JP7350469B2 - セパレータロールおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
このため、セパレータとして、樹脂多孔質膜と、その表面に形成された無機粒子などの耐熱性の高い材料を含む耐熱層とを有する積層膜が用いられている。
例えば、特許文献1には、多孔性ポリプロピレンフィルムロールから多孔性ポリプロピレンフィルムを巻出し、アニール処理を行った後、再度巻取を行う多孔性ポリプロピレンフィルムロールの製造方法が記載されている。
機械方向の収縮率(%)=(放置前の機械方向の長さ-放置後の機械方向の長さ)÷放置前の機械方向の長さ×100
また、特許文献2に記載のセパレータロールでは、巻き出したセパレータの収縮をより一層低減させることが要求されていた。
なお、本明細書におけるデュロメータ硬さ(タイプA)および(タイプD)の値は、JIS K6253に準じて測定された値である。
すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
前記セパレータは、ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなり、
前記セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向に30m移動した位置を中心として、長手方向の長さが200mmの試験片を採取し、温度25℃相対湿度55%の環境下に無張力状態で24時間放置したときの前記試験片の長手方向の収縮率が、0.3%以下であることを特徴とするセパレータロール。
ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなるセパレータを、巻芯に巻回する工程を有し、
前記巻芯が、デュロメータ硬さ(タイプD)が75以上である芯材と、前記芯材の表面に一体化されたデュロメータ硬さ(タイプA)が70以下である表層材とを有することを特徴とするセパレータロールの製造方法。
(4)前記芯材が、樹脂により構成された(2)または(3)に記載のセパレータロールの製造方法。
「セパレータロール」
図1は、本実施形態のセパレータロールを示した断面模式図である。
図1に示すセパレータロール10は、円筒形状の側面を有する巻芯(コア)1と、巻芯1に巻回されたセパレータ2とからなる。セパレータ2は、電気化学素子のセパレータとして用いられるものである。具体的には、セパレータロール10から巻き出されるセパレータ2は、リチウム二次電池のセパレータとして好適に用いることができる。
セパレータロール10を形成している巻芯1は、円筒形状の側面を有する。図1に示すように、巻芯1は、芯材1aと、芯材1aの表面に一体化された表層材1bとを有する。
本実施形態では、デュロメータ硬さ(タイプD)が75以上である芯材1aの表面に表層材1bが一体化されているので、表層材1bとしてデュロメータ硬さ(タイプA)が70以下のものを用いることができる。一方、デュロメータ硬さ(タイプA)が70以下の材料のみで巻芯が形成されている場合、変形しやすい巻芯となる。このため、セパレータを巻芯に巻き取る際に、十分な巻き取り精度が得られにくくなる。
また、樹脂と共に、芯材1aとなるコアの剛性を向上させたり、帯電を防止するための他の材料(充填剤、帯電防止剤など)を含有させたりすることも好ましく、強度の点からはFWPコアなどが好ましく用いられる。
FWPコアは、FW(フィラメント・ワインディング)法による繊維強化プラスチック製のコアであり、表面精度、強度および軽量性に優れる。FWPコアを構成する強化繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維などが好ましく用いられる。FWPコアを構成するマトリクス樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましく用いられる。
表層材1bは、発泡状のゴム材からなるものであってもよい。
図1に示すセパレータ2は、ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなる。
粒子含有層の積層数は、特に限定されず、1層のみであってもよいし、複数層形成されていてもよい。
本実施形態のセパレータロール10は、巻芯1に巻回されたセパレータ2から採取する試験片の位置による収縮率の差は小さいし、内周端からの長手方向の距離が近い位置から採取した試験片であっても十分に収縮率が小さい。
30μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
なお、粒子含有層がポリオレフィン微多孔フィルムの両面に存在する場合など、セパレータ2に粒子含有層が複数層形成されている場合、厚みTbは粒子含有層の総厚み(合計の厚み)である。
セパレータ2の空孔率を30~70%とするために、ポリオレフィン微多孔フィルムの空孔率は30~70%であることが好ましく、粒子含有層の空孔率は20~60%であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔フィルムは、セパレータ2の基材である。ポリオレフィン微多孔フィルムは、例えば、セパレータ2を電気化学素子のセパレータとして使用する際に、正極と負極とを隔離する役割を果たす。
セパレータ2を形成しているポリオレフィン微多孔フィルムとしては、電気化学素子のセパレータに適用される汎用のポリオレフィン微多孔フィルムなどを用いることができる。
ポリオレフィン微多孔フィルムは、セパレータ2を電気化学素子のセパレータとして使用した場合に、電気化学素子にシャットダウン特性を付与する点から、少なくともポリエチレンを含むことが好ましい。
ポリオレフィン微多孔フィルムがポリエチレンを含む場合には、その融点(およそ135℃)付近で溶融することにより、およそ140℃以下の温度において、空孔を塞いで電池の反応を停止させるシャットダウン効果を生じさせることが可能となる。
