JP7344805B2 - 吸着システム、および吸着方法 - Google Patents

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本発明の実施形態の一つは、リン含有化合物、例えば水中に含まれるリン含有化合物を吸着するためのシステム、および方法に関する。
活性炭やゼオライトなどの多孔質材料は、様々な物質を吸着することができるため、脱臭剤や脱色剤、脱水剤、触媒担持体などの様々な用途に用いられている。この多孔質炭化物に鉄を担持させた吸着材は、水質汚濁物質であるリンや窒素を含む化合物を吸着することが可能であることから、河川や湖沼の水質改善に有効に利用できることが知られている。また、リン含有化合物や窒素含有化合物を吸着した多孔質炭化物は肥料としても利用することができる。このため、例えばバイオマスに由来する多孔質炭化物を水質改善のための吸着材として使用し、その後土壌へ散布することで、植物の育成に寄与するだけでなく、植物によって固定化された二酸化炭素を大気中に放出することなく炭素という形で土壌へ貯留することが可能となる。したがってバイオマスから得られる多孔質炭化物吸着材は、大気中の温室効果ガスを固定化するための炭素貯留において重要な役割を担っている(特許文献1、非特許文献1参照)。
特開2007-75706号公報
柴田晃、「地域振興のためのバイオマス簡易炭化と炭素貯留野菜COOL VEGETM」、高温学会誌、2011年3月、第37巻、第2号、p.37-42
本発明の実施形態の一つは、多孔質炭化物を利用する吸着システム、および吸着方法を提供することを課題の一つとする。例えば本発明の実施形態の一つは、多孔質炭化物の吸着材としての性能を長期にわたって維持することができる吸着システム、および吸着方法を提供することを課題の一つとする。
本発明の実施形態の一つは、吸着システムである。この吸着システムは、鉄供給槽、酸性化装置、吸着槽、および酸素供給装置を含む。鉄供給槽は、鉄および鉄化合物の少なくとも一方が担持された多孔質炭化物を収容し、リン含有化合物を含む被処理水が供給されるように構成される。酸性化装置は、鉄供給槽内の被処理水を酸性化するように構成される。吸着槽は、多孔質体を収容し、鉄供給槽から被処理水が供給されるように構成される。酸素供給装置は、吸着槽に酸素含有ガスを供給するように構成される。
本発明の実施形態の一つは、吸着方法である。この吸着方法は、鉄および鉄化合物の少なくとも一方が担持された多孔質炭化物が収容された鉄供給槽にリン含有化合物を含む被処理水を供給すること、鉄供給槽中の被処理水を酸性化すること、多孔質体が収容された吸着槽に被処理水を鉄供給槽から供給すること、および吸着槽に酸素含有ガスを供給することを含む。
本発明の実施形態により、下水などの汚染水の浄化を行うことで、河川、湖沼、海などの水域における水質改善などに寄与する吸着システムと吸着方法を提供することができる。あるいは、本発明の実施形態により、多孔質炭化物の吸着材としての性能を長期にわたって維持することが可能となる。
本発明の実施形態の一つに係る吸着システムのブロック図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムの模式図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムに含まれる鉄供給槽の断面模式図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムに含まれる吸着槽の断面模式図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムに含まれる吸着槽の断面模式図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムの模式図。 多孔質炭化物を製造するための炭化装置の模式的断面図。 鉄担持多孔質炭化物を製造するための還元装置の模式的断面図。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムによって得られるリン含有化合物を吸着した多孔質炭化物を肥料として利用するためのフローチャート。 本発明の実施形態の一つに係る吸着システムを利用する二酸化炭素の貯留を示す概念図。 実施例における処理液のpHとリン除去率の経時変化を示すグラフ。 比較例1における処理液のpHとリン除去率の経時変化を示すグラフ。 比較例2における処理液のpHとリン除去率の経時変化を示すグラフ。
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
<第1実施形態>
本実施形態では、多孔質炭化物を利用する吸着システム100、およびこの吸着システム100を利用する吸着方法を説明する。吸着システム100は、リン含有化合物を含む水(以下、被処理水と記す)からリン含有化合物を吸着することで被処理水を浄化する。吸着システム100により、下水などの汚染水に含まれるリン含有化合物を効果的に吸着し、河川、湖沼、海などの水域の浄化や水質改善を行うことができる。ここで、リン含有化合物としては、無機態と有機態のリン含有化合物が挙げられ、これらはそれぞれ溶解性と不溶性のリン含有化合物に分類される。溶解性無機態リンとしては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などが挙げられる。溶解性有機態としては、リン脂質などのリン酸エステル類、農薬などが挙げられる。不溶性無機態リンとしては、カルシウムや鉄、アルミニウム、ナトリウム、カリウムなどの金属のリン酸塩が挙げられる。不溶性有機態リンとしては、バクテリアやプランクトンなどの生態あるいは死骸の構成成分が例示される。
1.システム構成
