JP7336953B2 - 鉄道車両用座席 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両用座席に関する。
特許文献1には、着座した乗客の尻部を支えるシートクッションと、着座した乗客の背部を支えるシートバックとを備えた鉄道車両用の座席が開示されている。この座席は、乗客が着座姿勢を変えることができるように、シートバックが下部を回動支点として傾動することでシートバックの傾斜角度を調節できるリクライニング機構を備えている。
特開2012-206638号公報
ところで、鉄道車両用座席において、シートクッションの下方にリクライニング機構や水平回転機構などを配置する場合がある。シートクッションの下方に配置された機構に対して点検および整備を行う場合、例えば作業者が座席からシートクッションを着脱しながら、あるいはシートクッションの下から手探りで点検および整備作業を行うことになる。また、仮にシートクッションの下側にレールを設けてシートクッションの前後スライドを可能な構造としたとしても、レールに対するシートクッションの着脱作業には多くの時間と手間を要することとなる。
そこで本発明は、鉄道車両用座席において、シートクッションの前後移動を可能にし、且つシートクッション下方の点検および整備を容易に行うことができる構成を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る鉄道車両用座席は、鉄道車両の客室に設けられた脚台に設置される座席であって、前記脚台に固定されるシェル座部を有するシェルと、前記シェル座部に支持される座フレームと、前記座フレームを上方から覆うように前記座フレームに取り付けられるシートクッションと、前記シェル座部に対して前記座フレームの後部を前後方向にスライドする第1スライド部と、前記第1スライド部の前側に配置され、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部を前後方向にスライドする第2スライド部と、を備え、前記第1スライド部は、前記シェル座部に対して前記座フレームを左右方向に延びる軸回りに回動可能に、前記座フレームの後部と前記シェル座部とを連結し、前記第2スライド部は、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部を離間可能に構成される。
前記構成によれば、第1スライド部および第2スライド部が、それぞれ、シェル座部に対して座フレームの後部および前部を支持し、それぞれを前後方向にスライドするため、シートクッションの前後移動を可能な構成とすることができる。また、第1スライド部は、シェル座部に対して座フレームを左右方向に延びる軸回りに回動可能に、座フレームの後部とシェル座部とを連結し、第2スライド部は、シェル座部に対して座フレームを離間可能に構成されている。このため、座フレームに取り付けられたシートクッションを、着座可能な水平な状態から跳ね上がった状態にすることができ、シートクッション下方の点検および整備を容易に行うことができる。
本発明によれば、鉄道車両用座席において、シートクッションの前後移動を可能にし、且つシートクッション下方の点検および整備を容易に行うことができる構成を提供することができる。
実施形態に係る鉄道車両用座席の斜視図である。 図1に示す鉄道車両用座席の分解斜視図である。 図1に示す鉄道車両用座席においてシートバックの一部とシートクッションとを除いた図である。 シートバックの接続箇所を拡大して示す拡大側面図である。 図1に示す前後スライド機構の後方斜視図である。 前後スライド機構のスライド動作を示す側面断面図であり、(A)は座フレームが移動範囲における後端位置に位置する状態であり、(B)は座フレームが移動範囲における前端位置に位置する状態である。 図1に示す前後スライド機構において、シートクッションが跳ね上がった状態を示す図である。 シートクッションが着座可能な状態にあるときの回動規制機構の近傍を拡大して示す、図6のVIII拡大正面断面図である。 シートクッションを跳ね上がった状態から着座可能な状態に戻す際の回動規制機構の動作を説明するための拡大正面断面図である。 第2レールと第2ガイドとの接触箇所を拡大して示す拡大側面断面図である。 図1に示す鉄道車両用座席のリクライニング動作を示す図である。
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る鉄道車両用座席1の斜視図である。鉄道車両用座席1は、鉄道車両の客室に設けられた脚台2に設置されるリクライニング可能な座席となっている。なお、以下の説明における方向の概念は、鉄道車両用座席1に着座した乗客の見る方向を基準とする。
