JP4059749B2 - (メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法 - Google Patents
(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色相が良く、しかも生産性良く得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法として、従来より多数の方法が提案されている。次亜リン酸(塩)存在下での(メタ)アクリル酸系水溶性重合体の製造方法についても多数提案されており、例えば、特許文献1〜3に製法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
米国特許第2,789,099号明細書
【特許文献2】
特開昭50−15881号公報
【特許文献3】
特開昭55−127413号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、リンが入ると、富栄養化の問題が生じ、不純物も多い。また、次亜リン酸を用いない場合には、過硫酸塩を多量に必要とするため、不純物が増加し、各種性能が低下するおそれがあり、また、色相が悪くなるという問題が生じる。特に高濃度で低分子量の酸型(メタ)アクリル酸系重合体を得ようとした場合、色が悪くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、着色性が極めて少なく、しかも生産性良く得られる高濃度、高純度、低分子量の酸型の(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決する手段】
発明者等は、従来の問題を解決すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液に過硫酸塩を添加して重合して(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造するに際して、重合時の最終固形分濃度を20質量%以下の低濃度重合とし、かつ下記U値で定義される重合における酸濃度を10〜30という特定値に制御することにより、色相が格段と改良されることを見出した。更に、減圧濃縮を80℃以下で行い、固形分濃度25%以上とすることにより、高濃度、低分子量の酸型の(メタ)アクリル酸系重合体を生産性良く得ることができることを見出した。すなわち、上記課題は、以下の(1)及び(2)によって解決される。
【0007】
(1)(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液に過硫酸塩を含む開始剤を添加して重合する(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法であって、重合時の最終固形分濃度が20質量%以下であり、かつ下記で定義されるU値が10〜30であることを特徴とする中和度50モル%以下の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。
【0008】
【数2】
【0009】
(2)重合時の最終固形分濃度が20質量%以下の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体溶液を80℃以下で減圧濃縮し、濃縮後の固形分濃度が25質量%以上であることを特徴とする上記(1)記載の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法。
【0010】
上記U値における「重合時の最終固形分濃度」(質量%)は、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体を重合させ、必要に応じて熟成させた後の、該反応液中のモノマー、ポリマー、開始剤等からなる固形分成分の濃度を言う。重合時の最終固形分濃度(質量%)は、投入される全量中の固形分量の割合を計算することにより算出することができ、具体的には、初期仕込みの水量及び重合時に添加される水量と、重合開始時の各種固形分材料の濃度、すなわち開始剤濃度、モノマー濃度等、を種々設定することにより、適宜設定することができる。
【0011】
「添加する過硫酸塩の、モノマー1モル当たりの重量」(g)は、重合反応において、反応液中に添加される全ての過硫酸塩の、モノマー1モル当たりの重量(g)を言い、ここにおける「モノマー」とは、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体のみならず、それ以外に添加される任意の単量体をも含むものである。
【0012】
本発明における上記U値は10〜30、好ましくは12〜28である。U値がが30を越えると、色が悪くなり好ましくない。U値が低いほど、色がきれいになり好ましい。一方で、U値が10未満であると、生産性が悪くなり、好ましくない。
【0013】
本発明においては、「(重合体固形分中に含まれる硫黄原子(S)の重量比)×(得られる重合体の重量平均分子量;Mw)」で定義されるS値が、50〜200の範囲であることが好ましい。S値がこの範囲において、良好な色相が得られるとともに、目標の分子量が得られ、好ましい。
【0014】
また、本発明において、「{1H−NMRスペクトルにおける(3.3〜4.3ppmのシグナルの総積分比)/(0.3〜4.3ppmのシグナルの総積分比)}×(得られる重合体の重量平均分子量;Mw)」で定義されるT値が、60〜100の範囲であることが好ましい。T値がこの範囲において、安定性が良好となり、好ましい。
【0015】
更に、本発明において、重合時の最終固形分濃度は、5〜20質量%の低濃度であることが好ましく、8〜18質量%であることがより好ましく、10〜17質量%であることが更に好ましい。かかる低濃度で重合を行った後、さらに減圧濃縮を好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下で行い、減圧濃縮後の固形分濃度を25%以上、より好ましくは28%以上の高濃度とすることが好ましい。これにより、色相が良く、しかも生産性良く、高濃度、低分子量の酸型の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造することができる。
なお、本発明の方法は、用いる装置の材質が、SUS304又は316である時に、特に適している。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に詳述する。
本発明の方法により得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜50,000、好ましくは2,000〜40,000、より好ましくは3,000〜30,000である。なお、本明細書における重量平均分子量、数平均分子量は、実施例の分子量測定の項で記載した方法によって測定した数値である。
