以下に、本発明の実施の形態に係る電力変換装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、各形態において、平行、直角、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。図1以降において、X軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスX軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスX軸方向とする。Y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスY軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスY軸方向とする。Z軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスZ軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスZ軸方向とする。
実施の形態
図1は本発明の実施の形態に係る電力変換装置100の内観図である。電力変換装置100は、例えば、搬送機械(コンベア、リフト、エスカレータ)、昇降機械(クレーン、ホイスト、立体駐車場)、ファン、ポンプなどに用いられる産業機械用のインバータである。なお、電力変換装置100は、インバータに限定されず、電力変換用のスイッチング素子を備える装置であればよい。すなわち、電力変換装置100は、直流電力を交流電力に変換するコンバータ、直流電力を電力用半導体素子でスイッチング(オン・オフ)することで直流電力の値を制御する直流チョッパ、入力周波数より低い周波数の交流を得るサイクロコンバータなどでもよい。
電力変換装置100は、外気を導入して内部部品を冷却する外気導入構造の筐体110を有する。筐体110は、電力変換装置100の外郭を構成する箱形状の収納体である。筐体110のプラスZ軸方向側には、筐体110の開口部を覆う不図示の正面パネルが設けられる。筐体110の上下方向はX軸方向に等しく、筐体110の左右方向はY軸方向に等しく、筐体110の奥行き方向はZ軸方向に等しい。
筐体110の内側には、遮熱板10、制御基板8などが設けられる。制御基板8のマイナスZ軸方向の不図示の端面には、例えばスイッチング素子が設けられる。
電力変換装置100では、後述する直流リアクトルの周囲を囲むように、遮熱板10が設置されている。遮熱板10は、例えば放熱フィンベース6のプラスZ軸方向の端面に固定される。放熱フィンベース6は、筐体110の内部部品で発生した熱を筐体110の外部に放射するための板状の放熱部材である。
ここで、電力変換装置100の設置環境によっては、粉塵などが筐体110内に入り込み、主回路端子、制御端子、プリント基板などに溜まることで、端子間、端子と筐体110の間で、短絡故障などが発生し得る。また三相インバータ主回路103には、数多くの端子があり、粉塵などの溜まり具合により、短絡故障などが発生する箇所が異なる。プリント基板にも多くの部品が配置されており、粉塵などの溜まり具合により、短絡故障を起こす箇所が異なる。このような短絡故障を未然に防ぐため、予防保全回路40が設置される。
予防保全回路40、筐体110に取り込まれた空気に含まれる粉塵などによって筐体110内が汚損された場合でも短絡故障などすることを未然に防ぐ回路である。短絡故障などを未然に防ぐためには、筐体110内に粉塵などが一定量堆積して、すなわち短絡故障などが発生し得る状態になったとき、ユーザへ報知することで、粉塵などを除去することが有効である。このような報知を行う手段として、予防保全回路40は、筐体110内の汚損状態を検出するための抵抗器である第1抵抗器41及び第2抵抗器42と、電圧検出部43と、汚損判定部44とを備える。
