JP7337472B1 - ワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置 - Google Patents

ワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置 Download PDF

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Abstract

【課題】板絞り込みが発生したときのワークロールの表面の損傷を従来に比べて減らすことが可能となるワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置を提供する。【解決手段】圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、駆動中のスタンドのうち最も下流側の圧延スタンドを含む少なくとも1以上の圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更ステップと、圧延機モータトルクを0に制御する運転制御を実行している圧延スタンドのワークロールギャップを開くギャップ開放ステップと、を備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、ワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置に関する。
特許文献1には、複数のスタンドを有する熱間仕上圧延機によって被圧延材を仕上圧延する際に、複数のスタンドのうちの最終スタンド又は最終スタンドを含む連続した複数スタンドの圧下位置を開放して被圧延材の長手方向尾端部を通板させる、ことが記載されている。
特開2001-105005号公報
一般に、熱延鋼帯の熱間仕上連続圧延では、圧延材の尾端が直前のスタンドを通過して圧延方向での張力から解放されると、尾端の搬送が不安定になり、しわやよじれがある状態で圧延される板の絞り込みが生じることがある。
例えば特許文献1には、最終スタンドから上流スタンドの順に圧下位置を順次開放して圧延材の長手方向尾端部を通板させることで、尾端部が複数スタンドで圧延されないために圧延に伴う絞りを防止できる、と記載されている。しかし、この従来技術によっても板絞り込みを完全に防止することは難しい。
ここで、絞りが発生した場合には、ワークロールに疵がつくことがしばしばあるため、絞りが発生した場合はワークロールの点検、手入れ、又は交換が必要となり、生産ラインの停止を余儀なくされ、稼動率の低下を招いてしまう。又、ワークロール疵が発見されないままで、あるいはワークロール疵の手入れが不十分のままで圧延を続けると、表面に疵のついた不良製品を大量に作り出してしまうことになる。
そこで、絞りが発生したとしてもワークロールの損傷を更に減らすための手法の開発が待たれている。
本発明は、板絞り込みが発生したときのワークロールの表面の損傷を従来に比べて減らすことが可能ワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置を提供する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数の圧延スタンドで圧延される圧延材によるワークロールの表面の損傷を低減する方法であって、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更ステップと、前記運転制御変更ステップを実行している前記圧延スタンドのワークロールギャップを開くギャップ開放ステップと、を有し、前記ギャップ開放ステップを、複数の前記圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機のモータのモータトルクを一定に保つ制御を実行しながら実行し、前記運転制御変更ステップでは、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の前記圧延スタンドと、その下流側の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する。
本発明によれば、板絞り込みが発生したところの圧延を回避するため、ワークロールの表面の損傷を従来に比べて減らすことができる。上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
