JP7348502B2 - スチールコード接着用ゴム組成物及びコンベヤベルト - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、硫黄加硫可能なゴム100重量部に対して、ロジンまたはロジン誘導体を3~15重量部と、有機コバルト塩をコバルト量として0.2~1.0重量部と、有機塩素化合物を3~50重量部とを含有するゴム組成物と、亜鉛メッキスチールコードとを接着する、亜鉛メッキスチールコードとゴムとの接着方法等が記載されている。
そこで、本発明は、耐水接着性に優れる、スチールコード接着用ゴム組成物を提供することを目的とする。なお、本発明において耐水接着性は耐湿接着性を含むものとする。
また、本発明は、耐水接着性に優れるコンベヤベルトを提供することも目的とする。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
有機酸コバルト塩と、
硫黄と、
炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物1、及び、環状の飽和脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸化合物2からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸Yとを含み、
上記有機酸Yの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~10.0質量部であり、
上記ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量が、0.0~2.0質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物。
[2] 上記有機酸Yが、上記カルボン酸化合物1を含む、[1]に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[3] 上記有機酸コバルト塩を構成する有機酸Zが、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物3を含む、[1]又は[2]に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[4] 上記有機酸Yが、ネオデカン酸を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[5] 上記有機酸コバルト塩が、ネオデカン酸ホウ酸コバルトを含む、[1]~[4]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[6] 上記加硫促進剤の含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.0質量部を超え2.0質量部以下であり、
上記加硫促進剤が、ベンゾチアゾール系加硫促進剤を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[7] 更に、ステアリン酸を含有する、[1]~[6]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[8] 亜鉛メッキスチールコードを接着させるために使用される、[1]~[7]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルト。
また、本発明のコンベヤベルトは、耐水接着性に優れる。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
本明細書において、耐水接着性がより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
本発明のスチールコード接着用ゴム組成物(本発明の組成物)は、
ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、
有機酸コバルト塩と、
硫黄と、
炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物1、及び、環状の飽和脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸化合物2からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸Yとを含み、
上記有機酸Yの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~10.0質量部であり、
上記ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量が、0.0~2.0質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物である。
まず、本発明の組成物は加硫促進剤を含まない又は加硫促進剤の含有量が少ないことによって、スチールコードの表面上の本発明の組成物における競争反応(硫黄に対する加硫促進剤又は有機酸コバルトとの反応)では、硫黄と有機酸コバルトが有するコバルトとが反応する確率が高くなると考えられる。
さらに、有機酸Yは、ゴム組成物において一般的に加硫促進助剤として機能するステアリン酸よりも、ジエン系ゴムに対する加硫促進能力が低く、このため、有機酸Yは、ジエン系ゴムに対する加硫促進助剤として機能するよりは、むしろ、上記のように金属酸化物を除去する機能のほうが優位に働くと本発明者は推測する。
以上の理由から、本発明の組成物は耐水接着性に優れると本発明者は推測する。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
本発明の組成物は、ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分を含有する。
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、ジエン系モノマーを重合して得られるポリマーであれば特に制限されない。
