JP7337007B2 - 塗布型偏光発光素子 - Google Patents
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Description
[1]
発光性化合物又はその塩が配向した状態で膜として形成する偏光発光素子。
[2]
発光性化合物又はその塩が吸収する波長の光を照射することによって、偏光を発光する前項[1]に記載の偏光発光素子。
[3]
前記吸収する光の波長と前記発光する光の波長との少なくとも一部が異なり、吸収する光の量が発光素子の軸によって異なり、かつ、光を吸収することによって可視域の偏光を発光する前項[1]または[2]に記載の偏光発光素子。
[4]
前記発光性化合物又はその塩が多環芳香族である基を有する前項[1]~[3]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[5]
前記発光性化合物又はその塩が多環複素環芳香族化合物である前項[1]~[4]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[6]
前記発光性化合物又はその塩が窒素原子もしくは硫黄原子を含む芳香族化合物である前項[1]~[5]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[7]
前記発光性化合物又はその塩がアゾール化合物もしくはチアゾール化合物である前項[1]~[6]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[8]
前記発光性化合物又はその塩が、下記式(1)~下記式(7)の構造を有する前項[1]~[3]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[9]
前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7又はY1~Y7、若しくはX1~X7又はY1~Y7のいずれか少なくとも一つが上記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれか少なくとも一つが窒素原子または硫黄原子を少なくとも含む多環芳香族基または複素環基である前項[8]に記載の偏光発光素子。
[10]
前記式(1)~(7)中、X1~X7又はY1~Y7、若しくはX1~X7又はY1~Y7のいずれか少なくとも一つが上記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれか少なくとも一つが各々独立に下記式(9)~下記式(14)からなる群より選択される基を有する前項[8]又は[9]に記載の偏光発光素子。
[11]
前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7、Y1~Y7、又は前記式(1)~前記式(7)におけるX1~X7又はY1~Y7が前記式(8)で表される基を有する場合のZが、各々独立に前記式(9)~前記式(14)からなる群から選択される基のいずれかの基を有する前項[8]~前項[10]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[12]
前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7及びY1~Y7、又は前記X1~X7及びY1~Y7が前記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれも前記式(9)~(14)からなる群から選択される同一の基を有する前項[8]~[11]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[13]
前記発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程でリオトロピック液晶性を示す前項[1]~[12]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[14]
前記発光性化合物またはその塩が膜を形成するに際し、基材上で膜が形成されており、該基材の表面が配向した状態である前項[1]~[13]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[15]
前記基材がセルロースを原料としたフィルムまたは紙である前項[14]に記載の偏光発光素子。
[16]
前記基材がパルプを原料としたフィルムまたは紙である前項[14]に記載の偏光発光素子
[17]
前記基材が熱可塑性樹脂であるフィルムである前項[14]に記載の偏光発光素子。
[18]
前記基材が配向膜である前項[14]に記載の偏光発光素子。
[19]
前記配向膜が光配向膜である前項[18]に記載の偏光発光素子。
[20]
保護層を有する前項[1]~[19]のいずれかに記載の偏光発光素子。
[21]
前記発光性化合物またはその塩が含有した溶液を基材に塗布し、発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で、塗布液に異方性を付与し成形する偏光発光素子の製造方法。
[22]
前記溶媒が水を含む前項[21]に記載の偏光発光素子の製造方法。
[23]
溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で前記発光性化合物またはその塩が自己配向性を発現する前項[21]または前項[22]に記載の偏光発光素子の製造方法。
[24]
前記基材の表面に発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で剪断応力を適用することによって異方性を発現させる前項[21]~前項[23]のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
