粒子の製造には、熱分解型開始剤を用いることができる。前記熱分解型開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムなどの公知の開始剤を挙げることができる。
重合体微粒子の製造には、レドックス型開始剤を使用することもできる。前記レドックス型開始剤は、(a)有機過酸化物および無機過酸化物などの過酸化物と、(b)必要に応じてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤、および必要に応じて硫酸鉄(II)などの遷移金属塩、さらに必要に応じてエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤、さらに必要に応じてピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物などと、を併用した開始剤である。前記有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、およびt-ヘキシルパーオキサイドなどが挙げられる。前記無機過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定することができるようになる。そのため、レドックス型開始剤を用いることが好ましい。レドックス型開始剤の中でも、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、およびt-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、並びに、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩およびキレート剤などの使用量は、公知の範囲で用いることができる。
弾性体、グラフト部または表面架橋重合体に架橋構造を導入する目的で、弾性体、グラフト部または表面架橋重合体の重合に多官能性単量体を使用する場合、公知の連鎖移動剤を公知の使用量の範囲で用いることができる。連鎖移動剤を使用することにより、得られる弾性体、グラフト部もしくは表面架橋重合体の分子量および/または架橋度を容易に調節することができる。
重合体微粒子の製造には、上述した成分に加えて、さらに界面活性剤を用いることができる。前記界面活性剤の種類および使用量は、公知の範囲である。
重合体微粒子の製造において、重合における重合温度、圧力、および脱酸素などの条件は、公知の範囲のものが適用することができる。
(セルロースナノファイバー)
粒子(A)は、セルロースナノファイバーを含むことが好ましく、セルロースナノファイバーであることがより好ましい。当該構成によると、得られる粒子含有組成物は、(a)成形加工性に優れるものとなり、かつ(b)強度に優れる硬化物または成形体を提供できる。
植物の細胞壁の中では、幅4nm程のセルロースミクロフィブリル(シングルセルロースナノファイバー)が最小単位として存在しており、このセルロースミクロフィブリルが集まってセルロース繊維を構成し、植物の骨格を形成している。本明細書における「セルロースナノファイバー」とは、セルロース繊維を含む植物材料(例えば、木材パルプ等)を処理して、繊維をナノサイズレベルまで解きほぐして(換言すれば、解繊処理して)得られたナノファイバーを意図する。セルロースナノファイバーは、「CNF」と略記される場合もある。
CNFの繊維径としては特に限定されないが、繊維径の平均値が、通常約4nm~約200nmであり、4nm~200nmが好ましく、4nm~150nmがより好ましく、4nm~100nmがより好ましい。CNFの繊維径の平均値(平均繊維径、平均結晶幅、平均結晶長ともいう。)とは、電子顕微鏡の視野内のセルロースナノファイバーの少なくとも50本以上について測定して得られた値の平均値である。
CNFの繊維長としては特に限定されないが、通常約5μm以上である。CNFの比表面積としては特に限定されないが、70m2/g~300m2/gが好ましく、70m2/g~250m2/gがより好ましく、100m2/g~200m2/gがさらに好ましい。
CNFの原材料として用いられる植物繊維としては特に限定されない。植物繊維としては、例えば、(a)木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、布などの天然植物原料から得られるパルプ、並びに(b)紙、レーヨン、セロファンなどの再生セルロース繊維、などが挙げられる。木材としては、特に限定されないが、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシアなどが挙げられる。紙としては、特に限定されないが、脱墨古紙、段ボール古紙、雑誌、コピー用紙、などが挙げられる。植物繊維は、上述した1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
植物繊維を解繊し、CNFを調製する方法としては、パルプなどのセルロース繊維含有材料を解繊する方法が挙げられる。解繊方法としては、例えば、セルロース繊維含有材料を含む水懸濁液またはスラリーを、機械的な摩砕、または叩解することにより解繊する方法が使用できる。機械的な摩砕または叩解には、リファイナー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、一軸または多軸混練機(好ましくは二軸混練機)、ビーズミルなどを使用できる。
CNFは、CNFを構成するセルロースが有する水酸基(糖鎖の水酸基)の一部または全部が、化学的に変性されていてもよい。CNFを構成するセルロースが有する水酸基が化学的に変性されているCNFは、変性セルロースと称される場合もある。すなわち、粒子(A)は変性ナノセルロースを含んでいてもよく、変性ナノセルロースであってもよい。
変性ナノセルロースとしては、具体的には、アシル基、アルキル基での修飾によってCNFの表面に存在する水酸基が疎水化された疎水化CNF;アミノ基を有するシランカップリング剤、グリシジルトリアルキルアンモニウムハライドまたはそのハロヒドリン型化合物等の修飾により、CNFの表面に存在する水酸基がカチオン変性された変性CNF;無水コハク酸、アルキル基またはアルケニル基を有する無水コハク酸などのような環状酸無水物によるモノエステル化、カルボキシル基を有するシランカップリング剤による修飾等により、CNFの表面に存在する水酸基がアニオン変性された変性CNF等を使用することができる。
これら変性ナノセルロースのうち、セルロースの有する水酸基がエステル化されている変性ナノセルロースが好ましい。このような変性ナノセルロースとしては、セルロースの有する水酸基が、飽和脂肪酸、不飽和カルボン酸、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸、ヘキサ不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸、アミノ酸、窒素原子上にカルボキシアルキル基を有するマレイミド誘導体、および、窒素原子上にカルボキシアルキル基を有するフタルイミド誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物のカルボキシル基から水素原子を除いた残基によって置換されている変性ナノセルロースが好ましい。
(2-7-3.第一の溶液/第二の溶液13)
第一の溶液および第二の溶液13は、それぞれ、粒子(A)および液状物を含む。第二の溶液13中の粒子(A)の含有量が第一の溶液中の粒子(A)の含有量よりも少ないことを除き、第一の溶液および第二の溶液13は同じ態様である。
第一の溶液および第二の溶液13の好ましい態様としては、それぞれ、(a)粒子(A)として重合体微粒子を含み、かつ液状物として水を含む、ラテックス、(b)粒子(A)としてセルロースナノファイバーを含み、かつ液状物として水を含む、スラリー、(c)粒子(A)として五酸化アンチモンを含み、かつ液状物として水を含む、ゾル、(d)粒子(A)として金粒子を含み、かつ液状物として水を含む、コロイド溶液、(e)粒子(A)として酸化ジルコニウムを含み、かつ液状物として水を含む、スラリー、(f)粒子(A)として酸化亜鉛を含み、かつ液状物として水を含む、スラリー、(g)粒子(A)としてカーボンブラックを含み、かつ液状物として水を含む、スラリー、および(h)粒子(A)としてカーボンナノチューブを含み、かつ液状物として水を含む、スラリーが挙げられる。
本発明の一実施形態において、前記混合工程1の前段階として、第一の溶液の製造工程を含んでいてもよい。第一の溶液が上述したラテックスである場合、第一の溶液の製造工程としては、例えば、上述した重合体微粒子の製造方法を好適に挙げることができる。
第一の溶液および第二の溶液13は、それぞれ、粒子(A)および液状物以外の成分を含んでいてもよい。第一の溶液および第二の溶液13に含まれ得る、粒子(A)および液状物以外の成分としては、乳化剤、塩、酸、塩基、イオン、コロイド、粒子(A)以外の粒子、等が挙げられる。
第一の溶液中において、粒子(A)は均一に分散していることが好ましい。当該構成によると、粒子移動工程2において、第一の溶液中の粒子(A)を一定の割合で第一の組成物中へ移動させることができる。その結果、粒子移動工程2で得られる第二の溶液13および第二の組成物14の粘度を容易にコントロールできる、という利点を有する。
(2-7-4.樹脂(B))
樹脂(B)としては、有機重合体である限り、特に限定されない。樹脂(B)は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との任意の組み合わせであってもよい。
樹脂(B)は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、構成単位としてエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位を含む樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種を含むことがより好ましい。当該構成によると、得られる粒子含有組成物が提供する硬化物または成形体は、(a)樹脂(B)が有する耐熱性および剛性と同程度の耐熱性および剛性を有し、かつ(b)破壊靭性、接着強度、および面衝撃性により優れる。「アミノ-ホルムアルデヒド樹脂」は、「メラミン樹脂」と称される場合もある。
(エチレン性不飽和単量体)
エチレン性不飽和単量体としては、分子中にエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、α-アルキルアクリル酸、α-アルキルアクリル酸エステル、β-アルキルアクリル酸、β-アルキルアクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステル、酢酸ビニル、ビニルエステル、不飽和エステル、多不飽和カルボン酸、多不飽和エステル、マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸およびアセトキシスチレンが挙げられる。これらは1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ結合を少なくとも1個有するものであれば特に限定されない。
エポキシ樹脂の具体例としては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(もしくはF)型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、ポリブタジエンもしくはNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテルなどの難燃型エポキシ樹脂、p-オキシ安息香酸グリシジルエーテルエステル型エポキシ樹脂、m-アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ樹脂、各種脂環式エポキシ樹脂、多価アルコールのグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、石油樹脂などのような不飽和重合体のエポキシ化物、および含アミノグリシジルエーテル樹脂、などが挙げられる。前記多価アルコールとしては、N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、およびグリセリンなどが挙げられる。エポキシ樹脂としては、前記のエポキシ樹脂にビスフェノールA(もしくはF)類、または多塩基酸類などを付加反応させて得られるエポキシ化合物も挙げられる。エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではなく、一般に使用されているエポキシ樹脂が使用され得る。これらのエポキシ樹脂は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上述したエポキシ樹脂の中でもエポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、粒子含有組成物の硬化において、反応性が高く、かつ得られた硬化物が3次元的網目を作りやすいなどの点から好ましい。また、エポキシ樹脂としては、経済性および入手のし易さに優れることから、エポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するエポキシ樹脂の中でもビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とするものが好ましい。
