JP7342916B2 - 自走式疵取り装置および疵取り方法、ならびに金属板の製造方法 - Google Patents

自走式疵取り装置および疵取り方法、ならびに金属板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、屋内で金属板上を自走して金属板の疵取りを行う自走式疵取り装置および疵取り方法、ならびに金属板の製造方法に関する。
従来、厚板鋼材等の金属板の表面に存在する疵の手入れを自動的に行う疵取り装置としては、厚板鋼材の両側にレール等のリニアスライド装置を敷設し、このガイドに沿って厚板の圧延方向(長手方向)を走行する台車に、幅方向に移動可能なスライダを設け、このスライダに1つまたは複数の研削装置を設けた門型研削装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
また、特許文献3には、事前に厚板鋼材表面の疵位置をワイヤを経由して研削装置に入力し、その位置情報のもとに研削装置を移動させて疵の研削手入を行う自走式表面疵取り装置が提案されている。これにより、特許文献1および特許文献2の装置よりも小型化できるとされている。
さらに、特許文献4には、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を発信または受信する航法用信号発信機もしくは航法用信号受信機を、研削装置を備えた台車に設置し、屋内位置測定システム信号を用いて自己位置を認識し、かつ疵位置を教示する自走式疵取り装置が提案されている。この技術によれば、教示された疵位置に基づいて、金属板のマーキングや画像処理用のマークを用いることなく、金属板上における台車の位置および角度を高精度で認識することができ、そのように認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて台車を所定の目標位置に自律走行させることができる。
特開昭51-58988号公報 特開昭52-111093号公報 特開昭62-124864号公報 特開2018-75707号公報
特許文献1,2に示されたような門型研削装置は、装置全体が大型になり、しかも、既存の工場のレイアウトを含めた極めて大掛りな投資を必要とする。
また、特許文献3に示された自走式表面疵取り装置は、装置自体を小型化することができるが、次のような問題がある。事前に疵位置を入力する必要があるため、疵取り装置への位置情報および疵深さ情報の事前計測とその入力作業などの付随作業を必要とする。リニアスライド装置、軌道レール等の付帯装置を敷設しないことを前提とした場合、厚板鋼材表面における疵取り装置の自己位置を十分な精度で測定できない。装置を疵位置に導く必要性から、厚板鋼材の長手方向に敷設される台車と軌道レールが必要になり、その付帯作業が発生する。また、疵位置情報の精度は、この台車用軌道レールの敷設時精度の影響を受けるため、厚板サイズの変更や厚板反転時、あるいは新しい厚板ごとに軌道レールを設置する必要があり、極めて煩雑な作業を伴う。
特許文献4の自走式疵取り装置は、屋内位置測定システムを用いて予め測定した情報に基づいて、金属板の表面に分散して存在する疵を高精度でかつ煩雑な作業を伴うことなく短時間で手入れすることができるが、研削部分の深さの違いにより段差が生じ、研削後の品質を十分に保てないことがある。
したがって、本発明は、構成および取扱いの複雑化を招くことなく、小型化することができ、高精度でかつ煩雑な作業を伴うことなく短時間で手入れすることができ、しかも研削後の品質を良好にすることができる自走式疵取り装置および疵取り方法、ならびに金属板の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)~(9)を提供する。
(1)位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走し、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り装置であって、
金属板上を走行する台車と、
前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、
前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータと、
前記走査アクチュエータの走査を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度および前記研削材の回転速度の少なくとも一方を、研削開始位置と研削定常部で変化させるように制御することを特徴とする自走式疵取り装置。
(2)前記制御部は、前記走査アクチュエータの前記研削開始位置から前記定常部までの走査速度をV0とし、前記定常部の走査速度をV1とした場合に、V0>V1となるように前記走査アクチュエータの走査速度を制御することを特徴とする上記(1)に記載の自走式疵取り装置。
(3)前記制御部は、前記V0と前記V1が、V0/V1>1.1を満たすように、前記走査アクチュエータの走査速度を制御することを特徴とする上記(2)に記載の自走式疵取り装置。
(4)前記研削材は、研磨布紙を研削方向に対して垂直方向に複数枚積層して構成されることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の自走式疵取り装置。
