以下、図1~図27に基づいて、本発明の実施形態である全館空調システム100,200,300,400について説明する。
初めに、図1~図15に基づいて全館空調システム100について説明する。なお、図1,図2は、本発明の実施形態である全館空調システム100の概略構成を示しており、図3~図5は全館空調システム100を備えた実際の建物H1を示しているが、共通する構造や共通する機能を有する部材については同じ符号を付している部分がある。また、図3,図4中において網目を付している領域は下部天井11c,12cを表している。
一般に、建物の空調システムの温度設定は空調機が存在する部屋の室温で決まるので、空調機を各部屋に設置すると、建物全体が空調される前に、空調機が設置されている部屋の設定温度になってしまう結果、建物全体が適切な温度にならず、所謂、空調が効き難い状態となる。そこで、本実施形態の全館空調システム100においては、空調機10,20をそれぞれ1台ずつ各階の共用部分11,12に配置している。
具体的には、全館空調システム100の場合、建物H1内に設けられた複数の領域について居住者の滞在時間が短いと想定される領域を上位とする優先度を設定し、優先度が上位にある領域として共用部分11,12を選択し、(居室以外である)共用部分11,12の天井面より低い位置に形成された下部天井11c,12cの上方の天井裏空間11a,12a内に空調機10,20を配置している。
前述したように、建物H1内の複数の領域について居住者の滞在時間が短いと想定される領域を上位とする優先度を設定したとき、優先度が上位にある領域として選択したのが共用部分11,12であるが、換言すると、共用部分11,12は、この領域から他の領域(少なくとも一部が壁体によって区画された部分であって他の領域への出入口を有する部分)へ人間が直接移動することができる領域でもある。即ち、図3に示すように、共用部分11は建物H1内の1階部分において他の領域への出入口を最も多く有する領域であり、図4に示すように、共用部分12は建物H1の2階部分において他の領域への出入口を最も多く有する領域である。
図1,図2に示すように、本実施形態に係る全館空調システム100は、建物H1の1階、2階の共用部分11,12の下部天井11c,12cにそれぞれ配置された空調機10,20と、建物H1の床下空間13に配置された換気装置30と、空調機10,20から送給される空調空気を建物H1内へ供給するため建物H1内の居室である各部屋R11,R12,R21,R22にそれぞれ設けられた給気口であるライン形の吹出口14,14,14,14と、床下空間13を経由して建物H1内の空気を排出するため建物H1内の1階の床面F1及び共用部分11の床面F11に設けられた排気口15,15,15と、を備えている。建物H1の外部には室外機21が配置されている。また、建物H1の2階部分の上方の小屋裏空間40には収納室29や中間ダクトファン41などが設けられている。
全館空調システム100の場合、前述した優先度とは逆に、建物H1内の複数の領域について、居住者の滞在時間が長いと想定される領域を上位とする優先度を設定し、優先度が上位にある領域から順番に選択した領域である部屋R11,R12,R21,R22内にそれぞれ吹出口14を配置している。具体的には、建物H1内の複数の領域(居室、非居室である共用部分などを含む)の居住者の滞在時間、用途優先度、面積に応じて優先度係数を設定し、優先度係数が大である(上位にある)領域から順番に選択して優先的に吹出口14を配置している。
また、図3に示すように、居住者の滞在時間が長いと想定される領域を上位とする優先度と領域の規模(容積)との関係から必要風量を算出した結果に基づいて、LDKには、2台の吹出口14,14並びに分岐吹出口14sが設置され、玄関ホール47には分岐吹出口14sが設置されている。
空調機10には3本のダクト23,23,23が接続され、これらのうちの2本のダクト23,23の下流側がそれぞれ吹出口14,14に接続され、残りの1本のダクト23の下流側は2本の分岐ダクト23s,23sに分かれ、分岐ダクト23s,23sの下流側がそれぞれ分岐吹出口14s,14sに接続されている。吹出口14と分岐吹出口14sとは同じサイズ、構造及び機能を有している。
図4,図5に示すように、空調機20には3本のダクト23,23,23が接続され、これらのうちの2本のダクト23,23の下流側がそれぞれ部屋R21,R22に設置された吹出口14,14に接続されている。残りの1本のダクト23の下流側は2本の分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は部屋R23の分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は収納室29の分岐吹出口14tに接続されている。
