[第1の実施形態]
以下、電磁クラッチブレーキ装置及び車両用開閉体駆動装置を車両のパワースイングドア装置に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2の側面に設けられたドア開口部3を開閉する4枚のスイングドア10を備えている。即ち、これらの各スイングドア10は、それぞれ、その前端部10fに設けられたヒンジ11を支点に回動する。そして、本実施形態の車両1は、これらの各スイングドア10が、それぞれ、その車両1の室内に設けられた各座席の側方で開閉動作する構成になっている。
具体的には、図2に示すように、本実施形態のスイングドア10には、車体2側に設けられた図示しないストライカに係合することにより、このスイングドア10を全閉位置に拘束するラッチ機構15が設けられている。更に、本実施形態のスイングドア10は、そのドアハンドル17を操作することにより、このラッチ機構15による拘束が解除される。そして、本実施形態の車両1は、これにより、そのスイングドア10を手動により開閉操作することが可能になっている。
また、図2及び図3に示すように、本実施形態の車両1には、モータ18を駆動源として、そのスイングドア10を開閉動作させることが可能なパワースイングドア装置20が設けられている。
詳述すると、図3に示すように、本実施形態のパワースイングドア装置20は、一端が車体2に対して回動可能に連結されるインナチューブ21と、このインナチューブ21に外挿された状態でスイングドア10に対して回動可能に連結されるアウタチューブ22と、を備えている。更に、このパワースイングドア装置20は、これらのインナチューブ21及びアウタチューブ22の筒内に同軸配置されたスピンドルスクリュ23を備えている。そして、このスピンドルスクリュ23は、インナチューブ21の筒内に固定されたスピンドルナット24に螺合する状態で、アウタチューブ22の筒内に固定された軸受25により軸支されている。
即ち、本実施形態のパワースイングドア装置20においては、スイングドア10の開閉動作に伴って、そのインナチューブ21とアウタチューブ22とが軸方向に相対変位する。そして、本実施形態のパワースイングドア装置20は、これらのインナチューブ21及びアウタチューブ22の相対変位に基づいて、そのスピンドルナット24に螺合したスピンドルスクリュ23が回転する構成になっている。
また、本実施形態のパワースイングドア装置20においては、このスピンドルスクリュ23の一端、詳しくは、その軸受25に軸支された側の軸方向端部23aに対してモータトルクが入力される。更に、このモータトルクに基づきスピンドルスクリュ23が回転することにより、このスピンドルスクリュ23とスピンドルナット24との螺合関係に基づいて、そのスピンドルナット24を支持するインナチューブ21とスピンドルスクリュ23を支持するアウタチューブ22とが軸方向に相対変位する。そして、本実施形態のパワースイングドア装置20は、これにより、そのスイングドア10を開閉動作させることが可能になっている。
さらに詳述すると、本実施形態のパワースイングドア装置20は、そのモータ18とスピンドルスクリュ23の軸方向端部23aとの間に介在された電磁クラッチブレーキ装置30を備えている。そして、この電磁クラッチブレーキ装置30は、そのモータ18とスピンドルスクリュ23との連結を接断可能なクラッチ機能と、そのスピンドルスクリュ23に対して制動力を付与するブレーキ機能と、を備えている。
即ち、本実施形態のパワースイングドア装置20は、利用者による手動操作時には、この電磁クラッチブレーキ装置30のクラッチ機能により駆動トルクの伝達経路を切断することで、比較的小さな操作力で、容易に、そのスイングドアを開閉させることが可能になっている。更に、このパワースイングドア装置20は、このような利用者の手動操作時においても、電磁クラッチブレーキ装置30のブレーキ機能によって、そのスピンドルスクリュ23に制動力を付与することができる。そして、本実施形態のパワースイングドア装置20は、これにより、その手動操作時における良好な操作性を確保する構成となっている。
(電磁クラッチブレーキ装置)
次に、本実施形態における電磁クラッチブレーキ装置の構成について説明する。
図4~図6に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、回転軸31に固定されることにより当該回転軸31と一体に回転するロータ32と、このロータ32と同軸位置において回転不能に設けられた制動部材33と、これらのロータ32及び制動部材33と同軸に設けられた電磁石34と、を備えている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、磁性を有して制動部材33に対向する位置に同軸配置された第1アーマチャ35と、同じく磁性を有してロータ32に対向する位置に同軸配置された第2アーマチャ36と、を備えている。
本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、第1アーマチャ35は、回転軸31に固定されることにより当該回転軸31及びロータ32と一体に回転する。また、第2アーマチャ36は、これらの回転軸31及びロータ32に対して相対回転可能に設けられている。尚、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、これらの第1アーマチャ35及び第2アーマチャ36は、それぞれ、略円環板状の外形を有している。更に、回転軸31には、上記スピンドルスクリュ23が連結され、第2アーマチャ36には、モータ18の回転軸(図示略)が連結される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、そのパワースイングドア装置20のクラッチ機構及びブレーキ機構として機能する構成になっている(図3参照)。
即ち、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34の吸引力に基づいて、その第1アーマチャ35を制動部材33に圧接させることにより、この第1アーマチャ35と一体に回転する回転軸31及びスピンドルスクリュ23に対して制動力を付与する。また、この電磁クラッチブレーキ装置30は、同じく電磁石34の吸引力に基づいて、その第2アーマチャ36をロータ32に圧接させることにより、このロータ32と一体に回転する回転軸31及びスピンドルスクリュ23と、そのモータ18に連結された第2アーマチャ36と、を回転伝達可能に連結する。そして、本実施形態のパワースイングドア装置20は、これにより、そのスピンドルスクリュ23の回転を通じてスイングドア10の開閉動作を制御することが可能になっている。
