JP7349285B2 - フィルム構造体及び粘稠性物質包装袋 - Google Patents

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Description

この発明は、粘稠性物質を包装するための材料であるフィルム構造体と、そのフィルム構造体を用いた包装袋に関する。
軟包材の中に入れられた粘稠性のある内容物をその包材から取り出す際、包材にその内容物が付着してしまい、取り出しに時間を要したり、最後まで出し切ることが難しくなったりする場合がある。これに対し、シリコーンオイルやグリセリン脂肪酸エステル等の、粘稠性のある内容物に対して高い滑り性を持つ液体からなる層を容器内面に形成し、内容物の付着を防止する方法がある。しかし、一定期間経過すると容器の基材樹脂に内容物に対して高い滑り性を持つ液体が浸透し、その特性が低下する問題点を有する。
一方、一定期間経過しても、内容物の付着を防止する特性を維持させるため、特許文献1に記載されているように、基材樹脂の表面にエチレンビニルアルコール共重合体等の液拡散防止層を設け、その表面にシリコーンオイルや脂肪酸トリグリセライド等の液層を形成させる例が開示されている。
国際公開2014/188883号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、液層の浸透を防止するための液拡散防止層を設けるため、製造に多くの工程が必要となってしまう。
そこでこの発明では、基材によらず長期間にわたり安定的に粘稠性物質の付着を防止するフィルム構造体及びこのフィルム構造体から構成される包装袋を簡便な工程で提供することを目的とする。
この発明は、特定の構造を有するフィルム構造体を用いることにより、前記の課題を解決したものであり、その要旨は、下記の[1]~[4]に存する。
[1]フィルム基材の表面に乳化剤からなる第1コート層が形成され、この第1コート層の表面に、主成分がトリグリセライドの油脂からなる第2コート層を有するフィルム構造体。
[2]前記第1コート層のコーティング量は、乾燥後で0.05~5.0g/mである[1]に記載のフィルム構造体。
[3]前記乳化剤は、主成分がモノエステル若しくはジエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルからなるものである[1]又は[2]に記載のフィルム構造体。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載のフィルム構造体が、前記第2コート層が最内側となるように製袋された、内部に粘稠性物質が配される粘稠性物質包装袋。
この発明に係るフィルム構造体は、フィルム基材の表面に特定の第1コート層が形成され、その第1コート層の表面に特定の第2コート層が形成されるので、第2コート層を構成する特定の油脂がフィルム基材に浸透するのを第1コート層が防止し、長期間にわたり粘稠性物質がフィルム構造体に付着するのを防止することが可能となる。第1コート層は特定の乳化剤から構成され、フィルム基材の種類にかかわらずフィルム基材全体を覆うコート層を形成することができる。第2コート層は、第1コート層の乳化剤と親和性が高い材料であり、コーティングにより形成された層であるので、第1コート層の表面の全体を覆う。
前記第2コート層が最内側となるように、このフィルム構造体を製袋することにより、この包装袋の中に粘稠性物質を入れても、主成分がトリグリセライドの油脂からなる第2コート層と接するので、この包装袋からこの粘稠性物質を取り出す際、この粘稠性物質が袋内面に付着して残存することを防止することができる。
この発明にかかるフィルム構造体の断面図 (a)この発明にかかる粘稠性物質包装袋の例を示す斜視図、(b)(a)のb-b断面図
以下、本願発明にかかるフィルム構造体及びこれを用いた粘稠性物質を封入し、包装する粘稠性物質包装袋について説明する。
本願発明にかかるフィルム構造体11は、図1に示すように、フィルム基材12の表面に特定の第1コート層13が形成され、その第1コート層13の表面に特定の第2コート層14が形成された構造体である。
[フィルム基材]
前記フィルム基材12の材質として、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等の各種ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン等や、エチレン-プロピレン共重合体等の、オレフィン系樹脂等を構成する不飽和炭化水素を複数重合させた共重合体等があげられる。さらに、これらのポリオレフィン系樹脂は、無延伸のものでも、一軸延伸のものでも、二軸延伸のものでもよい。また、ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。