本発明の実施例の制御装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図。 圧延設備におけるF6スタンド及びF7スタンドの入側及び出側、また巻取機手前での被圧延材に対して成立する関係を説明する図。 圧延設備におけるF7スタンドのワークロールギャップを開放した際のF7スタンド出側の板厚が初期板厚T7からF6スタンド出側での板厚T6まで変化する時の巻取速度Vcの変化の様子を示す図。 圧延設備におけるF7スタンドのワークロールギャップを開放した際のF7スタンドの出側板厚が初期板厚T7からF6スタンド出側での板厚T6まで変化する時のF7スタンドの出側板速度V7の変化の様子を示す図。 実施例の制御装置における制御フローチャート。
本発明のワークロールの表面の損傷低減方法、制御装置、及び圧延装置の実施例について図1乃至図5を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
なお、本発明における圧延の対象材料の圧延材は、一般に圧延が可能な金属材料の帯板であり、その種類は特に限定されず、鋼板に加えて、アルミや銅などの非鉄材料とすることができる。
最初に、制御装置を含めた圧延設備の全体構成について図1を用いて説明する。図1は本実施例の制御装置とそれを備えた圧延設備の構成を示す概略図である。
図1に示した圧延設備200は被圧延材1を圧延するための設備であって、粗圧延スタンド2,3、仕上圧延スタンドである計7つのF1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、F6スタンド60、F7スタンド70、カメラ81,82,83,84、張力制御用のルーパー120、画像処理計算機90、表示装置95、巻取機110等を備えている。
なお、圧延設備200については、図1に示すような9つの圧延スタンドが設けられている形態に限られず、最低1スタンド以上であればよい。
粗圧延スタンド2,3や、F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、F6スタンド60、F7スタンド70の各々は、上ワークロールおよび下ワークロール、これら上ワークロールおよび下ワークロールにそれぞれ接触することで支持する上バックアップロール、下バックアップロール、上バックアップロールの上部に設けられた圧下シリンダ11,21,31,41,51,61,71等を備えている圧延機である。
なお、各々のスタンドは、各々の上下ワークロールと各々の上下バックアップロールとの間に、更に上下中間ロールを各々設けた6段の構成とすることができる。圧延機のロール構成は、上述の形態に限られず、最低上下ワークロールがあればよい。
ルーパー120はライン張力制御用のロールである。このロールは、その回転軸を被圧延材1の幅方向に延びるようにして設置されており、被圧延材1を鉛直方向の上方に上げたり、下方に下げたりすることでライン張力を変更できるよう、F1スタンド10とF2スタンド20との間、F2スタンド20とF3スタンド30との間、F3スタンド30とF4スタンド40との間、F4スタンド40とF5スタンド50との間、F5スタンド50とF6スタンド60との間、F6スタンド60とF7スタンド70との間、にそれぞれ設けられている。なお、ルーパー120は、板幅方向の張力分布を検出する板形状計の機能を合わせて備えるものとできる。
カメラ81はF4スタンド40の出側かつF5スタンド50の入側の被圧延材1を含む画像を撮像することが可能な位置に、カメラ82はF5スタンド50の出側かつF6スタンド60の入側の被圧延材1を含む画像を撮像することが可能な位置に、カメラ83はF6スタンド60の出側かつF7スタンド70の入側の被圧延材1を含む画像を撮像することが可能な位置に、カメラ84はF7スタンド70の出側のうち被圧延材1を含む画像を撮像することが可能な位置に、それぞれ設けられており、例えば、被圧延材1の真上、あるいは斜め上方から被圧延材1を含む画像を、例えば0.1秒より短い間隔で、好適には動画形式で撮像する。カメラ81、82,83,84により撮像された画像のデータは、通信線85を介して画像処理計算機90に送信される。
なお、カメラが上記の4か所に設けられている場合について説明するが、カメラは最低1カ所に設けられていればよく、1個、あるいは2個以上とすることができ、すべてのスタンドの間や、圧延設備200の入側に設けてもよい。
巻取機110は、F7スタンド70を出た被圧延材1を巻き取るための装置であり、モータ(図示省略)により駆動される。
画像処理計算機90は、ワークロールギャップの緊急開放制御を実行するための装置であり、圧延設備200内の各機器の動作の指令を行うコンピュータなどの制御機器で構成される制御装置であり、また、カメラ81,82,83,84により撮像された画像から被圧延材1の圧延異常としての板絞り込みの有無を検出する部分である。この画像処理計算機90の機能として、画像処理部91、巻取機運転制御変更部92、運転制御変更部93及びギャップ開放部94を有する。
