JP7339494B2 - ボルト接合部分の防食方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボルト接合部分の防食方法に関する。
例えば橋梁等のように、複数の金属部材(特に、鉄鋼材料)をボルトを含む接合部材で互いに接合させた構造を有する構造物では、構造物の防食性を担保するために、構造物の表面に防食皮膜が形成される。しかしながら、かかる構造物において、ボルトを用いた接合部分(以下、「ボルト接合部分」ともいう。)の防食性は、ボルト縁端部分での防食皮膜の厚みが薄くなりやすいため、ボルト部分がまず発錆しがちである。一部でも防食被膜が損傷すれば、かかる損傷部位から更にまた酸素と水が入り込み、膨張する錆が順次、防食被膜を損傷させて錆が広がっていく。また、ボルト接合部分の周辺には、部材間ギャップやスカラップ等の、隙間部分が存在するため、防食上の弱点が多数存在し、ボルト接合部分以外の場所と比較すると、ボルト接合部分において腐食面での寿命が定まってしまうことが多い。
ボルトを用いた金属部材間の接合方法は、構造物を建設する際の作業性に優れるものの、上記のようなボルト接合部分における防食面の弱点により、特に海洋構造物等の強い腐食環境に設けられる構造物の建設時には、使用が忌避され、全溶接構造が選好されている現状にある。
上記のようなボルト接合部分における防食面の弱点を解決するために、従来、様々な技術が提案されている。
例えば以下の特許文献1には、ボルト接合部分の全体をカバーで覆うことで、ボルト接合部分の防食性を向上させる技術が開示されており、以下の特許文献2には、ボルト接合部分を広めに不織シートで覆い、かつ、不織シートの内側を防錆剤で充填することで、ボルト接合部分の防食性を向上させる技術が開示されている。
特開2002-22091号公報 特開平7-301222号公報
しかしながら、上記のようなカバーや不織シートでボルト接合部分を覆ったとしても、カバーや不織シートと、ボルト接合部分と、の間の密着性は十分とはいえず、少なからず隙間が生じる可能性がある。また、カバーや不織シートの場合、経時的な劣化に伴い、カバーや不織シート自体に亀裂が生じる可能性もある。かかる隙間や亀裂から通気が可能であれば、酸素が内部に入り込み、また、水についても露として浸入する。その結果、ボルト接合部分をカバーや不織シートで覆ったとしても、ボルト接合部分の防食性は、必ずしも完全ではない。また、金属部材には、設計時に寸法にわずかな余裕を持たせることが一般的であるため、隙間を作らないカバー等を準備するのは実際的には困難な作業となり、ボルト接合部分を完全に防食性を持った覆いでカバーすることは困難である。
また、例えば橋梁では、その安全性を担保するために、5年に一度の目視検査が法的に義務付けられており、近年、目視検査の重要性が増している。ここで、ボルト接合部分は、かかる目視検査において重要な検査部位の一つであるが、ボルト接合部分がカバー等で被覆されている場合、被覆されているボルト接合部分の腐食状態を目視で確認することができず、目視検査自体が困難となってしまう。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ボルト接合部分の目視検査を容易に実施でき、かつ、より優れた防食性を実現することが可能な、ボルト接合部分の防食方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、特定の樹脂及びガラス繊維を含む透明皮膜は、より優れた皮膜強度を有し、ガラス繊維を含まない樹脂と比較してより長期間、水分及び酸素の浸入を防止することが可能であることを見出した。また、皮膜自体が透明であれば、目視検査時においてボルト接合部分を容易に確認することが可能となる。上記のような知見から、本発明者らは、ボルト接合部分の最表面に、特定の樹脂及びガラス繊維皮膜を設けることに想到した。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
]第1の金属部材と、第2の金属部材と、が、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分の最表面に対し、エポキシ樹脂及びガラス繊維を含有し、前記ガラス繊維の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して、9質量部以下である樹脂組成物を用いて透明皮膜を形成し、前記透明皮膜は、前記ボルト接合部分を所定の型を用いて覆った後、前記型の内部に前記樹脂組成物を供給し、当該樹脂組成物が保持されている前記型の内部を脱気することで形成される、ボルト接合部分の防食方法。
]乾燥後の厚みが、1mm以上であり、かつ、前記透明皮膜の下方に存在する前記ボルト接合部分の表面において寸法5mm以上の大きさの変状を視認可能な厚みとなるように、前記透明皮膜を形成する、[]に記載のボルト接合部分の防食方法。
]乾燥後の厚みが2mm以上10mm以下となるように、前記透明皮膜を形成する、[]又は[]に記載のボルト接合部分の防食方法。
]前記ガラス繊維は、長さ10mm以下のチョップドファイバーである、[]~[]の何れか1つに記載のボルト接合部分の防食方法。
]前記ボルト接合部分の表面に、予め防食皮膜が設けられており、前記防食皮膜の表面上に前記透明皮膜を形成する、[]~[]の何れか1つに記載のボルト接合部分の防食方法。