詳述すると、図5及び図6に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、ロータ32は、回転軸31の軸方向端部31aに対して相対回転不能、且つ軸方向に相対移動不能に連結されている。また、第1アーマチャ35は、そのロータ32から軸方向に離間した位置において、この回転軸31に対して相対回転不能、且つ軸方向に相対移動不能に連結されている。更に、電磁石34は、これらの第1アーマチャ35とロータ32との間の軸方向位置に設けられ、制動部材33は、第1アーマチャ35に対向する軸方向位置において、その電磁石34と一体に設けられている。そして、第2アーマチャ36は、その電磁石34との間にロータ32を挟む軸方向位置に設けられている。
また、本実施形態の電磁石34は、軸方向に開口する環状溝41xを有した略円環状のフィールドコア41と、励磁コイル42が巻回された状態でフィールドコア41の環状溝41x内に配置される円環状のボビン43と、を備えている。更に、この電磁石34は、フィールドコア41の軸方向端部41aに固定されることにより、その環状溝41xの開口部を覆う略円環板状の蓋部材44を備えている。そして、本実施形態の電磁石34は、その励磁コイル42に通電することにより、この励磁コイル42を内側に配置するフィールドコア41及び蓋部材44をヨーク45として、電磁吸引力を発生する構成になっている。
即ち、本実施形態の電磁石34において、フィールドコア41及び蓋部材44は、鉄系金属等の磁性体を用いて形成されるとともに、ボビン43は、樹脂等の非磁性体を用いて形成されている。また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、この電磁石34は、その軸方向端部34aに固定された蓋部材44がロータ32と軸方向に対向する状態で、このロータ32と第1アーマチャ35との間の軸方向位置に配置されている。更に、本実施形態の制動部材33は、略円環板状の外形を有するとともに、上記蓋部材44が固定された軸方向端部41aとは反対側の軸方向端部41bにおいて、その電磁石34のヨーク45を構成するフィールドコア41に対して固定されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、その制動部材33と第1アーマチャ35とが軸方向に対向する構成になっている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、ロータ32は、第2アーマチャ36に対向する略円環板状の本体部32aと、この本体部32aの内周縁及び外周縁に立設された内筒部32b及び外筒部32cと、を備えている。即ち、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、ロータ32の内筒部32bに対して回転軸31の軸方向端部31aが嵌合する態様で、これらの回転軸31及びロータ32が連結されている。更に、本実施形態のロータ32は、これらの本体部32a、内筒部32b及び外筒部32cが、その軸方向に開口する環状凹部46を形成する。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、この環状凹部46内に、その蓋部材44が固定された電磁石34の軸方向端部34aを配置する構成になっている。
具体的には、本実施形態の電磁石34は、フィールドコア41の外周部分に、そのロータ32の本体部32aに対向する軸方向端部34a側に向かって先細りとなる磁石側テーパ面47を有している。また、本実施形態のロータ32は、その外筒部32cの内周部分に、この外筒部32cの先端側から基端側に向かって先細り、つまりは、電磁石34の軸方向端部34aに対向する本体部32a側に向かって先細りとなるロータ側テーパ面48を有している。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、これらの磁石側テーパ面47及びロータ側テーパ面48が互いに対向する状態で、そのロータ32の環状凹部46内に、電磁石34の軸方向端部34aが配置されている。
さらに詳述すると、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、ロータ32及び制動部材33は、それぞれ、磁性体を用いて構成されている。
即ち、図7に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、電磁石34の励磁コイル42に通電することにより、そのヨーク45を構成するフィールドコア41の軸方向端部41bに固定された制動部材33を含む電磁石34の第1磁路L1が形成される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、軸方向に吸引された第1アーマチャ35が、その軸方向に対向する制動部材33と圧接する構成となっている。
また、図8に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、電磁石34とロータ32との間のエアギャップGを介して、そのロータ32を含む電磁石34の第2磁路L2が形成される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、軸方向に吸引された第2アーマチャ36が、その軸方向に対向するロータ32と圧接する構成となっている。
更に、図9に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34の励磁コイル42に供給する駆動電力αを増減することにより、その第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1と、その第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2との大小関係が変化する。尚、図9中に示す駆動電力αは、電磁石34の励磁コイル42に対する通電電流量、或いは、その通電電流量を規定する印加電圧や駆動回路のデューティに表すことができる。そして、本実施形態においては、これにより、その第1アーマチャ35との圧接により制動部材33が制動力を発生するブレーキ状態P1と、第2アーマチャ36とロータ32との圧接により、これらのロータ32及び第2アーマチャ36を回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2とを切り替える切替機構50が形成されている。
尚、励磁コイル42に通電を行わない状態においては、電磁石34が電磁吸引力を発生しないため、第1アーマチャ35及び制動部材33が圧接されず、またロータ32及び第2アーマチャ36も圧接されない。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、クラッチ切断状態P0となるように構成になっている。