ダクト23から二つに分かれたれた分岐ダクト23sの風量は元のダクト23の風量の半分になるので、居住者の滞在時間が長いと想定される部分を優先的に空調しながら、居住者の滞在が短いと想定される部分への空調空気の供給を抑制することが可能となり、空調効率の向上及び空調エネルギの削減に有効である。また、領域の規模(容積)が小さく、空調負荷の低い部分に適度な空調空気を供給することができ、建物H1内の温度分布を均一化することができる。
また、ダクト23に接続された吹出口14並びに分岐ダクト23sに接続された分岐吹出口14s,14tを、前記優先度係数に基づいて選択的に設置することにより、空調する領域の規模に応じた風量を領域ごとに設定することができ、建物H1の内部をムラなく空調することができるので、空調効率が高まり、居住者の体感性が向上し、空調エネルギを削減することができる。
換気装置30は、床下空間13を経由してダクト16から吸い込んだ建物H1内の空気を、ダクト17を経由して建物H1外へ排出する機能と、ダクト18を介して取り入れた建物H1外の空気(外気)を給気ダクト19a,19bを経由してそれぞれ空調機10,20へ送給する機能と、を有している。ダクト18の途中には、換気装置30に取り入れられる外気を浄化するための外気清浄手段であるフィルタを内蔵したフィルターボックス44が配置されている。
全館空調システム100においては、建物H1内の各部屋R11,R12,R21,R22に空調機10,20からの空調空気を供給する吹出口14が設けられている。1階の部屋R11,R12内の空気は、それぞれの部屋R11,R12の床面F1,F1に設けられた排気口15,15を経由して、気密状に仕上げられた床下空間13へ流入し、換気装置30のダクト16に吸い込まれ、建物H1の外へ排気される。
また、1階の部屋R11,R12内の空気は、それぞれの部屋R11,R12への出入口であるドアDの下縁部に設けられたアンダーカットUを経由して共用部分11に流出し、共用部分11の床面F1に設けられた排気口15を経由して床下空間13へ流入し、換気装置30によって排気される。
さらに、2階の部屋R21,R22内の空気は、それぞれの部屋R21,R22への出入口であるドアDの下縁部に設けられたアンダーカットUを経由して共用部分12に流出し、共用部分12から1階の共用部分11へ流動し、共用部分11の床面F1の排気口15を経由して床下空間13へ流入し、換気装置30によって排気される。
換気装置30の給気ダクト19a,19bは空調機10,20に接続され、空調機10,20にそれぞれ外気を供給する。換気装置30は1階の床下空間13内に設置され、1階の床面F1に設置された排気口15を介して、室内からの排気を床下空間13内に取り込み、床下空間13をダクトレス排気経路として利用する。
このように、換気装置30を床下空間13に設置したことにより、換気装置30の運転音が室内に伝わり難くなるため、室内空間(部屋R11,R12,R21,R22の内部及び共用部分11,12)を静粛に保つことができる。また、床下空間13を利用して換気装置30を配置するので、換気装置30専用の設置スペースを設ける必要がなく、別途、建築工事が不要である。
床下空間13を排気経路として利用することにより、建物H1全体の空調を行いながら床下空間13の換気も同時に行うことができる。また、空調された排気が床下空間13内を通過することにより、床下空間13が居室空間(部屋R11,R12,R21,R22の内部)とほぼ近い環境となるため、空調負荷を低減することができ、湿度などに起因する建物の劣化を抑制することができる。さらに、換気装置30の設置環境も良好となるため、換気装置30自体の製品寿命も損なわれない。
図1に示すように、部屋R11の床面F1に形成された点検口45を、換気装置30の点検口として使用することができる。なお、多雪地域において全館空調システム100を施工する場合、積雪の影響を受けないように、建物H1の1階と2階の階間に換気装置30を設置し、ベントキャップ(ダクト17,18の開口部17a,18aのキャップ)も高所に取り付けることができる。なお、建物H1内の台所K(図3参照)の床下空間13内に換気装置30を設置した場合は床下収納庫の開閉口46(図3参照)を点検口として利用することもできる。
全館空調システム100において、床下空間13に配置された換気装置30は全熱交換器であり、床下空間13を経由して吸い込んだ建物H1内の空気(排気)と、建物H1外から取り入れた空気(外気)との間で熱交換する機能を有している。
換気装置30を使用することにより、建物H1外からダクト18を経由して吸い込んだ空気を、建物H1内の室温(空調温度)に近づけた状態で建物H1内へ導入することが可能となるので、空調効率の向上に有効である。
