JP7343109B2 - 超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルおよび超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルのエコー画像における針先の視認性調整方法 - Google Patents
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Description
超音波検査は、穿刺の介助にも用いられている。例えば、中心静脈カテーテルの挿入法には、エコー画像を用いる超音波ガイド法(Ultrasound-guided technique)がある。また、超音波ガイド法には、エコーガイド下(超音波ガイド下)に穿刺を行うエコーガイド下による穿刺法(Real-time approach)がある。エコーガイド下による穿刺法は、中心静脈カテーテルの挿入に伴うリスク(合併症)が少ないとも言われている。
また、非水溶性の粉体が炭酸カルシウムである、超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルである。
本発明の医療処置の訓練用皮膚モデルのエコー画像の視認性調整方法によると、穿刺する人体の皮膚のエコー画像に近似するエコー画像を用いて、穿刺手技の訓練を行うことができる。
本発明の超音波ガイド法の穿刺手技訓練方法により、人体の皮膚でも再現できるように穿刺法を訓練することができる。
本発明の医療処置の訓練用皮膚モデルは、医療処置を行う部位の模擬皮膚である。図1において、本発明の医療処置の訓練用皮膚モデル10は、直方体に形成されているものであり、コンニャクのように弾力性のあるものであり、人体の皮膚に似た質感を有するものである。なお、図1の医療処置の訓練用皮膚モデル10には、細長い管状の道具(たとえば、ストロー)を差し通して、人体モデルの動脈及び静脈を通すための貫通穴12を形成している。
本発明の超音波ガイド法の穿刺手技訓練方法を図1に基づいて説明する。人体モデルの動脈と静脈を医療処置の訓練用皮膚モデル10の貫通穴12に差し入れ、人体モデルに医療処置の訓練用皮膚モデル10を取り付ける(図1(a)(b))。
医療処置の訓練用皮膚モデル10(エコーガイド下)に穿刺し、針14の針先14aのエコー画像16を視認しつつ穿刺手技訓練を行う。エコー画像16はプローブ18を通じてモニタに描出される。
ポリビニルアルコールは、人体の皮膚の弾性に近づける観点から、平均重合度500~4000が好ましく、1000~3000がより好ましい。けん化度は、95モル%以上が好ましく、98モル%以上がより好ましい。また、濃度は5~15質量%が好ましい。
また、繊維として、セルロースを機械処理や化学処理によって平均繊維径が200nm以下まで解繊処理したセルロースナノファイバーや、酢酸菌等のバクテリアにより産生されるバクテリアセルロースも利用できる。
平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定により得られる体積基準の50%粒子径(メジアン径)である。非水溶性の粉体又は繊維の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製マスターサイザー3000)により分散媒として水を用いて測定した。
(工程1)水を攪拌しながらポリビニルアルコールと非水溶性の粉体又は繊維を加えた混合液を90~95℃に昇温し溶解するまで攪拌することにより、ポリビニルアルコール水溶液と非水溶性の粉体又は繊維を混合する混合液を得る。
なお、本発明の医療処置の訓練用皮膚モデルを用いた医療処置訓練が実際の医療処置の感覚に近いものになるよう、混合液に顔料や染料などの着色剤や抗菌剤や安定剤などの添加剤を加えても良い。但し、添加剤は、エコー画像の視認性を妨げない程度の量にとどめるものとする。
(工程2)混合液を所定の型(成形缶)に流し込み凍結融解することにより、ゲル化させる。人体の皮膚の弾性に近づける観点から、凍結温度は-5℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。凍結時間は、1時間から20時間が好ましい。融解は、例えば、室温中に静置する、もしくは乾燥機などにより加熱することにより行う。但し、これらの融解方法に限るものではない。
また、人体の部位の皮膚に近似する弾性を得るために、凍結と融解の工程を複数回繰り返して行う。
(工程3)ゲルを型から取り外すことにより、医療処置の訓練用皮膚モデルを得る。
蒸留水に実験例及び比較例の非水溶性の粉体または繊維と、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JC‐17KB、平均重合度1700、けん化度99モル%)とを加え、加熱しながら攪拌することによりポリビニルアルコールを溶解し、ポリビニルアルコール10質量%と実験例及び比較例の非水溶性の粉体または繊維を含む混合液を調製した。調整した混合液を型(成形缶)に流し込み、冷凍庫中で-20℃にて8時間凍結した後、解凍した。さらに、同様の操作(-20℃で8時間の凍結の後解凍)を繰り返し、混合液をゲル化した。得られたゲルを型から取り外すことにより実験に使用する皮膚モデル20を得た。
実験例1~11では、非水溶性の粉体として平均粒子径15.9μmの炭酸カルシウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度0.05質量%(実験例1)、0.1質量%(実験例2)、0.2質量%(実験例3)、0.3質量%(実験例4)、0.5質量%(実験例5)、1.0質量%(実験例6)、1.5質量%(実験例7)、2.0質量%(実験例8)、3.0質量%(実験例9)、4.0質量%(実験例10)、5.0質量%(実験例11)の各皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性(針先14aの見え易さ)の確認実験を行った。