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム(例えばスチレンブタジエン共重合体ゴム)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)が挙げられる。但し上記ジエン系ゴムは、後述する酸無水物基を有する液状ポリイソプレンを含まない。
上記天然ゴム(NR)は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記イソプレンゴムはイソプレンのホモポリマーであれば特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、スチレンとブタジエンとの共重合体であれば特に制限されない。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムの結合スチレン量は、本発明の効果により優れ、後述する上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度が低くなるという観点から、上記スチレンブタジエン共重合体ゴム全量に対して、5~40質量%であることが好ましく、10~30質量%がより好ましい。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのブタジエンによるビニル量(1,2-ビニル結合量)は、本発明の効果により優れ、後述する上記スチレンブタジエン共重合体ゴムのガラス転移温度が低くなるという観点から、スチレンブタジエン共重合体ゴムが有するブタジエンによる繰り返し単位の総量に対して、5~30質量%であることが好ましく、5~20質量%がより好ましい。
本発明において、上記スチレンブタジエン共重合体ゴムが有する、上記結合スチレン量と上記ビニル量は、1H-NMRで測定することができる。
スチレンブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は特に制限されない。例えば、20万~300万とできる。
本発明において、スチレンブタジエン共重合体ゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、その製造方法について特に制限されない。例えば、溶液重合によるスチレンブタジエン共重合体ゴム(S-SBR)、乳化重合によるスチレンブタジエン共重合体ゴム(E-SBR)が挙げられる。なかでも、上記スチレンブタジエン共重合体ゴムは、本発明の効果により優れるという観点から、S-SBRを含むことが好ましい。
上記ジエン系ゴムの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、70~100質量部が好ましい。
上記スチレンブタジエン共重合体ゴムの含有量は、上記ゴム成分100質量部から上記天然ゴムの含有量を除いた量とできる。
本発明において、上記ジエン系ゴムの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値とすることができる。
本発明の組成物に含有される有機酸コバルト塩は、有機酸とコバルトで形成される塩であれば特に制限されない。
上記有機酸コバルト塩を構成する有機酸Zとしては、例えば、カルボキシ基を有する化合物が挙げられる。上記カルボキシ基は有機基に結合することができる。上記有機基は特に制限されない。例えば、炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、これらの組合せが挙げられる。脂肪族炭化水素基は不飽和結合を有してもよい。
上記炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基は、後述する有機酸Yとしてのカルボン酸化合物1が有する炭化水素基と同様とできる。
上記環状の飽和脂肪族炭化水素基は、後述する有機酸Yとしてのカルボン酸化合物2が有する炭化水素基と同様とできる。
上記カルボン酸化合物3(又は炭素数15以下の分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物)としては、ネオデカン酸が挙げられる。
ネオデカン酸は、炭素数9の分岐状の飽和脂肪族炭化水素基にカルボキシ基が1つ結合した化合物である。
上記有機酸コバルト塩を形成する有機酸Zがカルボキシ基を有する化合物である場合、上記有機酸コバルト塩が有するカルボキシイオン(-COO-)は、上記有機酸Zのカルボキシ基に由来することができる。
上記有機酸コバルト塩において上記カルボキシイオンのような、(酸による)アニオンの対イオンは、有機酸コバルト塩が有するコバルトイオン(例えば、Co2+、Co3+)である。
下記式(1)で表されるネオデカン酸ホウ酸コバルトのようなコバルトボロン錯体などが挙げられる。
本発明の組成物は硫黄を含有する。上記硫黄は特に制限されない。例えば、硫黄単体が挙げられる。
上記硫黄の含有量は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、2.1~8.0質量部であることが好ましく、3.5~5.0質量部がより好ましく、4.0質量部を超え4.5質量部以下が更に好ましい。
本発明において、有機酸Yは、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物1、及び、環状の飽和脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸化合物2からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機酸Yを含む。
カルボン酸化合物1は、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、及び、カルボキシ基を有する化合物である。
上記カルボン酸化合物1が有する炭化水素基の炭素数は、本発明の効果により優れるという観点から、3~12が好ましく、8~10がより好ましい。
上記カルボン酸化合物1が有する、直鎖状又は分岐状の炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、脂肪族炭化水素基が好ましく、飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
