JP7355016B2 - 熱溶融型積層造形用材料 - Google Patents

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Description

本発明は、熱溶融型積層造形用材料に関し、更に詳しくは、薬物を固体分散するための基材として好適な熱溶融型積層造形用材料に関する。
経口投与用製剤の設計において、生物学的利用能(Bioavailability)を十分高く設計することが、有効性、安全性の面から重要視されている。
医薬品の生物学的利用能に影響を与える重要な因子の1つとして、薬物の溶解性が挙げられ、これ迄にも溶解性と吸収の関係に関する多くの研究が行われている。特に難溶性薬物では、その溶解速度が吸収の律速段階となることが知られている。難溶性薬物の溶解性を改善するための方法は種々知られているが、特に固体分散体の製剤形態とする方法が注目されている。
固体分散体は、薬物(主に、難溶性薬物)が固体分散体用基材(すなわち、不活性担体)に固体状態で分散したものである。その製造方法としては、溶媒法、溶融法、混合粉砕法(メカノケミカル法)等がある。
溶媒法は、薬物と固体分散体用基材の両方を溶解する有機溶媒に両者を溶解した後に溶媒を除去するか、または薬物を有機溶媒に溶解し、固体分散体用基材中に分散させた後に溶媒を除去して固体分散体を製造する方法である。
溶融法は、薬物と固体分散体用基材の融点降下を利用するものであり、両者を加熱して溶融させた後、これを冷却・固化・粉砕して固体分散体を得る方法や、薬物を比較的融点の低い水溶性高分子に加熱溶解させ、これを冷却・固化・粉砕して固体分散体を得る方法がある。
混合粉砕法は、薬物と固体分散体用基材とを加熱せずにボールミルにより混合粉砕したり、ロール混合などにより混合粉砕して、難溶性薬物を非晶質化させ固体分散体を製造する方法である。なお、メカノケミカルとは機械的エネルギー(圧縮、剪断、摩擦)が物質の物理化学的性質に変化を起こす現象である。この方法では、機械的操作による格子欠陥、格子不整、比表面積・表面エネルギーの増大等の諸因子が固体の活性を向上させ、薬物の非晶質化促進、非晶質化した薬物の担体中への分散促進をもたらすものと考えられる。
従来、固体分散体用基材の一つとして、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂を用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール系共重合体からなる固体分散体用基材が提案され、特許文献2には、カルボン酸金属塩の含有量が0.8重量%以下であるポリビニルアルコール系樹脂を固体分散体用基材として用いることにより、薬物の溶出率に優れる固体分散体を得ることができることが記載されている。
一方、熱溶融型積層造形法において、最終的に水溶除去される支持体形成材料(サポート材)としてPVA系樹脂が広く検討されており(例えば、特許文献3参照)、薬剤がPVA系樹脂基材中に分散したタブレット状の固体分散体の製造において、薬物含有熱溶融型積層造形用材料を用いることが考えられる。
なお、かかる用途における固体分散体用基材としては、経口摂取が可能な材料である必要があり、熱溶融型積層造形によって固体分散体(薬物含有熱溶融型積層造形用材料)を製造する場合においても、そこで用いられる材料は水溶性であるのみならず、安全性に優れた材料を用いる必要がある。
国際公開第2008/133102号 日本国特開2017-197723号公報 国際公開第2015/182681号
しかしながら、固体分散剤用基材として用いられているPVA系樹脂を積層造形用材料として用いるには、成形安定性や柔軟性が満足できるものではなかった。例えば、積層造形用材料は成形前の前駆体としてフィラメント状に成形する場合があり、かかるフィラメントはリールに巻き取るため、柔軟性が必要である。また、かかるフィラメントを用いて積層造形する時に、プリンターノズルにフィラメントを安定供給し、更には造形物を正確に造形することができる造形性が求められている。
そこで、本発明ではこのような背景下において、フィラメントのような糸状ないし紐状に成形した際に柔軟性を有し、さらにその成形物を用いて積層造形する際には優れた造形性を発揮でき、かつ経口摂取が可能な水溶性かつ安全性の高い材料からなる熱溶融型積層造形用材料を提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、特定範囲の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール、および特定少量のカルボン酸金属塩を含有する熱溶融型積層造形用材料が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)を特徴とする。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂、重量平均分子量200~1000のポリエチレングリコール、および前記ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.8質量%以下のカルボン酸金属塩を含有する熱溶融型積層造形用材料。
