以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示の実施形態について図面を参照して説明する場合、図面において重複する構成要素、及び符号については、説明を省略することがある。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語には、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、置換、及び無置換を記していない基(原子団)は、置換基を有しない基、及び置換基を有する基を包含する。例えば、「アルキル基」との表記は、置換基を有しないアルキル基(すなわち、無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(すなわち、置換アルキル基)を包含する。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸、メタクリル酸、又はアクリル酸、及びメタクリル酸の両方を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はアクリロイル基、及びメタクリロイル基の両方を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、メタクリレート、又はアクリレート、及びメタクリレートの両方を意味する。
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、22℃の液温において、炭酸ナトリウムの水溶液(100g、炭酸ナトリウムの濃度:1質量%)への溶解度が0.1g以上である性質を意味する。
本開示において、化学構造式は、水素原子を省略した構造式で記載する場合がある。
本開示において、「露光」とは、特に断りのない限り、光を用いた露光のみならず、粒子線(例えば、電子線、及びイオンビーム)を用いた描画を含む。露光に用いられる光としては、例えば、活性光線(活性エネルギー線ともいう。)が挙げられる。活性光線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV(Extreme ultraviolet lithography)光)、及びX線が挙げられる。
本開示において、重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、「TSKgel GMHxL」、「TSKgel G4000HxL」、及び「TSKgel G2000HxL」(いずれも東ソー株式会社製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography)分析装置により、THF(テトラヒドロフラン)中の化合物を示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「固形分」とは、対象物の全成分から溶剤を除いた成分を意味する。
本開示において、特段の断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターを用いて測定した値である。
<感光性フィルム>
本開示に係る感光性フィルムは、フィルムの幅をミリメートルで表したW、フィルムの幅方向におけるフィルムの一端からフィルムの厚さの測定位置までの距離をミリメートルで表したx、フィルムの幅方向で測定されるフィルムの厚さの平均値をミリメートルで表したTa、下記式で表されるフィルムの厚さの目標値をミリメートルで表したTg(x)、及びフィルムの幅方向におけるフィルムの一端から上記xの位置で測定されるフィルムの厚さをミリメートルで表したT(x)とした場合に、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合が、90%~100%である。上記した本開示に係る感光性フィルムによれば、感光性フィルムを巻き取る際の巻きズレ、及び変形の発生が抑制される。
以下、上記式で表されるTg(x)とT(x)との関係について、図1を参照して説明する。図1は、Tg(x)とT(x)との関係を説明するための概念図である。図1における横軸は、フィルムの幅方向におけるフィルムの一端からフィルムの厚さの測定位置までの距離xを表す。横軸上のWは、フィルムの幅(すなわち、フィルムの端から端までの距離)に対応する。図1における縦軸は、フィルムの厚さT(x)を表す。図1に示されるように、上記式で表されるフィルムの厚さの目標値Tg(x)のグラフは、上に凸の曲線(すなわち、放物線)を描く。Tg(x)のグラフと縦軸との交点は、フィルムの幅方向で測定されるフィルムの厚さの平均値Taである。Tg(x)と同様に、「Tg(x)×(98.8/100)」を表すグラフ、及び「Tg(x)×(101.2/100)」を表すグラフは、それぞれ、上に凸の曲線を描く。つまり、図1において、T(x)が、「Tg(x)×(98.8/100)」を表すグラフと「Tg(x)×(101.2/100)」を表すグラフとの間の領域に含まれる場合、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たすということができる。図1に示されるように、上記関係を満たすことで、感光性フィルムの厚さのばらつきを低減することができる。さらに、上記関係を満たすこと、すなわち、感光性フィルムの断面形状が図1に示されるような曲線状の形に近づくことで、例えば、感光性フィルムを積み重ねる際に気泡が抜けやすくなるため、感光性フィルムを均一に巻き取ることができる。よって、本開示に係る感光性フィルムによれば、感光性フィルムを巻き取る際の巻きズレ、及び変形の発生が抑制されると推察される。
本開示に係る感光性フィルムにおいて、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合は、以下の手順によって算出する。
(1)感光性フィルムの長手方向の3つの領域(すなわち、先端部分、中央部分、及び後端部分)のそれぞれにおいて、感光性フィルムの幅方向に沿って、感光性フィルムの厚さ(T(x))を等間隔な16か所で測定する。すなわち、合計48か所で感光性フィルムの厚さ(T(x))を測定する。「先端部分」とは、感光性フィルムの長手方向における感光性フィルムの先端から感光性フィルムの全長の5%までの領域である。ロール状に巻き取られた感光性フィルム(以下、単に「ロール」という場合がある。)において、「感光性フィルムの先端」は、ロール状に巻き取られた感光性フィルムを引き出す過程における感光性フィルムの始点(引き出し始めの箇所)に対応する。「中央部分」とは、感光性フィルムの長手方向における感光性フィルムの中心から感光性フィルムの全長の±2.5%までの領域である。「後端部分」とは、感光性フィルムの長手方向における感光性フィルムの後端から感光性フィルムの全長の5%までの領域である。ロール状に巻き取られた感光性フィルムにおいて、「感光性フィルムの後端」は、ロール状に巻き取られた感光性フィルムを引き出す過程における感光性フィルムの終点(引き出し終わりの箇所)に対応する。また、後端部分はロール状態では巻内側になるため、連続でロール状に製膜した際に1つ前に製造したロールの先端が実質的に測定対象のロールの後端にあたるため、測定対象のロールの後端部分として、1つ前に製造したロールの先端部分を代用してもよい。なお、感光性フィルムの長手方向を特定できない場合は、感光性フィルムの表面に沿い、かつ、互いに直交する2つの方向のうち、一方を長手方向とし、他方を幅方向とする。
(2)上記3つの領域のそれぞれにおいて、感光性フィルムの幅(W)を測定する。
(3)48か所の各測定位置において、感光性フィルムの幅方向における感光性フィルムの一端から感光性フィルムの厚さ(T(x))の測定位置までの距離(x)を測定する。
(4)48か所で測定した感光性フィルムの厚さ(T(x))を算術平均することによって、感光性フィルムの幅方向で測定される感光性フィルムの厚さの平均値(Ta)を求める。
(5)48か所の各測定位置において、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たすか否かを確認することで、上記関係を満たす割合を算出する。
本開示に係る感光性フィルムにおいて、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合は、92%~100%であることが好ましく、95%以上~100%であることがより好ましく、97%~100%であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。上記関係を満たす割合が上記範囲であることで、外観不良の発生を更に抑制することができる。
本開示に係る感光性フィルムは、外観不良の発生を更に抑制する観点から、Tg(x)×(99.0/100)<T(x)<Tg(x)×(101.0/100)の関係を満たすことが好ましく、Tg(x)×(99.2/100)<T(x)<Tg(x)×(100.8/100)の関係を満たすことがより好ましい。本開示に係る感光性フィルムにおいて上記関係を満たす割合は、既述のTg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合と同様である。
<<構成要素>>
本開示に係る感光性フィルムの構成要素は、感光性フィルムにおいてTg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合が90%~100%である限り、制限されない。
ある実施形態において、感光性フィルムは、仮支持体と、感光性樹脂層と、を含むことが好ましい。上記感光性フィルムにおいて、感光性樹脂層は、仮支持体の上に、直接、又は任意の層を介して積層されてもよい。上記感光性フィルムにおいて、感光性樹脂層の仮支持体が配置された側とは反対側の面に、任意の層が積層されてもよい。上記感光性フィルムにおける任意の層としては、例えば、カバーフィルム、及び後述する他の層が挙げられる。
ある実施形態において、感光性フィルムは、仮支持体と、感光性樹脂層と、カバーフィルムと、をこの順で含むことが好ましい。上記感光性フィルムにおいて、感光性樹脂層は、仮支持体の上に、直接、又は任意の層を介して積層されてもよい。上記感光性フィルムにおいて、カバーフィルムは、感光性樹脂層の上に、直接、又は任意の層を介して積層されてもよい。上記感光性フィルムにおける任意の層としては、例えば、後述する他の層が挙げられる。
仮支持体と、感光性樹脂層と、カバーフィルムと、をこの順で含む感光性フィルムの一例について、図2を参照して説明する。図2は、感光性フィルムの構成の一例を示す概略図である。図2に示される感光性フィルム100は、仮支持体10と、感光性樹脂層12と、カバーフィルム14と、を含む。感光性フィルム100においては、仮支持体10、感光性樹脂層12、及びカバーフィルム14が、この順で積層されている。
以下、本開示に係る感光性フィルムの構成要素について具体的に説明する。ただし、本開示に係る感光性フィルムの構成要素は、以下に示す構成要素に制限されるものではない。
[仮支持体]
本開示に係る感光性フィルムは、仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、感光性フィルムから剥離可能な支持体である。例えば、仮支持体と、感光性樹脂層と、をこの順で含む感光性フィルムにおいて、仮支持体は、感光性樹脂層を支持することができる。
仮支持体は、光透過性を有することが好ましい。仮支持体が光透過性を有することで、感光性樹脂層を露光する際に、仮支持体を介して感光性樹脂層を露光することができる。本開示において、「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。仮支持体において、パターン露光に使用する波長(好ましくは波長365nm)の光の透過率は、感光性樹脂層の露光感度の向上の観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。本開示において、「透過率」とは、測定対象となる層の主面に垂直な方向(すなわち、厚さ方向)に光を入射させたときの入射光の強度に対する、測定対象となる層を通過して出射した出射光の強度の比率である。透過率は、大塚電子株式会社製のMCPD Seriesを用いて測定する。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び、仮支持体の透明性の観点から、仮支持体のヘイズは小さい方が好ましい。具体的には、仮支持体のヘイズ値は、2%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
仮支持体としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、及び紙が挙げられる。仮支持体は、強度、可撓性、及び光透過性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(すなわち、PETフィルム)、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、PETフィルムであることが好ましく、2軸延伸PETフィルムであることがより好ましい。
仮支持体の厚さは、制限されない。仮支持体の厚さは、例えば、仮支持体としての強度、光透過性、材質、及び感光性フィルムと基板との貼り合わせに求められる可撓性に応じて決定すればよい。仮支持体の平均厚さは、5μm~100μmであることが好ましい。さらに、仮支持体の平均厚さは、取り扱い易さ、及び汎用性の観点から、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~20μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることが更に好ましく、10μm~16μmであることが特に好ましい。
感光性フィルムにおける構成要素(例えば、仮支持体、感光性樹脂層、及びカバーフィルム)の平均厚さは、以下の方法によって測定する。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、感光性フィルムの主面に対して垂直な方向(すなわち、厚さ方向)の断面を観察する。得られた観察画像に基づいて、対象とする構成要素の厚さを10点測定する。測定値を算術平均することで、対象とする構成要素の平均厚さを求める。
仮支持体としては、例えば、膜厚16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び膜厚9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
仮支持体の感光性樹脂層が配置された側の面(すなわち、仮支持体の表面のうち感光性樹脂層を向く面)の算術平均粗さRaは、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましく、0.02μm以下であることが特に好ましい。算術平均粗さRaの下限は、制限されない。仮支持体の感光性樹脂層が配置された側の面の算術平均粗さRaは、例えば、0μm以上の範囲で決定すればよい。
算術平均粗さRaは、以下の方法によって測定する。3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて測定対象物の表面プロファイルを得る。測定及び解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、測定対象物の表面の算術平均粗さRaを得る。なお、測定対象物の表面が他の層の表面と接触している場合、測定対象物を他の層から剥離することで露出した測定対象物の表面の算術平均粗さRaを測定すればよい。
仮支持体(特に樹脂フィルム)には、例えば、変形(例えば、シワ)、傷、及び欠陥がないことが好ましい。仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子、異物、欠陥、及び析出物の数は少ないことが好ましい。仮支持体において、直径が1μm以上である、微粒子、異物、及び欠陥の数は、50個/10mm2以下であることが好ましく、10個/10mm2以下であることがより好ましく、3個/10mm2以下であることが更に好ましく、0個/10mm2であることが特に好ましい。
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~段落0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~段落0040、及び特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載がある。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
仮支持体は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。ハンドリング性を付与する観点から、仮支持体の表面に、微小な粒子を含む層(「滑剤層」ともいう。)を設けてもよい。滑剤層は、仮支持体の片面に設けてもよいし、仮支持体の両面に設けてもよい。滑剤層に含まれる粒子の直径は、0.05μm~0.8μmであることが好ましい。滑剤層の厚さは、0.05μm~1.0μmであることが好ましい。
[感光性樹脂層]
本開示に係る感光性フィルムは、感光性樹脂層を有することが好ましい。感光性樹脂層は、露光により露光部の現像液に対する溶解性が低下し、非露光部が現像により除去されるネガ型感光性樹脂層であることが好ましい。しかしながら、感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層に限られず、露光により露光部の現像液に対する溶解性が向上し、露光部が現像により除去されるポジ型感光性樹脂層であってもよい。
ある実施形態において、感光性樹脂層は、重合体A、重合性化合物B、及び光重合開始剤を含むことが好ましい。ある実施形態において、感光性樹脂層は、上記感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%の重合体A、5質量%~70質量%の重合性化合物B、及び0.01質量%~20質量%の光重合開始剤を含むことが好ましい。重合体A、重合性化合物B、及び光重合開始剤については、後述する。
(重合体A)
感光性樹脂層は、重合体Aを含むことが好ましい。重合体Aは、アルカリ可溶性高分子であることが好ましい。アルカリ可溶性高分子は、アルカリ物質に溶け易い高分子を包含する。
重合体Aの酸価は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することで解像性がより優れる観点から、220mgKOH/g以下であることが好ましく、200mgKOH/g未満であることがより好ましく、190mgKOH/g未満であることが特に好ましい。酸価の下限は、制限されない。重合体Aの酸価は、現像性がより優れる観点から、60mgKOH/g以上であることが好ましく、120mgKOH/g以上であることがより好ましく、150mgKOH/g以上であることが更に好ましく、170mgKOH/g以上であることが特に好ましい。重合体Aの酸価は、例えば、重合体Aを構成する構成単位の種類、及び酸基を含有する構成単位の含有量によって調整することができる。
本開示において、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)である。本開示においては、酸価の単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、5,000~500,000であることが好ましい。重量平均分子量を500,000以下にすることは、解像性、及び現像性を向上させる観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、100,000以下であることがより好ましく、60,000以下であることが更に好ましく、50,000以下であることが特に好ましい。一方、重量平均分子量を5,000以上にすることは、現像凝集物の性状、エッジフューズ性、及びカットチップ性を制御する観点から好ましい。重合体Aの重量平均分子量は、10,000以上であることがより好ましく、20,000以上であることが更に好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。エッジフューズ性とは、感光性フィルムをロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。例えば、チップが感光性フィルムの表面に付着すると、露光工程でチップがマスクに転写して、不良品の原因となる。
重合体Aの分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。本開示において、分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)である。
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制する観点から、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有することが好ましい。
芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基、及び置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。
重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合の上限は、制限されない。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。なお、感光性樹脂層が複数種の重合体Aを含む場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位の含有割合は、重量平均値として求める。
芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有する単量体、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー)が挙げられる。芳香族炭化水素基を有する単量体は、アラルキル基を有する単量体、又はスチレンであることが好ましい。
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
フェニルアルキル基を有する単量体としては、例えば、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、及びクロロベンジル(メタ)アクリレート)、ベンジル基を有するビニルモノマー(例えば、ビニルベンジルクロライド、及びビニルベンジルアルコール)が挙げられる。ベンジル基を有する単量体は、ベンジル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
ある実施形態において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位がベンジル(メタ)アクリレートに由来する構成単位である場合、重合体Aにおけるベンジル(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
ある実施形態において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位がスチレンに由来する構成単位である場合、重合体Aにおけるスチレンに由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、20質量%~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが更に好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。なお、感光性樹脂層が複数の種類の重合体Aを含む場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重量平均値として求められる。
芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体、及び後述する第二の単量体からなる群より選択される少なくとも1種と、を重合することで得られる共重合体であることが好ましい。
重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しない重合体であってもよい。芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しない重合体Aは、後述する第一の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種を重合することで得られる重合体であることが好ましく、後述する第一の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種と、後述する第二の単量体(芳香族炭化水素基を有する単量体を除く。)の少なくとも1種と、を重合することにより得られる共重合体であることがより好ましい。
ある実施形態において、重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することで得られる重合体であることが好ましく、後述する第一の単量体の少なくとも1種と、後述する第二の単量体の少なくとも1種と、を重合することにより得られる共重合体であることがより好ましい。
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。第一の単量体は、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
重合体Aにおける第一の単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることが特に好ましい。
第二の単量体は、非酸性であり、かつ、分子中に少なくとも1つの重合性不飽和基を有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物、ビニルアルコールのエステル化合物、及び(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。本開示において、「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又はアクリロニトリル、及びメタクリロニトリルの両方を包含する。
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ビニルアルコールのエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。
第二の単量体は、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びn-ブチル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
重合体Aにおける第二の単量体に由来する構成単位の含有割合は、重合体Aの全質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが特に好ましい。