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。フェノール類としては特に限定されないが、例えば、フェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、キシレノール、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール、パラフェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、およびレゾルシンなどのフェノール類が挙げられる。特に好ましいフェノール類としては、フェノール、およびクレゾールが挙げられる。
アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびアクロレインなど、並びにこれらの混合物が挙げられる。アルデヒド類としては、上述したアルデヒド類の発生源となる物質、またはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。アルデヒド類としては、フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの操作が容易であることから、ホルムアルデヒドが好ましい。
フェノール類とアルデヒド類とを反応させるときの、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)(以下、反応モル比とも称する)は特に限定されない。反応において酸触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~1.0であることが好ましく、0.5~0.8であることがより好ましい。反応においてアルカリ触媒を使用する場合、前記反応モル比(F/P)は0.4~4.0であることが好ましく、0.8~2.5であることがより好ましい。反応モル比が前記下限値以上である場合、歩留まりが低くなりすぎず、また、得られるフェノール樹脂の分子量が小さくなる虞がない。一方、反応モル比が前記上限値以下である場合、フェノール樹脂の分子量が大きくなりすぎずかつ軟化点が高くなりすぎないため、加熱時に充分な流動性を得られる。また、反応モル比が前記上限値以下である場合、分子量のコントロールが容易であり、反応条件に起因したゲル化、もしくは部分的なゲル化物が生じる虞がない。
(ポリオール樹脂)
ポリオール樹脂は、末端に活性水素を2個以上有する化合物であり、分子量50~20,000程度の2官能以上のポリオールである。ポリオール樹脂としては、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類、ポリエーテル型ポリオール類、ポリエステル型ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、およびアクリルポリオール類などを挙げることができる。
脂肪族アルコールは、二価アルコール、または三価以上のアルコール(三価アルコール、四価アルコールなど)のいずれであってもよい。二価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのアルキレングリコール類(特に炭素数が1~6程度のアルキレングリコール類)、当該アルキレングリコール類の2分子以上(例えば、2~6分子程度)の脱水縮合物(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど)などが挙げられる。三価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオールなど(特に炭素数が3~10程度の三価アルコール)が挙げられる。四価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。また、単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類が挙げられる。
芳香族アルコールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類;ジヒドロキシビフェニルなどのビフェニル類;ハイドロキノン、フェノールホルムアルデヒド縮合物などの多価フェノール類;ナフタレンジオールなどが挙げられる。
ポリエーテル型ポリオールとしては、例えば、活性水素を含有する開始剤、1種類または2種以上の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどを開環重合して得られるランダム共重合体またはブロック共重合体など、およびこれら共重合体の混合物などが挙げられる。ポリエーテル型ポリオールの開環重合に用いられる、活性水素を含有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAなどのジオール類;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類;単糖、オリゴ糖、多糖などの糖類;ソルビトール;アンモニア、エチレンジアミン、尿素、モノメチルジエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミンなどのアミン類;などが挙げられる。
ポリエステル型ポリオールとしては、例えば(a)マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、アゼライン酸などの多塩基酸および/またはその酸無水物と、(b)エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-へキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールなどの多価アルコールとを、エステル化触媒の存在下、150~270℃の温度範囲で重縮合させて得られる重合体が挙げられる。さらに、(a)ポリエステル型ポリオールとしては、ε-カプロラクトン、バレロラクトンなどの開環重合物、および、(b)ポリカーボネートジオール、ヒマシ油などの活性水素を2個以上有する活性水素化合物、などが挙げられる。
ポリオレフィン型ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、およびそれらの水添物などが挙げられる。
アクリルポリオールとしては、例えば、(a)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、およびビニルフェノールなどの水酸基含有単量体と、(b)n-ブチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの汎用単量体との共重合体、並びにそれら共重合体の混合物などが挙げられる。
これらポリオール樹脂の中でも、得られる粒子含有組成物の粘度が低く作業性に優れ、当該粒子含有組成物が硬度と靱性とのバランスに優れた硬化物または成形体を提供できることから、ポリエーテル型ポリオールが好ましい。また、これらポリオール樹脂の中でも、得られる粒子含有組成物が接着性に優れる硬化物または成形体を提供できることから、ポリエステル型ポリオールが好ましい。
(アミノ-ホルムアルデヒド樹脂)
アミノ-ホルムアルデヒド樹脂は、アミノ化合物とアルデヒド類とをアルカリ性触媒下で反応させて得られる化合物であれば特に限定されない。前記アミノ化合物としては、メラミン;グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどの6-置換グアナミン類;CTUグアナミン(3,9-ビス[2-(3,5-ジアミノ-2,4,6-トリアザフェニル)エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、CMTUグアナミン(3,9-ビス[(3,5-ジアミノ-2,4,6-卜リアザフェニル)メチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)などのアミン置換トリアジン化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素などの尿素類を挙げることができる。また前記アミノ化合物としては、メラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、および/またはフェニル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,998,573号明細書(対応日本公開公報:特開平9-143238号)に記載されている。)、並びに、メラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシアルキル基、および/またはアミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物(米国特許第5,322,915号明細書(対応日本公開公報:特開平5-202157号)に記載されている。)なども使用することができる。前記アミノ化合物としては、上述した化合物中でも、工業的に生産されており安価であることから、多官能性アミノ化合物である、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、およびベンゾグアナミンが好ましく、メラミンが特に好ましい。上述したアミノ化合物は、1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。またこれらアミノ化合物に加えて、(a)フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、およびピロガロールなどのフェノール類、並びに(b)アニリン、などを追加して用いても良い。
前記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、およびフルフラールなどが挙げられる。前記アルデヒド類としては、安価であり、先に挙げたアミノ化合物との反応性が良いことから、ホルムアルデヒド、およびパラホルムアルデヒドが好ましい。アミノ-ホルムアルデヒド樹脂の製造において、アルデヒド類は、アミノ化合物1モルに対して、有効アルデヒド基当たり1.1~6.0モルを使用することが好ましく、1.2~4.0モルを使用することが特に好ましい。
樹脂(B)は、熱硬化性樹脂として、構成単位として芳香族ポリエステル原料に由来する構成単位を含む樹脂を含んでいてもよい。
(芳香族ポリエステル原料)
芳香族ポリエステル原料としては、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸誘導体、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物などのラジカル重合性単量体、ジメチルテレフタレート、アルキレングリコールなどが挙げられる。
上述した熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
樹脂(B)における熱可塑性樹脂としては、例えば、構成単位として、芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む重合体などが挙げられる。芳香族ビニル単量体、ビニルシアン単量体、および(メタ)アクリレート単量体の各々は、(重合体微粒子)の(グラフト部)の項の記載された各単量体と同じ単量体が挙げられる。
樹脂(B)における熱可塑性樹脂としては、アクリル系重合体、ビニル系共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリウレタンおよびポリ酢酸ビニル等も挙げられる。
アクリル系重合体は、アクリル酸エステル単量体からなる構成単位を主成分とした重合体である。前記アクリル酸エステル単量体は、エステル部分の炭素数が1~20であることが好ましい。また、アクリル系重合体は、(a)アクリル酸エステル単量体の単独重合体、(b)アクリル酸エステル単量体と、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニルなどの単量体またはビニル系共重合体との共重合体(以下、「共重合体C」とも称する。)、などが挙げられる。
アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEA)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2HEMA)、アクリル酸ブチル(BA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)メタクリル酸n-ブチル(nBMA)、メタクリル酸イソブチル(iBMA)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリシクロデシニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキスエチル、アクリル酸2-メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸クロロエチル、アクリル酸トリフルオロエチル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。これらは、1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
共重合体Cにおいて、(a)アクリル酸エステル単量体に由来する構成単位(構成単位(xa))と、(b)不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニルなどの単量体またはビニル系共重合体に由来する構成単位(構成単位(xb))と、の比率は、構成単位(xa)は50重量%~100重量%、構成単位(xb)は0重量%~50重量%が好ましい。
