JP7332000B1 - 絶縁電線および絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外観不具合の発生および絶縁性の低下を抑制しやすい絶縁電線および絶縁電線の製造方法を提供する。【解決手段】長尺状の形状を有する導体20と、導体20の周囲に設けられ、空孔を含む複数の絶縁層33を積層させてなる絶縁被膜30と、が設けられ、絶縁被膜30の最も厚い部分である膜厚部30MAXにおける複数の絶縁層33のそれぞれの膜厚の平均値である第1膜厚と、絶縁被膜30の最も薄い部分である膜薄部30MINにおける複数の絶縁層33のそれぞれの膜厚の平均値である第2膜厚と、の差である膜厚差の値が0.5μm以下である。【選択図】 図10

Description

本発明は、絶縁電線および絶縁電線の製造方法に関する。
例えば、インバータ制御を伴う電気機器に使用される絶縁電線(エナメル線とも表記する。)では、絶縁被膜(エナメル被膜とも表記する。)内に空孔を形成することで、エナメル被膜の比誘電率を低誘電率化する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。空孔における比誘電率(εr)は1.0である。
具体的には、ポリイミド(PIとも表記する。)やポリアミドイミド(PAIとも表記する)からなる樹脂となる樹脂分を含むエナメル塗料に、空孔形成剤を混合した空孔形成用エナメル塗料を用い、該空孔形成用エナメル塗料を焼成(焼付)することによってエナメル被膜内に空孔を形成している。空孔形成剤は、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどの高沸点溶媒である。空孔形成剤は、塗料の樹脂分に対して70phr(per hundred resin)以上混合している。
特許第6730930号公報
空孔を有するエナメル被膜を備えた絶縁電線では、空孔を有しないエナメル被膜を備えた絶縁電線に比べて、エナメル被膜の外観不具合の発生や絶縁性の低下が生じやすいということがあった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、空孔を有する絶縁被膜の外観不具合の発生および絶縁性の低下を抑制しやすい絶縁電線および絶縁電線の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様に係る絶縁電線は、長尺状の形状を有する導体と、前記導体の周囲に設けられ、空孔を含む複数の絶縁層を積層させてなる絶縁被膜と、を備え、前記絶縁被膜の最も厚い部分である膜厚部における前記複数の絶縁層のそれぞれの膜厚の平均値である第1膜厚と、前記絶縁被膜の最も薄い部分である膜薄部における前記複数の絶縁層のそれぞれの膜厚の平均値である第2膜厚と、の差である膜厚差の値が0.5μm以下である。
本発明の第1の態様に係る絶縁電線によれば、膜厚差の値を0.5μm以下とすることにより、空孔を有する絶縁層に偏肉が生じにくくなる。偏肉に基づいて生じる外観不具合の発生および絶縁性の低下を抑制しやすくなる。
本発明の第2の態様に係る絶縁電線の製造方法は、合成前塗料中の樹脂分に対して所定重量部の空孔形成剤を溶剤に加えて攪拌混合したポリアミド酸を含む塗料を、導体の周囲に塗布する第1塗布工程と、前記塗料が塗布された前記導体を第1ダイスの第1貫通孔に挿通して、前記導体の周囲に塗布された前記塗料の厚さを予め定められた所定の厚さとする第1厚さ調整工程と、前記所定の厚さとされた前記塗料を所定温度に加熱して前記塗料中の前記溶剤を除去し、かつ、前記空孔形成剤と前記ポリアミド酸とが相分離した状態で前記塗料に含まれる前記ポリアミド酸をイミド化させるとともに、前記塗料に含まれる前記空孔形成剤を熱分解又は気化させて絶縁層を形成する第1絶縁層形成工程と、を有し、前記樹脂分および空孔形成剤を見かけの不揮発分とし、前記見かけの不揮発分に基づいて前記絶縁層の厚さが定められる。
本発明の第2の態様に係る絶縁電線の製造方法によれば、空孔を有する絶縁膜を形成しても偏肉が生じにくくなる。偏肉に基づいて生じる外観不具合の発生および絶縁性の低下を抑制しやすくなる。
本発明の絶縁電線および絶縁電線の製造方法によれば、空孔を有する絶縁被膜の外観不具合の発生および絶縁性の低下を抑制しやすいという効果を奏する。
本実施形態に係る絶縁電線の構成を説明する横断面視図である。 図1の絶縁被膜における絶縁層の構成を説明する摸式図である。 図1の絶縁電線の製造方法を説明するフローチャートである。 第1厚さ調整工程における塗装塗料の調整を説明する模式図である。 第1ダイス径を決める考え方を説明する模式図である。 第2厚さ調整工程における塗装塗料の調整を説明する模式図である。 絶縁電線の評価を説明する表である。 評価に用いたトリプルコートの絶縁電線の構成を説明する横断面視図である。 評価に用いたダブルコートの絶縁電線の構成を説明する横断面視図である。 図1の絶縁被膜における膜厚差を説明する横断面視図である。
(本発明に至った本発明者らの知見)