(2)前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70~100モル%である、前記(1)に記載の熱溶融型積層造形用材料。
(3)前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200~1500である、前記(1)又は(2)に記載の熱溶融型積層造形用材料。
(4)前記ポリエチレングリコールの含有量が、前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して1~50質量部である、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の熱溶融型積層造形用材料。
(5)さらに薬物を含有する前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の熱溶融型積層造形用材料。
(6)フィラメント状である前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の熱溶融型積層造形用材料。
本発明の熱溶融型積層造形用材料は、溶融成形時に熱分解することが少ないため、成形性に優れ、更に柔軟性に優れるため、折れやヒビを生じることなく、リールに巻き取ることができ、更には、積層造形時にプリンターノズルに安定供給できるため、目的とする形状及び寸法からのずれが小さい造形物を造形することができる。
よって、本発明の熱溶融型積層造形用材料は、薬物を固体分散させる基材として好適に用いることができるとともに、立体物の造形性が良好である。
本発明においては、ポリエチレングリコールの分子が、PVA系樹脂の隙間に介在し、PVA系樹脂の分子同士の凝集力を低下させることでPVA系樹脂の結晶性を低下させ、その結果、溶融粘度が低下し、溶融時の樹脂組成物の流動性が高くなり、柔軟性が向上したものと推測される。更にPVA系樹脂の結晶性が低下することにより、融点が低下し、溶融成形可能温度範囲が拡大したため、溶融成形安定性が得られ、正確な造形物が得られたと推測される。
図1は、実施例及び比較例で作製したタブレットの造形方法を説明する図である。
以下、本発明の熱溶融型積層造形用材料についてさらに詳しく説明する。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
本発明の熱溶融型積層造形用材料は、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂と、重量平均分子量200~1000のポリエチレングリコール、およびPVA系樹脂に対して0.8質量%以下のカルボン酸金属塩を含有する。
以下、各成分について説明する。
(PVA系樹脂)
PVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位から構成される。
本実施形態に使用されるPVA系樹脂の平均重合度は、200~1500であることが好ましく、250~1000がより好ましく、300~800が更に好ましく、300~600が特に好ましい。
PVA系樹脂の平均重合度が低すぎると、成形物の強度が低下し脆くなる傾向があり、平均重合度が高すぎると、溶融成形時にせん断発熱が発生し、PVA系樹脂の分解が発生し、溶融法で固体分散体を製造することが困難となる傾向があり、いずれの場合も安定なフィラメントの作製が困難になる傾向がある。
なお、本実施形態において、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726に準拠する方法で求めた平均重合度を用いるものとする。
PVA系樹脂のケン化度は70~100モル%であることが好ましく、70~95モル%がより好ましく、70~92モル%が更に好ましく、70~90モル%が特に好ましい。
PVA系樹脂のケン化度が低すぎると柔軟性と粘着性が高くなり、成形物を使用しにくくなるため、ケン化度は70モル%以上であることが好ましい。なお、PVA系樹脂は完全ケン化物(すなわち、ケン化度100モル%)であってもよいが、ケン化度が高すぎると融点が高くなるため、融点と分解温度との差が狭くなり、溶融成形可能温度範囲が狭くなり、溶融成形が困難となる場合があり、また柔軟性が乏しくなる傾向がある。
なお、本実施形態において、PVA系樹脂のケン化度は、JIS K 6726に準拠する方法で求められた値とする。
PVA系樹脂の重合度の指標として水溶液とした時の粘度が用いられる場合がある。本実施形態で用いられるPVA系樹脂の水溶液の粘度は、20℃における4質量%水溶液の粘度として、1.5~20mPa・sであることが好ましく、2~12mPa・sがより好ましく、2.5~8mPa・sが更に好ましい。粘度が低すぎる場合、および高すぎる場合の問題点は、平均重合度の場合と同様である。