(5)位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り方法であって、
前記自走式疵取り装置は、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有し、
前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度および前記研削材の回転速度の少なくとも一方を、研削開始位置と研削定常部で変化させることを特徴とする自走式疵取り方法。
(6)前記走査アクチュエータの前記研削開始位置から前記定常部までの走査速度をV0とし、前記定常部の走査速度をV1とした場合に、前記走査アクチュエータの走査速度をV0>V1となるようにすることを特徴とする上記(5)に記載の自走式疵取り方法。
(7)前記走査アクチュエータの走査速度を、前記V0と前記V1が、V0/V1>1.1を満たすようにすることを特徴とする上記(6)に記載の自走式疵取り方法。
(8)前記研削材として、研磨布紙を研削方向に対して垂直方向に複数枚積層して構成されたものを用いることを特徴とする上記(5)から(7)のいずれかに記載の自走式疵取り方法。
(9)表面に疵が存在する金属板に対して、位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、該疵の研削除去を行って金属板を製造する金属板の製造方法であって、
前記自走式疵取り装置は、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有し、
前記研削部により前記金属板表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度および前記研削材の回転速度の少なくとも一方を、研削開始位置と研削定常部で変化させることを特徴とする金属材の製造方法。
本発明では、位置測定手段からの情報に基づいて金属板上を自走し、かつ、研削部として回転する研削材を用い、研削部により金属板表面を研削する際に、走査アクチュエータの走査速度および研削材の回転速度の少なくとも一方を研削開始位置と研削定常部で変化させる。これにより、構成および取扱いの複雑化を招くことがなく、装置を小型化することができ、高精度でかつ煩雑な作業を伴うことなく短時間で疵取りをすることができ、しかも研削後の品質を良好にすることができる。
自走式疵取り装置を含む全体システムの一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置の本体部を示す側面図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置の本体部を示す上面図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置に用いる研削部の一例を示す図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置を厚板鋼板の疵取りに適用した場合の一軸方向に走査させる走査速度と研削深さの関係を示す図である。 本発明の一実施形態に係る自走式疵取り装置を厚板鋼板の疵取りに適用した場合の研削開始時の走査速度V0と定常部の走査速度V1の速度比V0/V1の値と、走査開始位置から定常部までの領域の研削深さと目標研削深さとの差の関係についての調査結果を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る自走式疵取り装置を厚板鋼板の疵取りに適用した場合の一軸方向に走査させる走査速度と研削深さの関係を示す図である。 本発明の他の実施形態に係る自走式疵取り装置を厚板鋼板の疵取りに適用した場合の研削開始時の走査速度V0と定常部の走査速度V1の速度比V0/V1の値と、走査開始位置から定常部までの領域の研削深さと目標研削深さとの差の関係についての調査結果を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<自走式疵取り装置を含む全体システム>
最初に本発明に係る自走式疵取り装置を含む全体システムについて説明する。
図1は自走式疵取り装置を含む全体システムの一例を示す斜視図である。
図1に示すように、疵取り装置を含む全体システム100は、位置測定手段としての屋内位置測定システム200と、自走式疵取り装置300(以下、単に疵取り装置300と記す)とを有する。
本例において用いる屋内位置測定システム200は、疵取り装置300の位置測定手段を構成し、三角測量の原理に基づいて屋内空間での自己位置測定を行うものである。具体的には、屋内位置測定システム200は、屋内に設置された複数の航法用送信機11と、航法用受信機12と、位置演算用ソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
疵取り装置300は、金属板上を自走して金属板の表面の微小な疵(欠陥)を研削除去(疵取り)するものであり、台車14と、台車14に設けられた、疵取対象である金属板10を研削する研削部22と、研削部22を駆動するための駆動系と、疵取り装置300を別途与えられる所定の目標位置に自律走行させるための制御系とを備えている。疵取り装置300の詳細な構成は後述する。