本実施形態では、鉄道車両用座席1は、二名の乗客が着座可能となっている。鉄道車両用座席1は、脚台2に固定されたシェル10と、左右方向に並ぶ2つのシートクッション3、左右方向に並ぶ2つのシートバック20、左右方向に並ぶ2つのヘッドレスト4を有する。シートクッション3、シートバック20およびヘッドレスト4は、シェル10に支持されており、それぞれ、鉄道車両用座席1に着座した乗客の尻部、背部および頭部を支える。
図2は、鉄道車両用座席1の分解斜視図である。なお、図2で、シートクッション3、シートバック20およびヘッドレスト4は省略している。図2に示すように、シェル10は、シェル座部11、シェル背部12、および3つの肘掛部13a,13b,14を有する。シェル座部11は、水平に広がる略板状をなしており、脚台2に固定される。
シェル背部12は、シェル座部11に連続して一体に形成される。また、シェル背部12は、シェル座部11に連続してシェル座部11の後側から上方に延びる。より詳しくは、シェル背部12は、シェル座部11の後側の端縁部から上方に延びる略板状をなしている。シェル背部12の上部に、当該シェル背部12の上部を前方から覆うように2つのヘッドレスト4(図1参照)が取り付けられる。また、シェル背部12の背面に、2つの鉄道車両用テーブル5が左右方向に並ぶように取り付けられる。
シェル座部11およびシェル背部12を左右方向両側から挟むように、鉄道車両用座席1の左右方向両端部に肘掛部13a,13bが位置する。肘掛部13a,13bは、シェル座部11とシェル背部12と一体に形成される。肘掛部13a,13bは、シェル背部12の下部とシェル座部11の後部とに接続されている。シェル10は、繊維強化樹脂部材と、繊維強化樹脂部材に結合される補強部材とを用いて形成されている。
また、シェル背部12の前面における左右方向中央に、肘掛部14が接続されている。具体的には、シェル背部12の前面における左右方向中央には、接続部15が前方に突き出るように設けられている(図3および4も参照)。肘掛部14の基端部が、接続部15を通過するように左右方向に延びる軸を中心に回動可能に接続部15に接続されている。そして、肘掛部14は、2つのシートバック20の間を通過するようにシェル背部12から前方に延びる展開位置と、当該展開位置から上方に回動して2つのシートバック20の間の後側に格納された格納位置との間で自由に回動可能となっている。
シェル座部11には、左右方向に並ぶ2つの座フレーム30が支持されている。各座フレーム30は、平面視して略矩形状に形成されており、左右方向に延びる前フレーム部31と、前フレーム部31の後方で左右方向に延びる後フレーム部32と、前フレーム部31および後フレーム部32の左端部同士をつなぐ左フレーム部33と、前フレーム部31および後フレーム部32の右端部同士をつなぐ右フレーム部34とを有する。なお、後フレーム部32には、後述する被係合部35が設けられている。2つの座フレーム30の各々に、当該座フレーム30を上方から覆うようにシートクッション3(図1参照)が取り付けられる。
また、シェル背部12の前面における肘掛部13a,13bより上方には、左右方向に並ぶ2つの取付機構40が設けられている。2つの取付機構40は、それぞれ、シェル背部12に対して2つのシートバック20を接続する。
図3は、鉄道車両用座席1においてシートバック20の一部とシートクッション3とを除いた図である。また、図4は、シートバック20の接続箇所を拡大して示す拡大側面図である。シートバック20の前面および背面は、側面視で前方に凸なアーチ形状を有する(図1も参照)。シートバック20は、その輪郭に沿った形状を有するアルミ製のパイプからなる枠体21と、枠体21を覆うように枠体21に取り付けられて背凭れ面を形成する表皮22(図1参照)とを有する。なお、図3および4では、シートバック20の表皮22や肘掛部14などを省略している。
枠体21の上部は、取付機構40によりシェル背部12に対して取り付けられ、枠体21の下部は、座フレーム30の後部に取り付けられる。具体的には、シートバック20は、第1係合部23および第2係合部24を有しており、これら第1係合部23および第2係合部24は、それぞれ、取付機構40の被係合部41および座フレーム30の被係合部35と係合する。