[25]
前記基材の表面が異方性を有している状態の上に、発光性化合物またはその塩が膜を形成する前項[21]~前項[24]のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
[26]
前記基材表面の異方性が、基材の延伸によって形成される前項[25]に記載の偏光発光素子の製造方法。
[27]
前記基材表面の異方性が、ラビング処理を適用することによって形成される前項[25]または前項[26]に記載の偏光発光素子の製造方法。
本発明で用いられる発光性化合物またはその塩としては、一般的な蛍光色素又は燐光発光色素も使用することが出来るが、具体的には、それぞれの発光性化合物が異方性を発現するものであればよく、該異方性を有している状態(「配向している状態」とも称する)で、特定の光を吸収し、その光を利用して偏光した光を発光させることが出来る化合物であればよい。このような化合物として、蛍光色素、燐光発光色素のいずれを用いてもよいが、蛍光色素を使用することが好適である。尚、発光性化合物またはその塩は、吸収した光の波長と、発光する光の波長とが異なることが多く、波長変換色素とも呼ばれることがある。
発光性化合物またはその塩が配向することで吸収異方性を有する場合、偏光発光素子において配向した軸とその直交軸とで光吸収量が異なることから、自然光のような無秩序な光を照射した場合には、特定の軸の光を強く吸収し、該軸とは異なる軸の光を弱く吸収することが可能となり、結果的に偏光発光素子を透過した光は偏光(「直線偏光」とも称する)に変換され、いわゆる偏光子としても機能することが可能となる。偏光発光素子におけて発光性化合物またはその塩が配向した軸に対して直線偏光を平行に入射した場合の吸光度と、偏光した直線偏光を直交に入射した場合の吸光度との比(「二色比」ともいう)は1.1以上であれば、発光性化合物またはその塩の吸収異方性が配向軸とそれと異なる軸において異方性を発現していることを示している。好ましくは1.4以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上であり、よりさらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。二色比は高ければ高いほど好ましいため、特に上限はないが、二色比は30程度あれば十分に高い二色比を有していることを示し、また二色比は100あれば、特に十分に高い二色比を有していることを示している。その他、反射分光エリプソメーター等で反射光を測定することによって発光性化合物またはその塩が配向していることを確認しうる測定として活用できることもある。
本発明で用いられる発光性化合物またはその塩は、偏光発光素子の偏光性能を阻害しない範囲で、少なくとも一種の蛍光染料及び/又は有機染料をさらに含んでいてもよい。併用される蛍光染料としては、例えば、C.I.Fluorescent Brightener 5、C.I.Fluorescent Brightener 8、C.I.Fluorescent Brightener 12、C.I.Fluorescent Brightener 28、C.I.Fluorescent Brightener 30、C.I.Fluorescent Brightener 33、C.I.Fluorescent Brightener 350、C.I.Fluorescent Brightener 360、C.I.Fluorescent Brightener 365等が挙げられる。
上述した発光性化合物またはその塩を溶媒に混合し、その溶液を基材に塗布し、発光性化合物またはその塩を配向させる。発光性化合物またはその塩を一種、または、二種以上の混合物を水、アルコール類、エーテル類、ピリジン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)・ジメチルイミダゾリン(DMI)等の非プロトン性極性溶媒などの親水性溶媒もしくはその含水溶媒に溶解する。特に水を主体とする混合溶媒が好ましい。有機溶媒の水への混合量は任意であるが、水に対して通常0~50質量%であり、特に0~20質量%が好ましい。発光性化合物またはその塩の濃度は、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは1.5~5質量%である。
本発明で用いられる前記基材としては、シリカ系ガラス、硬質ガラス等のガラス板、石英板等や、ポリシロキサン樹脂、ABS樹脂、シクロオレフィン樹脂、アセタール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、酢酸セルロース、セルロースアセテート、塩素化ポリエーテル、エチレン-酢ビ共重合体、ふっ素樹脂、アイオノマー、メチルペンテンポリマー、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルスルホン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルホン、シクロオレフィンなどの樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキド樹脂、アリル樹脂、アミノ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の各種素材の熱可塑性樹脂よりなる板やシート、フィルム、または特許文献8及び特許文献9に記載されているような光活性分子(通称、光配向膜)、あるいはそれら樹脂が積層もしくは塗工されたフィルムや板、または、表面に、酸化珪素、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化亜鉛などの金属酸化物や、窒化珪素、炭化珪素などを被覆したもの、セルロースを原料としたフィルムまたは紙、特に木材パルプ原料を原料としたフィルムまたは紙が例示される。また、反射能の高い金属薄膜で表面を被覆した基板(フィルム)も基材として用いることができる。これらの基材は平面状のもののみならず、曲面状のものであってもよい。好ましくは、酢酸セルロース、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シクロオレフィン、ポリカーボネートの各熱可塑性樹脂よりなるフィルムやプレートが良く、または酢酸セルロース、セルロースアセテート、セロファン等のセルロースを原料としたフィルムまたは紙、特に木材パルプ原料を原料としたフィルムまたは紙が良い。