【0017】
本発明に従い得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体は、炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)を主とする重合体のことをいう。具体的には、炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)100〜70モル%及びその他共重合可能な単量体(b)由来の構造単位(II)0〜30モル%(但し、(I)と(II)の合計量は100モル%である)からなる重合体が挙げられ、好ましくは、炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)100〜80モル%及びその他共重合可能な単量体(b)由来の構造単位(II)0〜20モル%からなる。より好ましくは炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)100〜90モル%及びその他共重合可能な単量体(b)由来の構造単位(II)0〜10モル%からなる重合体である。さらに好ましくは、炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)100〜95モル%及びその他共重合可能な単量体(b)由来の構造単位(II)0〜5モル%からなる(但し、(I)と(II)の合計量は100モル%である)重合体である。最も好ましくは炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)100モル%からなる重合体である。上記炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)由来の構造単位(I)は、アクリル酸(塩)、メタクリル酸(塩)、クロトン酸(塩)由来の構造単位であり、好ましくはアクリル酸(塩)、メタクリル酸(塩)由来の構成単位であり、より好ましくはアクリル酸(塩)由来の構成単位である。これら単量体は1種または2種以上含んでもよい。
【0018】
本明細書において「(メタ)アクリル酸(塩)」とは、(メタ)アクリル酸及び/または(メタ)アクリル酸塩である。(メタ)アクリル酸塩としては特に限定はされないが、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩;(メタ)アクリル酸アンモニウム;(メタ)アクリル酸有機アミン塩等を1種または2種以上含んでいてもよい。
【0019】
その他共重合可能な単量体(b)由来の構造単位(II)は、特に限定されるものではなく、必要に応じて併用してもよい。例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体及び不飽和多価カルボン酸系不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシ−プロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド等の不飽和スルホン酸単量体;上記不飽和ジカルボン酸系単量体、上記不飽和多価カルボン酸系単量体または上記不飽和スルホン酸系単量体を、1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で部分中和または完全中和してなる中和物;2−ヒドキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシアクリル酸、ビニルアルコール、アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有不飽和単量単量体及びこれらのアルキレンオキシド付加体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸等の含リン単量体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン等を挙げることができる。これらの単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の中和度は、重合体の全酸基の中和度が50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。この重合体の中和度が50モル%を超えると添加剤の種類によっては、配合性や後反応による変性の制限等の問題がある。
【0021】
上記(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法としては、反応器内の単量体濃度と重合開始剤濃度とを所定範囲に調整しながら重合させることで製造することができる。例えば、(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液に重合開始剤を添加して重合する(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製法であって、反応器に該(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液の全量と該重合開始剤とを徐々に添加して重合を開始させる段階(A)と、次いでこれに更に重合開始剤を添加しつつ重合を継続させる段階(B)と、該重合開始剤の全量添加後に該反応液を熟成させる段階(C)を経て、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造することが好ましい。この方法によれば、重合開始剤および単量体の残存量の少ない(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造することができ、得られた重合体の保存安定性に優れる。
【0022】
(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液を構成する溶媒は、水系溶媒が用いられ、特に好ましくは水単独で用いられるが、必要に応じて親水性有機溶媒を水に適宜添加してもよい。上記親水性有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上適宜選んで使用できる。親水性有機溶媒の添加割合は、水との混合溶媒全量に対し、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。この割合が20質量%を超えると、該重合体が分離及び/または沈殿するおそれがあり、好ましくない。
【0023】