画像処理部91は、カメラ81,82,83,84により撮像された画像から被圧延材1の圧延異常としての板絞り込みの有無を検出する部分である。例えば、圧延異常としての被圧延材1の尾端部での板絞り込みの有無を検出する部分である。なお、板絞り込みの有無を検出する部分は尾端部に限られず、被圧延材1のあらゆる箇所が対象である。この画像処理部91における板絞り込みの有無の検出手法については特に限定は無く、公知の手法を採用可能であり、また、オペレータが目視で板絞り込みを検出した場合は、特定のスイッチをオンにするなどして、画像処理部91に板絞り込み検出の信号を送っても良い。
本実施例では、被圧延材1の板絞り込み、例えば被圧延材1の尾端部に板絞り込みが生じたことを示す情報を、複数の仕上圧延スタンド10,20,30,40,50,60,70内のカメラ81,82,83で得られた画像情報としているが、それ以外の箇所に設置されたカメラによって得られる情報とすることや、他の様々な板絞り込みの検出手法により得られる情報とすることができる。
巻取機運転制御変更部92は、後述するギャップ開放部94による制御を実行する際に、複数の圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機110のモータトルクを一定に保つ制御を実行する部分である。この巻取機運転制御変更部92が、好適にはギャップ開放ステップでの巻取機運転制御を変更する実行主体となる。
また、巻取機運転制御変更部92は、巻取機110のモータのモータトルク設定値を、ワークロールギャップのギャップ開放比率を考慮して変更し、巻取機110が被圧延材1に掛けるライントータル張力を上げることができる。
運転制御変更部93は、複数の圧延スタンドで圧延される被圧延材1に板絞り込み、例えば被圧延材1の尾端部に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する部分である。この運転制御変更部93が、好適には運転制御変更ステップの実行主体となる。
具体的には、ワークロール駆動の圧延スタンドであれば、ワークロールを回転駆動させるモータのモータトルクを0に制御し、6段の圧延機で中間ロール駆動の圧延スタンドであれば、中間ロールを回転駆動させるモータのモータトルクを0に制御する。
この圧延機の駆動モータのモータトルクを「0」に制御する、とは、トルクを「0」丁度になるように制御し続けるものである。これは、被圧延材1に駆動モータが回されてしまうと、モータトルクがマイナスになり、モータがブレーキになるケースが生じてしまう虞があるためであり、制御を開始してからは、動いている被圧延材1の速度の通りにワークロールを回転させ、圧延機前後の被圧延材1のマスフロー一定条件を満たすための処置である。圧延機の駆動モータトルクの「0」制御は、後述するギャップ開放ステップにおけるワークロールギャップを開く制御の間も継続して行われる。
ここで、運転制御変更部93は、被圧延材1に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の圧延スタンドと、その下流側の圧延スタンド(カメラ81で得られた情報に基づく場合はF4スタンド40、F5スタンド50、F6スタンド60及びF7スタンド70、カメラ82で得られた情報に基づく場合はF5スタンド50、F6スタンド60及びF7スタンド70、カメラ83で得られた情報に基づく場合はF6スタンド60及びF7スタンド70)の圧延機モータトルクを0とする制御を実行するものとできるが、被圧延材1に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られたら、全ての仕上圧延スタンド(F1スタンド10、F2スタンド20、F3スタンド30、F4スタンド40、F5スタンド50、F6スタンド60及びF7スタンド70)の圧延機モータトルクを0とする制御を実行するものとしてもよい。
ギャップ開放部94は、尾端部を始めとして被圧延材1に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、運転制御変更部93による制御を実行している圧延スタンドのワークロールギャップを開く部分である。具体的には、圧下シリンダ11,21,31,41,51,61,71によるワークロールの圧下を停止する制御を実行する。このギャップ開放部94が、好適にはギャップ開放ステップの実行主体となる。