重合体Aは、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制する観点から、アラルキル基を有する単量体に由来する構成単位、及びスチレンに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、重合体Aは、メタクリル酸に由来する構成単位と、ベンジルメタクリレートに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位と、を含む共重合体、及びメタクリル酸に由来する構成単位と、メチルメタクリレートに由来する構成単位と、ベンジルメタクリレートに由来する構成単位と、スチレンに由来する構成単位と、を含む共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を25質量%~40質量%、第一の単量体に由来する構成単位を20質量%~35質量%、及び第二の単量体に由来する構成単位を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。
ある実施形態において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を70質量%~90質量%、及び第一の単量体に由来する構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
重合体Aのガラス転移温度(Tg)は、30℃~135℃であることが好ましい。感光性樹脂層において、重合体AのTgが135℃以下であることで、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び解像度の悪化を抑制することができる。上記の観点から、重合体AのTgは、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが更に好ましく、110℃以下であることが特に好ましい。また、重合体AのTgが30℃以上であることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。上記の観点から、重合体AのTgは、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることが更に好ましく、60℃以上であることが特に好ましく、70℃以上であることが最も好ましい。
重合体Aは、市販品、又は合成品であってもよい。重合体Aの合成は、例えば、上記した少なくとも1種の単量体を溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール)で希釈した溶液に、ラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、又はアゾイソブチロニトリル)を適量添加し、次いで、加熱撹拌することによって行われることが好ましい。また、混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶媒を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の重合体Aを含んでもよい。感光性樹脂層が2種以上の重合体Aを含む場合、感光性樹脂層は、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する2種以上の重合体Aを含むこと、又は芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する重合体Aと、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有しない重合体Aと、を含むことが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に由来する構成単位を有する重合体Aの含有割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
重合体Aの含有割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~70質量%であることがより好ましく、40質量%~60質量%であることが特に好ましい。感光性樹脂層に対する重合体Aの含有割合を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、感光性樹脂層に対する重合体Aの含有割合を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
重合体Aは、側鎖に直鎖構造、分岐構造、及び、脂環構造のいずれかを有してもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマー、又は側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーを使用することによって、重合体Aの側鎖に分岐構造や脂環構造を導入することができる。脂環構造を有する基は単環又は多環であってもよい。
側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸sec-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸tert-オクチル等が挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチルが好ましく、メタクリル酸イソプロピル又はメタクリル酸tert-ブチルがより好ましい。
側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー、及び、多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられる。また、炭素原子数5~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルのなかでも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンがより好ましい。
(重合性化合物B)
感光性樹脂層は、重合性基を有する重合性化合物Bを含むことが好ましい。本開示において、「重合性化合物」とは、重合開始剤の作用を受けて重合する化合物を意味する。なお、重合性化合物Bは、上記重合体Aとは異なる化合物である。
重合性化合物Bにおける重合性基は、重合反応に関与する基であれば制限されない。重合性化合物Bにおける重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和結合を含む基(例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、及びマレイミド基)、及びカチオン性重合性基を有する基(例えば、エポキシ基、及びオキセタン基)が挙げられる。重合性基は、エチレン性不飽和結合を含む基(以下、「エチレン性不飽和基」という場合がある。)であることが好ましく、アクリロイル基、又はメタアクリロイル基であることがより好ましい。
重合性化合物Bは、感光性樹脂層の感光性がより優れる点で、一分子中に1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)であることが好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、多官能エチレン性不飽和化合物)であることがより好ましい。また、解像性、及び剥離性により優れる点で、一分子のエチレン性不飽和化合物に含まれるエチレン性不飽和基の数は、6つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つ以下であることが特に好ましい。
エチレン性不飽和化合物は、一分子中に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
重合性化合物Bは、感光性樹脂層における感光性、解像性、及び剥離性のバランスがより優れる観点から、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能エチレン性不飽和化合物)、及び一分子中に3つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、3官能エチレン性不飽和化合物)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する化合物であることがより好ましい。
感光性樹脂層において、重合性化合物Bの含有量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性樹脂層の剥離性が優れる観点から、60質量%以上であることが好ましく、70質量%超であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。重合性化合物Bの含有量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有割合の上限は、制限されず、100質量%であってもよい。すなわち、感光性樹脂層に含まれる重合性化合物Bが全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
-重合性化合物B1-
感光性樹脂層は、一分子中に、1つ以上の芳香環、及び2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含むことが好ましい。重合性化合物B1は、上記した重合性化合物Bのうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
感光性樹脂層において、重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合は、解像性がより優れる観点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合の上限は、制限されない。重合性化合物Bの含有量に対する重合性化合物B1の含有量の割合は、剥離性の点から、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
重合性化合物B1における芳香環としては、例えば、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及びアントラセン環)、芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、及びピリジン環)、及びこれらの縮合環が挙げられる。芳香環は、芳香族炭化水素環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。なお、芳香環は、置換基を有してもよい。
重合性化合物B1は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及びビスフェノールB(すなわち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられる。ビスフェノール構造は、ビスフェノールA構造であることが好ましい。
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、上記ビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)と、を有する化合物が挙げられる。各重合性基は、ビスフェノール構造に直接結合してもよい。各重合性基は、1つ以上のアルキレンオキシ基を介してビスフェノール構造に結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基は、エチレンオキシ基、又はプロピレンオキシ基であることが好ましく、エチレンオキシ基であることがより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は、制限されないが、一分子あたり4個~16個であることが好ましく、6個~14個であることがより好ましい。
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~段落0080に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
重合性化合物B1は、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物であることが好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンであることがより好ましい。
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社)、及びエトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業株式会社)が挙げられる。
重合性化合物B1としては、下記一般式(I)で表される化合物も挙げられる。
一般式(I)中、R1、及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基を表し、Aは、C2H4を表し、Bは、C3H6を表し、n1、及びn3は、それぞれ独立して、1~39の整数であり、n1+n3は、2~40の整数であり、n2、及びn4は、それぞれ独立して、0~29の整数であり、n2+n4は、0~30の整数であり、-(A-O)-、及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダム、又はブロックであってもよい。ブロックの場合、-(A-O)-、及び-(B-O)-のいずれかがビスフェニル基側でもよい。n2+n4は、0~10の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。ある実施形態において、n1+n2+n3+n4は、2~20の整数であることが好ましく、2~16の整数であることがより好ましく、4~12の整数であることが特に好ましい。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の重合性化合物B1を含んでもよい。
感光性樹脂層における重合性化合物B1の含有割合は、解像性がより優れる観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。重合性化合物B1の含有割合の上限は、制限されない。感光性樹脂層における重合性化合物B1の含有割合は、転写性、及び耐エッジフューズ性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
感光性樹脂層は、重合性化合物B1以外の重合性化合物Bを含んでもよい。重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、例えば、単官能エチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物)、芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に芳香環を有しておらず、かつ、2つのエチレン性不飽和基を有する化合物)、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物(すなわち、一分子中に3つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物)が挙げられる。
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香環を有しない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業株式会社)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業株式会社)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業株式会社)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業株式会社)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社)、UA-32P(新中村化学工業株式会社)、及びUA-1100H(新中村化学工業株式会社)が挙げられる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。本開示において、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念である。本開示において、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(例えば、日本化薬株式会社製のKAYARAD(登録商標)DPCA-20、及び新中村化学工業株式会社製のA-9300-1CL)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(例えば、日本化薬株式会社製のKAYARAD RP-1040、新中村化学工業株式会社製のATM-35E、新中村化学工業株式会社製のA-9300、及びダイセル・オルネクス社製のEBECRYL(登録商標) 135)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製のA-GLY-9E)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成株式会社)、アロニックスM-520(東亞合成株式会社)、及びアロニックスM-510(東亞合成株式会社)が挙げられる。
重合性化合物B1以外の重合性化合物Bとしては、特開2004-239942号公報の段落0025~段落0030に記載の酸基を有する重合性化合物も挙げられる。
ある実施形態において、感光性樹脂層は、重合性化合物B1、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、重合性化合物B1、及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。上記実施形態において、重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物との質量比([重合性化合物B1の合計質量]:[3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量]は、1:1~5:1であることが好ましく、1.2:1~4:1であることがより好ましく、1.5:1~3:1であることが特に好ましい。ある実施形態において、感光性樹脂層は、重合性化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物Bの分子量(重合性化合物Bが分子量分布を有する場合には重量平均分子量(Mw)をいう。)は、200~3,000であることが好ましく、280~2,200であることがより好ましく、300~2,200であることが特に好ましい。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の重合性化合物Bを含んでもよい。
感光性樹脂層における重合性化合物Bの含有割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量Mmと重合体Aの含有量Mbとの比Mm/Mbの値は、解像性及び直線性の観点から、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.5以上0.9以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、及び、解像性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、解像性及び直線性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含み、かつ、感光性樹脂層に含まれる(メタ)アクリル化合物の全質量に対するアクリル化合物の含有割合は、60質量%以下であることがより好ましい。
(任意成分)
感光性樹脂層は、上記した成分以外の成分(以下、「任意成分」という場合がある。)を含んでもよい。任意成分としては、光重合開始剤、色素、界面活性剤、及び上記成分以外の添加剤が挙げられる。
-光重合開始剤-
感光性樹脂層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、活性光線(例えば、紫外線、可視光線、及びX線)を受けて、重合性化合物(例えば、重合性化合物B)の重合を開始する化合物である。
光重合開始剤としては、制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤、及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
感光性樹脂層は、感光性、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及び2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~段落0042、及び特開2015-14783号公報の段落0064~段落0081に記載された重合開始剤も挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、及びベンゾフェノンが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、TAZ-110(みどり化学株式会社)、TAZ-111(みどり化学株式会社)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業株式会社)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社)、IRGACURE OXE-03(BASF社)、IRGACURE OXE-04(BASF社)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.社)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.社)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.社)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.社)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.社)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.社)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.社)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.社)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン株式会社)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社)、及び2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業株式会社)が挙げられる。
光カチオン重合開始剤(すなわち、光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましい。ただし、光カチオン重合開始剤の化学構造は、制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
光カチオン重合開始剤は、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることがより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤であることが特に好ましい。pKaの下限は、制限されない。光カチオン重合開始剤から生じる酸のpKaは、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤、及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、オニウム塩化合物(例えば、ジアリールヨードニウム塩化合物、及びトリアリールスルホニウム塩化合物)、及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤も挙げられる。
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン化合物、ジアゾメタン化合物、及びイミドスルホネート化合物としては、例えば、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が挙げられる。また、オキシムスルホネート化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載された化合物が挙げられる。
感光性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、及び2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の光重合開始剤を含んでもよい。
感光性樹脂層における光重合開始剤の含有割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有割合の上限は、制限されない。光重合開始剤の含有割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
-色素-
感光性樹脂層は、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素N」という場合がある。)を含むことが好ましい。詳細なメカニズムは不明であるが、感光性樹脂層が色素Nを含むことで、感光性樹脂層に隣接する層(例えば、仮支持体、及び中間層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
本開示において、色素に関して使用される用語「酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が、酸、塩基、又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が、酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び発色状態にある色素が、他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
