JP7337658B2 - 金属担持触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属担持触媒の製造方法に関する。
石油精製や基礎化学品の製造等において、無機酸化物に活性成分として金属成分(単体、化合物)を担持した固体触媒が広く用いられている。そして、反応に応じて固体触媒を合理的、効率的に開発する触媒デザインと触媒調製法の重要性が広く認識されている。
触媒デザインに関して、無機酸化物に担持された金属成分の分布が、その触媒活性に大きく影響を与えることが知られている。例えば、金属成分が無機酸化物に均一に担持されると、金属成分の凝集が起こりづらくなり、一般に触媒活性が高くなる。一方、反応によっては、金属成分が無機酸化物の特定の部分に担持されている方が、均一に担持されるよりも活性が高くなる場合がある。固体触媒中の金属成分の分布に関して、固体触媒の深さ方向における金属成分の分布を制御するための種々の検討が行われている。
固体触媒の深さ方向における金属成分の分布の異なる固体触媒として、金属成分が均一に担持されたuniform型固体触媒、外層に担持されたegg shell型固体触媒、内層に担持されたegg white型固体触媒、中心に担持されたegg yolk型固体触媒が知られている。
uniform型固体触媒は、金属成分の分散度が高くなりやすく、その結果固体触媒上の活性点の数が増え、活性が向上するという特徴がある。また、固体触媒の被毒が起こりやすい反応(重油の水素化脱硫反応、自動車の排ガス処理反応等)で使用される固体触媒では、egg white型固体触媒が適している場合がある。さらに、拡散律速となるような反応では、egg shell型固体触媒が適していることが知られている。
固体触媒の深さ方向における金属成分の分布の制御に関して、非特許文献1には、担体に強く吸着する触媒成分溶液を担体に浸漬させ、その浸漬時間を変えることにより、担体に吸着する触媒成分溶液の量を制御する方法が記載されている。前記触媒成分は担体の外側から吸着していくため、浸漬時間を短くすることで、担体の外層にのみ触媒成分が担持されたegg shell型固体触媒が調製可能であることが記載されている。
「新しい触媒化学 第2版」p.176~177 菊地英一、瀬川幸一、多田旭男、射水雄三、服部英共著、2004年10月1日発行
非特許文献1に記載の方法では、含浸液として、担体に強く吸着する触媒成分溶液を使用する必要があるため、担体と含浸液の組み合わせが制限され、汎用的ではない。さらに、浸漬時間は担体の物性により個別に決定する必要があると考えられ、この点からも汎用的ではない。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、簡便に固体触媒の深さ方向の金属成分の分布を制御することが可能な金属担持触媒の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 金属化合物及び第1溶媒を含む第1液体と、第2溶媒を含む第2液体と、を無機材料に含浸させた後、前記第1溶媒及び前記第2溶媒を除去することを含み、前記第1液体と、前記第2液体のハンセン溶解度パラメータの距離(Ra)が所定の値となるよう前記第1液体と、前記第2液体との組み合わせを選択する、金属担持触媒の製造方法。
[2] 前記Raが10MPa1/2以上である、[1]に記載の金属担持触媒の製造方法。
[3] 前記第2液体の前記第1液体に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差(RED)が1超である、[1]又は[2]に記載の金属担持触媒の製造方法。
[4] 前記金属化合物がニッケル化合物である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
[5] 前記無機材料がゼオライトを含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
[6] 前記金属担持触媒が流動接触分解触媒である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
[7] 前記第1液体と、前記第2液体と、を別々に含浸させる[1]~[6]のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
[8] 前記第2液体を含浸させた後に、前記第1液体を含浸させる、[7]に記載の金属担持触媒の製造方法。
[9] 前記第1液体と、前記第2液体と、を混合して含浸させる[1]~[6]のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
本発明によれば、簡便に固体触媒の深さ方向の金属成分の分布を制御することが可能な金属担持触媒の製造方法を提供することができる。
ハンセン溶解度パラメータ及び相互作用半径の求め方を示す模式図である。 第1液体のハンセン溶解度パラメータと、第2液体のハンセン溶解度パラメータとの距離を示す模式図である。 実施例1で調製したFCC模擬平衡触媒AのEPMA分析結果を示す図である。 比較例1で調製したFCC模擬平衡触媒BのEPMA分析結果を示す図である。 参考例1の実機運転を行って得られたFCC平衡触媒のEPMA分析結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