なお、運転制御変更部93とギャップ開放部94は、早くても被圧延材1の尾端が粗圧延の最下流側に位置する粗圧延スタンド3を通過した後で、被圧延材1の尾端部が仕上圧延スタンドのみで圧延が行われる時に、仕上圧延スタンドのワークロールギャップの緊急開放制御を実施することが望ましい。
画像処理計算機90は、上述した、運転制御変更部93による圧延機モータトルクを0とする制御をまず実行し、次に及びギャップ開放部94によるギャップ開放制御という2つの制御を、複数の圧延スタンドのうち最も下流側の圧延スタンドから上流側に向かって順に実行する。
表示装置95は、ディスプレイなどの表示機器や警報機などの音響機器であり、例えばオペレータに対して画像処理計算機90において板絞り込み発生と判断されたときに板絞り込みの発生やその対処作業について伝えるための装置である。このため、表示装置95としては、ディスプレイが用いられることが多い。
次に、本発明における処理の具体例について図2以降を用いて説明する。
図2は圧延設備におけるF6スタンド60及びF7スタンド70の入側及び出側、また巻取機手前での被圧延材に対して成立する関係を説明する図、図3は圧延設備におけるF7スタンド70のワークロールギャップを開放した際のF7スタンド70出側の板厚が初期板厚T7からF6スタンド60出側での板厚T6まで変化した時の巻取速度Vcの変化の様子を示す図、図4は圧延設備におけるF7スタンド70のワークロールギャップを開放した際のF7スタンド70の出側板厚が初期板厚T7からF6スタンド60出側での板厚T6まで変化した時のF7スタンド70の出側板速度V7の変化の様子を示す図である。
タンデム圧延機の場合、板絞り込みが発生すると、その圧延機スタンドとその後段のスタンドのワークロール表面に損傷が生じ、ワークロールの交換をしなくてはならない事態になることがある。
圧延中に発生する板絞り込みを検知できれば、その検知の直後に板絞り込みが発生したスタンド及びその後段のスタンドのワークロールギャップを開放してワークロール表面の損傷を回避することが可能となる。ワークロール表面の損傷が回避できれば、ロール交換を行う必要がなくなり、その圧延ラインの生産性向上に寄与することとなる。
例として図1のような仕上圧延機が7スタンドのタンデム圧延機を考える。板厚T、板幅W、板速度Vと記述すると、この時、図2に示す条件であれば、圧延機で圧延されている被圧延材1は、マスフロー一定の条件から、F6スタンド60出側での板厚T6、板幅W6、板速度V6、F7スタンド70出側での板厚T7、板幅W7、板速度V7、巻取機110位置での板厚Tc、板幅Wc、板速度Vc(巻取速度)の関係は、次の(1)式のように記述できる。
T6・W6・V6=T7・W7・V7=Tc・Wc・Vc=A(A:特定の値) … (1)
ここで、板幅W6,W7,Wcは各スタンドでの圧延によりほとんど変化しないとすると、W6=W7=Wcとなり、(1)式は、次の(2)式のように記述できる。
T6・V6=T7・V7=Tc・Vc=B(B:特定の値) … (2)
従って、巻取機110位置での板厚Tcは、巻取機110位置での板の巻取速度Vcに対して、次の(3)式のように記述できる。
Tc=B/Vc … (3)
ここで、巻取機110では、被圧延材1に張力をかけてコイル状に巻き取っているので、被圧延材1に若干の弾性変形が生じている。すなわち、F7スタンド70出側の板厚T7と巻取機110位置での板厚Tcの弾性変形分の板厚差ΔTがあるとすると、以下の(4)式のように表される。
T7-Tc=ΔT … (4)
被圧延材1の張力による板厚の弾性変形の対する弾性係数をkとし、巻取機110の被圧延材1に対する引張り張力をFとすると、次の(5)式の関係が成り立つ。
F=k・ΔT … (5)
ここで、(5)式を(4)式に代入して、ΔTを消去すると、以下の(6)式のように表される。
T7-Tc=F/k … (6)
上記(6)式に(3)式を代入して、Tcを消去すると、以下の(7)式のように表される。
T7-B/Vc=F/k … (7)
次いで、ワークロールギャップを開放した場合の巻取機110での速度について検討する。
ワークロールギャップの開放では、下流側に圧延機スタンドが存在しない、最下流に位置するF7スタンド70のワークロールギャップの開放を行うとする。この場合、F7スタンド70出側の板厚T7は、初期値T7からF6スタンド60の出側の板厚T6まで変化することになる。つまり、F7スタンド70出側の板厚T7は、ワークロールギャップの開放に伴い厚くなり、T7からT6まで変化する。