具体的に、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよく、又は露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。上記態様において、色素Nは、露光により発生する、酸、塩基、又はラジカルの作用によって、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。また、色素Nは、露光により発生する、酸、塩基、又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。一方、色素Nは、露光を介さずに、酸、塩基、又はラジカルを刺激として直接受けて、発色、又は消色の状態が変化する色素であってもよい。
色素Nは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、酸、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
感光性樹脂層は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素Nとして、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び光ラジカル重合開始剤の両方を含むことが好ましい。
色素Nは、露光部の視認性、非露光部の視認性の観点から、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
色素Nの発色機構の例としては、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(すなわち、光酸発生剤)、又は光塩基発生剤を含む感光性樹脂層を露光することで、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、又は光塩基発生剤から発生する、ラジカル、酸、又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素、又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
色素Nにおいて、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長は、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550~650nmであることが特に好ましい。
また、色素Nは、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つ、又は2つ以上有してもよい。色素Nが発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素Nを含む溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、そして、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することによって測定する。
露光により、発色、又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、及びアントラキノン系色素が挙げられる。色素Nは、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物であることが好ましい。
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及びロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。ロイコ化合物は、トリアリールメタン系色素、又はフルオラン系色素であることが好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)、又はフルオラン系色素であることがより好ましい。
ロイコ化合物は、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有することが好ましい。ロイコ化合物に含まれるラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル、又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させることで、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させること、又はロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物は、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有し、かつ、ラジカル、又は酸によりラクトン環、スルチン環、又はスルトン環が開環して発色する化合物であることが好ましく、ラクトン環を有し、かつ、ラジカル、又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物であることがより好ましい。
ロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-ザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
色素Nとしては、例えば、染料も挙げられる。染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業株式会社)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業株式会社)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業株式会社)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業株式会社)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業株式会社)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業株式会社)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業株式会社)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
色素Nは、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
色素Nは、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又はビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩であることが好ましい。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の色素Nを含んでもよい。
色素Nの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。
色素Nの含有割合は、感光性樹脂層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有割合を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例として、色素Nの含有割合の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に、色素(0.001g)、及び色素(0.01g)をそれぞれ溶かした2つの溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤としてIRGACURE OXE-01(BASF社)を加えた後、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。次に、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて感光性樹脂層(3g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性樹脂層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性樹脂層に含まれる色素の含有量を算出する。
-界面活性剤-
感光性樹脂層は、厚さの均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられ、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル化合物、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル化合物、シリコーン系ノニオン性界面活性剤、及びフッ素系ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
感光性樹脂層は、解像性がより優れる点から、フッ素系ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。感光性樹脂層がフッ素系ノニオン性界面活性剤を含むことで、エッチング液の感光性樹脂層への浸透を抑制してサイドエッチングを低減するためと考えられる。フッ素系ノニオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F-551、F-552(DIC株式会社)、及びメガファックF-554(DIC株式会社)が挙げられる。
また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニック(商品名)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック(商品名)304、701、704、901、904、150R1(以上、BASF社製)、ソルスパース(商品名)20000(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬株式会社製)、パイオニン(商品名)D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂株式会社製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(商品名)F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、MFS-578、MFS-579、MFS-586、MFS-587、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC株式会社製)、フロラード(商品名)FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム株式会社製)、サーフロン(商品名)S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC株式会社製)、PolyFox(商品名)PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント(商品名)710FL、710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F、251、212M、250、209F、222F、208G、710LA、710FS、730LM、650AC、681、683(以上、株式会社ネオス製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック(商品名)DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック(商品名)DS-21が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。メガファック(商品名)RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤として、例えば、炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物が使用されてもよい。ただし、環境適性向上の観点から、フッ素系界面活性剤として、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)又はペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の代替材料が使用されることが好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、DOWSIL(商品名)8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業株式会社製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0120~段落0125に記載の界面活性剤、特許第4502784号公報の段落0017に記載の界面活性剤、及び特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も挙げられる。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤の含有割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
-添加剤-
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、熱架橋性化合物、ラジカル重合禁止剤、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物、ベンゾトリアゾール化合物、カルボキシベンゾトリアゾール化合物、重合体A以外の樹脂、及び溶剤が挙げられる。感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の添加剤を含んでもよい。
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、重合体A及び/又はエチレン性不飽和化合物が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工株式会社製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含んでもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。ラジカル重合禁止剤は、フェノチアジン、フェノキサジン、又は4-メトキシフェノールであることが好ましい。上記以外のラジカル重合禁止剤としては、例えば、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミンが挙げられる。感光性樹脂層の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩をラジカル重合禁止剤として使用することが好ましい。
感光性樹脂層は、ベンゾトリアゾール化合物を含んでもよい。ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及びビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾールが挙げられる。
感光性樹脂層は、カルボキシベンゾトリアゾール化合物を含んでもよい。カルボキシベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール化合物の市販品としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社)が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル化合物、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル化合物の合計含有量の割合は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記した各成分の合計含有量の割合を0.01質量%以上にすることは、感光性樹脂層に保存安定性を付与する観点から好ましい。一方で、上記した各成分の合計含有量の割合を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
感光性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、制限されず、公知の増感剤を用いることができる。また、増感剤として、染料、及び顔料を用いることもできる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
感光性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
感光性樹脂層が増感剤を含む場合、増感剤の含有割合は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
感光性樹脂層は、可塑剤、及びヘテロ環状化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。可塑剤、及びヘテロ環状化合物としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0103、及び段落0111~段落0118に記載された化合物が挙げられる。
感光性樹脂層は、重合体A以外の樹脂を含んでもよい。重合体A以外の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(ただし、スチレン含有率が40質量%以下の共重合体に限る。)、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
感光性樹脂層は、溶剤を含んでもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物により感光性樹脂層を形成した場合、感光性樹脂層に溶剤が残留することがある。溶剤については後述する。
感光性樹脂層は、添加剤として、例えば、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、有機沈殿防止剤、及び無機沈殿防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。添加剤については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
-不純物等-
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が更に好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性樹脂層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性樹脂層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。下限は、質量基準で、感光性樹脂層の全質量に対して、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01質量%~1.0質量%が好ましく、0.05質量%~0.5質量%がより好ましい。
(残存モノマー)
感光性樹脂層は、上述した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、重合体Aの全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。
重合体Aの各構成単位の残存モノマーは、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
高分子反応で重合体Aを合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させて重合体Aを合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
(厚さ)
感光性樹脂層の平均厚さは、一般的には0.1μm~300μmである。感光性樹脂層の平均厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.5μmであることが更に好ましく、1μm以上であること特に好ましい。感光性樹脂層の平均厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることが更に好ましく、8μm以下であることが特に好ましい。感光性樹脂層の平均厚さが上記範囲であることで、感光性樹脂層の現像性が向上し、解像性を向上させることができる。
ある実施形態において、感光性樹脂層の平均厚さは、0.1μm~15μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましく、0.5μm~4μmであることが更に好ましく、0.5μm~3μmであることが特に好ましい。
(透過率)
感光性樹脂層において、波長365nmの光の透過率は、密着性により優れる点から、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。透過率の上限は、制限されない。感光性樹脂層において、波長365nmの光の透過率は、99.9%以下であることが好ましい。
(形成方法)
感光性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。感光性樹脂層の形成方法としては、例えば、仮支持体の表面に、感光性樹脂組成物を塗布し、次いで、感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
感光性樹脂組成物としては、例えば、重合体A、重合性化合物B、任意成分、及び溶剤を含む組成物が挙げられる。感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の粘度を調節し、感光性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、重合体A、重合性化合物B、及び任意成分を、溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されず、公知の溶剤を使用できる。溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(例えば、メタノール、及びエタノール)、ケトン溶剤(例えば、アセトン、及びメチルエチルケトン)、芳香族炭化水素溶剤(例えば、トルエン)、非プロトン性極性溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、環状エーテル溶剤(例えば、テトラヒドロフラン)、エステル溶剤、アミド溶剤、及びラクトン溶剤が挙げられる。
感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤、及び環状エーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。感光性樹脂組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤、及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤と、環状エーテル溶剤と、を含むことが特に好ましい。
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~段落0094に記載された溶剤、及び特開2018-177889公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよい。これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
感光性樹脂組成物は、1種単独、又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
感光性樹脂組成物における溶剤の含有割合は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
感光性樹脂組成物の調製方法は、制限されない。感光性樹脂組成物の調製方法としては、例えば、各成分を溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた各溶液を所定の割合で混合することにより、感光性樹脂組成物を調製する方法が挙げられる。感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層を形成する前に、孔径が0.2μm~30μmのフィルターを用いてろ過することが好ましい。
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、制限されず、公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布が挙げられる。
また、感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物を後述するカバーフィルム上に塗布し、乾燥することにより形成してもよい。
[カバーフィルム]
本開示に係る感光性フィルムは、カバーフィルム(保護フィルムともいう。)を有することが好ましい。カバーフィルムによれば、カバーフィルムに接触する層(例えば、感光性樹脂層)の表面を保護することができる。ある実施形態において、感光性フィルムは、感光性樹脂層の仮支持体が配置された側とは反対側の面に接するカバーフィルムを有することがより好ましい。
カバーフィルムとしては、例えば、樹脂フィルム、及び紙が挙げられる。カバーフィルムは、強度、及び可撓性の観点から、樹脂フィルムであることが好ましい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
カバーフィルムの厚さは、制限されない。カバーフィルムの平均厚さは、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、10μm~20μmであることが特に好ましい。
カバーフィルムの感光性樹脂層が配置された側の面(すなわち、カバーフィルムの表面のうち感光性樹脂層を向く面)の算術平均粗さRaは、解像性により優れる点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが特に好ましい。カバーフィルムの感光性樹脂層が配置された側の面の算術平均粗さが上記範囲であることで、感光性樹脂層、及び形成される樹脂パターンの厚さの均一性が向上する。算術平均粗さRaの下限は、制限されない。カバーフィルムの感光性樹脂層が配置された側の面の算術平均粗さRaは、0.001μm以上であることが好ましい。カバーフィルムの感光性樹脂層が配置された側の面の算術平均粗さRaは、上記「仮支持体」の項において説明した算術平均粗さRaの測定方法に準ずる方法によって測定する。
[仮支持体、感光性樹脂層及び保護フィルムの関係]