空孔形成剤が混合されていないエナメル塗料を導体に塗装する場合、導体の周囲にエナメル塗料を塗装し、塗装されたエナメル塗料を焼成することで、導体の周囲に所望の厚さの絶縁層が形成される。この塗装および焼成を行って1層からなる絶縁層を形成する工程を1パスとし、数パス~数十パスが繰り返されることで、導体の周囲には、複数の絶縁層からなる絶縁被膜が形成されることになる。ここでいうエナメル塗料は、焼成して形成されるエナメル被膜に空孔が形成されない塗料である。
エナメル塗料は、導体または絶縁層が形成された導体(以下、導体等と表記する。)に塗装され、エナメル塗料が塗装された導体等は、塗布されたエナメル塗料を所望の厚みに調整するための塗装ダイス(ダイスとも表記する。)に設けられた孔に通される。導体等に塗装されたエナメル塗料のうち所望の厚みを超える部分は、ダイスにより取り除かれる。ダイスを通った導体等には、所望の厚みのエナメル塗料が残る。
ダイスに設けられた孔の径(ダイス径とも表記する。)は、各パスにおける絶縁層の厚さがほぼ同じ厚さになるように決められている。具体的には、エナメル塗料に含まれる樹脂などの不揮発分の割合に基づいてダイス径が決められている。
しかし、エナメル塗料に空孔形成剤を含む空孔形成用エナメル塗料の場合では、エナメル塗料の場合と同様に、樹脂などの不揮発分の割合に基づいてダイス径を決めると、次に説明する不具合が生じていた。
空孔形成用エナメル塗料を用いた場合では、焼成時に空孔形成剤が熱分解や気化することによって絶縁層内に空孔が形成される。空孔形成用エナメル塗料を用いて絶縁層を形成した場合では、空孔を形成しないエナメル塗料を用いて絶縁層を形成した場合と比較して、絶縁層が厚膜化する。絶縁層が厚膜化すると、最外層に位置する絶縁層までの外径と次の絶縁層を形成するために使用されるダイスのダイス径との差である間隔が、設計値よりも狭くなる。
つまり、次に塗装される空孔形成用エナメル塗料の塗装厚が設計値よりも薄くなる。そのため、空孔形成用エナメル塗料を用いて形成した絶縁被膜では、絶縁被膜の厚さ方向に沿って、隣接する絶縁層同士の厚さが同じにならない(設計値として所望する厚さにならない)という不具合が生じることを発見した。
また、絶縁層の厚膜化により、最外層に位置する絶縁層までの外径と次の絶縁層を形成するために使用されるダイスのダイス径との差である間隔が設計値よりも狭くなることで、同一のパス内でも絶縁層の厚さに大小が生じる(「偏肉が生じる」とも表記する。)という不具合が生じることを発見した。
この不具合は、塗装された空孔形成用エナメル塗料が焼成炉内で焼成される際に、空孔形成用エナメル塗料の周囲から加熱されるため、該塗料の外周部分がその内周部分よりも先に焼成されて固化し、該塗料の内周部分に揮散されなかった溶剤が残留する傾向があるために生じると考えられる。残留した溶剤は、焼成によって加熱されることで体積膨張を起こし、絶縁被膜の内部にボイドを形成する。
空孔形成用エナメル塗料では、焼成時に加えられる熱エネルギーが空孔形成剤による空孔の形成にも使用される。言い換えると、空孔形成用エナメル塗料では、焼成時に溶剤の揮散に用いられる熱エネルギーが不足しやすくなる。そのため、空孔形成用エナメル塗料を用いて形成された絶縁層では、空孔を形成しないエナメル塗料を用いて形成された絶縁層と比べて、絶縁層内にボイドが形成されやすくなる。
そして、絶縁層内にボイドが形成されると、導体の周囲に複数の絶縁層で構成される絶縁被膜が形成されたときに、エナメル線に外観不具合が発生しやすいことを見出した。また、絶縁層内に形成されたボイド内で放電が起こるため、エナメル線の絶縁性が低下することも見出した。
本発明は、上述した知見に基づいてなされたものである。
この発明の一実施形態に係る絶縁電線10および絶縁電線10の製造方法について、図1から図10参照しながら説明する。本実施形態では絶縁電線10がエナメル線、具体的にはモータの巻線に用いられるエナメル線である例に適用して説明する。より具体的には、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(EV:Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの電動自動車の駆動モータの巻線に用いられるエナメル線である例に適用して説明する。
図1は、本実施形態の絶縁電線10の構成を説明する横断面視図である。図1に示すように、絶縁電線10には導体20と、空孔35を含む絶縁被膜30と、が設けられている。
導体20は、長尺状に延びるとともに、円形の断面形状を有する部材である。本実施形態では、導体20が、直径約0.8mmの丸銅線である例に適用して説明する。なお、導体20の断面形状は、円形であってもよいし、矩形であってもよく、具体的な形状に限定されない。
導体20は、電線として一般的に用いられる金属材料を用いて形成される。導体20の形成に用いられる金属材料としては、銅、銅を含む合金、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金を例示することができる。本実施形態では、導体20が、酸素含有量が30ppm以下の低酸素銅、又は無酸素銅を用いて形成された例に適用して説明する。