ポリオレフィン微多孔フィルムがポリエチレンを含む場合、重量平均分子量が35万以上のポリエチレンを含むことが好ましい。この場合、巻き出したセパレータ2の寸法変化が小さいセパレータロール10が得られやすく、好ましい。
ポリオレフィン微多孔フィルムがポリプロピレンを含む場合、重量平均分子量が50万以上のポリプロピレンを含むことが好ましい。この場合、巻き出したセパレータ2の寸法変化が小さいセパレータロール10が得られやすく、好ましい。
多層構造のポリオレフィン微多孔フィルムは、ポリエチレン層を中間層とし、ポリプロピレン層を外層とした三層構造であることが好ましい。このような三層構造の積層微多孔フィルムは、耐熱性および機械的強度に優れる。さらに、このような三層構造の積層微多孔フィルムは、シャットダウン温度における熱収縮が比較的小さいので、セパレータ2を電気化学素子のセパレータとして使用した場合に、安全性および信頼性のより高い電気化学素子が得られる。
粒子含有層は、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する。
粒子含有層の厚み(セパレータ2に粒子含有層が複数積層されている場合には、複数の粒子含有層の合計厚み)は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、4μm以上であることが特に好ましい。粒子含有層の厚みが薄すぎると、セパレータ2全体の熱収縮を抑制する効果が十分に得られず、セパレータ2の耐熱性が不足する虞がある。
また、上記の粒子含有層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが特に好ましい。粒子含有層の厚みが厚すぎると、セパレータ2全体の厚みの増大を引き起こしてしまう。
粒子含有層に含まれる無機粒子としては、例えば、酸化鉄、シリカ、アルミナ、TiO2、BaTiO3、MgOなどの酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結合性粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性粒子;モンモリロナイトなどの粘土粒子;などが挙げられる。また、無機粒子は、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、マイカなどの鉱物資源由来物質またはこれらの人造物であってもよい。無機粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。粒子含有層に含まれる無機粒子としては、上記の中でも特に、アルミナ、シリカ、ベーマイトから選ばれるいずれか1種または2種以上であることが好ましい。
粒子含有層に含まれるバインダとしては、従来公知のものを用いることができ、電気化学素子の内部での電気化学的な安定性が良好で、電気化学素子の電解液に対する安定性が良好なものを用いることが好ましい。
次に、セパレータロールの製造方法の一例として、図1に示すセパレータロール10の製造方法を例に挙げて説明する。
(巻芯の製造)
セパレータロール10を製造するには、まず、デュロメータ硬さ(タイプD)が75以上である芯材1aと、芯材1aの表面に一体化されたデュロメータ硬さ(タイプA)が70以下である表層材1bとを有する巻芯1を用意する。
巻芯1を製造する方法としては、例えば、芯材1aが収容された金型を用いて、トランスファー成形法、注型成形法などにより、芯材1aの表面に表層材1bを形成する方法が挙げられる。
この場合、金型の内面の平滑性が、形成される表層材1bの表面に転写される。したがって、金型の内面を平滑な面とすることにより、形成される表層材1bの表面の算術平均粗さRaを、例えば、3μm以下、好ましくは1.5μm以下とすることができる。表層材1bの表面の算術平均粗さRaが3μm以下であると、セパレータ2の巻き取り精度をより高めることができる。
表層材1bは、表層材1bとなる原料成分を含む原料組成物を、スプレー、ディッピング、スクリーン印刷等の方法で芯材1aの表面に塗布し、必要に応じて重合させたり架橋させたりする方法により、形成することもできる。
また、ポリオレフィン微多孔フィルムの巻き付けられた微多孔フィルムロールを用意する。そして、微多孔フィルムロールから、ポリオレフィン微多孔フィルムを巻き出し、ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなるセパレータ2を形成する。
塗液は、上記のバインダ、増粘剤、分散剤、界面活性剤などを、必要に応じて含有していてもよい。
分散媒としては、水、有機溶媒(トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフランなどのフラン類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;など)、水と有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。分散媒は、水を70質量%以上含有していることが好ましく、90質量%以上含有していることがより好ましく、実質的に水のみであることが特に好ましい。
増粘剤としては、塗液に使用する媒体(分散媒)に対して良好に溶解または分散し得るものが好ましく用いられる。また、増粘剤としては、少量の含有量で高い増粘作用を有するものを用いることが好ましい。
上記の増粘剤のうち、バインダとしての機能も有する化合物については、増粘剤を兼ねるバインダとして用いることができる。
分散剤は、無機粒子および/または有機粒子を分散媒中に分散させるために用いられる。分散剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤;ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩などの高分子系分散剤;などを用いることができる。分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、塗液の表面張力を調整するために用いられる。界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサンなどが挙げられる。