また、全館空調システム100においては、建物H内の共用部分11,12に形成された下部天井11c,12cの上方の天井裏空間11a,12a内にそれぞれ空調機10,20を配置し、部屋R11,R12,R21,R22,R23の内部において各階の空調機10,20からそれぞれ最短距離に位置する部分に吹出口14及び分岐吹出口14sを設けている。具体的には、廊下22側の壁面Wの上部あるいは各部屋R11,R12,R21,R22の廊下22側の壁面Wの上部に吹出口14及び分岐吹出口14sを設けている。
空調機として、ビルトイン型などの薄型空調機を採用すれば、下部天井11c,12cの下がり寸法を最小限に抑えることができ、空調機の納まりが良好となり、共用部分11,12のスペースに圧迫感を与えることもない。また、小屋裏空間40に収納室29などを設けることにより、スペースを有効活用している。
図1に示すように、建物H1が複数階高の住宅の場合、空調機10,20は各階の共用部分11,12の天井裏空間11a,12aに設ける。建物H1の1階若しくは2階の居住者が不在で空調不要の場合は不在階の空調機の運転を停止することができるので、省エネに貢献することができる。なお、空調運転を止めても換気運転(24時間換気)は行われるので、建築基準法の換気義務をクリアすることができる。
前述した構成とすることにより、全館空調システム100においては、別途、空調機室を設ける必要がないので、容易に設置が可能である。また、非居室である共用部分11,12の天井裏空間11a,12aに空調機10,20を設置することにより、空調機10,20の運転音の拡散を防止することができるので、居住者にとって静粛な全館空調システムを提供することができる。
さらに、共用部分11,12の天井裏空間11a,12aに空調機10,20を設置することにより、各部屋R11,R12,R21,R22,R23の吹出口14、分岐吹出口14sと、空調機10,20との距離を最短とすることができ、ダクト23のルートも最短となるため、低圧損となり、空調機10,20の負荷をそれぞれ低減することができる。また、ダクト23のルートが最短となることにより、ダクト材料費が最小で済み、施工も簡素とすることができ、コスト低減に有効である。
このように、全館空調システム100は、空調機能並びに換気機能の両方を備え、従来の設計方法に基づいて構築された建物H1において容易に採用することができ、施工性が良好であり、空調機10,20の負担を軽減することもできる。また、全館空調システム100は、建物H1内において、居住者が長く滞在すると想定される部屋R11,R12,R21,R22を優先的に空調することができるので、空調効率が高まり、居住者の体感性が向上し、空調エネルギを削減することができる。
図1,図2に示すように、全館空調システム100においては、各々の部屋R11,R12,R21,R22,R23への給気口として、ライン形の吹出口14及び分岐吹出口14sを使用し、吹出口14及び分岐吹出口14sの上流側を、チャンバ24及びダクト23や分岐ダクト23sを介して、空調機10,20と接続している。
図9に示すように、チャンバ24は、ダクト23との接続口25から吹出口14に向かうにつれて水平方向に連続的に拡幅する部分と、鉛直方向に連続的に縮小する部分と、を兼備した整流部26を有している。なお、前記給気口はライン形の吹出口14に限定するものではないので、例えば、長矩形の吹出口などを使用することもできる。
全館空調システム100においては、空調機10,20から送給される空調空気を部屋R11などへ供給するため給気口として、図9に示すようなライン形の吹出口14や分岐吹出口14sを使用したことにより、下部天井11c,12cの懐寸法を最小寸法に抑えることができる。また、ライン形の吹出口14、分岐吹出口14sは、部屋の天井または壁面に沿って空調空気を吹き出すことができるので、部屋の内部全体に空調空気が行き渡り、空調効率が向上する。
全館空調システム100においては、図9に示すようなチャンバ24を使用したことにより、下部天井11c,12cに設置した空調機10と、壁面Wに設置した吹出口14(分岐吹出口14s)とを好適に接続することができる。また、チャンバ24は、下部天井11c,12cを構成する各種部材(梁など)との干渉がなく、納まりが良好である。
さらに、ダクト23から供給された空調空気は、前述した形状のチャンバ24内を流動することにより、スムーズに吹出口14(分岐吹出口14s)に到達することができるので、低圧損とすることができる。なお、チャンバ24は、その両側面に着脱可能に取り付けられた、長孔付きのL字状の金具24aを、ビス(図示せず)などを用いて建物H1の構成部材に固定することにより、所定場所に容易に設置することができる。
