本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、酸および/または酸塩を意味する。「塩」としては、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩;などが挙げられる。「塩」は、1種のみであっても良いし、2種以上の混合物であっても良い。「塩」としては、より好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であり、さらに好ましくは、ナトリウム塩である。
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。
本発明の無機粒子分散剤は、(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体と水を含む。本発明の無機粒子分散剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいても良い。
本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子の優れた分散性を発現できる。本発明の無機粒子分散剤は、シリコン分散性が、好ましくは0.2%〜1.3%であり、より好ましくは0.25%〜1.2%であり、さらに好ましくは0.3%〜1.1%であり、特に好ましくは0.35%〜1.1%であり、最も好ましくは0.40%〜1.0%である。シリコン分散性の測定方法については後述する。
本発明の無機粒子分散剤が対象とする無機粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な無機粒子を採用し得る。このような無機粒子としては、好ましくは、シリコンである。
本発明の無機粒子分散剤中の(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体の含有割合は、好ましくは0.01質量%〜100質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜80質量%であり、さらに好ましくは0.2質量%〜70質量%であり、特に好ましくは0.4質量%〜60質量%であり、最も好ましくは0.6質量%〜50質量%である。本発明の無機粒子分散剤中の(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体の含有割合が多すぎると、粘度が高くなってしまい、無機粒子の優れた分散性を発現できないおそれがある。本発明の無機粒子分散剤中の(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体の含有割合が少なすぎると、該(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体による効果が弱くなってしまい、無機粒子の優れた分散性を発現できないおそれがある。
本発明の無機粒子分散剤中の水の含有割合は、本発明の無機粒子分散剤中の(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体の含有割合が好ましくは上記範囲内に調整されるような含有割合であれば、任意の適切な含有割合を採用し得る。
本発明の無機粒子分散剤は(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を含む。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位(A)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)由来の構造単位(C)とを有する共重合体である。このような(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を含むことにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子の優れた分散性を発現できる。
「単量体由来の構造単位」とは、単量体中の重合反応に関与する不飽和二重結合が重合反応によって単結合となった構造単位を意味し、具体的には、単量体を「R1R2C=CR3R4」で表した場合、共重合体中の「−R1R2C−CR3R4−」で表される構造単位を意味する。例えば、アクリル酸由来の構造単位は、「−CH2−CH(COOH)−」で表され、マレイン酸由来の構造単位は、「−CH(COOH)−CH(COOH)−」で表される。
モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)としては、好ましくは、炭素数3〜8個のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体である。このようなモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)としては、例えば、アクリル酸(塩)、メタクリル酸(塩)、クロトン酸(塩)、イソクロトン酸(塩)、α−ヒドロキシアクリル酸(塩)などが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)は、1種のみであっても良いし、2種以上の混合物であっても良い。モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)としては、好ましくは、アクリル酸(塩)、メタクリル酸(塩)であり、より好ましくはアクリル酸(塩)である。
エーテル結合含有疎水性単量体(c)は、好ましくは、一般式(1)で表される。エーテル結合含有疎水性単量体(c)は、1種のみであっても良いし、2種以上の混合物であっても良い。
一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基である。
一般式(1)中、R2は、炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1〜2のアルキレン基(すなわち、−CH2−または−CH2CH2−)である。
一般式(1)中、R3は、炭素数1〜10のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1〜2のアルキレン基であり、最も好ましくは炭素数1のアルキレン基(すなわち、−CH2−)である。
一般式(1)中、R4は、水素原子または水酸基である。
一般式(1)中、R5は、−OR6基またはR6であり、R6は炭素数1〜20のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜13のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。
エーテル結合含有疎水性単量体(c)は、より好ましくは、化学式(2)で表される1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オール、化学式(3)で表されるイソプレノールのヘキセンオキサイド付加物、化学式(4)で表されるアリルブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種である。