なお、本実施形態において、PVA系樹脂の水溶液の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
以下、本実施形態で使用されるPVA系樹脂の製造方法を更に詳しく説明する。
PVA系樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーを重合して得られたポリビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
かかるビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、経済性の点で酢酸ビニルが好適である。
また、本発明の効果を阻害しない程度に、上記ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーを共重合させることもでき、このような共重合モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物などの誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル等のエステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類、その塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物、酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ビニレンカーボネート、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチロニルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシメチルビニリデンジアセテート等が挙げられる。かかる共重合モノマーの含有量は、重合体全量を基準として、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。本発明においては安全性の点で、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位のみからなる未変性PVAが好ましい。
上記ビニルエステル系モノマー及び共重合モノマーを重合するにあたっては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、又は乳化重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
かかる重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的にはメタノールが好適に使用される。
また、重合反応は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒を用いて行われる。また、反応温度は、35℃以上、かつ公知のラジカル重合触媒や公知の各種低温活性触媒の沸点以下の範囲から選択される。
得られたビニルエステル系重合体は、次いで連続式又はバッチ式にてケン化される。かかるケン化にあたっては、アルカリケン化又は酸ケン化のいずれも採用できるが、工業的には重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行われるアルカリケン化が好適である。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4の脂肪族アルコールが好ましく、中でもメタノールやエタノールがより好ましい。アルコール中の重合体の濃度は20~60質量%の範囲から選ばれる。また、必要に応じて、0.3~10質量%程度の水を加えてもよく、更には、酢酸メチル等の各種エステル類やベンゼン、ヘキサン、DMSO(ジメチルスルホキシド)等の各種溶剤類を添加してもよい。
上記のアルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を具体的に挙げることができ、かかる触媒の使用量はモノマーに対して1~100ミリモル当量にすることが好ましい。
なお、ケン化触媒としてアルカリ触媒を使用した場合、PVA系樹脂には触媒中のアルカリ金属がカルボン酸金属塩として存在し、これが本願の熱溶融型積層造形用材料中に持ち込まれることになるが、かかるカルボン酸金属塩が多く残存している場合は、その含有量が適度な量となるまで洗浄等により除去すればよい。
洗浄方法としては、バッチ式洗浄方法と連続式洗浄方法が挙げられ、通常はバッチ式洗浄方法が採用される。洗浄時の撹拌方式(装置)としては、スクリュー翼、リボンブレンダー、ニーダー等が挙げられる。
また、洗浄装置としては、円筒型洗浄装置、向流接触型洗浄装置、遠心分離洗浄装置などが挙げられる。
洗浄液としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、洗浄効率と乾燥効率の観点からメタノールが好ましい。浴比(洗浄液の質量/PVA系樹脂の質量)は、通常、1~30であり、特に2~20が好ましい。浴比が大きすぎると、大きな洗浄装置が必要となり、コスト増につながる傾向があり、浴比が小さすぎると、洗浄効果が低下し、洗浄回数を増加させる傾向がある。