本発明の製造方法は、上記(メタ)アクリル酸(塩)を主成分とする単量体成分を水系溶媒にて重合し、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を得るものである。この際、段階(A)として反応器に該(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液の全量と該重合開始剤の一部とを徐々に添加して重合を開始させることが好ましい。
(メタ)アクリル酸(塩)系単量体の添加方法は、単量体成分炭素数3〜6のモノカルボン酸モノエチレン性不飽和単量体(a)及びその他共重合可能な単量体(b)の使用量の一部を反応器に初期に仕込み次いで残部を連続的に滴下するか、全量を連続的に滴下する。本発明では、全使用量の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは全量を、実質的に連続的に滴下することにより反応系に添加する。滴下の割合が50質量%未満であると、重合初期に重合が急激に進行してしまい、温度及び分子量の制御が困難になり、好ましくない。
【0024】
この方法では、反応器への(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液の全量の仕込み終了時までに重合開始剤を徐々に添加することが好ましい。この反応器への単量体の仕込みは、好ましくは60分〜300分、より好ましくは90分〜270分、更に好ましくは120分〜240分、特に好ましくは150分〜210分で行なう。このように反応器への単量体の仕込みと重合開始剤の仕込みとを連続的に行なうことで、反応器内の重合体濃度と重合開始剤濃度とをほぼ一定に保つことができるため、得られる重合体の分子量が製造後も安定する。
【0025】
本発明では、重合開始剤として過硫酸塩を少なくとも1種用いる。ここで、過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等を挙げることができる。
本発明では、更に重合開始剤として、それ以外の重合開始剤を併用してもよい。併用できる重合開始剤は特に限定されるものではないが、過酸化物などを挙げることができ、例えば、過酸化水素;2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、アゾビスイソブチルニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオサイド、t−ブチルヒドロパーオサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられる。これらは、の1種類のみであっても2種類以上含んでいてもよい。中でも、過酸化水素、有機過酸化物、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩が好ましく、過酸化水素、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩がより好ましく、2,2'−アゾビス(2−アミノジプロパン)2塩酸塩がさらに好ましい。
【0026】
上記重合開始剤の添加量は、目的の分子量によって適宜設定すればよい。なお、滴下時の重合開始剤の濃度は、特に限定されないが、過硫酸塩が開始剤である場合には、好ましくは3〜50質量%水溶液、より好ましくは5〜40質量%水溶液、さらに好ましくは10〜30質量%水溶液である。アゾ系化合物を開始剤として併用する場合には、好ましくは0.1〜5質量%水溶液、より好ましくは0.3〜3質量%水溶液、さらに好ましくは0.5〜2質量%水溶液である。
【0027】
また、重合開始剤として過酸化物と還元剤や金属塩等を組み合わせてもよい。還元剤や金属塩等は、特に限定されるものではないが、亜硫酸水素ナトリウムやFe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、V2+、V3+、VO2+等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウム、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+が好ましく、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+がより好ましい。Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+を併用することにより、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が狭くなり、好ましい。重合開始剤と還元剤や金属塩を組み合わせる時の還元剤や金属塩の添加量は特に限定されないが、金属塩の場合には重合終了時の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体に対して0.1質量ppm〜1,000質量ppmが好ましく、0.5質量ppm〜500質量ppmがより好ましく、1質量ppm〜300質量ppmがさらに好ましい。金属塩の添加量が0.1質量ppm未満であると分散度を狭くする効果がなく、1,000質量ppmを超えるともはや添加の効果が無く、経済的面から好ましくない。
【0028】
次いで、段階(B)として、該反応器に更に重合開始剤を添加しつつ重合を継続させることが好ましい。この際、添加する重合開始剤は、段階(A)で使用できるものを添加することができる。段階(A)と同じものであっても異なってもよい。また、重合開始剤量は、単量体水溶液に対して、好ましくは100〜10,000質量ppm、より好ましくは200〜8,000質量ppm、更に好ましくは300〜5,000質量ppm、特に好ましくは500〜3,000質量ppmとする。また、重合開始剤の添加時間は、段階(A)の後、好ましくは1分以上3時間以下、より好ましくは5分以上3時間以下、更に好ましくは10分以上2時間以下、特には15分以上1時間半以下である。(メタ)アクリル酸(塩)単量体滴下終了後1分未満に重合開始剤の滴下を終了すると、(メタ)アクリル酸(塩)単量体が大量に残存し、重合体の重量平均分子量が変動しやすく、該重合体水溶液の粘度が上がる等の安定性が悪くなる。一方、重合開始剤の滴下を3時間を超えて行うと、該重合体の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が大きくなり、さらに生産性も低くなり経済的面から好ましくない。このように、単量体滴下終了後に更に重合開始剤を添加することで、残存する単量体成分を大幅に低減でき、得られる該重合体の安定性が高くなる。