アクリル系重合体は、アクリル酸ブチル(BA)を、50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことが更に好ましく、80重量%以上含むことが特に好ましく、90重量%以上含むことが最も好ましい。
ビニル系共重合体は、芳香族ビニル系単量体、シアン化系ビニル単量体および不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体からなる群から選択される1種以上を含有するビニル系単量体の混合物を共重合して得られる。当該ビニル系単量体の混合物は、上述した単量体と共重合可能なその他の単量体(以下、「単量体D」とも称する。)をさらに含有してもよい。
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、などが挙げられる。これらのビニル系単量体は1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、屈折率を容易に大きくすることができるという観点から、スチレンが好ましい。
前記不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、特に制限されない。例えば、炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが好ましい。炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルは、さらに水酸基またはハロゲン基などの置換基を有していてもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、などが挙げられる。これらは1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
炭素数1~6のアルコールと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらは1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、単量体Dは、前記芳香族ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、シアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。単量体Dとしては、具体的には、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体、酢酸ビニル、アクリル酸エステル単量体などが挙げられる。これらは1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
不飽和脂肪酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸、などから選択され得る。
アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、から選択され得る。
マレイミド系単量体としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、から選択され得る。
前記共重合体Dの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、などが挙げられる。
また、必要により、重合開始剤を使用してもよい、重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸カリウム、などから1種以上が適宜選択され得る。重合開始剤の添加量は特に制限されない。
過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルイソプロピルカルボネート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオクテート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロへキサン、およびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでも、クメンハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロへキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロへキサンが特に好ましく用いられる。
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、1-t-ブチルアゾ-2-シアノブタン、および2-t-ブチルアゾ-2-シアノ-4-メトキシ-4-メチルペンタンなどが挙げられる。なかでも、1,1’-アゾビスシクロヘキサン-1-カルボニトリルが特に好ましく用いられる。
ビニル系共重合体の具体例としては、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、等が挙げられる。これらは1種類のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
上述した各熱硬化性樹脂は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
(樹脂(B)の物性)
樹脂(B)の形状としては特に限定されず、固体であってもよく、半固体(半液体)であってもよく、液体であってもよい。本明細書において、「液体」とは、50℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有する物質を意図する。換言すれば、本明細書において、50℃において1,000,000mPa・sより大きい粘度を有する物質を、半固体(半液体)または固体とする。樹脂(B)は、(a)粒子移動工程2では液体としてふるまい、すなわち1,000,000mPa・s以下の粘度を有する物質としてふるまい、(b)粒子移動工程2以外の工程では半固体(半液体)としてふるまい、すなわち1,000,000mPa・sより大きい粘度を有する物質としてふるまうか、または固体としてふるまってもよい。粒子移動工程2では、混合工程1で得られた第一の混合物11に熱が加えられる場合もあるため、粒子移動工程2と粒子移動工程2以外の工程で、樹脂(B)の温度が異なり、その結果、樹脂(B)の形状が変化する場合もある。
樹脂(B)は、液体であることが好ましく、すなわち50℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有することが好ましい。「樹脂(B)は50℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有する」とは、「50℃である樹脂(B)が1,000,000mPa・s以下の粘度を有する」と換言できる。樹脂(B)の粘度は、50℃において、50,000mPa・s以下であることがより好ましく、30,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、15,000mPa・s以下であることが特に好ましい。前記構成によると、樹脂(B)は流動性に優れるため、取り扱い(ハンドリング)が容易になるという利点を有する。
粒子(A)中に樹脂(B)が含浸し、含浸した樹脂(B)により粒子(A)同士の融着を防ぐことができることから、樹脂(B)は、50℃において20mPa・s以上の粘度を有する液体であることが好ましい。樹脂(B)は、50℃において、100mPa・s以上の粘度を有する液体であることがより好ましく、500mPa・s以上の粘度を有する液体であることがさらに好ましく、1000mPa・s以上の粘度を有する液体であることがよりさらに好ましく、1500mPa・s以上の粘度を有する液体であることが特に好ましい。
50℃において、樹脂(B)は液状物よりも大きい粘度を有することが好ましい。50℃における樹脂(B)の粘度は、50℃における液状物の粘度に5000mPa・sを加えた値以上であることが好ましく、10000mPa・sを加えた値以上であることがより好ましく、100000mPa・sを加えた値以上であることがさらに好ましく、1000000mPa・sを加えた値以上であることが特に好ましい。
樹脂(B)は、示差熱走査熱量測定(DSC)のサーモグラムが25℃以下の吸熱ピークを有する樹脂であることが好ましく、0℃以下の吸熱ピークを有する樹脂であることがより好ましい。
樹脂(B)は、液状物と相分離することが好ましい。樹脂(B)は、液状物と相溶しないことが好ましい。
(2-7-5.第一の組成物/第二の組成物14)
第一の組成物および第二の組成物14は、それぞれ、粒子(A)および樹脂(B)を含む。第二の組成物14中の粒子(A)の含有量が第一の組成物中の粒子(A)の含有量よりも多いことを除き、第一の組成物および第二の組成物14は同じ態様である。
第一の組成物および第二の組成物14の好ましい態様としては、それぞれ、(a)粒子(A)として重合体微粒子を含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、(b)粒子(A)としてセルロースナノファイバーを含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、(c)粒子(A)として酸化ジルコニウムを含み、かつ樹脂(B)としてウレタン樹脂を含む、ウレタン樹脂組成物、(d)粒子(A)として五酸化アンチモンを含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、(e)粒子(A)として金粒子を含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、(f)粒子(A)として酸化亜鉛を含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、(g)粒子(A)としてカーボンブラックを含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物、および(h)粒子(A)としてカーボンナノチューブを含み、かつ樹脂(B)としてエポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物が挙げられる。
本発明の一実施形態において、前記混合工程1の前段階として、第一の組成物の製造工程を含んでいてもよい。第一の組成物の製造工程としては、特に限定されない。第一の組成物の製造工程としては、例えば、上述した重合体微粒子の製造方法で得られた重合体微粒子の水性ラテックスから、重合体微粒子の粉体を得、得られた重合体微粒子の粉体を樹脂(B)と混合する工程を挙げることができる。また、第一の組成物の製造工程としては、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、樹脂(B)とを撹拌する工程、ニーダーで混練する工程、押出機で混練する工程、自転公転ミキサーで混合する工程、などを挙げることもできる。また、第一の組成物の製造工程としては、次のような方法も挙げられる:粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、樹脂(B)とを混合する混合工程と、前記第一の溶液中の前記粒子(A)を前記樹脂(B)中へ移動させることにより、前記第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液13と、前記樹脂(B)と前記粒子(A)とを含有する第一の組成物との混合物を得る粒子移動工程と、粒子移動工程から第二の溶液13と第一の組成物との混合物を取り出し、当該混合物を再度粒子移動工程に供給する循環工程とを有し、粒子移動工程と循環工程とをそれぞれ順に2回以上実施する方法。
第一の組成物および第二の組成物14は、それぞれ、粒子(A)および樹脂(B)以外の成分を含んでいてもよい。第一の組成物および第二の組成物14に含まれ得る、粒子(A)および樹脂(B)以外の成分としては、前記液状物、乳化剤、塩、酸、塩基、イオン、コロイド、粒子(A)以外の粒子、等が挙げられる。
(第二の組成物14の粘度と第二の溶液13の粘度との差)
本発明の一実施形態の分離工程3において、分離直後の第二の組成物14の粘度は、分離直後の第二の溶液13の粘度よりも高い。本発明の一実施形態の分離工程3において、分離直後の第二の組成物14の粘度と分離直後の第二の溶液13の粘度との差は、20mPa・s~10000000mPa・sであることが好ましく、100mPa・s~10000000mPa・sであることがより好ましく、1000mPa・s~5000000mPa・sであることがより好ましく、5000mPa・s~3000000mPa・sであることがさらに好ましく、10000mPa・s~1000000mPa・sであることが特に好ましい。本製造方法を複数回繰り返すほど、特に、粒子移動工程2を実施するほど、粒子移動工程2にて得られる第二の組成物14(または第n+1の組成物)と第二の溶液13(または第n+1の溶液)との粘度差は大きくなる。すなわち、本製造方法を複数回繰り返すほど、分離工程3において、分離直後の第二の組成物14(または第n+1の組成物)と分離直後の第二の溶液13(または第n+1の溶液)との粘度差は大きくなる。上述したように、従来技術では大きな粘度差を有する2種の物質(例えば、溶液および組成物)を一緒に合わせて輸送する、および/または、一緒に合わせて長時間攪拌する、等を行っていた。その結果、従来技術では、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができなかった。本製造方法では、粘度差の異なる第二の組成物14と第二の溶液13とをそれぞれ別々に輸送するため、分離直後の第二の組成物14(または第n+1の組成物)と分離直後の第二の溶液13(または第n+1の溶液)との粘度差が大きい場合であっても、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができる。