図10,図11に示すように、吹出口14(分岐吹出口14s)は、風向調整及び風量調整が可能な回転式の湾曲羽根14Xを有している。湾曲羽根14Xは、浅い樋形状の本体部14aと、本体部14aの両端部を閉塞する扇形状の側板14bと、本体部14aの凹曲面を横断する方向に一定間隔ごとに配置された複数のリブ14cと、を備えている。湾曲羽根14Xは、本体部14aの両端部の側板14bから水平方向に突設された支軸14dを介して、四角筒形状のフレーム14e内に回動可能に保持されている。湾曲羽根14Xの前縁部14fは湾曲羽根14Xを回動操作するときの手動操作部分となる。
図11(a)に示す状態においても、湾曲羽根14Xの前縁部14fは、吹出口14(分岐吹出口14s)の正面部分から部屋R12側へ突出しているので、部屋R12側から容易に手動操作することができる。本体部14aの凹曲面に所定間隔をおいて配置された複数のリブ14cは、本体部14aを補強する機能と、後述する、空気流を整流する機能とを有している。
吹出口14(分岐吹出口14s)においては、1枚の湾曲羽根14Xのみを支軸14dを中心に回動操作することにより、風量調整及び風向調整を行うことができるので、構造のシンプル化を図ることができる。また、空調機10を下部天井11c,12c上方の天井裏空間11a,12aに設置した場合、ライン形の吹出口14(分岐吹出口14s)を壁面Wの上部に設置できるので、納まりが良く、気流の切替操作も容易に行うことができる。
図11(a)に示すように、湾曲羽根14Xの前縁部14fをフレーム14eの正面に最接近するまで押し込んでしまうと、吹出口14(分岐吹出口14s)は閉止状態となるが、本体部14aの後縁部14gとフレーム14eの内面との間に隙間Gが確保されるので、吹出口14の内部は空気流が通過可能である。なお、湾曲羽根14Xの前縁部14fをフレーム14eの正面に最接近するまで押し込んだときも前縁部14fはフレーム14eの正面より突出した状態に保たれる。
図11(b)に示すように、湾曲羽根14Xの前縁部14fをフレーム14eの正面から少し引き出し、湾曲羽根14Xの前縁部14f及び後縁部14gが同一水平面に位置するようにセットすると、空調空気は吹出口14から水平方向へ吹き出される。このとき、図12に示すように、空調空気は空調室(部屋R12)内の天井Cに沿って進行し、壁面Wの反対側の壁面W1に到達した後、部屋R12内を巡回するように流動する。従って、夏場の冷房運転時は、吹出口14の湾曲羽根14Xを図11(b)に示す状態にセットすることが望ましい。
図11(c)に示すように、湾曲羽根14Xの前縁部14fをフレーム14eの正面から引き出し最下部まで降ろすと、湾曲羽根14X全体が露出した状態となり、空調空気は湾曲羽根14Xの本体部14aの凹曲面部分及びリブ14cに誘導され、吹出口14(分岐吹出口14s)から下方に向かって吹き出される。このとき、図13に示すように、空調空気は空調室(部屋R12)内の床面F1に向かって下降し、床面F1に沿って、壁面Wの反対側の壁W1に向かって流動する。従って、冬場の暖房運転時は、吹出口14(分岐吹出口14s)の湾曲羽根14Xを図11(c)に示す状態にセットすることが望ましい。
前述したように、全館空調システム100においては、吹出口14(分岐吹出口14s)を図11(a)に示すように閉止状態にしたときにおいても、所定風量を供給可能な隙間Gを保持することができる。このため、夏季と冬季との間の中間期など空調運転が不要な季節においても24時間換気機能を確保することができる。なお、24時間換気における換気風量は0.5回/h程度で、比較的少ないので、隙間Gは、空気流を部屋内全体に行き渡らせるために必要な開口面積としている。
図1,図6,図7に示すように、全館空調システム100においては、換気装置30に取り入れられる外気を浄化するための外気清浄手段(フィルタを内蔵したフィルターボックス44)を床下空間13に配置している。このため、例えば、建物H1内の部屋R11の床面F1に設けられた点検口27からフィルターボックス44のメンテナンスなどを行うことができ、作業性も良好である。また、フィルターボックス44は床面F1部分からメンテナンス可能であるため、脚立などを使用した高所作業が不要であり、安全性に優れている。
図7に示すように、換気装置30の下面には、複数のゴム製の支持部材31が取り付けられ、これらの支持部材31を床下空間13の基礎面13aに接地させた状態で、換気装置30が床下空間13内に配置されている。支持部材31は防振性を有するため、換気装置30と基礎面13aとの間の振動伝達を防止することができる。
また、換気装置30は複数の支持部材31を介して床下空間13の基礎面13aに載置されているので、換気装置30のメンテナンスや部品交換などを行うときなどは、図8に示すように、必要に応じて、換気装置30を移動させることが可能であり、作業性が良好である。なお、換気装置30に接続されているダクト16,17,18及び給気ダクト19a,19bは何れも可撓性を有しているので、換気装置30を移動させたり、元の位置に戻したりしたとき、それに追従して変形可能であり、換気機能などに支障を来すことはない。