本開示に係る感光性フィルムは、感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びが15%以上であり、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが50nm以下であり、保護フィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが150nm以下であることが好ましい。
また、本開示に係る感光性フィルムは、下記式(R1)を満たすことが好ましい。
X×Y<1,500:式(R1)
ここで、上記式(R1)中、Xは、感光性樹脂層を硬化した硬化膜の120℃における破断伸びの値(%)を表し、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
X×Yは、750以下がより好ましい。
感光性樹脂層を硬化した硬化膜の23℃での破断伸びに対し、120℃での破断伸びが2倍以上大きいことが好ましい。
破断伸びは、厚み20μmの感光性樹脂層を超高圧水銀ランプにより120mJ/cm2で露光して硬化した後、高圧水銀ランプで400mJ/cm2で更に追加露光し、145℃で30分間加熱した後の硬化膜を用い、引っ張り試験によって測定する。
また、本開示に係る感光性フィルムは、下記式(R2)を満たすことが好ましい。
Y≦Z:式(R2)
ここで、上記式(R2)中、Yは、仮支持体の感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表し、Zは、保護フィルムの感光性樹脂層側の表面の算術平均粗さRaの値(nm)を表す。
[他の層]
本開示に係る感光性フィルムは、上記した層以外の層(以下、「他の層」という。)を有してもよい。他の層としては、熱可塑性樹脂、中間層、及びコントラストエンハンスメント層(屈折率調整層ともいう。)が挙げられる。
(熱可塑性樹脂層)
本開示に係る感光性フィルムは、熱可塑性樹脂層を有してもよい。ある実施形態において、感光性フィルムは、仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。感光性フィルムが仮支持体と感光性樹脂層との間に熱可塑性樹脂層を有することで、基板に貼り合わされる工程における基板への追従性が向上して、基板と感光性フィルムとの間の気泡の混入が抑制される結果、層間の密着性が向上するためである。
-アルカリ可溶性樹脂-
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。ここで、「アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する樹脂を意味する。
アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。アクリル樹脂において、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量の割合は、アクリル樹脂の全質量に対して、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価が60mgKOH/g以上であるアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。酸価の上限は、制限されない。アルカリ可溶性樹脂の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~段落0052に記載のポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び特開2016-224162号公報の段落0053~段落0068に記載のバインダーポリマーのうち酸価が60mgKOH/g以上であるカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の含有割合は、カルボキシ基含有アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂であることが特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有してもよい。反応性基は、例えば、付加重合可能な基であればよい。反応性基としては、例えば、エチレン性不飽和基、重縮合性基(例えば、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基)、及び重付加反応性基(例えば、エポキシ基、及び(ブロック)イソシアネート基)が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、2万~5万であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有割合は、現像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
-色素-
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲である400nm~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(以下、「色素B」という場合がある。)を含むことが好ましい。色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、上記した色素Nの好ましい態様と同様である。
色素Bは、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、酸、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
熱可塑性層は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、色素Bとして酸により最大吸収波長が変化する色素と、後述する光により酸を発生する化合物と、を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の色素Bを含んでもよい。
色素Bの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上であることが好ましく、0.2質量%~6質量%であることがより好ましく、0.2質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%であることが特に好ましい。
ここで、色素Bの含有割合は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有割合を意味する。以下、ラジカルにより発色する色素を例として、色素Bの含有割合の定量方法を説明する。メチルエチルケトン(100mL)に、色素(0.001g)、及び色素(0.01g)をそれぞれ溶かした2つの溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤としてIRGACURE OXE-01(BASF社)を加えた後、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。次に、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層(0.1g)をメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含有する溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
-光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物-
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物(以下、「化合物C」という場合がある。)を含んでもよい。化合物Cは、活性光線(例えば、紫外線、及び可視光線)を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物であることが好ましい。化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)が挙げられる。化合物Cは、光酸発生剤であることが好ましい。
〔光酸発生剤〕
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤としては、上述した感光性樹脂層に含まれてもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
光酸発生剤は、感度、及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物からなる群より選択された少なくとも1種を含むことが好ましく、感度、解像性、及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
また、光酸発生剤は、以下の構造を有する光酸発生剤であることも好ましい。
〔光塩基発生剤〕
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含んでもよい。光塩基発生剤としては、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
〔光ラジカル重合開始剤〕
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含んでもよい。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、上述した感光性樹脂層が含んでもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の化合物Cを含んでもよい。
化合物Cの含有割合は、露光部の視認性、非露光部の視認性、及び解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
-可塑剤-
熱可塑性樹脂層は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤の分子量(オリゴマー又はポリマーの分子量については重量平均分子量(Mw)をいう。以下、本段落において同じ。)は、アルカリ可溶性樹脂の分子量よりも小さいことが好ましい。可塑剤の分子量は、200~2,000であることが好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば制限されない。可塑剤は、可塑性付与の観点から、分子中にアルキレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物であることがより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造、又はポリプロピレンオキシ構造を有することが好ましい。
可塑剤は、解像性、及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性、及び熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、上記「重合性化合物B」の項に記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。感光性フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層とが直接接触して配置される場合、熱可塑性樹脂層、及び感光性樹脂層は、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂層、及び感光性樹脂層が、それぞれ、同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物は重合しないことが好ましい。
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
ある実施形態において、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物は、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又はウレタン(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の可塑剤を含んでもよい。
可塑剤の含有割合は、解像性、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが特に好ましい。
-界面活性剤-
熱可塑性樹脂層は、厚さの均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、例えば、上述した感光性樹脂層が含んでもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の界面活性剤を含んでもよい。
界面活性剤の含有割合は、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
-増感剤-
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。増感剤としては、例えば、上述した感光性樹脂層が含んでもよい増感剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂層は、1種単独、又は2種以上の増感剤を含んでもよい。
増感剤の含有割合は、光源に対する感度の向上、露光部の視認性、及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。
-添加剤-
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193に記載されている。上記公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
-厚さ-
熱可塑性樹脂層の厚さは、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、熱可塑性樹脂層に隣接する層との密着性の観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層の平均厚さの上限は、制限されない。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、現像性、及び解像性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。
-形成方法-
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。熱可塑性樹脂層の形成方法としては、例えば、仮支持体の表面に、熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、上記の成分を含む組成物が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含まれる成分を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤としては、上述した感光性樹脂組成物が含んでもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
熱可塑性樹脂組成物は、1種単独、又は2種以上の溶剤を含んでもよい。
熱可塑性樹脂組成物における溶剤の含有割合は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の調製、及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性樹脂組成物の調製方法、及び感光性樹脂層の形成方法に準じて行えばよい。例えば、熱可塑性樹脂層に含まれる各成分を溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた各溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物を調製した後、得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層を形成することができる。また、カバーフィルム上に、感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層の表面に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
(中間層)
本開示に係る感光性フィルムは、熱可塑性樹脂層と感光性樹脂層との間に、中間層を有することが好ましい。中間層によれば、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制できる。
中間層は、現像性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性の層であることが好ましい。本開示において、「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
中間層としては、例えば、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層が挙げられる。中間層が酸素遮断層であることで、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減する結果、生産性が向上する。中間層として用いられる酸素遮断層は、公知の層から適宜選択すればよい。中間層として用いられる酸素遮断層は、低い酸素透過性を示し、水、若しくはアルカリ水溶液(22℃の炭酸ナトリウムの1質量%水溶液)に分散、又は溶解する酸素遮断層であることが好ましい。
中間層は、樹脂を含むことが好ましい。中間層に含まれる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体が挙げられる。中間層に含まれる樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。
中間層に含まれる樹脂は、複数の層間の成分の混合を抑制する観点から、感光性樹脂層に含まれる重合体A、及び熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
中間層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンを含むことがより好ましい。
中間層は、1種単独、又は2種以上の樹脂を含んでもよい。
中間層における樹脂の含有割合は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、中間層の全質量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
また、中間層は、必要に応じて添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
中間層の厚さは、制限されない。中間層の平均厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。中間層の厚さが上記範囲であることで、酸素遮断性を低下させることがなく、複数の層を形成する際、及び保存の際における成分の混合を抑制でき、また、現像時の中間層の除去時間の増大を抑制できる。
中間層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば制限されない。中間層の形成方法としては、例えば、熱可塑性樹脂層、又は感光性樹脂層の表面に、中間層用組成物を塗布した後、中間層用組成物の塗膜を乾燥する方法が挙げられる。
中間層用組成物としては、例えば、樹脂、及び任意の添加剤を含む組成物が挙げられる。中間層用組成物は、中間層用組成物の粘度を調節し、中間層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、樹脂を溶解、又は分散可能な溶剤であれば制限されない。溶剤は、水、及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、水、又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤であることがより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数が1~3であるアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。水混和性の有機溶剤は、炭素数が1~3であるアルコールであることが好ましく、メタノール、又はエタノールであることがより好ましい。
(コントラストエンハンスメント層)
本開示に係る感光性フィルムは、コントラストエンハンスメント層を有してもよい。コントラストエンハンスメント層については、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0134、及び特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196に記載されている。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
<<平均厚さ>>
感光性フィルムの平均厚さは、5μm~55μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、20μm~40μmであることが特に好ましい。
感光性フィルムの平均厚さは、既述した感光性フィルムの幅方向で測定される感光性フィルムの厚さの平均値(Ta)の算出方法と同様の方法によって求める。すなわち、感光性フィルムの平均厚さは、既述した3つの領域(すなわち、先端部分、中央部分、及び後端部分)において合計48か所で測定される感光性フィルムの厚さ(T(x))の算術平均である。
<<寸法>>
本開示に係る感光性フィルムの長さは、制限されない。本開示に係る感光性フィルムの長さは、500m以上であることが好ましい。本開示に係る感光性フィルムの長さは、例えば、10,000m以下の範囲で決定すればよい。
<<形状>>
本開示に係る感光性フィルムの形状は、制限されない。本開示に係る感光性フィルムの形状は、汎用性、及び運搬性の観点から、ロール状であることが好ましい。感光性フィルムを巻き取ることで、感光性フィルムの形状をロール状にすることができる。
<<製造方法>>
本開示に係る感光性フィルムの製造方法は、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たす割合が90%~100%である感光性フィルムを製造可能な方法であれば制限されない。本開示に係る感光性フィルムの製造方法においては、例えば、上記「構成要素」の項において説明した各層の形成方法を用いることができる。以下、感光性フィルムの製造方法の好ましい一例について、図2を参照して説明する。ただし、感光性フィルムの製造方法は、以下に説明する方法に制限されるものではない。
図2に示される感光性フィルム100の製造方法としては、例えば、仮支持体10の上に、感光性樹脂組成物を塗布することによって感光性樹脂層12を形成する工程と、上記感光性樹脂層12の上に、カバーフィルム14を配置する工程と、を含む方法が挙げられる。上記方法においては、必要に応じて、仮支持体10の上に塗布された感光性樹脂組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、制限されず、公知の乾燥方法を利用することができる。
Tg(x)に対するT(x)の制御の観点から、感光性樹脂組成物の塗布においては、エクストルージョン塗布装置を用いることが好ましい。好ましいエクストルージョン塗布装置としては、例えば、特開2011-189280号公報に記載されたエクストルージョン塗布装置が挙げられる。また、T(x)の制御の観点から、特開2011-189280号公報に記載されたエクストルージョン塗布方法を用いて、感光性樹脂組成物を塗布することも好ましい。特開2011-189280号公報に記載されたエクストルージョン塗布装置、及びエクストルージョン塗布方法によれば、感光性フィルムの厚さのばらつきを低減することができるため、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たすようにT(x)を制御することができる。
Tg(x)に対するT(x)の制御の観点から、感光性樹脂組成物の塗布において、例えば、塗布液が吐出されるダイの両端に設置された高さ調整のためのスペーサーの高さを調節することが好ましい。また、感光性樹脂組成物を薄く均一に塗布するために、塗布方向とは反対側に感光性樹脂組成物を吸引する減圧チャンバーの圧力を調節することが好ましい。
感光性樹脂組成物の塗布において、ダイとバックアップロールとの距離は、通常30μm~300μmで設定される。ダイとバックアップロールとの距離は、例えば、塗布厚み、塗布速度、及び塗布液の物性(例えば、粘度)に応じて設定される。
感光性樹脂層12の上に、カバーフィルム14を配置する方法としては、例えば、感光性樹脂層12にカバーフィルム14を圧着させる方法が挙げられる。
以上の工程を経ることで、仮支持体10と、感光性樹脂層12と、カバーフィルム14と、を含む感光性フィルム100を製造することができる。製造された感光性フィルム100は、ロール状に巻き取られてもよい。ロール状の感光性フィルム100は、例えば、ロールツーロール方式による基板との貼り合わせ工程に用いることができる。
<<用途>>
本開示に係る感光性フィルムは、例えば、樹脂パターンの形成、及び回路配線の形成に用いることができる。ただし、本開示に係る感光性フィルムの用途は、上記した用途に制限されるものではない。
本開示に係る感光性フィルムは、例えば、配線保護膜用感光性フィルムとして用いられてもよい。配線保護膜用感光性フィルムとして好ましく用いられる感光性フィルムの層構成としては、例えば、以下の(1)及び(2)が挙げられる。
(1)仮支持体/感光性樹脂層/屈折率調整層/カバーフィルム
(2)仮支持体/感光性樹脂層/カバーフィルム
以下、配線保護膜用感光性フィルムとして好ましく用いられる感光性フィルムの構成要素について説明する。ただし、配線保護膜用感光性フィルムとして好ましく用いられる感光性フィルムの構成要素は、以下に示す構成要素に制限されるものではない。
[仮支持体]
仮支持体としては、例えば、上記「構成要素」の項において説明した仮支持体が挙げられる。仮支持体の好ましい態様は、上記「構成要素」の項において説明した仮支持体の好ましい態様と同じである。
[カバーフィルム]
仮支持体としては、例えば、上記「構成要素」の項において説明したカバーフィルムが挙げられる。カバーフィルムの好ましい態様は、上記「構成要素」の項において説明したカバーフィルムの好ましい態様と同じである。
[感光性樹脂層]
(アルカリ可溶性樹脂)
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂の好適態様の一つとして、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位のみで構成されていてもよく、(メタ)アクリル化合物以外の重合性単量体に由来する構成単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、100質量%以下である。
