以下、ノズル補修装置を具体化した実施形態について図面を用いて説明する。ノズル補修装置は、部品装着機で用いられるノズルを補修する装置である。ノズル補修装置は、ノズルを洗浄するノズル洗浄装置、ノズルを検査する検査装置、及びノズルを管理するノズル管理装置などに適用される。
1.部品装着機
部品装着機10は、フィーダにより供給された部品2をノズル90に保持させて基板3に装着する装置である。部品装着機10は、図1に示す如く、基板搬送部11と、部品供給部12と、部品移載部13と、ノズルステーション14と、部品カメラ15と、を備えている。
基板搬送部11は、基板3を搬送する部位であって、例えばベルトコンベアである。部品供給部12は、基板3に装着される部品2を部品供給位置に供給する部位である。部品供給部12は、部品2を収容するキャリアテープを送るフィーダを有している。部品移載部13は、部品供給位置に供給された部品2を基板3に移載する部位である。
部品移載部13は、ノズル90が着脱可能に装着保持される装着ヘッド13aを有している。装着ヘッド13aは、任意の位置に移動可能である。装着ヘッド13aは、部品供給位置に供給された部品2をノズル90に保持させ、その後、その部品2を基板搬送部11で所定装着位置に位置決めされている基板まで移動させて、ノズル90による部品2の保持を解除してその部品2を基板3に装着させる。
ノズル90は、部品2を保持する部材である。具体的には、ノズル90は、負圧により部品2を吸着して保持する。ノズル90は、装着ヘッド13aに着脱可能であり、部品2の種別などに応じて複数種類用意されている。装着ヘッド13aに装着保持されるノズル90は、対象の部品2の種別などに応じて適宜交換される。ノズル90は、装着ヘッド13aに装着保持されないときは、ノズルステーション14に保持される。ノズル90は、図2に示す如く、胴体軸部91と、保持軸部92と、フランジ部93と、把持部94と、を有している。
胴体軸部91は、装着ヘッド13aに装着保持される本体部として機能する部位である。胴体軸部91は、円筒状に形成されている。胴体軸部91には、保持軸部92の軸先端に負圧を導くための管路が形成されている。尚、胴体軸部91の外径及び内径はそれぞれ、ノズル90の種別などに応じて異なっていてよい。また、胴体軸部91は、軸方向位置に応じて外径が変化する段差を有するものであってよい。
保持軸部92は、軸先端で部品に接触してその部品を保持する部位である。保持軸部92は、胴体軸部91から同軸上で軸先端側に延伸しており、円管状に形成されている。保持軸部92の外径は、胴体軸部91の外径に比して小さい。保持軸部92は、胴体軸部91に対して軸方向に進退可能に構成されている。保持軸部92は、図示しない弾性部材により胴体軸部91から進出する軸先端側に付勢されている。保持軸部92は、先端部に胴体軸部91側への荷重を加えられた場合に、上記の弾性部材による弾性力に抗して胴体軸部91の内部に後退する。尚、保持軸部92の外径及び内径はそれぞれ、ノズル90の種別などに応じて異なっていてよい。
フランジ部93は、装着ヘッド13aに接した状態で載置される部位である。フランジ部93は、保持軸部92の軸根元側に配置されており、具体的には、胴体軸部91の軸先端部に取り付けられている。フランジ部93は、円盤状に形成されており、保持軸部92の外形よりも大きな外形を有するように形成されている。フランジ部93の外径は、保持軸部92の外径よりも大きくかつ胴体軸部91の外径以上である。フランジ部93の外周縁の一部には、径方向内側(すなわち、ノズル90の胴体軸部91側に凹んだノッチ93aが形成されている。ノッチ93aは、ノズル90が載置される際の回転規制に用いられる。尚、フランジ部93の外径は、ノズル90の種別などに応じて異なっていてよい。また、フランジ部93の内径は、胴体軸部91の外径に合わせて設定されている。
把持部94は、ノズル90の移載時などにノズル移載装置にノズル90を把持させるための部位である。把持部94は、胴体軸部91から軸方向に直交する径方向に棒状に延びている。把持部94は、胴体軸部91を挟んで一対設けられている。
ノズル90には、2Dコード(図示せず)が付されている。尚、この2Dコードが付される箇所は、ノズル90のフランジ部93の上方に向いたフランジ面(フランジ上面)であってよい。この2Dコードには、ノズル90の種別などを含む固有識別情報が含まれる。