本発明の偏光発光素子は、前記発光性化合物またはその塩を含有した溶液を該基材の表面に滴下し、コーターや回転塗布法により均一の厚みを持つ膜を形成することにより製造することができる。前記発光性化合物またはその塩の膜を形成する方法としては、発光性化合物の含有した液を塗布できれば方法は限定されないが、例えば発光性化合物またはその塩が含む溶液に基板を浸漬し引き上げる方法、発光性化合物またはその塩を含む溶液をバーコーダー等で塗布する方法、家庭用途または商業用途で用いられるピエゾ方式、サーマル方式、バブルジェット方式などのインクジェットプリンタの塗布装置で塗布する方法、スピンコータにて回転塗工させる方法、ロールコーター塗布、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、カーテンコーター塗布、スプレイコーター塗布等があるが、特にロールコーター塗布、カーテンコーター塗布、スプレイコーターにて噴霧塗布する方法が好ましく例示される。
本発明の偏光発光素子は、任意の方向に偏光発光軸を設けることが可能である。従来の偏光発光素子(例えば、特許文献7を参照)のようにフィルム中にスチルベン系の発光性化合物を含有させ延伸させることによって偏光発光素子を得る方法では、延伸された方向に発光性化合物が配向するため、該延伸方向に強発光軸を有する偏光発光する面内で同一な偏光発光軸を有する偏光発光素子しか得ることが出来なかった。本発明の偏光発光素子の場合、延伸された基板の軸や基板におけるラビングの方向に対して任意の発光軸を有する偏光発光素子が得られることから、一様な偏光発光素子だけでなく、部分ごとに任意の偏光発光軸を有する偏光発光素子が得ることが出来る。また、任意の位相差値を有するフィルムの表面に、本発明の偏光発光素子を設けることも可能であることから、偏光発光素子の発光軸を任意に制御するだけではなく、位相差板との組み合わせで部分的に円偏光発光、楕円偏光発光を発光することが可能となる。例えば、円偏光発光のためには、位相差板の位相差値を、偏光発光素子の発光波長に対して1/4λの位相差板であることが必要であり、偏光発光素子の発光軸に対して45°に位相差板の遅相軸や進相軸を設けることで、円偏光発光を提供することが可能となる。位相差板が設けられている面の発光軸を偏光発光素子の強発光軸の発光軸を90°回転させるためには、1/2λの位相差板を偏光発光素子の偏光発光軸に対して45°に設けられていることが良い。尚、前記角度については多少角度が異なっても、目的の性能が得られるため、厳密な角度管理は必ずしも必要ではない。
下記の実施例及び比較例で得た各偏光発光素子を測定試料とした評価を次のようにして行った。
分光光度計(日立ハイテクテクノロジーズ社製「U-4100」)を用いて試料の透過率、及び吸光度を評価した。各実施例及び比較例で作製した各試料に、220nm~2600nmの波長領域に100%の偏光を有する光(以下、「絶対偏光」とも称する)を照射できるグラムトムソン偏光子を設置し、各試料に、絶対偏光を照射した際の各波長の光の透過率を測定した。測定に際し、界面反射の影響を無くして試料の透過率を評価するために発光性化合物を含まない基材を分光光度計で測定した時の100%透過率(一般的に、ベースラインと称する)を基準とした。具体的には、実施例、または比較例の試料の測定において偏光発光素子中に発光性化合物を含まない状態で加工して作製した基準となる試料を分光光度計の光路上に設けて測定した値を100%透過率または0%吸光度(ベースライン)とし、各測定試料の透過率または吸光度を測定した。各測定試料に対して絶対偏光を照射して発光性化合物が配向した最も高い光の吸収を示す軸に対して直交位に偏光した光が入射した際に測定された光の透過率、即ち偏光した光の入射時に最も吸収の少ない軸(最も透過率が高い軸)における光の透過率をKy、その偏光した光の入射時に最も吸収の少ない軸における光の吸光度をAbs-Kyとした。偏光発光素子に対して絶対偏光を照射して発光性化合物またはその塩が配向した最も高い光の吸収を示す軸に対して平行位に偏光した光が入射した際に測定された光の透過率、即ち、偏光した光の入射時に最も吸収の多い軸(最も透過率が低い軸)における光の透過率をKz、偏光した光の入射時に最も吸収の多い軸における光の吸光度をAbs-Kzとし、吸光度比(Rd)をAbs-Kz/Abs-Kyにより算出される値を用いた。
各測定試料の視感度補正単体透過率Ysは、可視光領域における380~780nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)毎に求めた上記Ky及びKzを記式(I)に代入して各波長の単体透過率Tsを算出し、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、単体透過率Tsを下記式(I)に代入して算出した。なお、下記式(II)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。