以上説明したように本発明によれば、ボルト接合体において、ボルト接合部分の目視検査を容易に実施でき、かつ、より優れた防食性を実現することが可能となる。
本発明の実施形態に係るボルト接合体の構造の一例を模式的に示した説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部の防食方法の一例を説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 同実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。 実施例で用いた試作品について説明するための説明図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(ボルト接合体について)
本発明の実施形態に係るボルト接合体について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るボルト接合体の構造の一例を模式的に示した説明図である。
<ボルト接合体の全体的な構造について>
本実施形態に係るボルト接合体1は、図1に模式的に示したように、第1の金属部材10Aと、第2の金属部材10Bと、が、ボルト23を含む接合部材により接合されたボルト接合体であり、ボルト接合体の少なくとも接合部分の最表面には、所定の材料を含有する透明皮膜30が設けられている。
ここで、本実施形態に係るボルト接合体1において、第1の金属部材10A及び第2の金属部材10B(以下、まとめて「金属部材10」と称することがある。)については、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、チタン、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの合金などのような、公知の各種の金属素材を用いることができる。ここで、合金の例としては、例えば、鉄系合金(ステンレス鋼含む)、Ti系合金、Al系合金、Mg合金などが挙げられる。金属部材10は、鉄鋼材料、鉄系合金、チタン及びアルミニウムであることが好ましく、他の金属種に比べて弾性率が高い鉄鋼材料であることがより好ましい。そのような鉄鋼材料としては、例えば、日本工業規格(JIS)等で規格された鉄鋼材料があり、一般構造用や機械構造用として使用される炭素鋼、合金鋼、高張力鋼等を挙げることができる。このような鉄鋼材料の具体例としては、冷間圧延鋼材、熱間圧延鋼材等を挙げることができる。
鉄鋼材料には、任意の表面処理が施されていてもよい。ここで、表面処理とは、例えば、亜鉛めっき及びアルミニウムめっきなどの各種めっき処理、クロメート処理及びノンクロメート処理などの化成処理が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、複数種の表面処理が施されていてもよい。
また、第1の金属部材10Aと第2の金属部材10Bとは、同一の素材であってもよいし、異なる素材であってもよい。
第1の金属部材10Aと、第2の金属部材10Bとの間には、図1に示したように、補強板21が跨るように設けられる。補強板21、第1の金属部材10A、第2の金属部材10Bにそれぞれ設けられたねじ穴(図示せず。)に、一方の補強板21の側からワッシャーWを介してボルト23が差しこまれ、もう一方の補強板21の側には、ワッシャーWを介してナット25が設けられる。これら、補強板21、ボルト23、ナット25が、接合部材として機能し、ボルト23及びナット25によって加えられる圧力により補強板21が金属部材10の側に押圧されることで、第1の金属部材10Aと第2の金属部材10Bとが、接合部材を介して接合される。
ここで、補強板21、ボルト23、ナット25、ワッシャーWについては、特に限定されるものではなく、求められる機械的強度等に応じて、公知の各種のものを適宜利用することが可能である。
このようにして接合された、ボルト接合体の少なくとも接合部分の最表面に、例えば図1に示したように、本実施形態に係る透明皮膜30が設けられる。図1では、接合部分の最表面に透明皮膜30が設けられる場合を図示しているが、透明皮膜30は、ボルト接合体の全体にわたって設けられていても良い。
また、接合部分と、透明皮膜30との間には、公知の各種の皮膜が設けられていてもよい。例えば、接合部分の表面には、接合部分の防食性を担保する防食皮膜40が設けられていることが好ましい。かかる防食皮膜40については、特に限定されるものではなく、ボルト接合体1に求められる防食性を担保することが可能なものであれば、公知の各種の防食皮膜を用いることが可能である。また、防食皮膜40以外にも、例えば着色皮膜等のような、公知の各種の表面処理皮膜が設けられていてもよい。
なお、本実施形態に係るボルト接合体1において、金属部材10、補強板21、ボルト23、ナット25の形状や大きさについては、特に限定されるものではなく、任意の形状及び大きさとすることが可能である。
ここで、本実施形態に係る透明皮膜30は、可視光波長帯域において透明であるため、透明皮膜30の下側に位置する接合部分の状態を容易に目視で確認することができる。そのため、接合部分の腐食状態等を目視により検査するときに、接合部分の腐食状態等をより容易に目視で確認することができる。また、本実施形態に係る透明皮膜30は、以下で詳述するように、特定の樹脂及びガラス繊維を含有することで、強度がより一層向上しており、被膜自体が割れにくいことで、マクロ的にガラス繊維を含まない樹脂と比較して、より長期間、水分及び酸素の浸入を防止することが可能である。これにより、本実施形態に係る透明皮膜30を設けることで、より優れた防食性を実現することが可能となる。