本実施形態に係る吸着システム100のブロック図を図1に示す。図1に示すように、吸着システム100は、鉄供給槽110、鉄供給槽110に接続される吸着槽140、鉄供給槽110に接続され、鉄供給槽110内に供給される処理水を酸性化するための酸性化装置120、および吸着槽140に接続され、吸着槽140に対して酸素含有ガスを供給するための酸素供給装置150を含む。
1-1.鉄供給槽
鉄供給槽110と吸着槽140の断面を中心とする吸着システム100の模式図を図2に示す。鉄供給槽110は、金属鉄(0価の鉄)または鉄化合物が担持された多孔質炭化物102を収容し、被処理水と多孔質炭化物102が接触する空間を提供するように構成される。以下、金属鉄または鉄化合物が担持された多孔質炭化物を鉄担持多孔質炭化物と記す。鉄供給槽110はガラスや石英、セラミック、コンクリート、あるいは高分子材料で形成することができる。高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素ポリオレフィンでもよい。また、鉄担持多孔質炭化物102を鉄供給槽110内に安定的に支持するため、鉄供給槽110はセパレータ110aを有してもよい。セパレータ110aには開口が設けられ、被処理水が通過できるように構成される。図示しないが、セパレータ110aに替わり、砕石などの支持体を鉄供給槽110内に配置し、その上に鉄担持多孔質炭化物102を配置してもよい。さらに任意の構成として、鉄担持多孔質炭化物102が被処理水に浮くことを防止して被処理水を鉄担持多孔質炭化物102と十分に接触させるための中蓋110bを設けてもよい。中蓋110bには、鉄担持多孔質炭化物102よりも小さい複数の開口が設けられ、鉄担持多孔質炭化物102の浮遊が防止される。図示しないが、吸着槽140には、多孔質炭化物を投入し、取り出すための開口または蓋が設けられる。
鉄供給槽110には被処理水を導入するための開口114がさらに設けられる。被処理水は、重力により、あるいは図示しないバルブやポンプなどを介して鉄供給槽110内に供給される。鉄供給槽110には排出口116がさらに設けられ、鉄供給槽110内で鉄担持多孔質炭化物102と接触することで処理された被処理水(以下、鉄供給槽110内で処理された被処理水を一次処理水と記す)が排出口116から排出される。これにより、被処理水は、鉄担持多孔質炭化物102と接触しながら鉄供給槽110を通過することができる。図示しないが、任意の構成として鉄供給槽110は攪拌装置を備えてもよい。また、開口114は、排出口116よりも低い位置に配置されてもよい。
1-2.酸性化装置
酸性化装置120は、鉄供給槽110に供給される被処理水を弱酸性にするために設けられる。具体的には、酸性化装置120は、二酸化炭素、または酸性の液体を鉄供給槽110に供給するように構成される。酸性の液体としては、例えば塩酸や硝酸、硫酸が挙げられる。酸性の液体中のプロトン濃度に制約はなく、例えばpH0以上pH7以下、またはpH3.5以上pH6.5以下の範囲から選択してもよい。以下、最初に二酸化炭素を供給するように構成される酸性化装置120が備えられた吸着システム100について、図2を用いて説明する。
酸性化装置120は、図示しない二酸化炭素供給源に接続され、鉄供給槽110内で二酸化炭素を被処理水に供給するよう、開口118とバルブ124を介して鉄供給槽110に接続される。図示しないが、酸性化装置120は、例えば二酸化炭素が充填されたボンベなどの二酸化炭素供給源に接続されるレギュレータなどによって構成することができる。これにより、二酸化炭素が鉄供給槽110内に供給される被処理水に導入される。二酸化炭素は、被処理水中でバブリングすることで供給される。この場合、複数の開口122aを有するノズル122を開口118に設け、複数の開口122aから二酸化炭素をバブリングしてもよい。図示しないが、例えばノズル122をメンブレンタイプのディフューザとして構成してもよい。すなわち、複数の開口122aを覆うように多孔性膜を設け、開口122aと多孔性膜を介して二酸化炭素をバブリングしてもよい。
吸着システム100では、鉄供給槽110に供給した二酸化炭素を回収し、回収された二酸化炭素を再度鉄供給槽110に供給してもよい。例えば鉄供給槽110に開口126をさらに設け、開口126からバルブ128やフィルター130、エアーポンプ132、バルブ134などを介して二酸化炭素を取り出し、バルブ124を介して二酸化炭素を鉄供給槽110に再度供給してもよい。フィルター130を設けることで、鉄担持多孔質炭化物102と二酸化炭素との衝突で発生する微細な粉塵を取り除くことができる。二酸化炭素を回収して再利用することで、二酸化炭素の大気中への放出が防止され、かつ、吸着コストの低減が可能となる。
鉄供給槽110の構成は上述した構成に限られず、開口114や118、排出口116を設けず、鉄供給槽110に一つまたは複数のチューブを挿入し、これらのチューブを用いて被処理水の供給や一次処理水の排出、二酸化炭素の導入などを行ってもよい。
酸性化装置120が酸性の液体を鉄供給槽110に供給するように構成される場合には、図3に示すように、酸性の液体がバルブ124や開口126、図示しないポンプなどを介して鉄供給槽110へ供給されるよう、酸性化装置120と鉄供給槽110が接続される。酸性の液体は、図3に示すように、鉄供給槽110内の被処理水に供給してもよいが、酸性の液体と被処理水と混合し、その混合液を鉄供給槽110に供給してもよい。これにより、より効率よく酸性の液体と被処理水を均一に混合することができる。
二酸化炭素または酸性の液体を被処理水へ供給することで被処理水が弱酸性となる。その結果、鉄担持多孔質炭化物102上に担持された金属鉄や鉄化合物が2価の鉄イオンとなって被処理液に溶出し、2価の鉄イオンが含まれる一次処理水が吸着槽140へ供給される。換言すると、鉄供給槽110に収容される鉄担持多孔質炭化物102は、被処理水に対する2価の鉄イオン供給源として機能する。