この時、巻取機110は、マスフロー一定の条件、及び、板切れや板の緩みを起こさせないために、巻取機110の被圧延材1に対する引張り張力Fを一定に保ちながら、F7スタンド70出側の板厚T7の変化に追随させて、巻取機110の位置での巻取速度Vcを変化させなくてはならない。
ここで、F7スタンド70のワークロールギャップの開放では、巻取機110の被圧延材1に対する引張り張力Fを一定に保つようにしなくてはならないので、上記(7)式は以下の(8)式のように記述できる。
T7-B/Vc=E(E=F/k:一定値) … (8)
上記(8)式を巻取速度Vcについて表記しなおすと、以下の(9)式のようになる。
Vc=B/(T7-E) … (9)
F7スタンド70のワークロールギャップを開放して、F7スタンド70出側の板厚T7が初期値T7からT6まで変化させた時の巻取速度Vcは、上記(9)式から、図3のようなグラフになる。
F7スタンド70の出側板速度V7は、(2)式から、次の(10)式のように記述できる。
V7=B/T7 … (10)
したがって、F7スタンド70のワークロールギャップを開放して、F7スタンド70の出側板厚T7が初期値T7からT6まで変化する時のF7スタンド70の出側板速度V7は、上記(10)式から、図4のグラフのように、初期値V7からF6スタンド60の出側の板速度V6まで変化する。
F7スタンド70のワークロールギャップを開放する過程で、F7スタンド70出側の板厚がT7からT6まで変化すると、マスフロー一定の条件から、上記図4のV7の板速度の変更が必要となる。この場合、F7スタンド70の圧延機モータトルクを0に制御することにより、F7スタンド70はアイドリング圧延となり、図4のV7速度変化を自動で実現することができる。
次いで、巻取機110の巻取制御について考える。
F7スタンド70のワークロールギャップを開放した場合、F7スタンド70出側板厚T7の変化に追随して、上記の図3に記載のような巻取機110の速度Vcを実現しなくてはならない。
まず、巻取機110が巻取速度Vcを一定とする制御で運転されている場合を考える。この場合、上記(8)式に則って、E(E=F/k)が一定値を保つように、F7スタンド70出側板厚T7の変化に合わせ、Vcを調整する。この場合は、F7スタンド70のワークロールギャップの変化(T7変化)を検出し、リアルタイムで巻取機110の速度Vcの制御を行って、図3の関係を実現させなくてはならない。
次いで、巻取機110がモータトルク一定制御、すなわち、巻取機110の被圧延材1に対する引張り張力F(ライントータル張力)を一定とする制御で運転されている場合を考える。この場合、巻取機110の被圧延材1に対する引張り張力Fは一定に制御されているので、上記(9)式のE(E=F/k)は、常に一定である。したがって、F7スタンド70出側板厚T7の変化により、(9)式に従って、巻取機110の速度Vcは自動的に、図3の関係に従うこととなる。
なお、上記の2つのケースで注意しなくてはならないことは、両者とも被圧延材1に対する引張り張力Fを一定に保つようにしているが、F7スタンド70出側板厚はT7からT6に変化するため、被圧延材1の単位面積当たりのユニット張力は、板厚がT6になった際、T7/T6の比率で減少することになる。したがって、ユニット張力を一定に保つ場合は、伴にF7スタンド70のワークロールギャップの変化(T7変化)を検出し、T7の変化に追随して、巻取機110のモータトルクの設定値の比率を1からT6/T7まで増加、好適には連続的に増加させることが好ましい。なお、F7スタンド70のワークロールギャップの開放中に、連続的に増加させる形態に限られず、F7スタンド70のワークロールギャップの開放後に、1度にT6/T7まで増加させる形態や、F7スタンド70のワークロールギャップの開放中または開放後に、2段階以上に分けてステップ状にT6/T7まで増加させる形態とすることができる。
上記の巻取機110の巻取制御については、巻取機110のモータトルクを一定とする制御の場合は、ユニット張力は若干低下するが、ユニット張力の一定制御ができていなくても、常にライントータル張力はプラスの値になっているため、板切れや板の緩みの発生リスクは、ほとんどない。これに対し、巻取速度Vcを一定とする制御では、(8)式を常に満足させる必要があることからF7スタンド70のワークロールギャップの変化(T7変化)の検出信号のタイムラグなどによる制御不良が発生する可能性が考えられ、巻取機110のモータトルクを一定とする制御に比べて板切れや板の緩みの発生リスクが大きいと考えられることから、巻取機110の巻取制御は巻取機110のモータトルク一定制御とすることが望ましい。