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成する重合性単量体としては、(メタ)アクリル化合物と共重合可能な(メタ)アクリル化合物以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及び、α-メチルスチレン等のα位又は芳香族環に置換基を有してもよいスチレン化合物、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールエステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及び、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、並びに、クロトン酸が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ現像性をより良好にする点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、ホスホン酸基が挙げられる。
中でも、(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位を有することがより好ましく、上記の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有することが更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂における酸基を有する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸に由来する構成単位)の含有量は、現像性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、10質量%以上が好ましい。また、上限値は特に制限されないが、アルカリ耐性に優れる点で、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましい。
(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%~90質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、65質量%~90質量%が更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有する樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみで構成されている樹脂がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸メチルに由来する構成単位、及び、アクリル酸エチルに由来する構成単位を有するアクリル樹脂も好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有することが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、解像性の観点から、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されず、100質量%以下であってもよく、80質量%以下が好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂は、解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種と、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位よりなる群から選択される少なくとも1種とを有することも好ましい。
解像性の観点から、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、アクリル酸に由来する構成単位及びアクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量に対して、質量比で60/40~80/20が好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、転写後の感光性樹脂層の現像性に優れる点で、末端にエステル基を有することが好ましい。
なお、(メタ)アクリル樹脂の末端部は、合成に用いた重合開始剤に由来する部位により構成される。末端にエステル基を有する(メタ)アクリル樹脂は、エステル基を有するラジカルを発生する重合開始剤を用いることにより合成できる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、現像性の点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂)であることが更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂がカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知の(メタ)アクリル樹脂から適宜選択できる。
例えば、特開2011-095716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく使用できる。
アルカリ可溶性樹脂の他の好適態様としては、スチレン-アクリル共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、スチレン-アクリル共重合体とは、スチレン化合物に由来する構成単位と、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位とを有する樹脂を指し、上記スチレン化合物に由来する構成単位、及び、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の合計含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
また、スチレン化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、5質量%~80質量%が更に好ましい。
また、上記(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、上記共重合体の全構成単位に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%~95質量%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、芳香環構造を有することが好ましく、芳香環構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
芳香環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、及び、α-メチルスチレン等のスチレン化合物、並びに、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、下記式(S)で表される構成単位(スチレンに由来する構成単位)を有することがより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~70質量%より好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位の含有量は、得られる硬化膜の透湿度及び強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~60モル%が更に好ましく、20モル%~50モル%が特に好ましい。
なお、本明細書において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本明細書において、上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
アルカリ可溶性樹脂は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、脂肪族炭化水素環構造を有することが好ましい。つまり、アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有することが好ましい。中でも、アルカリ可溶性樹脂は、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有することがより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位における脂肪族炭化水素環構造を構成する環としては、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、及び、イソボロン環が挙げられる。
中でも、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環が好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環)がより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、アルカリ可溶性樹脂は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましく、上記式(S)で表される構成単位、及び、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましい。
式(Cy)中、RMは水素原子又はメチル基を表し、RCyは脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基を表す。
式(Cy)におけるRMは、メチル基であることが好ましい。
式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが好ましく、炭素数6~16の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがより好ましく、炭素数8~14の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが更に好ましい。
式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、単環構造であっても、多環構造であってもよい。
また、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン環構造、シクロヘキサン環構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造、ノルボルナン環構造、又は、イソボロン環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環構造、又は、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがより好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることが更に好ましい。
更に、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造であることが好ましく、2~4環の脂肪族炭化水素環が縮環した環であることがより好ましい。
更に、式(Cy)におけるRCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、式(Cy)における-C(=O)O-の酸素原子と脂肪族炭化水素環構造とが直接結合する基、すなわち、脂肪族炭化水素環基であることが好ましく、シクロヘキシル基、又は、ジシクロペンタニル基であることがより好ましく、ジシクロペンタニル基であることが更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(Cy)で表される構成単位の含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂が芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、40質量%~75質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位及び上記式(Cy)で表される構成単位の総含有量は、本現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、10モル%~80モル%が好ましく、20モル%~70モル%がより好ましく、40モル%~60モル%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における上記式(S)で表される構成単位のモル量nSと上記式(Cy)で表される構成単位のモル量nCyは、現像残渣抑制性、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、下記式(SCy)に示す関係を満たすことが好ましく、下記式(SCy-1)を満たすことがより好ましく、下記式(SCy-2)を満たすことが更に好ましい。
0.2≦nS/(nS+nCy)≦0.8:式(SCy)
0.30≦nS/(nS+nCy)≦0.75:式(SCy-1)
0.40≦nS/(nS+nCy)≦0.70:式(SCy-2)
アルカリ可溶性樹脂は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する構成単位としては、下記に示す、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が好ましく、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が酸基を有する構成単位を有する場合、酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における酸基を有する構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
更に、アルカリ可溶性樹脂における(メタ)アクリル酸由来の構成単位の含有量は、現像性、及び、基板との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~50モル%がより好ましく、20モル%~40モル%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、反応性基を有することが好ましく、反応性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂がエチレン性不飽和基を有している場合、アルカリ可溶性樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、アリル基又は(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
反応性基を有する構成単位の一例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
アルカリ可溶性樹脂が反応性基を有する構成単位を有する場合、反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が更に好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂における反応性基を有する構成単位の含有量は、硬化性、及び、得られる硬化膜の強度の観点から、アルカリ可溶性樹脂の全構成単位に対して、5モル%~70モル%が好ましく、10モル%~60モル%がより好ましく、20モル%~50モル%が更に好ましい。
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、及び、スルホ基等の官能基に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、及び、カルボン酸無水物等の化合物を反応させる方法が挙げられる。
反応性基をアルカリ可溶性樹脂に導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するポリマーを重合反応により合成した後、高分子反応により、得られた樹脂のカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロキシ基をポリマーに導入する手段が挙げられる。この手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬株式会社製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。上記高分子反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記高分子反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、本開示における効果がより優れる点から、以下に示す樹脂が好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)及び重量平均分子量Mw等は目的に応じて適宜変更できる。
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
上記樹脂において、aは20質量%~60質量%、bは10質量%~50質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
上記樹脂において、aは30質量%~65質量%、bは1.0質量%~20質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
上記樹脂において、aは1.0質量%~20質量%、bは20質量%~60質量%、cは5.0質量%~25質量%、dは10質量%~50質量%であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、カルボン酸無水物構造を有する構成単位を有する重合体(以下、「重合体X」ともいう。)を含んでいてもよい。
カルボン酸無水物構造は、鎖状カルボン酸無水物構造、及び、環状カルボン酸無水物構造のいずれであってもよいが、環状カルボン酸無水物構造であることが好ましい。
環状カルボン酸無水物構造の環としては、5員環~7員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましく、5員環が更に好ましい。
カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を2つ除いた2価の基を主鎖中に含む構成単位、又は、下記式P-1で表される化合物から水素原子を1つ除いた1価の基が主鎖に対して直接又は2価の連結基を介して結合している構成単位であることが好ましい。
式P-1中、RA1aは、置換基を表し、n1a個のRA1aは、同一でも異なっていてもよく、Z1aは、-C(=O)-O-C(=O)-を含む環を形成する2価の基を表し、n1aは、0以上の整数を表す。
RA1aで表される置換基としては、例えば、アルキル基が挙げられる。
Z1aとしては、炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましく、炭素数2のアルキレン基が更に好ましい。
n1aは、0以上の整数を表す。Z1aが炭素数2~4のアルキレン基を表す場合、n1aは、0~4の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
n1aが2以上の整数を表す場合、複数存在するRA1aは、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するRA1aは、互いに結合して環を形成してもよいが、互いに結合して環を形成していないことが好ましい。
カルボン酸無水物構造を有する構成単位としては、不飽和カルボン酸無水物に由来する構成単位が好ましく、不飽和環式カルボン酸無水物に由来する構成単位がより好ましく、不飽和脂肪族環式カルボン酸無水物に由来する構成単位が更に好ましく、無水マレイン酸又は無水イタコン酸に由来する構成単位が特に好ましく、無水マレイン酸に由来する構成単位が最も好ましい。
以下、カルボン酸無水物構造を有する構成単位の具体例を挙げるが、カルボン酸無水物構造を有する構成単位は、これらの具体例に限定されるものではない。下記の構成単位中、Rxは、水素原子、メチル基、CH2OH基、又は、CF3基を表し、Meは、メチル基を表す。
重合体Xにおけるカルボン酸無水物構造を有する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
カルボン酸無水物構造を有する構成単位の総含有量は、重合体Xの全構成単位に対して、0モル%~60モル%が好ましく、5モル%~40モル%がより好ましく、10モル%~35モル%が更に好ましい。
感光性樹脂層は、重合体Xを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層が重合体Xを含む場合、解像性及び現像性の観点から、重合体Xの含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.2質量%~20質量%がより好ましく、0.5質量%~20質量%が更に好ましく、1質量%~20質量%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、解像性及び現像性を向上させる観点から5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましく、20,000~30,000が特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、10mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gが更に好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、現像性の観点から、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光性、解像性及び現像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
(重合性化合物)
感光性樹脂層は、重合性化合物を含んでいてもよい。
重合性化合物は、重合性基を有する化合物である。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、及び、カチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物は、上記バインダーポリマー以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項において説明したエチレン性不飽和化合物の好ましい態様と同じである。
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)が挙げられる。
Q2-R1-Q1:式(M)
式(M)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R1は鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
式(M)におけるQ1及びQ2は、合成容易性の点から、Q1及びQ2は同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ1及びQ2は、反応性の点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるR1としては、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L1-O-L1-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L1-O)p-L1-)が好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基が更に好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状、又は、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、直鎖アルキレン基が更に好ましい。
なお、上記L1はそれぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基が好ましく、エチレン基又は1,2-プロピレン基がより好ましい。
pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
また、化合物MにおけるQ1とQ2との間を連結する最短の連結鎖の原子数は、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、3個~50個が好ましく、4個~40個がより好ましく、6個~20個が更に好ましく、8個~12個が特に好ましい。
本明細書において、「Q1とQ2の間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Q1に連結するR1における原子からQ2に連結するR1における原子までを連結する最短の原子数である。
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及び、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物の中でも、現像残渣抑制性、防錆性、得られる硬化膜の曲げ耐性の観点から、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが更に好ましい。
また、エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本明細書において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
上記化合物M以外の2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業株式会社製)、トリシクロデカンジメナノールジメタクリレート(商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業株式会社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業株式会社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及び、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業株式会社製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業株式会社製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製NKエステル A-GLY-9E等)も挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートも挙げられる。官能基数の下限としては、6官能以上がより好ましく、8官能以上が更に好ましい。なお、官能基数の上限としては、20官能以下が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社製)、UA-32P(新中村化学工業株式会社製)、U-15HA(新中村化学工業株式会社製)、UA-1100H(新中村化学工業株式会社製)、共栄社化学株式会社製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとして、酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