各測定試料の発光強度、発光した光の偏光度(偏光発光度)については、光源として375nm LED光源(THORLABS社製 マウント付LED M375L4°)を設置し、該LED光源から照射された試料から発光した偏光を、発光分光光度計(東京インスツルメンツ社製 分光ポラリメーターPoxi-Spectra)を用いて、ストークスパラメーター法により測定した。紫外線の光を測定試料に入射した時に発光分光光度計より得られる発光強度(S0)と偏光発光度(DOP)を測定した。尚、最大発光波長は発光強度(S0)の最大値を用いた。
(合成例1)
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム 41.4部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸34.4部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製し、4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、さらにアセトン100部にて洗浄することにより、中間体である下記式(69)の化合物のウェットケーキを乾燥し、83.8部を得た。
木材パルプを原料としたフィルムであるセロファン(レンゴー社製 セロファン)に、その基材の長軸方向に沿ってラビング布(妙中パイル織物社製 MK0012)を巻いたロールで100rpmの速度で荷重5k荷重でラビング処理を行った。そのラビング処理を行ったセロファン面に上記式(15)で表される発光性化合物またはその塩5質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(花王社製 エマルゲンMS-110)0.15質量部、水100質量部の組成物を、セロファンフィルムのラビング面に組成物の塗布量が10μmの膜厚になるようにガラス棒を用いて塗工し、25℃で乾燥させて、本発明の偏光発光素子を作製した。
得られた偏光発光素子に紫外線LED(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」:375nmハンドライトタイプ ブラックライト)で紫外光を照射しながら発光している様子を、1軸に吸収する能力を有する直線偏光板(ポラテクノ社製 SKN-18243P)を回転させながら、該偏光板を介して観察した。偏光発光素子が最も発光が強く確認できるようにカメラの前に偏光板を配置(偏光板を偏光発光パルプ基材に対して明光位に配置)して撮影された様子を図1に示す。偏光板を介して偏光発光素子が最も発光が弱く確認しうるようにカメラの前に偏光板を配置(偏光板を偏光発光パルプ基材に対して消光位に配置)して撮影された様子を図2に示す。得られた偏光発光素子を375nmLED光源を照射しながら、偏光板が無い部分、偏光板を明光位に配置した部分、偏光板を消光位にそれぞれ配置した部分をカメラにて撮影した様子を図3に示す。なお、図3中のA部は偏光板を通さずに偏光発光パルプ基材が発光していることが視認している様子、B部は最も明るい軸(明光位)に対して偏光板の吸収軸を直交にを配置して偏光板を介して視認出来る様子、C部は最も暗い軸(消光位)に対して偏光板の吸収軸を直交にを配置して偏光板を介して視認できる様子を示す。
(合成例2)
市販品の4-アミノ-4’-ニトロスチルベンー2,2’-ジスルホン酸35.2部を水300部に加え撹拌し、35%塩酸を用いてpH0.5とした。得られた溶液に40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.9部を加え、10℃で1時間撹拌し、続いて6-アミノナフタレン-2-スルホン酸17.2部を加え、15%炭酸ナトリウム水溶液でpH4.0に調製後4時間撹拌した。得られた反応液に塩化ナトリウム60部を加え、析出固体をろ過分離、更にアセトン100部にて洗浄する事により、中間体である下記式(70)の化合物のウェットケーキ124.0部を得た。
(合成例3)
下記式(71)で示される化合物30.7部と、下記式(72)の化合物66.6部を水600部に加え、水酸化ナトリウム25%水溶液を用いてpH6~7になるように調整しながら溶解し、クロロギ酸フェニル15.6部を50~70℃で6時間撹拌しながら投入しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して、70℃で乾燥し、下記式(19)で示されるウレイド化合物72.6部を得た。
(合成例4)
市販品の4,4’-ジアミノスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム35.6部、上記式(71)で示される化合物61.4部を水600部に加え、水酸化ナトリウム25%水溶液を用いてpH6~7になるように調整しながら溶解し、クロロギ酸フェニル32部を50~70℃で6時間撹拌しながら投入しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して、70℃で乾燥し、式(22)で示されるウレイド化合物77.0部を得た。
(合成例5)
下記式(73)で示される化合物 84部を600部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダをpH6~7になるように調整しながら加えて溶解させた。テレフタル酸ジクロリド20.2部を、1時間程度かけて少しずつ加える。全て添加した後、60℃で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、室温まで放冷して濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(27)で表される化合物67.4部を得た。
(合成例6)