第1係合部23は、枠体21の上部に位置しており、取付機構40の被係合部41に対して着脱自在に係合する。また、第2係合部24は、枠体21の下部に位置している。また、座フレーム30の後フレーム部32には、左右方向に間隔をあけて2つの被係合部35が設けられている。第2係合部24は、座フレーム30の被係合部35に対して着脱自在に係合する。本実施形態では、第2係合部24は、枠体21の一部であり、各被係合部35の上下方向に開口した凹部に圧入されて係合する。
上述した取付機構40は、シェル背部12の前面に対して隙間を空けて設置されるシートバック20の上部を、シェル背部12の前面に沿うように上下変位させる。すなわち、取付機構40は、シェル背部12の前面に対してシートバック20の上部を上下変位自在に接続している。具体的には、取付機構40は、シェル背部12に固定されたレール42を有する。レール42は、被係合部41を上下方向に摺動自在に支持している。取付機構40は、本発明の「上下スライド機構」として機能する。また、本実施形態の鉄道車両用座席1は、シェル座部11に対して座フレーム30を前後変位自在に接続する2つの前後スライド機構50を備えている。
図5は、前後スライド機構50の後方斜視図である。図6(A)および6(B)は前後スライド機構50のスライド動作を示す側面断面図であり、図6(A)は、座フレーム30が移動範囲における後端位置P1に位置する状態であり、図6(B)は座フレーム30が移動範囲における前端位置P2に位置する状態である。2つの前後スライド機構50は、座フレーム30における左フレーム部33の下方と右フレーム部34の下方にそれぞれ設けられている。前後スライド機構50は、所定の後端位置P1と所定の前端位置P2との間で座フレーム30を前後変位させる。各前後スライド機構50は、第1スライド部51と、第1スライド部51の前側に配置された第2スライド部52とを有する。
第1スライド部51は、シェル座部11に対して座フレーム30の後部を前後方向にスライドする。第1スライド部51は、第1レール61と第1ガイド62とを含む。第1レール61は、前下がりの傾斜となるように前後方向に延びており、シェル座部11の上面に固定されている。第1ガイド62は、第1レール61に前後方向に摺動自在に支持されており、座フレーム30の後部に固定されている。
本実施形態では、第1スライド部51は、シェル座部11に対して座フレーム30を左右方向に延びる軸回りに回動可能に、座フレーム30の後部とシェル座部11とを連結している。本実施形態では、第1ガイド62が回動機構を備える。具体的には、第1ガイド62は、座フレーム30の後部に固定された固定ブラケット63と、第1レール61を摺動する摺動ブラケット64と、固定ブラケット63と摺動ブラケット64とを連結する連結ピン65とを有する。2つの前後スライド機構50の固定ブラケット63は、左フレーム部33の後端部および右フレーム部34の後端部にそれぞれ固定されている。また、固定ブラケット63は、座フレーム30から下方に突出している。また、摺動ブラケット64は、第1レール61に摺動自在に支持され、第1レール61から上方に突出している。第1レール61は、摺動ブラケット64のスライド範囲において摺動ブラケット64を離間不能に保持している。連結ピン65は、左右方向に延びており、摺動ブラケット64に対して固定ブラケット63を回動自在に連結する。
第2スライド部52は、シェル座部11に対して座フレーム30の前部を前後方向にスライドする。第2スライド部52は、第2レール71と第2ガイド72とを含む。第2レール71は座フレーム30の下部に固定されている。より詳しくは、2つの前後スライド機構50のうちの一方の前後スライド機構50の第2レール71は、左フレーム部33の前端部から中央部にかけて延びるように、左フレーム部33の下部に固定されており、2つの前後スライド機構50のうちの他方の前後スライド機構50の第2レール71は、右フレーム部34の前端部から中央部にかけて延びるように、右フレーム部34の下部に固定されている。
第2ガイド72は、シェル座部11の上面に固定されており、第2レール71を摺動自在に支持する。第2ガイド72は、第2レール71に対して離間可能となっている。具体的には、第2ガイド72は、正面視して上下方向に開口した凹溝を有し(図8も参照)、この凹溝の底の面上で第2レール71が摺動する。
図7は、シートクッション3が跳ね上がった状態を示す図である。上述したように本実施形態では、第1ガイド62が回動機構を備え、第2ガイド72が第2レール71に対して離間可能となっている。このため、第1スライド部51の連結ピン65を中心に座フレーム30が上方に回動可能となっており、図7に示すように、シートクッション3を跳ね上げることが可能である。シートクッション3を跳ね上げることで、シートクッション3の下方に設けられた機構の点検および整備を容易に行うことが可能である。