ノズルステーション14は、装着ヘッド13aに装着保持されないノズル90を保管する保管装置である。ノズルステーション14は、図3に示す如く、直方体をなすように形成されている。ノズルステーション14は、部品装着機10の基台に着脱可能に設置される。ノズルステーション14は、複数の保持部14aを有している。複数の保持部14aは、一つずつノズル90を保持することが可能である。保持部14aは、整列して並んで配置されている。保持部14aは、ノズル90を、胴体軸部91が上部に位置しかつ保持軸部92が下部に位置する姿勢でフランジ部93の下方に向いたフランジ面(以下、フランジ下面と称す。)93bが接触した状態で保持する。
具体的には、ノズルステーション14は、図4に示す如く、ベースプレート14bと、カバープレート14cと、を有している。ベースプレート14bは、ノズル90を保持する部材である。ベースプレート14bは、保持部14aとして、ノズル90が貫く略円形の保持穴14b1を有している。保持穴14b1は、複数設けられている。各保持穴14b1は、段付き穴である。ベースプレート14bは、ノズル90のフランジ部93が載置される載置面14b2を有している。載置面14b2には、ノッチ93aに係合するピン(図示せず)が設けられている。ノズル90は、フランジ部93が載置面14b2に載置された状態でノッチ93aへのピン係合により回転規制される。
カバープレート14cは、ベースプレート14bの上面を覆う部材である。カバープレート14cは、ベースプレート14bに対して所定方向Aに所定量だけ摺動可能である。カバープレート14cは、保持部14aとして、ノズル90が貫く円形の抜け穴14c1と、抜け穴14c1に連通するスロット穴14c2と、を有している。抜け穴14c1は、保持穴14b1の径と略同じ径を有している。スロット穴14c2は、抜け穴14c1の外周一部に径方向外方に向けて突出するように設けられている。スロット穴14c2の大きさは、ノズル90の胴体軸部91の外径よりも僅かに大きくなるように形成されている。
カバープレート14cは、ベースプレート14bに対して、保持穴14b1の中心と抜け穴14c1の中心とが一致する状態と、保持穴14b1の中心上方にスロット部36が位置して保持穴14b1の一部が塞がれる状態との間で摺動することが可能である。カバープレート14cは、保持穴14b1の一部を閉塞する方向に付勢されており、ノズル90が載置面14b2に載置されている場合にそのノズル90が外部に飛び出さないように拘束する。カバープレート14cは、付勢力に抗した所定操作によりベースプレート14bに対して摺動する。そして、保持穴14b1の中心と抜け穴14c1の中心とが一致した状態では、ノズル90の着脱が可能である。
ノズルステーション14には、2Dコード14dが付される。2Dコード14dが付される箇所は、ノズルステーション14の上面の所定箇所である。2Dコード14dには、ノズルステーション14の種別などを含む固有識別情報が含まれる。
部品カメラ15は、部品2を撮像対象とするカメラである。部品カメラ15は、部品装着機10の本体下部に配置されている。部品カメラ15は、ノズル90に保持されている部品2を下方から撮像する。部品カメラ15は、部品供給部12により部品2が供給される部品供給位置から基板搬送部11により基板3が位置決めされる所定装着位置まで部品2が移動される過程で、その部品2を撮像する。
部品カメラ15は、撮像時においてノズル90の保持軸部92の軸中心を通りその軸中心に沿うように上方へ指向されている。部品カメラ15によるカメラ画像上には、ノズル90のフランジ部93を背景として、ノズル90に保持されている部品2が含まれる。カメラ画像は、エッジ処理された後、フランジ部93に対する部品2の位置検出に用いられる。この検出された部品2の位置情報は、ノズル90に保持された部品2の基板3への装着時におけるそのノズル90の位置制御や姿勢制御に用いられる。
ノズル90のフランジ部93(特に、その下方に向いたフランジ下面93b)には、インクで塗装が施されている。この塗装は、部品カメラ15によるカメラ画像上で部品2とフランジ部93とのエッジが際立つように例えば黒色のインクで行われる。
2.ノズル管理装置
ノズル管理装置20は、ノズル90を管理する装置である。具体的には、ノズル管理装置20は、ノズル90がノズルステーション14に保管された状態でそのノズル90を対象として洗浄、検査、及び保管などを行う。ノズル管理装置20は、部品装着機10の外部に設置されている。ノズル管理装置20は、図5に示す如く、洗浄ユニット21と、検査ユニット22と、補修ユニット60と、ノズルストッカ24と、排出ボックス25と、ノズル移載装置30と、ノズルステーション設置部40と、制御装置50と、を備えている。
