JP7347920B2 - 柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体およびその製造方法、賦形体に用いる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体およびその製造方法、賦形体を含むガス吸着材、ならびにそれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 - Google Patents

柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体およびその製造方法、賦形体に用いる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体およびその製造方法、賦形体を含むガス吸着材、ならびにそれを用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置 Download PDF

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Description

本発明は柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体(多孔配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)ともいう)の粉体を含む賦形体、触媒、およびガス吸着材、ならびにこのガス吸着材を用いたガス分離装置およびガス貯蔵装置に関する。
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと有機配位子から得られる結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性から、触媒やガス貯蔵、分離材料としての利用の可能性を秘めている。(特許文献1、非特許文献1参照)
多孔性高分子金属錯体は、通常、粉体または微粒子として得られる固体であって、吸着材として用いることができる。工業的な利用を考えた場合、一般的に粉体は取扱いが困難である。粉体を触媒として用いる場合であれば、固体物質に担持した不均一触媒として調製する事で、反応後の生成物と触媒との分離を容易に行うことができる。
固体吸着材を用いてガス分離を行う典型的な方法として、圧力スイング吸着方式(Pressure Swing Adsorption)(以下、単に「PSAシステム」と略記する)が挙げられる。このシステムは、ガスの流通式システムであるため、このシステムに用いられる吸着材は、ガス流で飛散しないように、賦形化されている事が必須である。PSAシステムで用いられるガス貯蔵、分離材料として、既存のゼオライトが挙げられるが、これも通常、製造直後は微粉体であるため、多くの場合、1ミリ以上の顆粒、柱状物として賦形化される。ゼオライトの賦形化に際しては、バインダーを利用する方法、バインダーを利用しない方法のいずれもが知られている。バインダーを用いる場合は、糖類等が一般的に用いられている。
粉体等の賦形体を工業的に利用する場合、賦形体の崩壊、粉化が生じると、種々の不都合が生じる。触媒利用の場合は、反応生成物に触媒が混入する原因となる。PSAシステム場合は、配管の閉塞、電磁弁の動作不良が生じる。すなわち、賦形体は、使用時の形態維持性が重要である。ガス吸着用途として使用する場合は、賦形体内部へのガス拡散が妨げられることによるガス吸着能低下が生じないような賦形法である事も重要である。
賦形体の崩壊・粉化防止のためには高圧縮により賦形を行うこと、あるいは強固なバインダーを使用することが好ましいが、このようにして得られた賦形体は、ガス拡散が遅くなり、吸着・分離材料としては好ましくない。このため、ガス吸着材の賦形化は、賦形体の崩壊・粉化防止とガス拡散の遅延という、矛盾する特性を両立させる事が求められる。このためには、単なる粉体の圧縮による賦形化ではなく、賦形剤を用いる方法も知られているが、この場合であっても、使用時に賦形体の崩壊・粉化を起こさず、ガスの拡散を妨げず、ガス吸着材と相互作用してガス吸着材のガス吸着能を低下させない適切なバインダーを、適切量使用する事が求められる。多孔性高分子金属錯体もゼオライト同様、製造直後は微粉体であるため、PSAシステムで吸着材として利用するためにはゼオライトと同様、賦形化が必須であり、バインダー有りまたはバインダー無しで、顆粒や錠剤等に成形する方法が知られている。(特許文献2参照)
多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体を製造する方法としてポリスチレンオリゴマーとの複合体化(非特許文献2参照)が提案されている。但し、複合体の形態維持性、粉化に関しては情報が無い。
多孔性高分子金属錯体の一部には、ガスの吸脱着に伴い、多孔性高分子金属錯体の構造が変化するものが存在する。これを、通常、「柔軟性多孔性高分子金属錯体」という。このような柔軟性多孔性高分子金属錯体の多くは、ガス吸着量が、圧力に対して非線形的に応答するゲート型の吸脱着を示す。
これらの柔軟性多孔性高分子金属錯体は、ガスの吸脱着に際して構造変化があるため、結晶にストレスがかかり割れる等の現象があり、賦形体がガス吸着により崩壊する現象が知られている。したがって、バインダーを使用しない賦形体または構造変化に追随できないバインダーを用いた賦形体は、ガス吸着の後に賦形体の崩壊、粉化が生じる。賦形体の崩壊、粉化が生じると、PSAシステムの配管、電磁弁等の閉塞、動作不良が生じるため、柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形化には、柔軟性を有する樹脂をバインダーとして使用する事が提案されている。(特許文献3、非特許文献3参照)
しかしこれらの樹脂は、多孔性材料ではなく、ガス透過率が低いため、ガスの吸着速度が低下するという問題がある。また、柔軟性樹脂と言っても、室温では硬質であり、多孔性高分子金属錯体の構造変化に追随仕切れず、結果として、柔軟性多孔性高分子金属錯体の構造変化が抑制され、ガス吸着量が低下する等の問題が生じやすい。実際、非特許文献3の記載内容では、賦形前のガス吸着量が300mL/gであり、賦形体のポリビニルアルコールの含有量が15%であることから、賦形体のガス吸着量は255mL/gあるべきであるが、観測値は200mL/gに過ぎず、賦形化により2割近く、ガス吸着性が低下していた。また、この文献の多孔性高分子金属錯体は柔軟性を有すると記載されているが、図4に示されている等温線はI型であった。これは、典型的な柔軟性多孔性高分子金属錯体が示す、ゲート型の等温線を示していないため、ゲート型の柔軟性多孔性高分子金属錯体として適用可能かどうかは不明である。また、ガス吸脱着後の形態維持性に関しても不明である。
本明細書にいうゲート型多孔性高分子金属錯体とは、ゲート型の等温線(ゲート現象)を示す材料である。ゲート型等温線とは、主として構造変化により、図4に示すような変曲点を示す吸着およびまたは脱着等温線を意味する。ゲート型多孔性高分子錯体の等温線は、図4に示すように、吸着開始ゲート圧力、吸着完了ゲート圧力、ゲート吸着量、脱着開始ゲート圧力、脱着完了ゲート圧力、ゲート脱着量で定義される。
また別の多孔性高分子金属錯体の賦形方法として、多孔性高分子金属錯体パルプとの複合体が知られている。
非特許文献4では、HKUST-1と呼ばれる多孔性高分子金属錯体とパルプの複合体が提案されているが、この複合体のガスの吸着性に関しては不明で有り、また形態維持性も不明である。
非特許文献5では、アセチル基による変性セルロースであるセルロース系材料と、MIL-53(Al)と呼ばれる柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体との複合体を用いて、天然ガス中の成分を除去する方法が提案されている。しかし、この複合体の等温線はゲート型の等温線を示していないため、ゲート型の柔軟性多孔性高分子金属錯体に適用可能かどうかは不明である。また、ガス吸脱着後の形態維持性も不明である。