例えば本実施形態では、シェル座部11上であって、シートクッション3の下方に、前後方向における座フレーム30の位置を調節するための調節機構(図示せず)が設けられている。調節機構は、座席(例えば肘掛部13a,13bなど)に設けられた所定の操作部(例えばレバー、ボタンなど)を乗客が操作することによって、シートクッション3および座フレーム30を前後方向における当該乗客の好みの位置に調節(固定)するものである。すなわち、操作部が乗客に操作されることで、前後スライド機構50によりシェル座部11に対して座フレーム30が前後変位自在となる。調節機構には、従来の座席のリクライニング機構と同様の機構を採用できる。例えば、調節機構は、シートクッション3の前後方向の位置を数段階で調節するものであってもよいし、無段階で調節するものであってもよい。また、調節機構は、例えば機械式、油圧式、空圧式、電動式などいずれの機構であってもよい。なお、シェル座部11上であって、シートクッション3の下方に、調節機構以外の他の機構が設けられていてもよい。
さらに本実施形態では、鉄道車両用座席1が後述する2つの回動規制機構80を備えている。回動規制機構80は、シェル座部11に対して座フレーム30の前部が離間する方向にシェル座部11に対して座フレーム30が回動するのを規制する。回動規制機構80は、シェル座部11に対する座フレーム30の回動の規制を解除可能に構成されている。このため、回動規制機構80による規制を解除した場合にのみ、シートクッション3の跳ね上げが可能となっている。
回動規制機構80の詳細について、図7~9を参照して説明する。なお、鉄道車両用座席1が備える2つの回動規制機構80は、左右対称な構成であるため、以下の説明では1つの回動規制機構80について説明する。
図8は、シートクッションが着座可能な状態にあるときの回動規制機構80の近傍を拡大して示す、図6のVIII拡大正面断面図である。回動規制機構80は、シェル座部11に設けられたストッパ部材81と、座フレーム30に設けられた被当接部82とを有する。
ストッパ部材81は、第2ガイド72に対して鉄道車両用座席1の左右方向中央側に位置し、第2ガイド72と左右方向に対向している。ストッパ部材81は、シェル座部11に基端部が固定され、基端部から上方(座フレーム30側)に向かって延在する板ばね部81aを有する。板ばね部81aの2つの主面は、鉄道車両用座席1の左右方向を向いており、板ばね部81aに力が作用して板ばね部81aが変形することで、その先端部(上端部)は左右方向に変位可能となっている。板ばね部81aの先端部には、座フレーム30の被当接部82と当接する当接部81bが設けられている。
当接部81bは、板ばね部81aの先端部から鉄道車両用座席1の左右方向における外側で且つ下方に向かって延びており、ストッパ部材81は全体として下向きに開口したフック状に形成されている。本実施形態では、板ばね部81aおよび当接部81bは、弾性変形可能な一枚の薄板を折り曲げて形成されている。
被当接部82は、座フレーム30の左フレーム部33または右フレーム部34から、鉄道車両用座席1の左右方向中央に向かって延びている。本実施形態では、被当接部82は、シェル座部11に対して座フレーム30が回動する際にストッパ部材81と係合するように、当該ストッパ部材81とは逆向きに開口したフック状に形成されている。また、座フレーム30がシェル座部11に対して前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にある場合でも、シェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に被当接部82に対して当接するように、被当接部82は、前後方向に延在している(図6(A)、図6(B)および図7参照)。具体的には、被当接部82は、第2レール71の前端部から後端まで延在している。
当接部81bは、板ばね部81aが変形することで、当接(回動規制)位置P3と退避(回動規制解除)位置P4との間で左右方向に変位可能となっている。当接部81bが当接位置P3にある場合、シェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に、座フレーム30に設けられた被当接部82に対して当接する(図8の実線)。当接部81bが退避位置P4にある場合、シェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に、被当接部82に対して当接しない。