洗浄ユニット21は、ノズル90を洗浄するユニットである。具体的には、洗浄ユニット21は、ノズル移載装置30により洗浄用のパレットに移載されたノズル90の内部に高圧の水を流通させると共に、そのノズル90の外面に高圧の水を噴射して洗浄する。また、洗浄ユニット21は、洗浄されたノズル90に温風を吹き付けて、ノズル90を乾燥させる。尚、ノズル90は、所定の洗浄液に浸漬された状態で所定周波数の超音波により外部に付着する汚れが除去されるものであってもよい。
検査ユニット22は、ノズル90の状態を検査するユニットである。検査ユニット22は、洗浄ユニット21によりノズル90が洗浄された後にそのノズル90の状態を検査する。この検査対象の状態には、保持軸部92への異物付着の有無や保持軸部92の欠けの有無などの先端状態、保持軸部92が胴体軸部91の内部へ後退する際の摺動抵抗などの摺動状態、ノズル90の内部を流通可能な流量の流通状態、フランジ部93のフランジ下面93bの塗装状態、及びノズル90の2Dコードの状態などが含まれる。
検査ユニット22は、検査カメラ22aを有している。検査カメラ22aは、ノズル90及び2Dコードを撮像対象とするカメラである。特に、検査カメラ22aは、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bを撮像することが可能である。尚、検査カメラ22aは、上記の部品カメラ15と同等の性能を有するものであってよい。
ノズル90の先端状態は、検査カメラ22aの撮像画像上に映る外観により検査される。ノズル90の摺動状態は、ロードセル(図示せず)を用いた測定などにより検査される。ノズル90の流通状態は、洗浄後のノズル90に規定圧力で供給される流体の流量測定により検査される。ノズル90の塗装状態は、検査カメラ22aの撮像画像の明るさにより検査される。ノズル90の2Dコードの状態は、検査カメラ22aの撮像画像を用いたコード読み取りにより検査される。
補修ユニット60は、ノズル90の外面を補修するノズル補修装置である。具体的には、補修ユニット60は、検査ユニット22による検査結果としてフランジ部93のフランジ下面93bの塗装が剥がれている場合に、そのフランジ下面93bをインクで塗装することによりそのフランジ下面93bを補修する。尚、この塗装されるインクの色は、部品カメラ15が部品2を撮像した場合にそのカメラ画像からその部品2とフランジ部93のフランジ下面93bとのエッジが検出し易くなる色であればよく、例えば黒色が好適である。補修ユニット60は、図8に示す如く、載置部61と、塗装部62と、を有している。
載置部61は、ノズル90を載置する台座である。載置部61は、ノズル管理装置20の基台に設置されている。載置部61は、ノズル90のフランジ部93をその重力に抗して支持することが可能である。載置部61は、図9に示す如く、ノズル90の軸中心C回りに複数(例えば3つ)に分離したブロック状に形成されている。以下、これら複数のブロック状の部材を載置片部61aと称す。
複数の載置片部61aは、載置されるノズル90の軸中心C回りに配置されている。載置部61は、後述の駆動部により、ノズル管理装置20の基台に対して移動することが可能である。具体的には、複数の載置片部61aは、互いに同期しつつ上記の軸中心Cを中心にして径方向に移動して拡径及び縮径することが可能である。
載置部61は、中空穴61bを有している。中空穴61bは、ノズル90のフランジ部93が載置部61に載置された際に、そのノズル90におけるフランジ部93よりも下方側の胴体軸部91及び保持軸部92をその載置部61に接触させないために空いた穴である。中空穴61bは、軸中心Cに設けられている。中空穴61bは、ノズル90の胴体軸部91の外径よりも大きな径を有するように形成されている。中空穴61bの径は、載置片部61aの移動に伴って可変される。
塗装部62は、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bをインクで塗装する部位である。塗装するインクは、例えば黒色の顔料や染料である。塗装部62は、インクが吸着されたスタンプ台62aを有している。スタンプ台62aは、例えばフェルト状に形成されてインクが吸着されたパッドを含んでいる。スタンプ台62aは、載置部61の上面に露出するように設けられている。