第1抵抗器41及び第2抵抗器42は、例えば電力変換装置100内の空気が淀む部分に設けられる。空気が淀む部分は、空気が循環し難くなる部分に等しい。空気が淀む部分は、筐体110内に導入された空気に含まれる粉塵などが堆積しやすい。空気が淀む部分は、例えば、遮熱板10と筐体110の天板(図1のプラスX軸方向の板面)との間の空間、複数の回路部品で囲まれる袋小路のような箇所などである。
このように空気が淀む部分は、空気が淀みにくい部分に比べて、粉塵などが堆積しやすい。従って、空気が淀む部分に、粉塵などの堆積量を検出するセンサとして機能する第1抵抗器41及び第2抵抗器42を設けることで、実際に短絡故障などが発生する前に、ユーザへ報知することができる。
なお、第1抵抗器41及び第2抵抗器42が設置される場所は、筐体110の内部の1箇所に限定されず、複数箇所でもよい。例えば図1に示される箇所に、第1抵抗器41及び第2抵抗器42の組を設けると共に、制御基板8の裏側(マイナスZ軸方向のスイッチング素子側)にも第1抵抗器41及び第2抵抗器42の組を設けてもよい。このように構成することで、筐体110内の複数箇所で粉塵などの堆積量を検出できるため、複数の回路部品の中でも粉塵などの影響を受けやすい部品の近傍に設置するなどすることで、短絡故障などを有効に防止し得る。
図2は本発明の実施の形態に係る電力変換装置100が備える回路の構成例を示す図である。例えば電力変換装置100は、EMC(ElectroMagnetic Compatibility:電磁気的互換性)フィルタ101、三相交流電圧を整流するダイオード整流器102、三相インバータ主回路103、電源回路30、及び予防保全回路40を備える。
EMCフィルタ101は、ノイズを除去するため、線間コンデンサ1、コモンモードチョークコイル2(Lc)、接地コンデンサ3などを備える。
三相インバータ主回路103は、コア4(Lcore)、直流リアクトル5(LDC)、平滑コンデンサ7、及び複数のスイッチング素子S1~S6を備え、整流された電圧を三相交流電圧へ変換する。三相インバータ主回路103で変換された三相交流電圧が負荷(モータ200など)に印加される。コア4は、ダイオード整流器102と三相インバータ主回路103とを接続する正極側直流母線及び負極側直流母線に設けられ、電磁ノイズの補助的な抑制を行う。直流リアクトル5は、例えば正極側直流母線に設けられ、商用電圧に重畳される高調波電流を抑制すると共に力率改善を図るために設けられる。
複数のスイッチング素子S1~S6は、ダイオード整流器102から供給される直流電力を交流電力に変換する3相ブリッジ接続された半導体スイッチング素子である。以下では、複数のスイッチング素子S1~S6のそれぞれを区別しない場合、「スイッチング素子」と称する。スイッチング素子は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などである。スイッチング素子は、それぞれ、不図示のゲート駆動回路から入力されるPWM信号(ゲート駆動信号)に従って、オン又はオフ状態となる。ゲート駆動回路は、不図示の制御回路から入力されるPWM信号を、スイッチング素子を駆動可能な値の電圧の信号であるゲート駆動信号に変換して、スイッチング素子に入力する回路である。
電源回路30は、予防保全回路40の動作に必要な電源電圧を生成する回路である。電源回路30の入力側が直流母線に接続され、電源回路30の出力側が予防保全回路40に接続される。電源回路30は、ダイオード整流器102又は平滑コンデンサ7に蓄えられた電力に基づき、予防保全回路40の動作に必要な電源電圧(直流電圧)を生成する。なお、電源回路30は、予防保全回路40の動作に必要な電源電圧を生成する回路であればよく、例えば電源回路30の入力側がダイオード整流器102の入力側(交流電圧入力端子など)に接続され、交流電圧を直流電圧に変換して、予防保全回路40に入力してもよい。