また、板ばね部81aは、退避位置P4から当接位置P3へ向かう方向に当接部81bを付勢している。すなわち、板ばね部81aの付勢力に抗する力がストッパ部材81に作用しないときは、当接部81bは、当接位置P3に維持されている。作業者がシートクッション3の下方を点検する場合、作業者はまず当接部81bを当接位置P3から退避位置P4に移動させるように、ストッパ部材81を鉄道車両用座席1の左右方向中央に向かって変形させ、その状態のままシートクッション3の前部を持ち上げる。こうして、シートクッション3を着座可能な状態から跳ね上がった状態とすることができる。
図9は、シートクッション3を跳ね上がった状態から着座可能な状態に戻す際の回動規制機構80の動作を説明するための拡大正面断面図である。本実施形態では、回動規制機構80は、シェル座部11に対して座フレーム30の前部が近接する方向にシェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に、被当接部82が、板ばね部81aの付勢力に抗して当接部81bを押圧して当接位置P3から退避位置P4へ押し退けるように構成されている。具体的には、当接部81bの上面は、水平面に対して、鉄道車両用座席1の左右方向における外側で且つ下方に向かって傾斜している。このため、当接部81bは、シートクッション3を跳ね上がった状態から着座可能な状態に戻す際に、当接部81bの上面に当接した被当接部82から、当接位置P3から退避位置P4へ押し退ける方向に力を受ける。被当接部82が当接部81bを通過して当接部81bの上面から離れると、当接部81bは、板ばね部81aの付勢力により元の当接位置P3へ戻る。
図6(A)および6(B)に戻って、本実施形態では、前後スライド機構50は、図6(B)に示す前端位置P2にある座フレーム30の姿勢が、図6(A)に示す後端位置P1にある座フレーム30の姿勢よりも後方且つ下方に向けて傾斜するように構成されている。具体的には、図6(A)および6(B)に示す第1レール61は、前方且つ下方に向けて傾斜している。このため、座フレーム30が後端位置P1から前端位置P2へと移動するにつれて、第2レール71と第2ガイド72との接触位置の高さが維持されたまま、第1レール61と第1ガイド62との接触位置の高さが下方に移動する。このため、前端位置P2にあるときの座フレーム30の姿勢は、後端位置P1にあるときの座フレーム30の姿勢に比べて後ろ側に傾く。
図10は、第2レール71と第2ガイド72との接触箇所を拡大して示す拡大側面図である。図10に示すように、第2レール71に対する第2ガイド72の摺動面は、側面視して上に凸に緩やかに湾曲している。また、図10には、座フレーム30が後端位置P1にあるときの第2レール71が実線で、座フレーム30が前端位置P2にあるときの第2レール71’が二点鎖線で示されている。座フレーム30が後端位置P1から前端位置P2へと移動するにつれて、座フレーム30に固定された第2レール71は後ろ側に傾き、これに伴い第2ガイド72における第2レール71との接触箇所は変化する。第2ガイド72の摺動面が湾曲形状を呈しているため、座フレーム30がシェル座部11に対して前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にある場合でも、第2ガイド72と第2レール71との接触箇所での応力を分散させることができる。
以上に説明したように、本実施形態に係る鉄道車両用座席1では、第1スライド部51および第2スライド部52が、それぞれ、シェル座部11に対して座フレーム30の後部および前部をそれぞれ前後方向にスライドするため、シートクッション3の前後移動を可能な構成とすることができる。また、第1スライド部51は、シェル座部11に対して座フレーム30を左右方向に延びる軸回りに回動可能に、座フレーム30の後部とシェル座部11とを連結し、第2スライド部52は、シェル座部11に対して座フレーム30を離間可能に構成されている。このため、座フレーム30に取り付けられたシートクッション3を、着座可能な水平な状態から跳ね上がった状態にすることができ、シートクッション3下方の点検および整備を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、回動規制機構80によりシートクッション3の回動が規制される。このため、むやみにシートクッション3が回動されるのを防止することができる。