さらにセルロース系材料と柔軟性多孔性高分子金属錯体との複合体を、ガス吸着用途として使用する場合、ガス拡散が速い賦形体を製造するための柔軟性多孔性高分子金属錯体の粒径とセルロース繊維の長さやアスペクト比との適切な関係は知られていない。またPSA用途の使用に際して賦形体崩壊・粉化を抑制するための柔軟性多孔性高分子金属錯体の粒径とパルプ繊維の適切な関係も知られていない。
多孔性高分子金属錯体の合成に際し、超音波を当てる、フローリアクタ法等の特殊な合成装置を用いる、あるいは添加剤を加える事で、多孔性高分子金属錯体の結晶粒径を制御することは知られている。(非特許文献6、7,8)
柔軟性多孔性高分子金属錯体に関しても、このような、結晶粒径の制御は知られているが、一般的に結晶粒径が小さくなると、柔軟性多孔性高分子金属錯体特有のゲート型のガス吸着特性が低下してしまう、具体的には、ゲートの立ち上がりが不鮮明になってしまうことが知られており、柔軟性多孔性高分子金属錯体のゲート型ガス吸着に関しては、大きい粒径の方が好ましい。(非特許文献9、10)
賦形体の一般特性として、材料サイズが小さい方が、応力に対して歪みの発生が小さく、破壊されにくい場合はある。ただし、柔軟性多孔性高分子金属錯体のガス吸着で生じる膨張収縮現象に起因する賦形体の割れ、粉化と、賦形体サイズの相関は知られておらず、賦形体の割れ、粉化防止に適切な柔軟性多孔性高分子金属錯体の粒径があるかどうかも知られていない。
特開2000-109493号公報 特開2015-66512号公報 国際公開第2015/012373号 特許第5646789号公報
北川進(2001年).集積型金属錯体 講談社サイエンティフィク 214-218頁 Livingstonら、J. Am. Chem. Soc. (2013) 15201 Vosら, Microporous and mesoporous mater, (2009) 221 Kaskelら、Advanced Engineering Materials (2009) 93 Jonesら、ACS Applied Materials and Interfaces (2016) 9700 Qiuら、Mater. Lett. (2009) 63, 78 田中ら、Chem. Eng. J. (2013)145 酒田ら、Science (2013) 339, 6116, 193 田中ら、Nature Chem (2010) 410 加納ら、J. Colloid. Interface Sci. (2009) 14 1 Morris ら、Nature Chemistry 2011, 304
本発明は、賦形体の崩壊、粉化が起こりにくい、特定の粒径分布を有するマイクロメートルオーダーの微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体を提供する。また本発明は、ガス吸着材として優れた特性を有する、微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体を含むガス吸着材を提供する。また本発明は、前記ガス吸着材を内部に収容して成るガス貯蔵装置およびガス分離装置を併せて提供することを目的とする。
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、適切な方法で合成された、適切な粒径、粒径分布を有する微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体は、ガス吸着に際し、賦形体の割れ、粉化が生じにくく、さらにこの賦形体を使用して作成したガス吸着材は、賦形体の崩壊、粉化が生じにくい事を見いだし、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、下記を提供する:
(1)賦形材、並びにメジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2であり、スパン値が1.3未満である、粒径、粒径分布を有するガス吸着材に用いられる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体。
(2)前記柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体が、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体、または三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体から選ばれる多孔性高分子金属錯体である前記(1)に記載の賦形体。
(3)前記一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体が、式:[G(H)(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)、または式:G(J)(L(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、Lは1価の対イオンである)である、前記(2)に記載の賦形体。
(4)前記二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体が、カゴメ型と総称される式:[GH](式中、Gは遷移金属イオン、Hは配位子を表す)、またはELMと総称される式:[GHX](式中、Gは遷移金属イオン、Hは4,4-ビピリジル類、Xは1価の対イオンを表す)である、前記(2)に記載の賦形体。
(5)前記三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体が、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体である、前記(2)に記載の賦形体。
(6)メジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2であり、スパン値が1.3未満である、粒径、粒径分布を有するガス吸着材に用いられる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体。
(7)前記柔軟性多孔性高分子金属錯体の金属源となる金属塩を溶媒に溶解して、第1の溶液を用意する工程、
前記柔軟性多孔性高分子金属錯体の配位子となる配位子化合物を前記溶媒に溶解して、第2の溶液を用意する工程、
前記第2の溶液に超音波を照射しながら、前記第1の溶液を、滴下する工程、
生成した柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む反応物溶液を、濾過し、洗浄し、乾燥して、メジアン径(μm)およびモード径(μm)6.7~3.2、スパン値が1.3未満の粒径、粒径分布を有する柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を得る工程、
を含む、前記(6)に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法。
(8)前記金属源が銅イオンであり、前記配位子が、置換または無置換のイソフタル酸イオンである、前記(7)に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法。
(9)前記(7)または(8)に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を得る工程の後に、さらに、得られた柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を賦形化する工程を含む、柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体の製造方法。
(10)前記(1)~(5)のいずれかに記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を含むガス吸着材。
(11)前記(10)に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
(12)前記(10)に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