詳述すると、図7及び図8に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、略円環状の外形を有した電磁石34のフィールドコア41と回転軸31との間に介在されたボール軸受51を備えている。本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、電磁石34は、ボール軸受51の外輪51aに対し、そのフィールドコア41の内周部分が、軸方向に相対移動不能に連結されている。また、回転軸31は、ボール軸受51の内輪51bに対して、軸方向に相対移動可能に連結されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、電磁石34に対し、その回転軸31を介して連結されたロータ32及び第1アーマチャ35を、軸方向に相対移動させることが可能になっている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、軸方向に圧縮された状態で、その軸方向に対向するボール軸受51の内輪51bとロータ32の内筒部32bとの間に介在される圧縮バネ52を備えている。即ち、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30において、回転軸31、ロータ32及び第1アーマチャ35は、この圧縮バネ52の弾性力に基づいて、軸方向に付勢されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、この圧縮バネ52に付勢された第1アーマチャ35が、その軸方向に対向する制動部材33に摺接する構成になっている。
即ち、図7~図9に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、制動部材33及び電磁石34が一体に設けられる一方、電磁石34とロータ32との間にはエアギャップGが形成される。このため、電磁石34に供給する駆動電力αが比較的小さい領域においては、その制動部材33を含む第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1の方が、そのロータ32を含む第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2よりも大きくなる(F1>F2)。その結果、付勢部材を構成する圧縮バネ52に付勢された第1アーマチャ35が制動部材33に摺接する状態が維持される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、その電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1に基づいて、この第1アーマチャ35を制動部材33に圧接することで、この制動部材33が制動力を発生するブレーキ状態P1となるように構成になっている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34に供給する駆動電力αを増大させることにより、その制動部材33を含む第1磁路L1に磁気飽和が発生する。尚、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、フィールドコア41とともに電磁石34のヨーク45を形成する蓋部材44の板厚を調整することにより、その第1磁路L1に磁気飽和が発生する駆動電力αを設定可能となっている。更に、この磁気飽和の発生により、その電磁石34とロータ32との間のエアギャップGを介して形成される第2磁路L2の磁束が増大することで、この第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2の方が、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1よりも大きくなる(F2>F1)。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、そのロータ32に圧接した第2アーマチャ36が付勢部材を構成する圧縮バネ52の付勢力に抗してロータ32を押圧する力に基づいて、回転軸31を介してロータ32に連結された第1アーマチャ35が、その制動部材33から離間する構成になっている。
即ち、第1アーマチャ35が、その制動部材33から離間することにより、その第1アーマチャ35との圧接により制動部材33が制動力を発生するブレーキ状態P1が解除される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、その電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2に基づいて、この第2アーマチャ36とロータ32との圧接により、これらのロータ32及び第2アーマチャ36を回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2に切り替わる構成になっている。
具体的には、図9に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34に供給する駆動電力αが所定値α1以下の領域で、ブレーキ機構として機能する。また、駆動電力αが所定値α2以上の領域で、クラッチ機構として機能する。そして、所定値α1~所定値α2の範囲、即ち、その電磁石34に供給する駆動電力αを増減させる際の中間領域において、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とが切り替わる構成になっている。
また、図10及び図11に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34とロータ32との間のエアギャップGを形成する磁石側テーパ面47及びロータ側テーパ面48が互いに対向する状態で、その電磁石34に対してロータ32が軸方向に相対移動する。