【0029】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法では、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、分子量調整剤として、重合開始剤と併用して連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ジ亜リン酸、ジ亜リン酸塩、メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸等が挙げられるが特に限定されず、これらを単独で用いてもよく、2種以上の併用系でもよい。使用量としては、特に限定はないが、質量比で開始剤量の3倍以内であることが好ましい。3倍を超えて使用しても、もはや添加効果は現れず、該重合体の純分の低下を招き、好ましくない。また、連鎖移動剤の添加方法は適宜設定すればよい。
【0030】
本発明の方法では、次いで段階(C)として、反応器への該重合開始剤の添加後に該反応液を熟成させることが好ましい。このように段階(B)の後に熟成時間を設けることで、重合開始剤の残存量を低減することができ、得られる重合体の重量平均分子量の変動を抑制することができる。「熟成」とは、段階(B)の後に、反応器に単量体と重合開始剤とを添加することなく、反応器内の単量体の重合反応を促進する工程をいう。この段階(C)で特定する熟成時間は、30分以上5時間、好ましくは40分〜3時間、特に好ましくは60分〜2時間で十分である。なお、段階(B)と段階(C)との合計は50分以上、好ましくは55分〜5時間、特には60分〜3時間である。
【0031】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法における中和度は50モル%以下、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。該単量体の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0032】
中和は単量体を反応器に供給する前に予め行われてもよいし、段階(A)、(B)、(C)のいずれでも、更に熟成後、すなわち段階(C)の後であってもよい。重合開始から、重合終了時までの中和度は上記範囲内であれば、一定である必要は無く、重合前半の中和度と重合後半の中和度が異なってもよい。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法における重合温度は、特に限定されるものではなく、分子量、重合濃度等によって適宜設定すればよい。好ましくは50℃〜150℃、更に好ましくは80℃〜120℃、特に好ましくは常圧下沸点である。
【0034】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法における重合時の最終固形分濃度は、20質量%以下、より好ましくは18質量%以下であり、これに見合うように滴下物の濃度調整を行うことが好ましい。
【0035】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法における重合圧力は、特に限定されず、加圧、常圧(大気圧)、減圧いずれかでのよく、場合により適宜設定すればよいが、常圧が好ましい。
【0036】
本発明では、段階(C)の後に、例えば反応器の温度が、70℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下になったら、反応器に過酸化物分解促進剤を添加して、残存する重合開始剤を分解してもよい。70℃を越えると過酸化物分解促進剤が消失してしまい、残存している重合開始剤を消失させることができない恐れがある。また、添加時間は、1分から2時間、好ましくは5〜90分、より好ましくは10〜60分である。
【0037】
このような促進剤としては還元剤が一般的に挙げられるが特に限定されるものではない。還元剤として、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩類;チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩;L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム等のL−アスコルビン酸類;亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩;ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム等の酸塩類;ホスフィン酸ナトリウム、ホスフィン酸カリウム等のホスフィン酸類;鉄塩、銅塩等の重金属塩類が挙げられる。好ましくは亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウムが挙げられ、さらに好ましくは亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。これらの1種類のみであっても2種類以上含んでいてもよい。
【0038】
反応器に添加する過酸化物分解促進剤の量は、特に限定されないが、該水溶液に対して5,000質量ppm以下、好ましくは3,000質量ppm以下、より好ましくは2,000質量ppm以下、さらに好ましくは1,000質量ppm以下、最も好ましくは700質量ppm以下である。この過酸化物分解促進剤の量が5,000質量ppmを超えるともはや添加量に見合う効果は得られず、不純物が増加する結果となり、使用する用途によっては、充分な性能が発揮されないといった問題を生じる。使用する促進剤は、固体でもよいが、水溶液に溶解してしようすることが簡便である。
【0039】
本発明の製造方法によれば、得られた(メタ)アクリル酸(塩)系重合体に残存する重合開始剤の量は、該重合体調製後の水溶液に対して10質量ppm以下とすることができる。残存する重合開始剤の量は、好ましくは7質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下、最も好ましくは1質量ppm以下である。
【0040】
本発明の製造方法で得られる(メタ)アクリル酸(塩)系重合体に含まれる残存する(メタ)アクリル酸(塩)単量体の量は、該重合体に対して3,000質量ppm以下とすることができる。好ましくは2,000質量ppm以下、より好ましくは1,000質量ppm以下、さらに好ましくは500質量ppm以下、最も好ましくは200質量ppm以下である。(メタ)アクリル酸(塩)単量体の量が3,000質量ppm以下とすることにより、保存時に分子量が上がったり、低分子量が増えたりする等、該重合体の安定性を悪化させることがなく、好ましい。
【0041】
また、本発明に用られる反応器としては(メタ)アクリル酸(塩)系重合体製造用に通常用いられる反応器(例えば、SUS304,316等)を使用することができる。
【0042】