次に、図1~図5に示す全館空調システム100においては、図14,図15に示すように、建物H1内に設けられた脱衣所42と共用部分11との壁面W2に、共用部分11の空調空気を脱衣所42内に取り込むためのパイプファン28が設けられている。
従って、脱衣所42にダクトなどを施工することなく、空調空気を引き込むことができる。また、パイプファン28の送風能力のみにより、脱衣所42内を他の空調空間と同じ環境にすることができるので、省エネに有効である。
全館空調システム100においては、図1に示すように、建物H1の小屋裏空間40と建物H1内の部屋R21とを連通状態に接続する、可逆運転可能な中間ダクトファン41が設けられている。従って、冬季は小屋裏空間40内の暖かい空気を部屋R21内へ供給することができ、夏季は部屋R21内の冷たい空気を小屋裏空間40内へ供給することができ、空調負荷の軽減に有効である。
図1,図5に示すように、小屋裏空間40に設けられた収納室29と空調機20とは給気用の分岐ダクト23sで連通されているため、空調機20から収納室29内へ空調空気を送り込むことにより、他の部屋と同様の空調を行うことができる。
図1に示す全館空調システム100を施工する場合、建物H1の断熱処理手段については、グラスウールなどの断熱材を使用することができるが、気密性確保の観点から、吹付発泡断熱を施工することが望ましい。
また、全館空調システム100において、床下空間13を経由して建物H1内の空気を建物H外へ効率良く排出するためには、建物H1の床下空間13の気密性を確保することが必須要件であるため、床下空間13の気密断熱処理手段についても、吹付発泡断熱を施工することが望ましい。
床下空間13の気密性を確保するため、図1に示す、給気ダクト19a,19bが床面F1を貫通する部分において、給気ダクト19a,19bと床面F1との隙間を気密テープで閉塞し、同様に、ダクト17,18が床面F1を貫通する部分においてダクト17,18と床面F1との隙間を気密テープで閉塞している。また、床面F1の外周部分と建物H1を形成する土台とを複数の金釘で留め付けたり、床面F1の外周部分と建物H1を形成する垂直部材との隙間を気密テープで閉塞したりしている。さらに、図3に示す、点検口27,45及び開閉口46も気密タイプのものを採用している。
ダクトシャフト部においては、ダクトが構造用合板を貫通する部分のダクトと構造用合板との隙間を気密テープで閉塞することにより気密処理を施している。ユニットバス部においては、基礎立ち上がり部分と底面を発泡断熱処理し、基礎上にユニットバスを設置している。また、ユニットバス点検用の点検口を設けるために基礎立ち上がり部分の一部を切り欠いた所に気密性の高い発泡樹脂製の基礎点検口を設置している。これにより、床下空間の空気が、ユニットバス部を経由して、他の領域へ流通することがなくなり、床下空間の気密性が向上する。
このように、床下空間13の気密性を確保することにより、居室、ユニットバス部、ダクトシャフト部を経由して床下空間13への空気の流通を遮断することができ、居室などから床下空間13に流入する排気は床面F1に設置された排気口15からのみ床下空間13へ流入することとなるため、排気口15からの逆流を防止することができる。
前述したように、全館空調システム100においては、床下空間13の気密性を高レベルに保つことで換気装置30による換気機能を確保することができ、これにより他の機能、例えば、吹出口14(分岐吹出口14s)から吹き出す空調空気による冷暖房機能なども有効に稼働する。
次に、図16~図19に基づいて、その他の実施形態である全館空調システム200について説明する。なお、全館空調システム200において、前述した全館空調システム100を構成する部分と共通する部分については、図16~図19中にて、図1~図15中の符号と同符号を付して説明を省略する。
図16は全館空調システム200の概略構成を示しており、図17~図19は全館空調システム200を備えた実際の建物H2の水平断面を示している。また、図17,図18において斜線を付している部分は、各階に設けられた下部天井11c,12cを表している。
図16~図18に示すように、建物H2の1階部分には玄関ホール1、廊下1a、LDK2、土間収納部3、脱衣所7及び物入れ部8などが設けられ、2階部分にはホール4、主寝室5、洋室6,9及び収納部5a,6a,9aなどが設けられ、小屋裏空間40には収納室29が設けられている。