ここで、透明皮膜30が透明であるとは、以下のような条件が満たされている状態をいう。すなわち、以上説明したような構造を有するボルト接合体1の接合部分、又は、ボルト接合体と同じ素材を用いて類似の構造となるように製造されたボルト接合体試験サンプルにおいて、以下で詳述するような透明皮膜30の素材となる樹脂組成物を、所望の乾燥後膜厚となるように設け、皮膜を形成する。この際に、ボルト接合体、又は、ボルト接合体試験サンプルの表面に発生した寸法5mm以上の大きさを有する変状の存在を、皮膜を介して目視で確認できる状態が実現されていることをいう。ここで、上記の変状としていは、例えば、腐食生成物の発生を挙げることができる。
上記のような変状は、JIS K 5600-8-1(塗膜劣化の評価―欠陥の量、大きさ、および外観の変化に関する表示―第1節:一般原則及び等級)によれば、膨れ、さび(腐食生成物)、割れ、はがれ、白亜化ということになる。また、寸法5mmという大きさは、JIS K5800-8-1における大きさの等級5に該当する。
ここで、ボルト接合体又はボルト接合体試験サンプルに生じうる変状の一例である腐食生成物は、用いた素材に応じて変わるものであり、例えば、鉄鋼材料を用いてボルト接合体又はボルト接合体試験サンプルに生じうる腐食生成物は、鉄酸化物(いわゆる、錆)となる。鉄酸化物は、一般的に茶色系の色を呈することが多い。そのため、上記のような条件でボルト接合体又はボルト接合体試験サンプルの最表面に皮膜を形成したときに、ボルト接合体又はボルト接合体試験サンプルの表面に発生した寸法5mm以上の大きさを有する鉄酸化物の存在を、目視で確認できた場合、かかる皮膜は透明であるという。
以下では、本実施形態に係るボルト接合体1における透明皮膜30について、詳細に説明する。
<透明皮膜30について>
本実施形態に係る透明皮膜30は、非導電性の素材を用いて形成された皮膜である。この透明皮膜30は、エポキシ樹脂と、ガラス繊維と、を少なくとも含有する。
本実施形態に係る透明皮膜30は、ボルト接合体1の少なくとも接合部分の最表層に、厚みが1mm以上であり、かつ、透明皮膜30の下方に存在する接合部分の表面において寸法5mm以上の大きさの変状を視認可能な厚みとなるように設けられることが好ましい。透明皮膜30の厚みが上記のような条件を満たすことで、皮膜の透明性と防食性の双方を、より確実に担保することが可能となる。透明皮膜30の厚みが1mm未満である場合には、透明皮膜30の透明性はより一層高まるものの、透明皮膜30の強度が低下する可能性がある。透明皮膜30の厚みは、より好ましくは、2mm以上である。一方、透明皮膜30の厚みが厚すぎれば、透明皮膜30の強度はより一層高まるものの、寸法5mmの変状が視認できなくなってしまう。透明皮膜30の厚みは、より好ましくは、10mm以下であり、更に好ましくは、8mm以下である。
なお、通常の塗料をもって透明皮膜30を形成する場合、硬化前の液体/流動体の状態であるときには、その流動性が大きいために、1mm厚の塗膜を形成することは非常に困難を伴う。薄い塗膜を何回も塗り重ねることによって、合計の厚さを1mm以上にすることは可能であるが、一度の塗工で、一層にて形成された塗膜を1mm以上とすることは、通常の手段では困難を伴うことが多い。
ここで、透明皮膜30の厚みは、従来の防食被膜と同様に、公知の超音波膜厚計を用いて測定することが可能である。透明被膜が防護している防食膜厚との合計しか測定することができないが、防食膜厚は、透明被膜と比較して圧倒的に薄いため、実用的には合計の値で十分である。
本実施形態に係る透明皮膜30に用いられるエポキシ樹脂は、非導電性を示し、かつ常温硬化が可能なものであれば特に限定するものではなく、公知の各種のエポキシ樹脂を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂として、例えば、ポリオールから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、活性水素を複数有するアミンより得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸より得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシドなどが用いられる。かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジル-p-アミノフェノール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-メチレンジアニリンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3‘,4‘-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどの脂環式エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。ただし、性能並びに経済性上、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等の2官能以上の液状エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係る透明皮膜30において、ガラス繊維は、特に限定するものではなく、公知の各種のガラス繊維を適宜使用することが可能である。ここで、ガラス繊維として、長さ10mm以下のチョップドファイバーを用いることで、透明皮膜30におけるガラス繊維の分散性がより向上し、結果として、透明皮膜30の強度をより一層向上させることが可能である。そのため、ガラス繊維として、長さ10mm以下のチョップドファイバーを用いることがより好ましい。また、かかるガラス繊維の繊維径は、特に規定するものではないが、施工時における混合作業のハンドリングし易さという観点から、30μm以下であることが好ましい。