1-3.吸着槽
吸着槽140は、多孔質体106を収容し、一次処理水と多孔質体106が接触する空間を提供するとともに、酸素供給装置150から供給される酸素含有ガスと一次処理水中に含まれる2価の鉄イオンを反応させ、3価の鉄化合物を生成するための反応場を提供する。
吸着槽140は鉄供給槽110と接続され、これにより、一次処理水は鉄供給槽110から吸着槽140に供給される。一次処理水は、ポンプ136やバルブ138を用いて吸着槽140に供給してもよく、あるいは、吸着槽140または吸着槽140に備えられる開口142を鉄供給槽110または排出口116よりも低い位置に配置し、重力の作用によって吸着槽140に供給してもよい。あるいは、図4に示すように、処理後の一次処理水(以下、処理水)を排出するための排出口148から処理水を上方に引き上げるための配管149を設けてもよい。配管149をその高さが開口142よりも低くなるように設けることで、ポンプ136を設けず、吸着槽140を鉄供給槽110と同じ高さに配置しても一次処理水を吸着槽140に貯留することができる。
吸着槽140は多孔質体106が配置できるように構成される。鉄供給槽110と同様に、吸着槽140も例えばガラスや石英、セラミック、コンクリート、あるいは高分子材料で形成することができる。高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素ポリオレフィンでもよい。多孔質体106を吸着槽140内に安定的に支持するため、吸着槽140は、例えばセラミックや樹脂、ガラスなどを含むセパレータ140aを有してもよい。セパレータ140aには開口が設けられ、一次処理水や酸素含有ガスなどが通過できるように構成される。図示しないが、セパレータ140aに替わり、砕石などの支持体を吸着槽140内に配置し、その上に多孔質体106を配置してもよい。さらに任意の構成として、多孔質体106が一次処理水に浮くことを防止して一次処理水が鉄担持多孔質炭化物102と十分に接触させるための中蓋140bを設けてもよい。中蓋140bには、多孔質体106よりも小さい複数の開口が設けられ、これにより、多孔質体106の浮遊が防止される。図示しないが、吸着槽140には、多孔質体106を投入し、取り出すための開口または蓋が設けられる。
吸着槽140は開口142を有し、開口142を介して一次処理水が鉄供給槽110から供給される。図5に示すように、任意の構成として、開口142に複数の開口143aを有するシャワーヘッド143を設け、これらの開口143aから一次処理水を多孔質体106に散布してもよい。
1-4.酸素供給装置
酸素供給装置150は、吸着槽140に酸素含有ガスを供給することができるように構成される。酸素含有ガスとしては、酸素でも空気でもよく、酸素含有ガス中における酸素濃度も任意に決定される。例えば酸素供給装置150は、酸素ガスまたは空気が貯蔵されたボンベと接続されるレギュレータを含んでもよい。あるいは空気を供給可能なコンプレッサーやファンでもよい。
酸素含有ガスの供給方法は任意に選択することができる。例えば図2に示すように、酸素含有ガスは、バルブ144を介して吸着槽140に設けられる開口146より吸着槽140にバブリングして供給することができる。この場合、複数の開口152aを有するノズル152を開口146に接続し、複数の開口152aから酸素含有ガスがバブリングできるように吸着槽140を構成してもよい。図示しないが、例えばノズル152をメンブレンタイプのディフューザとして構成してもよい。すなわち、複数の開口152aを覆うように多孔性膜を設け、開口152aと多孔性膜を介して酸素をバブリングしてもよい。
あるいは図6に示すように、ノズル152とともに、あるいはノズル152に替わり、鉄供給槽110と吸着槽140を接続する配管139に酸素供給装置150から酸素含有ガスをバブリングしてもよい。この場合、酸素含有ガスは配管139内において上昇流を形成するように供給され、過剰な酸素含有ガスを排出するための排気口141が吸着槽140に設けられる。これにより、配管139内の一次処理水に比重差が形成され、配管139はエアリフトポンプとして機能する。その結果、酸素含有ガスを一次処理水に供給できる同時に、一次処理水を吸着槽140へ供給するための駆動力を得ることができる。なお、この場合においても、図示しないが、ポンプ136を併用してもよい。
吸着槽140の構成は上述した構成に限られない。例えば開口142、排出口148、開口146の一部、またはすべてを設けず、吸着槽140に一つまたは複数のチューブを挿入し、これらのチューブを用いて一次処理水の供給、処理水の排出、酸素含有ガスの導入を行ってもよい。
2.吸着方法
本実施形態に係る吸着システム100を用い、被処理水中に含まれるリン含有化合物を吸着する方法を以下に述べる。
2-1.鉄担持多孔質炭化物
鉄担持多孔質炭化物102の原料としては、炭素を主成分として有し、数nmから数十μmの断面径を有する細孔を備える多孔質材料を用いることができる。この一例として、バイオマスなどの有機物を炭化して得られる多孔質炭化物が挙げられる。バイオマスとしては、木に由来する材料が挙げられる。具体的には、板状や柱状の木材、間伐材、剪定廃材、建築廃木材、粉末状のおがくず、パーティクルボートなどの木製成形品が挙げられる。木の種類に制約はなく、スギやヒノキ、竹でもよい。あるいは籾殻、バガス、トウモロコシの軸や葉などの農業廃棄物、藁や麦わら、乾草などの農業副産物もバイオマスの一例として挙げられる。あるいは麻や亜麻、綿、サイザル麻、アバカ、ヤシ毛などの繊維の原料となる植物もバイオマスとして挙げられる。あるいは、バイオマスは海藻などの藻類でもよく、食品残渣や、動物の糞尿から得られるサイレージでもよい。
