JP7349285B2 - フィルム構造体及び粘稠性物質包装袋 - Google Patents
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Description
そこでこの発明では、基材によらず長期間にわたり安定的に粘稠性物質の付着を防止するフィルム構造体及びこのフィルム構造体から構成される包装袋を簡便な工程で提供することを目的とする。
[1]フィルム基材の表面に乳化剤からなる第1コート層が形成され、この第1コート層の表面に、主成分がトリグリセライドの油脂からなる第2コート層を有するフィルム構造体。
[2]前記第1コート層のコーティング量は、乾燥後で0.05~5.0g/m2である[1]に記載のフィルム構造体。
[3]前記乳化剤は、主成分がモノエステル若しくはジエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルからなるものである[1]又は[2]に記載のフィルム構造体。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載のフィルム構造体が、前記第2コート層が最内側となるように製袋された、内部に粘稠性物質が配される粘稠性物質包装袋。
本願発明にかかるフィルム構造体11は、図1に示すように、フィルム基材12の表面に特定の第1コート層13が形成され、その第1コート層13の表面に特定の第2コート層14が形成された構造体である。
前記フィルム基材12の材質として、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等の各種ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン等や、エチレン-プロピレン共重合体等の、オレフィン系樹脂等を構成する不飽和炭化水素を複数重合させた共重合体等があげられる。さらに、これらのポリオレフィン系樹脂は、無延伸のものでも、一軸延伸のものでも、二軸延伸のものでもよい。また、ポリエステル系樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。
前記第1コート層13は、前記フィルム基材12の表面に形成された層である。この第1コート層は乳化剤からなり、前記第2コート層14を構成する物質がフィルム基材12に浸透するのを防止する。
このポリグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルのHLB値は、3以上が好ましく、4以上がより好ましい。一方、15以下が好ましく、13以下がより好ましい。HLB値が3より小さい、または15より大きいと第2コート層を構成する物質がフィルム基材に浸透するのを防ぐ効果が低くなる。
また必要に応じて、前記乳化剤は希釈して使用することができ、前記乳化剤が溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール類が好ましい。
一方、コーティング量の上限は、乾燥の面積当たりの質量で、5.0g/m2以下がよく、0.8g/m2以下が好ましく、0.5g/m2以下がより好ましい。5.0g/m2より多くてもよいが、前記フィルム基材12の表面全体に膜状に形成する必要量より多くなり、効率的でない。
前記第2コート層14は、前記第1コート層13の表面に形成された層である。この第2コート層14は、主成分がトリグリセライドである油脂からなるため、前記粘稠性物質がフィルム構造体に付着するのを防止できる。
このような、中鎖脂肪酸トリグリセライドの具体例として、脂肪酸の炭素数が8~10のカプリル酸トリグリセライドやカプリン酸トリグリセライドがあげられる。これらは、ココナッツオイルやパーム核油等に含まれる成分なので、前記粘稠性物質が食品の場合、万が一、混入しても、安全性を担保できる。
また必要に応じて、前記脂肪族トリグリセライドは希釈して使用することができ、前記脂肪族トリグリセライドが溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えばイソプロピルアルコールやエタノールなどのアルコール類が好ましい。
この発明にかかる粘稠性物質包装袋10は、図2(a)(b)に示すように、前記フィルム構造体を、前記第2コート層14が最内側となるように製袋した袋である。このようにすることにより、前記粘稠性物質が第2コート層14と接するので、粘稠性物質の前記フィルム構造体11への付着を防止することができる。
なお、図2(b)において、熱融着部10aは、フィルム基材12のみから構成されているように図示した。これは、熱融着の際、フィルム構造体11の第1コート層13や第2コート層14は、移動する可能性が考えられるので、これらの層がない場合として図示したものである。このため、熱融着の条件等によっては、この熱融着部10aに、第1コート層13や第2コート層14が残存する場合が生じると考えられるが、この場合については、図示していない。また、本願発明においては、熱融着部10aに、第1コート層13や第2コート層14が残存するか否かについては、熱融着性を阻害しない限りは特に限定するものではない。
前記の包装袋の他に、例えば、前記フィルム構造体をホールケーキ等の側周面に環状に巻き、ホールケーキの側面保護部材の役割を果たすことができる。
この発明にかかる粘稠性物質包装袋10に封入され、包装される粘稠性物質としては、粘稠性を有する流動性物質である、マヨネーズ、ケチャップ、カレー、味噌、餡子、ジャム、蜂蜜、グラビアインキ、ヘアコンディショナー等があげられる。
[フィルム基材]
・直鎖状低密度ポリエチレン…三井化学東セロ(株)製:T.U.X TCS、以下「LLDPE」と称する。
・無延伸ポリプロピレン…サン・トックス(株)製:LU02、以下「CPP」と称する。