上記カルボン酸化合物1が有する炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、分岐状が好ましい。
上記カルボン酸化合物1は、1分子中、カルボキシ基を1個又は複数有することができる。上記カルボン酸化合物1は、カルボキシ基を1個有することが好ましい。
上記カルボン酸化合物1としてのネオデカン酸は、上記の有機酸コバルト塩を構成する有機酸Zとしてのカルボン酸化合物3で例示されたネオデカン酸と同様である。
上記カルボン酸化合物1としてのネオデカン酸は、炭素数9の分岐状の飽和脂肪族炭化水素基にカルボキシ基が1つ結合した化合物の異性体混合物であってもよい。
また、上記カルボン酸化合物1は、後述する酸無水物基を有する液状ポリイソプレンを含まない。
カルボン酸化合物2は、環状の飽和脂肪族炭化水素基、及び、カルボキシ基を有する化合物である。
上記カルボン酸化合物2が有する、環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、単環の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
上記環状の飽和脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、シクロペンチル基が好ましい。
上記カルボン酸化合物2において、環状の飽和脂肪族炭化水素基に脂肪族炭化水素基が更に結合することが好ましい。
上記カルボン酸化合物2は、1分子中、カルボキシ基を1個又は複数有することができる。上記カルボン酸化合物2は、カルボキシ基を1個有することが好ましい。
上記カルボキシ基は、上記環状の飽和脂肪族炭化水素基と直接又は有機基を介して結合することができる。上記有機基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記脂肪族炭化水素基の炭素数は、例えば、8~22とできる。
Cy-CnH2n-COOH
上記構造において、Cyはシクロペンチル基を表し、nは8~22を表す。
有機酸コバルト塩を構成する有機酸Zと有機酸Yとは、本発明の効果により優れるという観点から、同類であることが好ましく、
上記有機酸Zが、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物3を含み、かつ、上記有機酸Yが、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物1を含むことがより好ましく、
有機酸Z及び有機酸Yが両方ともネオデカン酸を含むことが更に好ましい。
本発明において、上記有機酸Yの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.5~10.0質量部である。
上記有機酸Yの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、1~7質量部が好ましく、2~6質量部がより好ましい。
本発明の組成物において、上記ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量は0.0~2.0質量部である。
上記加硫促進剤としては、例えば、アルデヒド-アンモニア系、アルデヒド-アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系、これらの混合物が挙げられる。
なお、一般的にチアゾール系以外の加硫促進剤に分類されている加硫促進剤がチアゾール骨格を有する場合、本明細書において、上記のような加硫促進剤を、チアゾール系加硫促進剤に分類するものとする。
チアゾール系加硫促進剤は、チアゾール骨格を有する加硫促進剤であれば特に制限されない。チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ベンゾチアゾール骨格を有するベンゾチアゾール系加硫促進剤が挙げられる。
上記ベンゾチアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ベンゾチアゾリルスルフィド基を有する加硫促進剤が挙げられる。
本発明において、加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.0~2.0質量部である。
上記加硫促進剤の含有量は、耐水接着性により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、0.0~0.8質量部が好ましく、0.0質量部以上0.5質量部未満がより好ましく、0.0~0.4質量部が更に好ましい。
本発明の組成物が加硫促進剤を含有する場合、上記加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.0質量部を超えればよい。
本発明の組成物は、ロジン類、フェノール樹脂及び塩素化パラフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物Aを更に含有することが好ましい。
本発明の組成物は化合物Aを更に含有することによって耐水接着性により優れる。
ロジン類としては、例えば、ロジン、ロジン誘導体が挙げられる。
ロジン類は、一般的に、カルボキシ基を有する化合物である。
ロジンは、松脂を蒸留等して得られる天然樹脂の1種である。
ロジンとしては、例えば、松材から蒸留等で得られるガムロジン、ウッドロジン、トールロジンが挙げられる(製造上で分類される種類として)。
また、上記ロジンは、一般的に、アビエチン酸のような樹脂酸(カルボキシ基を有し、不飽和結合を有してもよい、縮合脂環式炭化水素化合物)の混合物である。上記ガムロジン等のロジンの種類によって、上記樹脂酸の構成が異なる。
ロジン類は、本発明の効果により優れ、耐久性に優れるという観点から、ガムロジンが好ましい。
上記ロジン類の軟化点は、本発明の効果により優れるという観点から、40~130℃であることが好ましく、50~100℃がより好ましい。
ロジン類の軟化点は、JIS K5902-1969に準じて測定することができる。
上記ロジン類の酸価は、50mgKOH/g以上とすることができる。