また、本実施形態では、ストッパ部材81の当接部を当接位置P3と退避位置P4との間で変位させるというシンプルな構成で、シートクッション3の回動を規制したり、シートクッション3の回動の規制を解除したりできる。
また、本実施形態では、当接部81bは、当接位置P3と退避位置P4との間で左右方向に変位し、被当接部82は、座フレーム30がシェル座部11に対して前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にある場合でも、シェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に被当接部82に対して当接するように、前後方向に延在している。このため、シェル座部11に対する座フレーム30が前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にあるときでも、回動規制機構80によりシートクッション3が回動するのを規制できる。
また、本実施形態では、板ばね部81aが、退避位置P4P4から当接位置P3へ向かう方向に当接部81bを付勢するため、板ばね部81aの付勢力に抗する力がストッパ部材81に作用しないときは、当接部81bの位置を当接位置P3に維持することができる。
また、本実施形態では、ストッパ部材81は、シェル座部に基端部が固定され、基端部から座フレーム30に向かって延在する板ばね部81aと、板ばね部81aの先端部に設けられた当接部81bを有する構成であるため、当接部81bを退避位置P4から当接位置P3へ向かう方向に付勢する構造をシンプルな構成にて実現できる。
また、本実施形態では、回動規制機構80は、シェル座部11に対して座フレーム30の前部が近接する方向にシェル座部11に対して座フレーム30が回動する際に、被当接部82が、板ばね部81aの付勢力に抗して当接部81bを押圧して当接位置P3から退避位置P4へ押し退けるように構成されている。このため、シートクッション3を跳ね上がった状態から水平な状態へ戻すだけで、容易にシートクッション3の回動を規制した状態とすることができる。
また、本実施形態では、前後スライド機構50によりシェル座部11に対して座フレーム30が前後変位自在であり、また、取付機構40により、シェル背部12に対してシートバック20の上部を上下変位可能に接続している。このため、本実施形態に係る鉄道車両用座席1は、前後スライド機構50と取付機構40とが連動することにより、シートバック20が傾動するリクライニング動作を実現する。
図11(A)および11(B)は、鉄道車両用座席1のリクライニング動作を示す側面図である。図11(A)は、座フレーム30が後端位置P1にあるときの鉄道車両用座席1の状態を示し、図11(B)は、座フレーム30が前端位置P2にあるときの鉄道車両用座席1の状態を示す。座フレーム30を前方にスライドさせれば、ヘッドレスト4の位置はそのままで、シートクッション3とシートバック20の下部とが前方に移動するとともにシートバック20の上部がシェル背部前面に沿って下方に移動する。このように、座フレーム30の前方への変位に連動してシートバック20の上部が下方に移動するため、シートバック20が傾動してリクライニングされる。
また、本実施形態では、第1レール61に摺動自在に支持される第1ガイド62が、シェル座部11に対して座フレーム30を左右方向に延びる軸回りに回動可能に構成されている。このため、シェル座部11に対する座フレーム30が前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にあるときでも、常に座フレーム30の後部を中心に跳ね上がる構成を実現できる。
また、本実施形態では、第1ガイド62が、座フレーム30の後部に固定され、下方に突出する固定ブラケット63と、第1レール61を摺動し、上方に突出する摺動ブラケット64と、左右方向に延び、固定ブラケット63と摺動ブラケット64とを連結する連結ピン65とを有する構成である。このため、シェル座部11と座フレーム30とが各ブラケットを介して互いに連結されるため、座フレーム30がシェル座部11に対して回動する際に互いに干渉しない構成を容易に実現できる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
例えば上記実施形態で説明された第1スライド部51および第2スライド部52の数、配置および構成は、上記で説明されたものに限定されない。