洗浄時の温度は、通常、10~80℃であり、特に20~70℃が好ましい。温度が高すぎると、洗浄液の揮発量が多くなり、還流設備を必要とする傾向がある。温度が低すぎると、洗浄効率が低下する傾向がある。洗浄時間は、通常、5分~12時間であり、特に30分~4時間が好ましい。洗浄時間が長すぎると、生産効率が低下する傾向があり、洗浄時間が短すぎると、洗浄が不十分となり、カルボン酸金属塩が除去できず、0.8質量%を超えて残ってしまう場合がある。また、洗浄回数は、通常、1~10回であり、特に1~5回が好ましい。洗浄回数が多すぎると、生産性が低下し、コストがかかる傾向がある。
洗浄されたPVA系樹脂は、通常、粉末状であり、かかるPVA系樹脂を連続式又はバッチ式にて熱風などで乾燥し、本実施形態で用いられるPVA系樹脂を得る。乾燥温度は、通常、50~150℃であり、好ましくは60~130℃であり、特に好ましくは70~110℃である。乾燥温度が高すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥温度が低すぎると、乾燥に長時間を要する傾向がある。乾燥時間は、通常、1~48時間であり、特に2~36時間が好ましい。乾燥時間が長すぎると、PVA系樹脂が熱劣化する傾向があり、乾燥時間が短すぎると、乾燥が不十分となったり、高温乾燥を要したりする傾向がある。
乾燥後のPVA系樹脂に含まれる溶媒の含有割合は、通常、0~10質量%であり、特に好ましくは0.01~5質量%であり、殊に好ましくは0.1~1質量%である。
かくして本実施形態で用いられるPVA系樹脂が得られる。
本発明の熱溶融型積層造形用材料中、PVA系樹脂の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30~95質量%がより好ましく、40~90質量%が更に好ましい。かかる含有量が少なすぎると、熱溶融型積層造形用材料に薬物を配合した時に、薬物の非晶状態を維持することができないために薬物の含有量が制限され、薬物の所望の効果を発揮しにくくなる場合がある。PVA系樹脂の含有量が多すぎると、薬物の効果が弱くなる傾向がある。
(ポリエチレングリコール)
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料は、重量平均分子量が200~1000のポリエチレングリコールを含有する。ポリエチレングリコールの重量平均分子量が小さすぎると、熱溶融型積層造形用材料を溶融混練した時にポリエチレングリコールがPVA系樹脂外へ排斥され、熱溶融型積層造形用材料の柔軟性が損なわれる傾向があり、また重量平均分子量が大きすぎるとPVA系樹脂外に排斥されることはないものの、熱溶融型積層造形用材料の柔軟性が低下してしまい、融点降下効果が阻害されたり、流動性が抑制される傾向がある。
ポリエチレングリコールの重量平均分子量は、200~800であることが好ましく、300~500がより好ましい。
なお、ポリエチレングリコールの重量平均分子量はFDA 21CFR §172.820に準拠する方法で測定する。
ポリエチレングリコールの含有量は、熱溶融型積層造形用材料中、1~25質量%であることが好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~15質量%が更に好ましく、5~10質量%が特に好ましい。熱溶融型積層造形用材料中のポリエチレングリコールの含有量が少なすぎると、可塑効果が不足するので熱溶融型積層造形用材料の融点が高くなり、分解温度との差が小さくなるので、溶融成形可能温度範囲が狭くなったり、熱溶融型積層造形用材料の流動性が低下したりする傾向があり、また多すぎると、熱溶融型積層造形用材料を溶融成形した際に柔らかくなり過ぎて成形できなくなる場合があり、いずれにしても安定的な製造が出来なくなる傾向がある。
なお、ポリエチレングリコールは、PVA系樹脂100質量部に対して、1~50質量部の範囲で含有することが好ましく、1~40質量部がより好ましく、5~30質量部が更に好ましく、8~20質量部が特に好ましい。PVA系樹脂に対してポリエチレングリコールの含有量が少なすぎるとPVA系樹脂同士の凝集力が高くなり、融点が高くなって成形性が低下し、安定なフィラメント作製が困難になる場合があり、また多すぎると柔軟性が高くなりすぎ、樹脂組成物の流動性が高くなりすぎ、こちらも同様にフィラメントの安定な作製が損なわれる場合がある。
(カルボン酸金属塩)
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料は、PVA系樹脂に対して0.8質量%以下のカルボン酸金属塩を含むものである。