酸基としては、リン酸基、スルホ基、及び、カルボキシ基が挙げられる。
これらの中でも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3官能~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80mgKOH/g~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5官能~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25mgKOH/g~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であると、現像性及び膜強度がより高まる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成株式会社製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成株式会社製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成株式会社製)が挙げられる。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物が好ましく、この公報に記載の内容は、本明細書に組み込まれる。
エチレン性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及び、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、エチレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が2~14であり、かつ、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
中でも、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和化合物のカプロラクトン変性化合物(例えば、日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業株式会社製A-9300-1CL等)、エチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(例えば、日本化薬株式会社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業株式会社製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標)135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
エチレン性不飽和化合物としては、現像性に優れる観点から、エステル結合を含むものも好ましい。
エステル結合を含むエチレン性不飽和化合物としては、分子内にエステル結合を含むものであれば特に制限されないが、硬化性及び現像性に優れる観点から、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
信頼性付与の点からは、エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6~20の脂肪族基を有するエチレン性不飽和化合物と、上記のテトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物と、を含むことが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
エチレン性不飽和化合物の好適態様の一つとしては、脂肪族炭化水素環構造を有するエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。
上記エチレン性不飽和化合物としては、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造(好ましくは、トリシクロデカン構造及びトリシクロデセン構造よりなる群から選択される構造)を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、得られる硬化膜の透湿度及び曲げ耐性、並びに、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、トリシクロデカン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、又は、イソボロン構造が好ましい。
エチレン性不飽和化合物の分子量は、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
感光性樹脂層に含まれるエチレン性不飽和化合物のうち、分子量300以下のエチレン性不飽和化合物の含有量の割合は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の含有量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、3官能又は4官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物と、脂肪族炭化水素環を有する構成単位を有するアルカリ可溶性樹脂とを含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性体とを含むことが更に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述する熱架橋性化合物とを含むことが好ましく、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物と、後述するブロックイソシアネート化合物とを含むことがより好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが好ましい。
2官能のエチレン性不飽和化合物と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量の質量比は10:90~90:10が好ましく、30:70~70:30がより好ましい。
全てのエチレン性不飽和化合物の合計量に対する、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。
感光性樹脂層における2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~40質量%がより好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、防錆性の点から、化合物M、及び、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、化合物M、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、及び、酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、化合物M、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
また、感光性樹脂層の好適態様の一つとして、感光性樹脂層は、基板密着性、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、ウレタンアクリレート化合物を含むことが特に好ましい。
感光性樹脂層は、エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
上記エチレン性不飽和化合物における2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が更に好ましい。
エチレン性不飽和化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層におけるエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が更に好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
(重合開始剤)
感光性樹脂層は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤の好ましい態様は、上記「感光性樹脂層」の項において説明した光重合開始剤の好ましい態様と同じである。
重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
重合開始剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。また、その上限値としては、感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることより好ましい。
(複素環化合物)
感光性樹脂層は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。
上記の中でも、複素環化合物としては、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
複素環化合物の好ましい具体例を以下に示す。トリアゾール化合物及びベンゾトリアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
テトラゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
チアジアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
トリアジン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
ローダニン化合物としては、以下の化合物が例示できる。
チアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
ベンゾチアゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
ベンゾイミダゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
ベンゾオキサゾール化合物としては、以下の化合物が例示できる。
複素環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が複素環化合物を含む場合、複素環化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~20.0質量%が好ましく、0.10質量%~10.0質量%がより好ましく、0.30質量%~8.0質量%が更に好ましく、0.50質量%~5.0質量%が特に好ましい。
(脂肪族チオール化合物)
感光性樹脂層は、脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含むことで、脂肪族チオール化合物がエチレン性不飽和化合物との間でエン-チオール反応することで、形成される膜の硬化収縮が抑えられ、応力が緩和される。
脂肪族チオール化合物としては、単官能の脂肪族チオール化合物、又は、多官能の脂肪族チオール化合物(すなわち、2官能以上の脂肪族チオール化合物)が好ましい。
上記の中でも、脂肪族チオール化合物としては、形成されるパターンの密着性(特に、露光後における密着性)の点から、多官能の脂肪族チオール化合物がより好ましい。
本明細書において、「多官能の脂肪族チオール化合物」とは、チオール基(「メルカプト基」ともいう。)を分子内に2個以上有する脂肪族化合物を意味する。
多官能の脂肪族チオール化合物としては、分子量が100以上の低分子化合物が好ましい。具体的には、多官能の脂肪族チオール化合物の分子量は、100~1,500がより好ましく、150~1,000が更に好ましい。
多官能の脂肪族チオール化合物の官能基数としては、例えば、形成されるパターンの密着性の点から、2官能~10官能が好ましく、2官能~8官能がより好ましく、2官能~6官能が更に好ましい。
多官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオプロピオネート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,6-ヘキサメチレンジチオール、2,2’-(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso-2,3-ジメルカプトコハク酸、及び、ジ(メルカプトエチル)エーテルが挙げられる。
上記の中でも、多官能の脂肪族チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、及び、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
単官能の脂肪族チオール化合物としては、例えば、1-オクタンチオール、1-ドデカンチオール、β-メルカプトプロピオン酸、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、及び、ステアリル-3-メルカプトプロピオネートが挙げられる。
感光性樹脂層は、1種単独の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよく、2種以上の脂肪族チオール化合物を含んでいてもよい。
感光性樹脂層が脂肪族チオール化合物を含む場合、脂肪族チオール化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、5質量%以上が好ましく、5質量%~50質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましく、8質量%~20質量%が特に好ましい。
(熱架橋性化合物)
感光性樹脂層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。
熱架橋性化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した熱架橋性化合物が挙げられる。
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
(界面活性剤)
感光性樹脂層は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%が更に好ましい。
(ラジカル重合禁止剤)
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含んでいてもよい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したラジカル重合禁止剤が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層がラジカル重合禁止剤を含む場合、ラジカル重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~3質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%以上の場合、感光性樹脂層の保存安定性がより優れる。一方、含有量が3質量%以下である場合、感度の維持及び染料の脱色を抑制がより優れる。
(水素供与性化合物)
感光性樹脂層は、水素供与性化合物を含んでいてもよい。
水素供与性化合物は、光重合開始剤の活性光線に対する感度を一層向上させる、及び、酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
水素供与性化合物としては、例えば、アミン類、及び、アミノ酸化合物が挙げられる。
アミン類としては、例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44-020189号公報、特開昭51-082102号公報、特開昭52-134692号公報、特開昭59-138205号公報、特開昭60-084305号公報、特開昭62-018537号公報、特開昭64-033104号公報、及び、Research Disclosure 33825号等に記載の化合物が挙げられる。より具体的には、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタン(別名:ロイコクリスタルバイオレット)、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ホルミルジメチルアニリン、及び、p-メチルチオジメチルアニリンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミン類としては、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)メタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アミノ酸化合物としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-フェニルグリシンが挙げられる。
中でも、感度、硬化速度、及び、硬化性の観点から、アミノ酸化合物としては、N-フェニルグリシンが好ましい。
また、水素供与性化合物としては、例えば、特公昭48-042965号公報に記載の有機金属化合物(トリブチル錫アセテート等)、特公昭55-034414号公報に記載の水素供与体、及び、特開平6-308727号公報に記載のイオウ化合物(トリチアン等)も挙げられる。
水素供与性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
感光性樹脂層が水素供与性化合物を含む場合、水素供与性化合物の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスとによる硬化速度の向上の点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01質量%~10.0質量%が好ましく、0.01質量%~8.0質量%がより好ましく、0.03質量%~5.0質量%が更に好ましい。
(不純物)
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
不純物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した不純物が挙げられる。
(残存モノマー)
感光性樹脂層は、上述した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。
感光性樹脂層における重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーとしては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明した重合体Aの各構成単位に対応する残存モノマーが挙げられる。
(他の成分)
感光性樹脂層は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、及び、粒子(例えば、金属酸化物粒子)が挙げられる。また、他の成分としては、特開2000-310706号公報の段落0058~0071に記載のその他の添加剤も挙げられる。
-粒子-
粒子としては、金属酸化物粒子が好ましい。
金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
感光性樹脂層が粒子を含む場合、金属種、及び、大きさ等の異なる粒子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
感光性樹脂層は、粒子を含まないか、あるいは、感光性樹脂層が粒子を含む場合には、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超35質量%以下が好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下がより好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超5質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないか、あるいは、粒子の含有量が感光性樹脂層の全質量に対して0質量%超1質量%以下が更に好ましく、粒子を含まないことが特に好ましい。
-着色剤-
感光性樹脂層は、着色剤(顔料、染料等)を含んでいてもよいが、例えば、透明性の点からは、着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
感光性樹脂層が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましい。
-酸化防止剤-
酸化防止剤としては、例えば、1-フェニル-3-ピラゾリドン(別名:フェニドン)、1-フェニル-4,4-ジメチル-3-ピラゾリドン、及び、1-フェニル-4-メチル-4-ヒドロキシメチル-3-ピラゾリドン等の3-ピラゾリドン類;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、及び、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類;パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、及び、パラフェニレンジアミンが挙げられる。
中でも、保存安定性、及び、硬化性の観点から、酸化防止剤としては、3-ピラゾリドン類が好ましく、1-フェニル-3-ピラゾリドンがより好ましい。
感光性樹脂層が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、1質量%以下が好ましい。
(感光性樹脂層の厚み)
感光性樹脂層の厚み(層厚)は、特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましく、10μm以下が特に好ましく、5.0μm以下が最も好ましい。下限としては、感光性樹脂層を硬化して得られる膜の強度が優れる点で、0.60μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
(感光性樹脂層の屈折率)
感光性樹脂層の屈折率は、1.47~1.56が好ましく、1.49~1.54がより好ましい。
(感光性樹脂層の色)
感光性樹脂層は無彩色であることが好ましい。具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、L*値は10~90であることが好ましく、a*値は-1.0~1.0であることが好ましく、b*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
なお、感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)は、無彩色であることが好ましい。
具体的には、全反射(入射角8°、光源:D-65(2°視野))が、CIE1976(L*,a*,b*)色空間において、パターンのL*値は10~90であることが好ましく、パターンのa*値は-1.0~1.0であることが好ましく、パターンのb*値は-1.0~1.0であることが好ましい。
(感光性樹脂層の透湿度)
感光性樹脂層を硬化して得られるパターン(感光性樹脂層の硬化膜)の層厚40μmでの透湿度は、防錆性の観点から、500g/(m2・24hr)以下であることが好ましく、300g/(m2・24hr)以下であることがより好ましく、100g/(m2・24hr)以下であることが更に好ましい。
なお、透湿度は、感光性樹脂層を、i線によって露光量300mJ/cm2にて露光した後、145℃、30分間のポストベークを行うことにより、感光性樹脂層を硬化させた硬化膜で測定する。
[屈折率調整層]
感光性転写材料は、屈折率調整層を有していることが好ましい。
屈折率調整層としては、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含まれる材料としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、金属塩、及び、粒子が挙げられる。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と粒子とを用いる方法、及び、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物としては、例えば、上記「感光性樹脂層」の項において説明したアルカリ可溶性樹脂及びエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、及び、金属粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子の種類は特に制限はなく、公知の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物粒子における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及び、Te等の半金属も含まれる。
粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の点から、1nm~200nmが好ましく、3nm~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
金属酸化物粒子としては、具体的には、酸化ジルコニウム粒子(ZrO2粒子)、Nb2O5粒子、酸化チタン粒子(TiO2粒子)、二酸化珪素粒子(SiO2粒子)、及び、これらの複合粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、金属酸化物粒子としては、例えば、屈折率を調整しやすいという点から、酸化ジルコニウム粒子及び酸化チタン粒子よりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業株式会社製)、及び、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業株式会社製)が挙げられる。
粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