予防保全回路40は、例えば筐体110内で短絡故障などが発生する可能性が高い状態であるか否を判断し、その可能性が高い状態であると判断したとき、ユーザなどに対して、報知情報を生成して出力する。報知情報は、短絡故障などが発生する可能性が高いことをユーザに知らせるための情報である。報知情報は、例えば筐体110に設けられる警告灯の点灯状態を制御する制御回路に通知され、あるいは、電力変換装置100を遠隔監視する監視室等に設けられた報知装置等に通知される。
次に予防保全回路40の構成を、図3を参照して説明する。
図3は予防保全回路40の構成例を示す図である。予防保全回路40は、第1抵抗器41と、第1抵抗器41に直列接続される第2抵抗器42と、電圧検出部43と、汚損判定部44とを備える。
第1抵抗器41及び第2抵抗器42による直列接続体には、電源回路30の出力電圧が印加される。第1抵抗器41は、汚損によって抵抗値が大きく変化しない構造を有する。例えば、第1抵抗器41の2つの端子間の距離を長くし、あるいは、当該端子を絶縁性部材(チューブなど)などで覆うことで、抵抗値が大きく変化しない構造を実現できる。第2抵抗器42は、第1抵抗器41に比べて、汚損によって抵抗値が変化し易い構造を有する。第2抵抗器42の構成の詳細は後述する。
電圧検出部43は、第2抵抗器42の両端電圧を検出し、検出した直流電圧の値に対応した電圧情報を、汚損判定部44に入力する。
汚損判定部44は、汚損判定部44の機能を実現するプログラムをメモリに格納しておき、電力変換装置100の制御部などの動作を司るCPU(Central Processing Unit)が当該プログラムを読み出して実行することによって実現される。汚損判定部44は、入力した電圧情報に基づき、例えば、電圧検出部43で検出された電圧値と設定値とを比較する。汚損判定部44は、電圧値が設定値を超えているときには報知情報を出力せず、電圧値が設定値以下のときには報知情報を出力する。設定値は、例えば、電力変換装置100が運用される場所の環境(土埃が多い海岸沿い、高温多湿の盆地など)を考慮して、予め実験などにより求められる。設定値は、筐体110内に浸入した粉塵などによって、電力変換装置100を構成する回路の絶縁抵抗が、短絡故障が生じる虞がある値まで低下しているか否かを基準にして設定される。
なお、電圧検出部43及び汚損判定部44は、交流電圧に対応した構成にしてもよい。この場合、電源回路30は、例えば交流電圧を出力するように構成され、第2抵抗器42の両端に交流電圧が検出されるため、電圧検出部43は、検出した交流電圧の平均値を電圧情報として、汚損判定部44に入力する。この構成により、予防保全回路40の適用箇所が広くなり、例えば交流電力を任意の値の交流電圧及び周波数に変換する変換器にも適用可能である。
次に、電源回路30の電圧、第1抵抗器41の値、第2抵抗器42の値、第2抵抗器42の両端電圧などについて説明する。
例えば初期時(運用開始直後)の電力変換装置100のように、筐体110内が汚損されていないときに検出される検出電圧Vr(第2抵抗器42の両端電圧)は、下記(1)により表すことができる。Raは第1抵抗器41の抵抗値、Rbは第2抵抗器42の抵抗値(第2抵抗器42の変化前の抵抗値)を表す。V1は電源回路30の電圧である。
Vr=(Rb/(Ra+Rb))×V1・・・(1)
例えば初期時から一定期間経過することで、筐体110内に粉塵などが堆積して汚損される。従って、筐体110内が汚損された状態の電力変換装置100では、第2抵抗器42の抵抗値Rbが、初期時に比べて低下する傾向を示す。そのため、初期時から一定期間経過することで、抵抗値Rbが変化したときに検出される検出電圧Vr'(第2抵抗器42の両端電圧)は、下記(2)により表すことができる。Rb'は第2抵抗器42の変化後の抵抗値を表す。
Vr'=(Rb'/(Ra+Rb'))×V1・・・(2)
第2抵抗器42の抵抗値Rbは、第2抵抗器42へ堆積する粉塵などが導電性物質として作用するため、粉塵などの堆積量が増えるほど、低くなる。従って、汚損前後の第2抵抗器42の抵抗値は、Rb>Rb'となる。
