JP7321476B2 - 防食組成物、及び、コンクリート構造物保護方法 - Google Patents
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Description
以下に示すビニルエステル樹脂A、ビニルエステル樹脂B、硬化剤及び硬化促進剤を表1に示す量(単位:g)で配合して、試験用材料1A~7Aを準備した。なお、試験体作製の際は、ビニルエステル樹脂A及びBを混合・撹拌し、更に硬化促進剤を添加・撹拌した後に、最後に硬化剤を添加した。
ビニルエステル樹脂A:
リポキシ(登録商標)FM-1600(引張伸び率:160.0%)(昭和電工株式会社製)
ビニルエステル樹脂B:
リポキシ(登録商標)R-806(引張伸び率:3.2%、熱変形温度:110℃、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂)(昭和電工株式会社製)
メタクリル樹脂:
パーミタイト#115(株式会社菱晃製)
硬化剤:
硬化剤328E(化薬ヌーリオン株式会社製、t-ブチルパーオキシベンゾエートとクメンヒドロパーオキサイドの混合物)
硬化促進剤:
ナフテン酸コバルト
上記試験用材料1A~7Aから、図1に示すダンベル形状の試験体(図中の数値の単位:mm)を、以下の手法で作製した。なお、試験用材料7Aについては、収縮が激しく試験体を作製できなかったため、評価の対象外とした。
ガムテープを3枚重ねて厚さ0.90mmの積層体を作製した。当該積層体を図1に示すダンベル形状に切り抜いて、ダンベル形状の穴が空いた積層体を得た。スチール板の表面に、別途ガムテープを貼り付けて離型養生するとともに、更に上記ダンベル形状の穴が空いた積層体を貼り付けることにより、ダンベル形状の穴に対応した凹部を有する、試験体作製用の型を得た。型の凹部に、それぞれ試験用材料1A~6Aを流し込み、ヘラで平滑に仕上げた。流し込まれた試験用材料を、室温で24時間放置することにより硬化した後に積層体を取り外し、試験体を得た。当該試験体の厚みは0.72mmであった。なお、同様の方法で、試験用材料1A~6Aに対応する試験体を3つずつ作製した。
得られた試験体を図2及び図3に示す引張試験機(図中の数値の単位:mm)にセットして、引張伸び試験を行った。図2(a)は引張試験機の正面図であり、図2(b)は引張試験機の側面図である。引張試験機は、固定台と、固定台上に横方向に移動可能となるように取り付けられた移動台と、固定台及び移動台のそれぞれに設置された一対の試験体固定プレートとを備える。図3(a)は図2(a)のI-I断面図であり、引張試験機の固定台側の試験体固定プレート部分を示す図である。図3(b)は図2(a)のII-II断面図であり、引張試験機の移動台側の試験体固定プレート部分を示す図である。これらの断面図から分かるように、固定台及び移動台と試験体固定プレートとの間に試験体を挟み込んで固定することができる。移動台は、回転ジョイントを介してネジシャフトを回転させることにより、手動で移動台を横方向に移動できるように固定台に取り付けられており、更に移動台振止により移動の際の縦振れが防止される。
この引張試験機に試験体を、試験体の長手方向の両端から30mmずつが、固定台及び移動台と試験体固定プレートとの間に挟み込まれるように固定した。ネジシャフトを回転させて、移動速度約13~14mm/minで、試験体が破断するまで、移動デーブルを横方向に動かした。引張試験機に試験体を固定した際の試験体の試験体固定プレートに挟まれていない部分の長さ(固定台上の試験体固定プレートの端部から移動台上の試験体固定プレートの端部までの距離)を「試験片の標線間距離:L0(mm)」、試験体が破断したときの試験体の長さの増加分(破断時の固定台上の試験体固定プレートの端部から移動台上の試験体固定プレートの端部までの距離からL0を引いた値)を「試験片の標線間距離の増加量:ΔL0(mm)」として、引張伸び率(ΔL0/L0)を求めた。
縦500mm×横900mm×厚さ5mmのスチール板を準備した。図4(a)に示す1~5の数字で示した100mm×100mmの箇所に、それぞれ上記試験用材料1A~5Aを塗布し、室温で24時間放置することにより硬化させて、試験体を得た。なお、試験用材料6Aについてはタックに問題ないことが既に確認されていたため、評価の対象外とした。