本発明の効果をより一層発現し得る点で、エーテル結合含有疎水性単量体(c)は、さらに好ましくは、化学式(2)で表される1−アリルオキシ−3−ブトキシプロパン−2−オールである。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)由来の構造単位(B)を有していても良い。
モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)としては、好ましくは、炭素数4〜6個のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である。このようなモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)としては、例えば、マレイン酸(塩)、イタコン酸(塩)、メサコン酸(塩)、フマル酸(塩)、シトラコン酸(塩)、これらの中で無水物の形を有し得るものはその無水物などが挙げられる。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)は、1種のみであっても良いし、2種以上の混合物であっても良い。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)としては、好ましくは、マレイン酸(塩)、無水マレイン酸(塩)である。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(A)と構造単位(B)と構造単位(C)の合計の含有割合は、好ましくは90モル%〜100モル%であり、より好ましくは95モル%〜100モル%であり、さらに好ましくは98モル%〜100モル%であり、特に好ましくは、実質的に100モル%(すなわち、(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位(A)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)由来の構造単位(C)とからなるか、または、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)由来の構造単位(A)とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)由来の構造単位(B)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)由来の構造単位(C)とからなる)である。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(A)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは1モル%〜98モル%であり、さらに好ましくは10モル%〜97モル%であり、さらに好ましくは20モル%〜96モル%であり、さらに好ましくは30モル%〜95モル%であり、特に好ましくは40モル%〜93モル%であり、最も好ましくは45モル%〜90モル%である。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(A)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(C)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは0.3モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは0.5モル%〜80モル%であり、さらに好ましくは0.8モル%〜70モル%であり、さらに好ましくは1モル%〜60モル%であり、さらに好ましくは1.5モル%〜50モル%であり、特に好ましくは2モル%〜40モル%であり、最も好ましくは3モル%〜30モル%である。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(C)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体がモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)由来の構造単位(B)を有する場合、(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(B)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは1モル%〜95モル%であり、さらに好ましくは5モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは10モル%〜80モル%であり、さらに好ましくは15モル%〜70モル%であり、特に好ましくは20モル%〜60モル%であり、最も好ましくは30モル%〜50モル%である。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体中の全単量体由来の構造単位の合計に対する、構造単位(B)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜100000であり、より好ましくは1500〜80000であり、さらに好ましくは2000〜60000であり、さらに好ましくは2500〜40000であり、さらに好ましくは3000〜30000であり、特に好ましくは3000〜20000であり、最も好ましくは3500〜15000である。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の単量体(d)由来の構造単位(D)を有していても良い。このような他の単量体(d)としては、例えば、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(塩)、3−メタリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(塩)、ビニルスルホン酸(塩)、アリルスルホン酸(塩)、メタリルスルホン酸(塩)、スチレンスルホン酸(塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、スルホエチルアクリレートまたはその塩、スルホエチルメタクリレートまたはその塩、スルホプロピルアクリレートまたはその塩、スルホプロピルメタクリレートまたはその塩、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸(塩)等のスルホン酸(塩)基を有するモノエチレン性不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキル基のエステルであるアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;イソプレンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体類およびこれらの塩類;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸等のホスホン酸基を有する単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドが1モル〜300モル付加した構造を有する単量体であるポリアルキレングリコール鎖含有単量体類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルピロリドン等のその他の官能基を有する単量体類;などが挙げられる。これらの他の任意の適切な単量体(d)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、任意の適切な方法によって製造し得る。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、好ましくは、以下に説明する製造方法によって製造し得る。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体は、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)とを含む単量体成分を重合して製造し得る。
モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)、エーテル結合含有疎水性単量体(c)のそれぞれについての説明は、前述の説明が援用される。
単量体成分は、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)、エーテル結合含有疎水性単量体(c)以外に、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)、他の単量体(d)を有していても良い。
モノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)、他の単量体(d)についての説明は、前述の説明が援用される。
単量体成分中の、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)の合計の含有割合は、好ましくは90モル%〜100モル%であり、より好ましくは95モル%〜100モル%であり、さらに好ましくは98モル%〜100モル%であり、特に好ましくは、実質的に100モル%(すなわち、単量体成分は、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)とからなるか、または、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)とモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)とエーテル結合含有疎水性単量体(c)とからなる)である。
単量体成分中のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは1モル%〜98モル%であり、さらに好ましくは10モル%〜97モル%であり、さらに好ましくは20モル%〜96モル%であり、さらに好ましくは30モル%〜95モル%であり、特に好ましくは40モル%〜93モル%であり、最も好ましくは45モル%〜90モル%である。単量体成分中のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(塩)単量体(a)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
単量体成分中のエーテル結合含有疎水性単量体(c)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは0.3モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは0.5モル%〜80モル%であり、さらに好ましくは0.8モル%〜70モル%であり、さらに好ましくは1モル%〜60モル%であり、さらに好ましくは1.5モル%〜50モル%であり、特に好ましくは2モル%〜40モル%であり、最も好ましくは3モル%〜30モル%である。単量体成分中のエーテル結合含有疎水性単量体(c)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
単量体成分がモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)を含む場合、単量体成分中のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)の含有割合は、好ましくは0.1モル%〜99モル%であり、より好ましくは1モル%〜95モル%であり、さらに好ましくは5モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは10モル%〜80モル%であり、さらに好ましくは15モル%〜70モル%であり、特に好ましくは20モル%〜60モル%であり、最も好ましくは30モル%〜50モル%である。単量体成分中のモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(塩)またはその無水物である単量体(b)の含有割合を、上記範囲内に調整することにより、本発明の無機粒子分散剤は、無機粒子のより優れた分散性を発現できる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際において採用し得る重合方法については、任意の適切な重合方法を採用し得る。このような重合方法としては、例えば、水性溶媒中で重合開始剤の存在下、場合により連鎖移動剤を用いて、重合を行う方法が挙げられる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際において用い得る溶媒としては、好ましくは水性溶媒である。水性溶媒としては、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、好ましくは水である。なお、単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えても良い。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;などが挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際において用い得る溶媒の使用量は、単量体成分の全量に対して、好ましくは80質量%〜400質量%であり、より好ましくは150質量%〜300質量%であり、さらに好ましくは200質量%〜250質量%である。溶媒の使用量が単量体成分の全量に対して80質量%未満の場合、重合中に粘度が上昇して混合が不十分となってゲルが生成するという問題が生じるおそれがある。溶媒の使用量が単量体成分の全量に対して400質量%を超えると、所望の分子量の共重合体を得ることが困難になるという問題が生じるおそれがある。
溶媒の多くまたは全量は、重合初期に反応容器内に仕込んでおけば良いし、例えば、溶媒の一部を、単独で重合中に反応系内に適当に添加(滴下)しても良いし、単量体や重合開始剤や連鎖移動剤やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加(滴下)しても良い。