全館空調システム200においても、建物H2内に存在する複数の領域について居住者の滞在時間が短いと想定される領域を上位とする優先度を設定し、優先度が上位にある領域として共用部分11,12を選択し、共用部分11,12の天井面より低い位置に形成された下部天井11c,12cの上方の天井裏空間11a,12a内に空調機10,20を配置している。
図17に示すように、建物H2内の1階部分においては、玄関ホール1、LDK2の一部、脱衣所7及び物入れ部8の天井面より低い位置に下部天井11cが形成され、共用部分11である玄関ホール1の下部天井11cの上方の天井裏空間11a内に空調機10が配置されている。これにより、空調機10の設置スペースを容易に確保することができ、別途、空調機室を設ける必要がない。また、空調機10の運転音が居住者の滞在時間の長い領域(LDK2など)へ届き難いので、静粛性を確保することができる。
また、図16,図17に示すように、建物H2の1階部分においては、天井裏空間11aに隣接する壁面11d,11e,11h,11iに吹出口14,分岐吹出口14sが配置されている。具体的には、LDK2の天井の一部に設けられた下部天井11cの壁面11eに吹出口14が配置され、玄関ホール1の天井に設けられた下部天井11cのLDK2に臨む壁面11hに吹出口14が配置され、玄関ホール1の下部天井11cの壁面11d及びキッチンKに臨む壁面11iにそれぞれ分岐吹出口14sが配置されている。
図17に示すように、空調機10には3本のダクト23,23,23が接続され、これらのうちの2本のダクト23,23の下流側がそれぞれ吹出口14,14に接続され、残りの1本のダクト23の下流側が2本の分岐ダクト23s,23sに分かれ、分岐ダクト23s,23sの下流側がそれぞれ分岐吹出口14s,14sに接続されている。
LDK2に2台の吹出口14,14を設けたことにより、居住者の滞在時間が長いと想定される領域において、特に居住者が長く滞在すると想定される部分を優先的に空調することができ、空調効率の向上及び空調エネルギの削減に有効である。また、リビングなどに比べて居住者の滞在時間が短いと想定される領域であって、領域の規模(容積)も小さい玄関ホール1及びキッチンKにそれぞれ分岐吹出口14s,14sを設けたことにより、空調負荷の低いところに適度な空調空気を供給することができるので、建物H2内の温度分布の均一化を図ることができる。
前述したように、空調機10と吹出口14とはダクト23で接続され、空調機10と分岐吹出口14sとはダクト23から2つに分かれた分岐ダクト23sで接続され、(吹出口14からの吹出風量)≧(分岐吹出口14sからの吹出風量)となるように設定されている。従って、居住者の滞在時間が長いと想定される部分を優先的に空調しながら、居住者の滞在が短いと想定される部分への空調空気の供給を抑制することができ、空気空調効率の向上及び空調エネルギの削減に有効である。
図18に示すように、建物H2の2階部分においては、ホール4の天井面の一部より低い位置と、収納部5a,6a,9a内の天井面より低い位置にそれぞれ下部天井12cが設けられ、共用部分12であるホール4の下部天井12cより上方の天井裏空間12a内に空調機20が配置されている。これにより、空調機20の設置スペースを容易に確保することができ、別途、空調機室を設ける必要がない。また、空調機20の運転音が居住者の滞在時間が長いと想定される領域(主寝室5及び洋室6,9)へ届き難いので、静粛性を確保することができる。
また、建物H2の2階部分においては、図16,図18に示すように、主寝室5に隣接する収納部5a内に設けられた下部天井12cの壁面11f(主寝室5に臨む壁面)に吹出口14が配置され、洋室6に隣接する収納部6a内に設けられた下部天井12cの壁面11g(洋室6に臨む壁面)に吹出口14が配置され、洋室9に隣接する収納部9a内に設けられた下部天井12cの壁面11j(洋室9に臨む壁面)に吹出口14が配置されている。空調機20と吹出口14,14,14とはそれぞれダクト23で接続されている。従って、建物H2の2階部分において、居住者の滞在時間が長いと想定される領域(主寝室5及び洋室6,9)を優先的に効率良く空調することができる。
図17に示すように、建物H2の1階部分において、LDK2の床面F1の壁面寄りの複数個所に排気口15が配置され、玄関ホール1の床面F1の土間収納部3寄りの部分に排気口15が配置されている。このような構成とすることにより、排気口15の設置場所の選択が容易となり、また、複数の排気口15を分散配置することにより、床下空間13内を換気しながら、建物H2内の空気を効率良く排気することができる。