スチール板を図4(b)に示すように20°傾斜させて固定し、ボールタック試験を行った。具体的には、試験体の上端部から100mmの位置から試験球を滑走させて、試験球が試験体上で停止するかを確認した。具体的には、直径が1/16~1インチの間の31種類の試験球を準備し、小さい試験球から順に滑走させて、試験体上で5秒間停止した際の試験球のサイズを記録した。同様の試験を3回行った。
1/16~1インチの間の31種類の試験球を1番から順番に番号付けして、3回の試験について、停止した際の試験球のサイズに対応する番号の平均をボールタック試験結果として評価した。例えば、試験用材料1Aについては、1回目:7/32(番号:7)、2回目:10/32(番号:10)、3回目:10/32(番号:10)であったため、その平均の「9」を試験結果として評価した。試験結果が「0」であることは、試験体上で停止した試験球が存在しなかったことを示す。
以下に示すビニルエステル樹脂A、ビニルエステル樹脂B、硬化剤及び硬化促進剤を表3に示す量(単位:g)で配合して、試験用材料1B~4Bを準備した。なお、試験体作製の際は、ビニルエステル樹脂A及びBを混合・撹拌し、更に硬化促進剤を添加・撹拌した後に、最後に硬化剤を添加した。
ビニルエステル樹脂A:
リポキシ(登録商標)FM-1600(引張伸び率:160.0%)(昭和電工株式会社製)
ビニルエステル樹脂B:
リポキシ(登録商標)R-806(引張伸び率:3.2%、熱変形温度:110℃、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂)(昭和電工株式会社製)
硬化剤:
硬化剤328E(化薬ヌーリオン株式会社製、t-ブチルパーオキシベンゾエートとクメンヒドロパーオキサイドの混合物)
硬化促進剤:
ナフテン酸コバルト
ガラスマット:
ガラスマット#300又はガラスマット#450
試験用材料1B~4Bについて、以下に示す硬化収縮率試験を行った。その結果を表4に示す。
以下に示す手順で、試験用材料1B~4Bの硬化前比重を測定した。
使用機器:台秤(島津製作所 ELB600)、比重カップ(BEVS 100ml)
台秤で表3に記載の材料の量を計測する。比重カップに水又は資料を注ぎ、比重カップ蓋の中央の穴から水又は試料が溢出したところで、比重カップ内が満たされたこととする。溢れた水又は試料は拭き取る。
硬化前比重は次の式で求める。
S=(m3-m1)/(m2-m1)
(式中、Sは試料(試験用材料)の比重を示し、m1は比重カップの質量を示し、m2は比重カップと水の質量を示し、m3は比重カップと試料の質量を示す。)
以下に示す手順で、試験用材料1B~4Bを配合撹拌後、ブロック状又は薄板状に施工し、硬化後試験体を作製した。
ブロック状の試験体は12×12×80mmのプラスチック注形型に試験用材料を流し込むことによって作製する。ブロック状の試験体は、それぞれ各3体ずつ作製する。
薄板状の試験体は、鉄板上に100×100×1mmの養生型を用いて作製する。試験用材料1B~3Bについては養生型に試験用材料を流し込み金ヘラですり切ることによって試験体を作製する。試験用材料4Bについてはガラスマット#300を100×100mmサイズにカットし、養生型内に設置した後にガラスマット以外の試験用材料を流し込み、ガラスマットと樹脂を積層し試験体を作製する。薄板状の試験体も、それぞれ各3体ずつ作製する。
ブロック状、薄板状の試験体は共に作製後、常温で4日間の硬化養生を行う。
以下に示す手順で、試験体の硬化後比重を測定した。
使用機器:台秤(島津製作所 ELB600)
硬化後比重の測定は台秤の比重測定モードを使用する。このモードを使用する場合は空中重量と水中重量の測定が必要となるため台秤で水中重量の測定が出来るように次の準備を行う。
台秤の裏側に水中測定用フックを取付け、フックにΦ0.18mmワイヤーを引っかけ、ワイヤー下端部に受け皿を取り付ける。
受け皿が水中に沈むように水を張った水槽を設置する。
硬化後比重は下記の式で求めるが、この台秤では試験体空中重量を上皿で測定後、試験体を水中の受け皿に移動し水中重量を測定すると自動計算しディスプレイに比重が表示される。
硬化後比重=空中重量/(空中重量-水中重量)
各試験体の硬化前比重、硬化後比重を用いて下記の計算式により硬化収縮率を求めた。なお、硬化前比重及び硬化後比重は、それぞれ3体の試験体における平均値とした。
硬化収縮率(%)=(硬化後比重-硬化前比重)÷硬化後比重×100
以下に示す手順で、試験用材料1B、3B及び4Bについて硬化収縮率を測定した。その結果を表5に示す。