〔3.粒子含有組成物の製造システム〕
本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造システムは、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、前記粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する混合装置と、前記第一の溶液中の前記粒子(A)を前記第一の組成物中へ移動させることにより、前記第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液と、前記第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物との混合物を調製する粒子移動装置と、前記粒子移動装置で得られた混合物を、前記第二の溶液と前記第二の組成物とに分離する分離装置と、前記第二の溶液を輸送し、前記第二の溶液を前記混合装置に供給する溶液輸送装置と、前記第二の組成物を輸送し、前記第二の組成物を前記混合装置に供給する組成物輸送装置と、を備え、前記分離装置による、分離直後の前記第二の組成物の粘度は、分離直後の前記第二の溶液の粘度よりも高い、粒子含有組成物の製造システム。
「粒子含有組成物の製造システム」を、「製造システム」と称する場合もある。「本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造システム」を、「本製造システム」と称する場合もある。
本製造システムによれば、粒子含有量の多い粒子含有組成物を提供できる。
また、本製造システムによれば、樹脂(B)中で粒子(A)が均一に分散している粒子含有組成物を提供できる。本製造システムは、有機溶剤の使用を必須の構成としない。そのため、本製造システムは、環境負荷が小さいという利点も有する。本製造システムは、凝固剤等の塩の使用を必須の構成としない。そのため、本製造システムによれば、低夾雑物(低不純物)である粒子含有組成物を提供することができる。また、本製造システムによれば、第一の溶液が粒子(A)および液状物以外の物質(例えば乳化剤)を含んでいる場合であっても、第二の組成物への乳化剤等の巻き込みが少ないため、乳化剤由来物質等(不純物)の含有量が少ない粒子含有組成物を提供することができる。
以下、本製造システムに関する各態様について図1および図2を参照しながら説明するが、以下に詳説した事項以外は、適宜、〔2.粒子含有組成物の製造方法〕の記載を援用する。また、本製造システムに関する各態様について、〔2.粒子含有組成物の製造方法〕の記載における用語「工程」を用語「装置」へ置き換えて援用してもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造システムの概略構成を示す図である。図2に示される本製造システムは、混合装置21、粒子移動装置22、分離装置23、溶液保持装置24および組成物保持装置25を備える。混合装置21、粒子移動装置22および分離装置23がこの順で接続されている。混合装置21と粒子移動装置22との間は、第一の混合物輸送装置31によって接続されている。粒子移動装置22と分離装置23との間は、第二の混合物輸送装置32によって接続されている。分離装置23の後に、溶液保持装置24と組成物保持装置25とが、独立かつ並行して接続されている。溶液保持装置24および組成物保持装置25の後に混合装置21が接続されることにより、本製造システムは、上述した本製造方法を複数回実施できるように構成されている。分離装置23と溶液保持装置24との間は、溶液輸送装置33Aによって接続されており、溶液保持装置24と混合装置21との間は、溶液輸送装置33Bによって接続されている。分離装置23と組成物保持装置25との間は、組成物輸送装置34Aによって接続されており、組成物保持装置25と混合装置21との間は、組成物輸送装置34Bによって接続されている。
混合装置21は、粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する装置であり、すなわち混合工程1を実施するための装置である。混合装置21としては、混合工程1で用いられる装置を各種利用できる。
粒子移動装置22は、混合装置21で得られた第一の混合物11を使用して、第一の溶液中の粒子(A)を第一の組成物中へ移動させる装置であり、すなわち粒子移動工程2を実施するための装置である。粒子移動装置としては、粒子移動工程2で用いられる装置を各種利用できる。
第一の混合物輸送装置31は、混合装置21から粒子移動装置22へ第一の溶液と第一の組成物との混合物11(すなわち第一の混合物11)を輸送するための装置である。第一の混合物輸送装置31は必須の構成ではなく、換言すれば、第一の混合物輸送装置31を有していない製造システムも、本発明の一実施形態に含まれる。
第一の混合物輸送装置31としては、例えば輸送管(配管)およびポンプなどが挙げられる。第一の混合物輸送装置31の長さ、例えば輸送管の長さ、としては特に限定されないが、0.1m~300mであることが好ましく、0.3m~100mであることがより好ましく、0.3m~50mであることがより好ましく、0.3m~10mであることがより好ましく、0.3m~5mであることがより好ましく、0.3m~3mであることがさらに好ましく、0.3m~1mであることが特に好ましい。混合装置21から粒子移動装置22へ、第一の溶液のみならず第一の組成物も十分に輸送するために、第一の混合物11の輸送距離は、短いほど好ましい。第一の溶液の粘度と第一の組成物の粘度との差が大きい場合、第一の混合物11の輸送距離は、特に、短いほど好ましい。それ故に、第一の混合物輸送装置31の長さが上記範囲内であれば、混合装置21から粒子移動装置22へ、第一の溶液のみならず第一の組成物も十分に輸送されるという利点を有する。
分離装置23は、粒子移動装置22で得られた混合物12(第二の混合物12)を、第二の溶液13と第二の組成物14とに分離する装置であり、すなわち分離工程3を実施するための装置である。分離装置23としては、分離工程3で用いられる装置を各種利用できる。
第二の混合物輸送装置32は、粒子移動装置22から分離装置23へ第二の溶液13と第二の組成物14との混合物12(すなわち第二の混合物12)を輸送するための装置である。第二の混合物輸送装置32は必須の構成ではなく、換言すれば、第二の混合物輸送装置32を有していない製造システムも、本発明の一実施形態に含まれる。
第二の混合物輸送装置32としては、例えば輸送管(配管)およびポンプなどが挙げられる。第二の混合物輸送装置32の長さ、例えば輸送管の長さ、としては特に限定されないが、0.1m~300mであることが好ましく、0.3m~100mであることがより好ましく、0.3m~50mであることがより好ましく、0.3m~10mであることがより好ましく、0.3m~5mであることがより好ましく、0.3m~3mであることがさらに好ましく、0.3m~1mであることが特に好ましい。粒子移動装置22から分離装置23へ、第二の溶液13のみならず第二の組成物14も十分に輸送されるために、第二の混合物12の輸送距離は、短いほど好ましい。第二の溶液13の粘度と第二の組成物14の粘度との差が大きい場合には、第二の混合物12の輸送距離は、特に、短いほど好ましい。それ故に、第二の混合物輸送装置32の長さが上記範囲内であれば、粒子移動装置22から分離装置23へ、第二の溶液13のみならず第二の組成物14も十分に輸送されるという利点を有する。
図2に示す製造システムは、分離装置23後かつ混合装置21前に設けられ、第二の溶液13を保持する溶液保持装置24を有するが、溶液保持装置24は必須の構成ではない。換言すれば、溶液保持装置24を有していない製造システムも、本発明の一実施形態に含まれる。図2に示すように、溶液保持装置24を有する製造システムは、より多い量の粒子(A)を処理することができる。その結果、当該製造システムは、粒子含有量の多い粒子含有組成物を多量に提供することができる。
製造システムが溶液保持装置24を備えている場合、当該製造システムは、図2に示すように、(a)分離装置23で得られた第二の溶液13を溶液保持装置24に供給する(輸送する)溶液輸送装置33Aと、(b)溶液保持装置24から混合装置21へ第二の溶液13を輸送する溶液輸送装置33Bと、をさらに備え得る。一方、製造システムが溶液保持装置24を備えていない場合、分離装置23と混合装置21とは、溶液輸送装置33により接続され得る。溶液輸送装置33は、分離装置23で得られた第二の溶液13を混合装置21に供給する装置であり、すなわち溶液輸送工程4を実施するための装置である。溶液輸送装置33A、溶液輸送装置33Bおよび溶液輸送装置33としては、溶液輸送工程4で用いられる装置を各種利用できる。
本製造システムは、図2に示すように、分離装置23後かつ混合装置21前に設けられ、第二の組成物14を保持する組成物保持装置25をさらに備えていることが好ましい。当該構成によると、より多い量の粒子(A)および樹脂(B)を処理することができる。その結果、粒子含有量の多い粒子含有組成物を多量に提供することができる。組成物保持装置25は必須の構成ではなく、換言すれば、溶液保持装置24を有していない製造システムも、本発明の一実施形態に含まれる。
製造システムが組成物保持装置を備えている場合、上述した組成物輸送装置の間(途中)に組成物保持装置が備えられることとなる。それ故に、本製造システムが組成物保持装置を備えている場合、上述した組成物輸送装置の代わりに第二の組成物輸送装置(A)および第二の組成物輸送装置(B)が製造システムに備えられる。
製造システムが組成物保持装置25を備えている場合、当該製造システムは、図2に示すように、(a)分離装置23で得られた第二の組成物14を組成物保持装置25に供給する(輸送する)組成物輸送装置34Aと、(b)組成物保持装置25から混合装置21へ第二の組成物14を輸送する組成物輸送装置34Bと、をさらに備え得る。一方、製造システムが組成物保持装置25を備えていない場合、分離装置23と混合装置21とは、組成物輸送装置34により接続され得る。組成物輸送装置34は、分離装置23で得られた第二の組成物14を混合装置21に供給する装置であり、すなわち組成物輸送工程5を実施するための装置である。組成物輸送装置34A、組成物輸送装置34Bおよび組成物輸送装置34としては、組成物輸送工程5で用いられる装置を各種利用できる。
本製造システムは、図2に示すように、溶液保持装置24、溶液輸送装置33A、溶液輸送装置33B、組成物保持装置25、組成物輸送装置34Aおよび組成物輸送装置33Bを備えていることがより好ましい。当該構成によると、さらに多い量の粒子(A)および樹脂(B)を処理することができる。その結果、粒子含有量の多い粒子含有組成物を非常に多くに提供することができる。
前記組成物保持装置25は、容積を可変可能な昇降装置を備えていることが好ましい。当該構成によると、昇降装置が一定距離昇降および/または降下することにより、組成物保持装置25内が第二の組成物14で充満され得る。換言すれば、昇降装置が一定距離昇降および/または降下することにより、組成物保持装置25内の気相をできる限り少なくすることができる。それゆえ、組成物輸送装置25から供給される第二の組成物14の圧力により、組成物保持装置25内の第二の組成物14を押出すことが可能となる。その結果、ポンプを使用することなく、第二の組成物14を組成物保持装置25から混合装置21に供給することができる。容積を可変可能な昇降装置は、組成物保持装置25の内径とほぼ同じ大きさの径を有し得る。それ故、組成物保持装置25が前記昇降装置を備えている場合、当該昇降装置は組成物保持装置25の内壁に付着した第二の組成物14を集める機能も有し得る。その結果、組成物保持装置25が前記昇降装置を備えている場合、組成物保持装置25からの第二の組成物14の回収率が良好となるという利点も有する。
昇降装置としては、ピストン、ドラム缶ポンプおよびペール缶ポンプなどを上げることができる。
本製造システムにおいて、溶液輸送装置33の長さ、または、溶液輸送装置33Aおよび33Bの合計の長さ、例えば輸送管の長さ、としては特に限定されない。溶液輸送装置33の長さ、または、溶液輸送装置33Aおよび33Bの合計の長さとしては、0.1m~300mであることが好ましく、0.3m~100mであることがより好ましく、0.3m~50mであることがより好ましく、0.3m~10mであることがより好ましく、0.5m~10mであることがより好ましく、0.8m~10mであることがさらに好ましく、1m~10mであることが特に好ましい。本製造システムでは、粘度差のある第二の溶液13と第二の組成物14とを別々に輸送することができる。従って、溶液輸送装置33の長さ、または、溶液輸送装置33Aおよび33Bの合計の長さが、上述した範囲内のように長い場合であっても、第二の溶液13を十分に輸送することが可能となる。その結果、粒子含有量の多い粒子含有組成物を提供できる。