バイオマスに由来する多孔質炭化物は、例えば炭化装置を用いて低酸素濃度の条件下でバイオマスを加熱することで得ることができる。炭化装置の構造に制約はないが、一例として図7に内燃式の炭化装置160を示す。炭化装置160は円筒形状を有する回転式の炭化炉162を有し、さらにバイオマス104を炭化するための熱エネルギーを供給するバーナー166が備えられた加熱チャンバー164が炭化炉162を覆うように設けられる。炭化装置160には、炭化するバイオマス104を投入するためのホッパー168やホッパー168の下に位置するスクリューフィーダー170を設けてもよい。スクリューフィーダー170によってバイオマス104が炭化炉162内へ連続的に供給される。
ここで例示される炭化炉162はロータリーキルン型の炭化炉であり、炭化炉162と加熱チャンバー164は、バイオマス104を投入する側が多孔質炭化物101を搬出する側よりも高い位置になるよう水平面から傾斜している。炭化炉162は駆動部172によって加熱チャンバー164内で回転するように構成される。炭化炉162に供給されるバイオマス104は、炭化炉162が連続的に回転することによってホッパー168側からバーナー166側へ輸送される。その間、低酸素濃度の条件下でバイオマス104が加熱され、炭化が進行して乾留ガスが発生する。乾留ガスは排気ダクト176から取り出される。乾留ガスには二酸化炭素が含まれるが、この二酸化炭素を上述した鉄供給槽110に供給できるよう、酸性化装置120を構成してもよい。また、乾留ガスを燃焼し、発電や加熱に用いてもよい。この場合、乾留ガスの燃焼時に発生する二酸化炭素を鉄供給槽110に供給できるよう、酸性化装置120を構成してもよい。炭化炉162の下部からガス漏洩防止用のロータリーバルブ174を介して多孔質炭化物101を取り出すことができる。
上述したように、多孔質炭化物101の表面あるいは内部には、リン含有化合物の吸着能を向上させるために、少なくとも鉄化合物および金属鉄のいずれかが担持される。鉄化合物や鉄の担持は、一例として、バイオマスの炭化によって得られる多孔質炭化物101を鉄塩を含む溶液、または懸濁液に浸漬して鉄塩を多孔質炭化物に吸着させ、その後鉄塩を還元することで行われる。鉄塩としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄(ポリ硫酸鉄も含む)、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄などが典型例として挙げられる。鉄塩が吸着した多孔質炭化物101の還元は、還元性ガス雰囲気下で加熱することによって行う。加熱は、例えば図8に示すような還元装置180を用いて行えばよい。ここに例示される還元装置180は、還元炉182、還元炉182を加熱するためのヒータ184を備え、還元炉182には還元性ガスを導入するための供給管186、排気用の排気管188などが接続される。浸漬後の多孔質炭化物101はホッパー190からロータリーバルブ192を介して還元炉182に投入される。還元炉182内で還元性ガス雰囲気下で加熱することで還元的熱分解が進行し、多孔質炭化物101上に吸着された鉄塩の全てまたは一部が金属鉄へ還元される。その後、鉄担持多孔質炭化物102がロータリーバルブ194から取り出される。なお、多孔質炭化物101に固体の酸化鉄を混合し、この混合物を成形した後に酸化鉄を還元することで、鉄担持多孔質炭化物102を作製してもよい。
鉄担持多孔質炭化物102に担持される鉄化合物としては、水酸化鉄や酸化鉄、硫化第二鉄、硫化第一鉄、及び二硫化鉄などの一種または複数種が挙げられる。酸化鉄の結晶は、ウスタイト、ヘマタイト、マグヘマタイト、あるいはマグネタイトでもよい。
鉄担持多孔質炭化物102中の鉄の含有量は、鉄担持多孔質炭化物102に対して1質量%以上50質量%以下、3質量%以上30質量%以下、5質量%以上25質量%以下、または10質量%以上25質量%以下である。鉄担持多孔質炭化物102に含まれる鉄の質量は、例えば誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)などで求めることができる。
鉄担持多孔質炭化物102の嵩比重は、0.05g/cm3以上0.8g/cm3以下、または0.1g/cm3以上0.5g/cm3以下である。
2-2.多孔質体
吸着槽140において使用される多孔質体106としては、上述した鉄担持多孔質炭化物102を用いてもよいが、鉄を担持する前の多孔質炭化物101を用いてもよい。あるいは、ゼオライトやシリカゲル、活性炭などの多孔質材料でもよい。
2-3.吸着
リン含有化合物の吸着は、連続式で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。以下、連続式で吸着を行う方法について述べる(図2参照)。
被処理水は、吸着槽140に供給される前に鉄供給槽110に供給される。具体的には、一定の流量で被処理水を開口114から導入し、被処理水と鉄担持多孔質炭化物102とを接触させる。この時、鉄担持多孔質炭化物102が被処理水中に完全に浸漬されるように被処理水の流量を制御することが好ましい。これと同時に、一定の流量で排出口116から一次処理水を排出し、一次処理水を吸着槽140に供給する。吸着槽140においては、例えば多孔質体106の全てまたは一部が一次処理水に浸漬されるよう、一次処理水の排出速度を調整することができる。あるいは、一次処理水を散布する場合には(図5参照)、多孔質体106の一部またはすべてを一次処理水に浸漬せず、吸着槽140において多孔質体106を一次処理水の表面から離隔させてもよい。吸着槽140で処理された一次処理水は、処理水として排出口148から排出される。被処理水および一次処理水の水理学的滞留時間は、20分以上48時間以下、吸着槽140の水平断面積当たりの一次処理水の流量、すなわち線速度は、0.01m/h以上5m/h以下が好ましい。