絶縁被膜30は、導体20の周囲を覆う部材である。絶縁被膜30は絶縁性および熱硬化性を有する材料(すなわち、絶縁性材料)を用いて形成されている。絶縁性および熱硬化性を有する材料としては、ポリイミドや、ポリアミドイミドを例示することができる。
本実施形態では、絶縁被膜30が全芳香族ポリイミド(以降、単にポリイミドとも表記する。)から形成されている例に適用して説明する。なお、絶縁被膜30を形成する具体的な方法は後述する。
絶縁被膜30は、複数の絶縁層33が積層されることによって構成される。本実施形態では、絶縁被膜30が12層の絶縁層33によって構成され、絶縁被膜30の膜厚が約40μmである。
なお、絶縁被膜30の膜厚は40μmよりも厚くても良いし、薄くても良い。例えば、絶縁被膜30の膜厚は、10μm以上200μm以下の範囲の値でもよい。また、絶縁被膜30を構成する絶縁層33の層数は、12層よりも多くても良いし、12層よりも少なくても良い。
複数の絶縁層33は、図2に示すように、最下層となる絶縁層33が導体20の外周面に隣接した状態で積層され、導体20の周囲を覆う層である。絶縁層33には、複数の空孔35が含まれている。絶縁層33に複数の空孔35を含ませることより、絶縁被膜30の比誘電率を低減しやすくなる。
空孔35は、内部に気体が含まれた空間である。気体には、空気、後述する熱分解性ポリマや高沸点溶媒からなる空孔形成剤が熱分解や気化されて発生する気体なども含まれる。なお、空孔35の内部に含まれる気体は、大部分が空気と考えられる。
次に、上述の絶縁電線10の製造方法について図3を参照しながら説明する。具体的には、絶縁電線10における絶縁被膜30の製造方法を説明する。図3は、絶縁電線10の製造方法を説明するフローチャートである。
まず、絶縁電線10の絶縁被膜30を形成する塗料を調製するための塗料調製工程が行われる(S11)。具体的には、まず、ポリアミド酸を溶剤中で攪拌合成する工程が行われる。攪拌合成前の塗料(合成前塗料とも表記する。)には、溶剤中にジアミンとテトラカルボン酸二無水物とで構成される樹脂分としてのポリイミドモノマが含まれている。次に、当該合成前塗料の樹脂分に対して所定重量部の割合で熱分解性ポリマからなる空孔形成剤を加えたあと、合成前塗料中のポリイミドモノマを溶剤中で攪拌混合してポリアミド酸を含む塗料(=空孔形成用エナメル塗料)を得る工程が行われる。空孔形成剤は、焼成時に塗料内で熱分解や気化などすることによって絶縁被膜30内に空孔を形成するものである。
本発明における塗料では、空孔形成剤が樹脂分と同様の不揮発分としてみなされ、樹脂分と空孔形成剤とが見かけの不揮発分とされる。塗料の調製では、導体20の周囲に形成される絶縁層33の厚さが樹脂分と空孔形成剤とからなる見かけの不揮発分に基づいて定められるように、塗料に含まれる溶剤と樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの含有割合が定められる。
熱分解性ポリマからなる空孔形成剤は、攪拌合成前の塗料中の樹脂分に対して例えば10重量部(phr:per hundred resin)以上60重量部以下(所定重量部に相当する。)加えられる。本実施形態では、40重量部の空孔形成剤が加えられる。空孔形成剤は、熱分解性ポリマではなく、高沸点溶媒であってもよい。
ポリアミド酸は、絶縁被膜30を構成する絶縁性材料であるポリイミドの前駆体である。ポリアミド酸としては、公知の絶縁電線の製造で使用される種類のものを用いることができ、具体的な種類を特定するものではない。
本実施形態では、ポリアミド酸がジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合して得られたものである例に適用して説明する。
ジアミンとしては、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)などを用いることができる。なお、本実施形態の絶縁電線10では、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルと、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルと、をジアミンとして用いた全芳香族ポリイミドからなる絶縁被膜30を形成した。
テトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などを用いることができる。なお、本実施形態の絶縁電線10では、ピロメリット酸二無水物と、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、テトラカルボン酸二無水物として用いた全芳香族ポリイミドからなる絶縁被膜30を形成した。