なお、前述したように第1抵抗器41は、汚損の進行に対して、抵抗値が変化し難い(抵抗値が大きく変化しない)構造を有するため、Raの変化はないものとみなしたとき、(Ra+Rb)から(Ra+Rb')への変化率よりも、RbからRb'への変化率の方が大きくなる。
上記(1)式及び(2)式より、Vr>Vr'の関係性が成り立つため、Vr'が前述した設定値以下になることで、汚損判定が可能である。
ここで、第1抵抗器41の抵抗値Raの汚損の影響について説明する。
第1抵抗器41が汚損されることで、その抵抗値はRaがRa'に変化すると、変化前後の抵抗値は、Ra>Ra'の関係性を有するため、(Ra+Rb')>(Ra'+Rb')となる。従って、上記(2)より、検出電圧Vr'は(Ra+Rb')の時の方が小さくなる。このため、第1抵抗器41が汚損されない方が、検出電圧Vr'の変化が大きくなり、汚損検出し易くなる。すなわち筐体110の汚損の検出精度が向上する。
次に抵抗値Ra、Rbの設定について説明する。
Ra>>Rbとしたとき、Raの値が支配的となるため、Ra+Rb≒Ra+Rb' の関係性が成り立つ。従って、この場合の検出電圧Vr'は、下記(3)により表すことができる。
Vr'≒(Rb'/Rb)×Vr・・・(3)
上記(3)より、抵抗値Rbの変化にほぼ比例して検出電圧が変化すると共に、検出電圧の変化率が大きいことが分かる。従って、抵抗値Raは、抵抗値Rbに対して、極力大きな値(例えば十数倍)にすれば、汚損検出し易くなる。
さらに、粉塵などの堆積量と、Rbの値と、汚損検出のし易さとの関係性について説明する。
第2抵抗器42が汚損されて、その抵抗値が、Rb'からRb''(Rb'>Rb'')に変化した場合、そのときの検出電圧をそれぞれVr'、Vr''とすると、検出電圧は、上記(3)式より、Vr'>Vr''の関係性を有する。従って、第2抵抗器42は、汚損の影響により、その抵抗値Rbが大きく変わるほうが、汚損検出し易くなる。このことに鑑みて、第2抵抗器42は、粉塵などの堆積量に対して、抵抗値Rbの変化量が大きくなるように構成されている。すなわち、第2抵抗器42は、抵抗値Rbが変化し易い構成を採用している。
第2抵抗器42の構成例を、図4を参照して説明する。図4は第2抵抗器42の構成例を示す図である。第2抵抗器42は、電圧検出部43に接続される一対の第1端子50及び第2端子51と、第1端子50に接続される板状の導電体である第1導電板53と、第2端子51に接続され、第1導電板53から一定距離隔てて配置される板状の導電体である第2導電板54とを備える。
第1導電板53及び第2導電板54の材料には、抵抗率が第2抵抗器42の抵抗率よりも低い金属、例えばアルミニウム、オーステナイト系ステンレス合金、銅合金、鋳鉄、鋼、鉄合金などを例示できる。第1導電板53及び第2導電板54は、互いの板面53a、54aが向き合う状態で、Y軸方向に伸びるように配列される。
なお、第1導電板53及び第2導電板54は、互いの板面53a、54aが平行になるように配列されているが、互いの板面53a、54aが向き合う状態で配列されていればよい。例えば、Y軸方向に平行な仮想線に対して、板面53a及び板面54aの何れかが、プラスZ軸方向に1°~20°程度傾いていてもよいし、マイナスZ軸方向に1°~20°程度傾いていてもよい。
また、第2抵抗器42は、抵抗体55を備える。抵抗体55は、第1導電板53及び第2導電板54の互いの板面53a、54aが向き合う状態で、第1導電板53から第2導電板54に向かって伸び、抵抗値が第1抵抗器41の抵抗値よりも小さい部材である。抵抗体55は、例えば柱状のセラミックスの表面に炭素皮膜が焼き付けられた炭素皮膜抵抗体、柱状の抵抗体にニッケルクロム合金などの金属被膜を施された金属皮膜抵抗体などである。なお、抵抗体55は、Z軸方向の幅、X軸方向の幅、Y軸方向の幅が互いに等しい立方体形状のものでもよいし、Z軸方向の幅が、X軸方向の幅、又はY軸方向の幅よりも狭い薄板状のものでもよい。