この状態において、酸性化装置120を用いて酸性の液体、または二酸化炭素を鉄供給槽110内へ供給する。この処理により、被処理液が弱酸性(pH3.5からpH6.5)となる。このため、鉄担持多孔質炭化物102上に担持された金属鉄または鉄化合物の一部は2価の鉄イオンに電離し、被処理水中に鉄イオンとして存在する。したがって、本実施形態に係る吸着システム100では、鉄担持多孔質炭化物102が酸性化装置120と協働し、2価の鉄イオン供給源として機能する。
これと同時に、2価の鉄化合物を含む一次処理水は、吸着槽140内、および/または配管139内で酸素含有ガスの供給を受け、吸着槽140内で多孔質体106と接触する。その結果、一次処理水に含まれる2価の鉄イオンは酸素によって3価の鉄イオンに酸化され、この3価の鉄イオンとオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン含有化合物が反応し、リン酸鉄などの3価の鉄化合物が生成すると考えられる。この生成物は水に対する溶解度が低く、多孔質体106に吸着される。あるいは、2価の鉄イオンが酸素によって溶解度の小さいリン酸鉄となり、リン酸鉄が微小な粒子(固体)として一次処理水中に析出(懸濁)し、それらが多孔質体106に捕捉される。また、2価の鉄イオンの一部はオキシ水酸化鉄や酸化鉄となり、多孔質体106に吸着する。この吸着した3価の酸化鉄がリン化合物の吸着サイトとして機能し、リン化合物をリン酸鉄として捕捉すると考えられる。このようなメカニズムにより、リン含有化合物が3価の鉄化合物として捕捉される。
バッチ式で吸着を行う場合には、排出口116を閉じた状態で一定量の被処理水を開口114から供給する。被処理水は、鉄担持多孔質炭化物102の全てが被処理水に浸漬するように供給することが好ましい。この状態で酸性化装置120を用いて酸性の液体、または二酸化炭素を鉄供給槽110内へ供給する。必要に応じ、被処理水を鉄供給槽110内で攪拌してもよい。これにより、被処理水は2価の鉄化合物を含むことになる。
一定の時間の経過後、この被処理水を一次処理水として排出口116を介して排出する。排出された一次処理水は、重力またはポンプ136の作用によって吸着槽140へ供給される。一次処理水は、多孔質体106の一部または全部が一次処理水に浸漬されるよう、吸着槽140に供給してもよく、あるいは多孔質体106が吸着槽140内で一次処理水の表面から離隔する状態を維持するように多孔質体106に散布してもよい。
吸着槽140へ供給される一次処理水に対し、酸素供給装置150を用いて酸素を供給する。必要に応じ、一次処理水を吸着槽140内で攪拌してもよい。連続式と同様、一次処理水に含まれる2価の鉄イオンは酸素によって酸化され、この3価の鉄イオンとリン含有化合物が反応し、リン酸鉄などの3価の鉄化合物が生成すると考えられる。この生成物は水に対する溶解度が低く、多孔質体106に吸着される。一定の時間の経過後、この一次処理水を処理水として排出口148を介して排出する。
詳細なメカニズムや理由はまだ明らかではないが、実施例で述べるように、本実施形態を適用することで、鉄担持多孔質炭化物102を多孔質体106として用いて吸着を行う場合、吸着槽140内の鉄担持多孔質炭化物102の吸着能力を長期間にわたって維持することが可能となる。
なお、本実施形態に係る吸着方法では、鉄供給槽110に配置される鉄担持多孔質炭化物102は、担持された金属鉄または鉄化合物に基づいて2価の鉄化合物、および2価の鉄イオンの供給源として機能する。したがって、担持された金属鉄または鉄化合物が消費されると、鉄化合物や鉄イオンの供給源としては機能しなくなる。一方、吸着槽140に配置される多孔質体106には金属鉄または鉄化合物は担持される必要は無く、一次処理水中に含まれる2価の鉄化合物が酸化されて生成する酸化鉄とリン含有化合物との反応によって生成する化合物を吸着するサイトを有していればよい。したがって、鉄供給槽110で使用された鉄担持多孔質炭化物102が2価の鉄イオンまたは鉄化合物の供給源としての機能を失った後、吸着槽140においてリン含有化合物を吸着するための多孔質体106として機能することができる。よって本実施形態に係る吸着方法では、吸着槽140内でリン含有化合物を吸着した多孔質体106を取り出し、鉄供給槽110で使用された鉄担持多孔質炭化物102を取り出して吸着槽140に配置し、この鉄担持多孔質炭化物102を吸着材として吸着槽140内で再利用してもよい。この場合、鉄供給槽110には、鉄担持多孔質炭化物(第2の多孔質炭化物)102が新たに配置される。すなわち、鉄担持多孔質炭化物102は、2価の鉄イオンまたは鉄化合物の供給源として機能するとともに、リン含有化合物の吸着材としても機能することができる。
本実施形態に係る吸着システムと吸着方法により、水中に含まれるリン含有化合物を吸着することができる。したがって、本実施形態により、下水などの汚染水に含まれるリンを含む化合物を効果的に吸着し、河川、湖沼、海などの水域の水の浄化や水質改善を行うことができる。
<第2実施形態>
リン含有化合物は、種々の植物の生長を促進する養分として働くことができる。本実施形態では、リン含有化合物を吸着した多孔質体106を肥料として使用する方法について述べる。第1実施形態で述べた構成と同様、または類似する構成については説明を省略することがある。なお、ここでは、多孔質体106には鉄または鉄化合物が担持されていなくもよく、この場合には、金属鉄または鉄化合物が担持されていない多孔質炭化物101を用いることができる。あるいは多孔質体106として鉄担持多孔質炭化物102を用いてもよい。