本明細書において「溶媒」とは、常圧(101,325Pa)、20℃において液体状態である金属元素を含まない1種の化合物からなる物質を意味する。
本明細書において「沸点」とは、常圧(101,325Pa)における沸点を意味する。
本明細書において無機材料の「全細孔容積」は、水銀圧入法により測定することができる。
本明細書において、固体触媒の深さ方向の金属成分の分布は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)分析によって行うことができる。
本実施形態の金属担持触媒の製造方法(以下、単に「触媒の製造方法」ともいう。)は、金属化合物及び第1溶媒を含む第1液体と、第2溶媒を含む第2液体と、を無機材料に含浸させた後、前記第1溶媒及び前記第2溶媒を除去することを含む。前記第1液体と、前記第2液体のハンセン溶解度パラメータの距離(Ra)が所定の値となるよう前記第1液体と、前記第2液体との組み合わせを選択する。
<ハンセン溶解度パラメータ>
ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter(以下、単に「HSP」ともいう。)は、分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすいとの考えに基づいている。HSPは、分子間の分散力に由来するエネルギー(δd)、分子間の双極子相互作用に由来するエネルギー(δp)、及び分子間の水素結合に由来するエネルギー(δh)から構成される。これらの3つのパラメータは3次元空間(ハンセン空間)における座標とみなすことができる。
HSP値が未知の評価試料におけるHSP値は以下の方法で算出することができる。
HSP値(δdm、δpm、δhm)を三次元空間にプロットすることにより特定されるハンセン溶解度パラメータ空間において、既知のHPS値を有する複数の純物質(1種の化合物からなる物質)をプロットするとともに、上記純物質に対する評価試料の溶解性の有無によってハンセン球を特定し、当該ハンセン球の中心値を求めることで評価試料のHSP値を算出することが出来る。
また評価試料のHSP値は、平均分子構造の情報から原子団寄与法を用いて算出することも出来る。原子団寄与法を用いて評価試料のHSP値を算出する場合、例えばコンピューターソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を使用して算出することができる。
上記ハンセン球の中心値、すなわちHSP値(δdm、δpm、δhm)の求め方について、図1を用いて説明する。
先ず、図1に例示する(分散項δd、極性項δpおよび水素結合項δhを座標軸とする)三次元空間に既知のHSP値を有する15~20個程度の純物質のHSP値をプロットする。
このとき、図1に示すように、例えば、評価試料に溶解性を示す純物質を○印、評価試料に溶解性を示さない純物質を×印で表記する。
次いで、プロットされた評価試料の溶解性に基づき、溶解性を示した純物質(図1で○印で示す)を包含し、溶解性を示さなかった純物質(図1に×印で示す)を包含しない仮想球のうち、最小半径を有するものを(図1に球状に示す)ハンセン球Sとして求める。
上記ハンセン球Sを成す半径(上記最少半径)が図中に○印で示す純物質を溶解し相溶性を示す相互作用半径Rとなり、また、得られたハンセン球Sの中心値(δdm、δpm、δhm)が評価試料のHSP値となる。
次に図2は、本実施形態の第1液体のHSP値と、第2液体のHSP値の距離を示す模式図である。第1液体のHSP値を(δd、δp、δh)とし、第2液体のHSP値を(δd、δp、δh)とした時に、HSP値の距離(以下、単に「Ra」ともいう。)は、下式1により算出することができる。
Ra={4×(δd-δd+(δp-δp+(δh-δh}0.5 式1
本実施形態においては、第1液体と、第2液体のRaを所定の値とすることで、固体触媒の深さ方向の、第1液体に含まれる金属化合物に由来する金属成分の分布を制御することができる。Raの値が大きいほど固体触媒の深さ方向に対して第1液体に含まれる金属化合物に由来する金属成分をシャープに偏在させることができ、小さいほど緩やかな分布を形成することができる。
固体触媒の深さ方向において、第1液体に含まれる金属化合物に由来する金属成分を偏在させる場合、Raは10MPa1/2以上であることが好ましく、12MPa1/2以上であることがより好ましく、14MPa1/2以上であることがさらに好ましい。Raが前記下限値以上であると、得られる固体触媒における金属化合物の深さ方向の分布の制御が行いやすくなる。なお、Raは使用する金属化合物、溶媒(第1溶媒、第2溶媒)によって値は大きく異なるため、上限値に限定はないが、実質的には30以下程度となる場合が多い。
本実施形態においては、第2液体の第1液体に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であることが好ましい。
第2液体の第1液体に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差(以下、単に「RED」ともいう。)は、第1液体の相互作用半径をRとしたときに下式2により算出することができる。