屈折率調整層における粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対し、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
金属酸化物粒子として酸化チタンを用いる場合、酸化チタン粒子の含有量は、屈折率調整層の全質量に対して、1質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、感光性樹脂層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.60以上が更に好ましく、1.65以上が特に好ましい。屈折率調整層の屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が特に好ましい。
屈折率調整層の厚みは、50nm~500nmが好ましく、55nm~110nmがより好ましく、60nm~100nmが更に好ましい。
屈折率調整層は、例えば、屈折率調整層を用いて形成される。屈折率調整層形成用組成物としては、上述した屈折率調整層を形成する各種成分と溶剤とを含むことが好ましい。なお、屈折率調整層形成用組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した屈折率調整層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、屈折率調整層に含まれる成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部が更に好ましい。
屈折率調整層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
[仮支持体、感光性樹脂層及びカバーフィルムの関係]
配線保護膜用感光性フィルムとして好ましく用いられる感光性フィルムにおいても、既述した仮支持体、感光性樹脂層及びカバーフィルムの関係を満たすことが好ましい。
<樹脂パターンの製造方法、及び回路配線の製造方法>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示に係る感光性フィルムを用いる樹脂パターンの製造方法であれば制限されない。例えば、仮支持体と、感光性樹脂層と、を含む感光性フィルムを用いる場合、本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示に係る感光性フィルムと基板(好ましくは導電性を有する基板)とを、感光性樹脂層の仮支持体が配置されている側とは反対側の面と基板とを接触させて貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」という場合がある。)と、感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」という場合がある。)と、感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(以下、「現像工程」という場合がある。)と、をこの順に含むことが好ましい。
本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性フィルムを用いる回路配線の製造方法であれば制限されない。本開示に係る回路配線の製造方法は、基材、導電層、及び本開示に係る感光性フィルムを用いて形成された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、上記樹脂パターンが配置されていない領域にある上記導電層をエッチング処理する工程(以下、「エッチング工程」という場合がある。)を含むことが好ましい。
本開示に係る樹脂パターンの製造方法、及び本開示に係る回路配線の製造方法は、それぞれ、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、樹脂パターンの製造方法又は回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基板又は基板を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基板又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
以下、本開示に係る樹脂パターンの製造方法、及び本開示に係る回路配線の製造方法に含まれる各工程について説明する。ただし、本開示に係る樹脂パターンの製造方法に含まれる各工程について説明した内容は、特に断りのない限り、本開示に係る回路配線の製造方法に含まれる各工程についても適用されるものとする。
<<貼り合わせ工程>>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示に係る感光性フィルム、及び基板(好ましくは導電性を有する基板)を、上記感光性フィルムにおける感光性樹脂層の仮支持体が配置されている側とは反対側の面(以下、「第1の面」という場合がある。)と基板とを接触させて貼り合わせる工程を含むことが好ましい。
貼り合わせ工程においては、感光性樹脂層の第1の面と基板(基板の表面に導電層が設けられている場合は導電層)とを接触させ、感光性フィルムと基板とを圧着させることが好ましい。上記態様によれば、感光性樹脂層の第1の面と基板との密着性が向上するため、形成される樹脂パターンをエッチングレジストとして好適に用いることができる。
感光性フィルムがカバーフィルムを有する場合は、感光性フィルムからカバーフィルムを除去した後、感光性フィルムと基板とを貼り合わせればよい。
感光性フィルムにおいて感光性樹脂層の第1の面にカバーフィルム以外の層(例えば、高屈折率層、及び/又は低屈折率層)が配置されている場合、感光性樹脂層の第1の面と基板とは、上記カバーフィルム以外の層を介して貼り合わせればよい。
感光性フィルムと基板とを圧着する方法としては、制限されず、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。感光性フィルムと基板との貼り合わせは、感光性樹脂層の第1面と基板とを重ね合わせ、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことによって行われることが好ましい。また、貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーターを用いることができる。
[基板]
基板としては、制限されず、公知の基板を用いることができる。基板は、導電層を有する基板であることが好ましく、基材と、上記基材の表面の一部又は全面に導電層と、を有する基板であることがより好ましい。基板は、必要に応じて導電層以外の任意の層を有してもよい。
基材としては、例えば、ガラス、シリコン、及びフィルムが挙げられる。
基材は透明であることが好ましい。本開示において、「透明である」とは、波長が400~700nmである光の透過率が80%以上であることを意味する。
基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
透明なガラス基材としては、例えば、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。また、透明なガラス基材としては、例えば、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報、及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を用いることができる。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが小さく、及び/又は透明度が高いフィルム基材を用いることが好ましい。上記のようなフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。
ロールツーロール方式において用いられる基板を構成する基材は、フィルム基材であることが好ましい。また、ロールツーロール方式によりタッチパネル用の回路配線を製造する場合、基材は、シート状樹脂組成物であることが好ましい。
導電層としては、一般的な回路配線、又はタッチパネル配線に用いられる導電層が挙げられる。導電層は、導電性、及び細線形成性の観点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び導電ポリマー層からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、金属層であることがより好ましく、銅層、又は銀層であることが特に好ましい。
基板は、1層単独、又は2層以上の導電層を有してもよい。2層以上の導電層を有する基板は、異なる材質の複数の導電層を有することが好ましい。
導電層の材料としては、例えば、金属、及び導電性金属酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag、及びAuが挙げられる。導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、及びSiO2が挙げられる。本開示において「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満であることをいう。導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×104Ωcm未満であることが好ましい。
複数の導電層を有する基板を用いて樹脂パターンを製造する場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は、導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線が好ましい。
導電層の好ましい態様は、例えば、国際公開第2018/155193号の段落0141に記載されており、この内容は参照により本明細書に組み込まれる。
導電層を有する基板としては、透明電極及び引き回し配線の少なくとも一方を有する基板が好ましい。上記のような基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。透明電極は、タッチパネル用電極として好適に機能し得る。透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)、及び、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜、並びに、金属メッシュ、及び、金属ナノワイヤー等の金属細線により構成されることが好ましい。金属細線としては、銀、銅等の細線が挙げられる。中でも、銀メッシュ、銀ナノワイヤー等の銀導電性材料が好ましい。
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及び、マンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
<<露光工程>>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、上記貼り合わせ工程の後、感光性樹脂層をパターン露光する工程を含むことが好ましい。
パターン露光におけるパターンの詳細な配置、及び具体的サイズは、制限されない。回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積が小さくなるように、パターンの少なくとも一部(好ましくはタッチパネルの電極パターン及び/又は取り出し配線の部分)は、幅が20μm以下である細線を含むことが好ましく、幅が10μm以下の細線を含むことがより好ましい。
露光に使用する光源は、感光性樹脂層を露光可能な波長の光(例えば、365nm、又は405nm)を照射する光源であればよい。具体的な光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
露光量は、5mJ/cm2~200mJ/cm2であることが好ましく、10mJ/cm2~100mJ/cm2であることがより好ましい。
露光工程においては、感光性樹脂層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を介してパターン露光した後に仮支持体を剥離してもよい。感光性樹脂層とマスクとの接触による感光性樹脂層の汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるため、仮支持体を介してパターン露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよく、又はレーザー等の露光手段を用いたダイレクト露光でもよい。
<<現像工程>>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、上記露光工程の後、感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程を含むことが好ましい。
感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。現像液の種類は、感光性樹脂層の画像部(露光部)、又は非画像部(非露光部)を除去することができれば制限されない。現像液としては、公知の現像液(例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液)を用いることができる。
現像液は、pKaが7~13である化合物を0.05mol/L~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液であることが好ましい。現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましい。
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部、又は非露光部を除去する現像処理である。
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温は、制限されない。現像液の液温は、20℃~40℃であることが好ましい。
例えば、感光性フィルムが、熱可塑性樹脂、及び中間層を含む場合、現像工程において、感光性樹脂層の画像部(露光部)、又は非画像部(非露光部)とともに、熱可塑性樹脂、及び中間層も除去される。また、現像工程において、熱可塑性樹脂層、及び中間層は、現像液への溶解、又は分散によって除去されてもよい。
<<エッチング工程>>
本開示に係る回路配線の製造方法は、基材、導電層、及び本開示に係る感光性フィルムを用いて形成された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、上記樹脂パターンが配置されていない領域にある上記導電層をエッチング処理する工程を含むことが好ましい。上記樹脂パターンは、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程と、を含む樹脂パターンの製造方法により形成された樹脂パターンであることが好ましい。
エッチング工程では、樹脂パターンをエッチングレジストとして使用することで、導電層のエッチング処理を行う。エッチング処理の方法としては、公知の方法を適用できる。エッチング処理の方法としては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法、及びドライエッチング(例えば、プラズマエッチング)による方法が挙げられる。
ウェットエッチング法に用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて、酸性、又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸、及びリン酸からなる群より選択される酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、及び過マンガン酸カリウムからなる群より選択される塩との混合水溶液が挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。
アルカリ性のエッチング液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び有機アミンの塩(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)からなる群より選択されるアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と塩(例えば、過マンガン酸カリウム)との混合水溶液が挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
<<除去工程>>
本開示に係る回路配線の製造方法は、残存する樹脂パターンを除去する工程(以下、「除去工程」という場合がある。)を含むことが好ましい。除去工程は、エッチング工程の後に行うことが好ましい。
残存する樹脂パターンを除去する方法としては、例えば、薬品処理により残存する樹脂パターンを除去する方法が挙げられる。残存する樹脂パターンを除去する方法は、除去液を用いて残存する樹脂パターンを除去する方法であることが好ましい。除去液を用いる方法としては、例えば、液温が好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃である撹拌中の除去液に、残存する樹脂パターンを有する基板を1分間~30分間浸漬する方法が挙げられる。
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分、又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、例えば、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
除去液を用いて残存する樹脂パターンを除去する方法は、浸漬法に限られず、浸漬法以外の公知の方法(例えば、スプレー法、シャワー法、及びパドル法)であってもよい。
<<他の工程>>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記した工程以外の任意の工程(以下、「他の工程」という場合がある。)を含んでもよい。本開示に係る回路配線の製造方法に適用可能な露光工程、現像工程、及び他の工程としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の工程が挙げられる。また、他の工程としては、以下に示す工程が挙げられる。ただし、他の工程は、以下に示す工程に制限されない。
[カバーフィルム剥離工程]
本開示に係る感光性フィルムがカバーフィルムを有する場合、本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、感光性フィルムからカバーフィルムを剥離する工程を含むことが好ましい。カバーフィルムを剥離する方法としては、制限されず、公知の方法を適用することができる。
[可視光線反射率を低下させる工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、基板における導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでもよい。
導電層の可視光線反射率を低下させる処理としては、例えば、酸化処理が挙げられる。導電層が銅を含む場合、銅を酸化処理によって酸化銅とし、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
導電層の可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048、及び段落0058に記載されている。これらの公報の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
[絶縁膜を形成する工程、及び絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程]
本開示に係る回路配線の製造方法は、回路配線の表面に絶縁膜を形成する工程と、上記絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。上記の工程により、絶縁膜を介して絶縁された2つの電極パターンを形成することができる。
絶縁膜を形成する方法は、制限されない。絶縁膜を形成する工程においては、例えば、公知の永久膜を形成する方法によって絶縁膜を形成してもよい。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程においては、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
本開示に係る回路配線の製造方法においては、基材の両方の表面にそれぞれ導電層を有する基板を用い、上記導電層のそれぞれに対して、逐次、又は同時に回路を形成することも好ましい。上記の方法によれば、例えば、基材の一方の表面に第一の導電パターン、基材の他方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、本開示に係る回路配線の製造方法によって、上記タッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面で形成することも好ましい。
<<回路配線の用途>>
本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、種々の表示装置(例えば、有機EL表示装置、及び液晶表示装置)に適用できる。
<タッチパネルの製造方法>
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、本開示に係る感光性フィルムを用いるタッチパネルの製造方法であれば制限されない。
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、基材、導電層、及び本開示に係る感光性フィルムを用いて形成された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、上記樹脂パターンが配置されていない領域にある上記導電層をエッチング処理することにより、タッチパネル用配線を形成する工程を含むことが好ましい。上記樹脂パターンは、上記貼り合わせ工程と、上記露光工程と、上記現像工程と、を含む樹脂パターンの製造方法により形成された樹脂パターンであることが好ましい。
本開示に係るタッチパネルの製造方法における各工程の態様については、上記「樹脂パターンの製造方法、及び回路配線の製造方法」の項において説明したとおりであり、好ましい態様も同様である。本開示に係るタッチパネルの製造方法については、上記の方法によりタッチパネル用配線を形成すること以外は、公知のタッチパネルの製造方法を参照すればよい。また、本開示に係るタッチパネルの製造方法は、上記した工程以外の任意の工程を含んでもよい。
タッチパネルの製造に用いられるマスクのパターンについて、図3、及び図4を参照して説明する。図3は、タッチパネル製造用マスクのパターンの一例を示す概略図である。図4は、タッチパネル製造用マスクのパターンの他の一例を示す概略図である。図3、及び図4において、DLは、アライメント合わせの枠を仮想的に示し、Gは、非画像部(遮光部)を示す。図3において、SLは、非画像部(遮光部)を示す。本開示に係るタッチパネルの製造方法において、例えば、図3に示されるパターンを有するマスクを介して感光性樹脂層を露光することで、SL、及びGに対応するパターンを有する回路配線が形成されたタッチパネルを製造できる。具体的には、国際公開第2016/190405号の図1に記載の方法によってタッチパネルを製造できる。製造されたタッチパネルの一例においては、Gは、透明電極(すなわち、タッチパネル用電極)が形成される部分であり、SLは、周辺取出し部の配線が形成される部分である。
本開示に係るタッチパネルの製造方法によれば、タッチパネル用配線を少なくとも有するタッチパネルが製造される。タッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層と、を有することが好ましい。
タッチパネルにおける検出方法としては、例えば、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式が挙げられる。検出方式は、静電容量方式であることが好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5、図6、図7及び図8に記載の構成)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載の構成、並びに、特開2012-89102号公報の図1及び図5に記載の構成)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載の構成)、各種アウトセル型(例えば、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、及びG1F)、及びその他構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載の構成)が挙げられる。
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されるものではない。
<略号>
以下に示す略号は、それぞれ、次の化合物を意味する。
「MAA」:メタクリル酸(富士フイルム和光純薬株式会社)
「MMA」:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬株式会社)
「PGMEA」:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社)
「St」:スチレン(富士フイルム和光純薬株式会社)
「V-601」:2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(富士フイルム和光純薬株式会社、重合開始剤)
<重合体A-1>
3つ口フラスコにPGMEA(116.5質量部)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。3つ口フラスコ内の液温を90℃±2℃に維持しながら、上記3つ口フラスコに、St(52.0質量部)、MMA(19.0質量部)、MAA(29.0質量部)、V-601(4.0質量部)、及びPGMEA(116.5質量部)を含む混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、液温を90℃±2℃に維持しながら混合液を2時間撹拌することで、30.0質量%の重合体A-1を含有する組成物を得た。重合体A-1の酸価は、189mgKOH/gである。
<重合性化合物B>
重合性化合物Bとして、以下に示す化合物を用意した。
・B-1:NKエステルBPE-500(2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業株式会社)
・B-2:アロニックスM-270(ポリプロピレングリコールジアクリレート、東亞合成株式会社)