本発明の多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体は、多量のガスを吸着し、放出し、且つガスの選択的分離を行うことができる。また本発明の多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体からなるガス吸着材料を用いて、内部に収容してなるガス貯蔵装置およびガス分離装置を製造することができる。また、微粒子状の多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体(以下、単に「本発明の賦形体」ともいう)は、安定な賦形体を形成するため、触媒反応に利用する事ができる。
また、本発明の賦形体を用いて、加水分解、重合反応等を触媒する事ができる。また、本発明の賦形体を用いて、あるいは本発明の賦形体に導電材料をドープ(添加)してなる導電性材料を形成することができる。
さらにまた、本発明の賦形体を用いて、あるいは本発明の賦形体に導電材料をドープして、センサーを形成することができる。
本発明の賦形体は、例えば、PSAシステムのガス分離装置として使用すれば、非常に効率良くガスを分離することができる。賦形体の割れ、粉化が生じにくいため、これらの現象に伴う装置の汚染、配管閉塞等のトラブルを防止する事ができる。また、圧力変化に要する時間を短縮でき、省エネルギーにも寄与することができる。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与しうるため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減でき、結局、最終製品の製造コストを削減する効果を有する。
本発明の微粒子状の多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体の他の用途としては、ガス貯蔵装置が挙げられる。本発明の賦形体をガス貯蔵装置(業務用ガスタンク、民生用ガスタンク、車両用燃料タンクなど)に適用した場合には、搬送中や保存中の圧力を劇的に低減させることが可能である。搬送時や保存中のガス圧力を減少させ得ることに起因する効果としては、ガス貯蔵装置の形状自由度の向上がまず挙げられる。従来のガス貯蔵装置においては、保存中の圧力を維持しなくてはガス吸着量を高く維持できない。しかしながら、本発明のガス貯蔵装置においては、圧力を低下させても充分なガス吸着量を維持できる。さらに本発明の賦形体は、ガス吸着放出に際して賦形体の割れ、粉化が生じにくいため、これらの現象に伴う装置の汚染、配管閉塞等のトラブルを防止する事ができる。
本発明の微粒子状の多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体からなるガス吸着材をガス分離装置やガス貯蔵装置に適用する場合における、容器形状や容器材質、ガスバルブの種類などに関しては、特別の装置を用いなくてもよく、従来、ガス分離装置やガス貯蔵装置に用いられているものを用いることが可能である。ただし、各種装置の改良を排除するものではなく、いかなる装置を用いたとしても、本発明の賦形体を用いている限りにおいて、本発明の範囲に包含されるものである。
本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体のカゴメ構造の一層のみを切り抜いた上面図を示す。 図1の化合物の銅イオンが4個のカルボキシル基と配位結合したユニットが上下に二つ配位するいわゆるパドルホイール構造を拡大して示す。 図1の多孔性高分子金属錯体のカゴメ構造の二層のみを切り抜いた側面図を示す。 本発明に用いることができる多孔性高分子錯体の賦形体から成る吸着材の、各ゲート圧力を説明する図である。 実施例1で得られた粉体の粒径、粒径分布の測定データを示す。 実施例1で得られた粉体を白金蒸着後、電子顕微鏡で測定した写真を示す。 比較例1で得られた粉体を白金蒸着後、電子顕微鏡で測定した写真を示す。
本発明の賦形体に用いる微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体は、例として、銅イオンと、5位が置換、非置換のイソフタル酸からなる、通称カゴメ様二次元ネットワーク構造が積層した多孔性高分子金属錯体挙げることができ、カゴメ型多孔性高分子金属錯体と通称される。
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、下記の文献に記載されている多孔性高分子金属錯体であり、いずれも同一の基本二次元ネットワークが積層しており、イソフタル酸の5位の置換基の有無、種類によって様々な特性を発現する。多様な合成法が提案されているが、ガスの吸脱着を繰り返しても、賦形体の割れ、粉化が生じにくい粒径の材料およびその調製方法は提案知られていない。(特許文献4、非特許文献11)
本発明に用いることができる微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体とは、ガス吸着、脱着に際し、構造が経時変化する多孔性高分子金属錯体を意味する。構造の変化は、粉体X線回折測定等で確認する事ができる。得られた多孔性高分子金属錯体がカゴメ構造を有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することができる。また粉体X線解析の反射パターンによっても確認できる。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が多孔質であるかどうかは、熱重量分析(TG)により確認することが可能である。たとえば、窒素雰囲気下(流量=50mL/分)で、昇温速度=5℃/分の測定で、温度範囲室温~200℃までの重量減が3~50%であるかどうかで確認できる。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
本発明に用いることができる微粒子状の柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を含む吸着材は、図4に表す吸着等温線を示す。活性炭、ゼオライト等の既存材料およびほとんどの多孔性高分子錯体が、上に凸、または直線に近い吸着等温線を示すのに対し、ゲート型のガス吸着とは、一定のガス圧を超えたところで急激にガス吸着量が増加する現象および、脱着に関しては一定のガス圧以下で急激にガス吸着量が減少する現象である。これは、本発明の多孔性高分子金属錯体の構造に柔軟性があり、ガスの吸着によってよりガスを吸いやすい構造に構造が変化し(吸着の場合)、或いはガスを一定量放出することによりガスを吸いにくい構造に構造が変化し(脱着の場合)、この結果ガス吸着量が急激に変化する現象と考えられている。
柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。例えば、式:[G(H)(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)で表される金属錯体、または、式:G(J)(L(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、Lは1価の対イオンである)表される金属錯体である。
柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体の例として、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。
二次元積層型の多孔性高分子金属錯体とは、多孔性高分子金属錯体のネットワーク構造が二次元層状構造を有しており、この構造がファンデルワールス力、水素結合等の弱い相互作用で積層する事で形成されている多孔性高分子金属錯体である。三次元型の柔軟性多孔性高分子金属錯体と比して、特定の方向(層間が広がる方向)にのみ体積膨張が生じるため、賦形体への負荷がかかりやすい。
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、以下の式で表される
[DE]
上式中、Dは2価の遷移金属イオンでありCu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Mo2+、Cr2+から選択され、Eは置換または非置換のイソフタル酸イオンである。
カゴメ型多孔性高分子金属錯体は、例えば、以下の文献にて開示されている。