RED=Ra/R式2
本実施形態においては、REDは1超であることが好ましい。REDが1超であると、得られる固体触媒における金属化合物に由来する金属成分の深さ方向の分布の制御が行いやすくなる。なお、REDは使用する金属化合物、溶媒(第1溶媒、第2溶媒)によって値は大きく異なるため、上限値に限定はないが、実質的には10以下程度となる場合が多い。
本実施形態の触媒の製造方法で使用される無機材料、第1液体、及び第2液体について以下詳細に説明する。
<無機材料>
本実施形態の無機材料としては、炭素材料、無機酸化物が例として挙げられる。
無機酸化物は、金属元素と酸素原子から構成される塩である。無機酸化物は、金属原子が2種類以上含まれる複合酸化物であってもよい。無機酸化物にさらに別の無機酸化物が担持された構造を有していてもよい。無機酸化物は結晶性の無機酸化物でもよく、非結晶性の無機酸化物でもよい。
無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化バリウム、酸化リン等が例として挙げられる。複合酸化物としては、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、リン-アルミナ、シリカ-ジルコニア、ボリア-アルミナ、シリカ-マグネシア-アルミナ、ゼオライト、ペロブスカイト、粘土鉱物等が例として挙げられる。
炭素材料としては、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が挙げられる。
無機材料は1種類を単独で用いてよく、2種類以上を併用してもよい。
無機材料は多孔質の無機材料であることが好ましい。
無機材料の全細孔容積は、本発明の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば0.01~2mL/gであることが好ましい。
無機酸化物の比表面積は、特に限定されないが、例えば1~1,000m/gであることが好ましい。炭素材料の比表面積は、特に限定されないが、例えば500~3,000m/gであることが好ましい。無機材料の比表面積は、窒素吸着により測定することができる。
<第1液体>
本実施形態において第1液体は、金属化合物及び第1溶媒を含む。より具体的には、第1液体は、金属化合物が第1溶媒に溶解した溶液である。以下、第1液体に含まれる金属化合物及び第1溶媒について説明する。
第1液体に含まれる金属化合物としては、特に限定されないが、本実施形態の触媒の製造方法により製造される触媒を使用する反応における活性成分としての金属成分、劣化成分としての金属成分が例として挙げられる。第1液体に含まれる金属化合物としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、インジウム、銅、クロム、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、タングステン等の金属元素を含む化合物が挙げられる。
金属化合物の形態は、第1溶媒に対する溶解度、及び使用する第2液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩、カルボン酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等が例として挙げられる。
金属化合物は1種類を単独で用いてよく、2種類以上を併用してもよい。
第1溶媒は、金属化合物の溶解度、使用する第2液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、水、有機溶媒が例として挙げられる。
有機溶媒としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル等のエステル類、アセトン、ジイソブチルケトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2ピロリドン等のケトン類、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート基を有する有機溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、1-オクタデセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2,2,4-トリメチルペンタン等の炭化水素等が例として挙げられる。
第1溶媒は1種類を単独で用いてよく、2種類以上を併用してもよい。
<第2液体>
本実施形態において第2液体は、第2溶媒を含む。また、第2液体は、金属化合物を含んでいてもよい。以下、第2液体に含まれる第2溶媒について説明する。
第2溶媒は、金属化合物の溶解度(第2液体が金属化合物を含む場合)、使用する第1液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、水、有機溶媒が例として挙げられる。有機溶媒としては、第1溶媒で説明した有機溶媒を用いることができる。
第2溶媒は1種類を単独で用いてよく、2種類以上を併用してもよい。
第2液体は、金属化合物を含んでいてもよい。