屋内位置測定システム200には、例えばIGPS(Indoor Global Positioning System)を適用することができる。IGPSは、衛星航法システム(GPS:Global Positioning System)を屋内位置測定システムに適用したものである。IGPSについては、米国特許第6,501,543号明細書に詳細に記載されている。
屋内位置測定システム200にIGPSを適用する場合は、各航法用送信機11は、回転ファンビーム(扇形ビーム)を射出する。回転ファンビームはレーザファンビームであってもよく、他の光放射手段であってもよい。航法用受信機12は疵取り装置300の台車14に搭載され、送信機から射出される回転ファンビームを受信する。このとき、回転ファンビームは所定の角度でずれており、これを受信する受信機の3次元座標値(以下、「座標値」という)、すなわち位置または高さを測定することができる。航法用受信機12が受信した受信情報はホストコンピュータ13に無線伝送され、ホストコンピュータ13により、三角測量の原理に従って、航法用受信機12の位置を演算する。複数の送信機11から受信した信号を用いて、また演算を繰り返すことにより、航法用受信機12を搭載した走行中の疵取り装置300の位置情報をリアルタイムで得ることができる。
<疵取り装置>
次に、本発明の一実施形態に係る疵取り装置300について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る疵取り装置300を示すブロック図、図3は疵取り装置300の本体部を示す側面図、図4は疵取り装置300の本体部を示す上面図である。
本実施形態において、疵取り装置300は、上述したように、台車14と、研削部22と、研削部22を駆動するための駆動系と、疵取り装置300を所定の目標位置に自律走行させるための制御系とを備えている。台車14は、走行用の車輪20と、車輪を駆動および旋回させるためのモータ21とを有する。研削部22の駆動系は、研削部22を金属板10の表面に沿った一軸方向に走査させる走査アクチュエータ15と、研削部22を金属板10に接離させるために昇降させる昇降アクチュエータ16とを有する。
図2に示すように、疵取り装置300の制御系は、搭載コンピュータ18を有する。また、制御系は、I/Oボード17と、コントローラおよびドライバを含む駆動制御部19とを備えている。駆動制御部19は、車輪用のモータ21、ならびに研削部22の駆動系を構成する走査アクチュエータ15および昇降アクチュエータ16を制御する。上記ホストコンピュータ13もこの制御系の一部として機能する。制御系のホストコンピュータ13以外のものは台車14に搭載される。I/Oボード17は、ホストコンピュータ13と搭載コンピュータ18との間の信号の授受を行う。
ホストコンピュータ13は、図2に示すように、上述した屋内位置測定システム200の航法用受信機12の位置を演算するための現在位置演算用ソフトウェア31と、目標研削位置、経路情報を設定し、また搭載コンピュータ18からの検査データ、研削位置情報を評価する設定・評価ソフトウェア32とを有する。なお、疵取り装置300の制御系として、ホストコンピュータ13を用いずに、搭載コンピュータ18のみで制御するようにしてもよい。
図3、図4に示すように、疵取り装置300の本体の基部は台車14により構成され、車輪20はその一方の端部近傍に設けられている。そして、台車14の車輪20に対応する部分に航法用受信機12が取り付けられている。台車14の他方の端部には、台車14の長手方向に直交する方向に延在する枠部材41が取り付けられており、走査アクチュエータ15は枠部材41の延在方向に研削部22を移動させる。研削部22は、昇降アクチュエータ16を介して走査アクチュエータ15に取り付けられており、昇降アクチュエータ16とともに走査アクチュエータ15により移動される。車輪20と枠部材41との間の部分には、疵取り装置300の本体を金属板10に固定するための固定部42が設けられている。固定部42は例えば電磁石からなる。台車14の固定部42に対応する部分には、従動車輪43が設けられている。従動車輪43は、駆動側の車輪20の動きに応じて自由に向きを変えることが可能となっている。
研削部22は、研削材の一例である研磨布紙を有している。研磨布紙とは、基材(布や紙)に砥粒を接着剤で固定した研削材をいう。研削部22は、研磨布紙を金属板10表面に接触させて金属板10を研削する。研磨布紙を用いた研削材としては、例えば研磨ホイール、研磨ベルト、フラップホイール、及びフラップディスク等が挙げられる。なお、研削材は研磨布紙に限らず、砥石、ディスク砥石、不織布研磨材、バフ砥石、研玉等の他の研削材料によって構成されていてもよい。
ただし、研磨布紙は可撓性を有するため、研削材として砥石等を用いる場合に比べて研削部分の深さの違いによる段差を軽減できる利点がある。また、砥石による研削は強制加工であるのに対し、研磨布紙による研削は圧力加工であるため、研磨布紙を用いた研削材の押付荷重等を制御することによって細かく研削量を制御でき、精密な研削量制御の際に研磨布紙と金属板10との厳密な位置制御が不要となる。