例えば上記実施形態では、第1スライド部51において、第1レール61がシェル座部11に固定され、第1ガイド62が座フレーム30の後部に固定されていたが、第1レール61が座フレーム30の後部に固定され、第1ガイド62がシェル座部11に固定されてもよい。また、第1ガイド62が、固定ブラケット63および摺動ブラケット64の双方を有する構成であったが、第1ガイド62が固定ブラケット63および摺動ブラケット64の一方または双方を有さなくてもよい。また、第2スライド部52において、第2レール71が座フレーム30に固定され、第2ガイド72がシェル座部11に固定されていたが、第2レール71がシェル座部11に固定され、第2ガイド72が座フレーム30に固定されていてもよい。また、第2ガイド72の摺動面が側面視して湾曲していなくてもよい。
また、回動規制機構80の数、配置および構成も、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば上記実施形態では、ストッパ部材81がシェル座部11に設けられており、被当接部82が座フレーム30に設けられていたが、ストッパ部材81が座フレーム30に設けられ、被当接部82がシェル座部11に設けられていてもよい。
また、上記実施形態では、鉄道車両用座席1が左右対称な2つの回動規制機構80を備えていたが、いずれか一方のみを備える構成であってもよい。また、鉄道車両用座席1が、鉄道車両用座席1の左右方向中央に設けられた1つの回動規制機構80を備えてもよい。この場合、回動規制機構80は、座フレーム30の前フレーム部31およびシェル座部11の一方に設けられたストッパ部材81と、座フレーム30の前フレーム部31およびシェル座部11の他方に設けられた被当接部82を備えてもよい。当接部81bが当接位置P3と退避位置P4との間で前後方向に変位してもよい。
被当接部82は前後方向に延びていなくてもよく、例えば座フレーム30の左フレーム部33または右フレーム部34に、前後方向に間隔をあけて複数の被当接部82が設けられていてもよい。
また、回動規制機構80において、被当接部82は、座フレーム30に水平方向に開口するように形成された係止孔であり、ストッパ部材81の当接部81bは、この係止孔に水平方向に挿通される係止ピンであってもよい。退避位置P4から当接位置P3へ向かう方向への当接部81bの付勢は、板ばねの代わりに圧縮コイルばねなどの別の付勢部材で行ってもよい。また、当接部81bは当接位置P3に付勢されていなくてもよく、例えば当接部81bが係止ピンである場合、係止ピンをシェル座部11からチェーンなどで連結することで、座フレーム30の係止孔に挿通された状態の係止ピンがシェル座部11から所定の距離以上離間することを規制してもよい。
また、回動規制機構80における、シートクッション3を跳ね上げた状態から着座可能な状態に戻す際の被当接部82が当接部81bを当接位置P3から退避位置P4へ押し退ける構成も、上記実施形態で説明された構成に限定されない。例えば被当接部82の下面が水平面に対して当接部81b側に傾斜していてもよいし、当接部81bの上面と被当接部82の下面の双方が水平面に対して傾斜していてもよい。また、鉄道車両用座席1は回動規制機構80を備えなくてもよい。
また、上記実施形態では、1つのシェル座部11で2つのシートクッション3および2つのシートバック20が支持されていたが、1つのシェル座部11で支持されるシートクッション3およびシートバック20の各々の数は、1つでもよいし3つ以上でもよい。また、肘掛部13a,13bがシェル座部11およびシェル背部12と一体に形成されていなくてもよく、肘掛部13a,13bはシェル座部11またはシェル背部12とは別部材として形成されてもよい。また、肘掛部13a,13bはシェル座部11およびシェル背部12の一方にのみ接続されてもよい。また、シェル10は、繊維強化樹脂部材と、繊維強化樹脂部材に結合される補強部材とを用いて形成されていたが、シェル10は、別の部材を用いて形成されていてもよい。
また、第1レール61が前方且つ下方に向けて傾斜する代わりに、座フレーム30に固定された第2レール71が後方且つ下方に向けて傾斜していてもよい。この場合にも、リクライニング時にシートクッション3が後傾する構造を実現できる。また、前後スライド機構50は、前端位置P2にある座フレーム30の姿勢が、後端位置P1にある座フレーム30の姿勢よりも後方且つ下方に向けて傾斜するように構成されていなくてもよく、例えば第1レール61および第2レール71の双方が水平に延びていてもよい。
1 :鉄道車両用座席
2 :脚台
3 :シートクッション
10 :シェル
11 :シェル座部
12 :シェル背部
13a :肘掛部
13b :肘掛部
20 :シートバック