カルボン酸金属塩の含有量が0.8質量%を超えると、溶融成形時の安定性が低下する傾向にあり、安定したフィラメントの作製が困難になる。カルボン酸金属塩の含有量は、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。下限は特に限定する必要はないが、カルボン酸金属塩がほとんど含有されていない、すなわち0.05質量%、好ましくは0.0001質量%である。
なお、カルボン酸金属塩はPVA系樹脂の加水分解に対する触媒作用を有するため、その含有量が多いと、PVA系樹脂を熱溶融させた際の加水分解による分子量低下によって、溶融成形性が低下したり、得られた成形体の物性が低下するものと推測される。
なお、本実施形態におけるカルボン酸金属塩の含有量は、熱溶融型積層造形用材料を水に溶かして、メチルオレンジを指示薬とし、塩酸にて中和滴定することにより求められる。
本発明におけるカルボン酸金属塩のカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、中でも水への溶解性の点からギ酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸であることが好ましく、特には酢酸が好ましい。
また、金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどの2価金属塩等が挙げられ、中でも使用量に対する効果が大きい点からアルカリ金属塩であることが好ましく、特にはナトリウム塩が好ましい。
具体的には、酢酸ナトリウムが最も好ましい。
本発明の熱溶融型積層造形用材料に所定量のカルボン酸金属塩を含有させる方法としては、(i)ケン化触媒として含有させる方法、(ii)PVA系樹脂製造後に添加する方法等の方法が挙げられるが、前述の通り、PVA系樹脂を製造する際、アルカリ金属の水酸化物がケン化触媒として用いられると、この触媒中のアルカリ金属が、ケン化時にカルボン酸金属塩として副生しPVA系樹脂に残存することから、これを利用することが好適である。
このように、PVA系樹脂製造時に触媒として用いられるアルカリ金属水酸化物に由来するカルボン酸アルカリ金属塩を本発明のカルボン酸金属塩に適用する場合、その熱溶融型積層造形用材料中の含有量を0.8質量%以下とするためには、(i)PVA系樹脂製造後にアルコール等の溶剤で洗浄する方法、(ii)ケン化時の触媒を少なくする方法が挙げられるが、工程が簡略である点で(i)の方法が好ましい。
(その他の可塑剤)
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料には、所望によりポリエチレングリコール以外の可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラメチレングリコール、重量平均分子量1000を超えるポリエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、3-メチル-1,3,5-ペンタントリオール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
また、本実施形態の熱溶融型積層造形用材料には、本発明の効果を阻害しない範囲において、その他の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、固着防止剤、滑剤等が挙げられる。
(熱溶融型積層造形用材料の作製法)
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料は、例えば、各成分を含有する固体分散体を得て、これを熱溶融型積層造形用材料とすることができる。かかる熱溶融型積層造形用材料の製造方法としては、下記の方法等が挙げられる。
(i)溶媒法:各成分を有機溶媒に溶解した後、その溶媒を除去する方法。
(ii)溶融法:各成分を加熱溶融混練させた後、冷却固化させる方法。
(iii)混合粉砕法(メカノケミカル法):圧縮、剪断、摩擦などの機械エネルギーを用いて、各成分を微細化し均一に分散させる方法。
上記の中でも、結晶制御の観点から(ii)の溶融法が好ましい。
以下に、溶融法について詳述する。
溶融法とは、各成分の混合物を加熱処理し、必要に応じて加熱処理物の形態を調整(粉砕、粉末化、成形等)することによって熱溶融型積層造形用材料を得る方法である。
各成分の混合物の加熱処理は、混合物全てを溶融する温度としてもよいし、両者の一部を溶融する温度としてもよいし、溶融に至らない場合でもその特性に応じて、成分の一部又は全部が非晶質化する温度条件を選択することが出来る。
なお、溶融に至らない場合であっても、成分の一部又は全部を非晶質化させることにより熱溶融型積層造形用材料を得ることができ、本発明においては、この場合も溶融法に含めることとする。
また、各成分の混合物とは、溶融した成分に残りの成分を配合する方法により得られる混合物や、全成分をドライブレンドした後に溶融混練する方法により得られる混合物などを含むものである。
加熱処理に使用される加熱手段は特に限定されるものではなく、当業者により利用可能な適宜の加熱手段を採用することができ、より具体的には、乾燥器、オイルバス、電気炉等による加熱、超音波照射による加熱、二軸式混練処理による加熱、単軸及び二軸溶融押出し処理(エクストルーダ)による加熱、マイクロ波照射による加熱などである。