研削部22の研削材は、例えば図5に示すように、研磨布紙をディスク状にくりぬいた薄い研磨布紙ディスク51を、研削方向に対して垂直方向に複数枚積層した構成をすることができる。このような構成の研削材の両側をディスクホイール52で固定して、支持部53に回転可能に取り付け、研削部22を構成する。研削材を回転機構(図示せず)により回転させることにより金属板10を研削する。このようにすることにより、研削部22を小型かつ長寿命とすることができる。もちろん、研磨布紙をエンドレスベルト状にして研削部を構成してもよい。ただし、この場合は、上記構成よりも大型となり、また研削部の寿命も短くなる。
疵取り装置300は、目標ルートに沿って自律走行する機能と、金属板10の疵取りを行う機能の2つの機能を有する。
前者の機能については、例示した屋内位置測定システム200のような位置測定手段からの情報に基づいて、搭載コンピュータ18、駆動制御部19、車輪20、およびモータ21が担う。すなわち、前述のホストコンピュータ13における演算結果である疵取り装置300の位置情報および目標検査位置に関する情報は、それぞれ無線通信により搭載コンピュータ18に無線伝送され、搭載コンピュータ18において目標検査位置に対する現在位置の偏差を演算する。同偏差のうち疵取り装置300の位置に依存する偏差が0となるように、駆動制御部19から車輪用のモータ21に速度指令等の制御信号を出力して、車輪20の速度およびステアリング角度のフィードバック制御を行うことで目標走行ルートに沿った自律走行を行わせる。
後者の機能については、金属板10と接触させて疵取りを行う研削部22、研削部22を走査させる走査アクチュエータ15、研削部22を昇降させる昇降アクチュエータ16、搭載コンピュータ18、および駆動制御部19が担う。すなわち、搭載コンピュータ18においてホストコンピュータ13からの目標疵取り位置と現在台車位置情報より、研削部22を走査する走査アクチュエータ15の必要走査量を演算し、駆動制御部19はその必要走査量分だけ走査アクチュエータ15を走査させ、研削部22を初期位置に設定する。走査アクチュエータ15の位置情報は搭載コンピュータ18にフィードバックされ、台車現在位置情報と合わせて疵取り位置情報として演算される。疵取りデータはI/Oボード17を介して搭載コンピュータ18に取り込み、疵取り位置情報と合わせて、ホストコンピュータ13に無線送信する。
実際の疵取りの際には、疵取り装置300を停止させ、例えば電磁石からなる固定部42により疵取り装置300を金属板10に固定し、昇降アクチュエータ16を下降させて研削部22を金属板10に接触させる。そして、駆動制御部19による制御に基づいて、走査アクチュエータ15により研削部22を金属板10表面に沿った一軸方向に走査させることにより、金属板10表面の疵を研削除去する。このとき、駆動制御部19は、走査アクチュエータ15の走査速度(移動速度)、すなわち研削部22の移動速度を、研削開始位置と研削定常部とで変化させるように制御する。ここで、研削定常部とは、所定の研削深さで均一に研削することを目標とした部分をいう。このとき、研削開始位置から定常部までの間(研削開始部)の走査速度(移動速度)をV0とし、研削定常部での走査速度(移動速度)をV1としたときに、V0>V1となるように制御することが好ましい。また、V0/V1>1.1になるように制御することがより好ましい。
<疵取り動作>
次に、疵取り装置300における疵取り動作について説明する。
最初に、金属板10の位置および姿勢情報を取得し、金属板10の座標系を設定する。次いで、目標疵取り位置を含む目標疵取り範囲の教示(マッピング)を行う。この際には、適宜の手段により金属板10の疵を検出して金属板10上の疵の位置を認識するとともに、それに基づいて、疵取り範囲を設定する。
次に、目標疵取り経路を設定し、位置測定手段である屋内位置測定システム200からの情報に基づいて、疵取り装置300を、金属板10上の目標疵取り経路に沿って自走させ、疵取りを行う。
このとき、ホストコンピュータ13における演算結果である疵取り装置300の位置情報および目標検査位置に関する情報は、それぞれ位置測定手段である屋内位置測定システム200から無線通信により搭載コンピュータ18に無線伝送され、搭載コンピュータ18において目標検査位置に対する現在位置の偏差を演算する。その偏差に基づいて、疵取り装置300を所定の目標位置に自律走行させるように制御する。より具体的には、同偏差のうち疵取り装置300の位置に依存する偏差が0となるように、駆動制御部19から車輪用モータ21に速度指令等の制御信号を出力して、車輪20の正転・逆転・停止を指示するとともに、車輪20の速度、ステアリング角度のフィードバック制御を行うことで目標走行ルートに沿った自律走行を行う。
そして、目標疵取り位置近傍で、疵取り装置300を停止させ、例えば電磁石からなる固定部42により疵取り装置300を固定し、走査アクチュエータ15により研削部22を目標疵取り位置の初期位置に設定する。次いで、昇降アクチュエータ16を下降させて研削部22を金属板10に接触させる。この状態で、走査アクチュエータ15により研削部22を金属板10表面に平行な面に存在する任意の一軸方向に走査させることにより、金属板10表面の疵を研削除去する。
