JP7352574B2 - ポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
このようなポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法の一例として、ラジカル重合法が知られている。例えば、ビニルホスホン酸とビニルホスホン酸ジメチルとの共重合体の製造方法として、無溶媒で光重合開始剤を用いて紫外光を照射することによりラジカル重合を行う方法が知られており(非特許文献1)、非特許文献1においては、重量平均分子量12,700~19,120の上記共重合体が非常に短い反応時間で得られたと報告されている。
また、本発明者らが、ビニルホスホン酸とビニルホスホン酸ジメチルとの共重合体を、非特許文献1に記載の方法で製造してみたところ、熱暴走反応が起こり、反応系内の内温上昇を制御することが困難なことがわかった。
本発明の課題は、重合反応時の反応系内の内温上昇を制御でき、且つポリマー溶液の形態で共重合体が合成される、ポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法を提供することにある。
<1> 以下の式(1)で表される化合物(以下、「モノマー(1)」ともいう)と以下の式(2)で表される化合物(以下、「モノマー(2)」ともいう)とを、ラジカル重合開始剤の存在下且つ含水溶媒中で重合させる重合工程を含む、ポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法(以下、「本発明のポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法」、「本発明の製造方法」ともいう)。
R3は、-OH、-O-、-O-M+、又は置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示し(M+は、対イオンを示す)、
R4は、置換又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示す。
但し、R3及びR4がともにアルコキシ基である場合、R3及びR4は隣接するリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕
<3> 前記重合工程が、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを10:90~90:10のモル比で重合させる工程である、<1>又は<2>に記載の製造方法。
<6> 前記ポリビニルホスホン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)が、3,000~12,000の範囲内である、<1>~<5>のいずれかに記載の製造方法。
本発明の重合性組成物を用いてポリビニルホスホン酸系共重合体を製造することによって、重合反応時の反応系内の内温上昇を制御しながら、ポリマー溶液の形態でポリビニルホスホン酸系共重合体を合成できる。
本発明のポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法は、以下の式(1)で表される化合物と以下の式(2)で表される化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下且つ含水溶媒中で重合させる重合工程を含むものである。
R3は、-OH、-O-、-O-M+、又は置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示し(M+は、対イオンを示す)、
R4は、置換又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示す。
但し、R3及びR4がともにアルコキシ基である場合、R3及びR4は隣接するリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕
モノマー(1)の使用量は、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは22.5モル%以上であり、また、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、特に好ましくは77.5モル%以下である。具体的な範囲としては、10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上80モル%以下がより好ましく、22.5モル%以上77.5モル%以下が特に好ましい。
これらの中でも、モノマーの溶解性や重合反応の反応性の観点から、ビニルホスホン酸メチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸エチル、ビニルホスホン酸ジエチルが好ましく、ビニルホスホン酸メチル、ビニルホスホン酸ジメチルがより好ましく、ビニルホスホン酸ジメチルが特に好ましい。
また、モノマー(1)及びモノマー(2)の合計使用量は、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、特に好ましくは97.5モル%以上であり、また、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、好ましくは100モル%以下である。
有機過酸化物系開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ジラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジ-tert-ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;パーオキシケタール類;アルキルパーオキシエステル類;パーオキシカーボネート類等が挙げられる。有機アゾ化合物系開始剤としては、アゾアミジン類;アゾイミダゾリン類;4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾニトリル類;アゾエステル類;2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾアミド類等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の中でも、重合反応の反応性の観点から、有機アゾ化合物系開始剤が好ましく、水溶性有機アゾ化合物系開始剤がより好ましい。
水溶性有機アゾ化合物系開始剤としては、重合反応の反応性の観点から、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物が好ましく、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩が特に好ましい。
ラジカル重合開始剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合時間は、通常30分間~72時間、好ましくは1~36時間、より好ましくは2~24時間である。
また、モノマー(1)に由来する構造単位とモノマー(2)に由来する構造単位とのモル比<(1):(2)>は、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20、特に好ましくは22.5:77.5~77.5:22.5である。
また、ポリビニルホスホン酸系共重合体としては、ポリビニルホスホン酸系水溶性共重合体が好ましい。なお、本明細書において、ポリビニルホスホン酸系共重合体10質量部を水(25℃)90質量部に添加及び混合した場合に目視で透明となるときは、そのポリビニルホスホン酸系共重合体は水溶性というものとする。
また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~3.0の範囲内、より好ましくは1.0~2.0の範囲内である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値を意味する。具体的には、後記実施例に記載の方法により測定することができる。
したがって、本発明の製造方法は、ポリビニルホスホン酸系共重合体の工業的な製造方法として極めて有用である。
本発明の重合性組成物は、モノマー(1)と、モノマー(2)と、ラジカル重合開始剤と、水とを含有するものである。
本発明の重合性組成物における各種文言の意義、各成分の含有量等は、「ポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法」について説明した各種文言の意義、各成分の使用量等と同様である。