なお、上述のポリアミド酸をイミド化した絶縁被膜30を構成するポリイミドは、高分子の末端部分がキャッピングされたものであってもよい。キャッピングに用いられる材料としては、無水酸を含む化合物、又はアミノ基を含む化合物を用いてもよい。
キャッピングに用いられる無水酸を含む化合物としては、フタル酸無水物、4-メチルフタル酸無水物、3-メチルフタル酸無水物、1,2-ナフタル酸無水物マレイン酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、各種フッ素化フタル酸無水物、各種ブロム化フタル酸無水物、各種クロル化フタル酸無水物、2,3-アントラセンジカルボン酸無水物、4-エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物などを用いることができる。
キャッピングに用いられるアミノ基を含む化合物としては、アミノ基を1つ含む化合物を用いてもよい。
溶剤としては、NMP(N-メチルピロリドン)、DMAc(ジメチルアセトアミド)などを用いることができる。本実施形態では、DMAcが溶剤として用いられる例に適用して説明する。
空孔形成剤に用いる熱分解性ポリマとしては、例えば、ポリプロピレングリコールなどを用いることができる。本実施形態では、分子量が400のジオール型ポリプロピレングリコール(PPG400とも表記する。)が熱分解性ポリマとして用いられる例に適用して説明する。
空孔形成剤に用いる高沸点溶媒としては、沸点が260℃以上のものを用いることができる。例えば、オレイルアルコール,1-テトラデカノール,1-ドデカノールなどを用いることができる。空孔形成剤に用いる高沸点溶媒として、1-テトラデカノール,1-ドデカノールを用いた場合は、絶縁皮膜30(あるいは絶縁層33)に形成される空孔35の大きさを大きくしやすいため、熱分解性ポリマの場合と比べて塗料に対する空孔形成剤の含有量を少なくしつつ、絶縁皮膜30(あるいは絶縁層33)における空孔率を高めやすくすることができる。
次に、塗料調製工程S11で調製した塗料を導体20の周囲に塗布する第1塗布工程が行われる(S12)。具体的には、導体20の外周面に隣接する絶縁層33を形成する塗料を塗布する作業が行われる。塗料を塗布して得られる塗装塗料が導体20の外周面に隣接した状態で形成される。
導体20の外周面に隣接した状態で塗装塗料が形成されると、塗装塗料の厚さを調整する第1厚さ調整工程が行われる(S13)。第1厚さ調整工程S13では、第1ダイス51を用いて導体20の周囲に形成された塗装塗料が所定の厚さに調整される。
図4は、第1厚さ調整工程S13における塗装塗料の厚さの調整を説明する模式図である。第1塗布工程S12において、導体20周囲に形成された塗装塗料の厚さは、第1厚さ調整工程S13後の所定の厚さよりも厚い。言い換えると、第1ダイス51を通過する前の塗装塗料の厚さは、通過した後の厚さよりも厚い。
第1ダイス51には、周囲に塗装塗料が形成された導体20が挿通される第1貫通孔51Hが形成されている。第1貫通孔51Hの内面は、導体20が挿通される方向における入口から出口に向かって径が小さくなる円錐形状を有している。
導体20の周囲に塗料からなる塗装塗料を形成した後に、当該導体20が第1ダイス51の第1貫通孔51Hに挿通される。第1貫通孔51Hにより塗装塗料の外周部分の一部が除去され、第1貫通孔51Hの直径に応じた厚さの塗装塗料が導体20の周囲に残る。
第1貫通孔51Hにおける導体20の出口側の端部の直径を第1ダイス径51Dと表記する。また、導体20の直径を第1線径21Dと表記する。
第1ダイス径51Dの大きさは、第1厚さ調整工程S13後の所定の厚さと、第1線径21Dと、に基づいて定められる。
図5は、第1ダイス径51Dの大きさを決める考え方を説明する模式図である。第1ダイス径51Dと第1線径21Dとの差の1/2である第1ダイスギャップ51Gの値は、第1ダイス51を通過した後の塗装塗料の厚さ(=所定の厚さ)であって、該厚さの塗装塗料に含まれる溶剤、樹脂分および空孔形成剤のそれぞれの体積の和によって定められる。そして、これらの体積の割合は、焼成後に形成される絶縁層33の膜厚33Tが見かけの不揮発分である樹脂分および空孔形成剤のそれぞれの体積の和によって定められるように、調整される。
例えば、第1ダイス51を通過した後の塗装塗料が所定の厚さを有する場合、次工程である第1絶縁層形成工程において、所定の厚さの塗装塗料を焼成して加熱したときに、該塗装塗料に含まれる溶剤が揮発することで溶剤が除去され、見かけの不揮発分として該塗装塗料に含まれる樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積を合計した体積分に基づいて、膜厚33T(例えば、約3μm)の絶縁層33が形成される。
このように、塗装塗料の所定の厚さ(=第1ダイスギャップ51Gの値)は、溶剤と樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積の和によって定められ、絶縁層33の膜厚33Tは、見かけの不揮発分である樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積の和によって定められる。