21 :枠体
22 :表皮
23 :第1係合部
24 :第2係合部
30 :座フレーム
35 :被係合部
40 :取付機構(上下スライド機構)
41 :被係合部
42 :レール
50 :前後スライド機構
51 :第1スライド部
52 :第2スライド部
61 :第1レール
62 :第1ガイド
63 :固定ブラケット
64 :摺動ブラケット
65 :連結ピン
71 :第2レール
72 :第2ガイド
80 :回動規制機構
81 :ストッパ部材
81a :板ばね部
81b :当接部
82 :被当接部

Claims (6)

  1. 鉄道車両の客室に設けられた脚台に設置される座席であって、
    前記脚台に固定されるシェル座部を有するシェルと、
    前記シェル座部に支持される座フレームと、
    前記座フレームを上方から覆うように前記座フレームに取り付けられるシートクッションと、
    前記シェル座部に対して前記座フレームの後部を前後方向にスライドする第1スライド部と、
    前記第1スライド部の前側に配置され、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部を前後方向にスライドする第2スライド部と、を備え、
    前記第1スライド部は、前記シェル座部に対して前記座フレームを左右方向に延びる軸回りに回動可能に、前記座フレームの後部と前記シェル座部とを連結し、
    前記第2スライド部は、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部を離間可能に構成され
    前記座席は、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部が離間する方向に前記シェル座部に対して前記座フレームが回動するのを規制する回動規制機構を更に備え、
    前記回動規制機構は、前記シェル座部に対する前記座フレームの回動の規制を解除可能に構成され、
    前記回動規制機構は、前記座フレームおよび前記シェル座部の一方に設けられたストッパ部材を備え、
    前記ストッパ部材は、前記シェル座部に対して前記座フレームが回動する際に、前記座フレームおよび前記シェル座部の他方に設けられた被当接部に対して当接する当接位置と、前記被当接部に対して当接しない退避位置との間で変位可能な当接部を有し、
    前記当接部は、前記当接位置と前記退避位置との間で左右方向に変位し、
    前記被当接部は、前記座フレームが前記シェル座部に対して前後方向にスライド動作する範囲内のいずれの位置にある場合でも、前記シェル座部に対して前記座フレームが回動する際に前記被当接部に対して当接するように、前後方向に延在している、鉄道車両用座席。
  2. 前記ストッパ部材は、前記退避位置から前記当接位置へ向かう方向に前記当接部を付勢する付勢部を含む、請求項に記載の鉄道車両用座席。
  3. 前記ストッパ部材は、前記座フレームおよび前記シェル座部の一方に基端部が固定され、前記基端部から前記座フレームおよび前記シェル座部の他方に向かって延在する、前記付勢部としての板ばね部を有し、
    前記板ばね部の先端部に前記当接部が設けられている、請求項2に記載の鉄道車両用座席。
  4. 前記回動規制機構は、前記シェル座部に対して前記座フレームの前部が近接する方向に前記シェル座部に対して前記座フレームが回動する際に、前記被当接部が、前記付勢部の付勢力に抗して前記当接部を押圧して前記当接位置から前記退避位置へ押し退けるように構成される、請求項2または3に記載の鉄道車両用座席。
  5. 前記第1スライド部は、前記シェル座部に固定された第1レールと、前記座フレームの後部に固定され且つ前記第1レールに摺動自在に支持される第1ガイドと、を含み、
    前記第1ガイドは、前記シェル座部に対して前記座フレームを左右方向に延びる軸回りに回動可能に構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道車両用座席。
  6. 前記第1ガイドは、前記座フレームの後部に固定され、下方に突出する固定ブラケットと、前記第1レールを摺動し、上方に突出する摺動ブラケットと、左右方向に延び、前記固定ブラケットと前記摺動ブラケットとを連結する連結ピンとを有し、
    前記摺動ブラケットに対して前記固定ブラケットが回動することにより、前記シェル座部に対して前記座フレームが回動する、請求項に記載の鉄道車両用座席。
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