本発明の製造方法では、段階(A)に次いで、上記段階(C)、または段階(B)および段階(C)を行なうことで、(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造することができる。
【0043】
反応器に該(メタ)アクリル酸(塩)系単量体含有水溶液の全量と該重合開始剤とを徐々に添加して重合を開始させる段階(A)と、次いでこれに更に重合開始剤を添加しつつ重合を継続させる段階(B)と、該重合開始剤の全量添加後に該反応液を熟成させる段階(C)とを含むことで、残存単量体および残存重合開始剤量の少ない(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を得ることができる。このため、該重合体に含まれる単量体の重合による分子量上昇を押さえ、低分子量物が増加するのを押さえる効果が絶大となり、該重合体の分子量分布が狭く均一な分子量の重合体を得ることができる。
【0044】
上記のようにして得られた(メタ)アクリル酸(塩)系重合体溶液は、その最終固形分濃度が20質量%以下の低濃度であることが好ましく、該低濃度の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体溶液を、80℃以下で減圧濃縮し、濃縮後の固形分濃度が25質量%以上となるように高濃度化することが好ましい。これにより、色相が良く、しかも生産性良く、高濃度、低分子量の酸型の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体を製造することができる。
上記減圧濃縮の方法としては、特に限定的ではなく、具体的には、重合体水溶液をそのまま減圧、加熱し、濃縮してもよいし、薄膜濃縮機等で連続的に濃縮してもよい。
【0045】
本発明の(メタ)アクリル酸系重合体組成物の用途としては、水系の分散剤(顔料分散剤を含む)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、洗剤ビルダー及びこれを用いた洗浄剤組成物などが挙げられるが、これらの制限されるべきものではなく、例えば、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダーなどの用途などにも幅広く適用できるものである。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0047】
≪固形分濃度測定法≫
0.1mgまで精秤したアルミ製カップにサンプルを約1g採り、精秤した。上記アルミ製カップを120℃に設定した乾燥機に入れ、2時間乾燥させた。乾燥後、このアルミ製カップをデシケータに移し、15分間室温放冷した後に精秤した。乾燥後のサンプルの重量を乾燥前のサンプルの重量で割った数値に100を乗じた値を固形分濃度とした。
【0048】
≪分子量測定≫
アクリル酸(塩)系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ともにGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)により測定した。なお、測定条件、装置などは以下の通りである。
【0049】
GPCのカラムとしては、昭和電工製のGF−7MHQ(商品名)を用いた。
移動相としては、リン酸水素二ナトリウム12水和物34.5gおよびリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2g(いずれも試薬特級)の純水を加えて全量を5000gとし、その後0.45μmのメンブランフィルターでろ過した水溶液を用いた。
検出器としては、ウォーターズ製のモデル481型を用い、検出波長UV214nmとした。
ポンプとしては、株式会社日立製作所製のL−7110(商品名)を用いた。
移動相の流量は、0.5ml/分とし、温度は35℃とした。検量線は、創和科学製のポリアクリル酸ナトリウム標準サンプルを用いて作成した。
【0050】
実施例1
還流冷却管及び攪拌機を備えた容量5LのSUS316製セパラブルフラスコにイオン交換水1600gを仕込み、攪拌下100℃に昇温した後、80%アクリル酸水溶液(以下80%AAと称す)360g(4モル)及び15%過硫酸アンモニウム水溶液(以下15%APSと称す)213.3g(8g/アクリル酸1モル)をそれぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAが180分間、15%APSが185分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。この間、温度は系の沸点を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合の完結後、反応溶液を放冷した。続いてこの反応容器に真空ポンプを接続して、200mmHgまで減圧、約65℃で濃縮を行った。約90分かけて所定量の水分を除去して固形分濃度40%の重合体水溶液(1)を得た。
【0051】
実施例2〜5
表1に示す重合処方とした以外は実施例1と同様にして、各重合反応を行った。各種測定結果を表2に示した。
【0052】
比較例1
還流冷却器及び攪拌機を備えた容量2.5LのSUS製セパラブルフラスコに、イオン交換水1000gを仕込み、攪拌下100℃まで昇温した後、80%AAを360g(4モル)及び15%APSを533.3g(20g/アクリル酸1モル)をそれぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下温度は、80%AAが180分間、15%APSが185分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。この間、温度は系の沸点を維持した。更に同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合の完結後、反応溶液を放冷した。続いてこの反応容器に真空ポンプを接続して200mmHgまで減圧、約65℃で濃縮を行った。約90分かけて所定量の水分を除去して固形分濃度40%の比較重合体水溶液(1)を得た。この比較重合体(1)の測定結果も表2に併記した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表2の結果から、各条件を満たす重合体水溶液は、色調に優れることが判る。
【0056】
【発明の効果】
本発明の(メタ)アクリル酸(塩)系重合体の製造方法によれば、得られる重合体の色相が良く、優れている。更に、固形分濃度20質量%以下の低濃度重合で、更に減圧濃縮を80℃以下で行い、固形分濃度25質量%以上の高濃度とすることにより、生産性良く、高濃度、低分子量の酸型の(メタ)アクリル酸系重合体を製造することができる。
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