図5に示す試験板を作製した。図5中、外枠は鉄板を示し、内枠は試験用材料が塗布される部分(塗布面)を示し、外枠と内枠の間には、ガムテープが厚さ1mmとなるように貼り重ねられ。養生型が形成されている。鉄板の厚さは3.2mm、幅は300mm(図中A)、高さは75mm(図中B)である。塗布面の幅は280mm(図中C)、高さは35mm(図中D)である。塗布面中に2箇所の刻印が刻印間距離200mm(図中E)となるように形成されている。塗布面に離型剤を塗布する。試験体は、それぞれ各3体ずつ作製する。
なお、刻印間距離を200mmから700mmに延長した場合に、線収縮率に変化があるのかを確認するため図5のCを800mm、Eを700mmに変更した試験板を1体作製した。
以下に示す手順で、試験用材料1B、3B及び4Bから硬化後試験体を作製した。
試験用材料1B及び3Bについては、配合撹拌後、試験板の塗布面に施工し厚さが均一になるように金ヘラですり切ることによって試験体を作製する。試験用材料4Bについては、ガラスマット#450を280×35mmにカットし、養生型内に設置した後にガラスマット以外の試験用材料を流し込み、ガラスマットと樹脂を積層し試験体を作製する。
なお、試験体はそれぞれ各3体ずつ作製する。
試験体を作製後、4日間の常温硬化養生を行う。
試験体の硬化養生後、鉄板から試験体を負荷をかけないように慎重に脱型し、試験体に刻印が転写されていることを確認する。転写された刻印間距離を測長機で測定する。線収縮率は試験体に転写された刻印間距離と使用した試験板の刻印間距離より算出する。なお、線硬化収縮率は3体の試験体における平均値とした。
線硬化収縮率の測定後、試験体を9日間放置し、試験体の長辺、短辺方向の変形量(反り高さ:mm)を測定した。
試験用材料1Bはビニルエステル樹脂B(R-806)を単独で用いた例であり、試験用材料2Bはビニルエステル樹脂A(FM-1600)を単独で用いた例であり、試験用材料3Bはビニルエステル樹脂A及びBを所定の割合で混合した例であり、試験用材料4Bはビニルエステル樹脂Bとガラスマットを組み合わせて用いた例である。これらのうち、試験用材料3Bは本発明の防食組成物に相当し、試験用材料4Bは従来塗布型ライニング工法に用いられていたガラスマットを含むビニルエステル樹脂に相当する。
硬化収縮率の結果から、試験体形状がブロック状である場合より薄板状である場合の方が、樹脂単体である場合よりガラスマットを併用した方が、それぞれ硬化収縮率が大きくなることが分かる。
試験用材料3Bと試験用材料1Bを用いた試験体の硬化収縮率を比較すると、試験用材料3Bは試験用材料1Bよりもブロック状、薄板状ともに20%程度低い値になっており、本発明の防食組成物を用いた試験体が、従来型のビスフェノール系ビニルエステル樹脂(R-806)を用いた試験体よりも硬化収縮率が小さいことが確認された。
塗工型ライニング施工ではブロック状のような使用ではなく、薄板状の使用が主用途となるため薄板状の測定結果は大変参考となる。
薄板状の測定結果では試験用材料4Bを用いた薄板状の試験体の硬化収縮率が19.4%とかなり高い値となった。他の薄板状の試験体の硬化収縮率の2倍以上である。ビスフェノール系ビニルエステル樹脂(R806)単独の硬化収縮率は9.6%となっているが、従来FRPライニングで使用されていたビスフェノール系ビニルエステル樹脂とガラスマットを併用した試験体では硬化収縮率が20%近くなることが確認された。
この20%近い硬化収縮率では、接着界面に収縮による負荷が増大し浮き、剥離現象が発生しそうだが、試験用材料4Bを用いた試験体の線硬化収縮率は、0.03%で面方向(接着界面方向)には、僅かしか収縮していない。収縮の大部分は塗膜の厚さ方向に収縮していることが分かる。ガラスマットを含まない試験用材料1Bを用いた試験体の線硬化収縮率は0.20%であることから、ガラスマットを使用することにより線硬化収縮率を大きく減少させることが分かった。
ガラスマットの機能は塗膜の補強のみならず、線硬化収縮を低減し塗膜の接着安定性を向上させ塗膜の浮き、剥離現象を防止することが確認できた。
また、試験用材料3Bを用いた試験体の線硬化収縮率(0.02%)は、試験用材料2Bを用いた試験体の線硬化収縮率(0.03%)とほぼ同等であった。
これらの結果から、本発明の防食組成物によれば、ガラスマットを使用しない場合でも、線硬化収縮率が低く接着界面に収縮による負荷を与えないため接着安定性が確保され、ガラスマットが必要ないことが確認された。