上記ロジン類の酸価は、本発明の効果により優れるという観点から、50~200mgKOH/gであることが好ましく、80~180mgKOH/gがより好ましい。
ロジン類の酸価は、JIS K2501:2003に準じて測定することができる。
上記ロジン類の分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、200~1000であることが好ましく、250~400がより好ましい。
ロジン類の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
なおロジン類は一般的に混合物であるため、上記ロジン類の分子量は平均値であってもよい。
ロジン類としては、市販品を用いることができる。具体的には、例えば、荒川化学工業株式会社製のガムロジン又はウッドロジン、ハリマ化成グループ株式会社製のトールロジン、Hercules社製の水素添加ロジン等が挙げられる。
本発明の組成物は、更に、フェノール樹脂を含有することができる。
本発明の組成物は、耐水接着性により優れるという観点から、更に、フェノール樹脂を含有することが好ましい。
なお、本発明の組成物は、フェノール樹脂の硬化剤を含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記塩素化パラフィンは、塩素を有するパラフィンであれば特に制限されない。例えば、平均で炭素数26の鎖状飽和炭化水素化合物であって、該化合物中の水素原子の全部又は一部が塩素原子で置換されているものが挙げられる。
上記塩素化パラフィンが有する塩素量は、塩素化パラフィン全量に対して、例えば、40~80質量%が好ましい。
本発明の組成物は、更に、カーボンブラックを含有することができる。
上記カーボンブラックは特に制限されない。
なかでも、上記カーボンブラックは、本発明の効果により優れるという観点から、HAF級カーボンブラック、ISAF級カーボンブラックが好ましく、HAF級カーボンブラックがより好ましい。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、本発明の効果により優れるという観点から、60~120m2/gが好ましく、65~95m2/gがより好ましい。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217-2:2017「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定できる。
上記カーボンブラックの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、35~75質量部であることが好ましく、40~70質量部がより好ましい。
本発明の組成物は、更に、老化防止剤を含有することができる。
老化防止剤は特に制限されない。例えば従来公知の老化防止剤が挙げられる。
上記老化防止剤の含有量の上限は、上記ゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以下とできる。
本発明の組成物は更に酸化亜鉛を含有することができる。上記酸化亜鉛は特に制限されない。
上記酸化亜鉛の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、上記ゴム成分100質量部に対して、5.0質量部以上であることが好ましい。
上記酸化亜鉛の含有量の上限は、上記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下とできる。
本発明の組成物は、本発明の効果により優れ、ゴム成分の加硫速度及び本発明の組成物とスチールコードとの接着性のバランスに優れるという観点から、更に、ステアリン酸を含有することが好ましい。
ステアリン酸は、一般的に、加硫促進助剤として機能することができる。
ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)は特に制限されない。
ステアリン酸の含有量は特に制限されないが、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部であることが好ましい。
上記の酸無水物基を有する液状ポリイソプレンは、酸無水物基を有し、骨格が基本的にイソプレンの繰り返し単位を有し、室温(23℃)条件下で液状のポリマーであれば特に制限されない。
酸無水物基を有する液状ポリイソプレンの骨格は、単独重合体、共重合体のいずれであってもよい。
酸無水物基を有する液状ポリイソプレンの骨格としては、例えば、イソプレンの単独重合体;スチレン-イソプレン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体のような共重合体が挙げられる。
酸無水物基を有する液状ポリイソプレンは、例えば、上記骨格が上記酸無水物基によって変性されていてもよく、また、イソプレンと上記酸無水物基を導入しうるモノマーとを少なくとも含む単量体を共重合させた共重合体であってもよい。
上記酸無水物基は、上記骨格と直接又は有機基を介して結合できる。上記有機基は特に制限されない。
本発明において、上記液状ポリイソプレンの重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
本発明の組成物をスチールコード(例えば亜鉛メッキスチールコード)とともに用いて、例えば加硫することによって、加硫ゴムとスチールコードとを有する複合体を得ることができる。上記複合体において加硫ゴムとスチールコードとは接着することができる。
上記スチールコードは、本発明の効果により優れ、防錆性に優れるという観点から、亜鉛メッキされたものが好ましい。
上記スチールコード(亜鉛メッキされたスチールコードを含む。以下同様)の例えば素線径又はコード径などは、適宜選択できる。上記スチールコードは、その表面が未処理のものであってもよい。
タイゴムとしては、例えば、コンベヤベルトを例えば端部で接続しうるゴムが挙げられる。タイゴムによる接続によってコンベヤベルトを、長く及び/又はエンドレス化することができる。
次に、本発明のコンベヤベルトについて以下に説明する。
本発明のコンベヤベルトは、本発明のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルトである。