第1導電板53と第2導電板54は、抵抗体55を介して、互いに機械的及び電気的に接続される。抵抗体55が設けられることによって、第1導電板53は、第2導電板54からプラスZ軸方向に一定距離隔てた位置に設けられる。そして、第1導電板53のマイナスZ軸方向の板面53aは、第2導電板54のプラスZ軸方向の板面54aと向き合うように配置される。この構成により、第1導電板53と第2導電板54との間には、抵抗体55を除く部分に、隙間Gが形成される。
隙間Gの寸法は、第1導電板53及び第2導電板54の大きさ、抵抗体55の抵抗値、塵埃の大きさ、などを考慮して適宜設定される。なお、隙間Gの寸法を大きくし過ぎると、第1導電板53又は第2導電板54に堆積した塵埃が、これらの導電板を短絡することができず、すなわち電流経路を形成できない、従って、抵抗値Rbの変化量(低下量)が小さくなる。そのため、隙間Gの寸法は、例えば0.5mm~5.0mmまでの値に設定することが望ましい。このような値に設定することで、隙間Gに粉塵などが入り込み、粉塵などが堆積することで、第1導電板53及び第2導電板54に電流経路を形成できる。また、第1導電板53のX軸方向の幅は、例えば、第1導電板53のY軸方向の長さの1/2~1/10に相当する寸法に設定される。第2導電板54のX軸方向の幅は、例えば、第2導電板54のY軸方向の長さの1/5~1/10に相当する寸法に設定される。なお、第1導電板53及び第2導電板54のそれぞれにX軸方向の幅は、塵埃などが堆積し易い寸法であり、かつ、筐体110内の回路部品と干渉しない寸法であればよく、これに限定されない。
このように構成される第2抵抗器42では、隙間Gに粉塵などが堆積していないとき、第1端子50と第2端子51との間の抵抗値が、抵抗体55の抵抗値と略等しい。そして、粉塵などが隙間Gに堆積すると、電流経路が形成される。さらに、抵抗体55の周囲に粉塵などが堆積すると、抵抗体55の周囲にも電流経路となる。従って、粉塵などの堆積量が増えるに従って、第1端子50と第2端子51との間の抵抗値が低下する。
例えば電力変換装置100が、粉塵が多い場所、湿度が高い場所等に設置されて、運用が継続されると、筐体110内に短期間(例えば数日から数ヶ月)で、粉塵などが堆積して、筐体110内の汚損が進行する。それにともない、第1端子50と第2端子51との間の抵抗値が低下し、電圧検出部43で検出される電圧が設定値以下になることで、報知情報を出力することができる。
第2抵抗器42は、板状の導電板を対向させた構造を有するため、粉塵などによって形成される電流経路の通電面積が広い。従って、特許文献1に開示される従来技術に比べて、抵抗値の変化量を大きくすることができる。すなわち、第2抵抗器42は、板状の導電板を対向させた構造のため、電力変換装置100が運用を開始してから一定期間経過するまでに、隙間Gに粉塵などが徐々に堆積し、通電面積も徐々に大きくなる。従って、運用初期時点から、絶縁劣化などが発生し得る時点まで、抵抗値を緩やかに変化させることができる。従って、本実施の形態では、絶縁劣化などが発生し得る適切なタイミングで報知情報を出力することができる。
また、第2抵抗器42は、板状の導電板を対向させた構造を有することによって、抵抗値の変化を緩やかにできるため、粉塵などの堆積量に対する検出電圧の分解能力を高めることができる。従って、電源回路30の出力電圧を低くしても、第2抵抗器42に印加される電圧の僅かな変化で、汚損判定が可能になる。その結果、第1抵抗器41及び第2抵抗器42に印加される電圧を低くすることができ、これらの抵抗器の温度上昇による経年劣化を抑制でき、信頼性の高い予防保全回路40を得ることができる。
なお、第2抵抗器42は以下のように構成してもよい。