重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、本発明の効果を十分に発現し得る点で、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が好ましい。
重合開始剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
重合開始剤の使用量は、共重合反応が適切に開始できる量であれば、任意の適切な量を採用し得る。このような量としては、例えば、単量体全量1モルに対して、過硫酸ナトリウム換算で、好ましくは15g以下であり、より好ましくは1g〜12gである。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、必要に応じ、共重合反応に悪影響を及ぼさない範囲内で、得られる共重合体の分子量調整等を目的として、連鎖移動剤を用いても良い。
連鎖移動剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、重亜硫酸、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。これらの連鎖移動剤の中でも、本発明の効果を十分に発現し得る点で、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩が好ましい。
連鎖移動剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
連鎖移動剤を使用すると、製造される共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制できるとともに、低分子量の共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。
連鎖移動剤の使用量は、単量体の共重合反応を適切に進行させ得る量であれば、任意の適切な量を採用し得る。このような量としては、例えば、単量体全量1モルに対して、重亜硫酸ナトリウム換算で、好ましくは0.5g〜20gであり、より好ましくは1g〜15gであり、さらに好ましくは2g〜10gである。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、本発明の効果をより十分に発現し得る点で、重合開始剤と連鎖移動剤の組み合わせ(開始剤系ともいう)として、過硫酸塩および重亜硫酸塩をそれぞれ1種類以上組み合わせて用いることが好ましい。
過硫酸塩としては、具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
重亜硫酸塩としては、具体的には、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
過硫酸塩および重亜硫酸塩を併用する場合の使用比率は、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が、好ましくは0.1質量部〜5質量部であり、より好ましくは0.2質量部〜3質量部であり、さらに好ましくは0.2質量部〜2質量部である。過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が0.1質量部未満の場合、重亜硫酸塩による効果が少なくなるおそれがあり、このため、本発明の効果をより十分に発現し難いおそれがある。また、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が0.1質量部未満の場合、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量も高くなり過ぎるおそれがある。過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が5質量部を超える場合、重亜硫酸塩による効果が使用比率に見合うほど得られないおそれがあり、重合反応系において重亜硫酸塩が過剰に供給される(無駄に消費される)おそれがあるために、過剰な重亜硫酸塩が重合反応系内で分解され、亜硫酸ガスが多量に発生してしまうおそれがある。また、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が5質量部を超える場合、不純物が多く生成するおそれがあり、得られる共重合体の性能が低下するおそれがある。また、過硫酸塩1質量部に対して、重亜硫酸塩が5質量部を超える場合、得られる共重合体を低温保持する際に不純物が析出しやすくなるおそれがある。
過硫酸塩および重亜硫酸塩を併用する場合の使用量は、単量体全量1モルに対して、過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が、過硫酸ナトリウムおよび重亜硫酸ナトリウム換算で、好ましくは1g〜20gであり、より好ましくは2g〜15gであり、さらに好ましくは3g〜11gであり、特に好ましくは4g〜8gである。単量体全量1モルに対して、過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が、過硫酸ナトリウムおよび重亜硫酸ナトリウム換算で、1g未満の場合には、本発明の効果をより十分に発現し難いおそれがあり、また、得られる共重合体の重量平均分子量が高くなり過ぎるおそれがある。単量体全量1モルに対して、過硫酸塩および重亜硫酸塩の合計量が20gを超える場合には、過硫酸塩および重亜硫酸塩の効果が使用量に見合うほど得られないおそれがあり、また、得られる共重合体の純度が低下するおそれがある。また、得られる共重合体を低温保持する際に不純物が析出しやすくなるおそれがある。
過硫酸塩は、後述する溶媒(好ましくは水)に溶解して、過硫酸塩溶液(好ましくは過硫酸塩水溶液)の形態で添加されても良い。このような過硫酸塩溶液(好ましくは過硫酸塩水溶液)として用いる場合の過硫酸塩の濃度としては、好ましくは1質量%〜35質量%であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜20質量%である。過硫酸塩溶液(好ましくは過硫酸塩水溶液)の濃度が1質量%未満の場合には、輸送および保管が煩雑となるおそれがある。過硫酸塩溶液(好ましくは過硫酸塩水溶液)の濃度が35質量%を超える場合には、取り扱いが難しくなるおそれがある。
重亜硫酸塩は、後述する溶媒(好ましくは水)に溶解して重亜硫酸塩溶液(好ましくは重亜硫酸塩水溶液)の形態で添加されても良い。このような重亜硫酸塩溶液(好ましくは重亜硫酸塩水溶液)として用いる場合の重亜硫酸塩の濃度としては、好ましくは10質量%〜42質量%であり、より好ましくは20質量%〜41質量%であり、さらに好ましくは32質量%〜40質量%である。重亜硫酸塩溶液(好ましくは重亜硫酸塩水溶液)の濃度が10質量%未満の場合には、輸送および保管が煩雑となるおそれがある。重亜硫酸塩溶液(好ましくは重亜硫酸塩水溶液)の濃度が42質量%を超える場合には、取り扱いが難しくなるおそれがある。