即ち、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、これらの磁石側テーパ面47及びロータ側テーパ面48に設定された傾斜角θに基づいて、その磁石側テーパ面47とロータ側テーパ面48との間に生ずる間隔の変化(d1,d2)に対し、そのロータ32及び第2アーマチャ36に許容される軸方向の相対移動量が拡張されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30は、これにより、そのエアギャップGを介した第2磁路L2の安定的な形成を確保しつつ、その制動部材33に接離する第1アーマチャ35に大きな軸方向移動量を設定することで、円滑に、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2との切り替えを行うことが可能となっている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30においては、電磁石34とロータ32との間にエアギャップGが設定される。このため、電磁石34に供給する駆動電力αが比較的小さい領域では、その制動部材33を含む第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1の方が、そのロータ32を含む第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2よりも大きくなる。また、電磁石34に供給する駆動電力αを増大させることにより、その制動部材33を含む第1磁路L1に磁気飽和が発生する。その結果、電磁石34に供給する駆動電力αが大きい領域では、エアギャップGを介した第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2の方が、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1よりも大きくなる。そして、これにより、電磁石34に対する駆動電力αの供給量に基づいて、その第1アーマチャ35との圧接により制動部材33が制動力を発生するブレーキ状態P1と、第2アーマチャ36とロータ32との圧接により、これらのロータ32及び第2アーマチャ36を回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2とが切り替わる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)電磁クラッチブレーキ装置30は、磁性を有して回転可能に設けられたロータ32と、このロータと同軸位置において回転不能に設けられた磁性を有する制動部材33と、これらのロータ32及び制動部材33と同軸に設けられた電磁石34と、を備える。また、電磁クラッチブレーキ装置30は、ロータ32と同軸位置において、このロータ32と一体に回転するとともに、制動部材33を含む電磁石34の第1磁路L1が形成されることにより軸方向に吸引されて、制動部材33と圧接する第1アーマチャ35を備える。そして、電磁クラッチブレーキ装置30は、ロータ32に対して相対回転可能な状態で、このロータと同軸に設けられるとともに、そのロータ32を含む電磁石34の第2磁路L2が形成されることにより軸方向に吸引されて、ロータ32と圧接する第2アーマチャ36を備える。更に、電磁クラッチブレーキ装置30は、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1及び第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2の大小関係を変化させる切替機構50を備える。そして、電磁クラッチブレーキ装置30は、この切替機構50の作動により、その第1アーマチャ35との圧接により制動部材33が制動力を発生するブレーキ状態P1と、その第2アーマチャ36とロータ32との圧接により、これらのロータ32及び第2アーマチャ36を回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2と、が切り替わる。
上記構成によれば、一つの電磁石34を共有するかたちで、そのクラッチ機構及びブレーキ機構を一体化することができる。そして、これにより、小型化を図ることで、優れた搭載性を確保することができる。
(2)電磁クラッチブレーキ装置30は、軸方向に離間したロータ32及び第1アーマチャ35を相対回転不能且つ軸方向に相対移動不能に連結する回転軸31と、この回転軸31を介して連結されたロータ32及び第1アーマチャ35を軸方向に付勢する付勢部材としての圧縮バネ52と、を備える。また、電磁クラッチブレーキ装置30は、第1アーマチャ35とロータ32との間の軸方向位置に電磁石34及び制動部材33を配置することにより、そのロータ32と電磁石34との間にエアギャップGが形成される状態で、その圧縮バネ52に付勢された第1アーマチャ35を制動部材33に摺接させる。更に、電磁クラッチブレーキ装置30は、第1磁路L1の磁気飽和に基づいて、そのエアギャップGを介した第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2の方が、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャを吸引する力F1よりも大きくなる。そして、これにより、そのロータ32に圧接した第2アーマチャ36が、圧縮バネ52の付勢力に抗してロータ32を押圧する力に基づいて、その回転軸31を介してロータ32に連結された第1アーマチャ35が、制動部材33から離間するように、その切替機構50が構成される。
即ち、エアギャップGの設定により、電磁石34に供給する駆動電力αが比較的小さい領域では、その制動部材33を含む第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1を、そのロータ32を含む第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2よりも大きくすることができる。そして、これにより、その第1アーマチャ35と圧接した制動部材33に制動力を発生させることができる。また、電磁石34に供給する駆動電力αを増大させることにより、その第1磁路L1に生ずる磁気飽和に基づいて、エアギャップGを介した第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2を、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1よりも大きくすることができる。そして、これにより、第2アーマチャ36とロータ32とを圧接して、これらのロータ32及び第2アーマチャ36を回転伝達可能に連結することができる。従って、上記構成によれば、電磁石34に供給する駆動電力αを増減することにより、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とを切り替えることができる。そして、ロータ32に圧接した第2アーマチャ36の押圧力に基づき、第1アーマチャ35が制動部材33から離間することで、より確実に、そのブレーキ状態P1からクラッチ接続状態P2に切り替えることができる。
(3)電磁クラッチブレーキ装置30は、電磁石34に設けられた磁石側テーパ面47と、ロータ32に設けられたロータ側テーパ面48と、を備える。そして、これらの磁石側テーパ面47及びロータ側テーパ面48が互いに対向する状態で、その電磁石34に対してロータ32が軸方向に相対移動する。