本製造システムにおいて、組成物輸送装置34の長さ、または、組成物輸送装置34Aおよび34Bの合計の長さ、例えば輸送管の長さ、としては特に限定されない。組成物輸送装置34の長さ、または、組成物輸送装置34Aおよび34Bの合計の長さとしては、0.1m~300mであることが好ましく、0.3m~100mであることがより好ましく、0.3m~50mであることがより好ましく、0.3m~10mであることがより好ましく、0.5m~10mであることがより好ましく、0.8m~10mであることがさらに好ましく、1m~10mであることが特に好ましい。本製造システムでは、粘度差のある第二の溶液13と第二の組成物14とを別々に輸送することができる。従って、組成物輸送装置34の長さ、または、組成物輸送装置34Aおよび34Bの合計の長さが、上述した範囲内のように長い場合であっても、第二の組成物14を十分に輸送することが可能となる。その結果、粒子含有量の多い粒子含有組成物を提供できる。
本発明の一実施形態に係る製造システムは、以下のような構成であってもよい。
〔X1〕粒子(A)および液状物を含む第一の溶液と、前記粒子(A)および樹脂(B)を含む第一の組成物とを混合する混合装置と、前記第一の溶液中の前記粒子(A)を前記第一の組成物中へ移動させることにより、前記第一の溶液よりも前記粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液と、前記第一の組成物よりも前記粒子(A)の含有量が多い第二の組成物との混合物を調製する粒子移動装置と、前記粒子移動装置で得られた前記混合物を、前記第二の溶液と前記第二の組成物とに分離する分離装置と、前記第二の溶液を輸送し、前記第二の溶液を前記混合装置に供給する溶液輸送装置と、前記第二の組成物を輸送し、前記第二の組成物を前記混合装置に供給する組成物輸送装置と、を備え、前記分離装置による、分離直後の前記第二の組成物の粘度は、分離直後の前記第二の溶液の粘度よりも高い、粒子含有組成物の製造システム。
〔X2〕前記粒子移動装置は、前記第二の溶液と、前記第一の組成物より粘度の高い前記第二の組成物との前記混合物を得る装置である、〔X1〕に記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X3〕前記分離装置による、分離直後の前記第二の組成物の粘度と分離直後の前記第二の溶液の粘度との差は、20mPa・s~10000000mPa・sである、〔X1〕または〔X2〕に記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X4〕前記樹脂(B)は、50℃において1,000,000mPa・s以下の粘度を有する、〔X1〕~〔X3〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X5〕前記粒子(A)の体積平均粒子径は、10μm以下である、〔X1〕~〔X4〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X6〕前記粒子移動装置は、前記混合装置で得られた混合物に剪断応力を加える装置をさらに含む、〔X1〕~〔X5〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X7〕前記粒子(A)は、重合体微粒子を含む、〔X1〕~〔X6〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X8〕前記重合体微粒子は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体を含む、〔X7〕に記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X9〕前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種以上を含む、〔X8〕に記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X10〕前記樹脂(B)は、構成単位としてエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位を含む樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂からなる群より選択される、少なくとも1種を含む、〔X1〕~〔X9〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔X11〕前記粒子移動装置は、気液界面の存在下で、前記第一の溶液中の前記粒子(A)を前記第一の組成物中へ移動させる装置である、〔X1〕~〔X10〕の何れか1つに記載の粒子含有組成物の製造システム。
〔4.粒子含有組成物〕
(4-1.分散性)
本粒子含有組成物は、樹脂(B)中の粒子(A)の含有量を5重量%とした場合の、樹脂(B)中における粒子(A)の分散性が、グラインドゲージを用いてJIS K5101に従い評価したとき、0μm以下であることが好ましい。本粒子含有組成物において、粒子(A)が樹脂(B)中に均一に分散しているため、本粒子含有組成物をマトリクス樹脂に混合する場合、マトリクス樹脂中に粒子(A)を良好に分散させ得る。なお、具体的な分散性の評価方法については、下記実施例にて詳述する。
(4-2.有機溶剤)
本粒子含有組成物は、有機溶剤を実質的に含まない。「有機溶剤を実質的に含まない」とは、粒子含有組成物中の有機溶剤の量が100ppm以下であることを意図する。
本粒子含有組成物に含まれる有機溶剤の量(含溶剤量とも称する。)は100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。本粒子含有組成物に含まれる有機溶剤の量は、本粒子含有組成物に含まれる揮発成分(但し水は除く)の量ともいえる。本粒子含有組成物に含まれる有機溶剤(揮発成分)の量は、例えば、所定量の粒子含有組成物を熱風乾燥機などで加熱し、加熱前後の粒子含有組成物の重量を測定することにより、減少した重量分として求めることができる。また、本粒子含有組成物に含まれる有機溶剤(揮発成分)の量は、ガスクロマトグラフィーによって求めることもできる。また、本粒子含有組成物および粒子含有組成物に含まれる粉粒体の製造において、有機溶剤を使用していない場合、得られる粒子含有組成物に含まれる有機溶剤の量は、0ppmとみなすことができる。
本粒子含有組成物に実質的に含まれない有機溶剤としては、(a)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、(b)アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、(c)エタノール、(イソ)プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、(d)テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、(e)ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、並びに(f)塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。
(4-3.元素S等の含有量)
本粒子含有組成物は、元素SおよびPの含有量が、いずれも100ppm以下であることが好ましい。さらに、元素Ca、Mg、Fe、Zn、BaおよびAlの含有量が、いずれも100ppm以下であることが好ましい。また、前記各元素の含有量は、60ppm以下であることがより好ましく、25ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることが特に好ましい。
(4-4.電気伝導度)
本粒子含有組成物における電気伝導度は0.6mS/cm以下であることが好ましい。また、電気伝導度は、0.5mS/cm以下であることがより好ましく、0.3mS/cm以下であることがさらに好ましく、0.15mS/cm以下であることが特に好ましい。なお、不純物としての元素Naの含有量については、Na+由来の金属石鹸が水に溶けやすいため、本電気伝導度で把握し得る。例えば、元素Naの含有量が多い場合、Na+が多くなるため、電気伝導度が高くなる。したがい、本電気伝導度が上記所定値より低い場合、元素Naの含有量も低いと考えられる。
本明細書において、「電気伝導度」とは、前記粒子含有組成物を同量のイオン交換水で、90℃、30分間混合して分離した水の電気伝導度のことをいう。具体的な測定方法は、後述する実施例において詳説する。
(4-5.粒子(A)および樹脂(B))
粒子(A)および樹脂(B)については、上述した実施形態1(粒子含有組成物の製造方法)と同様であり、実施形態1の各記載を援用できる。なかでも、粒子(A)は、弾性体と、当該弾性体に対してグラフト結合されたグラフト部と、を有するゴム含有グラフト共重合体であることが好ましい。また、前記弾性体は、ジエン系ゴム、(メタ)アクリレート系ゴムおよびポリシロキサンゴム系弾性体からなる群より選択される1種以上を含むものであることが好ましい。
また、樹脂(B)は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。なかでも、熱硬化性樹脂が、エチレン性不飽和モノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオール樹脂およびアミノ-ホルムアルデヒド樹脂(メラミン樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上述した構成であれば、熱硬化性樹脂の特徴(耐熱性、剛性等)を維持しつつ、破壊靭性、接着強度、面衝撃性等を向上させ得る。
本粒子含有組成物100重量%中の粒子(A)の含有量は、特に限定されるものではない。本粒子含有組成物100重量%中の粒子(A)(例えば重合体微粒子)の含有量は、10重量%~90重量%であることが好ましく、20重量%~90重量%であることがより好ましく、30重量%~90重量%であることがより好ましく、33重量%~90重量%であることがより好ましく、35重量%~90重量%であることがより好ましく、37重量%~90重量%であることがより好ましく、40重量%~90重量%であることがより好ましく、43重量%~90重量%であることがより好ましく、45重量%~90重量%であることがより好ましく、48重量%~90重量%であることがより好ましく、50重量%~90重量%であることがより好ましく、53重量%~90重量%であることがより好ましく、55重量%~90重量%であることがより好ましく、58重量%~90重量%であることがさらに好ましく、60重量%~90重量%であることが特に好ましい。本発明の一実施形態に係る粒子含有組成物の製造方法によると、粒子(A)の含有量が上述した範囲内となるような、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができる。
〔5.樹脂組成物〕
本発明の一実施形態には、上述した粒子含有組成物とマトリクス樹脂とを混合してえられる樹脂組成物も含まれ得る。「本発明の一実施形態に係る樹脂組成物」を「本樹脂組成物」と称する場合もある。本樹脂組成物は、上述した粒子含有組成物とマトリクス樹脂とを含有するものである。上述した粒子含有組成物を、樹脂組成物の製造において、粒子(A)のマスターバッチとして使用することができる、ともいえる。
(5-1.マトリクス樹脂)
マトリクス樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との任意の組み合わせであってもよい。マトリクス樹脂は、熱硬化性樹脂を好適に利用し得る。マトリクス樹脂における、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂としては、上記樹脂(B)の項で説明した熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を挙げることができる。
マトリクス樹脂としては、上述した樹脂(B)と同じ樹脂であってもよく、異なる樹脂であってもよい。ここで、マトリクス樹脂が樹脂(B)と同じ種類の樹脂である場合を考える。この場合、得られる樹脂組成物では樹脂(B)とマトリクス樹脂との区別をつけることはできない。そのため、外見上、得られる樹脂組成物は、上述した粒子含有組成物と区別がつかず、粒子(A)以外に樹脂(B)のみを有しているように見える。次に、マトリクス樹脂が樹脂(B)と異なる種類の樹脂である場合を考える。この場合、得られる樹脂組成物では樹脂(B)とマトリクス樹脂とは識別可能である。そのため、最終的に得られる樹脂組成物は、上述した粒子含有組成物と区別でき、粒子(A)以外に、樹脂(B)以外の樹脂として、マトリクス樹脂を含むことを認識し得る。
(5-2.本粒子含有組成物とマトリクス樹脂との配合比率等)
本粒子含有組成物とマトリクス樹脂との配合比率は、本粒子含有組成物とマトリクス樹脂の合計を100重量%とした場合に、通常、本粒子含有組成物が0.5~50重量%、マトリクス樹脂が50~99.5重量%であることが好ましく、本粒子含有組成物が1~35重量%、マトリクス樹脂が65~99重量%であることがより好ましく、本粒子含有組成物が1.5~25重量%、マトリクス樹脂が75~98.5重量%であることが特に好ましく、本粒子含有組成物が2.5~20重量%、マトリクス樹脂が80~97.5重量%であることがもっとも好ましい。
マトリクス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、マトリクス樹脂の状態は、本粒子含有組成物との混合時に流動するのであれば特に限定されず、室温で固体であってもよいが、作業性の点から液状が好ましい。
本粒子含有組成物をマトリクス樹脂(例えば熱硬化性樹脂)と混合する際の温度は、マトリクス樹脂が流動し得る温度になることが一般的である。マトリクス樹脂が流動し得る温度で樹脂(B)が流動しうるなら、マトリクス樹脂と樹脂(B)とを均一に混合することが容易になる。逆に、マトリクス樹脂が液状で、これに添加する本粒子含有組成物中の樹脂(B)が固体である場合は、両者を均一に混合することが難しくなる。