重合開始剤および連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、例えば、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても良く、単量体成分を構成する各単量体、溶媒等とあらかじめ混同しておいても良い。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、重合反応の際、重合反応系内に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の添加剤を使用し得る。このような他の添加剤としては、例えば、反応促進剤、重金属濃度調整剤、pH調整剤などが挙げられる。反応促進剤は、例えば、重合開始剤などの使用量を低減する等の目的で用いられる。重金属濃度調整剤は、例えば、反応容器等から微量に金属が溶出した場合に起こる、重合反応への影響を軽減する等の目的で用いられる。pH調整剤は、例えば、重合反応を効率化し、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に亜硫酸ガスの発生および装置の腐食を防ぐ等の目的で用いられる。
反応促進剤としては、例えば、重金属化合物が利用できる。具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、モール塩、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;などを挙げることができる。反応促進剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
重金属濃度調整剤としては、例えば、多価金属化合物または単体が利用できる。具体的には、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NH4)2SO4・VSO4・6H2O]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH4)V(SO4)2・12H2O]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、モール塩、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;などを挙げることができる。重金属濃度調整剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;などが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。なお、pH調整剤は、「中和剤」と称される場合がある。pH調整剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際において、重合反応の重合温度は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な温度に設定し得る。効率よく共重合体を製造し得る点で、重合温度の下限は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは70℃以上であり、重合温度の上限は、好ましくは99℃以下であり、より好ましくは95℃以下である。また、重合温度の上限は、重合反応溶液の沸点以下の任意の適切な温度に設定しても良い。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、室温から重合を開始する方法(室温開始法)の場合、例えば、1バッチ当たり240分で重合を行なう場合(180分処方)であれば、好ましくは0分〜70分の間に、より好ましくは0分〜50分の間に、さらに好ましくは0分〜30分の間に、設定温度(重合温度の範囲内であり、好ましくは70℃〜95℃であり、より好ましくは80℃〜90℃)に達するようにする。その後、重合終了までこの設定温度を維持することが好ましい。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、反応系内の圧力は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な圧力に設定し得る。このような圧力としては、例えば、常圧(大気圧)、減圧、加圧が挙げられる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、反応系内の雰囲気は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な雰囲気に設定し得る。このような雰囲気としては、例えば、空気雰囲気、不活性ガス雰囲気が挙げられる。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、単量体の重合反応は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で重合反応を行うことによって、重合反応系内の溶液の粘度の上昇を抑制し、低分子量の共重合体を良好に製造することができる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる。例えば、重合中の中和度を0mol%〜25mol%の範囲内に調整することで、重合開始剤量低減による効果を相乗的に高めることができ、不純物の低減効果を格段に向上させることができる。さらに、重合中の反応溶液の25℃でのpHを1〜6の範囲内に調整することが好ましい。このような酸性条件下で重合反応を行うことにより、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。このため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することも可能である。したがって、共重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制し得る。
重合中の反応溶液の25℃でのpHは、好ましくは1〜6の範囲内であり、より好ましくは1〜5の範囲内であり、さらに好ましくは1〜4の範囲内である。重合中の反応溶液の25℃でのpHが1未満の場合、例えば、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に、亜硫酸ガスの発生や装置の腐食が生じるおそれがある。重合中の反応溶液の25℃でのpHが6を超える場合には、開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合に、重亜硫酸塩の使用効率が低下するおそれがあり、分子量が増大するおそれがある。
重合中の反応溶液の25℃でのpHの調整は、例えば、前述のpH調整剤を用いれば良い。
重合中の中和度は、好ましくは0mol%〜25mol%の範囲内であり、より好ましくは1mol%〜20mol%の範囲内であり、さらに好ましくは2mol%〜15mol%の範囲内である。重合中の中和度がこのような範囲内にあれば、単量体を良好に共重合させることが可能であり、不純物を低減させることが可能になる。また、重合反応系内の溶液の粘度が上昇することがなく、低分子量の共重合体を良好に製造することができる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率を大幅に上昇させることができる。