前記金属化合物としては、第1液体に含まれる金属化合物を用いることができる。第2液体に含まれる金属化合物は、第1液体に含まれる金属化合物とは同じ金属種の化合物でもよく、異なる金属種の化合物でもよいが、異なる金属種の化合物であることが好ましい。
金属化合物の形態は、第2溶媒に対する溶解度、使用する第1液体、及び目的とするRaやRED等により、第1液体に含まれる金属化合物においてすでに説明した形態から適宜選択すればよい。
<含浸法>
含浸法としては、無機材料をその保持可能な最大溶液(溶媒)量に対して過剰の含浸液に浸した後に乾燥することにより、担持成分を担持する「蒸発乾固法」、無機材料をその保持可能な最大溶液(溶媒)量に対して過剰の含浸液に浸した後に、ろ過等の固液分離により担持成分を担持する「平衡吸着法」、無機材料にその保持可能な最大溶液(溶媒)量とほぼ同体積の含浸液を含浸し、乾燥させることにより、担持成分を担持する細孔充填法(Incipient Wetness法)が例として挙げられる。保持可能な最大溶液(溶媒)量として、無機材料の全細孔容積の値を使用してもよい。
本実施形態においては、無機材料の細孔内に充填される第1液体と、第2液体との体積比等を容易に調整しやすい観点から、細孔充填法が好ましい。
(蒸発乾固法、平衡吸着法)
蒸発乾固法、平衡吸着法においては、第1液体と、第2液体との混合液を含浸液として使用することができる。
(細孔充填法)
細孔充填法においては、第1液体と、第2液体とをそれぞれ含浸液として別々に逐次含浸してもよく、第1液体と、第2液体との混合液を含浸液として一括含浸してもよい。
細孔充填法における具体的な含浸手順としては、第1液体と、第2液体の混合液を無機材料に含浸する方法(方法1)、第1液体を無機材料に含浸して含浸前駆体を得、前記含浸前駆体にさらに第2液体を含浸する方法(方法2)、第2液体を無機材料に含浸して含浸前駆体を得、前記含浸前駆体にさらに第1液体を含浸する方法(方法3)が挙げられる。
細孔充填法において、前記方法3を採用すると、第1液体に含まれる金属化合物が無機材料の外層に担持されたegg shell型固体触媒を得ることができる。前記方法3では、まず、第2液体を無機材料に含浸して含浸前駆体を得る。その後、含浸前駆体にさらに第1液体を含浸すると、第2液体が無機材料の内部に存在し、第1液体が無機材料の外部に存在する含浸体が得られると考えられる。
この含浸体から、第1溶媒及び第2溶媒を除去すると、第1液体に含まれる金属化合物がそのまま無機材料の外部に担持されると考えられる。
<溶媒除去方法>
上記含浸方法によって得られた含浸体から第1溶媒及び第2溶媒の除去を行う。乾燥は常圧で行ってもよく、減圧で行ってもよい。また、乾燥温度は、除去する溶媒の乾燥を行う圧力における沸点等を勘案して適宜選択を行えばよいが、例えば第1溶媒及び第2溶媒の中で最も沸点高い溶媒の沸点の-10~30℃の範囲であることが好ましく、-5~20℃の範囲であることがより好ましい。前記乾燥温度で乾燥を行う場合、乾燥時間は0.5~1時間といった短時間で乾燥してもよく、12~24時間といった長時間をかけて乾燥してもよい。
本実施形態の触媒の製造方法において、上記溶媒除去の後にさらに加熱処理を行ってもよい。金属化合物を酸化物として無機材料に担持する場合、酸素等の酸化性気体を含む気体の雰囲気中、加熱処理(焼成)を行えばよい。加熱処理温度は、例えば400~800℃でもよく、400~600℃でもよい。金属化合物を金属単体として無機材料に担持する場合、水素、一酸化炭素等の還元性気体を含む気体の雰囲気中、加熱処理を行えばよい。加熱処理温度は、例えば400~800℃でもよく、400~600℃でもよい。
本発明の触媒の製造方法により製造される金属担持触媒は、第1液体に含まれる金属化合物に由来する金属成分を活性成分とする固体触媒が例として挙げられる。
このような固体触媒が触媒する反応としては、特に限定されないが、例えば、水素化反応、脱水素化反応、脱水反応、水和反応、光触媒反応、酸化反応、還元反応等が挙げられる。
また、本発明の製造方法によって製造される金属担持触媒は、第1液体に含まれる金属化合物に由来する金属成分を劣化成分とする固体触媒が例として挙げられる。
このような固体触媒としては、流動接触分解反応に使用される流動接触分解触媒(以下、単に「FCC触媒」ともいう。)の平衡触媒が例として挙げられる。すなわち、本実施形態の金属担持触媒の製造方法は、FCC触媒の平衡触媒を模した模擬触媒の製造に好適に採用される。
<FCC平衡触媒>
流動接触分解反応において、FCC触媒は、反応により生成したコークの堆積、原料油中に含まれる金属の堆積、及び水熱劣化により活性が低下する。コークの堆積により活性が低下したFCC触媒は、流動接触分解装置の再生塔で空気流通下、高温でコークを燃焼除去することにより、流動接触分解装置内で再生することが可能である。一方、金属の堆積による劣化、水熱劣化により活性が低下したFCC触媒は、流動接触分解装置内で再生することは実質的に不可能である。そのため、活性が低下したFCC触媒の一部を定期的あるいは定常的に抜出、必要量の新触媒を投入することによって、流動接触分解装置内のFCC触媒の活性を維持するという方法がとられている。このように流動接触分解装置内におけるFCC触媒は、投入と抜出しを行いながら活性を一定に保っていることから平衡触媒と呼ばれている。