「平成16年日本建築学会 1560 防水材の下地ひび割れ追従性試験その2」に準拠した方法で、ひび割れ(クラック)追従性試験を行った。具体的には、以下に示す手順で、試験用材料3B及び4Bを用いてひび割れ追従性試験を行った。その結果を表6に示す。
6mm鋼板から構成され、試験板のひび割れ部に対応するため、中央部に開口部を設け鞘形状のスライド式とした試験用治具を準備した。スライド部のクリアランス調整により試験中の面外、内のズレが生じないようにした。両端には試験機のチャックで治具を固定できる形状にした。
試験板はM8キャップボルト8本を締め付け固定する。
試験機はSHIMAZUオートグラフAG-I 250KNを使用する。
試験板としてはフレキシブル板(JISA5403)の8mm厚を使用する。サイズは80×200mmで中央部裏面に深さ6mmのひび割れ誘発用の切り込みを入れJSCE-K532同様、試験体作製前にひび割れを発生させておく。試験体作製後、M8キャップボルト8本で試験用治具に固定する。
なお、試験板の正面図及び側面図をそれぞれ図6(a)及び(b)に示す。
以下の手順で、試験体を作製した。
試験板を、同サイズの鋼板にボルト固定し水平にする。試験体の施工で固定ボルトが障害になるため試験体と鋼板をガムテープで固定してからボルトを外す。試験板上の試験体作製位置を厚さ0.8mmの養生を設ける。1液ウレタン型プライマーを塗布し指触乾燥後、試験用材料3B及び4Bを塗布し塗布厚(0.8mm)を均一にするためにプラスチック板(2mm厚)を試験体上にのせ硬化させる。48時間室温で養生後、プラスチック板を脱型する。更に120時間室温で養生して試験体とする。なお、試験体はそれぞれ各3体ずつ作製した。
試験実施前日から試験体を室温23℃の試験室で養生を行った。養生後の試験体について、試験機(SHIMAZUオートグラフ)を使用し試験を行った。試験速度は5mm/minとした。なお、試験結果は3体の試験体における平均値とした。
試験用材料3Bはビニルエステル樹脂A及びBを所定の割合で混合した例であり、試験用材料4Bはビニルエステル樹脂Bとガラスマットを組み合わせて用いた例である。これらのうち、試験用材料3Bは本発明の防食組成物に相当し、試験用材料4Bは従来塗布型ライニング工法に用いられていたガラスマットを含むビニルエステル樹脂に相当する。
破断点での比較では試験用材料3Bを用いた試験体が0.982mmであり、試験用材料4Bを用いた試験体が最小値で0.775mmであり、その差は0.2mm程度であるが、試験中の試験体破壊過程において大きな違いがあった。
試験用材料4Bを用いた試験体は最大点(試験力、ストローク)に至る前に、ひび割れ部を中心に塗膜剥離が発生した。試験開始後間もなくクラック付近が僅かに変色し、剥離が広がり始め大きく広がったように見えた瞬間破断した。剥離の状態は塗膜の変形もなく、試験後の試験体を目視しても僅かに剥離部の色が白く見える程度である。樹脂が着色されていたり、表面の仕上がりに凹凸がある場合は、発見する事は不可能である。
今回は塗膜厚の均一化のためにプラスチック板を使用したため表面が平滑である事と着色していなかったことが幸いした。この現象により、疑問が生じることとなる。試験はひび割れ追従性試験(ゼロスパン)であるが剥離が発生するとゼロスパンでは無く剥離間距離の引張試験となる。当然、ストロークも大きな値となる。
実際の現場施工では、剥離が発生すると短期間で塗膜破壊に繋がり設備欠陥となる。剥離が発生したストロークを試験体の伸びた距離とした場合は、試験用材料4Bを用いた試験体の結果はより小さい数値になる。
試験用材料3Bを用いた試験体では、剥離は発生せず極めてゼロスパンに近い範囲が引っ張られ破断点に至った。試験用材料3Bを用いた試験体は塗膜強度を付着力(下地強度)が上回った為に剥離が発生しなかった。一方、試験用材料4Bを用いた試験体は付着力を塗膜強度が上回り剥離が発生した。コンクリート、モルタル板で同様の試験を行っても同じ結果となるので、試験用材料4Bを用いた試験体は塗膜強度と付着力(下地強度)のバランスが適正ではない結果となった。
この試験用材料4Bを用いた試験体の塗膜強度はガラスマット(補強繊維)による結果であることがわかる。
非特許文献1の175頁第7章 コンクリート防食箇所の点検では、塗膜の剥離、ふくれ、浮きが不具合例として掲載されているため剥離が発生したストロークを試験結果とし、ガラスマットを使用した試験用材料4Bを用いた試験体の試験値は最大点ストロークを下回ると判断することが妥当である。