次に、図3に示すように、導体20の周囲に形成された塗装塗料を焼成炉で加熱して、絶縁層33を形成する第1絶縁層形成工程が行われる(S14)。具体的には、周囲に塗装塗料が形成された導体20が、300℃から500℃の範囲に保たれた焼成炉内に入れられる。
焼成炉内では、高温により溶剤が塗装塗料から除去される。その後、熱分解性ポリマとポリアミド酸とが相分離した状態で塗装塗料に含まれるポリアミド酸のイミド化反応が進み、絶縁層33が形成される。ポリアミド酸のイミド化反応と同時に、空孔形成剤である熱分解性ポリマが熱分解され、絶縁層33に空孔35が形成される。
次に、塗料調製工程S11で調製した塗料を、導体20の周囲に形成された絶縁層33の周囲に塗布する第2塗布工程が行われる(S15)。具体的には、新たな塗料を、導体20の周囲に形成された絶縁層33の外周面に塗布する作業が行われる。この作業により、導体20の周囲に形成された絶縁層33の外周面に塗装塗料が形成される。
絶縁層33の外周面に塗装塗料が形成されると、塗装塗料の厚さを調整する第2厚さ調整工程が行われる(S16)。第2厚さ調整工程S16では、第2ダイス52を用いて絶縁層33の周囲に形成された塗装塗料の厚さが所定の厚さに調整される。
図6は、第2厚さ調整工程S16における塗装塗料の調整を説明する模式図である。第2厚さ調整工程S16において、絶縁層33の周囲に形成された塗装塗料の厚さは、第2厚さ調整工程S16後の所定の厚さよりも厚い。言い換えると、第2ダイス52を通過する前の塗装塗料の厚さは、第2ダイス52を通過した後の厚さよりも厚い。
第2ダイス52には、周囲に塗装塗料が形成された導体20および絶縁層33が挿通される第2貫通孔52Hが形成されている。第2貫通孔52Hの内面は、導体20および絶縁層33が挿通される方向における入口から出口に向かって径が小さくなる円錐形状を有している。
導体20および絶縁層33の周囲に塗料からなる塗装塗料を形成した後に、当該導体20および絶縁層33が第2ダイス52の第2貫通孔52Hに挿通される。第2貫通孔52Hにより塗装塗料の外周部分の一部が除去され、第2貫通孔52Hの直径に応じた厚さの塗装塗料が導体20および絶縁層33の周囲に残る。
第2貫通孔52Hにおける導体20および絶縁層33の出口側の端部の直径を第2ダイス径52Dと表記する。また、導体20の周囲に形成された絶縁層33までの直径を第2線径22Dと表記する。
第2ダイス径52Dの大きさは、第1ダイス径51Dと同様に、第2厚さ調整工程S16後の所定の厚さと、第2線径22Dと、に基づいて定められる。
第2ダイス径52Dと第2線径22Dとの差の1/2である第2ダイスギャップ52Gの値は、第2ダイス52を通過した後の塗装塗料の厚さ(=所定の厚さ)であって、該厚さの塗装塗料に含まれる溶剤、樹脂分および空孔形成剤のそれぞれの体積の和によって定められる。そして、これらの体積の割合は、焼成後に形成される絶縁層33の膜厚33Tが見かけの不揮発分である樹脂分および空孔形成剤のそれぞれの体積の和によって定められるように、調整される。
例えば、第2ダイス52を通過した後の塗装塗料が所定の厚さを有する場合、次工程である第2絶縁層形成工程S17において、所定の厚さの塗装塗料を焼成して加熱したときに、該塗装塗料に含まれる溶剤が揮発することで溶剤が除去され、見かけの不揮発分として該塗装塗料に含まれる樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積を合計した体積分に基づいて、膜厚33T(例えば、約3μm)の絶縁層33が形成される。
このように、塗装塗料の所定の厚さ(=第2ダイスギャップ52Gの値)は、溶剤と樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積の和によって定められ、絶縁層33の膜厚33Tは、見かけの不揮発分である樹脂分と空孔形成剤とのそれぞれの体積の和によって定められる。
次に、図3に示すように、導体20および絶縁層33の周囲に形成された塗装塗料を焼成炉で加熱して、絶縁層33を形成する第2絶縁層形成工程が行われる(S17)。第2絶縁層形成工程S17における詳細は、第1絶縁層形成工程S14と同様であるため、その説明を省略する。
絶縁層33が12層形成されていない場合(S18のNOの場合)には、再び上述の第2塗布工程S15に戻り、絶縁層33を形成する工程が繰り返される。第2塗布工程S15から第2絶縁層形成工程S17が繰り返される回数に応じて、導体20の周囲に形成された絶縁層33の層数が増える。第2厚さ調整工程S16では、導体20の周囲に形成された絶縁層33の層数に応じたダイス径を有するダイスが使用される。第1ダイス51、第2ダイス52などが使用される順序をダイス配列とも表記する。
絶縁層33が12層形成されている場合(S18のYESの場合)には、導体20の周囲に12層の絶縁層33で構成される絶縁被膜30を形成する工程が終了する。