図16,図19に示すように、LDK2の床面F1の下方の床下空間13内に換気装置30が配置されている。また、LDK2の床面F1の一部に開閉式の点検口45が設けられている。換気装置30を床下空間13に設置したことにより、換気装置30の運転音が室内に伝わり難くなるため、室内空間を静粛に保つことができる。また、床下空間13を利用して換気装置30を配置するので、換気装置30専用の設置スペースを設ける必要がなく、別途、建築工事が不要である。LDK2の床面F1の点検口45を利用して換気装置30のメンテナンスなどを行うことができるので、高所作業が不要であり、安全性が高く、作業性も良好である。
全館空調システム200においては、図16に示すように、小屋裏空間40に設けられた収納室29の内部に、給気ダクト19aから分岐した給気ダクト19cが接続されている。換気装置30から給気ダクト19aを経由して供給される外気の一部が給気ダクト19cを経由して収納室29内へ供給される。従って、建物H2外からダクト18を経由して吸い込んだ空気を、建物H2内の室温(空調温度)に近づけた状態で収納室29内へ供給することができる。
次に、図20~図24に基づいて、全館空調システム300について説明する。なお、全館空調システム300において前述した全館空調システム100,200を構成する部分と共通する部分については、図20~図24中に図1~図19中の符号と同符号を付して説明を省略する。
図20は、全館空調システム300の概略構成を示しており、図21~図24は全館空調システム300を備えた実際の建物H2の水平断面を示している。また、図21,図23,図24において斜線を付している部分は、各階に設けられた下部天井57,58,59,60を表している。
図20~図24に示すように、建物H3は3階建てであり、建物H3の1階部分には玄関ホール50、車庫51などが設けられ、2階部分にはLDK52、洗面所54などが設けられ、3階部分には洋室55、書斎56などが設けられている。また、1階部分の玄関ホール50から2階部分を経由して3階部分に連通する階段室53が設けられている。
玄関ホール50の床面50bの下方には床下空間50cが設けられ、床面50bの複数個所に通気口50d,50eが設けられている。通気口50dは車庫51と隣接する壁面W3寄りの部分に設けられ、通気口50eは壁面W3と対向する外側の壁面W4寄りの部分に設けられている。このような位置に通気口50d,50eを設けたことにより、1階共用部分に供給される空調空気が一方の通気口50eから床下空間50cへ流入し、床下空間50c内を流動して他方の通気口50dから1階共用部分へ流出した後、排気口15から排出されるので、床下空間50cの換気を実現することができる。
図20,図21に示すように、玄関ホール50の天井の一部に設けられた下部天井57の上方の天井裏空間57aにチャンバ24が配置され、天井裏空間57aに隣接する壁面57b(玄関ホール50に臨む壁面)に分岐吹出口14sが配置されている。空調機10から供給される空調空気は壁面57bの分岐吹出口14sから玄関ホール50に向かって吹出可能である。分岐吹出口14sからの空調空気の吹出量は、後述する吹出口14からの吹出量の約半分であるため、居住者の滞在時間が短いと想定される建物H2の1階の玄関ホール50内を無駄なく、効率的に空調することができる。
図20,図22に示すように、2階の床下空間61内(1階天井と2階床面との間の空間内)に換気装置30が配置され、玄関ホール50の天井部分50fに排気口15が設けられ、排気口15と換気装置30がダクト16で接続されている。また、換気装置30と空調機10が給気ダクト19aで接続され、換気装置30と空調機20が給気ダクト19bで接続されている。
従って、建物H3の外から導入した新鮮な外気(若しくは空調空気と混合した外気)を建物H3内の各領域の上部から各領域内に向かって供給するとともに、各領域内の汚染空気を建物H3の1階部分に向かって集約し、1階部分の排気口15から纏めて排気することができ、これにより、建物H3内の各領域のクリーン度を向上させることができる。これと同時に、各領域内の汚染空気が集まる場所(ダーティーゾーン)の集約化を図ることができる。
図20,図21,図23に示すように、2階の洗面所54の天井部分に設けられた下部天井58の上方の天井裏空間58aに空調機10が配置され、LDK52の天井の一部に下部天井59が設けられ、下部天井59の上方の天井裏空間59a(図23参照)と隣接する壁面59b(LDK52に臨む壁面)に複数の吹出口14が配置され、天井裏空間59aと隣接する壁面59c(階段室53に臨む壁面)及び玄関ホール50の下部天井57の天井裏空間57aにそれぞれ分岐吹出口14s,14sが配置されている。
空調機10には3本のダクト23,23,23が接続され、これらうちの2本のダクト23,23の下流側は、LDK52の壁面59bに配置された2台の吹出口14,14にそれぞれ接続され、残りの1本のダクト23の下流側は2本の分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は階段室53に臨む壁面59cの分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は玄関ホール50の分岐吹出口14sに接続されている。