[第1コート層]
前記第1コート層13は、前記フィルム基材12の表面に形成された層である。この第1コート層は乳化剤からなり、前記第2コート層14を構成する物質がフィルム基材12に浸透するのを防止する。
このような乳化剤として、モノエステル若しくはジエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステルや、ショ糖脂肪酸エステル等を主成分とする乳化剤をあげることができる。
このポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルのHLB値は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。一方、15以下が好ましく、13以下がより好ましい。HLB値が3より小さい、または15より大きいと第2コート層を構成する物質がフィルム基材に浸透するのを防ぐ効果が低くなる。
また必要に応じて、前記乳化剤は希釈して使用することができ、前記乳化剤が溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール類が好ましい。
前記第1コート層13は、前記フィルム基材12の表面にコーティングにより、前記フィルム基材12の表面全体に膜状に形成される。形成方法は特に限定されるものではなく、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常のコーティング方法を採用することができる。前記第1コート層13の形成時に乾燥が必要である場合は、特に限定されないが、通常の熱風乾燥などで行うことができる。この第1コート層13を構成する乳化剤のコーティング量は、コーティングして乾燥した後の面積当たりの質量で、0.05g/m以上がよく、0.1g/m以上が好ましく、0.2g/m以上がより好ましい。0.05g/mより少ないと、膜状に形成することが困難となり、第1コート層の役割を十分に果たせなくなる。
一方、コーティング量の上限は、乾燥の面積当たりの質量で、5.0g/m以下がよく、0.8g/m以下が好ましく、0.5g/m以下がより好ましい。5.0g/mより多くてもよいが、前記フィルム基材12の表面全体に膜状に形成する必要量より多くなり、効率的でない。
[第2コート層]
前記第2コート層14は、前記第1コート層13の表面に形成された層である。この第2コート層14は、主成分がトリグリセライドである油脂からなるため、前記粘稠性物質がフィルム構造体に付着するのを防止できる。
このようなトリグリセライドとして、脂肪酸トリグリセライドがあげられる。この脂肪酸トリグリセライドを構成する脂肪酸の炭素数は、5以上がよく、6以上が好ましく、8以上がより好ましい。炭素数が小さくなっていくと、親水性が高くなる傾向があり、4以下の場合、前記粘稠性物質の種類によっては、前記フィルム構造体11に付着するおそれが生じる。一方、炭素数の上限は、13以下がよく、12以下が好ましく、10以下がより好ましい。炭素数が大きくなっていくと、疎水性が高くなる傾向があり、14以上の場合、前記粘稠性物質の種類によっては、前記フィルム構造体11に多く付着するおそれがある。
このような脂肪族トリグリセライドとして、長鎖脂肪酸トリグリセライド、中鎖脂肪酸トリグリセライド、短鎖脂肪酸トリグリセライド等があげられる。この中でも、中鎖脂肪酸トリグリセライド、特に炭素数8~10の中鎖脂肪酸トリグリセライドが好ましい。
このような、中鎖脂肪酸トリグリセライドの具体例として、脂肪酸の炭素数が8~10のカプリル酸トリグリセライドやカプリン酸トリグリセライドがあげられる。これらは、ココナッツオイルやパーム核油等に含まれる成分なので、前記粘稠性物質が食品の場合、万が一、混入しても、安全性を担保できる。
また必要に応じて、前記脂肪族トリグリセライドは希釈して使用することができ、前記脂肪族トリグリセライドが溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール類が好ましい。
前記第2コート層14は、前記第1コート層13の表面にコーティングにより、前記第1コート層13の表面の全体に膜状に形成される。前記第2コート層14の形成方法は特に限定されるものではなく、前記第1コート層13と同様の方法で形成することができる。この第2コート層14を構成する油脂のコーティング量は、面積当たりの質量で、0.5g/m以上がよく、1g/m以上が好ましく、2g/m以上がより好ましい。0.5g/mより少ないと、内容物の付着を防止する効果が低下するという問題点が生じる。一方、コーティング量の上限は、乾燥の面積当たりの質量で、10g/m以下がよく、7g/m以下が好ましく、4g/m以下がより好ましい。10g/mより多いと、ロール品にした時、第2コート層が裏移りするという問題点が生じる。