次に、本実施形態の絶縁電線10の評価について図7を参照しながら説明する。評価には、絶縁被膜30が図1に示す被膜構造(シングルまたはシングルコートとも表記する。)と、図8に示す被膜構造(トリプルまたはトリプルコートとも表記する。)と、図9に示す被膜構造(ダブルまたはダブルコートとも表記する。)を有する絶縁電線10を用いる。
なお、絶縁被膜を構成する複数の絶縁層が同一の絶縁性材料で形成されている場合は、該複数の絶縁層で構成される1つの絶縁被膜として定義される。また、同一の絶縁性材料からなる複数の絶縁層のうち、空孔形成剤の有無,空孔形成剤の種類または空孔形成剤の含有量が異なる塗料を用いて形成された絶縁層同士は、異なる絶縁層として定義される。また、絶縁被膜が複数の異なる塗料を用いて形成された複数の異なる絶縁層で構成される場合は、同一の塗料を用いて形成された絶縁層ごとに1つのユニットとみなし、該ユニットごとに例えば、導体側から絶縁被膜の外面側にかけて、内層および外層(=ダブル)、あるいは内層,中間層および外層(=トリプル)などとする。
このとき、内層および外層が同一の絶縁層で形成されている場合であっても、それらの間に異なる絶縁層で形成された異なるユニットが存在する場合は、内層および外層を異なるユニットとみなす。
本評価に用いた実施例1および実施例2は、図1に示す構造を有する絶縁電線10である。実施例3および実施例4は、図8に示す構造を有する絶縁電線10である。実施例5は、図9に示す構造を有する絶縁電線10である。
図8に示す絶縁電線10の絶縁被膜30は、内層30ATと、中間層30BTと、外層30CTと、を有する。内層30ATは2層の絶縁層33から構成され、中間層30BTは8層の絶縁層33から構成され、外層30CTは2層の絶縁層33から構成されている。
内層30ATおよび外層30CTの絶縁層33は、図1に示す絶縁電線10の絶縁被膜30を形成する塗料と同じ塗料を用いて形成されている。中間層30BTの絶縁層33は、25重量部の空孔形成剤が加えられた点のみが異なる塗料を用いて形成されている(中間層30BTを構成する絶縁層33は、空孔形成剤として沸点が260℃以上の高沸点溶媒である1-テトラデカノールを用い、樹脂分や溶剤として絶縁電線10の絶縁被膜30を形成する塗料と同じ樹脂分や溶剤を用いた塗料で形成されたものである。)。
図9に示す絶縁電線10の絶縁被膜30は、内層30ADと、外層30CDと、を有する。内層30ADは2層の絶縁層から構成され、外層30CDは9層の絶縁層33から構成されている。
外層30CDの絶縁層33は、図8に示す絶縁電線10の中間層30BTの絶縁層33を形成する塗料と空孔形成剤の含有量のみが異なる塗料を用いて形成されている。内層30ADの絶縁層は、外層30CDの絶縁層33を形成する塗料と空孔形成剤が加えられていない点のみが異なる塗料を用いて形成されている。
上述の実施例1から実施例5に対する比較対象の比較例1から比較例5について説明する。比較例1から比較例5は、実施例1から実施例5と比較して、製造の際に用いられるダイスが異なる。その他の絶縁被膜における被膜構造や、被膜構造を形成する塗料の成分は同じである。
比較例1から比較例5の製造に用いられたダイスでは、ダイスギャップの値を定める際に、塗料に含まれる見かけの不揮発分としての樹脂分および空孔形成剤の体積割合ではなく、塗料に含まれる不揮発分としての樹脂分の体積割合が用いられている。つまり、空孔形成剤が含まれていない点が実施例1から実施例5に用いられたダイスと異なる。比較例1から比較例5の製造に用いられる複数のダイスの使用順序を従来のダイス配列とも表記する。
図7に戻り、空孔率(%)について説明する。空孔率(%)は次の式を用いて算出した。
空孔率(%)={(ρ1-ρ2)/ρ1}×100
ここでρ1は空孔35が無い絶縁被膜30の比重であり、ρ2は空孔35が有る絶縁被膜30の比重である。
絶縁被膜30における比重(ρPI)は、次の式により算出する。
ρPI = WPI/{(W絶縁電線/ρ絶縁電線)-(W導体/ρ導体)}
絶縁電線の重量(W絶縁電線)と比重(ρ絶縁電線)を測定後、絶縁被膜を300℃の水酸化ナトリウムで除去し、得られた導体の重量(W導体)と比重(ρ導体)を測定した。
算出した空孔率(%)は次の通りであった、比較例1は20.8%、比較例2は24.8%、比較例3は25.6%、比較例4は27.8%、比較例5は35.7%であった。実施例1は27.1%、実施例2は26.8%、実施例3は24.8%、実施例4は28.6%、実施例5は43.7%であった。
測定した比誘電率(εr)は次の通りであった。比較例1は2.47、比較例2は2.72、比較例3は2.36、比較例4は2.31、比較例5は2.09であった。実施例1は2.38、実施例2は3.24、実施例3は2.23、実施例4は2.17、実施例5は1.80であった。