上記構成によれば、磁石側テーパ面47及びロータ側テーパ面48に設定された傾斜角θに基づいて、その磁石側テーパ面47とロータ側テーパ面48との間に生ずる間隔の変化(d1,d2)に対し、そのロータ32及び第2アーマチャ36に許容される軸方向の相対移動量を拡張することができる。そして、これにより、そのエアギャップGを介した第2磁路L2の安定的な形成を確保しつつ、その制動部材33に接離する第1アーマチャ35に大きな軸方向移動量を設定することで、円滑に、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2との切り替えを行うことができる。
[第2の実施形態]
以下、電磁クラッチブレーキ装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
図12及び図13に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、そのロータ32B及び第1アーマチャ35Bが、軸方向に非磁性部材60を挟んで相対回転不能に固定されている。
具体的には、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいてもまた、ロータ32Bは、上記第1の実施形態における電磁クラッチブレーキ装置30と同様、回転軸31の軸方向端部31aに固定されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、そのロータ32Bの環状凹部46B内に非磁性部材60及び第1アーマチャ35Bを配置する構成になっている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいて、制動部材33Bは、そのロータ32Bに設けられた環状凹部46Bに臨む電磁石34Bの軸方向端部34aに固定されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、その制動部材33Bが、ロータ32Bと一体に回転する第1アーマチャ35Bに摺接する構成になっている。
即ち、図14及び図15に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bもまた、制動部材33Bを含む電磁石34Bの第1磁路L1が形成されることにより、その軸方向に吸引された第1アーマチャ35Bが、この第1アーマチャ35Bに対向する位置に配置された制動部材33Bと圧接する。また、ロータ32Bを含む電磁石34Bの第2磁路L2が形成されることにより、その軸方向に吸引された第2アーマチャ36Bが、この第2アーマチャ36Bに対向する位置に配置されたロータ32Bと圧接する。更に、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bもまた、第1磁路L1の形成により電磁石34Bが第1アーマチャ35Bを吸引する力F1及び第2磁路L2の形成により電磁石34Bが第2アーマチャ36Bを吸引する力F2の大小関係を変化させる切替機構50Bを備えている。そして、これにより、その第1アーマチャ35Bとの圧接により制動部材33Bが制動力を発生するブレーキ状態P1と、その第2アーマチャ36Bとロータ32Bとの圧接により、これらのロータ32B及び第2アーマチャ36Bを回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2と、が切り替わる構成になっている。
詳述すると、図13~図15に示すように、本実施形態の非磁性部材60は、略円環板状の外形を有した本体部60aと、この本体部60aの外周縁に立設された外筒部60cと、を備えている。また、本実施形態の非磁性部材60において、本体部60aは、ロータ32Bの環状凹部46Bを形成する内筒部32bの外径と略等しい内径を有するとともに、その外筒部32cの内径と略等しい外径を有している。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、そのロータ32Bの環状凹部46Bを形成する本体部32aの軸方向端面及び外筒部32cの内周面を、それぞれ、その非磁性部材60の本体部60a及び外筒部60cが覆う状態で、この非磁性部材60が、ロータ32Bの環状凹部46B内に固定される構成となっている。
また、本実施形態の第1アーマチャ35Bは、非磁性部材60における外筒部60cの内径と略等しい外径を有するとともにロータ32Bにおける内筒部32bの外径よりも大きな内径を有する略円環板状の外形をなしている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、ロータ32Bの本体部32aに臨む第1アーマチャ35Bの軸方向、及びロータ32Bの外筒部32cに臨む第1アーマチャ35Bの径方向外側を、非磁性部材60が遮蔽する状態で、その第1アーマチャ35Bがロータ32Bの環状凹部46B内に固定される構成になっている。
さらに詳述すると、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、その制動部材33Bを含んで形成される電磁石34Bの第1磁路L1に対してエアギャップGbが設定されている。具体的には、本実施形態の制動部材33Bは、電磁石34Bの軸方向端部34aにおいて、その環状溝41xの外壁部を構成するフィールドコア41Bの外筒部61cに対して固定されている。また、本実施形態の制動部材33Bは、略円環板状の外形を有するとともに、環状溝41xの内壁部となる内筒部61bの外径よりも大きな内径を有している。更に、本実施形態のフィールドコア41Bは、その外筒部61cの軸方向長さよりも内筒部61bの軸方向長さが短くなっている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、これにより、その制動部材33Bの内周部33a近傍において、この制動部材33Bと電磁石34Bとの間にエアギャップGbが形成されている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、この制動部材33Bの内周部33a近傍に形成されたエアギャップGb内に配置される磁性を有したスイッチ部材62を備えている。本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいて、このスイッチ部材62は、略円環板状の外形を有している。また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、エアギャップGbに臨む位置において、その電磁石34Bのヨーク45を形成するフィールドコア41Bの内筒部61bに設けられた圧電体63を備えている。更に、この圧電体63は、通電により、その電磁石34Bの軸方向に膨張する特性を有している。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、この圧電体63にスイッチ部材62を固定することにより、このスイッチ部材62がエアギャップGb内を移動する構成になっている。