特開2012-228667号公報には、一般式:{M(OOC-R-COO)}
〔式中、MはCu2+、Zn2+、Ru2+、Rh2+、Mo2+、Cr2+から選択される2価の金属イオンであり、Rは2個のCOOH基がメタ位の位置関係にある2価の芳香族基を示す。〕で表される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Satoら、Science, (2014) 167には、銅イオンと、アジド基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Zaworotkoら、Chem. Commun. (2004) 2534には、銅イオンと、ベンジルオキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
Zaworotkoら、Angew. Chem. Int. Ed. (2001), 2111には、亜鉛イオンまたは銅イオンとイソフタル酸から構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。尚、pyで表記されているピリジンは、金属イオンに弱く配位しているだけであり、吸着測定の前処理で除去される為、ネットワーク構造は一般的なカゴメ構造と見なすことができる。
Zaworotkoら、Cryst. Growth Des. (2003) 513には、銅イオンと、イソフタル酸イオンまたはエトキシ基を置換基とするイソフタル酸イオンから構成されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
特開2012-045533号公報には、一般式:[Cu(ピリジン-3,5-ジカルボキシラート)で表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
米国特許出願公開2002/120165号公報の[0022]には、図2に記載の配位子から合成される一般式:(MA)n(式中、Mは任意の金属、Aは二官能価のカルボキシラートを表す)で表されるカゴメ型と総称される多孔性高分子金属錯体が記載されている。
二次元ネットワークの積層型の例として、カゴメ型及びELMと総称される多孔性高分子金属錯体を例示したが、柔軟性を有する二次元ネットワークの積層型多孔性高分子金属錯体はこれらに限定される物では無い。例示された、カゴメ型及びELMの様に、層の間に、多数の水素結合などの結合が存在しない場合は、層間の相互作用が弱まり、多孔性高分子金属錯体が柔軟性を示す事が知られている。
三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体の例として、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体を挙げることができる。MILは、非特許文献3、非特許文献4において、「MIL」として表されている多孔性高分子金属錯体群である。DUTは、Kaskelら、Phys.Chem.Chem.Phys.(2015)17471の文献に記載の、Ni(26ndca)-Dabco(式中、26ndcaは2,6-ナフタレンジカルボン酸、Dabcoは1,8ジアザビシクロオクタンである)で表される柔軟性を有する多孔性高分子金属錯体である。
本発明で使用される柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の粒子は、小さい方が好ましく、具体的には、メジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2である。粒径径の小さい粒子は、大きい粒子と比較して、割れにくいからである。粒径分布のスパン値は1.3未満である。ここで、スパン値は、個数基準の粒径分布の積算値が90%、10%、50%に相当する粒径D90、D10、D50から次式で計算して求められる値をいう。
スパン値=(D90-D10)/D50
スパン値1.3未満は、粒径の分布が非常に狭いことを示している。
粉化抑制効果が高まる点から、さらに好ましくは、メジアン径(μm)またはモード径(μm)が5.8~4.4、スパン値が、1.1未満である。メジアン径(μm)またはモード径(μm)が6.7超であると、大粒子は割れやすく、賦形体の割れ抑制による粉化防止効果が小さくなる。3.2未満だとさらに小粒径となるため、賦形不良による粉化が生じやすくなる。スパン値が1.3超だと、大粒子を含む可能性が高くなり、賦形体の粉化が生じやすくなる。
大粒径の粉体は、構造変化の応力が大きくなるため割れやすいと推測される。また大粒径の粉体は、粉体製造時に、結晶の格子欠陥等が大きくなり、割れやすいと推測される。このような大粒径の粉体を用いて調製された賦形体は、大粒径の粉体の割れにより生じる粉化の問題が発生しやすく、また割れにより粉体が小さくなり、賦形体自体が崩壊すると考えられる。
本発明に用いる粉体のメジアン径(μm)、モード径(μm)、スパン値は、レーザー回折/散乱法を用いて測定する。測定には堀場製作所のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2を使用した。
本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体は、合成時に反応溶液に超音波を照射することで、反応溶液中での結晶核の成長を促進し、結果として結晶成長を制御することにより、合成することができる。粒径、粒径分布は、超音波の照射強度により制御できる。好ましい超音波は、反応容器形状、多孔性高分子金属錯体の種類、溶媒等により異なるが、周波数が10Hz~120Hz、音圧が20-200mV、より好ましくは25Hz~90Hz、音圧が25-170mVの物を用いることが好ましい。周波数が10Hz未満や音圧が20mV未満では、粒径を小さくする効果が低い。周波数が120Hz、音圧が200mV以上では、副反応が生じて吸着特性が低下する可能性がある。
また、本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体は、合成時に好ましい粒径、例えば、メジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2の多孔性高分子金属錯体を少量添加する事で、これが反応溶液中での結晶核の成長を促進し、結果として結晶成長を抑制することで合成できる。添加する多孔性高分子金属錯体は、製造を目的とする多孔性高分子金属錯体であり、添加量は目的とする製造量の0.01~10%、効果が高くなる点でさらに好ましくは0.5~7%である。添加量が0.01%未満だと効果が低下し、10%超では、添加する多孔性高分子金属錯体の量が多く、実質的な収率が低下するため好ましくない。
本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体は、合成時に金属塩に配位しうる結晶粒径制御材を添加することで、金属イオンと配位子の反応速度を抑制する事で合成できる。粒径、粒径分布は、結晶粒径制御材の種類、添加により制御できる。結晶粒径制御材としては、例えば、酢酸、安息香酸、ヘキサン酸、ラウリル酸等のカルボン酸類、ピリジン、2メチルピリジン等の芳香族塩基類を挙げることができる。この中で、安価で効果が高い点で酢酸、ピリジンが好ましい。
本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体は、フローリアクタ等の、原料である金属塩と配位子の混合速度を制御して、系中のそれぞれの濃度が上がりすぎないように制御することで、結晶の成長を抑制することで合成できる。粒径、粒径分布は、反応の速度、原料溶液の濃度により制御できる。
このような、超音波の照射、添加剤の添加、フローリアクタ法等の合成法の制御により多孔性高分子金属錯体の粒径が制御できる事は知られているが、上述したように、粒径制御により、ガス吸脱着の繰り返しによる賦形体の割れ、粉化を防止する技術は知られていない。またカゴメ型多孔性高分子金属錯体の粒径制御を前述の一般的な方法で行えるかどうか、またそれにより得られた粒径が制御されたカゴメ型多孔性高分子金属錯体が、ガスの吸脱着に際して、賦形体の割れ、粉化の現象を起こしにくいかどうかは知られていない。