セパレータ2を巻芯1に巻き付ける方法は、特に限定されず、巻き取り速度、張力などの巻き取り条件を適宜制御して、従来公知の方法により巻き取ることができる。巻き取り張力は、例えば、10~80N/mとすることができる。
以上の工程により、本実施形態のセパレータロール10が得られる。
以下に示すセパレータと、円筒形状の巻芯とをそれぞれ作成し、以下に示す方法によりセパレータを巻芯に巻回し、セパレータロールを得た。
重量平均分子量が約39万で厚みが7.0μmのポリエチレンよりなる中間層と、中間層の両側に積層された、重量平均分子量が約65万(分子量分布:11)で厚みが5.5μmのポリプロピレンよりなる外層とからなる。
(総厚み18.0μm、圧縮弾性率:122.4MPa)
「無機粒子」ベーマイト粉末(板状、平均粒径1μm、アスペクト比10)、100質量部
「バインダ」アクリル酸ブチル-アクリル酸共重合体(Tg:-30℃)、無機粒子100重量部に対して3質量部
「増粘剤」カルボキシメチルセルロース、無機粒子100重量部に対して1質量部
「界面活性剤」パーフルオロオクタンスルフォン酸、水100質量部に対して0.1質量部
「分散媒」水
芯材および表層材のデュロメータ硬さの値は、JIS K 6253-3に準じて測定した値である。
実施例1のセパレータロールについて、巻芯に巻回されたセパレータの収縮率を、以下に示す方法により測定した。その結果を表1に示す。
セパレータから以下に示す採取位置を中心とする長手方向の長さが200mmである幅方向の長さが200mmの試験片をそれぞれ採取した。試験片を平面上に静置し、温度25℃相対湿度55%の環境下に無張力状態で24時間放置した。このときの試験片の長手方向の収縮率を、以下に示す式により算出した。
試験片の長さは、ペンを用いて試験片の長手方向に直線を描き、24時間放置する前と後の直線の長さを、レーザー幅測定器により測定して求めた。
収縮率(%)={(放置前の試験片の長手方向の長さ-放置後の試験片の長手方向の長さ)/放置前の試験片の長手方向の長さ}×100
A:セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向に30m移動した位置を中心とする。
B:セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向にセパレータ全長の1/4の距離(500m)分外周側に移動した位置を中心とする。
C:セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向にセパレータ全長の1/2の距離(1000m)分外周側に移動した位置を中心とする。
D:セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向にセパレータ全長の3/4の距離(1500m)分外周側に移動した位置を中心とする。
ポリエチレン(PE)樹脂のコア〔厚み:7mm、デュロメータ硬さ(タイプD):50、外径:167mm〕からなる芯材と、芯材の表面に一体化されたウレタンゴムからなる実施例1と同じ表層材とからなる巻芯を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のセパレータロールを得た。
比較例1のセパレータロールについて、巻芯に巻回されたセパレータを巻き出したところ、セパレータに皺が入っているのが確認された。これは芯材のデュロメータ硬さ(タイプD)が低く、セパレータの巻き取り精度が低下したためと考えられる。
巻芯として、実施例1の芯材をそのまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2のセパレータロールを得た。
比較例2のセパレータロールについて、巻芯に巻回されたセパレータの収縮率を、実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
これに対し、比較例1のセパレータロールでは、セパレータの巻き取り精度が低いためセパレータに皺が入った。また、比較例2のセパレータロールでは、セパレータの内周端に近い位置(A)での試験片の収縮率が0.3%を超えた。
Claims (7)
- 巻芯と、前記巻芯に巻回されたセパレータとを有し、
前記セパレータは、巻き取り長さが200m以上であり、ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなり、
前記セパレータの内周端から幅方向中心に沿って長手方向に30m移動した位置を中心として、長手方向の長さが200mmの試験片を採取し、温度25℃相対湿度55%の環境下に無張力状態で24時間放置したときの前記試験片の長手方向の収縮率が、0.3%以下であるセパレータロールの製造方法であって、
ポリオレフィン微多孔フィルムの片面または両面に、無機粒子と有機粒子の一方または両方を含有する粒子含有層が設けられた積層体からなるセパレータを、巻芯に巻回する工程を有し、
前記巻芯が、デュロメータ硬さ(タイプD)が75以上である芯材と、前記芯材の表面に一体化されたデュロメータ硬さ(タイプA)が70以下である表層材とを有することを特徴とするセパレータロールの製造方法。 - 前記表層材がゴム材である請求項1に記載のセパレータロールの製造方法。
- 前記芯材が、樹脂により構成された請求項1または請求項2に記載のセパレータロールの製造方法。
- 前記芯材の厚みが、5mm以上である請求項1~3のいずれかに記載のセパレータロールの製造方法。
- 前記表層材の厚みが、0.1mm以上である請求項1~4のいずれかに記載のセパレータロールの製造方法。
- 前記表層材の厚みが、5mm以下である請求項1~5のいずれかに記載のセパレータロールの製造方法。
- 前記表層材の表面の算術平均粗さRaが、3μm以下である請求項1~6のいずれかに記載のセパレータロールの製造方法。
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