具体的には、図16及び図17に示すように、本実施形態の電磁石34Bにおいて、フィールドコア41Bの内筒部61bには、そのエアギャップGbに臨む軸方向端部から軸方向に突出して延びる延出壁64が設けられている。また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、この延出壁64の径方向外側に、その圧電体63及びスイッチ部材62が配置されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、その延出壁64に沿うように、スイッチ部材62が軸方向移動する構成になっている。
また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、その圧電体63に対する通電により軸方向移動したスイッチ部材62が、制動部材33Bの内周部33aに近接する。更に、これにより、そのスイッチ部材62が、制動部材33Bを含む電磁石34Bの第1磁路L1を構成する。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、これにより、その第1磁路L1の形成により電磁石34Bが第1アーマチャ35Bを吸引する力F1及び第2磁路L2の形成により電磁石34Bが第2アーマチャ36Bを吸引する力F2の大小関係を変化させる切替機構50Bが形成されている。
即ち、図15及び図16に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、圧電体63に対する通電を行わない場合、そのスイッチ部材62が、制動部材33Bの内周部33aから離間した位置に配置される。また、このとき、その制動部材33Bの内周部33a近傍に形成されたエアギャップGbに基づいて、この制動部材33Bを含んで形成される電磁石34Bの第1磁路L1の方が、ロータ32Bを含んで形成される電磁石34Bの第2磁路L2よりも磁気抵抗が高くなっている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、第2磁路L2の形成により電磁石34Bが第2アーマチャ36Bを吸引する力F2が支配的になることで、この第2アーマチャ36Bとロータ32Bとが圧接する構成になっている。
尚、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、第2アーマチャ36Bの軸方向位置が固定されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、その回転軸31と一体にロータ32Bが軸方向移動するかたちで、このロータ32Bと第2アーマチャ36Bとが圧接することにより、これらのロータ32B及び第2アーマチャ36Bを回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2となるように構成されている。
更に、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、ロータ32Bの内筒部32bが、フィールドコア41Bの内筒部61bに設けられた延出壁64と径方向に対向する位置まで延設されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、そのロータ32Bを含んで形成される電磁石34Bの第2磁路L2を低減することで、圧電体63に対する通電を行わない場合に、この第2磁路L2の形成により電磁石34Bが第2アーマチャ36Bを吸引する力F2が支配的となるように構成されている。
また、図14及び図17に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、圧電体63に対する通電により、スイッチ部材62が制動部材33Bの内周部33aに近接した状態にある場合、そのスイッチ部材62が制動部材33Bを含む電磁石34Bの第1磁路L1を構成することで、この第1磁路L1の磁気抵抗が大きく低下する。更に、これにより、その第1磁路L1の形成により電磁石34Bが第1アーマチャ35Bを吸引する力F1が支配的になることで、この第1アーマチャ35Bと制動部材33Bとが圧接する。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bは、これにより、その第1アーマチャ35Bとの圧接により制動部材33Bが制動力を発生するブレーキ状態P1に切り替わる構成になっている。
以上、本実施形態の構成によれば、圧電体63に対する通電をオン/オフすることにより、その第1磁路L1の形成により電磁石34Bが第1アーマチャ35Bを吸引する力F1及び第2磁路L2の形成により電磁石34Bが第2アーマチャ36Bを吸引する力F2の大小関係を変化させることができる。そして、これにより、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とを切り替えることで、上記第1の実施形態と同様、一つの電磁石34Bを共有するかたちで、そのクラッチ機構及びブレーキ機構を一体化することができる。加えて、非磁性部材60を挟んでロータ32B及び第1アーマチャ35Bを一体化することで、その軸方向寸法を短縮することができるという利点がある。
更に、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Bにおいては、その回転軸31、並びにロータ32B及び第1アーマチャ35Bが大きく軸方向移動しない。このため、これらの軸方向移動を許容する隙間の設定が不要となる。その結果、例えば、パワースイングドア装置20の本体部分、詳しくは、スピンドルスクリュ23を支持するアウタチューブ22の軸方向端部と、そのスピンドルスクリュ23の軸方向端部23aに連結される電磁クラッチブレーキ装置30Bとを軸方向に詰めて配置することができる。そして、これにより、体格の小型化を図ることができる。
[第3の実施形態]
以下、電磁クラッチブレーキ装置に関する第3の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第2の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
図18~図20に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、上記第2実施形態における電磁クラッチブレーキ装置30Bと比較して、その切替機構50Cの構成が相違する。