この際に、本実施形態では、駆動制御部19は、研削材の回転速度は変えずに、走査アクチュエータ15の走査速度(移動速度)、すなわち研削部22の移動速度を、研削開始位置と研削定常部とで変化させるように制御する。走査アクチュエータ15の走査速度により研削部22による研削深さを変化させることができるため、走査アクチュエータ15の走査速度を制御することにより研削深さを調整して研削部分の段差を生じ難くすることができる。これにより、研削後の品質を良好にすることができる。このとき、研削開始位置から定常部に達するまでの間(研削開始部)の走査速度(移動速度)をV0とし、研削定常部での走査速度(移動速度)をV1としたときに、V0>V1となるように制御することが好ましい。これにより、研削開始時の研削深さを小さくすることができ、研削部分(研削定常部)と非研削部分との間に段差ができることを抑制することができる。すなわち、非研削部分から研削部分(研削定常部)へと研削深さを滑らかに遷移させることができる。また、V0/V1>1.1になるように制御することがより好ましい。これにより、研削部分(研削定常部)と非研削部分との間の段差を抑制する効果がより高く、非研削部分から研削部分(研削定常部)へと研削深さを滑らかに遷移させる効果を一層高めることができる。なお、V0/V1の上限値は特に限定されないが、10.0>V0/V1程度であることが好ましい。
実際に、引張強度400Mpa級、板厚12mmの厚板鋼板の表面を本実施形態の疵取り装置300により研削した結果、図6、図7に示す結果が得られた。なお、このとき、研削部22には、研磨布紙を使用した研削材(研磨ホイール)を用いた。
図6は、研削部を一軸方向に走査させて研削した際の走査速度と研削深さの関係を示す図である。この図から、走査速度が速いほど研削深さが浅くなることが確認される。このことから、走査速度を研削開始部と研削定常部とで変化させるように制御することにより、研削深さを変化させて研削深さを調整できることが導かれる。
図7は研削開始部の走査速度V0と定常部の走査速度V1の比(V0/V1)と、研削開始部の研削深さと目標研削深さとの差との関係を示す図である。この図から、V0>V1のときに過研削が生じ難く好ましいことがわかる。また、V0/V1が1.1以下の条件にて過研削が生じやすくなっており、V0/V1が1.1超えの条件で目標研削深さ範囲に制御しやすいことが確認された。すなわち、V0>V1、さらにはV0/V1>1.1になるように制御することにより、過研削をより効果的に抑制して、研削部分の深さの違いによる段差を軽減する効果をより高くできることが確認された。
また、引張強度400Mpa級、板厚12mmの厚板鋼板の表面を、研削部22の研削材として研磨ディスク(砥石)を使用した他の実施形態の疵取り装置により実際に研削した結果、図8、図9に示す結果が得られた。
他の実施形態では、図示しないロボットアームによって研削部22を走査した。具体的には、厚板鋼板の形状に応じてロボットアームの動きを予めティーチングしておき、ロボットアームの手先に取り付けたアクチュエータで押付荷重を30N(一定)に保った。手先に取り付けるアクチュエータとして、空圧により一定の加圧力を保ちつつ、押付荷重に応じてストロークするものを選択することで、研削材として砥石を用いた場合、すなわち研磨布紙のように可撓性がない場合であっても、研磨布紙の場合と同様により細かく研削量を制御することができる。
図8は、研削部を一軸方向に走査させて研削した際の走査速度と研削深さの関係を示す図である。この図から、走査速度が速いほど研削深さが浅くなることが確認される。このことから、走査速度を研削開始部と研削定常部とで変化させるように制御することにより、研削深さを変化させて研削深さを調整できることが導かれる。
同様に図9は研削開始部の走査速度V0と定常部の走査速度V1の比(V0/V1)と、研削開始部の研削深さと目標研削深さとの差との関係を示す図である。この図から、V0>V1のときに過研削が生じ難く好ましいことがわかる。また、V0/V1が1.1以下の条件にて過研削が生じやすくなっており、V0/V1が1.1超えの条件で目標研削深さ範囲に制御しやすいことが確認された。すなわち、V0>V1、さらにはV0/V1>1.1になるように制御することにより、過研削をより効果的に抑制して、研削部分の深さの違いによる段差を軽減する効果をより高くできることが砥石においても確認された。
また、疵取り装置300は、位置測定手段からの情報に基づいて金属板10上を自走するものであるため、特許文献1、2のような装置全体を大型にする必要がなく小型化を実現することができ、特許文献3のような付随作業や、リニアスライド装置、軌道レール等の付帯装置、煩雑な作業が不要である。さらに、位置測定手段として屋内位置測定システム200を用いることにより、金属板のマーキングや画像処理用のマークを用いることなく、金属板上における疵取り装置300の位置および角度を高精度で認識することができ、かつ認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて疵取り装置300を所定の目標位置に自律走行させるので、目標走行ルートに対する直進性を確保することができる。
ここでは、引張強度400Mpa級、板厚12mmの厚板鋼板の表面を上記図1に示すシステムを用いて研削した。疵取り装置の構成については、図2~4に示すものを用いた。研削部としては、研磨布紙を使用した研削材(研磨ホイール)を用いた。研削にあたり、走査アクチュエータの研削開始位置から定常部に達するまでの間(研削開始部)の走査速度V0と、研削定常部の走査速度V1を種々変化させ、研削開始部の研削深さと目標研削深さとの差を求め、この差が0.05mm以下のものを合格として合否判定を行った。その結果を表1に示す。表1に示すように、V0>V1のものについては、合格と判定されたが、V0≦V1のものについては、不合格と判定された。