スタンプ台62aは、載置部61に合わせてノズル90の軸中心C回りに複数に分離したスタンプ片部62a1を有している。スタンプ片部62a1は、ノズル90のフランジ部93が載置部61に載置される際にそのフランジ部93のフランジ下面93bが接することができるように載置片部61aの上面に取り付けられている。スタンプ片部62a1は、図10及び図11に示す如く、載置片部61aの径方向への移動に伴って一体で、軸中心Cを中心にして径方向に移動して拡径及び縮径することが可能である。
スタンプ台62aは、中空穴62a2を有している。中空穴62a2は、載置部61の中空穴61bに対応させて設けられている。中空穴62a2は、ノズル90のフランジ部93がスタンプ台62aに接する際に、そのノズル90におけるフランジ部93よりも下方側の胴体軸部91及び保持軸部92をそのスタンプ台62aに接触させないために空いた貫通穴である。中空穴62a2は、軸中心Cに設けられている。中空穴62a2は、ノズル90の胴体軸部91の外径よりも大きな径を有するように形成されている。中空穴62a2の径は、スタンプ片部62a1の移動に伴って可変される。
尚、スタンプ台62aは、パッドに吸着されたインクがノズル90への塗装時においてのみそのノズル90に接することが可能となるように、そのパッドを覆う開閉可能なカバー部材を有するものとしてもよい。
ノズルストッカ24は、ノズル90を保管する装置である。ノズルストッカ24は、ノズル90を載置可能な保管用パレットを有している。ノズルストッカ24は、保管用パレットを移動可能に保持しており、要求に応じてノズル移載装置30が取り出し可能な位置に保管用パレットを移動させる。ノズルストッカ24は、保管用パレットに移載されたノズル90をノズル移載装置30により収納及び取り出し可能に保管する。
排出ボックス25は、検査ユニット22による検査結果として不良と判定されたノズル90のうち補修処理の対象とならないものを溜め置きするボックスである。排出ボックス25は、ノズル管理装置20に対して取り外し可能に設置されている。
ノズル移載装置30は、ノズル90を、洗浄ユニット21と検査ユニット22と補修ユニット60とノズルストッカ24と排出ボックス25とノズルステーション設置部40との間で移載する装置である。ノズル移載装置30は、ノズル90を移載させる移載ヘッド31を有している。移載ヘッド31は、三次元で任意の位置に移動可能である。移載ヘッド31には、保持チャック(図示せず)が回転可能に設けられている。この保持チャックは、ノズル90を一つずつ把持して保持する。移載ヘッド31には、ノズル90などに付された各種の2Dコードを撮像可能なカメラが一体的に設けられている。
ノズルステーション設置部40は、部品装着機10に設置されていないノズルステーション14をノズル管理装置20内に保管する部位である。
制御装置50は、主としてCPUや各種メモリ,制御回路により構成されるコントローラである。尚、制御装置50は、外部装置であるホストコンピュータと通信可能に接続され、各種の情報を共有する構成としてもよい。制御装置50は、図5に示す如く、判定部51と、駆動部52と、を有している。
判定部51は、検査ユニット22による検査結果に基づいて、ノズル90に対する補修処理の要否を判定する部位である。この補修処理とは、例えば検査ユニット22による検査により不良と判定されたノズル90を再利用可能な状態にして検査ユニット22に再検査させる状態にする処理である。この補修処理には、特に、ノズル90のフランジ部93の外面(特に、フランジ下面93b)の塗装が剥がれている場合に、補修ユニット60でその外面を塗装する塗装処理が含まれる。駆動部52は、補修ユニット60を塗装処理のために駆動する部位である。
3.ノズル管理装置によるメンテナンス制御
ノズル管理装置20によるノズル90のメンテナンス制御について説明する。
部品装着機10で使用されたノズル90は、ノズルステーション14に保持された状態でノズル管理装置20に搬入される。ノズル管理装置20に搬入されたノズル90は、メンテナンスとしては、洗浄され検査されると共に、保管される。
ノズル管理装置20の制御装置50は、ノズルメンテナンスが開始されると、まず、ノズルステーション設置部40に設置されているノズルステーション14に付された2Dコード14dを読み取る準備処理を実行する(図7に示すステップS11)。
次に、制御装置50は、洗浄ユニット21による洗浄処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御装置50は、ノズル移載装置30を用いて、ノズルステーション14から洗浄用のパレットに全てのノズル90を移載させる。その後、洗浄ユニット21を稼働させて、ノズル90を洗浄させると共に乾燥させる。