図5は第2抵抗器42の第1変形例を示す図である。第1変形例に係る第2抵抗器42Aは、図4に示される構成に加えて、複数の絶縁部材56a~56cを備える。以下では、複数の絶縁部材56a~56cを、特に区別しない場合には、単に絶縁部材56と称する場合がある。
絶縁部材56は、第1導電板53から第2導電板54に向かって伸びる絶縁物質である。絶縁部材56は、電気絶縁性を有する樹脂材料、例えばPBT(Poly Butylene Terephtalate)で形成される。絶縁部材56は、抵抗体55と同様の形状、すなわち軸方向の幅、X軸方向の幅、Y軸方向の幅が互いに等しい立方体形状のものでもよいし、Z軸方向の幅が、X軸方向の幅又はY軸方向の幅よりも狭い薄板状のものでもよい。なお、第2抵抗器42Aは、複数の絶縁部材56a~56cを備える構成に限定されず、1つ以上の絶縁部材56を備える構成でもよい。
絶縁部材56を第1導電板53と第2導電板54との間に設けることによって、絶縁部材56の表面に、粉塵などによる電流経路を形成できる。これにより、第1導電板53と第2導電板54を組み立てる際、第1導電板53と第2導電板54との間の隙間を例えば1mm程度に狭くするような調整作業をしなくても、第2抵抗器42Aの抵抗値をより低下させることができる。その結果、第1導電板53と第2導電板54との間の隙間に依存することなく、汚損状態の検出精度を向上させることができる。
図6は第2抵抗器42の第2変形例を示す図である。第2変形例に係る第2抵抗器42Bは、図4に示される第1導電板53、第2導電板54及び抵抗体55に代えて、板状部材を折り返した形状の抵抗体57を備える。抵抗体57は、筐体110内の汚損状態を検出するための抵抗器であり、抵抗体57の抵抗値は、第1抵抗器41の抵抗値よりも小さい。抵抗体57は、例えばX軸方向に平面視した形状が、ミアンダ(蛇行)状である。なお、抵抗体57の形状は、ミアンダ状に限定されず、U字形状でもよい。U字状は、角部の外縁が直角に限らず直角以外の角度で形成された折り返し部(曲面)を有する形状である。抵抗体57は、ミアンダ状、U字形状などのセラミックスの表面に炭素皮膜が焼き付けられた炭素皮膜抵抗体や、ミアンダ状、U字形状の抵抗体にニッケルクロム合金などの金属被膜を施された金属皮膜抵抗体などである。抵抗体57の一端は、第1端子50に接続され、抵抗体57の他端は、第2端子51に接続される。
第2変形例に係る第2抵抗器42Bによれば、ミアンダ状、U字形状などに形成されることで、折り返される前後の平板が向き合う部分に隙間Gが形成される。隙間Gの寸法は、例えば0.5mm~5.0mmまでの値に設定することが望ましい。このような値に設定することで、隙間Gに粉塵などが入り込み、堆積することで、折り返される前後の平板間に、電流経路を形成できる。
また、粉塵などの堆積量が増えるに従って、第1端子50から第2端子51に至るまでの経路中に、複数の電流経路が形成されるため、第1端子50と第2端子51との間の抵抗値が低下する。
従って、図4に示す第2抵抗器42と同様の効果を得ることができ、さらに、抵抗体55が不要になる分、第2抵抗器42Bの製造に必要な材料の管理工数が軽減される。また、部品点数が減ることで、構造が簡素化され、信頼性を高めることができる。
また抵抗体57をU字形状にすることで、抵抗体57の加工工数と、抵抗体57の製造に利用される材料を軽減できる。
また抵抗体57をミアンダ状にすることで、折り返される前後の平板が対向する面積を増やすことができ、粉塵などによって形成される電流経路の通電面積が広がり、汚損状態の検出精度を高めることができる。
図7は第2抵抗器42の第3変形例を示す図である。第3変形例に係る第2抵抗器42Cは、図6に示される構成に加えて、複数の絶縁部材58a~58oを備える。以下では、複数の絶縁部材58a~58oを、特に区別しない場合には、単に絶縁部材58と称する場合がある。