そこで、画像処理計算機90は、好適には、圧延設備200のようなタンデム圧延機の圧延機スタンド間のルーパー部で被圧延材1の板絞り込みを検知した場合は、以下の図5に示すような制御装置における制御フローを実行し、圧延機モータトルクを0に制御した後、ワークロールギャップの緊急開放制御などを行う。
図5は実施例の制御装置における制御フローチャートである。
圧延が開始されると、図5に示すように、画像処理計算機90の画像処理部91は、カメラ81,82,83により撮像された被圧延材1が映る画像を処理して(S51)、板絞り込みが発生しているか否かを判定する(S52)。板絞り込みが発生していると判定されたときは処理をS53に進める。これに対して板絞り込みが発生してないと判定されたときはそのまま圧延を継続するべく処理をS51に戻し、板絞り込みの検知処理を継続する。
次いで、画像処理計算機90の巻取機運転制御変更部92は、巻取機110を巻取機110のモータトルク一定制御とする(S53)。
その後、画像処理計算機90の運転制御変更部93は、駆動中の最も下流の圧延機駆動ロール、図1に示すような圧延設備200であれば、まずはF7スタンド70のワークロールを駆動するモータのモータトルクを0に制御して、アイドリング圧延とする(S54)。
次いで、画像処理計算機90のギャップ開放部94は、先のS54において駆動ロールのモータトルクを0に制御している、図1に示すような圧延設備200であれば、まずはF7スタンド70のワークロールギャップを開放する(S55)。
次いで、巻取機110による被圧延材1に対するライントータル張力を変更すべく、巻取機110のモータトルクの設定値の比率を1からT6/T7まで上昇させる(S56)。これは、ワークロールギャップの開放後に、巻取機110のモータトルクの設定値の比率を1度に上昇させ、ラインユニット張力の変動幅を抑制する形態をとった場合である。
更に、画像処理計算機90は、上流側に圧延中の仕上圧延スタンドが存在するか否かを判定する(S57)。
例えば、F6スタンド60が圧延中と判定されたときは処理をS54に戻して、次にF6スタンド60に対象を移して、運転制御変更部93は、F6スタンド60のワークロールを駆動するモータのモータトルクを0に制御して、アイドリング圧延とする(S54)とともに、ギャップ開放部94は、F6スタンド60のワークロールギャップを開放する(S55)。その後、巻取機110により印加している被圧延材1に対するライントータル張力を変更すべく、巻取機110のモータトルクの設定値の比率を既に変更されているT6/T7を1としてT5/T6(T6はF6スタンド60出側の板厚Tの初期値)まで上昇させる(S56)。
上流側に圧延中の仕上圧延スタンドが存在するか否かを判定するS57の処理は、全てのスタンドを対象とせず、これらステップS54乃至S56の処理を、図1に示すような圧延設備200であれば、板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の圧延スタンドと、その下流側の圧延スタンド(カメラ81で得られた情報に基づく場合はF4スタンド40、F5スタンド50、F6スタンド60及びF7スタンド70、カメラ82で得られた情報に基づく場合はF5スタンド50、F6スタンド60及びF7スタンド70、カメラ83で得られた情報に基づく場合はF6スタンド60及びF7スタンド70)について、下流側から順に上流側に向けて実行してもよい。
また、図5に示すように、全てのスタンドでのアイドリング圧延制御及びギャップ開放制御が完了したと判定されたとき(S57において上流側に圧延中の仕上圧延スタンドが存在しないと判定されたとき)は、巻取機110による被圧延材1の巻取速度を減速して0にして(S58)、処理を完了させる。
次に、本実施例の効果について説明する。
上述した本実施例の複数の圧延スタンドで圧延される被圧延材1のワークロールの表面の損傷を低減する方法は、板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更ステップと、運転制御変更ステップを実行している圧延スタンドのワークロールギャップを開くギャップ開放ステップと、を有する。
このように、板絞り込みが生じた場合に圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御することでアイドリング圧延となり、圧延機前後の被圧延材1のマスフロー一定条件を満たすので、図4のような圧延材の板速度Vの速度変化を自動で実現することができ、またワークロールロールギャップを開放するため、ワークロールの損傷の可能性を従来に比べて減らすことができる。