・ポリエチレンテレフタレート…東洋紡(株)製:E5100、以下「PET」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル1…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MO-3S(テトラグリセリンモノエステル)、HLB値:8.8、以下「GFE1」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル2…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MO-5S(ヘキサグリセリンペンタエステル)、HLB値:11.6、以下「GFE2」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル3…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター PO-3S(テトラグリセリンペンタエステル)、HLB値:2.9、以下「GFE3」と称する。
・グリセリン脂肪酸エステル4…阪本薬品工業(株)製:SYグリスター MCA-750(デカグリセリンモノエステル)、HLB値:16.1、以下「GFE4」と称する。
・ショ糖脂肪酸エステル…三菱ケミカルフーズ(株)製:S-1170、主要化学物名:ショ糖ステアリン酸エステル、HLB値:約11、以下「SFE」と称する。
・中鎖脂肪酸トリグリセライド1…中央化成(株)製:MASESTER-E6000、主要化学物名:トリカプリル酸グリセリル、以下「MCT1」と称する。
・中鎖脂肪酸トリグリセライド2…理研ビタミン(株)製:アクターM-2、主要化学物名:トリカプリル酸グリセリル、以下「MCT2」と称する。
・長鎖脂肪酸トリグリセライド…味の素(株)製:オリーブオイル、以下「LCT」と称する。
・短鎖脂肪酸トリグリセライド…雪印メグミルク(株)製:雪印北海道バター、以下「SCT」と称する。
・PU系コート剤…東洋モートン(株)製:主剤EL-540、硬化剤CAT-RT3(主剤10部に対し、硬化剤1.5部を混合し、押出ラミネート用アンカーコート剤とした)、以下「PU系」と称する。
表1~3に記載の300mm×250mmのフィルム基材の表面に、表1、2に記載の第1コート層の材料をイソプロピルアルコールで50質量%になるように希釈し、乾燥後に表1、2に記載の着量となるようにバーコーターでコーティングした。100℃で1分間、熱風乾燥機で乾燥し、第1コート層を形成した。次いで、表1、2に記載の第2コート層の材料をイソプロピルアルコールで50質量%になるように希釈し、乾燥後に表1、2に記載の着量となるように第1コート層表面にバーコーターでコーティングし、100℃で1分間乾燥して、コーティングサンプルを作製した。
[滑落速度]
300mm×250mmのコーティングサンプルの第2コート層が表面になるように、450mm×300mmのガラス板にセロハンテープで固定し、2.0gの粘稠性物質であるマヨネーズ、カレー、味噌のいずれかをのせ、直ちにガラス板を垂直に立て、粘稠性物質が200mm滑落する時間を計測し、滑落速度を算出した。この一連の動作を5回繰り返し、平均の滑落速度を算出し、滑落性の指標とした。前記滑落速度が大きいほど、粘稠性物質に対する滑落性が優れ、コーティングサンプルに付着し難いことを示す。粘稠性物質がマヨネーズの場合、コーティングサンプルの作製直後に測定した滑落速度を初期滑落速度とし、滑落速度40mm/分以上の場合を「○」、30~39mm/分を「△」、30mm/分未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
コーティングサンプルの作製直後(塗工直後)、作製から23℃保管で3日後(塗工3日後)、作製から23℃保管で6日後(塗工6日後)、作製から23℃保管で15日後(塗工15日後)の滑落速度を前記の方法で測定した。作製直後と作製15日後で、滑落速度の差が大きいほど、滑落速度が経時変化している。粘稠性物質がマヨネーズの場合、(作製15日後の滑落速度)÷(作製直後の滑落速度)×100 = 滑落速度の経時変化率[%]とし、経時変化率90%以上の場合を「○」、80~89%を「△」、80%未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
コーティングサンプルの最内層側(第2コート層側)面同士を重ね合せ、ヒートシールテスト機(テスター産業製TP-701-B)にて、シール温度160℃、シール時間1秒、シール圧2kgf/cm2、シール幅10mmの条件下でシールした。シール部に対して直角の方向に幅15mm、長さ70mm以上の試験片を切り出し、評価用サンプルとした。引張試験機(島津製作所製AG-I)にて、評価用サンプルを上下に引張速度300mm/分の条件で引張り、最大剥離強度(N/15mm)を測定した。最大剥離強度35N/15mm以上の場合を「○」、25~34N/15mmを「△」、25N/15mm未満を「×」と評価し、「△」以上を効果ありの範囲とした。
各サンプルを用いて、作製直後、作製3日後、作製6日後、作製15日後の滑落速度を前記の方法で測定した。その結果を表1~3に示す。
10a 熱融着部
11 フィルム構造体
12 フィルム基材
13 第1コート層
14 第2コート層
Claims (3)
- フィルム基材の表面に乳化剤からなる第1コート層が形成され、
前記乳化剤は、主成分がモノエステル若しくはジエステルからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステルからなり、
この第1コート層の表面に、主成分がトリグリセライドの油脂からなる第2コート層を有するフィルム構造体。 - 前記第1コート層のコーティング量は、乾燥後で0.05~5.0g/m2である請求項1に記載のフィルム構造体。
- 請求項1又は2に記載のフィルム構造体が、前記第2コート層が最内側となるように製袋された、内部に粘稠性物質が配される粘稠性物質包装袋。
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