本実施形態に係る透明皮膜30において、かかるガラス繊維の含有量は、上記エポキシ樹脂100質量部に対して、9質量部以下であることが好ましい。透明皮膜30におけるガラス繊維の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して9質量部を超える場合には、透明皮膜30の強度を向上させつつ、皮膜の透明性を担保することが困難となる。一方、透明皮膜30におけるガラス繊維の含有量の下限値は、特に限定するものではない。ただし、透明皮膜30におけるガラス繊維の含有量をエポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上とすることで、透明皮膜30の強度を、より確実に向上させることが可能となる。そのため、透明皮膜30におけるガラス繊維の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。
ここで、透明皮膜30中におけるガラス繊維の含有量は、以下のようにして測定することが可能である。
まず、透明皮膜30を構成する樹脂組成物の焼成前後の質量差から、未燃焼分のガラス繊維及びヒュームドシリカ成分を求め、更に、未燃焼残分の顕微鏡写真の画像解析等によって1μm以上の成分比率を算出する。これにより、ガラス繊維の含有量を求めることができる。
また、以下のような方法によっても、ガラス繊維の含有量を測定することができる。すなわち、透明皮膜30を主に構成する樹脂部分は、温度が高くなると強度を失い、流動性が高くなる。そのため、着目する透明皮膜30を100℃程度に熱した上で、ガラス繊維の太さを下回る穴径を持つザルでガラス繊維を濾しとれば、ガラス繊維の質量を計測することができる。このようにして得られたガラス繊維の質量から、ガラス繊維の含有量を求めることができる。
本実施形態に係る透明皮膜30は、エポキシ樹脂の一部に換えて、揺変剤由来の成分を更に含有していてもよい。ここで、本実施形態に係る透明皮膜30が揺変剤由来の成分をどの程度含有しているかは、以下で詳述するように、透明皮膜30をどのように製造するかに応じて変わる。
本実施形態に係るボルト接合体1において、透明皮膜30を形成する方法(ボルト接合部分の防食方法とも捉えることができる。)には、以下で詳述するように、大きく分けて2つの方法が用いうる。第1の方法を用いる場合、透明皮膜30における揺変剤由来の成分の含有量は、0.5質量%以上5質量%以下となる。また、第2の方法を用いる場合、透明皮膜30における揺変剤由来の成分の含有量は、0.5質量%未満となり、揺変剤由来の成分を含有していなくともよい。
揺変剤は、以下で詳述するように、透明皮膜30を形成する際に用いる樹脂組成物の取り扱いやすさを調整するために、樹脂組成物に対して揺変性(チキソトロピー)を付与することを目的として用いられる。そのため、かかる揺変性由来の成分は、揺変性の付与のために結果として透明皮膜30中に含有されることとなる成分である。なお、上記のような揺変剤由来の成分は、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイドに由来する成分であってもよいし、フュームドシリカに由来する成分であってもよいし、アエロジル(登録商標)に由来する成分であってもよい。
なお、本実施形態に係る透明皮膜30において、揺変剤由来の成分の含有量は、上記のように最大でも5質量%であるが、含有量が3質量%以下であれば、本実施形態に係る透明皮膜30の透明性はより確実に担保される。
ここで、上記の揺変剤由来の成分の含有量は、以下のようにして測定することができる。例えば、揺変剤については、揺変剤中に含まれるカルボニル基を、例えば赤外分光測定機等で測定し、得られた強度に基づき定量分析を行うことによって、その含有量を測定することができる。また、揺変剤としてフュームドシリカを用いた場合には、透明皮膜30を構成する樹脂組成物の焼成前後の質量差より、未燃焼分のガラス繊維とフュームドシリカ成分を求め、更に、未燃焼残分の顕微鏡写真の画像解析等により1μm未満の成分比率を算出することで、測定することができる。
また、本実施形態に係る透明皮膜30は、かかる透明皮膜30を与える樹脂組成物を5mm厚の硬化物とした後にJIS K 7163に基づいて濁度計で測定したヘイズ値が、90以上95未満となるものであることが好ましい。ヘイズ値がかかる範囲内にあることにより、透明皮膜30の下側に位置する接合部分の腐食状態を、目視でより一層容易に確認することが可能となり、直径5mmの腐食生成物の存在を見逃すことをより確実に防止することが可能となる。
以上、図1を参照しながら、本実施形態に係るボルト接合体1について、詳細に説明した。
(ボルト接合部分の防食方法について)