(5-3.その他の任意成分)
本樹脂組成物は、耐ブロッキング性およびマトリクス樹脂への粒子(A)の分散性の向上の点から、さらにブロッキング防止剤を含むことが好ましい。ブロッキング防止剤は、上記効果を奏するものであれば特に制限されない。ブロッキング防止剤としては、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、ゼオライト、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ヒドロケイ酸マグネシウム等の無機微粒子からなるブロッキング防止剤;有機微粒子からなるブロッキング防止剤;ポリエチレンワックス、高級脂肪酸アミド、金属セッケン、シリコーン油などの油脂系ブロッキング防止剤が挙げられる。これらの中で、微粒子からなるブロッキング防止剤が好ましく、有機微粒子からなるブロッキング防止剤がより好ましく、芳香族ビニルモノマー、ビニルシアンモノマー、(メタ)アクリレートモノマーより選択される1種以上の単量体単位を含む重合体の有機微粒子からなるブロッキング防止剤が特に好ましい。
微粒子からなるブロッキング防止剤は、一般に、微粒子が液中に分散してなるもの、またはコロイド状のものである。ブロッキング防止剤中の微粒子は、体積平均粒子径(Mv)が、通常10μm以下、好ましくは0.05~10μmである。ブロッキング防止剤の含有量は、本粒子含有組成物とマトリクス樹脂との総重量に対して、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.5~3.0重量%である。
本樹脂組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、硬化剤、顔料および染料などの着色剤、体質顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定化剤(ゲル化防止剤)、可塑剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、低収縮剤、無機質充填剤、有機質充填剤、熱可塑性樹脂、乾燥剤、並びに分散剤などが挙げられる。
ブロッキング防止剤および/または添加剤(前記その他の任意成分)は、本樹脂組成物または本粒子含有組成物の製造方法における任意の工程中で適宜添加することができる。例えば、ブロッキング防止剤および/または前記添加剤は、粒子(A)が凝固する前もしくは凝固した後の水懸濁液中へ添加することができ、または、本粒子含有組成物もしくは本樹脂組成物へ添加することができる。
本樹脂組成物は、マトリクス樹脂以外の、公知の熱硬化性樹脂をさらに含んでいてもよいし、公知の熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。
〔6.硬化物または成形体〕
本粒子含有組成物が樹脂(B)として熱硬化性樹脂を含む場合、当該粒子含有組成物を硬化させて得られる硬化物は、本発明の一実施形態に係る硬化物といえる。本樹脂組成物が樹脂(B)および/またはマトリクス樹脂として熱硬化性樹脂を含む場合、当該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物もまた、本発明の一実施形態に係る硬化物といえる。
本発明の一実施形態に係る硬化物は、前記構成を有するため、(a)表面美麗であり、(b)高剛性および高弾性率を有し、かつ(c)靱性および接着性に優れるものである。
本粒子含有組成物が樹脂(B)として熱可塑性樹脂を含む場合、当該粒子含有組成物を成形させて得られる成形体は、本発明の一実施形態に係る成形体といえる。本樹脂組成物が樹脂(B)および/またはマトリクス樹脂として熱可塑性樹脂を含む場合、当該樹脂組成物を成形させて得られる成形体もまた、本発明の一実施形態に係る成形体といえる。
本発明の一実施形態に係る成形体は、前記構成を有するため、(a)表面美麗であり、(b)高剛性および高弾性率を有し、かつ(c)靱性および接着性に優れるものである。
〔7.その他の用途〕
(a)本粒子含有組成物および/または樹脂組成物(以下、本粒子含有組成物等、とも称する。)は、様々な用途に使用することができ、それらの用途は特に限定されない。本粒子含有組成物等は、それぞれ、例えば、接着剤、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、電子基板、インキバインダー、木材チップバインダー、ゴムチップ用バインダー、フォームチップバインダー、鋳物用バインダー、床材用およびセラミック用の岩盤固結材、ウレタンフォームなどの用途に好ましく用いられる。ウレタンフォームとしては、自動車シート、自動車内装部品、吸音材、制振材、ショックアブソーバー(衝撃吸収材)、断熱材、工事用床材クッションなどが挙げられる。
本粒子含有組成物等は、上述した用途の中でも、接着剤、コーティング材、強化繊維のバインダー、複合材料、3Dプリンターの造形材料、封止剤、および電子基板として用いられることがより好ましい。
(7-1.接着剤)
本発明の一実施形態に係る接着剤は、上述した本粒子含有組成物等を含むものである。本発明の一実施形態に係る接着剤は、前記構成を有するため、接着性に優れるものである。
本発明の一実施形態に係る接着剤を、単に本接着剤ともいう。
本接着剤は、自動車内装材用、一般木工用、家具用、内装用、壁材用および食品包装用などの種々の用途に好適に用いられ得る。
本接着剤は、冷間圧延鋼、アルミニウム、ファイバーグラスで強化されたポリエステル(FRP)、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化物のパネル、炭素繊維で強化された熱可塑性樹脂シートのパネル、シートモウルディングコンパウンド(SMC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、TPO、木材およびガラス、など、種々の被着体へ良好な接着性を示す。
本接着剤は低温(-20℃程度)から常温のみならず、高温(80℃程度)においても接着性能および柔軟性に優れる。よって本接着剤は構造用接着剤としてより好適に用いることができる。
本接着剤を用いた構造用接着剤は、例えば、自動車および車両(新幹線、電車など)、土木、建築、建材、木工、電気、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野などの構造部材の接着剤として使用することができる。特に、自動車関連の用途としては、天井、ドア、シートなどの内装材の接着、および、ランプなどの自動車照明灯具、サイドモールなどの外装材の接着などを挙げることができる。
本接着剤は、本粒子含有組成物等を用いて製造することができる。本接着剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(7-2.コーティング材)
本発明の一実施形態に係るコーティング材は、上述した本粒子含有組成物等を含むものである。本発明の一実施形態に係るコーティング材は、前記構成を有するため、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜を提供できる。
本発明の一実施形態に係るコーティング材を、単に本コーティング材ともいう。
本コーティング材を、例えば床または廊下に施工する場合には、一般に実施されている施工法を適用することができる。たとえば、素地調整した下地にプライマーを塗布後、施工条件に応じて、コテ、ローラー、レーキ、スプレーガンなどを用いて本コーティング材を均一に塗工する。本コーティング材を塗工後、硬化が進み、性能の良い舗装膜が得られる。本コーティング材を硬化して得た塗膜は、耐荷重性および耐摩耗性に優れた塗膜となり得る。
本コーティング材の施工方法に依存して、当該コーティング材に用いられる粒子含有組成物の粘度を調整してもよい。例えば、本コーティング材の施工にコテまたはレーキを使用する場合、当該コーティング材に用いられる粒子含有組成物の粘度は、一般的には500~9,000cps/25℃程度に調整され得る。本コーティング材の施工にローラーまたはスプレーを使用する場合、当該コーティング材に用いられる粒子含有組成物の粘度は、一般的には100~3,000cps/25℃程度に調整され得る。
本コーティング材が塗付される下地(換言すれば、床または廊下の材質)としては特に限定は無い。前記下地としては、具体的には、(a)コンクリート壁、コンクリート板、コンクリートブロック、CMU(Concrete Masonry Unit)、モルタル板、ALC(Autoclaved Light-weight Concrete)板、石膏板(Dens Glass Gold:Georgia Pacific社製など)、スレート板などの無機系下地、(b)木質系下地(木材、合板、OSB(Oriented Strand Board)など)、アスファルト、変性ビチューメンの防水シート、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)の防水シート、TPOの防水シート、プラスチック、FRP、ウレタンフォーム断熱材などの有機系下地、および(c)金属パネルなどの金属系下地、などが挙げられる。
本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する場合について説明する。前記塗布の後、コーティング材を硬化して得られる積層体は、前記下地への防食性に優れるものである。また、前記塗布の後、コーティング材が硬化されて得られる塗膜は、下地に対して、優れた耐クラック性および耐荷重性を付与し得る。そのため、本コーティング材を、金属の下地または多孔質下地に塗布する態様は特に好ましい態様である。
本コーティング材の塗付方法としては特に限定は無いが、コテ、レーキ、刷毛、ローラー、エアースプレー、エアレススプレーなどの公知の塗布方法により行うことができる。
本コーティング材の用途としては、特に限定されないが、自動車用、電気機器用、事務機用、建材用、木材用、塗り床用、舗装用、重防食用、コンクリート防食用、屋上および屋根の防水用、屋上および屋根の耐食用、地下防水用の塗膜防水材用、自動車補修用、缶塗装用、上塗り用、中塗り用、下塗り用、プライマー用、電着塗料用、高耐候塗料用、無黄変塗料用、などが挙げられる。塗り床用コーティング材、および舗装用コーティング材などに使用する場合、工場、実験室、倉庫、およびクリーンルームなどに使用することができる。
本コーティング材は、本粒子含有組成物等を用いて製造することができる。本コーティング材の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(7-3.複合材料)
本発明の一実施形態に係る複合材料は、上述した本粒子含有組成物等を、強化繊維のバインダーとして含むものである。本発明の一実施形態に係る複合材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る複合材料を、単に本複合材料ともいう。
本複合材料は、強化繊維を含み得る。前記強化繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維、ガラス長繊維、炭素繊維、天然繊維、金属繊維、熱可塑性樹脂繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ザイロン強化繊維などが挙げられる。これら強化繊維の中でも、特に、ガラス繊維および炭素繊維が好ましい。
本複合材料の製造方法(成形方法)としては、特に限定されないが、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、引き抜き成形法、射出成型法、シートワインディング成形法、スプレーアップ法、BMC(Bulk Molding Compound)法、SMC(Sheet MoldingCompound)法、などが挙げられる。
特に、強化繊維として炭素繊維を用いた場合、本複合材料の製造方法としては、プリプレグを用いたオートクレーブ成形法、フィラメントワインド成形法、ハンドレイアップ成形法、真空バッグ成形法、樹脂注入成形(RTM)法、バキュームアシスト樹脂注入成形(VARTM)法、などを使用することが好ましい。
本複合材料の用途としては、特に限定されないが、航空機、宇宙機、自動車、自転車、船舶、兵器、風車、スポーツ用品、容器、建築材料、防水材、プリント基板、電気絶縁材料、などが挙げられる。
本複合材料は、本粒子含有組成物等を用いて、製造することができる。本複合材料に関する、強化繊維、製造方法(成形方法)、製造条件(成形条件)、配合剤、用途、などのより詳細内容については、米国公開特許2006/0173128号公報、米国公開特許2012/0245286号公報、特表2002-530445号公報(国際公開WO2000/029459号公報)、特開昭55-157620号公報(米国特許第4251428号公報)、特表2013-504007号公報(国際公開WO2011/028271号公報)、特開2007-125889号公報(米国公開特許2007/0098997号公報)、特開2003-220661号公報(米国公開特許2003/0134085号公報)に記載された内容を挙げることができる。
(7-4.3Dプリンターの造形材料)
本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料は、上述した本粒子含有組成物等を含むものである。本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る3Dプリンターの造形材料を、単に本造形材料ともいう。