したがって、FCC触媒の性能を評価する上では、新触媒ではなく、平衡触媒の活性を評価する必要がある。一方、平衡触媒を得るためには、活性が低下した触媒の抜出し及び新触媒の投入を行いながら一定時間以上、流動接触分解反応を行わなければならない。したがって、FCC触媒の性能を評価するために、簡便に平衡触媒を製造する方法が望まれている。
流動接触分解反応における原料油中に含まれる金属としては、ニッケル、バナジウム、鉄、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、バリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉛、モリブデン、クロム、カドミウム、ヒ素、セレン、ケイ素等が代表的な例として挙げられ、これらは有機金属化合物(例えば、ポルフィリン)の形態をとる。これらの金属はFCC触媒によって脱メタルされ、FCC触媒上へ堆積する。上記金属の中でも特に、ニッケル、バナジウムがFCC触媒の活性を低下させる劣化成分として知られている。
本願の発明者が、実機におけるFCC平衡触媒のEPMA分析を行った所、ニッケルがegg shell型で偏在した構造となっていることが判明した。なお、バナジウムについてはそのような傾向はみられなかった。
そこで、本願の発明者は、FCC新触媒にニッケルを本分野で公知の含浸法で担持し、高温で焼成処理及びスチーム処理を行うことによって、実機におけるFCC平衡触媒を再現できないか検討を行った。しかしながら、上記方法によって得られた触媒においては、ニッケルがFCC新触媒上に均一に担持され、上述の実機におけるFCC平衡触媒のようなegg-shell型の担持状態を再現することができなかった。
そこで、本願の発明者は、本発明の触媒の製造方法を用いてニッケルをFCC新触媒に担持し、上述の実機におけるFCC平衡触媒のようなegg-shell型の担持状態を再現できないか検討を行った。その結果、本発明の触媒の製造方法を用いて製造された触媒のEPMA分析から、実機におけるFCC平衡触媒に非常に近い担持状態の触媒を得ることができることがわかった。以下、FCC模擬平衡触媒の製造方法について詳細に説明を行う。
<FCC模擬平衡触媒の製造方法における無機材料>
本実施形態においては、無機材料として、FCC新触媒を使用する。
FCC新触媒は、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト、βゼオライト、ZSM-5型ゼオライト等のゼオライトを含むことが好ましく、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを含むことがより好ましい。FCC新触媒の総質量に対するゼオライトの含有量は25~45質量%であることが好ましく、28~42質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。
本明細書において、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとは、ソーダライトケージ構造、すなわちアルミニウム及びケイ素四面体を基本単位とし、頂点の酸素をアルミニウム又はケイ素が共有することにより形成される立体的な正八面体の結晶構造の各頂点を切り落とした、四員環や六員環等により規定される十四面体結晶構造により構成される空隙を有し、このソーダライトケージ同士が結合する場所や方法が変化することによって、種々の細孔構造、骨格密度、チャンネル構造を有するものを意味する。
上記ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとしては、ソーダライト、A型ゼオライト、EMT、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト等から選ばれる一種以上を挙げることができ、安定化Y型ゼオライトであることが好ましい。
安定化Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトを出発原料として合成され、Y型ゼオライトと比較して、結晶化度の劣化に対して耐性を示すものであり、一般には、Y型ゼオライトに対し高温での水蒸気処理を数回行った後、必要に応じて、塩酸等の鉱酸、水酸化ナトリウム等の塩基、フッ化カルシウム等の塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤で処理することにより作製される。
上記方法で得られた安定化Y型ゼオライトは、水素、アンモニウムあるいは多価金属から選ばれるカチオンでイオン交換された形で使用することができる。また、安定化Y型ゼオライトとして、より安定性に優れたヒートショック結晶性アルミノシリケートゼオライト(特許第2544317号公報参照)を使用することもできる。
本実施形態のFCC新触媒は、さらに結合剤、粘土鉱物等を含むことが好ましい。