本発明においては、例えば、適切な官能基を有するイソフタル酸を原料としたカゴメ型多孔性高分子金属錯体の合成に、超音波の照射、添加剤の添加、フローリアクタ法により粒径の制御が行え、さらに適切な粒径を有しているカゴメ型多孔性高分子金属錯体は、ガスの吸脱着に際して、賦形体の割れ粉化の現象が起こりにくく、結果としてPSA等のガス流通式の試験に於いて、流路の閉塞等が起こりにくく、実用的に優れたガス分離、貯蔵材料として利用できることを見いだした。
本発明で好適に使用できる置換イソフタル酸の例として、5位の置換基として、3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルキル基又は3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルコキシ基を有する置換イソフタル酸が挙げられる。以下、3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルキル基又は3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルコキシ基が5位に置換したイソフタル酸を説明する。3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基は、炭素骨格に結合している原子が炭素原子以外は全てふっ素原子である官能基(パーフルオロ基)である。炭素の数が1~10個のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルコキシ基のうち、特に炭素の数が1~10個のパーフルオロアルキル基が好ましい。
すなわち、
(式)C(2x+1)
(式中、xは1~10の整数である。)
で表されるパーフルオロアルキル基である。アルキル基は直鎖でも分岐鎖であってもよい。
また分岐型のアルキル基を5位に有するイソフタル酸類も原料として好ましい。本発明柔軟性多孔性高分子金属錯体で使用される分岐型のアルキル基を5位に有するイソフタル酸類としては、5-イソプロピルイソフタル酸、5-イソブチルイソフタル酸、5-ターシャリブチルイソフタル酸、5-(2-ペンチル)イソフタル酸、5-(3-ペンチル)イソフタル酸、5-(2-ヘキシル)イソフタル酸、5-(3-ヘキシル)イソフタル酸などが例示できる。また分岐型のアルコキシ基を5位に有するイソフタル酸類としては、5-イソプロピルオキシイソフタル酸、5-イソブチルオキシイソフタル酸、5-ターシャリブチルオキシイソフタル酸、5-(2-ペンチル)オキシイソフタル酸、5-(3-ペンチル)オキシイソフタル酸、5-(2-ヘキシル)オキシイソフタル酸、5-(3-ヘキシル)オキシイソフタル酸などが例示できる。炭素原子数が3または4の分岐型のアルキル基または分岐型のアルコキシ基が好ましく用いられるが、ガスの吸着量が多いという点から、5-イソプロピルイソフタル酸、5-イソブチルイソフタル酸、5-ターシャリブチルイソフタル酸、5-イソプロピルオキシイソフタル酸、5-イソブチルオキシイソフタル酸、5-ターシャリブチルオキシイソフタル酸が好ましい。
また5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸を利用する事も好ましい。5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸を具体的に例示すると、置換又は非置換のアルキル基を有するものとして5-Nーメチルアミノイソフタル酸、5-N,N-ジメチルアミノイソフタル酸、5-Nーエチルアミノイソフタル酸、5-N,N-ジエチルアミノイソフタル酸、5-N,N-メチルエチルアミノイソフタル酸、環状アルキル基を有するものとしてピロリジン-1-イルイソフタル酸、置換、非置換のアリール基を有するものとして5-Nーフェニルアミノイソフタル酸、5-(パラヒドロキシ)フェニルアミノイソフタル酸、5-N,N-ジフェニルアミノイソフタル酸、5-N,N-フェニルメチルアミノイソフタル酸、アラルキル基を有するものとして5-N,N-ベンジルアミノイソフタル酸を例示できる。メタンの吸着量が特に少ないという点で、特に5-N,N-ジメチルアミノイソフタル酸、5-N,N-ジエチルアミノイソフタル酸が好ましい。
本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体の、カゴメ構造の基本骨格を有し、5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸配位子を含有する多孔性高分子金属錯体では、原料として複数種のイソフタル酸類を混合使用して、使用した複数種のイソフタル酸類を含有する多孔性高分子金属錯体を合成する、いわゆる固溶体型の多孔性高分子金属錯体を形成することが可能であることが確認されている。この際、混合して使用する複数種のイソフタル酸類の少なくとも一種類は、置換アミノ基を5位に有するイソフタル酸類である必要があり、これの含有率は5%以上、好ましくは20%以上である。
この固溶体型の多孔性高分子金属錯体は、下記式(1)で表され、かつ図1~3で示されるいわゆるカゴメ構造を有する化合物である。
[CuX] (1)
(式中、Xはイソフタル酸イオン又は5位に置換基を有するイソフタル酸イオンから選ばれる2種類以上のイソフタル酸類イオンであって、5モル%以上が5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸イオンである。nは、CuXから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。)
銅イオンと、イソフタル酸イオン又は5位に置換基を有するイソフタル酸イオンの2種類以上を組み合わせると、図1~3で示されるいわゆるカゴメ構造を有する固溶体型の多孔性高分子金属錯体を形成することを確認している。本発明に用いることができる固溶体型の多孔性高分子金属錯体は、その固溶体型の多孔性高分子金属錯体においてイソフタル酸イオン又は5位に置換基を有するイソフタル酸イオンとして、5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸イオンを5モル%以上含むことを特徴とするものである。混合して使用する複数種のイソフタル酸類は、5位に置換アミノ基を有するイソフタル酸どうしであってもよい。このとき、カゴメ構造の相互貫入はない。
また、本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体中の銅イオンは、カルボキシル基の酸素4個が配位した、いわゆるパドルホイールと呼ばれる構造を有している。銅イオンは6配位構造をとることも多く、すなわち、本パドルホイール構造は、カルボキシル基の酸素4個以外にさらに二個の配位を受けることが可能であり、たとえば式(2)
[CuXQ (2)
(式中、Xは3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルキル基又は3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルコキシ基からなる群から選択された基で5位が置換されたイソフタル酸誘導体イオンである。nは、CuXから成る構成単位が多数集合しているという特性を示すもので、nの大きさは特に限定されない。Qはパドルホイールを形成する銅イオンに配位する分子などで、zは1または2である。)
であるような複合錯体に変化する場合がある。
しかしこれらの複合錯体中のQは、銅イオンに弱く結合しているだけであり、ガス吸着材として利用する際の減圧乾燥などの前処理によって除かれ、元の式(1)で表される錯体に戻る。そのため、式(2)で表されるような錯体であっても、本質的には本発明に用いることができる多孔性高分子金属錯体と同一物と見なすことができる。