詳述すると、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいてもまた、上記第2実施形態における電磁クラッチブレーキ装置30Bと同様、その第1アーマチャ35Cがロータ32Cの環状凹部46C内に配置されている。また、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいて、この環状凹部46Cを構成するロータ32Cの内筒部32bは、その外周面Sbが、電磁石34Cの軸方向端部31aに固定された略円環板状の外形を有する制動部材33Cの内周面Saに対して径方向に対向する軸方向位置まで延設されている。即ち、本実施形態では、その制動部材33Cの内周面Saが制動部材33Cに設けられた第1周面S1を構成し、これに対向する内筒部32bの外周面Sbが、その第1周面S1に対向するロータ32Cに設けられた第2周面S2を構成する。更に、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいてもまた、その制動部材33Cの内周部33a近傍に、この制動部材33Cと電磁石34Cとの間のエアギャップGcが形成されている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、このエアギャップGc内を移動可能な状態で、その互いに対向する制動部材33C側の第1周面S1とロータ32C側の第2周面S2との間に配置された磁性を有するリング部材70を備えている。
図21に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいて、このリング部材70は、周方向の一部分が切り欠かれた断面略C字状をなす扁平略円筒状の外形を有している。更に、このリング部材70は、その断面略C字形状に基づいて、径方向に拡縮することが可能となっている。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいては、このリング部材70をスイッチ部材62Cとして、その切替機構50Cが形成されている。
具体的には、図22及び図23に示すように、本実施形態のリング部材70は、電磁石34Cを構成するフィールドコア41Cの内筒部61b、詳しくは、そのエアギャップGcに臨む軸方向端面61sに対して軸方向端部が当接する状態で、互いに対向する制動部材33C側の第1周面S1とロータ32C側の第2周面S2との間に配置されている。更に、このリング部材70は、径方向に拡開することにより制動部材33C側の第1周面S1に当接し、径方向に収縮することによりロータ32C側の第2周面S2に当接する。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、これにより、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とが切り替わる構成になっている。
即ち、図19及び図22に示すように、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cにおいて、スイッチ部材62Cとしてのリング部材70は、径方向に拡開して制動部材33C側の第1周面S1に当接することにより、その制動部材33Cを含んで形成される電磁石34Cの第1磁路L1を構成する。また、これにより、この第1磁路L1の磁気抵抗が大きく低下することで、その第1磁路L1の形成により電磁石34Cが第1アーマチャ35Cを吸引する力F1が支配的になる。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、これにより、第1アーマチャ35Cと制動部材33Cとが圧接することで、その制動部材33Cが制動力を発生するブレーキ状態P1となるように構成されている。
また、図20及び図23に示すように、本実施形態のリング部材70は、径方向に収縮してロータ32C側の第2周面S2に当接することにより、そのロータ32Cを含んで形成される電磁石34Cの第2磁路L2を構成する。また、これにより、この第2磁路L2の磁気抵抗が大きく低下することで、その第2磁路L2の形成により電磁石34Cが第2アーマチャ36Cを吸引する力F2が支配的になる。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、これにより、第2アーマチャ36Cとロータ32Cとが圧接することで、これらのロータ32C及び第2アーマチャ36Cを回転伝達可能に連結するクラッチ接続状態P2となるように構成されている。
さらに詳述すると、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、電磁石34Cに駆動電力αを供給しない状態、及び電磁石34Cに供給する駆動電力αが比較的小さい領域では、そのリング部材70が拡径した状態となっている。また、この電磁クラッチブレーキ装置30Cは、電磁石34Cに供給する駆動電力αを増大させることにより、そのリング部材70が制動部材33C側の第1周面S1に当接した状態で、この制動部材33Cを含む第1磁路L1に磁気飽和が発生するように構成されている。更に、この磁気飽和の発生により、ロータ32Cを含む第2磁路L2の磁束が増大することで、その互いに対向する制動部材33C側の第1周面S1とロータ32C側の第2周面S2との間に配置されたリング部材70が、径方向内側に位置するロータ32側の第2周面S2に吸引される。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、これにより、そのリング部材70が縮径してロータ32C側の第2周面S2に当接する構成になっている。
即ち、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cは、電磁石34Cに供給する駆動電力αを増減することにより、その第1磁路L1の形成により電磁石34Cが第1アーマチャ35Cを吸引する力F1と、その第2磁路L2の形成により電磁石34Cが第2アーマチャ36Cを吸引する力F2との大小関係が変化する。そして、本実施形態の電磁クラッチブレーキ装置30Cもまた、これにより、上記第1の実施形態における電磁クラッチブレーキ装置30Cと同様、電磁石34Cに供給する駆動電力αを制御することで、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とを切り替えることが可能になっている。
以上、本実施形態の構成によれば、上記各実施形態と同様、一つの電磁石34Cを共有するかたちで、そのクラッチ機構及びブレーキ機構を一体化することができる。そして、これにより、小型化を図ることで、優れた搭載性を確保することができる。加えて、そのスイッチ部材62Cを移動させる専用の駆動装置が不要という利点がある。