絶縁部材58は、折り返される前の抵抗体57の板状部材から、折り返された後の抵抗体57の板状部材に向かって伸びる絶縁物質である。絶縁部材58は、電気絶縁性を有する樹脂材料、例えばPBTで形成される。絶縁部材58は、抵抗体55と同様の形状、すなわち軸方向の幅、X軸方向の幅、Y軸方向の幅が互いに等しい立方体形状のものでもよいし、Z軸方向の幅が、X軸方向の幅又はY軸方向の幅よりも狭い薄板状のものでもよい。なお、第2抵抗器42Cは、複数の絶縁部材58a~58oを備える構成に限定されず、1つ以上の絶縁部材58を備える構成でもよい。
絶縁部材58を設けることによって、絶縁部材58の表面に、粉塵などによる電流経路を形成できる。これにより、抵抗体57を組み立てる際、折り返し前後の板同士の隙間を例えば1mm程度に狭くするような調整作業をしなくても、第2抵抗器42Cの抵抗値をより低下させることができる。その結果、汚損状態の検出精度を向上させることができる。
図8は第2抵抗器42の第4変形例を示す図である。第4変形例に係る第2抵抗器42Dは、図4に示される平板状の第1導電板53及び第2導電板54に代えて、板状部材を折り返した形状の第1導電板53及び第2導電板54を備える。第1導電板53及び第2導電板54は、例えばX軸方向に平面視した形状が、互いの板面が向き合う状態で渦巻き状に形成される。なお、第1導電板53及び第2導電板54の形状は、渦巻き状に限定されず、U字形状でもよい。U字状は、角部の外縁が直角に限らず直角以外の角度で形成された折り返し部(曲面)を有する形状である。
第4変形例に係る第2抵抗器42Dによれば、渦巻き状、U字形状などに形成されることで、折り返される前後の平板が向き合う部分に隙間が形成される。隙間の寸法は、例えば0.5mm~5.0mmまでの値に設定することが望ましい。このような値に設定することで、隙間Gに粉塵などが入り込み、堆積することで、折り返される前後の平板間に、電流経路を形成できる。
また、粉塵などの堆積量が増えるに従って、第1端子50から第2端子51に至るまでの経路中に、複数の電流経路が形成されるため、第1端子50と第2端子51との間の抵抗値が低下する。
従って、図4に示す第2抵抗器42と同様の効果を得ることができ、さらに、粉塵などによって形成される電流経路の通電面積が広がり、汚損状態の検出精度を高めることができる。
図9は第2抵抗器42の第5変形例を示す図である。第5変形例に係る第2抵抗器42Eは、図8に示される構成に加えて、複数の絶縁部材59a~59rを備える。以下では、複数の絶縁部材59a~59rを、特に区別しない場合には、単に絶縁部材59と称する場合がある。
絶縁部材59は、折り返される前の板状部材から、折り返された後の板状部材に向かって伸びる絶縁物質である。絶縁部材59は、電気絶縁性を有する樹脂材料、例えばPBTで形成される。絶縁部材59は、抵抗体55と同様の形状、すなわち軸方向の幅、X軸方向の幅、Y軸方向の幅が互いに等しい立方体形状のものでもよいし、Z軸方向の幅が、X軸方向の幅又はY軸方向の幅よりも狭い薄板状のものでもよい。なお、第2抵抗器42Eは、複数の絶縁部材59a~59rを備える構成に限定されず、1つ以上の絶縁部材59を備える構成でもよい。
絶縁部材59を設けることによって、絶縁部材59の表面に、粉塵などによる電流経路を形成できる。これにより、第1導電板53及び第2導電板54を組み立てる際、折り返し前後の板同士の隙間を例えば1mm程度に狭くするような調整作業をしなくても、第2抵抗器42Eの抵抗値をより低下させることができる。その結果、汚損状態の検出精度を向上させることができる。
なお、本実施の形態の第2抵抗器42~42Eは、電力変換装置100内の端子台の近傍、筐体110に形成される外気導入口付近などに設置してもよい。また本実施の形態の第2抵抗器42~42Eは、電力変換装置100がファンを備えた強制風冷式の場合、送風ファンの駆動時に発生する風の風上側、例えば送風ファンの空気吸込口付近に設置するのが望ましい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。