本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法は、柔軟性多孔性高分子金属錯体の金属源となる金属塩を溶媒に溶解して、第1の溶液を用意し、柔軟性多孔性高分子金属錯体の配位子となる配位子化合物を前記溶媒に溶解して、第2の溶液を用意し、第2の溶液に超音波を照射しながら、第1の溶液を滴下し、生成した本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む反応物溶液を、濾過し、洗浄し、乾燥して製造する。金属源となる金属塩、配位子化合物は、目的とする柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体、例えば、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体、三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体にしたがって選択する。本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。
本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法では、例えば、式(1)で表される化合物は、銅塩、3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルキル基又は3~21個のふっ素原子を含有するパーフルオロアルコキシ基が5位に置換したイソフタル酸を溶媒に溶かして溶液状態で混合することで製造できる。銅塩を溶かす溶媒としては、水やアルコールなどのプロトン系溶媒を利用すると良好な結果が得られる。水やアルコールなどのプロトン系溶媒は銅塩をよく溶解し、さらに銅イオンや対イオンに配位結合や水素結合することで銅塩を安定化し、配位子との急速な反応を抑制することで、副反応を抑制する。アルコールの例としてはメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノールなどの脂肪族系1価アルコール及びエチレングリコールなどの脂肪族系2価アルコール類を例示できる。安価でかつニッケル塩の溶解性が高いという点でメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコールが好ましい。またこれらのアルコールは単独で用いてもよいし、複数を混合使用してもよい。
溶媒として前記のアルコール類とアルコール以外の有機溶媒や水を混合して使用することも好ましい。混合比率は1:100~100:0(体積比)で任意である。アルコール類の混合比率を30%以上にすることが、銅塩および配位子の溶解性を向上させる観点から好ましい。
用いる有機溶媒としては、極性の高い溶媒が溶解性に優れるという点で好ましく、具体的にはテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドなどのジアルキルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミドなどのジアルキルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造で使用することができる銅塩としては、2価の銅イオンを含有している塩類であればよく、溶媒への溶解性が高いという点で、硝酸銅、酢酸銅、硫酸銅、ぎ酸銅、フマル酸銅、塩化銅、臭化銅が好ましく、反応性が高いという点で、硝酸銅、硫酸銅が特に好ましい。
本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法では、反応促進剤として塩基を添加することも可能である。塩基としてはたとえば無機塩基として水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示できる。有機塩基としては、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、ピリジン、2,6-ルチジンなどが例示できる。反応加速性が高いという点で、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、およびピリジンが好ましい。添加量としては、使用するイソフタル酸の総モルに対し、反応の加速効果が顕著であるという点で好ましくは0.1~6.0モル、副反応少ないという点でさらに好ましくは0.5から4.0モルである。
柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造における金属塩溶液として銅塩の溶液および配位子を反応させるに当たり、銅塩および配位子を容器に装填した後、溶媒を添加する方法以外に、銅塩、配位子をそれぞれ別個に溶液として調製した後、これらの溶液を混合してもよい。溶液の混合方法は、銅塩溶液に配位子溶液を添加しても、その逆でもよい。また、混合法としては、必ずしも溶液で行う必要はなく、例えば、銅塩溶液に固体の配位子を投入し、同時に溶媒を入れる方法や、反応容器に銅塩を装填した後に、配位子の固体または溶液を注入し、さらに銅塩を溶かすための溶液を注入するなど、最終的に反応が実質的に溶媒中で起こる方法であれば、種々の方法が可能である。ただし、銅塩の溶液と配位子の溶液を滴下混合する方法が、工業的には最も操作が簡便であり、好ましい。
金属溶液の濃度は、40mmol/L~4mol/L、好ましくは80mmol/L~2mol/Lであり、配位子の有機溶液は40mmol/L~3mol/L、好ましくは80mmol/L~1.8mol/Lである。これより低い濃度で反応を行っても目的物は得られるが、製造効率が低下するため好ましくない。また、これより高い濃度では、吸着能が低下するため好ましくない。
柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造における反応温度は-20~120℃、好ましくは25~90℃である。これ以下の低温で行うと、原料の溶解度が下がるため好ましくない。オートクレーブなどを用いて、より高温で反応を行うことも可能であるが、加熱などのエネルギーコストの割には、収率は向上しないため実質的な意味はない。
柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造における金属溶液として、例えば銅塩の溶液を用いる場合、銅塩と有機配位子の混合比率は、3:1~1:5のモル比、好ましくは1.5:1~1:3のモル比の範囲内と成ることができる。これ以外の範囲では、目的物の収率が低下し、また、未反応の原料が残留して、目的物の取り出しが困難となる。
反応は通常のガラスライニングのSUS製の反応容器および機械式攪拌機を使用して行うことができる。反応終了後は濾過、乾燥を行うことで目的物質と原料の分離を行い、純度の高い目的物質を製造することが可能である。
超音波の照射は様々な手法があるが、例えば株式会社日本精機製作所、ヨウカイくんUSS-1の様な超音波照射及び攪拌機能を備えた反応装置を用いる方法及び、投げ込み式の超音波発生プローブを使用する方法があげられる。
前者であれば、当該装置に反応容器を浸漬するだけで超音波照射が行える。後者であれば、水浴に反応容器を浸し、そこに投げ込み式の超音波発生プローブ、例えば株式会社エスエムテー型式:UH-50を浸すことで反応容器に超音波を照射することが可能である。いずれも超音波の強度を変化させるのには、装置固有のつまみ及び水浴にゴム板を浸す等で制御可能である。
上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体がカゴメ構造を有しているかどうかは、単結晶X線結晶解析により得られた反射を解析することで確認することができる。また粉体X線解析の反射パターンによっても確認できる。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体が多孔質であるかどうかは、熱重量分析(TG)により確認することが可能である。たとえば、窒素雰囲気下(流量=50mL/分)で、昇温速度=5℃/分の測定で、温度範囲室温~200℃までの重量減が3~50%であるかどうかで確認できる。上記の反応により得られた多孔性高分子金属錯体のガス吸着能は、市販のガス吸着装置を用いて測定が可能である。
一般には、メジアンとはd50とも呼ばれ、粒子径により2分割した際に、大きい側の粒子と小さい側の粒子が等量となる径を意味する。
モード径とは、出現比率が最も大きい粒子径チャンネルまたは分布の極大値であり、最も出現頻度が高い粒子径と解釈される。
スパン値とは分布の広がりの目安とされる値であり、
スパン値=(D90-D10)/D50