(31P-NMR測定条件)
NMR測定装置 : JEOL AL-400(日本電子(株)製)
溶媒 : 重水
(Mw測定条件)
カラム : Shodex GPC SB-G 6B+SB-805 HQ+SB-804 HQ(昭和電工(株)製)
溶媒 : 0.2mol/L 塩化ナトリウム水溶液
測定温度 : 40℃
流速 : 0.5mL/分
検量線 : 標準ポリエチレングリコール/ポリオキシエチレンスタンダード
500mLフラスコに、モノマーとしてビニルホスホン酸(Euticals製)93.0gとビニルホスホン酸ジメチル(丸善石油化学製)117.1g、重合溶媒としてイオン交換水140.0gを加えてよく混合した。
別途、100mLフラスコに、開始剤として2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フイルム和光純薬製。以下、「AIBA」ともいう)5.7g(20.9mmol、モノマー合計100モルに対して1.2モル)、イオン交換水64.4gを加えた後、AIBAが溶解するまで撹拌した。この溶液を「開始剤溶液」ともいう。
次に、73℃に予め予熱しておいたウォーターバスに、モノマーを仕込んでおいた上記500mLフラスコをつけ、内温が69℃となった時点で開始剤溶液を滴下し、重合反応を開始した。開始剤溶液は6時間かけて滴下し、滴下終了後に2時間熟成させた。重合反応中は反応液の温度が70℃±2℃となるようにウォーターバスの温度を適宜調節した。その結果、反応液の温度は69.0~70.8℃の範囲で制御が可能だった。
重合反応終了後、氷浴でフラスコを冷却して反応を停止し、微黄色透明液体の重合物を得た。ビニルホスホン酸の転化率は90.7%、ビニルホスホン酸ジメチルの転化率は84.8%、Mwは7,400であった。
モノマーの仕込み量をビニルホスホン酸44.3g、ビニルホスホン酸ジメチル165.9gとした以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行った。
その結果、実施例1と同様に重合反応中の反応液の温度は69.0~70.8℃の範囲で制御可能であった。ビニルホスホン酸の転化率は91.2%、ビニルホスホン酸ジメチルの転化率は87.0%、Mwは6,100であった。
モノマーの仕込み量をビニルホスホン酸148.2g、ビニルホスホン酸ジメチル62.2gとした以外は実施例1と同様の方法で重合反応を行った。
その結果、実施例1と同様に重合反応中の反応液の温度は69.0~70.8℃の範囲で制御可能であった。ビニルホスホン酸の転化率は90.5%、ビニルホスホン酸ジメチルの転化率は82.9%、Mwは8,800であった。
ビニルホスホン酸とビニルホスホン酸ジメチルを、無溶媒でUV照射により重合させた。
すなわち、モノマーとしてビニルホスホン酸3.0gとビニルホスホン酸ジメチル3.0g、光重合開始剤としてDAROCURE1173 0.090gとジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド 0.090gをよく混合した。得られた混合物を0.50g採取し5cm四方のPTFEプレートに載せた。ここに照度75mw/cm2のUVを1分間照射し、重合反応中の混合物の温度を測定した。重合反応中に温度は上がり続け、UV照射開始から1分間経過後の温度は104.0℃であった。重合反応終了後、黄色の硬化物として重合物を得た。
モノマーの仕込み量をビニルホスホン酸4.0g、ビニルホスホン酸ジメチル2.0gとした以外は比較例1と同様の方法で重合反応を行った。比較例1と同様に重合反応中に温度は上がり続け、UV照射開始から1分間経過後の温度は108.0℃であった。
モノマーの仕込み量をビニルホスホン酸4.5g、ビニルホスホン酸ジメチル1.5gとした以外は比較例1と同様の方法で重合反応を行った。比較例1と同様に重合反応中に温度は上がり続け、UV照射開始から1分間経過後の温度は108.0℃であった。
モノマーの仕込み量をビニルホスホン酸4.8g、ビニルホスホン酸ジメチル1.2gとした以外は比較例1と同様の方法で重合反応を行った。比較例1と同様に重合反応中に温度は上がり続け、UV照射開始から1分間経過後の温度は95.0℃であった。
一方、比較例1~4は、非特許文献1の記載に準じて、無溶媒で光重合開始剤を用いて紫外光を照射することにより、ビニルホスホン酸とビニルホスホン酸ジメチルをラジカル重合させてポリビニルホスホン酸系共重合体の製造を試みた結果であるが、いずれも熱暴走反応が起こり、反応系内の内温上昇を制御することができなかった。また、ポリビニルホスホン酸系共重合体の硬化物しか得られないことが確認された。
Claims (9)
- 以下の式(1)で表される化合物と以下の式(2)で表される化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下且つ含水溶媒中で重合させる重合工程を含み、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計使用量が、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、95モル%以上100モル%以下である、ポリビニルホスホン酸系共重合体の製造方法。
R3は、-OH、-O-、-O-M+、又は置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示し(M+は、対イオンを示す)、
R4は、置換又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示す。
但し、R3及びR4がともにアルコキシ基である場合、R3及びR4は隣接するリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕 - 式(2)で表される化合物が、ビニルホスホン酸メチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸エチル及びビニルホスホン酸ジエチルから選ばれる1種又は2種以上である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記重合工程が、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物とを10:90~90:10のモル比で重合させる工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記ラジカル重合開始剤が、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]及び2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記重合工程の重合温度が、60℃以上80℃以下の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルホスホン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)が、3,000~12,000の範囲内である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
- 式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計使用量が、重合工程で使用するモノマー総量100モル%に対して、97.5モル%以上100モル%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法(但し、前記重合工程で(メタ)アクリル酸を用いる場合を除く)。
- 以下の式(1)で表される化合物と、以下の式(2)で表される化合物と、ラジカル重合開始剤と、水とを含有し、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との合計含有量が、重合性組成物中のモノマー総量100モル%に対して、95モル%以上100モル%以下である、重合性組成物。
R3は、-OH、-O-、-O-M+、又は置換若しくは非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示し(M+は、対イオンを示す)、
R4は、置換又は非置換の炭素数1~10のアルコキシ基を示す。
但し、R3及びR4がともにアルコキシ基である場合、R3及びR4は隣接するリン原子と一緒になって環を形成していてもよい。〕
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