結合剤としては、例えば、シリカゾルが例として挙げられる。シリカゾルを使用することにより、FCC新触媒を造粒するときの成形性が向上し、容易に球状化することを可能にする。また、造粒後のFCC新触媒の流動性及び耐摩耗性を容易に向上することができる。FCC新触媒の総質量に対する結合剤の含有量は15~35質量%であることが好ましく、18~32質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ベントナイト、アタパルガイト、ボーキサイト等を挙げることができる。また、本実施形態のFCC新触媒においては、シリカ、シリカ-アルミナ(上述のゼオライトを除く)、アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、リン-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-マグネシア-アルミナ等の通常のFCC新触媒に使用される公知の無機材料の微粒子を上記粘土鉱物と併用することができる。
FCC新触媒の総質量に対する粘土鉱物と無機材料の含有量の和は35~55質量%であることが好ましく、38~52質量%であることがより好ましく、40~50質量%であることがさらに好ましい。
FCC新触媒の総質量に対する粘土鉱物の含有量は25~50質量%であることが好ましく、30~45質量%であることがより好ましく、32~42質量%であることがさらに好ましい。
また、本実施形態のFCC新触媒は、ゼオライト安定性向上剤を含んでいてもよい。ゼオライト安定性向上剤は、ゼオライト結晶の崩壊を抑制する機能を有する。ゼオライト安定性向上剤としてはリン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、第一リン酸アルミニウム及びその他の水溶性リン酸塩等のリン系ゼオライト安定性向上剤、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ディスプロシウム及びホルミウム等の希土類金属系ゼオライト安定性向上剤があげられる。FCC新触媒がゼオライト安定性向上剤を含む場合、FCC新触媒の総質量に対するゼオライト安定性向上剤の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましい。
本実施形態のFCC新触媒の比表面積は、500~850m/gであることが好ましく、600~850m/gであることがより好ましい。本実施形態のFCC新触媒の全細孔容積は、0.05~0.20mL/gであることが好ましく、0.08~0.15mL/gであることがより好ましい。
FCC新触媒は一定の大きさに造粒された上で、流動接触分解反応に使用される。FCC新触媒の粒子径は、通常流動接触分解反応に使用可能な粒子径であれば、特に制限されないが、粒子径が20~150μmの範囲内にあるものが好ましい。
FCC新触媒の粒子径は、例えば、筒井理化学器械製“ミクロ形電磁振動ふるい器 M-2型”により測定することができる。
<FCC模擬平衡触媒の製造方法における第1液体>
本実施形態において第1液体は、ニッケル化合物を含む。より具体的には、第1液体は、ニッケル化合物が第1溶媒に溶解した溶液である。
第1液体に含まれるニッケル化合物の形態は、第1溶媒に対する溶解度、使用する第2液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩、カルボン酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等が例として挙げられる。
このようなニッケル化合物としては、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等が例として挙げられる。
ニッケル化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
第1液体は、ニッケル化合物以外にバナジウム化合物を含んでいてもよい。第1液体は、ニッケル化合物及びバナジウム化合物以外の金属化合物を含まないことが好ましい。
第1液体に含まれるバナジウム化合物の形態は、第1溶媒に対する溶解度、使用する第2液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩、カルボン酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等が例として挙げられる。
このようなバナジウム化合物としては、オクチル酸バナジウム、ナフテン酸バナジウム等が例として挙げられる。
バナジウム化合物は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
第1溶媒は、金属化合物(ニッケル化合物、バナジウム化合物)の溶解度、使用する第2液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、上述の水、及びエステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類、グリコールエーテル、アミド基を有する有機溶媒、ニトリル基を有する有機溶媒、カーボネート基を有する有機溶媒、ハロゲン化炭化水素、炭化水素等の有機溶媒を用いることができる。
この中でも第1溶媒としては、トルエン、キシレンが好ましい。
第1溶媒の沸点は、特に限定されないが、例えば50~150℃であることが好ましく、70~130℃であることがより好ましく、80~110℃であることがさらに好ましい。第1溶媒の沸点が前記範囲の下限値以上であると、第1液体を無機材料に含浸後、第1溶媒が一定時間、無機材料の細孔内に留まることになる。第1溶媒の沸点が前記範囲の上限値以下であると、後述の第1溶媒の除去の際、容易に第1溶媒を除去することができる。