[粘稠性物質包装袋]
この発明にかかる粘稠性物質包装袋10は、図2(a)(b)に示すように、前記フィルム構造体を、前記第2コート層14が最内側となるように製袋した袋である。このようにすることにより、前記粘稠性物質が第2コート層14と接するので、粘稠性物質の前記フィルム構造体11への付着を防止することができる。
この粘稠性物質包装袋10としては、図1に示すフィルム構造体11を折り曲げ、三辺を熱融着させて袋体としたものを例としてあげることができる。この熱融着の際、内部に前記粘稠性物質が充填される。このため、粘稠性物質包装袋10を構成するフィルム基材12としては、上記材料のうち、ポリオレフィン系樹脂を用いることが、熱融着性が高い点で好ましい。
なお、図2(b)において、熱融着部10aは、フィルム基材12のみから構成されているように図示した。これは、熱融着の際、フィルム構造体11の第1コート層13や第2コート層14は、移動する可能性が考えられるので、これらの層がない場合として図示したものである。このため、熱融着の条件等によっては、この熱融着部10aに、第1コート層13や第2コート層14が残存する場合が生じると考えられるが、この場合については、図示していない。また、本願発明においては、熱融着部10aに、第1コート層13や第2コート層14が残存するか否かについては、熱融着性を阻害しない限りは特に限定するものではない。
[その他の用途]
前記の包装袋の他に、例えば、前記フィルム構造体をホールケーキ等の側周面に環状に巻き、ホールケーキの側面保護部材の役割を果たすことができる。
[粘稠性物質]
この発明にかかる粘稠性物質包装袋10に封入され、包装される粘稠性物質としては、粘稠性を有する流動性物質である、マヨネーズ、ケチャップ、カレー、味噌、餡子、ジャム、蜂蜜、グラビアインキ、ヘアコンディショナー等があげられる。
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
<原材料>
[フィルム基材]
・直鎖状低密度ポリエチレン…三井化学東セロ(株)製:T.U.X TCS、以下「LLDPE」と称する。
・無延伸ポリプロピレン…サン・トックス(株)製:LU02、以下「CPP」と称する。
・ポリエチレンテレフタレート…東洋紡(株)製:E5100、以下「PET」と称する。
[第1コート層、第2コート層の材料]
・グリセリン脂肪酸エステル1…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MO-3S(テトラグリセリンモノエステル)、HLB値:8.8、以下「GFE1」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル2…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MO-5S(ヘキサグリセリンペンタエステル)、HLB値:11.6、以下「GFE2」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル3…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター PO-3S(テトラグリセリンペンタエステル)、HLB値:2.9、以下「GFE3」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル4…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MCA-750(デカグリセリンモノエステル)、HLB値:16.1、以下「GFE4」と称する。
・ショ糖脂肪酸エステル…三菱ケミカルフーズ(株)製:S-1170、主要化学物名:ショ糖ステアリン酸エステル、HLB値:約11、以下「SFE」と称する。
・中鎖脂肪酸トリグリセライド1…中央化成(株)製:MASESTER-E6000、主要化学物名:トリカプリル酸グリセリル、以下「MCT1」と称する。
・中鎖脂肪酸トリグリセライド2…理研ビタミン(株)製:アクターM-2、主要化学物名:トリカプリル酸グリセリル、以下「MCT2」と称する。
・長鎖脂肪酸トリグリセライド…味の素(株)製:オリーブオイル、以下「LCT」と称する。