下記式(74)で示される化合物136.4部を500部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダでpHを6~7に調整しながら溶解させた。テレフタル酸ジクロリド20.2部を、1時間程度かけて少しずつ加えた後、60℃で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、室温まで放冷して、固形分を濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(30)で表される化合物93.4部を得た。
(合成例7)
下記式(75)で示される化合物114部を、500部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダでpHを6~7に調整しながら溶解させた。テレフタル酸ジクロリド20.2部を、1時間程度かけて少しずつ加えた後、60℃で1時間撹拌して、反応させた。反応終了後、室温まで放冷して、固形分を濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(33)で表される化合物103部を得た。
(合成例8)
下記式(76)に示される化合物 88.2部を500部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダでpH6~7になるように調整しながら溶解させた。ビフェニルカルボニルジクロリド27.8部を、1時間程度かけて少しずつ加えた後、60℃で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、室温まで放冷して、固形分を濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(40)で示される発光性化合物75.4部を得た。
(合成例9)
下記式(73)で表される化合物 84部を500部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダでpH6~7になるように調整しながら溶解させた。ビフェニルカルボニルジクロリド27.8部を、1時間程度かけて少しずつ加えた後、60℃で1時間撹拌し、反応させた。反応終了後、室温まで放冷して、固形分を濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(43)で表される化合物73.4部を得た。
(合成例10)
上記式(74)で示される化合物 136部を、500部の水に加え60℃まで加熱し、25%苛性ソーダでpH6~7になるように調整しながら320部を加えて溶解させた。ビフェニルカルボニルジクロリド27.8部を、1時間程度かけて少しずつ加えた後、60℃で1時間撹拌し反応させた。反応終了後、室温まで放冷して、固形分を濾過し、70℃で乾燥することで、下記式(47)で表される化合物103部を得た。
(合成例11)
下記式(77)で示される化合物 61.6部を水600部に加え、水酸化ナトリウム25%水溶液を用いてpH6~7になるように調整しながら溶解し、クロロギ酸フェニル15.6部を50~70℃で6時間撹拌しながら投入しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して、70℃で乾燥し、下記式(54)で表されるウレイド化合物48.4部を得た。
(合成例12)
上記式(73)で示される化合物84部を水800部に加え、水酸化ナトリウム25%水溶液でpH6~7になるように調整しながらで溶解し、クロロギ酸フェニル15.6部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して、70℃で乾燥し、下記式(55)で示されるウレイド化合物56.6部を得た。
(合成例13)
上記式(74)で示される化合物 136部を水500部に加え、水酸化ナトリウム25%水溶液を用いてpH6~7になるように調整しながら溶解し、クロロギ酸フェニル15.6部を50~70℃で6時間撹拌しながら投入しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して、70℃で乾燥し、下記式(63)で示されるウレイド化合物92.3部を得た。
縦目および横目を有する紙(丹羽紙業株式会社製 特選ケント紙(110kg)縦目 A4(210×297mm)に、その基材の縦目方向に沿ってラビング布(妙中パイル織物社製 MK0012)を巻いたロールで100rpmの速度、荷重5kgfでラビング処理を行った。そのラビング処理を行った紙面に式(15)に示される発光性化合物5質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(花王社製 エマルゲン MS-110)0.15質量部、水100質量部の組成物を、紙のラビング面に組成物の塗布量が10μmの膜厚になるようにガラス棒を用いて塗工し、25℃で乾燥させて、本発明の偏光発光素子を作製した。
実施例1で用いたセロファン(レンゴー社製 セロファン)に、合成例1で得られた上記式(15)で示される化合物 0.5質量部と、芒硝1.0質量部と、水1000質量部とを含む45℃の水溶液に4分間浸漬し、70℃で乾燥させ、上記式(15)を含有したセロファンを作製し、比較例1の測定試料とした。比較例1によって得られた試料は紫外線LED(日亜化学工業社製「PW-UV943H-04」:375nmハンドライトタイプ ブラックライト)で紫外光を照射すると発光はするものの、偏光板を介して視認しても偏光を発光することは確認できなかった。
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製VF-PS#7500)を40℃の水に3分間浸漬して、フィルムを膨潤させた。膨潤して得られたフィルムを、合成例1で得られた式(15)で示される化合物 0.2質量部と、芒硝1.0質量部と、水1000質量部とを含む45℃の水溶液に、4分間浸漬して、上記式(15)で示される化合物をフィルムに含有させた。当該フィルムを、50℃に調整した3%ホウ酸水溶液中で、5分間かけて5倍に延伸した。延伸して得られたフィルムを、緊張状態を保ったまま常温の水で20秒間水洗し、70℃で乾燥して特許文献7に類する偏光発光するフィルムを得て比較例2の試料とした。