本実施形態に係る多孔質体106を肥料として使用するためのフローを図9に示す。多孔質体106は単独で肥料として利用してもよく、あるいは硫酸カルシウムなどの肥料助剤と混合した形態で利用してもよい。混合はミキサーを用いて行えばよく、ミキサーはフリーフォールミキサー、強制ミキサー、Y分岐ミキサー、アジテータミキサー、あるいはパドルミキサーなどから任意に選択することができる。
必要に応じ、多孔質体106や肥料助剤の粒径を調整するために解砕を行ってもよい。例えば、多孔質体106の平均粒径が10mm以下、0.1mm以上10mm以下となるように解砕すればよい。解砕は、多孔質体106と肥料助剤を混合する前に行ってもよく、混合後に行ってもよい。解砕は解砕機を用いて行えばよく、例えば振動ミル、ジェットミル、ボールミル、ローラーミル、ロッドミル、ハンマーミル、インパクトミル、回転ミル、ピンミル、ピン-ディスクミル、あるいは遊星ミルなどの解砕機を利用することができる。解砕機を用いて多孔質体106を解砕することで表面積が増大し、その結果、吸着物の多孔質体106からの解離が促進される。
あるいは、多孔質体106や肥料助剤の粒径を肥料の用途に適合させるための分級を行ってもよい。分級も多孔質体106と肥料助剤を混合する前に行ってもよく、混合後に行ってもよい。分級は分級機を用いて行われ、分級機としては乾式分級式分級機でも湿式分級機のいずれを採用してもよい。例えば気流分級機、重力場分級機、慣性力場分級機、遠心力場分級機などが分級機として例示される。
得られる肥料に対してさらに肥料成分を混合してもよい。肥料成分としては窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ケイ酸、ホウ素から選ばれる一つ、あるいは複数が挙げられ、具体的な材料として油粕、発香鶏糞、魚粉、骨粉、米ぬか、バットグアノ、ポカシ肥、草木灰、石灰、化成肥料などが例示される。
多孔質体106に基づく肥料の土壌中への散布は、例えばグランドソワーなどの自然落下式の散布機や、圧縮空気を利用する拡散型散布機などを用いて行えばよい。また、散布方式にも制約はなく、条施型散布機、全面施用散布機のいずれを採用してもよい。肥料は、土壌の表面から30cm以内の範囲に散布することが好ましい。
このように、本発明の実施形態により、下水などの汚染水に含まれる水質汚濁物質であるリン含有化合物を効果的に吸着し、河川、湖沼、海などの水域の水質改善を行うことができるとともに、リン含有化合物を吸着した多孔質体106を肥料として利用することができる。このことは、本実施形態を通じ、水質改善とともに大気中への二酸化炭素の放出を抑制し、二酸化炭素を炭素という形態で地中に貯留できることを意味する。すなわち図10に示すように、本発明の各実施形態により、バイオマスが炭化されて多孔質炭化物が生成され(1)、さらに多孔質炭化物から鉄担持多孔質炭化物102が生成される(2)。この鉄担持多孔質炭化物102は、酸素が供給された被処理水中でリン含有化合物を鉄塩として吸着できるのみならず、酸性の液体または二酸化炭素が供給された被処理水中では、鉄塩の原料となる2価の鉄化合物の供給源としても機能する(3)。鉄担持多孔質炭化物102は、鉄供給源としての役割が終了した後には、酸素が供給された被処理水中でリン含有化合物を吸着可能な吸着材として利用される(4)。さらに、吸着後の鉄担持多孔質炭化物102は肥料として利用され、植物の育成に寄与する(5)。植物は大気中の二酸化炭素を固定し、食料や構造材料を提供するとともに、多孔質炭化物101の原料となるバイオマスを副生する(6)。
この(1)から(6)の一連のプロセスによって構築されるサイクルにより、大気中の二酸化炭素が光合成によって有機物として固定化され、この有機物が食料や材料として利用されるとともにバイオマスが副生される。バイオマスは炭化によって多孔質炭化物へ変換され、最終的には肥料として地中に戻される。したがって、大気中の二酸化炭素は炭素として地中に貯留され、これにより、大気中の二酸化炭素の削減に寄与する。
1.実施例1
本実施例では、第1実施形態で述べた吸着システム100を用い、鉄担持多孔質炭化物102のリン含有化合物に対する吸着特性を検討した結果について述べる(図2参照)。
円筒形のアクリル樹脂製吸着槽140(内径約3cm、長さ約40cm)に鉄担持多孔質炭化物102を25g配置した。同様に、円筒形のアクリル樹脂製の鉄供給槽110(内径約3cm、長さ約40cm)に鉄担持多孔質炭化物102を多孔質体106として25g配置した。吸着槽140と鉄供給槽110に配置された鉄担持多孔質炭化物102は同一工程で製造された同一の多孔質炭化物であり、鉄含有量は26%、嵩比重は0.15g/cm3であった。
被処理水として、リン(P)として20ppmを含むリン酸二水素カリウム(KH2PO4)水溶液を用いた。鉄担持多孔質炭化物102が被処理水に浸漬するように、被処理水を鉄供給槽110に供給した。その後、2.1L/Dの流速で被処理水を吸着槽140に連続的に供給するとともに、同じ流速で一次処理水を連続的に排出して吸着槽140へ供給した。被処理水および一次処理水の水理学的滞留時間は2時間以下、線速度は0.13m/hであった。
吸着槽140内の鉄担持多孔質炭化物102が一次処理水に浸漬したことを確認した後、一次処理水の供給を維持したまま、同じ流速で処理水の排出を開始した。その後、鉄供給槽110と吸着槽140にそれぞれ二酸化炭素と空気のバブリングを開始した。二酸化炭素と空気の流量は、それぞれ30mL/min、10mL/minであった。吸着槽140から排出される処理水をサンプリングしてpHと溶解性無機態リン濃度を測定し、溶解性無機態リン濃度に基づいてリン除去率を算出した。なお、溶解性無機態リン濃度は、モリブデン青吸光光度法を用いて測定した(以下、同様)。