次に、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法について、詳細に説明する。
本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法は、第1の金属部材と、第2の金属部材と、が、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分の最表面に対し、エポキシ樹脂100質量部に対して、9質量部以下のガラス繊維を含有する樹脂組成物を用いて透明皮膜を形成するものである。
ここで、第1の金属部材と、第2の金属部材とが、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分の表面には、以下で説明するような防食方法を実施するに先立って、防食皮膜40が形成されていることが好ましい。また、ボルト接合部分の表面には、必要に応じて、防食皮膜40以外の表面処理皮膜が形成されていてもよい。
上記のような成分を含有する樹脂組成物を用いて、乾燥後の厚みが1mm以上であり、かつ、当該透明皮膜の下方に存在する接合部分の表面において寸法5mm以上の大きさの変状を視認可能な厚みとなるように、透明皮膜を形成することが好ましく、2mm以上10mm以下となるように、透明皮膜を形成することがより好ましい。
上記の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂については、先だって説明した通りであるため、以下では詳細な説明は省略する。
上記の樹脂組成物において、用いるガラス繊維については、先だって説明した通りである。本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法において、ガラス繊維は、エポキシ樹脂100質量部に対して9質量部以下となるように、含有されている。樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して9質量部を超える場合には、透明皮膜30の強度を向上させつつ、皮膜の透明性を担保することが困難となる。一方、樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量の下限値は、特に限定するものではない。ただし、樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量をエポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上とすることで、透明皮膜30の強度を、より確実に向上させることが可能となる。そのため、樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。
ここで、先だって簡単に言及したように、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法には、大きく分けて2つの方法が用いうる。以下、これら2つの方法について詳細に説明する。
<第1の方法-塗布による方法>
第1の方法による、ボルト接合部分の防食方法では、第1の金属部材と、第2の金属部材と、が、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分の最表面に対し、上記エポキシ樹脂及びガラス繊維を含有する樹脂組成物を塗布することで透明皮膜30を形成させ、ボルト接合部分を防食する。
ここで、樹脂組成物中にエポキシ樹脂及びガラス繊維だけが存在している場合、樹脂組成物の流動性が高いために、ボルト接合部分に樹脂組成物を塗布したとしても、所望の部位に樹脂組成物が留まりにくくなり、樹脂組成物の取り扱いが困難となりやすい。そのため、第1の方法(塗布)により透明皮膜30を形成させる場合には、樹脂組成物の流動性を調整して、取り扱いのしやすい状態とすることが好ましい。
上記のような理由から、エポキシ樹脂及びガラス繊維を含有する樹脂組成物は、更に、エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上4質量部以下の揺変剤を含有することが好ましく、1.6質量部以上3質量部以下の揺変剤を含有することがより好ましい。また、揺変剤として、フュームドシリカと、フュームドシリカ以外の揺変剤と、を組み合わせて用いてもよい。複数の揺変剤を用いる場合には、合計含有量が、上記の範囲内となるようにすればよい。
揺変剤の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部以上となることで、樹脂組成物の流動性を改善して、塗布に適した流動性(例えば、25℃における粘度が15Pa・s以上1000MPa・s以下となる流動性、より好ましくは、25℃における粘度が20Pa・s以上500MPa・s以下となる流動性)を実現することができる。
また、揺変剤の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して4質量部以下となることで、形成される透明皮膜30の透明性を担保しつつ、塗布に適した流動性をより確実に実現することが可能となる。
なお、上記のような樹脂組成物をボルト接合部分に塗布する方法については、特に限定されるものではなく、公知の各種の方法を用いることが可能である。
<第2の方法-プリプレグド方式による方法>
次に、図2を参照しながら、第2の方法によるボルト接合部分の防食方法について説明する。図2は、本実施形態に係るボルト接合部の防食方法の一例を説明するための説明図である。