で表され、「0」に近いほど分布がシャープである。
<吸着材の複合化>
本発明のガス吸着材(以下吸着材(A))は単独で吸着材として使用してもよいし、他の吸着材と複合化して使用してもよい。複合化して使用する場合には、他の吸着材として吸着等温線と脱着等温線とが一致する挙動を示す吸着材(B)と併用することで非常に優れた吸着特性を有するガス吸着材とすることができる。
ここで吸着材(B)とは、ガスに関する吸着等温線と脱着等温線とが一致する挙動を示す材料である。即ち、図4に示すように、吸着時のガス圧力-ガス吸着量曲線と、脱着時のガス圧力-ガス吸着量曲線とが実質的に一致する材料である。吸着材(B)は、かような特性を有する材料であれば特に限定されず、物理的吸着材、化学的吸着材、およびこれらが組み合わされてなる物理化学的吸着材を用いることができる。
物理的吸着材とは、分子と分子との相互作用のような弱い力を用いて、被吸着分子を吸着する吸着材をいう。物理的吸着材としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、クレー、超吸着性繊維、金属錯体が挙げられる。化学的吸着材とは、化学的な強固な結合によって、被吸着分子を吸着する吸着材をいう。化学的吸着材としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、活性化された金属が挙げられる。物理化学的吸着材とは、物理的吸着材および化学的吸着材の双方の吸着機構を備える吸着材をいう。これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、本発明の技術的範囲がこれらの具体例に限定されるものではない。吸着材(B)の形状は特に限定されないが、一般的には、平均粒径500~5000μmの粉体状のものを用いる。
吸着材(B)としては、製造コストやガス吸着性能を考慮すると活性炭が好ましい。活性炭は比較的安価である上、質量当たりのガス吸着量が多い。また、活性炭はガスの吸脱着に関するサイクル特性が悪く、吸脱着を繰り返すとガス吸着量が著しく減少する傾向がある。このため、従来においては、質量当たりのガス吸着量が多いにも拘わらず、ガス貯蔵装置やガス分離装置に用いることは困難であった。この点、本発明の吸着材(B)として用いた場合においては、活性炭の優れたガス吸着性能を充分に引き出すことができる。また、活性炭は比表面積が大きいほど吸着量が増加する傾向を有するため、活性炭の比表面積は1000m/g以上であることが好ましい。
また、使用する吸着材(B)は、吸着させるガスに応じて適宜構造を制御されることが好ましい。例えば、活性炭に含まれる細孔は、細孔の大きさによって、スーパーミクロポア(~0.8nm)、ミクロポア(0.8~2nm)、メソポア(2~50nm)、マクロポア(50nm~)に分類できる。細孔の大きさによって吸着しやすいガスが異なり、メタンガスはミクロポアに吸着しやすい。従って、メタンガスを吸着させることを所望する場合には、ミクロポアの割合が大きくなるように活性炭の細孔分布を制御するとよい。
本発明の吸着材(A)と吸着材(B)を複合化する場合は、吸着材(A)は、吸着材(B)を被覆するが、好ましくはクラックや不完全な被覆がなく、吸着材(B)が外気に触れないように完全に被覆することが好ましい。しかしながら、多少のクラック等が存在していても、吸着材(B)の自由なガス吸着を阻害し、吸着材(A)によって被覆されている吸着材(B)がガス吸着に関して、吸着材(A)に類似したガス吸着特性を示すのであれば、本発明の技術的範囲に包含されるものである。好ましくは、吸着材(B)に対して5~50体積%の吸着材(A)で吸着材(B)を被覆する。また、吸着材(B)を被覆する吸着材(A)の厚みは吸着材(A)の種類に応じて決定する必要があるが、吸着材(A)が薄すぎると吸着材(B)へのガス吸着特性を充分に制御できない恐れがある。一方、吸着材(A)が厚すぎると、吸着材(B)へのガス吸着が生じにくくなり、全体としてのガス吸着量が減少する恐れがある。これらを考慮すると、吸着材(A)の平均厚みが10~100μmであることが好ましい。吸着材(A)の厚みは、吸着材(A)の使用量の調節によって制御できる。なお、吸着材(A)の厚みは電子顕微鏡を用いて撮影された断面写真から算出することができる。
吸着材(A)と(B)の複合化の方法としては、(1)吸着材(A)が溶解している溶液中に、該溶液に溶解しない吸着材(B)を添加し、その後、吸着材(A)を結晶成長させることによって、吸着材(B)表面に吸着材(A)を付着させる方法、(2)吸着材(A)を含むスラリーを準備し、スラリーを吸着材(B)表面にコーティング・乾燥させることによって、吸着材(B)表面に吸着材(A)を付着させる方法、などを用いることができる。
<本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の賦形化>
本発明に用いることができる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を賦形化する方法は、単に加圧成型する場合、賦形材を用いる場合を含めて従来技術で知られている、いずれの賦形化方法も用いることができる。例えば、パルプを用いる賦形化方法、バインダー樹脂を用いる賦形化方法を、挙げることができる。賦形材の例としては、特許文献2に挙げられている柔軟性樹脂、Morsaliら、Ultrasonic Chemistry (2012) 19, 846の文献に挙げられているシルク等の繊維を利用するものが、挙げられる。いずれの賦形化方法を用いても、柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の粒径、粒径分布が、本発明の範囲に入っていれば、賦形体の割れ、粉化防止の効果が得られる。実施例では、パルプを用いて賦形体を作成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
製造した多孔性高分子金属錯体は、パルプスラリーと混合し、賦形し、ガス吸着により粉化を測定する。
<パルプスラリーの調製>
富士里和製紙株式会社製Petite Marianダブル、トイレットペーパー、3.0g、水200mL,ジルコニアボール600gを容器に入れ、Fritsch社製ボールミル(型番=F-3-2-58)にて、回転数2.25rpmで、15分粉砕し、パルプスラリーを調製した。
<パルプスラリーを使用した本発明の賦形体の調製>
多孔性高分子金属錯体を上記パルプスラリーに添加し、手で3分間震盪し混合した。この混合スラリーを、5C濾紙を用いて吸引濾過し、フィルター上の固体がウエットな状態で取り出し、手で直径約3ミリの球状物の賦形体に調製した。多孔性高分子金属錯体の添加量は、パルプの重量の4倍になるように調整した。
<ガス吸着による粉化の評価>
マイクロトラックベル社製、ベルソープミニIIを用いて、測定管に賦形体100mgを装填し、一酸化炭素を0℃1気圧で5回吸脱着させた。測定後、Nonaka Rikaki Co.製Opening=300μm、wire dia 200μmのメッシュを用いてふるい分けし、ふるいの下の落ちた粉を粉化成分とした。粉化率は、ふるいの下に落ちた粉の重量をa、ふるいの上に残っている賦形体に含まれる多孔性高分子金属錯体の重さをbとしたときに、次式:
粉化率=a×100/(a+b)
にて計算した。
粉化率が0.5%未満の場合を◎、
1%未満、0.5%以上の場合を○、
3%未満、1%以上の場合を△、
3%以上を×とした。
<賦形体の崩壊>
測定前の賦形体と比較して、形態の維持(賦形体の崩壊)を以下のように評価した
割れ等、形態に変化が無い場合を◎、
割れ(クラック、ヒビ)は認められるが、外形には顕著な差は無い場合を○、
割れ等で賦形体に欠損はあるが、概ね元の形態を維持している場合を△、
ほとんど元の形態を維持していない(賦形体の崩壊)場合を×とした。
(実施例1)
硝酸銅3水和物1.0ミリモル、5-(ヘプタフルオロ-n-プロピル)を溶解した第1の水溶液(50mL)、イソフタル酸1.0ミリモルおよび水酸化リチウム2.0ミリモルを溶解した第2の水溶液(50mL)、株式会社日本精機製作所、ヨウカイくんUSS-1に反応容器を浸して超音波を照射しながら、30mL/hで、室温で滴下した。滴下後、直ちに反応溶液を濾過し、水で洗浄し、減圧で、室温で乾燥した。得られた粉体(200mg)は株式会社リガク製粉体X線回折装置SmartLabを用いて測定し、文献 Zaworotkoら、Chem. Commun. (2004) 2534に記載のカゴメ型化合物と比較した結果、カゴメ型ネットワークを有していることが明らかになった。