本造形材料の用途としては、特に限定されないが、実際に製品を作る前のデザインの検証および機能検証などを目的とした試作品、航空機の部品、建築部材および医療機器の部品などが挙げられる。
本造形材料は、本粒子含有組成物等を用いて製造することができる。本造形材料の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(7-5.封止剤)
本発明の一実施形態に係る封止剤は、上述した本粒子含有組成物等を用いてなるものである。本発明の一実施形態に係る封止剤は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る封止剤を、単に本封止剤ともいう。
本封止剤の用途としては、特に限定されないが、半導体などの各種電気機器およびパワ-デバイスなどの封止などが挙げられる。
本封止剤は、本粒子含有組成物等を用いて製造することができる。本封止剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
(7-6.電子基板)
本発明の一実施形態に係る電子基板は、上述した本粒子含有組成物等を用いてなるものである。本発明の一実施形態に係る電子基板は、前記構成を有するため、靭性および耐衝撃性に優れるという利点を有する。
本発明の一実施形態に係る電子基板を、単に本電子基板ともいう。
本電子基板の用途としては、特に限定されないが、プリント回路、プリント配線、プリント回路板、プリント回路実装品、プリント配線板およびプリント板などが挙げられる。
本電子基板は、本粒子含有組成物等を用いて、本粒子含有組成物等から製造することができる。本電子基板の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
以下、実施例および比較例によって本発明の一実施形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の一実施形態は、前記または後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更して実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお下記実施例および比較例において「部」および「%」とあるのは、重量部または重量%を意味する。
[成分]
各製造例、実施例および比較例において使用した各成分は、以下の通りである。
<液状物>
水(脱イオン水)を使用した。
<粒子(A)>
以下を使用した。
・重合体微粒子:以下に示す製造例で得られた重合体微粒子を使用した。
・セルロースナノファイバー
・五酸化アンチモン
<樹脂(B)>
液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、JER828)を使用した。
[評価方法]
先ず、実施例および比較例によって製造した樹脂組成物の評価方法について、以下説明する。
<体積平均粒子径の測定>
水性ラテックスに分散している弾性体または重合体微粒子の体積平均粒子径(Mv)は、Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。脱イオン水で水性ラテックスを希釈したものを測定試料として用いた。測定は、水、および、各製造例で得られた弾性体または重合体微粒子の屈折率を入力し、計測時間120秒、ローディングインデックス1~10の範囲内になるように試料濃度を調整して行った。
また、粉粒体の体積平均粒子径(Mv)は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定した。
<粘度の測定>
以下の実施例および比較例で使用した樹脂(B)、または以下の実施例および比較例で得られた粒子含有組成物の粘度測定行った。使用した装置は、BROOKFIELD社製デジタル粘度計DV-II+Pro型であった。また、粘度領域によってスピンドルCPE-52を用い、測定温度50℃にてShear Rate(ずり速度)を必要に応じ変化させて、粘度を測定した。その結果、液状エポキシ樹脂は700mPa・sであった。
<樹脂(B)の示差熱走査熱量測定(DSC)>
以下の実施例および比較例で使用した樹脂(B)の示差熱走査熱量を、DSC7020(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。昇温速度は10℃/minとした。その結果、液状エポキシ樹脂は、-15℃に吸熱ピークを有することが分かった。
<分散性の評価>
以下の実施例および比較例で得られた粒子含有組成物における、樹脂(B)中の粒子(A)の分散性を評価した。分散性の評価は、グラインドゲージを用いてJIS K5101に従い実施した。具体的な方法は下記の通りである。粒子含有組成物をグラインドゲージ上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上の組成物をかき取り、分散状態を目視で確認した。スクレーパーの運動で生じた粒状痕が、3mm幅の帯の中に5~10個の点が発生した位置の目盛りを読み取った。なお、得られた値が小さいほど、分散性に優れることを意味する。
<樹脂組成物中の含溶剤量の測定>
得られた樹脂組成物中の含溶剤量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、GC-2014)を用いて測定した。
1.弾性体の重合
製造例1-1;ポリブタジエンゴムラテックス(R-1)の調製
耐圧重合器中に、脱イオン水200部、リン酸三カリウム0.03部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.002部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001部、および乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)1.55部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、ブタジエン(Bd)100部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、パラメンタンハイドロパーオキサイド(PHP)0.03部を耐圧重合器内に投入し、続いてナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.10部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から15時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTAおよび硫酸第一鉄・7水和塩のそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-1)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体の体積平均粒子径
は90nmであった。
製造例1-2;ポリブタジエンゴムラテックス(R-2)の調製
耐圧重合器中に、前記で得たポリブタジエンゴムラテックス(R-1)を固形分で7部、脱イオン水200部、リン酸三カリウム0.03部、EDTA0.002部、及び硫酸第一鉄・7水和塩0.001部を投入した。次に、投入した原料を撹拌しつつ、耐圧重合器内部の気体を窒素置換することにより、耐圧重合器内部から酸素を十分に除いた。その後、Bd93部を耐圧重合器内に投入し、耐圧重合器内の温度を45℃に昇温した。その後、PHP0.02部を耐圧重合器内に投入し、続いてSFS0.10部を耐圧重合器内に投入し、重合を開始した。重合開始から30時間目に、減圧下にて脱揮して、重合に使用されずに残存した単量体を脱揮除去することにより、重合を終了した。重合中、PHP、EDTA、硫酸第一鉄・7水和塩およびSDBSのそれぞれを、任意の量および任意の時宜で耐圧重合器内に添加した。当該重合により、ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体を含む水性ラテックス(R-2)を得た。得られた水性ラテックスに含まれる弾性体の体積平均粒子径は195nmであった。
2.粒子(A)の調製(グラフト部の重合)
製造例2-1;重合体微粒子ラテックス(L-1)の調製
ガラス製反応器に、前記ポリブタジエンゴムラテックス(R-2)250部(ポリブタジエンゴムを主成分とする弾性体87部を含む)、および、脱イオン水50部を投入した。ここで、前記ガラス製反応器は、温度計、撹拌機、還流冷却器、窒素流入口、および単量体の添加装置を有していた。ガラス製反応器中の気体を窒素で置換し、60℃にて投入した原料を撹拌した。次に、EDTA0.004部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001部、およびSFS0.2部をガラス製反応器内に加え、10分間撹拌した。その後、メチルメタクリレート(MMA)12.5部、St0.5部、およびt-ブチルハイドロパーオキサイド(BHP)0.035部の混合物をガラス製反応器内に、80分間かけて連続的に添加した。その後、BHP0.013部をガラス製反応器内に添加し、さらに1時間、ガラス製反応器内の混合物の撹拌を続けて重合を完結させた。以上の操作により、粒子(A)および乳化剤を含む水性ラテックス(L-1)を得た。単量体成分の重合転化率は99%以上であった。得られた水性ラテックスに含まれる粒子(A)の体積平均粒子径は200nmであった。得られた水性ラテックス(L-1)における固形分濃度(粒子(A)の濃度)は30%であった。
(実施例1)
水性ラテックス(L-1)45kgと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂9kgとをステンレスタンク(V)に仕込み、その後、仕込んだ原料を高せん断乳化機ヘ供給して、外部循環で10分間循環(平均循環回数4回)を行った。かかる操作で得られた混合物をスクリューコンベアに供し、(a)液状物として水と、粒子(A)として重合体微粒子をと含む第一の溶液と、(b)粒子(A)として重合体微粒子と、樹脂(B)として液状エポキシ樹脂とを含む第一の組成物と、に分離した。第一の溶液の粘度は1mPa・sであり、第一の組成物の粘度は22000mPa・sであった。第一の組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は40重量%であった。分離して得られた第一の組成物を、組成物保存装置25としてステンレスタンク(V)に、分離して得られた第一の溶液を、溶液保存装置24としてステンレスタンク(W)に、それぞれ入れた。
本明細書において「平均循環回数」とは、仕込み原料の総量を、外部循環させた混合物(仕込み原料)の流量で除して得られた商である。
第一の溶液と第一の組成物とを配管中で合流させ、混合した(混合工程1)。すなわち、実施例1において、配管が混合装置21といえる。得られた混合物11(第一の混合物11)を、第一の混合物輸送装置31としてポンプおよび配管を用いて、粒子移動装置22である高せん断乳化機に供した。高せん断乳化機において、第一の混合物11に剪断応力を加え、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液13と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物14との混合物12(第二の混合物12)を得た(粒子移動工程2)。粒子移動工程2で得られた第二の混合物12を、第二の混合物輸送装置32としてポンプおよび配管を用いて、分離装置23であるスクリューコンベアに供した。スクリューコンベアにおいて、第二の混合物を第二の溶液13と第二の組成物14とに分離した(分離工程3)。次に、第二の溶液13を、溶液輸送装置33Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ステンレスタンク(W)に供給し、その後さらに溶液輸送装置33Bとしてポンプおよび配管を用いて混合装置21(配管)に供した(溶液輸送工程4)。溶液輸送工程4と平行して、第二の組成物14を、組成物輸送装置34Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ステンレスタンク(V)に供給し、その後さらに組成物輸送装置34Bとしてポンプおよび配管を用いて混合装置21(配管)に供した(組成物輸送工程5)。第二の溶液13および第二の組成物14を用いて、上述した混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を行い、得られた第三の溶液および第三の組成物を、各々独立して、再度混合工程1に輸送した(溶液輸送工程4/組成物輸送工程5)。かかる操作を複数回繰り返した。具体的には、第一の溶液および第一の組成物を用いた混合工程1から約30分間、上述した操作を繰り返した。結果として、混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を合計13回、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5を合計12回実施した。13回目の操作において、分離工程3後に得られた溶液および組成物を、それぞれステンレスタンク(W)およびステンレスタンク(V)に供給し、操作を終了した。ステンレスタンク(W)から溶液を、ステンレスタンク(V)から組成物、すなわち粒子含有組成物を、それぞれ回収した。回収した溶液の粘度は1mPa・sであり、回収した粒子含有組成物の粘度は5000000mPa・sであった。粒子含有組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は、56重量%であった。ステンレスタンク(V)からの粒子含有組成物の回収率は80%であった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