第2の方法による、ボルト接合部分の防食方法では、図2に模式的に示したように、まず、第1の金属部材と、第2の金属部材と、が、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分1’を、所定の型を用いて覆い、型の内部に対してエポキシ樹脂及びガラス繊維を含有する樹脂組成物を供給した後、かかる樹脂組成物が保持されている型の内部を脱気する。これにより、型の内部に存在する樹脂組成物は、脱気に伴って型の上部に向かって移動していき、ボルト接合部分に対して樹脂組成物が行きわたるようになる。これにより、ボルト接合部分に対して透明皮膜30を形成させて、ボルト接合部分を防食する。
ここで、図2に示したようなプリプレグド方式を用いると、樹脂組成物は、脱気に伴ってボルト接合部分の隙間に浸透していくようになる。そのため、ボルト接合部分に隙間が存在していたとしても、樹脂組成物が行きわたるようになり、ボルト接合部分に存在する隙間においても、透明皮膜30を形成することが可能となる。従って、図2に示したようなプリプレグド方式を用いることで、より確実に、ボルト接合部分を防食することが可能となる。
上記のようなプリプレグド方式では、第1の方法に示した塗布による方法と比較して、樹脂組成物は流動性のよい状態となっている方が好ましい。そのため、例えば、25℃における粘度が5MPa・s以下であるような流動性が実現している状態で、樹脂組成物を用いることが好ましい。
上記のような理由から、エポキシ樹脂及びガラス繊維を含有する樹脂組成物における揺変剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部未満であることが好ましい。揺変剤の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部未満となることで、プリプレグド方式に適した流動性を実現することができる。また、樹脂組成物は、揺変剤を含有しないことが、より好ましい。
ここで、第2の方法に用いる型の具体的な形状については、特に限定されるものではなく、処理対象となるボルト接合部分の周囲を覆い、樹脂組成物を確実に保持することが可能な形状であれば、任意の形状とすることが可能である。
また、第2の方式により形成される透明皮膜30の厚みは、脱気速度等に応じて制御することが可能である。その具体的な値については、特に限定するものではないが、例えば、1mm以上であり、かつ、当該透明皮膜の下方に存在する接合部分の表面において寸法5mm以上の大きさの変状を視認可能な厚みとすることが好ましく、2mm以上10mm以下程度とすることがより好ましい。
以上、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法で用いうる2つの方法について、具体的に説明した。
ここで、上記2つの方法で用いられる揺変剤としてフュームドシリカを用いる場合、かかるフュームドシリカとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アエロジル(登録商標)を用いることが好ましい。また、フュームドシリカ以外の揺変剤としては、不飽和ポリカルボン酸ポリアミノアマイド溶液を用いることが好ましい。揺変剤として、上記のようなものを用いることで、形成される透明皮膜30の透明性をより確実に担保しつつ、透明皮膜30の強度をより確実に向上させることが可能となる。
ここで、第1の方法で施工を行う場合の樹脂組成物は、十分な固さを最初から保持しており、ほぼ工作用粘土と同程度の流動性を有している。そのため、ボルト部に対して、ヘラのようなもので、容易になすり付けることができる。また、固化前と固化後で透明性はほとんど変化しないため、樹脂組成物を塗布していて下が透明に見えなくなれば厚さが厚すぎるということであり、下がぎりぎり見えるように厚さを決めていけば、塗布しながら厚さを適正に調整することが可能である。また、キャップ状のビニール、プラスチック製の型を使い、その中に樹脂組成物を詰めておいてから、ボルト部に押し付けて施工することも可能である。この方法によれば、型の上から樹脂組成物を含めて中が見えるため、目視によって容易に型をボルト中心に対してセンタリングすることができる。
第2の方法においては、樹脂組成物はむしろ流動性は高くしておいた上で、型の下からの樹脂組成物を圧入していけば、型中の樹脂組成物の表面は徐々に上がってゆく。そのため、空気の巻き込みはなく、ボルト接合部に密着して透明な層を形成することができる。
以上、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法について、詳細に説明した。
(ボルト接合部分の防食方法の適用例)
以下に、図3A~図8を参照しながら、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について、具体的に説明する。図3~図8は、本実施形態に係るボルト接合部分の防食方法の適用例について説明するための説明図である。