Figure 0007342916000001
<他の適用>
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、疵取り装置自身の位置を測定する位置測定手段として、IPGSを適用した例について示したが、これに限らず、IPGSと同じ三角測量の原理に基づいたものとして、例えば、上記実施形態とは逆に、疵取り装置側に航法用送信機を搭載するものを用いることができる。このような例として、オフィスビル内を自律走行する清掃ロボットに搭載されたレーザ三角測量技術が挙げられる(例えば、http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/25subaru.html参照)。具体的には、疵取り装置の本体に設置された航法用送信機と、屋内に設置された複数のリフレクタと、位置演算用ソフトウェアを含むホストコンピュータとから構成される屋内位置測定システムを挙げることができる。
また、位置測定手段としては、以上のような三角測量の原理に基づいて屋内空間での自己位置測定を行う屋内位置測定システム以外に、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の他の測定手段を用いることもできる。
さらに、疵取り装置の制御系を構成するコンピュータとして、自身に搭載されている搭載コンピュータと、位置測定手段との連携制御を行うためのホストコンピュータを用いた例を示したが、搭載コンピュータのみを用いてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、走査アクチュエータが研削部を金属板の表面に沿った一軸方向に走査させる例を示したが、金属板の表面に沿った任意の方向に走査できれば一軸方向に限定されず、二軸方向に走査可能な構成であってもよい。二軸以上の場合は、各軸において走査速度の要件を満たせばよい。
また、上記実施形態では、研削開始位置と研削定常部とで、研削材の回転速度を変えずに、走査アクチュエータの走査速度(すなわち研削部22の移動速度)を変化させる構成とした。しかし、研削開始位置と研削定常部とで、走査アクチュエータの走査速度(すなわち研削部22の移動速度)を変えずに研削材の回転速度を変える構成としてもよい。この場合にも、走査アクチュエータの走査速度を変える場合と同様に、研削開始位置と研削定常部とで研削部22による研削深さを変化させることができるため、研削深さを調整して研削部分の段差を生じ難くすることが可能である。さらに、上記構成に代えて、研削開始位置と研削定常部とで、走査アクチュエータの走査速度と研削材の回転速度とをそれぞれ変化させて研削部22による研削深さを変化させる構成としてもよい。すなわち、走査アクチュエータの走査速度および研削材の回転速度の少なくとも一方を、研削開始位置と研削定常部で変化させるように制御すればよい。
さらにまた、金属板の例として鋼板を挙げたが、これに限らず、金属板であれば適用可能である。
10 金属板
11 航法用送信機
12 航法用受信機
13 ホストコンピュータ
14 台車
15 走査アクチュエータ
16 昇降アクチュエータ
17 I/Oボード
18 搭載コンピュータ
19 駆動制御部
20 車輪
21 モータ
22 研削部
31 現在位置演算用ソフトウェア
32 設定・評価ソフトウェア
100 全体システム
200 屋内位置測定システム
300 自走式疵取り装置

Claims (10)

  1. 位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走し、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り装置であって、
    車輪を有し、金属板上を走行する台車と、
    前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、
    前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータと、
    前記走査アクチュエータの走査を制御する制御部と、
    を有し、
    前記制御部は、前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記研削材の回転速度を変えずに、前記走査アクチュエータの研削開始位置から研削定常部に達するまでの間の走査速度を一定速度であるV0とし、前記研削定常部の走査速度をV1とした場合に、V0>V1となるように前記走査アクチュエータの走査速度を制御することを特徴とする自走式疵取り装置。
  2. 前記制御部は、前記V0と前記V1が、V0/V1>1.1を満たすように、前記走査アクチュエータの走査速度を制御することを特徴とする請求項1に記載の自走式疵取り装置。
  3. 位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走し、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り装置であって、