pHとリン除去率の経時変化を図11に示す。図11に示すように、吸着槽140から排出されるpHはほぼ一定であり、ほぼ中性であることが確認された。また、吸着開始後18日後でも、リン除去率はほぼ一定であり、90%以上の高い除去率を維持することが確認された。
2.比較例1
比較例として、吸着槽140は用いず、鉄供給槽110に鉄担持多孔質炭化物102を配置し、二酸化炭素のみを供給した。具体的には、内径約3cm、長さ40cmの円筒形のアクリル樹脂製鉄供給槽110に鉄担持多孔質炭化物102を25g配置し、2.1L/Dの流速で被処理水を鉄供給槽110に連続的に供給した。用いた鉄担持多孔質炭化物102、被処理水の水理学的滞留時間、および線速度はそれぞれ、実施例1と同じであった。鉄供給槽110内の鉄担持多孔質炭化物102が被処理水に浸漬したことを確認した後、被処理水の供給を維持したまま、同じ流速で一次処理水の排出を開始した。その後、鉄供給槽110に二酸化炭素を供給し、被処理水中でバブリングさせた。二酸化炭素の流速は50mL/minであった。二酸化炭素のバブリングを維持しつつ、鉄供給槽110から排出される一次処理水をサンプリングしてpHと溶解性無機態リン濃度を測定し、溶解性無機態リン濃度に基づいてリン除去率を算出した。
pHとリン除去率の経時変化を図12に示す。図12に示すように、鉄供給槽110から排出される一次処理水のpHは、二酸化炭素の供給開始後徐々に低下し、その後約6.0のpHが維持されることが確認された。実施例1と大きく異なり、吸着開始後からリン除去率は急速に低下し、二酸化炭素の供給開始から3日後には40%程度に低下することが分かった。
3.比較例2
比較例として、鉄供給槽110は用いず、吸着槽140に鉄担持多孔質炭化物102を配置し、空気や二酸化炭素を供給することなく、被処理水を吸着槽140に供給した。具体的には、内径約3cm、長さ40cmの円筒形のアクリル樹脂製吸着槽140に鉄担持多孔質炭化物102を25g配置し、2.1L/Dの流速で被処理水を吸着槽140に連続的に供給した。用いた鉄担持多孔質炭化物102、被処理水の水理学的滞留時間、および線速度はそれぞれ、実施例1と同じであった。吸着槽140内の鉄担持多孔質炭化物102が被処理水に浸漬したことを確認した後、被処理水の供給を維持したまま、同じ流速で処理水の排出を開始した。吸着槽140から排出される処理水をサンプリングしてpHと溶解性無機態リン濃度を測定し、溶解性無機態リン濃度に基づいてリン除去率を算出した。
pHとリン除去率の経時変化を図13に示す。図13に示すように、吸着槽140から排出される処理水のpHはほぼ一定であり、約8.7のpHが維持されることが確認された。この値は、リン酸二水素カリウムの水溶液のpHに対応する。比較例1と同様、被処理水の排出開始からリン除去率は急速に低下し、3日後には60%程度に低下することが分かった。
4.考察
比較例1で確認されたように、二酸化炭素の供給の開始とともに処理液のpHが低下する。これは、二酸化炭素の供給によって炭酸が発生するからである。金属鉄は弱アルカリ性条件下で徐々に酸化され、水酸化鉄(II)を与えることが知られている。また、水酸化鉄(II)は溶解度積Kspが1×10-15であるため、pHが中性付近で2価の鉄イオン(Fe2+)として溶解する。したがって、実施例、および比較例1では、鉄供給槽110において鉄担持多孔質炭化物102上に担持された金属鉄または鉄化合物が徐々に溶解し、被処理水に2価の鉄イオン(Fe2+)が供給されていることが示唆される。実際、実施例では、吸着槽140に空気を供給することで吸着槽140内部が赤色に呈色することが確認されたことから、鉄供給槽110で2価の鉄イオン(Fe2+)が生成し、これが吸着槽140内で水酸化鉄(III)および/または酸化鉄(III)に酸化されるものと考えられる。
比較例1では、鉄担持多孔質炭化物102が存在しているのにかかわらず、リン除去率は速やかに低下する。これは、担持された金属鉄が2価の鉄イオン(Fe2+)として溶出するが、3価の鉄イオン(Fe3+)をほとんど生成せず、ほとんどの鉄が2価の鉄イオンとして流出したためと考えられる。
一方、比較例2では、処理水中には水酸化鉄(II)などの2価の鉄化合物はほとんど含まれていないと考えられる。このことは、高いpHによっても支持される。また、空気も供給されないので、3価の鉄も事実上存在せず、リン酸二水素カリウム水溶液中のリン酸イオン(PO4 -)が3価の鉄化合物と反応するメカニズムは含まれない。このため、比較例1と同様、リン酸イオン(PO4 -)が鉄担持多孔質炭化物102に吸着されることで吸着サイトが消失し、その結果、吸着能を長期にわたって維持することができないものと考えられる。
これに対し実施例では、鉄供給槽110から定常的に2価の鉄イオンが供給され、これが空気に含まれる酸素と反応し、酸化鉄(III)が生成される。この酸化鉄(III)はリン酸イオン(PO4 -)と反応してリン酸鉄となり、その結果、リン酸イオン(PO4 -)がリン酸鉄として鉄担持多孔質炭化物102に吸着されると考えられる。図11の結果から理解されるように、実施例では長期間にわたってほぼ定量的なリン除去率が維持されている。この結果は、鉄供給槽110から定常的に供給される2価の鉄イオンの酸化によって生成する3価の酸化鉄が吸着槽140に配置される鉄担持多孔質炭化物102に吸着することにより、リン含有化合物をリン酸鉄として吸着するためのサイトが形成されることを示唆している。