第1溶媒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
<FCC模擬平衡触媒の製造方法における第2液体>
本実施形態において第2液体は、第2溶媒を含む。第2液体は、金属化合物としてバナジウム化合物を含んでいてもよい。バナジウム化合物としては、第1液体において説明したバナジウム化合物を用いることができる。第2液体は、バナジウム化合物以外の金属化合物を含まないことが好ましい。以下、第2液体に含まれる第2溶媒について説明する。
第2溶媒は、使用する第1液体、及び目的とするRaやRED等により適宜選択すればよいが、水、有機溶媒が例として挙げられる。有機溶媒としては、第1溶媒で説明した有機溶媒を用いることができる。
例えば、第1液体が、金属化合物としてオクチル酸ニッケル、第1溶媒としてトルエンからなる液体であるとき、第2溶媒として2,2,4-トリメチルペンタンを選択することが好ましい。
第2溶媒の沸点は、特に限定されないが、例えば50~150℃であることが好ましく、70~130℃であることがより好ましく、80~110℃であることがさらに好ましい。第2溶媒の沸点が前記範囲の下限値以上であると、第2液体を無機材料に含浸後、第2溶媒が一定時間、無機材料の細孔内に留まることになる。第2溶媒の沸点が前記範囲の上限値以下であると、後述の第2溶媒の除去の際、容易に第2溶媒を除去することができる。
第2溶媒は1種類を単独で用いてよく、2種類以上を併用してもよい。
<FCCの平衡触媒の製造方法における含浸方法>
本実施形態の含浸方法としては、細孔充填法が好ましい。また、細孔充填法における含浸手順として、第2液体を無機材料に含浸して含浸前駆体を得、前記含浸前駆体にさらに第1液体を含浸する方法が好ましい。
前記方法において、第1液体と、第2液体との体積比(第1液体の体積:第2液体の体積)は、特に限定されないが、例えば1:99~20:80であることが好ましく、5:95~15:85であることがより好ましく、8:92~10:90であることがさらに好ましい。
前記方法において、FCC新触媒の保持可能な最大溶液(溶媒)量に対する第1液体と、第2液体の総体積の割合は、90~110%であることが好ましく、93~105%であることがより好ましく、95~100%であることがさらに好ましい。
前記方法において、FCC新触媒の保持可能な最大溶液(溶媒)量に対する第1液体の体積の割合は、5~20%であることが好ましく、7~15%であることがより好ましく、9~12%であることがさらに好ましい。
前記方法において、FCC新触媒の保持可能な最大溶液(溶媒)量に対する第2液体の体積の割合は、70~105%であることが好ましく、75~98%であることがより好ましく、83~91%であることがさらに好ましい。
本実施形態のFCC新触媒は、微小粒子であるため、粒子間にも溶液(溶媒)を吸収する。したがって、FCC新触媒が保持可能な最大溶液(溶媒)量は、FCC新触媒の全細孔容積の8~12倍となる。
<FCC模擬平衡触媒の製造方法における溶媒除去方法>
上記含浸方法によって得られた含浸体から第1溶媒及び第2溶媒の除去を行う。乾燥は常圧で行ってもよく、減圧で行ってもよい。また、乾燥温度は、除去する溶媒の乾燥を行う圧力における沸点等を勘案して適宜選択を行えばよいが、例えば第1溶媒及び第2溶媒の中で最も沸点高い溶媒の沸点の-10~20℃の範囲であることが好ましく、-5~10℃の範囲であることがより好ましい。前記乾燥温度で乾燥を行う場合、乾燥時間は0.5~1時間といった短時間で乾燥してもよく、12~24時間といった長時間をかけて乾燥してもよい。
本実施形態の触媒の製造方法において、上記溶媒除去の後の触媒前駆体を高温で焼成処理及びスチーム処理を行うことが好ましい。
触媒前駆体に担持されたニッケル化合物を酸化物に変換するため、空気雰囲気下、高温で焼成処理を行う。焼成温度は、有機物が燃焼除去可能な温度であればよく、600℃程度が好ましい。
上述の工程を経て、ニッケルがegg shell型で偏在して担持されたFCC模擬平衡触媒を得ることができる。
第1液体及び第2液体にバナジウム化合物が含まれない場合、本分野で公知の含浸法によりバナジウム化合物を含浸することにより、バナジウムを担持してもよい。バナジウム化合物の含浸は、FCC新触媒に対して行ってもよく、上述の方法で得られたニッケルがegg shell型で偏在して担持されたFCC模擬平衡触媒に対して行ってもよい。
ニッケル、バナジウムの担持量は、対象となる平衡触媒を元素分析して得られたニッケル、バナジウムの含有量を基に適宜設定すればよい。ニッケルの担持量としては通常0.05~1質量%であり、バナジウムの担持量としては通常0.05~1質量%である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
無機材料(FCC新触媒)の全細孔容積の測定、及び触媒のEPMA分析は以下の方法で行った。
(無機材料の全細孔容積の測定)
無機材料の全細孔容積は、水銀圧入装置として、ポロシメーター(MICROMERITICS AUTO-PORE 9200:島津製作所製)を使用して測定した。
(触媒のEPMA分析)