続いて、制御装置50は、ノズル移載装置30を用いて、洗浄用のパレットから一のノズル90を把持させる(ステップS13)。そして、制御装置50は、ノズル移載装置30に把持されたノズル90を対象として、検査ユニット22による検査処理を実行する(ステップS14)。検査ユニット22は、予め設定された規定の検査を行う。具体的には、検査ユニット22は、先端検査、摺動検査、流量検査、塗装検査、及び2Dコード読み取り検査などを順次行う。
検査ユニット22は、特に、検査カメラ22aにより撮像されたカメラ画像が基準よりも明るい画像であるか否かを判別してノズル90のフランジ下面93bの塗装を検査する塗装検査を行う。尚、このカメラ画像における基準は、部品カメラ15によるカメラ画像上での部品2とフランジ部93のフランジ下面93bとのエッジ検出を適切に行うことが可能な値に閾値設定されたものである。この基準よりも明るいカメラ画像では、上記のエッジが不鮮明になり、この基準よりも暗いカメラ画像では上記のエッジが鮮明になる。
ノズル90のフランジ部93の外面の特に下方に向いたフランジ下面93bは、図6に示す如く、部品装着機10の部品カメラ15によるカメラ画像上で背景になる。一方、このフランジ下面93bは、ノズルステーション14でのノズル90の保管時にそのノズルステーション14の保持部14aの載置面14b2に載置される。このため、ノズル90のフランジ部93が経年劣化や上記の載置面14b2との摺動などによりそのフランジ下面93bで塗装剥がれを起こすなどの損傷が生じることがある。かかる損傷が生ずると、部品カメラ15によるカメラ画像上での部品2とフランジ部93のフランジ下面93bとのエッジを誤検出し易くなるおそれがある。
制御装置50の判定部51は、検査ユニット22による検査結果を取得し、そのノズル90が不良であるか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、判定部51は、上記複数の検査のうち何れの検査結果も適正である場合、そのノズル90が不良でないと判定する。この場合、制御装置50は、ノズル移載装置30により把持されているノズル90をノズルストッカ24の保管用パレットの特定位置に移載する(ステップS16)。
一方、判定部51は、上記複数の検査のうち一以上の検査結果が適正でない場合、そのノズル90が不良であると判定する。この場合、判定部51は、そのノズル90に対する規定の補修処理の要否を判定する(ステップS17,S18)。例えば、塗装検査でカメラ画像が基準よりも明るいと判定された場合は、そのノズル90に塗装剥がれの異常が生じているとして、補修ユニット60によるフランジ部93へのインクの塗装処理が補修処理として必要となる。
制御装置50は、判定部51によりノズル90の塗装剥がれ異常によって塗装処理が必要であると判定された場合(ステップS17の肯定判定時)、ノズル移載装置30を用いて、補修ユニット60にノズル90を移載させる(ステップS19)。具体的には、補修ユニット60のスタンプ台62aにフランジ部93のフランジ下面93bが載置されるようにノズル90を移載させる。
制御装置50は、まず、補修ユニット60へのノズル90の移載が完了する前に、駆動部52に塗装処理のための駆動を実行させる。具体的には、駆動部52を、そのノズル90の種別(詳細には、胴体軸部91の外径)に応じて補修ユニット60の載置部61の各載置片部61aが移動するように駆動させる。この駆動部52の駆動は、移載対象のノズル90の種別に対応する胴体軸部91及び保持軸部92が塗装部62のスタンプ台62aの中空穴62a2を貫いて載置部61の中空穴61b内に収まることで載置部61及び塗装部62に接触しないように、具体的には、胴体軸部91及び保持軸部92の外径が大きいほど載置片部61aが軸中心Cを中心にして径方向外側へ移動するように行われる。
載置片部61aが軸中心Cを中心にして径方向へ移動すると、各載置片部61aに取り付けられたスタンプ片部62a1が連動して径方向へ移動して、載置部61の中空穴61bの径及びスタンプ台62aの中空穴62a2の径が拡縮する。そしてその後、制御装置50は、ノズル移載装置30を用いて、ノズル90のフランジ部93がスタンプ台62aに接した状態で載置部61に載置されるようにそのノズル90を移載させて、そのフランジ部93のフランジ下面93bを黒色のインクで塗装する。尚、このインク塗装は、ノズル90がノズル移載装置30に把持された状態のまま行われてよい。