・短鎖脂肪酸トリグリセライド…雪印メグミルク(株)製:雪印北海道バター、以下「SCT」と称する。
・PU系コート剤…東洋モートン(株)製:主剤EL-540、硬化剤CAT-RT3(主剤10部に対し、硬化剤1.5部を混合し、押出ラミネート用アンカーコート剤とした)、以下「PU系」と称する。
<サンプル作製>
表1~3に記載の300mm×250mmのフィルム基材の表面に、表1、2に記載の第1コート層の材料をイソプロピルアルコールで50質量%になるように希釈し、乾燥後に表1、2に記載の着量となるようにバーコーターでコーティングした。100℃で1分間、熱風乾燥機で乾燥し、第1コート層を形成した。次いで、表1、2に記載の第2コート層の材料をイソプロピルアルコールで50質量%になるように希釈し、乾燥後に表1、2に記載の着量となるように第1コート層表面にバーコーターでコーティングし、100℃で1分間乾燥して、コーティングサンプルを作製した。
<評価方法>
[滑落速度]
300mm×250mmのコーティングサンプルの第2コート層が表面になるように、450mm×300mmのガラス板にセロハンテープで固定し、2.0gの粘稠性物質であるマヨネーズ、カレー、味噌のいずれかをのせ、直ちにガラス板を垂直に立て、粘稠性物質が200mm滑落する時間を計測し、滑落速度を算出した。この一連の動作を5回繰り返し、平均の滑落速度を算出し、滑落性の指標とした。前記滑落速度が大きいほど、粘稠性物質に対する滑落性が優れ、コーティングサンプルに付着し難いことを示す。粘稠性物質がマヨネーズの場合、コーティングサンプルの作製直後に測定した滑落速度を初期滑落速度とし、滑落速度40mm/分以上の場合を「○」、30~39mm/分を「△」、30mm/分未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
[滑落速度の経時変化]
コーティングサンプルの作製直後(塗工直後)、作製から23℃保管で3日後(塗工3日後)、作製から23℃保管で6日後(塗工6日後)、作製から23℃保管で15日後(塗工15日後)の滑落速度を前記の方法で測定した。作製直後と作製15日後で、滑落速度の差が大きいほど、滑落速度が経時変化している。粘稠性物質がマヨネーズの場合、(作製15日後の滑落速度)÷(作製直後の滑落速度)×100 = 滑落速度の経時変化率[%]とし、経時変化率90%以上の場合を「○」、80~89%を「△」、80%未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
[熱融着性]
コーティングサンプルの最内層側(第2コート層側)面同士を重ね合せ、ヒートシールテスト機(テスター産業製TP-701-B)にて、シール温度160℃、シール時間1秒、シール圧2kgf/cm、シール幅10mmの条件下でシールした。シール部に対して直角の方向に幅15mm、長さ70mm以上の試験片を切り出し、評価用サンプルとした。引張試験機(島津製作所製AG-I)にて、評価用サンプルを上下に引張速度300mm/分の条件で引張り、最大剥離強度(N/15mm)を測定した。最大剥離強度35N/15mm以上の場合を「○」、25~34N/15mmを「△」、25N/15mm未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
[実施例1~12、比較例1~5]
各サンプルを用いて、作製直後、作製3日後、作製6日後、作製15日後の滑落速度を前記の方法で測定した。その結果を表1~3に示す。
Figure 0007349285000001
Figure 0007349285000002
Figure 0007349285000003
10 粘稠性物質包装袋
10a 熱融着部
11 フィルム構造体
12 フィルム基材
13 第1コート層
14 第2コート層

Claims (3)

  1. フィルム基材の表面に乳化剤からなる第1コート層が形成され、
    前記乳化剤は、主成分がモノエステル若しくはジエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルからなり、
    この第1コート層の表面に、主成分がトリグリセライドの油脂からなる第2コート層を有するフィルム構造体。
  2. 前記第1コート層のコーティング量は、乾燥後で0.05~5.0g/mである請求項1に記載のフィルム構造体。
  3. 請求項1又は2に記載のフィルム構造体が、前記第2コート層が最内側となるように製袋された、内部に粘稠性物質が配される粘稠性物質包装袋。
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