図3A及び図3Bに、橋梁のボルト接合部の一例を示した。図3Aは、橋梁のボルト接合部を上方からみたときの様子を模式的に示したものであり、図3Bは、橋梁のボルト接合部を側方からみたときの様子を模式的に示したものである。このような接合部に対して、上記の第1の方法を適用する場合、まずはボルト部に対して樹脂組成物を塗布してゆくことになる。図4に、個別のボルトを模式的に図示した。形状急変部である部位1(ボルト頭)、部位2(ボルト頭基部とワッシャー頭部)、部位3(ワッシャー基部)、部位4(ワッシャー頭部とナット基部)、部位5(ナット頭)、部位6(ボルト突出部)を確実にカバーするように、樹脂組成物の塗布を行うことが重要である。多数のボルトが近接して存在する場合は、添接板上部の前面に樹脂組成物を塗布してもよい。また、添接板とフランジ又はウエブとの接する「きわ」についても、形状急変部であるために塗装の損傷が生じ易いことから、かかる部分についても、樹脂組成物を塗布することは有効である。そのとき、母材側に広めに塗布を行うことは、水や酸素の侵入防止のために有効である。
図5及び図6に、第1の方法で施工した例を模式的に示した。図5は、ボルト部と、添接板と母材との接合部のみを樹脂組成物で覆った例であり、図6は、添接板の全体を覆うように、樹脂組成物を塗布した例である。
図7A及び図7Bに、建築で一般的な、通しダイアフラム形式の梁柱接合部を示した。図7A及び図7Bでは、柱が装入されている通しダイアフラムの両側に、ボルトを用いてH型鋼が接合される場合を模式的に示している。図7A及び図7Bでは、フランジが溶接されており、ウェブがボルト接合となっている。フランジの溶接部近傍には、図7A及び図7Bに模式的に示したようにスカラップが存在するが、かかるスカラップは、塗装管理が困難であり、ボルト本体と同様に防食上の弱点となりやすい箇所である。また、梁ウェブと柱との間にギャップ(図示せず。)が生じることが一般的であり、この部位についても、やはり防食上の弱点となる。そこで、図7Bに示すように、ボルト接合部に対して
型枠を設置した上で、下側から樹脂組成物を充填していく。この場合の樹脂組成物は、なるべく流動性が高い方が施工が容易となる。型枠の下側から圧入して、上側の空気穴から樹脂組成物が出てくるようになれば、型枠内の全ての空間が樹脂組成物で埋まったこととなる。なお、型枠は、施工後に除去してもよいが、ポリカーボネート等のような透明の素材で型枠を製作していれば、残置して差支えがない。かかる透明の型枠は、その後、樹脂組成物に対して追加の防食層として機能する。
図8に、建築で一般的な通しダイアフラム形式の梁柱接合部における別のタイプを示した。かかるタイプでは、ウェブに加えてフランジにも、ボルト接合部を有している。この場合の防食上の弱点は、ボルト-ナット、添接板の端部、梁間ギャップ、2枚の添接板の間の空間、梁柱溶接部スカラップであり、また、場合によってはスカラップに設けられる裏当て金である。これらの部位を全部覆うように、樹脂組成物を塗布する。流動性を抑えた樹脂組成物で塗布してもよいし、流動性の高いもので型板(枠)を使って、充填することも可能である。型板を使う場合は、充填後の除去が簡単ではなくなるため、型板(枠)を、ポリカーボネート等の透明な材料で成形しておくことが好ましい。
続いて、実施例及び比較例を示しながら、本発明に係るボルト接合体及びボルト接合部分の防食方法について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明に係るボルト接合体及びボルト接合部分の防食方法のあくまでも一例にすぎず、本発明に係るボルト接合体及びボルト接合部分の防食方法が、下記に示す例に限定されるものではない。
以下では、上記第1の方法を採用し、各種条件を変化させながら施工を行った試作品の結果を、以下の表1に示した。ここで、試作品の寸法は、図9に示した通りであり、複合サイクル試験が実施可能なように、板の寸法等は一般的な構造用のものよりも小さく設定している。かかる試験に際して、変化させた項目は、皮膜厚み、用いたガラス繊維の繊維長及び含有量、揺変剤として用いたフュームドシリカの含有量である。
ここで、試作品の作製に用いたエポキシ樹脂、ガラス繊維、及び、フュームドシリカは、以下の通りである。
エポキシ樹脂:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製YD-128、ガードナー色数=0.6
ガラス繊維:日本電気硝子株式会社製チョップドストランド状ガラス繊維ECS06B-173
フュームドシリカ:日本アエロジル株式会社社製#200
硬化剤:HUNTSMAN Corporation製ジェファーミンT-403
揺変剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK-R607
得られた試作品の性能確認は、以下のようにして実施した。
視認性については、樹脂組成物を塗布前の試作品の表面に対し、予め茶色の油性ペンで直径5mmの塗りつぶし円を描いておき、樹脂組成物の塗布・乾燥後に、かかる塗りつぶし円が視認できるかどうかを確認した。確認者の視力は0.7であった。以下では、視認できたものは「A」と評価し、視認できたものの注意を要したものを「B」と評価し、視認できなかったものは「C」と評価した。
耐候性については、複合サイクル試験を実施し、その結果として、塗膜表面に割れや剥離などが生じたかどうかを観察することで、評価を行った。なお、複合サイクル試験の条件は、JIS H8502に規定された条件を参考とした。サイクル条件は、塩水噴霧(35℃、2時間)→乾燥(60℃、25%RH、4時間)→湿潤(50℃、95%RH、2時間)であり、かかるサイクルを2000時間(250サイクル)実施した。以下では、塗膜表面に、金属部位に達する割れ及び剥離が生じなかったものを「A」と評価し、塗膜表面に、金属部位に達しない割れ又は剥離が生じたものを「B」と評価し、塗膜表面に金属部位に達する割れ又は剥離が生じたものを「C」と評価した。