実施例1~14で得られた偏光発光素子を115℃で100時間を適用したところ、偏光発光特性に変化が見られなかった。また実施例1で得られた偏光発光素子を100mm角にカットして115℃で100時間を適用したところ、最も寸法変化した部位での寸法変化率は0.08%であった。一方で、比較例2で得られた試料を100mm角にカットして115℃で100時間に適用したところ、最も寸法変化した部位での寸法変化率は5.3%の寸法変化率を示し、実施例1の偏光発光素子に比べて寸法変化が大きいことを確認した。
Claims (22)
- 発光性化合物又はその塩が配向した状態で膜として形成する偏光発光素子であって、前記発光性化合物またはその塩が膜を形成するに際し、基材上で膜が形成されており、前記発光性化合物又はその塩が、下記式(1)~下記式(7)からなる群から選択される構造を有する偏光発光素子。
また、※は結合位置を示す。)
- 発光性化合物又はその塩が吸収する波長の光を照射することによって、偏光を発光する請求項1に記載の偏光発光素子。
- 前記吸収する光の波長と前記発光する光の波長との少なくとも一部が異なり、吸収する光の量が発光素子の軸によって異なり、かつ、光を吸収することによって可視域の偏光を発光する請求項2に記載の偏光発光素子。
- 前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7又はY1~Y7、若しくはX1~X7又はY1~Y7のいずれか少なくとも一つが上記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれか少なくとも一つが窒素原子または硫黄原子を少なくとも含む多環芳香族基または複素環基である請求項1~3のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記式(1)~(7)中、X1~X7又はY1~Y7、若しくはX1~X7又はY1~Y7のいずれか少なくとも一つが上記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれか少なくとも一つが各々独立に下記式(9)~下記式(14)からなる群より選択される基を有する請求項1~4のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7又はY1~Y7、又は前記式(1)~前記式(7)におけるX1~X7又はY1~Y7が前記式(8)の場合のZが、各々独立に前記式(9)~前記式(14)からなる群から選択される基のいずれかの基を有する請求項5に記載の偏光発光素子。
- 前記式(1)~前記式(7)中、X1~X7又はY1~Y7、又は前記X1~X7及びY1~Y7が前記式(8)で表される基を有する場合のZが、いずれも前記式(9)~(14)からなる群から選択される同一の基を有する請求項5または6に記載の偏光発光素子。
- 前記発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程でリオトロピック液晶性を示す請求項1~7のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記基材の表面が配向した状態である請求項1~8のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記基材がセルロースを原料としたフィルムまたは紙である請求項1~9のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記基材がパルプを原料としたフィルムまたは紙である請求項1~9のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記基材が熱可塑性樹脂であるフィルムである請求項1~9のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記基材が配向膜である請求項1~9のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 前記配向膜が光配向膜である請求項13に記載の偏光発光素子。
- 保護層を有する請求項1~14のいずれかに記載の偏光発光素子。
- 請求項1~7のいずれかに記載の発光性化合物またはその塩が含有した溶液を基材に塗布し、発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で、塗布液に異方性を付与し成形する偏光発光素子の製造方法。
- 前記溶媒が水を含む請求項16に記載の偏光発光素子の製造方法。
- 溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で前記発光性化合物またはその塩が自己配向性を発現する請求項16または請求項17に記載の偏光発光素子の製造方法。
- 前記基材の表面に発光性化合物またはその塩が溶媒に溶解した状態、もしくは溶媒が乾燥する過程で剪断応力を適用することによって異方性を発現させる請求項16~18のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
- 前記基材の表面が異方性を有している状態の上に、発光性化合物またはその塩が膜を形成する請求項16~19のいずれかに記載の偏光発光素子の製造方法。
- 前記基材表面の異方性が、基材の延伸によって形成される請求項20に記載の偏光発光素子の製造方法。
- 前記基材表面の異方性が、ラビング処理を適用することによって形成される請求項20または請求項21に記載の偏光発光素子の製造方法。
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