加熱処理して得られる熱溶融型積層造形用材料は、当業者により利用可能な任意の手段により適宜所望の形状に形成できる。前記手段としては、例えば、粉砕手段、成形手段等を採用することができる。成形手段としては、押出成形(例えば、単軸押出、二軸押出、多軸押出、ホットメルトカレンダー法)、射出成形(例えば、二軸エクストルーダー)、圧縮成形(例えば、打錠、造粒)などが例示される。
加熱処理の温度は必ずしも各成分が溶融する温度は必要ではない。溶融温度よりも低い加熱温度で熱溶融型積層造形用材料を製造できる。本発明においても、なるべく低い温度で熱溶融型積層造形用材料を製造することによって、高温で分解、劣化等が起こる薬物を含有した場合には薬物含有熱溶融型積層造形用材料とすることができる。
加熱処理温度は、通常、80~220℃、好ましくは120~200℃、より好ましくは150~200℃である。なお、超音波照射は超音波を粉体混合物に当てるものであり、超音波照射による加熱の場合、超音波照射エネルギーは通常600~2000J、好ましくは700~1800J、より好ましくは800~1300Jである。このような装置としては、テクネア・エンジニアリング社製の超音波成形機USTM/L20などを使用することができる。かかる装置は、各成分の粉体混合物をかかる装置に備えられた臼内に充填し、この混合物に超音波を照射しつつ圧縮成形するものである。
また、二軸押出成形機、二軸エクストルーダー等には加熱手段を備えたものがあり、本発明における加熱処理としては、超音波照射しつつ圧縮成形する手段、加熱手段を備えた二軸押出成形機、加熱手段を備えた二軸エクストルーダーによる製造が好ましい。
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料は成型安定性に優れるので、当該熱溶融型積層造形用材料を含有する熱溶融型積層造形用フィラメントは、折り曲げてもヒビや折れ(割れ)が発生し難い。よって、熱溶融型積層造形用フィラメントを巻回することで巻回体とすることができ、さらにその巻回体をカートリッジに収納することで熱溶融型3Dプリンター装着用カートリッジとすることもできる。
(薬物含有熱溶融型積層造形用材料)
本実施形態の熱溶融型積層造形用材料には、本発明の効果を阻害しない範囲において薬物を含有することができる。薬物は、医薬品とした際に薬効を発揮する成分である。
熱溶融型積層造形用材料に含有される薬物としては以下のものが挙げられる。
(1)解熱、鎮痛、抗炎症薬
(2)精神安定薬
(3)抗精神病薬
(4)抗菌薬
(5)抗生物質
(6)抗腫瘍薬
(7)抗高脂血症薬
(8)鎮咳・去痰薬
(9)筋弛緩薬
(10)抗てんかん薬
(11)抗潰瘍薬
(12)抗うつ薬
(13)抗アレルギー薬
(14)強心薬
(15)不整脈治療薬
(16)血管拡張薬
(17)降圧利尿薬
(18)糖尿病治療薬
(19)抗結核薬
(20)麻薬拮抗薬
(21)ホルモン薬
(22)骨・軟骨疾患予防・治療剤
(23)関節疾患治療剤
(24)頻尿治療剤塩酸
(25)抗アンドロゲン剤
(26)脂溶性ビタミン薬
(27)ビタミン誘導体
本実施形態において、薬物の体内における溶解性向上の観点から、薬剤は難溶性薬物を用いることが好ましい。本実施形態に好適に用いられる難溶性薬物としては、例えば、カルバマゼピン、インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、フェナセチン、フェニルブタゾン、グリセオフルビン、アゾール系化合物、フェニトイン、二硝酸イソソルビット、ニトロフェニルピリジン系化合物などが挙げられる。ニトロフェニルピリジン系化合物はニトロフェニル基とピリジン環構造を有する難溶性化合物を包含する。ニトロフェニルピリジン系化合物としては、ピリジン環の2位~4位のいずれかにニトロフェニル基が結合した構造を有する化合物が好ましい。具体的な化合物としては、ニフェジピン、ニルバジピンなどが挙げられる。
熱溶融型積層造形用材料中の薬物の含有量は、生物学的利用能(Bioavailability)に応じて適宜調整される。薬物は、一般に医療、食品分野などで用いられる希釈剤などによって希釈されたものであってもよい。また薬物の苦味のマスキングを目的として処理したものを用いてもよい。
熱溶融型積層造形用材料中の薬物の含有量は、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。薬物の含有量が少なすぎると、薬効を十分に発揮できない場合があり、また多すぎると、人体に有害となる場合がある。
また、薬物含有熱溶融型積層造形用材料には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、pH調整剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤及びコーティング剤などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