その上で、視認性及び耐候性の双方の評価が「A」又は「B」であったものを合格と評価し、何れか一方の評価が「C」であったものを不合格と評価した。
Figure 0007339494000001
上記表1から明らかなように、比較例1であるNo.1の試作品は、透明皮膜を設けなかったことから視認性は良かったものの、耐候性は劣っていた。
一方、本発明の実施例に該当するNo.2~No.8の試作品は、本発明に該当する透明皮膜を設けたことで、視認性を確保しながら優れた耐候性を有することが明らかとなった。実施例1に該当するNo.2の試作品は、視認性及び耐候性の双方に優れていた。また、実施例2の該当するNo.3の試作品は、視認性は良好であったが、透明皮膜の厚みが薄かったため、耐候性は少し劣っていた。実施例3に該当するNo.4の試作品は、透明皮膜の厚みが厚かったため、視認性は少し劣っていたものの、耐候性は良好であった。
また、実施例4に該当するNo.5の試作品は、ガラス繊維の繊維長が長かったため、視認性は少し劣っていたものの、耐候性は良好であった。実施例5に該当するNo.6の試作品は、揺変剤を用いなかったため樹脂組成物の流動性が大きく、十分な厚さの透明皮膜を確保できなかった。この試供品は、視認性は良好であったものの、耐候性は少し劣っていた。
また、実施例6に該当するNo.7の試作品は、ガラス繊維の含有量が少なかったため、視認性は良好であったものの、耐候性は少し劣っていた。実施例7に該当するNo.8の試作品は、ガラス繊維の含有量が多かったため、視認性は少し劣っていたが、耐候性は良好であった。
また、上記第2の方法を採用し、各種条件を変化させながら施工を行った試作品の結果を、以下の表2に示した。ここで、試作品の寸法は、図9に示した通りである。かかる試験に際して、変化させた項目は、皮膜厚み、用いたガラス繊維の繊維長及び含有量、揺変剤として用いたフュームドシリカの含有量である。
ここで、試作品の作製に用いたエポキシ樹脂、及び、ガラス繊維は、上記第1の方法の場合と同様のものを使用した。
Figure 0007339494000002
上記表2から明らかなように、比較例2であるNo.9の試作品は、透明皮膜を設けなかったことから視認性は良かったものの、耐候性は劣っていた。
一方、本発明の実施例に該当するNo.10~No.16の試作品は、本発明に該当する透明皮膜を設けたことで、視認性を確保しながら優れた耐候性を有することが明らかとなった。実施例8に該当するNo.10の試作品は、視認性及び耐候性の双方に優れていた。また、実施例9の該当するNo.11の試作品は、視認性は良好であったが、透明皮膜の厚みが薄かったため、耐候性は少し劣っていた。実施例10に該当するNo.12の試作品は、ガラス繊維の繊維長が長かったため、視認性は少し劣っていたものの、耐候性は良好であった。
また、実施例11に該当するNo.13の試作品は、透明皮膜の厚みが厚かったため、視認性は少し劣っていたものの、耐候性は良好であった。実施例12に該当するNo.14の試作品は、揺変剤を用いたため樹脂組成物の流動性が小さく、型枠の中での充填性が低く、十分な厚さの透明皮膜を確保できなかった。この試供品は、視認性は良好であったものの、耐候性は少し劣っていた。
また、実施例13に該当するNo.15の試作品は、ガラス繊維の含有量が少なかったため、視認性は良好であったものの、耐候性は少し劣っていた。実施例14に該当するNo.16の試作品は、ガラス繊維の含有量が多かったため、視認性は少し劣っていたが、耐候性は良好であった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1 ボルト接合体
10 金属部材
21 補強板
23 ボルト
25 ナット
30 透明皮膜
40 防食皮膜

Claims (5)

  1. 第1の金属部材と、第2の金属部材と、が、ボルトを含む接合部材により接合されたボルト接合部分の最表面に対し、
    エポキシ樹脂及びガラス繊維を含有し、前記ガラス繊維の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して、9質量部以下である樹脂組成物を用いて透明皮膜を形成し、
    前記透明皮膜は、前記ボルト接合部分を所定の型を用いて覆った後、前記型の内部に前記樹脂組成物を供給し、当該樹脂組成物が保持されている前記型の内部を脱気することで形成される、ボルト接合部分の防食方法。
  2. 乾燥後の厚みが、1mm以上であり、かつ、前記透明皮膜の下方に存在する前記ボルト接合部分の表面において寸法5mm以上の大きさの変状を視認可能な厚みとなるように、前記透明皮膜を形成する、請求項に記載のボルト接合部分の防食方法。
  3. 乾燥後の厚みが2mm以上10mm以下となるように、前記透明皮膜を形成する、請求項又はに記載のボルト接合部分の防食方法。
  4. 前記ガラス繊維は、長さ10mm以下のチョップドファイバーである、請求項の何れか1項に記載のボルト接合部分の防食方法。
  5. 前記ボルト接合部分の表面に、予め防食皮膜が設けられており、
    前記防食皮膜の表面上に前記透明皮膜を形成する、請求項の何れか1項に記載のボルト接合部分の防食方法。
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