また、ギャップ開放ステップを、複数の圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機110のモータのモータトルクを一定に保つ制御を実行しながら実行することで、ギャップ開放ステップ中に、被圧延材1を圧延ライン上で緩まない一定の正の張力で引っ張ることができ、被圧延材1を引っ張り過ぎることがなく被圧延材1の破断を防止できる。
また、運転制御変更ステップでは、板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の圧延スタンドと、その下流側の圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御するため、必要な箇所での制御のみでワークロールの損傷の可能性を低減することができる。
更に、運転制御変更ステップでは、板絞り込みが生じたことを示す情報が得られたら、全ての圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御することで、簡易な制御系でワークロールの損傷の可能性を低減することができる。
また、運転制御変更ステップをまず実行し、次にギャップ開放ステップを実行する2つのステップを、複数の圧延スタンドのうち最も下流側の圧延スタンドから上流側に向かって順に実行することにより、下流側でまだ運転制御変更制御やギャップ開放制御が実行されていない状態が生じることを防ぎ、安全で確実な圧延ラインの運転停止を実現することができる。
更に、ギャップ開放ステップでは、巻取機110のモータのモータトルク設定値を、ワークロールギャップのギャップ開放比率を考慮して変更し、巻取機110が被圧延材1に掛けるライントータル張力を上げることで、被圧延材1に掛るユニット張力の変動幅を抑えることで、ユニット張力を概ね一定近くに保つことができ、より高い確率で被圧延材1の緩みと破断を低減することができる。
また、複数の圧延スタンドは、複数の粗圧延スタンド2,3及び複数の仕上圧延スタンド10,20,30,40,50,60,70を備え、被圧延材1に板絞り込みが生じたことを示す情報を、複数の仕上圧延スタンド10,20,30,40,50,60,70内で得られた画像情報とすることにより、板絞り込みの発生を高い精度でリアルタイムに検出することができ、ワークロール損傷をより高い確率で低減することを実現できる。
更に、複数の圧延スタンドは、複数の粗圧延スタンド2,3及び複数の仕上圧延スタンド10,20,30,40,50,60,70を備え、ギャップ開放ステップを、被圧延材1の尾端部が複数の粗圧延スタンド2,3の最下流側に位置する粗圧延スタンド3を通過した後で、尾端部が複数の仕上圧延スタンド10,20,30,40,50,60,70のみで圧延が行われる間に実行することで、板絞り込みが最も顕著に発生しやすい尾端部での対応が可能となり、ワークロールの損傷防止の恩恵をより顕著に受けることができる。
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
1…被圧延材
2,3…粗圧延スタンド
10…F1スタンド(仕上圧延スタンド)
11,21,31,41,51,61,71…圧下シリンダ
20…F2スタンド(仕上圧延スタンド)
30…F3スタンド(仕上圧延スタンド)
40…F4スタンド(仕上圧延スタンド)
50…F5スタンド(仕上圧延スタンド)
60…F6スタンド(仕上圧延スタンド)
70…F7スタンド(仕上圧延スタンド)
81,82,83,84…カメラ
85…通信線
90…画像処理計算機(制御装置)
91…画像処理部
92…巻取機運転制御変更部
93…運転制御変更部
94…ギャップ開放部
95…表示装置
110…巻取機
120…ルーパー
200…圧延設備

Claims (9)

  1. 複数の圧延スタンドで圧延される圧延材によるワークロールの表面の損傷を低減する方法であって、
    前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、
    圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更ステップと、
    前記運転制御変更ステップを実行している前記圧延スタンドのワークロールギャップを開くギャップ開放ステップと、を有し、
    前記ギャップ開放ステップを、複数の前記圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機のモータのモータトルクを一定に保つ制御を実行しながら実行し、
    前記運転制御変更ステップでは、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の前記圧延スタンドと、その下流側の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する