実験例12では、非水溶性の粉体として平均粒子径49.5μmの酸化アルミニウム(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度0.3質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
実験例13では、非水溶性の粉体として平均粒子径27.4μmのグラファイト(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度0.3質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
実験例14では、非水溶性の粉体として平均粒子径9.13μmの二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度0.3質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
実験例15では、非水溶性の繊維として平均粒子径54.6μmのセルロース(SIGMA‐ALDRICH Co.製)を用いた、繊維の濃度0.5質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
実験例16では、非水溶性の繊維としてセルロースナノファイバー(株式会社スギノマシン製BiNFi-s(登録商標))を用いた、繊維の濃度0.3質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
比較例1(比較実験)では、非水溶性の粉体又は繊維を混合しない、ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JC‐17KB、平均重合度1700、けん化度99モル%)の水溶液のみをゲル化した皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
比較例2(比較実験)では、非水溶性の粉体として平均粒子径27.4μmのグラファイト(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度10質量%の皮膚モデルを使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。本比較例で使用する医療処置の訓練用皮膚モデルの材質は、特許文献1に記載の超音波ファントムの材質とほぼ同じものである。
比較例3では、非水溶性の粉体として平均粒子径116μmの二酸化ケイ素(和光純薬工業株式会社製)を用いた、粉体の濃度0.3質量%の皮膚モデル20を使用して、穿刺手技における針先14aの視認性の確認実験を行った。
穿刺手技における針先の視認性の判断は、図3乃至図21のエコー画像に基づいて穿刺された針の針先と皮膚モデル部分とが明瞭に区別できるかどうか(針先を明確に確認できるか)で判断した。明瞭に区別できると判断した皮膚モデルには表1に「〇」を、明瞭に区別できないと判断した皮膚モデルには表1に「×」をそれぞれ表記した。
本実験により、非水溶性の粉体又は繊維の濃度が0.2質量%以上4.0質量%以下であるとき、針先の視認性が認めることが分かった(実験例3乃至実験例10、実験例12乃至実験例16)。
他方、実験例1及び実験例2(粉体の濃度0.2質量%未満の場合)では、皮膚モデル内部が不均一であったため、針先を明確に確認することができなかった(図4及び図5)。
また、実験例11(粉体の濃度4.0質量%を超える場合)では、針先と皮膚モデル内部とのコントラストが明確ではなかったため、針先が不明瞭であった(図14)。
比較例2では、針先は不明瞭であった(図20)。なお、特許文献1には、混入グラファイトの重量濃度が6~13%の間で人体の脂肪、腎臓、肝臓等の超音波に対する減衰係数を近似できると記載されているが、グラファイトの濃度10質量%の皮膚モデルでは、針先が不明瞭であった。
比較例3(粉体又は繊維が平均粒子径100μmを超える場合)では、皮膚モデル内部が不均一であったため、針先を明確に確認することができなかった(図21)。
なお、本実験において、医療処置の訓練用皮膚モデルの強度と濃度の関係について、セルロースナノファイバーの混合濃度によって強度を調整できることが分かった。
14a 針先
16 エコー画像
Claims (3)
- 穿刺し、針先のエコー画像を視認しつつ穿刺手技訓練を行わせる超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルであり、平均重合度が500~4000、ケン化度が95モル%以上のポリビニルアルコールの水溶液に、エコー画像における針先の視認性を得るため平均粒子径が100μm以下である非水溶性の粉体又は繊維を混合する混合液をゲル化したものであって、かつ、針先を明確にするため非水溶性の粉体又は繊維の濃度を0.2質量%~4.0質量%にすることを特徴とする超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデル。
- 非水溶性の粉体が、炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデル。
- 請求項1又は請求項2記載の超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルのエコー画像における針先の視認性を非水溶性の粉体又は繊維の濃度により調整することを特徴とする超音波ガイド法の穿刺手技訓練用皮膚モデルのエコー画像における針先の視認性調整方法。
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