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1の実施形態では、電磁石34に供給する駆動電力αを増大させることにより、その制動部材33を含む第1磁路L1に磁気飽和が発生する。また、この磁気飽和の発生により、その電磁石34とロータ32との間のエアギャップGを介して形成される第2磁路L2の磁束が増大することで、この第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36を吸引する力F2の方が、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1よりも大きくなる(F2>F1)。そして、これにより、ロータ32と第2アーマチャ36とが圧接するとともに、そのロータ32に圧接した第2アーマチャ36が付勢部材を構成する圧縮バネ52の付勢力に抗してロータ32を押圧する力に基づいて、回転軸31を介してロータ32に連結された第1アーマチャ35が、その制動部材33から離間することとした。
しかし、これに限らず、ロータ32と第2アーマチャ36との圧接によりロータ32及び第2アーマチャ36が回転伝達可能に連結される状態で、その第2アーマチャ36がロータ32を押圧する力に基づき制動部材33と第1アーマチャ35との圧接力が弱まれば、必ずしも制動部材33から第1アーマチャ35が離間しなくともよい。このような構成としても、その第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1と、その第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36Cを吸引する力F2との大小関係を変化させることで、そのブレーキ状態P1とクラッチ接続状態P2とを切り替えることができる。
・また、このような第2磁路L2に設定されたエアギャップG及び第1磁路L1に生ずる磁気飽和に基づいた切替機構50を、上記第2及び第3の実施形態のような非磁性部材60を挟んでロータ32B,32C及び第1アーマチャ35B,35Cが一体化された構成に適用してもよい。そして、この場合、第1磁路L1にエアギャップGを設定することにより、その第2磁路L2に生じた磁気飽和に基づいて、第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1と、その第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36Cを吸引する力F2との大小関係が変化する構成としてもよい。即ち、第1磁路L1及び第2磁路L2のうちの一方にエアギャップGを設定することにより、第1磁路L1及び第2磁路L2のうちの他方に生じた磁気飽和に基づいて、電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1と第2アーマチャ36Cを吸引する力F2との大小関係が変化する構成とする。そして、このような構成としても上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
・更に、上記第1の実施形態において、その圧縮バネ52のような付勢部材を廃止してもよい。そして、上記第2及び第3の実施形態において、その非磁性部材60を挟んで一体化されたロータ32B,32C及び第1アーマチャ35B,35Cを軸方向に付勢して、その第1アーマチャ35B,35Cを制動部材33B,33Cに当接させる、又は第2アーマチャ36B,36Cをロータ32B,32Cに当接させるような付勢部材を設けてもよい。
・上記第2の実施形態では、圧電体63に対する通電によりスイッチ部材62が軸方向移動して、制動部材33Bの内周部33aに近接することにより、そのスイッチ部材62が、制動部材33Bを含む電磁石34Bの第1磁路L1を構成することとした。しかし、これに限らず、圧電体63に対する通電により、そのスイッチ部材62が制動部材33Bの内周部33aから離間する構成であってもよい。また、スイッチ部材62の形状は、任意に変更してよい。そして、その圧電体63に対する通電をオン/オフすることで、そのスイッチ部材62が径方向移動する構成であってもよい。
・更に、圧電体63に対する通電により、スイッチ部材62がロータ32Bに近接することにより、そのスイッチ部材62が、ロータ32Bを含む電磁石34Bの第2磁路L2を構成するようにしてもよい。そして、この場合についてもまた、圧電体63に対する通電により、そのスイッチ部材62がロータ32Bから離間する構成であってもよい。
・上記第3の実施形態では、電磁石34Cに駆動電力αを供給しない状態及び電磁石34Cに供給する駆動電力αが比較的小さい領域では、リング部材70が拡径した状態となることにより、このリング部材70が制動部材33C側の第1周面S1に当接して、その制動部材33Cを含んで形成される電磁石34Cの第1磁路L1を構成する。また、電磁石34Cに供給する駆動電力αを増大させることで、制動部材33Cを含む第1磁路L1に磁気飽和が発生し、ロータ32Cを含む第2磁路L2の磁束が増大することにより、そのリング部材70が径方向内側に位置するロータ32C側の第2周面S2に吸引される。そして、これにより、リング部材70が縮径してロータ32C側の第2周面S2に当接することで、そのリング部材70がロータ32Cを含んで形成される電磁石34Cの第2磁路L2を構成することとした。
しかし、これに限らず、電磁石34Cに供給する駆動電力αを増大させることで、ロータ32Cを含む第2磁路L2に磁気飽和が発生して、制動部材33Cを含む第1磁路L1の磁束が増大することにより、リング部材70が径方向外側に位置する制動部材33C側に吸引されて、その第1周面S1に当接する構成としてもよい。
・また、リング部材70は、第1周面S1及び第2周面S2に対して完全に当接しなくともよく、十分に磁気抵抗を低下させることが可能であれば、隙間を有して近接する構成であってもよい。そして、電磁石34Cに対しても同様に近接した状態であってもよい。
・更に、スイッチ部材62,62Cの駆動機構については、任意に変更してもよい。例えば、ソレノイド等を用いて駆動してもよい。そして、そのスイッチ部材62,62Cから延びる操作レバーを用いる等、外部から、そのスイッチ部材62,62Cを操作可能な構成であってもよい。
・上記各実施形態では、電磁石34と制動部材33の間及び電磁石34とロータ32との間に形成される何れかのエアギャップGに基づいて、その切替機構50が構成されることとした。しかし、これに限らず、例えば、遮蔽部材を用いて第1磁路L1及び第2磁路L2の少なくとも一方の磁気抵抗を変化させる等により、その第1磁路L1の形成により電磁石34が第1アーマチャ35を吸引する力F1と、その第2磁路L2の形成により電磁石34が第2アーマチャ36Cを吸引する力F2との大小関係を変化させる構成であってもよい。
・上記各実施形態では、その電磁クラッチブレーキ装置30を車両のパワースイングドア装置20に用いることとしたが、例えば、跳ね上げ式のバックドアの駆動装置等、その他の車両用開閉体駆動装置に適用してもよい。そして、車両の開閉体以外の用途に用いてもよい。