(実施例1)
〔PVA系樹脂の作製〕
還流冷却機、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル280部、メタノール300部、およびアゾビスイソブチロニトリル0.01モル%(対仕込み酢酸ビニル)を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら還流が開始するまで温度を上昇させ、還流が開始してから30分後に酢酸ビニル720部を9.5時間等速で滴下させ重合を行った。滴下終了後、酢酸ビニルの重合率が92%となった時点で、m-ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し、酢酸ビニル重合体のメタノール溶液(樹脂分53%)を得た。
続いて、上記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈して、濃度50%に調整してニーダーに仕込んだ。溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液(ナトリウム換算)を重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して6.0ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で固液分離により濾別し、乾燥した。
得られたPVA系樹脂の乾燥粉末のケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、88モル%であり、20℃における4%水溶液の粘度は、5.4mPa・sであり、平均重合度は550であった。
上記で得られたPVA系樹脂の洗浄を行った。まずPVA系樹脂の乾燥粉末を浴比10倍のメタノール中に投入して3時間撹拌し、洗浄した。その後、固液分離し、得られたPVA系樹脂の粉末を90℃で揮発分が1%以下になるまで真空乾燥し、PVA系樹脂の乾燥粉末(PVA系樹脂A)を得た。
酢酸ナトリウム含有量は、PVA系樹脂の乾燥粉末を水に溶かして、メチルオレンジを指示薬とし、塩酸にて中和滴定することにより求めた。酢酸ナトリウムの含有量は0.05%であった。
以下に中和滴定の方法を詳細に説明する。
まず、三角フラスコにPVA系樹脂の乾燥粉末3.00gと水100mlを投入し、加熱撹拌溶解機に置き、PVA系樹脂の乾燥粉末が完全に溶解するまで加熱撹拌した。次に、空冷管を外し、30分間放置し、PVA系樹脂の乾燥粉末中の残存溶剤を追い出し、室温まで冷却した。
得られたPVA系樹脂水溶液100mlと純水(空試験、基準色)100mlに、それぞれメチルオレンジを3滴滴下した。PVA系樹脂水溶液のほうに0.1N-HClを1滴ずつ滴下し、純水と同じ色を呈するまで滴定を続け、中和に要した0.1N-HCl量から酢酸ナトリウムの量を算出した。
〔フィラメントの作製〕
上記で得られたPVA系樹脂A(乾燥粉末)100部とポリエチレングリコール(重量平均分子量400)11部を混合し、二軸押出機に供給した。下記条件で溶融混練し、直径1.75mmのストランド状に押出して、ベルト上で空冷し、リールに巻き取り、フィラメントを得た。
<溶融混練条件>
押出機:テクノベル社製15mmφ L/D=60
押出温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=90/150/180/190/200/200/200/200/200(℃)
回転数:200rpm
吐出量:1.5kg/時間
〔柔軟性評価〕
得られたフィラメントを、リール(直径100mm)に巻き取り、以下の評価基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
<評価基準>
○(良好):折れることなく巻き取りができる。
×(不良):巻き取る途中でフィラメントが折れる、又はヒビが発生する。
〔造形性評価〕
熱溶融型3Dプリンター(Ninjabot社製「FDM-200HW-X」(商品名))に上記で得られたフィラメント(直径1.75mm)をセットし、図1に示すように、プラットフォーム3の上面(X-Y面)にZ軸方向を積層方向としてタブレット1(目標直径5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mmの11種類、高さ2mm)を造形した。
得られたタブレットの直径を測定し、目標とする直径に対する比(実測直径/目標直径)を算出した。その結果を表1に示す。
(実施例2)
〔PVA系樹脂の作製〕
実施例1において、ケン化時間を調整してケン化度が72モル%のPVA系樹脂を得た以外は、実施例1と同様にしてPVA系樹脂Bを作製した。
PVA系樹脂Bの20℃における4%水溶液の粘度は5.4mPa・sであり、平均重合度は550であり、酢酸ナトリウムの含有量は0.05%であった。
〔フィラメントの作製と評価〕