尚、この補修ユニット60へのノズル90の移載は、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bがスタンプ台62aに接した後、ノズル移載装置30によるノズル90の把持が解除されることにより、ノズル90の自重でそのフランジ下面93bとスタンプ台62aとを密接させて、そのフランジ下面93bにスタンプ台62aのインクを付着させるものであってもよい。
又は、その移載手法に代えて、上記の補修ユニット60へのノズル90の移載は、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bがスタンプ台62aに接した後、ノズル移載装置30の移載ヘッド31が更に下降して或いは下降と上昇とを繰り返してそのノズル90をスタンプ台62aに押し付けることにより、そのフランジ下面93bとスタンプ台62aとを密接させて、そのフランジ下面93bにスタンプ台62aのインクを付着させるものであってもよい。この移載手法によれば、ノズル90へのインクの付着の確実性が向上する。
更に、上記の補修ユニット60へのノズル90の移載は、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bがスタンプ台62aに接した後、その接した状態で移載ヘッド31に対して保持チャックが回転することにより、そのフランジ下面93bの周方向全域を万遍なくスタンプ台62aに摺接させて、そのフランジ下面93bにスタンプ台62aのインクを付着させるものであってもよい。
制御装置50は、ノズル90へのインク塗装が完了すると、そのノズル90を対象として、再度、検査ユニット22による検査処理を実行させる。そして、以後、上記と同様のステップ処理を実行させる。
一方、制御装置50は、判定部51により補修ユニット60による塗装処理が不要であると判定される一方で他の補修処理が必要であると判定された場合(ステップS17の否定判定かつステップS18の肯定判定時)は、ノズル移載装置30を用いて、その補修処理を実行する箇所へそのノズル90を移載させる(ステップS20)。また、制御装置50は、判定部51により補修ユニット60による塗装処理が不要であると判定されると共に他の補修処理も不要であると判定された場合(ステップS17の否定判定かつステップS18の否定判定時)は、そのノズル90を排出ボックス25へ移載させる(ステップS21)。
続いて、制御装置50は、上記の如くノズル90を移載させた後、そのノズル90の管理処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御装置50は、そのノズル90の固有識別情報と移載後の位置と検査結果などとを関連付けて、収容ノズルの情報更新を行う。
制御装置50は、洗浄用のパレットに保持されていた全てのノズル90について、検査処理(ステップS14)が行われたか否かを判定する(ステップS23)。制御装置50は、それら全てのノズル90について検査処理及び移載処理がなされるように、上記のステップ処理を繰り返す。これにより、ノズル90は、洗浄処理を経て正常と判定されると、保管用のパレットに収集され、ノズルストッカ24に収納される。
また、ノズル90は、塗装剥がれの不良と判定され且つ補修処理として塗装処理が必要であると判定されると、補修ユニット60において外面(特に、フランジ部93の下方に向いたフランジ下面93b)がインクで塗装されるように塗装処理される。このとき、そのノズル90について管理処理(ステップS22)が実行されているため、例えば、作業者は、パレットに収集されたノズル90と検査結果とを照合して、ノズル90を目視確認することができる。また、検査結果に加えて、検査処理(ステップS14)にて用いられたカメラ画像などを併せて表示して、作業者に対して補修処理の必要性の確認を促すことができる。
尚、ノズル90は、塗装処理を含む補修処理が実行された後、再度、洗浄を経て或いは洗浄を経ることなく再利用可能か否かの再検査が行われるものであってよい。そして、何れの検査でも適正であり不良でないと判定されると、そのノズル90は、再利用可能として、保管用のパレットに移載される。一方、再検査でも不良と判定されると、そのノズル90は、排出ボックス25に移載される。
4.ノズル管理装置による効果