次に、絶縁電線10における膜厚差の評価について説明する。図10は、絶縁被膜30における膜厚差を説明する横断面視図である。絶縁被膜30には、最も厚い部分である膜厚部30MAXと、最も薄い部分である膜薄部30MINと、が形成される。膜厚部30MAXおよび膜薄部30MINは、次に説明する方法により定められる。
ここで説明する方法では、株式会社キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-6000、大型フリーアングル観察システムVHX-S660、スイングヘッドズームレンズVH-ZSTが使用され、観察光を「ミックス」モードに設定して観察が行われる。
まず、絶縁被膜30における所望の位置である第1位置の厚さを測定する。次に、絶縁電線10の中心に対して、第1位置から位相が10°異なる第2位置の厚さを測定する。更に、第2位置から位相が10°異なる第3位置の厚さを測定する。この厚さの測定を絶縁被膜30の全周に対して行う。
言い換えると、絶縁被膜30の第1位置から第36位置までの厚さを測定する。第1位置から第36位置までのうち、厚さが最も厚い位置を膜厚部30MAXとし、最も薄い位置を膜薄部30MINと定める。膜厚部30MAXと膜薄部30MINとの配置関係は、図3に示すように180°異なる配置関係であってもよいし、180°以外の配置関係であってもよい。
また、絶縁被膜30の厚さを測定する複数の位置は、隣接する位置の位相が10°異なっていてもよいし、10°よりも小さな位相だけ異なっていてもよいし、10°よりも大きな位相だけ異なっていてもよい。
次に、膜厚部30MAXにおける全ての絶縁層33のそれぞれの膜厚を測定する。測定した全ての膜厚の平均値である第1膜厚を算出する。同様に、膜薄部30MINにおける全ての絶縁層33のそれぞれの膜厚を測定する。測定した全ての膜厚の平均値である第2膜厚を算出する。そして、第1膜厚と第2膜厚の差である膜厚差を算出する。膜厚差は値が小さいほど膜厚部30MAXの厚さと、膜薄部30MINの厚さとの違いが小さい(偏肉が小さいとも表記する。)ことを示す。
測定した膜厚差(μm)は次の通りであった、比較例1は0.7(μm)、比較例2は0.8(μm)、比較例3は0.8(μm)、比較例4は0.9(μm)、比較例5は1.0(μm)であった。実施例1は0.4(μm)、実施例2は0.5(μm)、実施例3は0.2(μm)、実施例4は0.4(μm)、実施例5は0.1(μm)であった。実施例1から実施例5までの膜厚差は0.5μm以下であった。
次に、絶縁電線10における偏肉率の評価について説明する。
偏肉率は日本自動車技術会規格のJASO D 625で定められた方法で求められる値である。具体的には、(b/a)×100により求められる値(%)である。ここで、aは膜厚部30MAXの厚さであり、bは膜薄部30MINの厚さである。偏肉率(%)は値が大きいほど膜厚部30MAXの厚さと、膜薄部30MINの厚さとの違いが小さい(偏肉が小さいとも表記する。)ことを示す。
測定した偏肉率(%)は次の通りであった、比較例1は70.8(%)、比較例2は74.8(%)、比較例3は81.6(%)、比較例4は84.3(%)、比較例5は85.3(%)であった。実施例1は88.2(%)、実施例2は86.8(%)、実施例3は87.3(%)、実施例4は85.4(%)、実施例5は96.7(%)であった。実施例1から実施例5までの偏肉率は85(%)以上であった。
次に、絶縁電線10における絶縁性の評価について説明する。絶縁電線10における絶縁性は、絶縁被膜30における絶縁破壊電圧を絶縁被膜30の膜厚で除した値である絶縁破壊の強さに基づいて評価した。絶縁破壊の強さが167V/μm以上の場合を良好(〇)と評価し、167V/μm未満の場合を不良(×)と評価した。
評価の結果は次の通りであった。比較例1は良好(〇)、比較例2は不良(×)、比較例3は不良(×)、比較例4は不良(×)、比較例5は不良(×)であった。実施例1は良好(〇)、実施例2は良好(〇)、実施例3は良好(〇)、実施例4は良好(〇)、実施例5は良好(〇)であった。
次に、絶縁電線10における外観の評価について説明する。絶縁電線10における外観は、絶縁被膜30の外周面から100μm以上突出する凸部が、長さ200mの範囲内でいくつ存在するかで評価した。凸部が3ヶ所以下の場合を良好(〇)と評価し、3ヶ所を超える場合を不良(×)と評価した。
評価の結果は次の通りであった。比較例1は不良(×)、比較例2は不良(×)、比較例3は良好(〇)、比較例4は不良(×)、比較例5は良好(〇)であった。実施例1は良好(〇)、実施例2は良好(〇)、実施例3は良好(〇)、実施例4は良好(〇)、実施例5は良好(〇)であった。
次に、本実施形態の絶縁電線10の評価についてまとめると次の通りとなる。
実施例1から実施例5の膜厚差は0.5μm以下であった。偏肉率は85(%)以上であった。実施例1から実施例5の全てが絶縁性および外観ともに良好(○)と評価された。
これに対して比較例1から比較例5の膜厚差は0.5μmを超えていた。比較例5を除いた比較例1から比較例4の偏肉率は85(%)未満であった。絶縁性および外観ともに良好(○)と評価された比較例はなかった。