鉄が担持された多孔質炭化物は、リン含有化合物を吸着することができることが知られている。しかしながら以上の結果は、多孔質炭化物を処理対象である下水、またはリンを含む排水と接触させただけでは、リン含有化合物に対する吸着能を長期にわたって維持することが困難であることを示唆する。これに対し、本発明に係る実施形態を適用することで、多孔質炭化物は、リン含有化合物、あるいは少なくともリン酸や金属リン酸塩に対する吸着能を長期間にわたって維持することが可能となる。
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
:100:吸着システム、101:鉄担持多孔質炭化物、102:鉄担持多孔質炭化物、104:バイオマス、106:多孔質体、110:鉄供給槽、110:再度鉄供給槽、110:アクリル樹脂製鉄供給槽、110a:セパレータ、110b:中蓋、114:開口、116:排出口、118:開口、120:酸性化装置、122:ノズル、122a:開口、124:バルブ、126:開口、128:バルブ、130:フィルター、132:エアーポンプ、134:バルブ、136:ポンプ、138:バルブ、139:配管、140:吸着槽、140:アクリル樹脂製吸着槽、140a:セパレータ、140b:中蓋、141:排気口、142:開口、143:シャワーヘッド、143a:開口、144:バルブ、146:開口、148:排出口、149:配管、150:酸素供給装置、152:ノズル、152a:開口、160:炭化装置、162:炭化炉、164:加熱チャンバー、166:バーナー、168:ホッパー、170:スクリューフィーダー、172:駆動部、174:ロータリーバルブ、176:排気ダクト、180:還元装置、182:還元炉、184:ヒータ、186:供給管、188:排気管、190:ホッパー、192:ロータリーバルブ、194:ロータリーバルブ

Claims (21)

  1. 鉄および鉄化合物の少なくとも一方が担持された多孔質炭化物を収容し、リン含有化合物を含む被処理水が供給されるように構成される鉄供給槽、
    前記鉄供給槽内の前記被処理水を酸性化するように構成される酸性化装置、
    多孔質体を収容し、前記鉄供給槽から前記被処理水が供給されるように構成される吸着槽、および
    前記吸着槽に酸素含有ガスを供給するように構成される酸素供給装置を含む吸着システム。
  2. 前記多孔質体は炭化物である、請求項1に記載の吸着システム。
  3. 前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)から選択される、請求項1に記載の吸着システム。
  4. 前記多孔質炭化物中の鉄含有量は、前記多孔質炭化物に対して1質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の吸着システム。
  5. 前記吸着槽は、前記酸素含有ガスが前記被処理水中でバブリングされるように構成される、請求項1に記載の吸着システム。
  6. 前記酸性化装置は、塩酸、硫酸、または硝酸を前記鉄供給槽に供給するように構成される、請求項1に記載の吸着システム。
  7. 前記酸性化装置は、二酸化炭素を前記鉄供給槽に供給するように構成される、請求項1に記載の吸着システム。
  8. 前記鉄供給槽は、二酸化炭素が前記被処理水中でバブリングされるように構成される、請求項7に記載の吸着システム。
  9. 前記鉄供給槽は、供給された前記二酸化炭素を回収し、再度前記鉄供給槽に供給するように構成される、請求項7に記載の吸着システム。
  10. 鉄および鉄化合物の少なくとも一方が担持された多孔質炭化物が収容された鉄供給槽にリン含有化合物を含む被処理水を供給すること、
    前記鉄供給槽中の被処理水を酸性化すること、
    多孔質体が収容された吸着槽に前記被処理水を前記鉄供給槽から供給すること、および
    前記吸着槽に酸素含有ガスを供給することを含む吸着方法。
  11. 前記多孔質体は炭化物である、請求項10に記載の吸着方法。
  12. 前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、水酸化鉄(III)、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)から選択される、請求項10に記載の吸着方法。
  13. 前記多孔質炭化物中の鉄含有量は、前記多孔質炭化物に対して1質量%以上50質量%以下である、請求項10に記載の吸着方法。
  14. 前記酸素含有ガスの前記供給は、前記被処理水に前記酸素含有ガスをバブリングすることで行われる、請求項10に記載の吸着方法。
  15. 前記酸素含有ガスの前記供給は、前記鉄供給槽と前記吸着槽を接続する配管に対して前記酸素含有ガスを供給することで行われる、請求項10に記載の吸着方法。
  16. 前記被処理水の前記吸着槽への前記供給は、前記被処理水を前記多孔質体に散布することで行われる、請求項10に記載の吸着方法。
  17. 前記酸性化は、塩酸、硫酸、または硝酸を前記鉄供給槽に供給することで行われる、請求項10に記載の吸着方法。
  18. 前記酸性化は、二酸化炭素を前記鉄供給槽に供給することで行われる、請求項10に記載の吸着方法。
  19. 前記二酸化炭素の前記供給は、前記二酸化炭素を前記被処理水中にバブリングすることによって行われる、請求項18に記載の吸着方法。
  20. 前記被処理水に供給された前記二酸化炭素を回収すること、および
    回収された前記二酸化炭素を再度前記鉄供給槽に供給することをさらに含む、請求項18に記載の吸着方法。
  21. 前記多孔質体を前記吸着槽から取り出し、前記多孔質炭化物を前記吸着槽へ配置すること、および
    鉄が担持された第2の多孔質炭化物を、前記鉄供給槽に配置することをさらに含む、請求項10に記載の吸着方法。
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