コンクリート等の下地材に付着することによって成立する防食工法においては大きな塗膜強度は必要なく付着力とバランスのとれた塗膜強度が求められる。今回の試験により、ひび割れが発生している、または発生する可能性がある、動きや振動のある下地材には、試験用材料3Bが適当であることが分かる。
これらの結果から、本発明の防食組成物によれば、ガラスマットを使用しない場合でも、むしろガラスマットを使用した従来のビニルエステル樹脂よりも優れたひび割れ追従性を有し、塗工型ライニング施工等に好適に適用可能であることが確認された。
試験用材料3Bを用いて作製した試験体について、非特許文献1の5.7塗布型ライニングエ法の設計及び品質規格C種に準じた試験を行った。なお、以下の試験において、試験体は、所定の材質・寸法の板状基材の片面又は両面(6面)に、1液ウレタン型プライマー(UM-50p:昭和電工製)を0.2km/m2、試験用材料3Bを0.3km/m2、試験用材料3Bを0.3km/m2、及び試験用材料3Bを0.2km/m2をこの順で、設計厚0.4mm以上となるように塗布することにより作製した。その結果を以下に示す。
板状基材として、150×70×20(mm)のセメントモルタル板を用い、板状基材の6面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体を10%の硫酸水溶液に45日間浸せきし、被覆の外観を観察したところ、被覆にふくれ、割れ、軟化、溶出は確認されなかった。
板状基材として、150×70×20(mm)のセメントモルタル板を用い、板状基材の6面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体を10%の硫酸水溶液に120日間浸せきした時の硫黄侵入深さを測定した。その結果、硫黄浸入深さは設計厚さに対して0%、浸入深さは2μm以下であった。
板状基材として、150mm円に内接する正八角形(159cm2)の6mm厚フレキシブル板を用い、片面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体について透水性試験を行ったところ、透水量は0.00gであった。
板状基材として、150×70×20(mm)のセメントモルタル板を用い、片面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体についてコンクリート(セメントモルタル)との一体性について評価した。その結果、標準状態では3.0N/mm2であり吸水状態では3.3N/mm2であった。
板状基材として、200×150×6(mm)のフレキシブル板を用い、片面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体について、被覆層の外観を観察したところ、被覆にしわ、むら、剥がれ、割れは確認されなかった。
板状基材として、150×70×20(mm)のセメントモルタル板を用い、板状基材の6面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体を水酸化カルシウム飽和水溶液に45日間浸せきし、被覆の外観を観察したところ、被覆にふくれ、割れ、軟化、溶出は確認されなかった。
板状基材として、150×70×20(mm)のセメントモルタル板を用い、板状基材の6面に1液ウレタン型プライマー及び試験用材料3Bを塗布した試験体を作製した。この試験体を10%の酢酸水溶液(23℃±2℃)に、60日間浸せきし、被覆の外観を観察したところ、被覆にふくれ、割れ、軟化、溶出は確認されなかった。
Claims (6)
- 硬化した際の引張伸び率が100~200%であるビニルエステル樹脂Aと、硬化した際の引張伸び率が1~20%であるビニルエステル樹脂Bと、硬化剤と、硬化促進剤とを含有する防食用組成物。
- ビニルエステル樹脂Bの硬化した際の熱変形温度が80~220℃である、請求項1に記載の防食用組成物。
- ビニルエステル樹脂Bがビスフェノール型ビニルエステル樹脂である、請求項1又は2に記載の防食用組成物。
- 防食組成物におけるビニルエステル樹脂A及びビニルエステル樹脂Bの質量比が40:60~90:10である、請求項1又は2に記載の防食用組成物。
- コンクリート構造物保護用である、請求項1又は2に記載の防食用組成物。
- コンクリート構造物を、請求項1又は2に記載の防食用組成物から形成される防食被覆層により保護する工程を備えるコンクリート構造物保護方法。
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