上記の構成に係る絶縁電線10および絶縁電線10の製造方法によれば、膜厚差の値を0.5μm以下とすることにより、空孔35を有する絶縁層33に偏肉が生じにくくなる。また、偏肉率の値を85(%)以上とすることにより、空孔35を有する絶縁層33に偏肉が生じにくくなる。
例えば、偏肉により絶縁層33の厚さが大きくなる部分が生じにくくなる。厚さが大きくなる部分はボイドが形成されやすい部分であり、厚さが大きくなる部分が生じにくくなると、ボイドが形成され難くなる。また、絶縁破壊の強さの値が167V/μm以上を満たしやすくなる。絶縁被膜30の外周面から100μm以上突出する凸部を、長さ200mの範囲内で3ヶ所以下に抑制しやすくなる。
凸部の数を3ヶ所以下とすることにより、例えば1ヶ所以下や2ヶ所以下とした場合と比較して、外観が不良(×)と評価される絶縁電線10の割合が低下しやすい。言い換えると、絶縁電線10を生産する際の歩留りの低下を抑制しやすい。また、4ヶ所や5ヶ所とした場合と比較して、良好(○)と評価された絶縁電線10の外観悪化を抑制しやすい。
空孔35の形成による絶縁層33の厚さ増大を考慮したダイス配列とすることで、全ての層においてダイスと絶縁層33の間隔(ダイスギャップ)を適正に維持し、絶縁層33の偏肉を抑制することができる。偏肉を抑制することで膜厚部30MAXなどによるボイドの形成を阻止することが可能となり、ボイドによる外観不具合や、絶縁性低下を防ぐことが可能となる。つまり、外観および絶縁性に優れる絶縁被膜30の塗装が可能となる。
そのため、低誘電率であり、かつ外観や絶縁性が良好な絶縁被膜30を有する絶縁電線10とすることができる。
10…絶縁電線、 20…導体、 30…絶縁被膜、 33…絶縁層、 35…空孔、 30MAX…膜厚部、 30MIN…膜薄部、 S12…第1塗布工程、 S13…第1厚さ調整工程、 S14…第1絶縁層形成工程、 S15…第2塗布工程、 S16…第2厚さ調整工程、 S17…第2絶縁層形成工程

Claims (5)

  1. 長尺状の形状を有する導体と、
    前記導体の周囲に設けられ、空孔を含む複数の絶縁層を積層させてなる絶縁被膜と、
    を備え、
    前記絶縁被膜は、前記絶縁被膜の外周面から100μm以上突出する凸部が存在しない長手方向の所定の位置において、前記絶縁被膜の最も厚い部分である膜厚部における前記複数の絶縁層のそれぞれの膜厚の平均値である第1膜厚と、前記絶縁被膜の最も薄い部分である膜薄部における前記複数の絶縁層のそれぞれの膜厚の平均値である第2膜厚と、の差である膜厚差の値が0.5μm以下であり、前記膜厚部の厚さをa、前記膜薄部の厚さをbとした場合に、(b/a)×100により求められる偏肉率の値が85.4%以上である、絶縁電線。
  2. 請求項に記載の絶縁電線であって、
    前記凸部が、長さ200mの範囲内で3ヶ所以下である絶縁電線。
  3. 合成前塗料中の樹脂分に対して所定重量部の空孔形成剤を溶剤に加えて攪拌混合したポリアミド酸を含む塗料を、導体の周囲に塗布する第1塗布工程と、
    前記塗料が塗布された前記導体を第1ダイスの第1貫通孔に挿通して、前記導体の周囲に塗布された前記塗料の厚さを予め定められた所定の厚さとする第1厚さ調整工程と、
    前記所定の厚さとされた前記塗料を所定温度に加熱して前記塗料中の前記溶剤を除去し、かつ、前記空孔形成剤と前記ポリアミド酸とが相分離した状態で前記塗料に含まれる前記ポリアミド酸をイミド化させるとともに、前記塗料に含まれる前記空孔形成剤を熱分解又は気化させて絶縁層を形成する第1絶縁層形成工程と、を有し、
    前記樹脂分および空孔形成剤を見かけの不揮発分とし、前記見かけの不揮発分に基づいて前記絶縁層の厚さが定められる、絶縁電線の製造方法。
  4. 請求項に記載の絶縁電線の製造方法であって、
    前記第1厚さ調整工程では、前記塗料の体積に対する前記塗料に含まれる前記樹脂分の体積および前記空孔形成剤の体積の和に基づいて、前記所定の厚さが定められた絶縁電線の製造方法。
  5. 請求項またはに記載の絶縁電線の製造方法であって、
    前記絶縁層を有する前記導体の周囲に前記塗料を塗布する第2塗布工程と、
    前記塗料が塗布された前記絶縁層を有する前記導体を、前記第1貫通孔よりも大きな第2貫通孔を有する第2ダイスに挿通して、前記絶縁層を有する前記導体の周囲に塗布された前記塗料の厚さを予め定められた前記所定の厚さとする第2厚さ調整工程と、
    前記所定の厚さとされた前記塗料を所定温度に加熱して前記塗料中の前記溶剤を除去し、かつ、前記空孔形成剤と前記ポリアミド酸とが相分離した状態で前記塗料に含まれる前記ポリアミド酸をイミド化させるとともに、前記塗料に含まれる前記空孔形成剤を熱分解又は気化させて前記絶縁層を更に形成する第2絶縁層形成工程と、
    を更に有する絶縁電線の製造方法。
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