    車輪を有し、金属板上を走行する台車と、
    前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、
    前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータと、
    前記走査アクチュエータの走査を制御する制御部と、
    を有し、
    前記制御部は、前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度を変えずに、前記研削材の回転速度を、研削定常部の回転速度のほうが一定速度である研削開始位置から前記研削定常部に達するまでの間の回転速度よりも大きくなるように制御することを特徴とする自走式疵取り装置。
  4. 前記研削材は、研磨布紙を研削方向に対して垂直方向に複数枚積層して構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自走式疵取り装置。
  5. 位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り方法であって、
    前記自走式疵取り装置として、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有するものを準備することと、
    前記自走式疵取り装置の前記研削部により前記金属板の表面を研削することと、を有し、
    前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記研削材の回転速度を変えずに、前記走査アクチュエータの研削開始位置から研削定常部に達するまでの間の走査速度を一定速度であるV0とし、前記研削定常部の走査速度をV1とした場合に、前記走査アクチュエータの走査速度をV0>V1となるようにすることを特徴とする自走式疵取り方法。
  6. 前記走査アクチュエータの走査速度を、前記V0と前記V1が、V0/V1>1.1を満たすようにすることを特徴とする請求項5に記載の自走式疵取り方法。
  7. 位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、金属板表面に存在する疵を研削除去する自走式疵取り方法であって、
    前記自走式疵取り装置として、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有するものを準備することと、
    前記自走式疵取り装置の前記研削部により前記金属板の表面を研削することと、を有し、
    前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度を変えずに、前記研削材の回転速度を、研削定常部の回転速度のほうが一定速度である研削開始位置から前記研削定常部に達するまでの間の回転速度よりも大きくなるようにすることを特徴とする自走式疵取り方法。
  8. 前記研削材として、研磨布紙を研削方向に対して垂直方向に複数枚積層して構成されたものを用いることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の自走式疵取り方法。
  9. 表面に疵が存在する金属板に対して、位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、該疵の研削除去を行って金属板を製造する金属板の製造方法であって、
    前記自走式疵取り装置として、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有するものを準備することと、
    前記自走式疵取り装置の前記研削部により前記金属板の表面を研削することと、を有し、
    前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記研削材の回転速度を変えずに、前記走査アクチュエータの研削開始位置から研削定常部に達するまでの間の走査速度をV0とし、前記研削定常部の走査速度をV1とした場合に、前記走査アクチュエータの走査速度をV0>V1となるようにすることを特徴とする金属板の製造方法。
  10. 表面に疵が存在する金属板に対して、位置測定手段からの位置情報に基づいて金属板上を自走する自走式疵取り装置により、該疵の研削除去を行って金属板を製造する金属板の製造方法であって、
    前記自走式疵取り装置として、金属板上を走行する台車と、前記台車に搭載され、回転する研削材を前記金属板に接触させて研削する研削部と、前記研削部を前記金属板の表面に沿った方向に走査させる走査アクチュエータとを有するものを準備することと、
    前記自走式疵取り装置の前記研削部により前記金属板の表面を研削することと、を有し、
    前記研削部により前記金属板の表面を研削する際に、前記走査アクチュエータの走査速度を変えずに、前記研削材の回転速度を、研削定常部の回転速度のほうが一定速度である研削開始位置から前記研削定常部に達するまでの間の回転速度よりも大きくなるようにすることを特徴とする金属板の製造方法。
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