中和の方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、(メタ)アクリル酸ナトリウムなどの(メタ)アクリル酸の塩を原料の一部として使用しても良いし、中和剤として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等を用いて重合中に中和しても良いし、これらを併用してもよい。また、中和の際の中和剤の添加形態は、固体で添加する形態であっても良いし、適当な溶媒(好ましくは水)に溶解した水溶液で添加する形態であっても良い。
水溶液の形態で重合反応を行う場合の水溶液の濃度は、好ましくは10質量%〜60質量%であり、より好ましくは20質量%〜55質量%であり、さらに好ましくは30質量%〜50質量%である。水溶液の濃度が10質量%未満の場合、輸送および保管が煩雑となるおそれがある。水溶液の濃度が60質量%を超える場合、取り扱いが難しくなるおそれがある。
重合に際しては、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、および、必要に応じて、その他の添加剤は、これらを予め適当な溶媒(好ましくは被滴下液用の溶媒と同種の溶媒)に溶解し、単量体溶液、重合開始剤溶液、連鎖移動剤溶液、および、必要に応じて、その他の添加剤溶液として、それぞれを反応容器内に仕込んだ溶媒(必要があれば所定の温度に調節したもの)に対して、所定の滴下時間に渡って連続的に滴下しながら重合することが好ましい。さらに溶媒の一部についても、反応系内の容器に予め仕込んでなる初期仕込みの溶媒とは別に、後から滴下してもよい。滴下方法に関しては、連続的に滴下しても良いし、断続的に何度かに小分けして滴下しても良い。また、単量体の1種または2種以上の一部または全量を初期仕込みしても良い。また、単量体の1種または2種以上の滴下速度は、滴下の開始から終了まで常に一定としても良いし、重合温度等に応じて経時的に滴下速度を変化させても良い。また、全ての滴下成分を同じように滴下しなくても良く、滴下成分ごとに開始時や終了時をずらしても良いし、滴下時間を短縮させたり延長させたりしても良い。また、溶液の形態で各成分を滴下する場合には、反応系内の重合温度と同程度まで滴下溶液を加温しておいても良い。このようにしておくと、重合温度を一定に保持する場合に、温度変動が少なくなり、温度調整が容易である。
開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合、重亜硫酸塩は、重合初期の共重合体の重量平均分子量が最終の重量平均分子量に影響する。このため、重合初期の共重合体の重量平均分子量を低下させるために、重亜硫酸塩あるいはその溶液を、重合開始時より、好ましくは60分以内で、より好ましくは30分以内で、さらに好ましくは10分以内で、5質量%〜35質量%添加(滴下)することが好ましい。
開始剤系として重亜硫酸塩を使用する場合、重亜硫酸塩あるいはその溶液の滴下終了時間は、単量体の滴下終了時間よりも、好ましくは1分〜30分、より好ましくは1分〜20分、さらに好ましくは1分〜15分、早めることが良い。これにより、重合終了後に残存する重亜硫酸塩の量を低減でき、このような残存重亜硫酸塩による亜硫酸ガスの発生や不純物の形成を有効かつ効果的に抑制することができる。
開始剤系として過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩あるいはその溶液の滴下終了時間は、単量体の滴下終了時間よりも、好ましくは1分〜60分、より好ましくは1分〜45分、さらに好ましくは1分〜20分、遅らせることが良い。これにより、重合終了後に残存する単量体の量を低減でき、このような残存単量体に起因する不純物を低減することができる。
重合の際の総滴下時間は、好ましくは150分〜600分であり、より好ましくは180分〜450分であり、さらに好ましくは210〜300分である。総滴下時間が150分未満の場合、得られる共重合体の重量平均分子量が高くなり過ぎるおそれがある。また、過剰な重亜硫酸塩が分解して亜硫酸ガスが発生するおそれがある。総滴下時間が600分を越える場合、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の生産性が低下するおそれがある。なお、ここでいう総滴下時間とは、最初の滴下成分(1成分とは限らない)の滴下開始時から最後の滴下成分(1成分とは限らない)の滴下完了時までの時間をいう。
重合反応が終了した時点での、重合溶液中の固形分濃度は、好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは40質量%〜70質量%であり、さらに好ましくは45質量%〜65質量%である。重合反応終了時の重合溶液中の固形分濃度が35質量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。このため、効率よく低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を得ることができる。例えば、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することができ、製造効率を上昇させることができる。その結果、共重合体の生産性が向上し、製造コストの上昇を抑制することが可能となる。ここで、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点であってもよいが、好ましくは、その後、所定の熟成時間を経過した時点(重合が完結した時点)を意味する。
(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、重合反応が終了した後に、重合を効果的に完結させるために、重合反応溶液を熟成させる熟成工程を設けても良い。熟成工程における熟成時間は、重合を効果的に完結させる点で、好ましくは1分〜120分であり、より好ましくは5分〜90分であり、さらに好ましくは10分〜60分である。なお、熟成工程における温度は、好ましくは、上記の重合温度が適用される。(メタ)アクリル酸(塩)系共重合体を製造する際においては、熟成工程が存在する場合は、重合時間は、上記の総滴下時間+熟成時間を意味する。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
重量平均分子量の測定は、下記条件にてゲルパーミエーションクラマトグラフィー(GPC)を用いて行った。
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI RI Detector L−7490
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ、GF−710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:ソウワ化学社製 Polyacrylic acid standard
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
<単量体の定量>
単量体の定量は、下記条件にて、液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