    損傷低減方法。
  2. 複数の圧延スタンドで圧延される圧延材によるワークロールの表面の損傷を低減する方法であって、
    前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、
    圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更ステップと、
    前記運転制御変更ステップを実行している前記圧延スタンドのワークロールギャップを開くギャップ開放ステップと、を有し、
    前記ギャップ開放ステップを、複数の前記圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機のモータのモータトルクを一定に保つ制御を実行しながら実行し、
    前記運転制御変更ステップでは、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られたら、全ての前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する
    損傷低減方法。
  3. 請求項またはに記載の損傷低減方法において、
    前記運転制御変更ステップをまず実行し、次に前記ギャップ開放ステップを実行する2つのステップを、複数の前記圧延スタンドのうち最も下流側の前記圧延スタンドから上流側に向かって順に実行する
    損傷低減方法。
  4. 請求項またはに記載の損傷低減方法において、
    前記ギャップ開放ステップでは、前記巻取機のモータのモータトルク設定値を、前記ワークロールギャップのギャップ開放比率を考慮して変更し、前記巻取機が前記圧延材に掛けるライントータル張力を上げることで、前記圧延材に掛かるユニット張力の変動幅を抑える
    損傷低減方法。
  5. 請求項またはに記載の損傷低減方法において、
    複数の前記圧延スタンドは、複数の粗圧延スタンド及び複数の仕上圧延スタンドを備え、
    前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報を、前記圧延材が複数の前記仕上圧延スタンド内で得られた画像情報とする
    損傷低減方法。
  6. 請求項またはに記載の損傷低減方法において、
    複数の前記圧延スタンドは、複数の粗圧延スタンド及び複数の仕上圧延スタンドを備え、
    前記ギャップ開放ステップを、前記圧延材の尾端部が複数の前記粗圧延スタンドの最下流側に位置する粗圧延スタンドを通過した後で、前記尾端部が複数の前記仕上圧延スタンドのみで圧延が行われる間に実行する
    損傷低減方法。
  7. 複数の圧延スタンドで圧延される圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更部と、
    前記情報に基づき、前記圧延機モータトルクを0に制御する運転制御を実行している前記圧延スタンドのワークロールギャップを開くとともに複数の前記圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機のモータのモータトルクを一定に保つギャップ開放部と、を備え
    前記運転制御変更部は、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られた箇所の1つ上流側の前記圧延スタンドと、その下流側の前記圧延スタンドの前記圧延機モータトルクを0に制御す
    制御装置。
  8. 複数の圧延スタンドで圧延される圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報に基づき、圧延中のスタンドのうち少なくとも1以上の前記圧延スタンドの圧延機モータトルクを0に制御する運転制御変更部と、
    前記情報に基づき、前記圧延機モータトルクを0に制御する運転制御を実行している前記圧延スタンドのワークロールギャップを開くとともに複数の前記圧延スタンドの最下流側に設けられた巻取機のモータのモータトルクを一定に保つギャップ開放部と、を備え、
    前記運転制御変更部は、前記圧延材に板絞り込みが生じたことを示す情報が得られたら、全ての前記圧延スタンドの前記圧延機モータトルクを0に制御する
    制御装置。
  9. 請求項7または8に記載の制御装置を備えた圧延装置。
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