ノズル管理装置20は、ノズル90の洗浄後の塗装検査の結果、検査カメラ22aによるカメラ画像が基準よりも明るいことでノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bに塗装剥がれが生じていると判定される場合、補修ユニット60を用いてそのフランジ下面93bをインクで塗装する。このフランジ下面93bは、部品装着機10で使われる部品カメラ15によるカメラ画像上で部品2の背景となる外面である。そして、塗装されるインクの色は、その部品カメラ15によるカメラ画像から部品2とフランジ部93のフランジ下面93bとのエッジが検出し易くなる例えば黒色である。
このため、上記の如くノズル90のフランジ部93へのインク塗装が行われると、部品装着機10で使われる部品カメラ15によるカメラ画像上で部品2とそのフランジ部93のフランジ下面93bとのエッジが付き易くなる。従って、部品カメラ15によるカメラ画像上における部品2とノズル90のフランジ部93とのエッジ誤検出を防止することができる。このようにエッジ誤検出が防止されれば、部品カメラ15によるカメラ画像に基づくノズル90に対する部品2の保持位置や保持姿勢などの検出が精度よく行われる。このため、部品2が部品供給部12の部品供給位置から基板3に移載され装着される際にその部品2の姿勢制御を適切に行うことができ、基板3への部品2の装着を適切に行うことができる。
また、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装は、ノズル管理装置20によるメンテナンス制御により自動的に行われる。このため、作業者がノズル90に対してインク塗装作業を行うことは不要であり、作業者の作業負担を軽減することが可能である。
また、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装は、検査ユニット22による塗装検査の結果、検査カメラ22aによるカメラ画像が基準よりも明るい画像であることが判定された場合に行われる。このため、メンテナンス処理されるノズル90の全数に対して塗装処理を行うことは不要であり、塗装処理が過度に頻発するのを抑えることが可能である。
また、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装は、そのノズル90の種別に応じて具体的にはそのノズル90の胴体軸部91の外径に応じて載置部61の中空穴61b及びスタンプ台62aの中空穴62a2の径が可変された状態で行われる。この径の可変は、ノズル90の胴体軸部91及び保持軸部92の外径が大きいほど大きくなる。このため、一つの補修ユニット60で様々な種類のノズル90に対応させて、ノズル90の姿勢をフランジ部93をインクで塗装できる姿勢としつつフランジ部93をインクで塗装する塗装処理を行うことができるので、ノズル90の種類ごとに補修ユニット60を設けることは不要であり、補修ユニット60の効率的な運用を図ることができる。
更に、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装は、洗浄ユニット21によりそのノズル90の洗浄が行われた後に行われる。この構成によれば、ノズル90の外面に汚れが付着した状態で塗装処理が行われるのを回避することができ、ノズル90に付着した汚れの上に塗装が実施されることはない。このため、インク塗装後のノズル90の外面に凹凸が形成されることに起因してカメラ画像上での部品2の背景が不適正なものとなることやそのノズル90による部品2の適正保持ができなくなることを防止することができる。
ところで、上記の実施形態においては、補修ユニット60が特許請求の範囲に記載した「ノズル補修装置」に相当している。補修ユニット60の載置部61が特許請求の範囲に記載した「載置部」に相当している。補修ユニット60の塗装部62が特許請求の範囲に記載した「補修部」及び「塗装部」に相当している。検査ユニット22の検査カメラ22aが特許請求の範囲に記載した「撮像部」に相当している。検査ユニット22が検査カメラ22aを用いて塗装検査を行うことが特許請求の範囲に記載した「画像判別部」に相当している。胴体軸部91及び保持軸部92が特許請求の範囲に記載した「軸部」に相当している。洗浄ユニット21が特許請求の範囲に記載した「洗浄部」に相当している。
5.変形形態
尚、上記の実施形態においては、塗装部62のスタンプ台62aが、軸中心C回りに二以上に分離したスタンプ片部62a1を有し、スタンプ台62aの中空穴62a2の径すなわち各スタンプ片部62a1の内径が、ノズル90の胴体軸部91及び保持軸部92の外形の大きさ(すなわち、その外径)に応じて可変される。この構成によれば、軸部91,92の外径が異なる様々な種類のノズル90を補修ユニット60の載置部61に載置して塗装処理を行うことができる。
しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、各スタンプ片部62a1の外径が、ノズル90のフランジ部93の外形の大きさ(すなわち、その外径)に応じて可変されるものであってもよい。この変形形態の構成によれば、フランジ部93の外径が異なる様々な種類のノズル90を補修ユニット60の載置部61に載置して塗装処理を行うことができる。
また、上記の実施形態においては、スタンプ台62aが周方向に三分割され、スタンプ片部62a1が三つ設けられている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、スタンプ台62aが二つや四つ以上に分割され、スタンプ片部62a1が二つや四つ以上設けられるものであってもよい。
また、上記の実施形態においては、部品装着機10の部品カメラ15がその部品装着機10の本体下部に配置されて、ノズル90に保持されている部品2を下方から撮像し、そして、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bが、その部品カメラ15によるカメラ画像上で部品2の背景として含まれて、インク塗装の対象である。
しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、部品装着機10などが、ノズル90に保持されている部品2を側方から撮像するカメラを備えている場合は、ノズル90の胴体軸部91及び保持軸部92の側面がそのカメラによるカメラ画像上で部品2の背景として含まれて、インク塗装の対象であるものとしてもよい。
また、上記の実施形態においては、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装を、パッドにインクが吸着されたスタンプ台62aにノズル90を接触させてそのノズル90にインクを付着させることにより実現している。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、図12に示す如く、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装を、貯留部71に蓄えられたインクをスプレー部72から噴射させてそのノズル90にインクを付着させることにより実現することとしてもよい。
この変形形態においては、更に、スプレー部72が三次元の任意の位置で任意の姿勢でノズル90の外面に向けてインクを噴射できるように、そのスプレー部72を移動させる機構を設けることとしてもよい。この機構によれば、ノズル90のフランジ部93のフランジ下面93bだけでなく胴体軸部91及び保持軸部92の側面を含む何れの外面にもインク塗装を施すことができ、ノズル90の形状が複雑なものであっても適切にかつ簡易にインク塗装を実現することができる。
また、上記の実施形態においては、補修ユニット60によるノズル90へのインク塗装を、検査カメラ22aによるカメラ画像が基準よりも明るい画像であることが判定された場合にのみ行うものとしている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、そのインク塗装を定期的に(例えば、ノズル90の外面の塗装が剥がれることが予想される期間が経過するごとに)行うものとしてもよい。
また、上記の実施形態においては、ノズル90の外面の塗装剥がれに対する補修として、そのノズル外面をインクで塗装するものとしている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、その塗装剥がれに対する補修として、その塗装剥がれを覆うシールをそのノズル外面に貼付するものであってもよい。
更に、上記の実施形態においては、ノズル90の外面の塗装剥がれに対する補修として、そのノズル外面をインクで塗装するものとしている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではなく、ノズル90に傷みや壊れ,破損などの損傷が生じた場合に、その損傷に対する補修として、その損傷箇所に対して補修用部材を補ったり補強するなどの処理を施すものであってもよい。
尚、本開示は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。