本発明の組成物は、本発明の効果により優れるという観点から、スチールコードをコートするコートゴム層(例えばクッションゴム及び/又はタイゴム)を形成することが好ましい。
本発明のコンベヤベルトは、更に、カバーゴム層を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記カバーゴム層を形成しうるゴム組成物は特に制限されない。
本発明の組成物によりコートゴム層がタイゴムである場合、上記コートゴム層にはカバーゴム層が隣接しても隣接しなくてもよい。
図1は本発明のコンベヤベルトの一例を模式的に表す断面斜視図である。
図1において、コンベヤベルト1は、両表面にカバーゴム層6を有し、カバーゴム層6の間に、スチールコード2とコートゴム層4を有する。コートゴム層4はスチールコード2をコートする。コートゴム層4は本発明のスチールコード接着用ゴム組成物で形成されることが好ましい。
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いた。
まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、バンバリーミキサーで混合し、次に、得られた混合物に硫黄および加硫促進剤を第1表に示す量で加えてこれらをロールを用いて混合して、各組成物を製造した。
上記のとおり製造された各組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
耐水接着性をゴム付きで評価した。
・評価方法
デシケータ中に保管して防塵防湿処理を施してある直径4.1mmの亜鉛メッキスチールコードに、上記のとおり製造された各組成物を15mmの厚さに付与して、各組成物とスチールコードとの複合体(スチールコードは組成物中に埋まっている状態)とし、上記複合体をプレス成型機を用いて153℃、面圧2.0MPaの条件下で20分間加圧加硫して、試験体(ゴム/亜鉛メッキスチールコード複合体)を作製した。上記試験体において、ゴム表面からスチールコードが突出している箇所のゴムとスチールコードとの境目を蜜ロウでシールし、温度50℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽内で3週間放置した。その後、室温(23℃)条件下で各試験体からスチールコードを引き抜く引き抜き試験を行った。上記引き抜き試験は、DIN22131に準拠して行った。
引き抜き試験後、引き抜かれたスチールコードの状態を確認し、初期のスチールコードの表面積に対する引き抜き後のスチールコード表面に残存するゴムの被覆面積の割合(ゴム被覆率、%)を算出した。上記のとおり算出されたゴム被覆率をゴム付きとして第1表に示した。
本発明において、上記ゴム付き(ゴム被覆率)が70%以上である場合、耐水接着性に優れると評価した。
上記ゴム付きが70%未満である場合、耐水接着性が劣ると評価した。
上記ゴム付きが70%より大きいほど、耐水接着性により優れると評価した。
(ジエン系ゴム)
・ジエン系ゴム1(NR):天然ゴム。TSR20
・ジエン系ゴム2(SBR):溶液重合スチレンブタジエン共重合体ゴム。商品名タフデン 2000R(旭化成社製)。ガラス転移温度-70℃。重量平均分子量32万、結合スチレン量27質量%、ビニル量9質量%
・有機酸コバルト塩1(ネオデカン酸ホウ酸コバルト):下記式(1)で表されるネオデカン酸ホウ酸コバルト。DIC CORPORATION社製DICNATE NBC-II(ネオデカン酸ホウ酸コバルト中のコバルト含有量は22.2質量%)。ネオデカン酸ホウ酸コバルトはネオデカン酸(カルボン酸化合物3)由来のカルボキシイオンを有する。
・カルボン酸化合物1-1(ネオデカン酸):ネオデカン酸(下記構造)。DIC CORPORATION社製。炭素数9の分岐状の飽和脂肪族炭化水素基を有するカルボン酸化合物。
・液状ポリイソプレン(LIR-403):クラレ社製LIR-403。重量平均分子量34000。酸無水物基を有するポリイソプレン(下記構造)。室温(23℃)の条件下で液状。
・加硫促進剤1(DM):ベンゾチアゾール系加硫促進剤。ジベンゾチアジルジスルフィド(下記構造)。サンセラー DM-PO、(三新化学工業株式会社製)
2 スチールコード
4 コートゴム層
6 カバーゴム層
Claims (5)
- ジエン系ゴムを少なくとも含むゴム成分と、
有機酸コバルト塩と、
硫黄と、
炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物1である有機酸Yと、
ステアリン酸とを含み、
前記有機酸Yが、ネオデカン酸を含み、
前記有機酸コバルト塩を構成する有機酸Zが、炭素数15以下の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を有するカルボン酸化合物3を含み、
前記有機酸Yの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.5~7質量部であり、
前記ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の含有量が、0.0~2.0質量部である、スチールコード接着用ゴム組成物。 - 前記有機酸コバルト塩が、ネオデカン酸ホウ酸コバルトを含む、請求項1に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
- 前記加硫促進剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、0.0質量部を超え2.0質量部以下であり、
前記加硫促進剤が、ベンゾチアゾール系加硫促進剤を含む、請求項1又は2に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。 - 亜鉛メッキスチールコードを接着させるために使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のスチールコード接着用ゴム組成物を用いて形成されたコンベヤベルト。
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