無機材料のEPMA分析は、電子プローブマイクロアナライザー(日本電子株式会社製EPMA、JXA―8600MX)を用いて行った。測定条件は加速電圧15kV、入射電流1×10-7A、測定点間のインターバル10μm、計数時間0.3secで行った。測定触媒の断面は、触媒をMMA(methyl methacrylate)に包埋し、研磨装置を用いて研磨することにより作製した。
EPMA分析から得られる図において、赤色で表示された部分が最もニッケル濃度が高い部分であり、黄色、緑、水色、青色の順でニッケルの濃度が下がっていく。
[製造例1]
シリカゾル(結合剤)42.0g(乾燥基準、SiO換算量)を25%硫酸で希釈し、攪拌することによりシリカゾルの水溶液を得た。安定化Y型ゼオライト76.0g(乾燥基準)に蒸留水を加え、ゼオライトスラリーを調製した。上記のシリカゾル水溶液に、カオリナイト71.4g(乾燥基準)とアルミナ水和酸化物10g(乾燥基準)を加えて混合し、さらに上記のゼオライトスラリーを加えて、ディスパーサーを用いて10分間攪拌混合して水性スラリーを得た。得られた水性スラリーを210℃の入口温度、及び140℃の出口温度の条件で噴霧乾燥し、得られた微小球体を触媒前駆体とした。該触媒前駆体を、60℃の5質量%の硫酸アンモニウム水溶液3Lで2回イオン交換した後、さらに3Lの蒸留水で洗浄した。次いで、洗浄した微小球体を、乾燥基準での酸化ランタン含有量が0.3質量%となるように硝酸ランタン水溶液で15分間イオン交換し、次いで、3Lの蒸留水で洗浄した。その後、乾燥機中、110℃で一晩乾燥し、無機材料であるFCC新触媒を得た。FCC新触媒の全細孔容積は、0.09mL/gであった。
[実施例1]
第1液体として、金属化合物としてオクチル酸ニッケルを、第1溶媒としてトルエン(沸点:110.6℃)を含むニッケル濃度が2質量%のトルエン溶液を用いた。第2液体として、2,2,4-トリメチルペンタン(沸点:99℃)を使用した。第1液体と、第2液体のRaは15.9であり、第2液体の第1液体に対するREDは1.99である。
上記FCC新触媒について、あらかじめ第1溶媒あるいは第2溶媒を触媒に浸漬させ、触媒が保持可能な最大溶媒量を測定した。最大溶媒量は0.86mL/g-catであった。
上記FCC新触媒の保持可能な最大溶媒量に対し90%の体積の第2液体をFCC新触媒に含浸し、含浸前駆体を得た。前記含浸前駆体に、上記FCC新触媒の保持可能な最大溶媒量に対し10%の体積の第1液体を、含浸前駆体を撹拌しながら添加することにより含浸し、含浸体を得た。
得られた含浸体を110℃で0.5時間乾燥を行い、触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体を空気雰囲気下、600℃で2時間加熱処理し、ひきつづいて800℃で12時間スチーム処理を行い、FCC模擬平衡触媒Aを得た。FCC模擬平衡触媒AのEPMA分析結果を図3に示す。
[比較例1]
上記FCC新触媒の保持可能な最大溶媒量に対し100%の体積の第1液体をFCC新触媒に含浸し、含浸体を得た。
得られた含浸体を110℃で0.5時間乾燥を行い、触媒前駆体を得た。得られた触媒前駆体を空気雰囲気下、600℃で2時間加熱処理し、ひきつづいて800℃で12時間スチーム処理を行い、FCC模擬平衡触媒Bを得た。FCC模擬平衡触媒BのEPMA分析結果を図4に示す。
[参考例1]
上記FCC新触媒で実機運転を行った際のFCC平衡触媒を採取した。FCC平衡触媒のEPMA分析結果を図5に示す。
図4に示すように比較例1のFCC模擬平衡触媒Bでは、ニッケルはFCC新触媒上に均一に担持されており、実機におけるFCC平衡触媒のegg-shell型の担持状態を再現することができなかった。図3に示すように実施例1のFCC模擬平衡触媒Aでは、ニッケルはFCC新触媒上にegg-shell型に担持されており、実機におけるFCC平衡模擬触媒の担持状態(図5)を再現することができた。

Claims (6)

  1. 金属化合物及び第1溶媒を含む第1液体と、第2溶媒を含む第2液体と、を無機材料に別々に含浸させた後、前記第1溶媒及び前記第2溶媒を除去することを含み、前記第1液体と、前記第2液体のハンセン溶解度パラメータの距離(Ra)が10MPa 1/2 以上となるよう前記第1液体と、前記第2液体との組み合わせを選択する、金属担持触媒の製造方法。
  2. 前記第2液体の前記第1液体に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差(RED)が1超である、請求項1に記載の金属担持触媒の製造方法。
  3. 前記金属化合物がニッケル化合物である、請求項1又は2に記載の金属担持触媒の製造方法。
  4. 前記無機材料がゼオライトを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
  5. 前記金属担持触媒が流動接触分解触媒である、請求項1~のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
  6. 前記第2液体を含浸させた後に、前記第1液体を含浸させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属担持触媒の製造方法。
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