上記で得られたPVA系樹脂B(乾燥粉末)100部とポリエチレングリコール(重量平均分子量300)5.3部を混合し、二軸押出機に供給し、実施例1と同様にしてフィラメントを得た。
得られたフィラメントについて、実施例1と同様にして柔軟性及び造形性の評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、ポリエチレングリコールとして重量平均分子量400のポリエチレングリコールを用い、その含有量を33部に変えた以外は、実施例2と同様にしてフィラメントを作製した。得られたフィラメントについて、実施例1と同様にして柔軟性及び造形性の評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例1)
〔PVA系樹脂の作製〕
実施例1において、PVA系樹脂の洗浄を行わなかった以外は、実施例1と同様にしてPVA系樹脂Cを作製した。
PVA系樹脂Cのケン化度は88モル%であり、20℃における4%水溶液の粘度は5.4mPa・sであり、平均重合度は550であり、酢酸ナトリウムの含有量は1.2%であった。
〔フィラメントの作製と評価〕
上記で得られたPVA系樹脂C(乾燥粉末)100部とポリエチレングリコール(重量平均分子量400)11部を混合し、二軸押出機に供給し、実施例1と同様にしてフィラメントの作製を行ったが、熱劣化によりPVA系樹脂Cが分解し、フィラメントを作製することができなかった。
なお、比較例1は、PVA系樹脂Cの分解によりフィラメントが作製できなかったため、造形性の確認試験は行わなかった。
(比較例2)
実施例1において、ポリエチレングリコールとして重量平均分子量10000のポリエチレングリコールを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィラメントを作製した。得られたフィラメントについて、実施例1と同様にして柔軟性の評価を行った。その結果を表1に示す。
なお、比較例2は、フィラメントの製造安定性の確認試験において、安定的にフィラメントの巻き取りを行うことができなかったため、造形性の確認試験は行わなかった。
(比較例3)
〔フィラメントの作製と評価〕
実施例1において、ポリエチレングリコールをグリセリン11部に変更した以外は、実施例1と同様にしてフィラメントを得た。
得られたフィラメントについて、実施例1と同様にして柔軟性及び造形性の評価を行った。その結果を表1に示す。
Figure 0007355016000001
表1の結果より、本発明の熱溶融型積層造形用材料は、ストランド状に安定的に製造することができ、また、薬物を含有させた場合においても造形性が良好となることが予測できる。
これに対し、樹脂中に酢酸ナトリウムが1.2質量%含有されたPVA系樹脂を用いた比較例1は溶融成形時に加熱によりPVA系樹脂が熱分解してしまい、溶融成形することができず、重量平均分子量が10000のポリエチレングリコールを使用した比較例2は溶融成形後のフィラメントに多くの折れが発生し、いずれも安定的な製造はできなかった。また、グリセリンを用いた比較例3は、柔軟性が高すぎてプリンターノズルから樹脂を送り出すことができなかった。
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2018年7月30日出願の日本特許出願(特願2018-142344)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 タブレット
3 プラットフォーム

Claims (6)

  1. 30~95質量%のポリビニルアルコール系樹脂、1~25質量%の重量平均分子量200~1000のポリエチレングリコール、および前記ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.0001質量%以上0.5質量%以下の酢酸アルカリ金属塩を含有する熱溶融型積層造形用材料。
  2. 前記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度が70~100モル%である、請求項1に記載の熱溶融型積層造形用材料。
  3. 前記ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度が200~1500である、請求項1又は2に記載の熱溶融型積層造形用材料。
  4. 前記ポリエチレングリコールの含有量が、前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して1~50質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱溶融型積層造形用材料。
  5. さらに薬物を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の熱溶融型積層造形用材料。
  6. フィラメント状である請求項1~5のいずれか1項に記載の熱溶融型積層造形用材料。
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