<光重合開始剤>
光重合開始剤として、以下に示す化合物を用意した。
・C-1:B-CIM(光ラジカル重合開始剤、2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、Hampford社製)
・C-2:EAB-F(光ラジカル重合開始剤(増感剤)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、東京化成工業株式会社)
<色素>
色素として、以下に示す化合物を用意した。
・D-1:LCV(ロイコクリスタルバイオレット、山田化学工業株式会社、ラジカルにより発色する色素)
<界面活性剤>
界面活性剤として、以下に示す化合物を用意した。
・E-1:メガファックF552(DIC株式会社)
<熱可塑性樹脂組成物の調製>
以下の成分を混合することで、熱可塑性樹脂組成物を調製した。
・ベンジルメタクリレート、メタクリル酸、及びアクリル酸の共重合体(固形分濃度:30.0質量%、Mw:30000、酸価:153mgKOH/g):42.85質量部
・NKエステルA-DCP(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、新中村化学工業株式会社):4.63質量部
・8UX-015A(多官能ウレタンアクリレート化合物、大成ファインケミカル株式会社):2.31質量部
・アロニックスTO-2349(カルボキシ基を有する多官能アクリレート化合物、東亞合成株式会社):0.77質量部
・下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-47765号公報の段落0227に記載の方法に従って合成した化合物):0.32質量部
・下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素):0.08質量部
・E-1:0.03質量部
・メチルエチルケトン(三協化学株式会社):39.50質量部
・PGMEA:9.51質量部
<中間層用組成物の調製>
以下の成分を混合することで、中間層用組成物を調製した。
・イオン交換水:38.12質量部
・メタノール(三菱ガス化学株式会社):57.17質量部
・クラレポバールPVA-205(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ):3.22質量部
・ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒):1.49質量部
・メガファックF-444(フッ素系ノニオン性界面活性剤、DIC株式会社):0.0015質量部
<感光性樹脂組成物の調製>
以下の成分を混合することで、感光性樹脂組成物を調製した。
・重合体A-1(固形分濃度30.0%):21.87質量部
・B-1:4.85質量部
・B-2:0.51質量部
・C-1:0.89質量部
・C-2:0.05質量部
・D-1:0.053質量部
・E-1:0.02質量部
・フェノチアジン(富士フイルム和光純薬株式会社):0.025質量部
・1-フェニル-3-ピラゾリドン(富士フイルム和光純薬株式会社):0.001質量部
・メチルエチルケトン(三協化学株式会社):30.87質量部
・PGMEA:33.92質量部
・テトラヒドロフラン(THF、三菱ケミカル株式会社):6.93質量部
<実施例1>
仮支持体としてPETフィルム(ルミラー16QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.02μm、厚さ:16μm)を用意した。PETフィルムの幅は、1.54mである。
仮支持体の表面に、スリット状ノズルを用いて熱可塑性樹脂組成物の塗布幅が1.53mであり、かつ、乾燥後の厚さが2.0μmとなるように熱可塑性樹脂組成物を塗布した。形成された熱可塑性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥することで、熱可塑性樹脂層を形成した。このとき、減圧チャンバーの圧力は-200Paとした。
形成された熱可塑性樹脂層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.53mであり、かつ、乾燥後の厚さが1.0μmとなるように中間層用組成物を塗布した。中間層用組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥し、中間層を形成した。このとき、減圧チャンバーの圧力は-1,000Paとした。
形成された中間層の表面に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.53mであり、かつ、乾燥後の厚さが2.0μmとなるように感光性樹脂組成物を塗布した。感光性樹脂組成物の塗膜を80℃で40秒間かけて乾燥することで、感光性樹脂層を形成した。このとき、減圧チャンバーの圧力は-500Paとした
形成された感光性樹脂層の表面に、カバーフィルムとしてPETフィルム(ルミラー16QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.02μm、厚さ:16μm、幅:1.54m)を圧着することで、感光性フィルムを作製した。作製した感光性フィルムは、ロール状に4,000m巻き取った。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの平均厚さは、35.7μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:15.5μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.2μm
<実施例2>
感光性樹脂層を形成する際の減圧チャンバーの圧力を-1,000Paに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、35.9μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:15.5μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.1μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:2.1μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.2μm
<実施例3>
仮支持体、及びカバーフィルムとして用いられるPETフィルム(ルミラー16QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.02μm、厚さ:16μm)の幅をそれぞれ0.53mに変更したこと、並びに熱可塑性樹脂組成物の塗布幅、中間層用組成物の塗布幅、及び感光性樹脂組成物の塗布幅をそれぞれ0.52mに変更したこと以外は実施例1の同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、35.8μmであった。
<実施例4>
仮支持体、及びカバーフィルムとして用いられるPETフィルム(ルミラー16QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.02μm、厚さ:16μm)の幅を0.25mに変更したこと、並びに熱可塑性樹脂組成物の塗布幅、中間層用組成物の塗布幅、及び感光性樹脂組成物の塗布幅をそれぞれ0.24mに変更したこと以外は、実施例1の同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、35.8μmであった。
<実施例5>
仮支持体のPETフィルム(ルミラー16QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.02μm、厚さ:16μm)をPETフィルムB(ルミラー12QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.03μm、厚さ:12μm)に変更した以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、32.5μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:12.0μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:2.1μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.5μm
<実施例6>
感光性樹脂層の厚さを10.0μmに変更した以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、44.2μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:15.5μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:10.0μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.7μm
<実施例7>
熱可塑性樹脂層、及び中間層の形成を行わず、仮支持体としてPETフィルムB(ルミラー12QS62、東レ株式会社、算術平均粗さ(Ra値):0.03μm、厚さ:12μm)の表面に、感光性樹脂組成物を塗布することによって感光性樹脂層を形成したこと、及び感光性樹脂層の厚さを1.1μmに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、28.7μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:12.1μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:1.1μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.5μm
<比較例1>
感光性樹脂層を形成する際の減圧チャンバーの圧力を大気圧に変更したこと(すなわち、感光性樹脂組成物を吸引しなかったこと)以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、35.8μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:15.5μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:2.1μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.2μm
<比較例2>
感光性樹脂層、熱可塑性樹脂層及び中間層を形成する際の減圧チャンバーの圧力を全て大気圧に変更したこと(すなわち、感光性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂組成物を吸引しなかったこと)以外は、実施例1と同様の手順によって、感光性フィルムを作製した。感光性フィルムの平均厚さは、35.8μmであった。既述の方法に従って測定した感光性フィルムの各層の平均厚さを以下に示す。
(各層の平均厚さ)
・仮支持体の平均厚さ:15.4μm
・熱可塑性樹脂層の平均厚さ:2.0μm
・中間層の平均厚さ:1.0μm
・感光性樹脂層の平均厚さ:2.1μm
・カバーフィルムの平均厚さ:15.3μm
<厚み分布の評価>
接触式膜厚計(株式会社東京精密、E-ST-100)を用いて、既述の方法に従って感光性フィルムの48か所の厚さを測定し、次いで、各測定位置において、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たすか否かを確認した。感光性フィルムにおいて、上記関係を満たしている測定箇所の割合を求めることで、感光性フィルムの厚み分布を評価した。評価結果を表1に示す。
<外観評価>
ロール状に巻き取られた感光性フィルムを目視で観察することで、感光性フィルムの外観不良の有無を評価した。具体的な評価項目は、巻きズレ、及び変形である。評価結果を表1に示す。
表1において、「厚み分布の評価」の欄に記載された数値は、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たしている測定箇所の割合を示す。
表1に示される結果は、実施例1~7における外観不良の発生が、比較例1~2に比べて抑制されていることを示す。
実施例1、及び実施例2は、Tg(x)×(99.2/100)<T(x)<Tg(x)×(100.8/100)の関係も満たしていた。具体的に、実施例1、及び実施例2において、上記関係を満たす割合は100%であった。
上記厚み分布の評価において、48か所で測定した比較例1の感光性フィルムの厚さ(T(x))を図5、図6、及び図7にそれぞれ示す。図5は、比較例1の感光性フィルムの先端部分の厚み分布を示すグラフである。図6は、比較例1の感光性フィルムの中央部分の厚み分布を示すグラフである。図7は、比較例1の感光性フィルムの後端部分の厚み分布を示すグラフである。図5、図6、及び図7において、横軸は、感光性フィルムの幅方向における感光性フィルムの一端からフィルムの厚さの測定位置までの距離(x)を表し、縦軸は、感光性フィルムの厚さ(T(x))を表す。図5、図6、及び図7において、黒い三角で表される記号は、測定値を表す。図5、図6、及び図7において、一点鎖線で表される2つの曲線は、それぞれ、「Tg(x)×(98.8/100)」、及び「Tg(x)×(101.2/100)」を表す。
<感光性樹脂組成物の調製>
実施例1を参考にして、以下の表に示す組成を有する感光性樹脂組成物A-1~A-10をそれぞれ調製した。なお、以下の表における成分欄の数値は、質量部を表す。
(化合物B)
化合物Bの構造を以下に示す。
(化合物C)
化合物Cの構造を以下に示す。
(P-1溶液の準備)
P-1溶液として、下記の構造を有する重合体P-1の固形分36.3質量%溶液(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を用いた。重合体P-1は、アルカリ可溶性樹脂である。重合体P-1において、各構成単位の右下の数値は、各構成単位の含有比率(モル%)を示す。P-1溶液は、下記に示す重合工程及び付加工程により準備した。
-重合工程-
2000mLのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三和化学産業株式会社製、商品名PGM-Ac)(60g)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(三和化学産業株式会社製、商品名PGM)(240g)を導入した。得られた液体を、撹拌速度250rpm(round per minute;以下同じ。)で撹拌しつつ90℃に昇温した。
滴下液(1)の調製として、メタクリル酸(三菱レイヨン株式会社製、商品名アクリエステルM)(107.1g)、メタクリル酸メチル(三菱ガス化学株式会社製、商品名MMA)(5.46g)、及び、シクロヘキシルメタクリレート(三菱ガス化学株式会社製、商品名CHMA)(231.42g)を混合し、PGM-Ac(60g)で希釈することにより、滴下液(1)を得た。
滴下液(2)の調製として、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名V-601)(9.637g)をPGM-Ac(136.56g)で溶解させることにより、滴下液(2)を得た。
滴下液(1)と滴下液(2)とを同時に3時間かけて、上述した2000mLのフラスコ(詳細には、90℃に昇温された液体が入った2000mLのフラスコ)に滴下した。
次に、滴下液(1)の容器をPGM-Ac(12g)で洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。次に、滴下液(2)の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を上記2000mLのフラスコに滴下した。これらの滴下中、上記2000mLのフラスコ内の反応液を90℃に保ち、撹拌速度250rpmで撹拌した。更に、後反応として、90℃で1時間撹拌した。
後反応後の反応液に、開始剤の追加添加1回目として、V-601(2.401g)を添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後、90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加2回目として、V-601(2.401g)を反応液に添加した。更にV-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で1時間撹拌した。
次に、開始剤の追加添加3回目として、V-601(2.401g)を反応液に添加した。更に、V-601の容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。その後90℃で3時間撹拌した。
-付加工程-
90℃で3時間撹拌後、PGM-Ac(178.66g)を反応液へ導入した。次に、テトラエチルアンモニウムブロミド(富士フイルム和光純薬株式会社製)(1.8g)とハイドロキノンモノメチルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)(0.8g)とを反応液に添加した。更にそれぞれの容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液へ導入した。その後、反応液の温度を100℃まで昇温させた。
次に、グリシジルメタクリレート(日油株式会社製、商品名ブレンマーG)(76.03g)を1時間かけて反応液に滴下した。ブレンマーGの容器をPGM-Ac(6g)で洗浄し、洗浄液を反応液に導入した。この後、付加反応として、100℃で6時間撹拌した。
次に、反応液を冷却し、ゴミ取り用のメッシュフィルター(100メッシュ)でろ過し、重合体P-1の溶液(1158g)を得た(固形分濃度36.3質量%)。得られた重合体P-1の重量平均分子量は27000、数平均分子量は15000、酸価は95mgKOH/gであった。重合体P-1の構造を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、51.5:2:26.5:20であった。
(P-2溶液の準備)
以下の方法に従って、P-2溶液として、重合体P-2の固形分36.5質量%溶液を準備した。重合体P-2は、アルカリ可溶性樹脂である。プロピレングリコールモノメチルエーテル82.4gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン38.4g、ジシクロペンタニルメタクリレート30.1g、メタクリル酸34.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテル20gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬株式会社製)5.4gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート43.6gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を0.75g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート58.4g、プロピレングリコールモノメチルエーテル11.7gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド0.53g、p-メトキシフェノール0.26gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油株式会社製ブレンマーGH)25.5gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、重合体P-2の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.5質量%であった。重合体P-2に関して、GPCにおける標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は17000、分散度は2.4、酸価は95mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいても重合体P-2の固形分に対し0.1質量%未満であった。重合体P-2の構造を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、41.0:15.2:23.9:19.9であった。
(P-3溶液の準備)
以下の方法に従って、P-3溶液として、重合体P-3の固形分36.2質量%溶液を準備した。重合体P-3は、アルカリ可溶性樹脂である。プロピレングリコールモノメチルエーテル113.5gをフラスコに仕込み窒素気流下90℃に加熱した。この液にスチレン172g、メタクリル酸メチル4.7g、メタクリル酸112.1gをプロピレングリコールモノメチルエーテル30gに溶解させた溶液、及び、重合開始剤V-601(富士フイルム和光純薬株式会社製)27.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテル57.7gに溶解させた溶液を同時に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間おきに3回V-601を2.5g添加した。その後更に3時間反応させた。その後プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート160.7g、プロピレングリコールモノメチルエーテル233.3gで希釈した。空気気流下、反応液を100℃に昇温し、テトラエチルアンモニウムブロミド1.8g、p-メトキシフェノール0.86gを添加した。これにグリシジルメタクリレート(日油株式会社製ブレンマーG)71.9gを20分かけて滴下した。これを100℃で7時間反応させ、重合体P-3の溶液を得た。得られた溶液の固形分濃度は36.2%であった。重合体P-3に関して、GPCにおける標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は18000、分散度は2.3、酸価は124mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はいずれのモノマーにおいても重合体P-3の固形分に対し0.1質量%未満であった。重合体P-3の構造を以下に示す。式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、55.1:26.5:1.6:16.8であった。
(P-4溶液の準備)
重合体P-3の合成において、モノマーの種類と量を変更することにより、P-4溶液として、重合体P-4の固形分36.2質量%溶液(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を準備した。重合体P-4は、アルカリ可溶性樹脂である。得られた重合体P-4の重量平均分子量は18000、分散度は2.3、酸価は124mgKOH/gであった。重合体P-4の構造を以下に示す。以下、式中の繰り返し単位のモル比は、左側の繰り返し単位から順に、55.1:24.6:1.6:17.0:1.7であった。
<屈折率調整層形成用組成物の調製>
次に、以下の表に記載の組成を有する屈折率調整層形成用組成物B-1~B-4をそれぞれ調製した。以下の表中の数値は、「質量部」を表す。
(ポリマーA)
上記表中のポリマーAは以下のとおり合成を行った。
1Lの三口フラスコに1-メトキシプロパノール(東京化成工業株式会社製)(270.0g)を導入し、撹拌しつつ窒素気流下で70℃に昇温させた。一方、アリルメタクリレート(45.6g)(富士フイルム和光純薬株式会社製)、および、メタクリル酸(14.4g)(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1-メトキシプロパノール(東京化成工業株式会社製)(270.0g)に溶解させ、更にV-65(富士フイルム和光純薬株式会社製)を3.94g溶解させることで滴下液を作製し、フラスコ中へ2.5時間かけて滴下液の滴下を行った。そのまま2.0時間、撹拌状態を保持し反応を行った。
その後、温度を室温まで戻し、撹拌状態のイオン交換水(2.7L)へ滴下し、再沈殿を実施し、研濁液を得た。ろ紙を引いたヌッチェにて研濁液を導入することでろ過を行い、濾過物をさらにイオン交換水で洗浄し、湿潤状態の粉体を得た。45℃の送風乾燥にかけ、恒量になったことを確認し、粉体として収率70%でポリマーAを得た。
得られたポリマーAのメタクリル酸/メタクリル酸アリルの比率は76質量%/24質量%であった。重量平均分子量Mwは38000であった。
<感光性フィルム1~16の作製>
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー16KS40、東レ(
株)製)の仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、塗布量を、乾燥後の膜厚が以下の表に記載の厚みになる塗布量に調整し、以下の表に記載の感光性樹脂組成物A-1~A-10のいずれか1種を塗布し、感光性樹脂層を形成した。
100℃の乾燥ゾーンで溶剤を揮発させた後、スリット状ノズルを用いて、以下の表の組み合わせにて、屈折率調整層形成用組成物B-1~B-4のいずれか1種を用いて、塗布量を、乾燥後の膜厚が以下の表に記載の膜厚になる量に調整して感光性樹脂層の上に塗布した後、80℃の乾燥温度で乾燥させ、屈折率調整層を形成した。屈折率調整層の上に保護フィルム(ルミラー16KS40、東レ(株)製)を圧着し、感光性フィルム1~16を作製した。
<厚み分布の評価>
接触式膜厚計(株式会社東京精密、E-ST-100)を用いて、既述の方法に従って感光性フィルムの48か所の厚さを測定し、次いで、各測定位置において、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たすか否かを確認した。感光性フィルムにおいて、上記関係を満たしている測定箇所の割合を求めることで、感光性フィルムの厚み分布を評価した。評価結果を表5に示す。
<外観評価>
ロール状に巻き取られた感光性フィルムを目視で観察することで、感光性フィルムの外観不良の有無を評価した。具体的な評価項目は、巻きズレ、及び変形である。評価結果を表5に示す。
表5において、「厚み分布の評価」の欄に記載された数値は、Tg(x)×(98.8/100)<T(x)<Tg(x)×(101.2/100)の関係を満たしている測定箇所の割合を示す。実施例8~23のいずれも厚み分布は90%以上で、巻きズレ及び変形はなかった。
2020年2月13日に出願された日本国特許出願2020-022546号、2020年10月12日に出願された日本国特許出願2020-172153号及び2020年12月15日に出願された日本国特許出願2020-207810号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。