得られた粉体の粒径は株式会社堀場製作所のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-950V2にて分析した結果、メジアン径(μm)が5.2、モード径(μm)が5.4、スパン値が0.945であった。得られた測定データを図5に示す。得られた粉体を白金蒸着後、電子顕微鏡で測定した写真を図6に示す。
得られた粉体200mg及び、パルプ成分を50mg含むパルプスラリーと混合し、濾過紙、賦形体を作成した。賦形体を吸着試験に供し、粉化率を測定した。粉化率が小さいことを確認した。
(実施例2~8)
実施例1と同様にして、表1に示すように超音波の照射強度を変えながら合成を行い、実施例1と同様に評価し、粉化率が小さいことを確認した。
(実施例9)
実施例1と同様にして、ただし超音波を照射せず、代わりに実施例1で得られた粉体を0.1mg添加してから滴下を行い、目的物の合成を行い、実施例1と同様に評価し、粉化率が小さいことを確認した。
(実施例10)
実施例8と同様にして、ただし超音波を照射せず、代わりに実施例1で得られた粉体を10mg添加してから滴下を行い、目的物の合成を行い、実施例1と同様に評価し、粉化率が小さいことを確認した。
(比較例1)
実施例1と同様に、但し超音波を照射せずに合成したサンプルを評価したところ、粉化率が大きいことを確認した。
得られた粉体を白金蒸着後、電子顕微鏡観察したところ、図7に示すように、大きな粒径が認められた。
(比較例2~3)
実施例1と同様に、超音波を照射しながら合成したサンプルを評価したところ、音圧が小さい場合は粉化率が大きいことを確認した。
Figure 0007347920000001
(実施例11)
この実施例は、本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体が、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体の場合である。
Noroら、Inorg. Chem. (2006) 9290の文献の記載の方法により、この文献に記載の化合物〔[Cu(bpetha)(acetone)]2PF6(1)を合成した。但し、論文記載の方法そのままではなく、試薬、その量はそのままであるが、銅塩溶とナトリウム塩の水溶液を、株式会社日本精機製作所、ヨウカイくんUSS-1に反応容器を浸して超音波を照射しながら、配位子bpetaのDMF溶液を滴下することで合成した。得られた材料を、実施例1と同様に粒径を分析し、さらに賦形体の調製、粉化率の測定を行った。結果を表2に示す。
(実施例12)
この実施例は、本発明の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体が、三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体の場合である。
Chenら、J. Am. Chem. Soc. (2008) 6010の文献に記載の方法に従い、但し、メタノール溶液を滴下する際に、株式会社日本精機製作所、ヨウカイくんUSS-1に反応容器を浸して超音波を照射しながら、この文献にMAF-2と記載されている三次元構造を有する柔軟性多孔性高分子金属錯体を合成した。得られた粉体は実施例1と同様に測定し、文献に記載の化合物である事が明らかになった。得られた材料を、実施例1と同様に粒径を分析し、さらに賦形体の調製、粉化率の測定を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007347920000002

Claims (12)

  1. 賦形材、並びにメジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2であり、スパン値が1.3未満である、粒径、粒径分布を有するガス吸着材に用いられる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む賦形体。
  2. 前記柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体が、一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体、二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体、または三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体から選ばれる多孔性高分子金属錯体である請求項1に記載の賦形体。
  3. 前記一次元鎖構造を有する多孔性高分子金属錯体が、式:[G(H)(I)](式中、Gは遷移金属イオン、Hは第一配位子、Iは第二配位子である)、または式:G(J)(L(式中Gは遷移金属イオン、Jは配位子、Lは1価の対イオンである)である、請求項2に記載の賦形体。
  4. 前記二次元ネットワークの積層型の多孔性高分子金属錯体が、カゴメ型と総称される式:[GH](式中、Gは遷移金属イオン、Hは配位子を表す)、またはELMと総称される式:[GHX](式中、Gは遷移金属イオン、Hは4,4-ビピリジル類、Xは1価の対イオンを表す)である、請求項2に記載の賦形体。
  5. 前記三次元ネットワークの多孔性高分子金属錯体が、MILまたはDUTと総称される多孔性高分子金属錯体である、請求項2に記載の賦形体。
  6. メジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2であり、スパン値が1.3未満である、粒径、粒径分布を有する柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体であって、前記粉体が賦形化されてガス吸着材に用いられる柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体。
  7. 前記柔軟性多孔性高分子金属錯体の金属源となる金属塩を溶媒に溶解して、第1の溶液を用意する工程、
    前記柔軟性多孔性高分子金属錯体の配位子となる配位子化合物を前記溶媒に溶解して、第2の溶液を用意する工程、
    前記第2の溶液に超音波を照射しながら、前記第1の溶液を、滴下する工程、
    生成した柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を含む反応物溶液を、濾過し、洗浄し、乾燥して、メジアン径(μm)およびモード径(μm)が6.7~3.2、スパン値が1.3未満の粒径、粒径分布を有する柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を得る工程、
    を含む、請求項6に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法。
  8. 前記金属源が銅イオンであり、前記配位子が、置換または無置換のイソフタル酸イオンである、請求項7に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の製造方法。
  9. 請求項7または8に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を得る工程の後に、さらに、得られた柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体を賦形化する工程を含む、柔軟性多孔性高分子金属錯体粉体の賦形体の製造方法。
  10. 請求項1~5のいずれか一項に記載の柔軟性多孔性高分子金属錯体の賦形体を含むガス吸着材。
  11. 請求項10に記載のガス吸着材を用いるガス分離装置。
  12. 請求項10に記載のガス吸着材を用いるガス貯蔵装置。
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