なお、実施例1、並びに後述する実施例2~5において、第一の混合物輸送装置31の長さは40cmであり、第二の混合物輸送装置32の長さは60cmであり、溶液輸送装置33Aと溶液輸送装置33Bとの合計の長さは170cmであり、組成物輸送装置34Aと組成物輸送装置34Bとの合計の長さは180cmであった。
(実施例2)
水性ラテックス(L-1)45kgと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂9kgとを、昇降装置としてピストンを備えるステンレスタンク(X)に仕込んだ。その後、仕込んだ原料を高せん断乳化機ヘ供給して、外部循環で10分間循環(平均循環回数4回)を行った。かかる操作で得られた混合物をスクリューコンベアに供し、(a)液状物として水と、粒子(A)として重合体微粒子をと含む第一の溶液と、(b)粒子(A)として重合体微粒子と、樹脂(B)として液状エポキシ樹脂とを含む第一の組成物と、に分離した。第一の溶液の粘度は1mPa・sであり、第一の組成物の粘度は22000mPa・sであった。第一の組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は40重量%であった。分離して得られた第一の組成物を、組成物保存装置25としてピストンを備えるステンレスタンク(X)に、分離して得られた第一の溶液を、溶液保存装置24としてステンレスタンク(W)に、それぞれ入れた。
第一の溶液と第一の組成物とを配管中で合流させ、混合した(混合工程1)。すなわち、実施例2において、配管が混合装置21といえる。得られた物11(第一の混合物11)を、第一の混合物輸送装置31としてポンプおよび配管を用いて、粒子移動装置22である高せん断乳化機に供した。高せん断乳化機において、第一の混合物11に剪断応力を加え、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液13と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物14との混合物12(第二の混合物12)を得た(粒子移動工程2)。粒子移動工程2で得られた第二の混合物12を、第二の混合物輸送装置32としてポンプおよび配管を用いて、分離装置23であるスクリューコンベアに供した。スクリューコンベアにおいて、第二の混合物を第二の溶液13と第二の組成物14とに分離した(分離工程3)。次に、第二の溶液13を、溶液輸送装置33Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ステンレスタンク(W)に供給し、その後さらに溶液輸送装置33Bとしてポンプおよび配管を用いて混合装置(配管)に供した(溶液輸送工程4)。溶液輸送工程4と平行して、第二の組成物14を、組成物輸送装置34Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ピストンを備えるステンレスタンク(X)に供給し、その後さらに組成物輸送装置34Bとして配管を用いて混合装置(配管)に供した(組成物輸送工程5)。第二の溶液13および第二の組成物14を用いて、上述した混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を行い、得られた第三の溶液および第三の組成物を、各々独立して、再度混合工程1に輸送した(溶液輸送工程4/組成物輸送工程5)。かかる操作を複数回繰り返した。具体的には、第一の溶液および第一の組成物を用いた混合工程1から約30分間、上述した操作を繰り返した。結果として、混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を合計13回、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5を合計12回実施した。13回目の操作において、分離工程3後に得られた溶液および組成物を、それぞれステンレスタンク(W)およびピストンを備えるステンレスタンク(X)に供給し、操作を終了した。ここで、上述した操作の間、ピストンを備えるステンレスタンク(X)中の気相ができる限り小さくなるよう、ピストン付きステンレスタンク(X)のピストンを操作した。その結果、ピストンを備えるステンレスタンク(X)から続く混合装置21(配管)への組成物の輸送には、ポンプを必要としなかった。ステンレスタンク(W)から溶液を、ピストンを備えるステンレスタンク(X)から組成物、すなわち粒子含有組成物を、それぞれ回収した。回収した溶液の粘度は1mPa・sであり、回収した粒子含有組成物の粘度は5000000mPa・sであった。粒子含有組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は、56重量%であった。ピストン付きステンレスタンク(X)からの粒子含有組成物の回収率は98%であった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
(実施例3)
水性ラテックス(L-1)45kgと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂9kgとをステンレスタンク(V)に仕込み、その後、仕込んだ原料を高せん断乳化機ヘ供給して、外部循環で10分間循環(平均循環回数4回)を行った。かかる操作で得られた混合物をスクリューコンベアに供し、(a)液状物として水と、粒子(A)として重合体微粒子をと含む第一の溶液と、(b)粒子(A)として重合体微粒子と、樹脂(B)として液状エポキシ樹脂とを含む第一の組成物と、に分離した。第一の溶液の粘度は1mPa・sであり、第一の組成物の粘度は22000mPa・sであった。第一の組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は40重量%であった。分離して得られた第一の組成物を、組成物保存装置25としてステンレスタンク(V)に、分離して得られた第一の溶液を、溶液保存装置24としてステンレスタンク(W)に、それぞれ入れた。
第一の溶液と第一の組成物と空気を配管中で合流させ、混合した(混合工程1)。すなわち、実施例3において、配管が混合装置21といえる。得られた混合物11(第一の混合物11)を、第一の混合物輸送装置31としてポンプおよび配管を用いて、粒子移動装置22である高せん断乳化機に供した。高せん断乳化機において、第一の混合物11に剪断応力を加え、第一の溶液よりも粒子(A)の含有量が少ない第二の溶液13と、第一の組成物よりも粒子(A)の含有量が多い第二の組成物14との混合物12(第二の混合物12)を得た(粒子移動工程2)。粒子移動工程2で得られた第二の混合物12を、第二の混合物輸送装置32としてポンプおよび配管を用いて、分離装置23であるスクリューコンベアに供した。スクリューコンベアにおいて、第二の混合物を第二の溶液13と第二の組成物14と空気とに分離した(分離工程3)。なお、空気は、特段の操作を行うことなく、分離工程3中に、スクリューコンベアから大気中に放出されることにより、第二の溶液13および第二の組成物14と分離された。次に、第二の溶液13を、溶液輸送装置33Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ステンレスタンク(W)に供給し、その後さらに溶液輸送装置33Bとしてポンプおよび配管を用いて混合装置21(配管)に供した(溶液輸送工程4)。溶液輸送工程4と平行して、第二の組成物14を、組成物輸送装置34Aとしてポンプおよび配管を用いて、輸送し、ステンレスタンク(V)に供給し、その後さらに組成物輸送装置34Bとしてポンプおよび配管を用いて混合装置21(配管)に供した(組成物輸送工程5)。第二の溶液13および第二の組成物14を用いて、上述した混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を行い、得られた第三の溶液および第三の組成物を、各々独立して、再度混合工程1に輸送した(溶液輸送工程4/組成物輸送工程5)。かかる操作を複数回繰り返した。具体的には、第一の溶液および第一の組成物を用いた混合工程1から約30分間、上述した操作を繰り返した。結果として、混合工程1、粒子移動工程2および分離工程3を合計13回、溶液輸送工程4および組成物輸送工程5を合計12回実施した。13回目の操作において、分離工程3後に得られた溶液および組成物を、それぞれステンレスタンク(W)およびステンレスタンク(V)に供給し、操作を終了した。ステンレスタンク(W)から溶液を、ステンレスタンク(V)から組成物、すなわち粒子含有組成物を、それぞれ回収した。回収した溶液の粘度は1mPa・sであり、回収した粒子含有組成物の粘度は6900000mPa・sであった。粒子含有組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は、57重量%であった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
(比較例1)
水性ラテックス(L-1)45kgと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂9kgとをステンレスタンク(V)に仕込み、高せん断乳化機ヘ供給して、外部循環で40分間循環(平均循環回数17回)を行った。40分間のうち、約10分経過後、ステンレスタンク(V)中において、重合体微粒子と液状エポキシ樹脂とを有する組成物が浮遊した。これにより、残り約30分間、ほぼ、水と重合体微粒子とを有する溶液のみの循環となった。循環後、得られた溶液の粘度は1mPa・sであり、得られた組成物の粘度は22000mPa・sであった。得られた組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は、40重量%であった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
(比較例2)
水性ラテックス(L-1)45kgと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂9kgとを撹拌機付きステンレスタンク(D)に仕込み、高せん断乳化機ヘ供給して、外部循環で40分間循環(平均循環回数17回)を行った。40分間のうち、約10分経過後、撹拌機付きステンレスタンク(D)中において、重合体微粒子と液状エポキシ樹脂とを有する組成物が浮遊した。これにより、残り約30分間、ほぼ、水と重合体微粒子とを有する溶液のみの循環となった。循環後、得られた溶液の粘度は1mPa・sであり、得られた組成物の粘度は22000mPa・sであった。得られた組成物100重量%中の重合体微粒子(粒子(A))の含有量は、40重量%であった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
(比較例3)
水性ラテックス(L-1)450gと樹脂(B)として液状エポキシ樹脂90gとをホモミキサー付きタンク(E)に仕込み、40分間撹拌を行った。40分間のうち、約15分経過後、重合体微粒子と液状エポキシ樹脂とを有する組成物がホモミキサー付きタンク(E)の壁面に付着した。これにより、残り約25分間、ほぼ、水と重合体微粒子とを有する溶液のみの撹拌となった。攪拌後、得られた溶液の粘度は1mPa・sであり、得られた組成物の粘度は100000mPa・sであった。得られた粒子含有組成物について、分散性は0μmであり、有機溶剤量は0ppmであった。
(実施例4)
水性ラテックス(L-1)30kgと、樹脂(B)として液状エポキシ樹脂12kgと、さらに粒子(A)としてセルロースナノファイバー0.5kgとを、ステンレスタンク(V)に仕込んだ。それ以外は、実施例1と同様の操作を行った。回収した溶液の粘度は1mPa・sであり、回収した粒子含有組成物の粘度は25000mPa・sであった。なお、同量の水性ラテックス(L-1)30kgと液状エポキシ樹脂(樹脂(B))とセルロースナノファイバー(粒子(A))とを用い、本願の一実施形態に係る製造方法を行わなかった場合、得られた粒子含有組成物の粘度は25000mPa・sよりも低かった。本願の一実施形態に係る製造方法によると、粒子(A)として重合体微粒子に加えてセルロースナノファイバーを用いた場合であっても、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができることがわかった。
(実施例5)
水と粒子(A)として五酸化アンチモンとを混合し、五酸化アンチモンを44g/mlの濃度で有する五酸化アンチモン分散水溶液を調製した。
水性ラテックス(L-1)30kgと、樹脂(B)として液状エポキシ樹脂12kgと、さらに粒子(A)として五酸化アンチモン分散水溶液2kgとを、ステンレスタンク(V)に仕込んだ。それ以外は、実施例1と同様の操作を行った。回収した溶液の粘度は1mPa・sであり、回収した粒子含有組成物の粘度は32000mPa・sであった。なお、同量の水性ラテックス(L-1)30kgと液状エポキシ樹脂(樹脂(B))とセルロースナノファイバー(粒子(A))とを用い、本願の一実施形態に係る製造方法を行わなかった場合、得られた粒子含有組成物の粘度は25000mPa・sよりも低かった。本願の一実施形態に係る製造方法によると、粒子(A)として重合体微粒子に加えてセルロースナノファイバーを用いた場合であっても、粒子含有量の多い粒子含有組成物を得ることができることがわかった。