<固形分測定方法>
120℃に加熱したオーブンで共重合体(共重合体1.0gに水1.0gを加えたもの)を2時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
<シリコン分散性>
シリコン粉末0.5gを直径1cm×20cmのガラス製試験管へ投入し、固形分を1%に調整した実施例または比較例で得られた共重合体水溶液1gを投入し、イオン交換水15gを引き続いて投入し、縦方向に20回回転撹拌した。その後10時間静置し、試験管の上部5cmをサンプリングし、UV200nmの吸光度(Abs)を測定し、シリコン分散性とした。
〔実施例1〕
(1)単量体の合成
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、n−ブチルアルコール:370.0gと、ペレット状の水酸化ナトリウム:4.27gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」とも称する。):57.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。この溶液を1000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。ここに、20質量%塩化ナトリウム水溶液:200.0gを加え、この水溶液を500mlの分液ロートへ移し、よく振り混ぜた後、分層するまで静置し、下層を取り除いた。残った上層を300mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。析出してきた塩を濾過により取り除き、単量体(1)を得た。
(2)重合
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水:127.0gおよびモール塩:0.0043g、無水マレイン酸:127.5gを仕込み、撹拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。):160.1gを滴下ロートより30分かけて投入した。攪拌しながら103℃まで昇温して沸騰還流を確認し、重合反応系とした。次に、攪拌下、沸点(105℃)に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。):117.1g、単量体(1):25.8g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。):43.8g、および、35%過酸化水素水(以下、「35%H2O2」とも称する。):15.6gを、それぞれ別々のノズルより同時に滴下を開始し、重合開始とした。各溶液の滴下時間は、80%AAについては120分間、単量体(1)については90分間、15%NaPSについては120分間、35%H2O2については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、さらに30分間、反応溶液を沸点(102℃)に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷した。
このようにして、共重合体(1)を含む固形分濃度56%の無機粒子分散剤(1)を得た。共重合体(1)の重量平均分子量は4000であった。
結果を表1に示した。
〔実施例2〕
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水128.4gおよびモール塩0.0187gを仕込み、攪拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA:270.0g、単量体(1):62.7g、15%NaPS:80g、および、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。):30gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については120分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、さらに30分間、反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH:193.3gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、共重合体(2)を含む固形分濃度45%の無機粒子分散剤(2)を得た。共重合体(2)の重量平均分子量は10000であった。
結果を表1に示した。
〔実施例3〕
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水146.8gおよびモール塩0.0186gを仕込み、攪拌しながら85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA:270.0g、単量体(1):141.2g、15%NaPS:60g、および、35%SBS:20gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては180分間、単量体(1)については140分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、さらに30分間、反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH:190.0gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、共重合体(3)を含む固形分濃度45%の無機粒子分散剤(3)を得た。共重合体(3)の重量平均分子量は12000であった。
結果を表1に示した。
〔比較例1〕:ポリアクリル酸ナトリウム
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水:146.8gおよびモール塩:0.0186gを仕込み、攪拌しながら、85℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、85℃に保持された重合反応系中に、80%AA:270.0g、48%NaOH:12.5g、15%NaPS:40g、および、35%SBS:30gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AA、48%NaOHについては180分間、15%NaPSについては190分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、さらに30分間、反応溶液を85℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH:197.5gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、重合体(C1)を含む固形分濃度45%の無機粒子分散剤(C1)を得た。重合体(C1)の重量平均分子量は5000であった。
結果を表1に示した。
表1に示すように、実施例で得られた無機粒子分散剤は、比較例で得られた無機粒子分散剤と比べて、無機粒子の優れた分散性を発現できることが判る。