空調機10から供給される空調空気は壁面59bの吹出口14,14からLDK52に向かって吹き出されるとともに、一方の分岐吹出口14sから階段室53に向かって吹き出され、他方の分岐吹出口14sから玄関ホール50に向かって吹き出される。
図20,図21,図23に示すように、空調機10から延設されたダクト23から2つに分かれた分岐ダクト23s,23sに接続された分岐吹出口14s,14sから吹き出す空調空気の吹出量は、吹出口14からの吹出量の約半分であるため、居住者の滞在時間が短いと想定される階段室53及び玄関ホール50を無駄なく、効率的に空調しながら、居住者の滞在時間が長いと想定されるLDK52内を優先的に空調することができる。
図20,図24に示すように、建物H3の3階部分においては、階段室53の天井部分に設けられた下部天井60の上方の天井裏空間60aに空調機20が配置されている。天井裏空間60aに隣接する壁面60b(洋室55に臨む壁面)に吹出口14及び分岐吹出口14sが配置され、天井裏空間60aに隣接する壁面60c(書斎56に臨む壁面)に分岐吹出口14sが配置されている。
図24に示すように、空調機20から2本のダクト23,23が延設され、一方のダクト23の下流側は洋室55に臨む壁面60bに設けられた吹出口14に接続され、他方のダクト23の下流側は2本の分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は洋室55に臨む壁面60bに設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は書斎56に臨む壁面60cに設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
従って、居住者の滞在時間が長いと想定される洋室55の内部は吹出口14及び分岐吹出口14sから吹き出す空調空気によって優先的に空調することができ、洋室55に比べて規模(容積)の小さい書斎56の内部は分岐吹出口14sから吹き出す空調空気によって無駄なく空調することができる。
次に、図25~図27に基づいて、本発明のその他の実施形態である全館空調システム400について説明する。図25は全館空調システム400を備えた建物H4の床下換気設備を示しており、図26は図25に示す建物H4の1階空調設備を示しており、図27は図25に示す建物H4の2階空調設備を示している。
なお、図25~図27に示す全館空調システム400において、前述した全館空調システム100,200,300を構成する部分と共通する部分については、図25~図27中にて、図1~図24中の符号と同符号を付して説明を省略する。
図25,図26に示すように、全館空調システム400を備えた建物H3の1階部分には、玄関ホール50、LDK52、ホール54、脱衣所62、畳ルーム71などが設けられている。図27に示すように、建物H4の2階部分には、洋室80,81、ホール82、主寝室83、ウォークインクローゼット(WIC)84、書斎85、トイレ86及び廊下87などが設けられている。
図25に示すように、床面F1の下方に設けられた床下空間(図示せず)内に換気装置30が配置され、換気装置30からダクトシャフト70を経由して、1階の天井裏空間(図示せず)に向かって給気ダクト19a,19bが配設され、さらに、給気ダクト19bは2階の天井裏空間(図示せず)に向かって配設されている。
図26に示すように、建物H4の1階部分のホール54の上方の天井裏空間内に空調機10が設置され、給気ダクト19aが空調機10に接続されている。図27に示すように、建物H4の2階部分の廊下87の上方の天井裏空間内に空調機20が設置され、給気ダクト19bが空調機20に接続されている。
図26に示すように、空調機10には、3本のダクト23a,23b,23cがそれぞれ接続されている。ダクト23aの下流側は、LDK52の天井段差部73に設けられた吹出口14に接続されている。ダクト23bの下流側は、二つの分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は、LDK52のキッチンKに臨む壁面74に設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの先端部は玄関ホール50の壁面50aに設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
ダクト23cの先端部側は、二つの分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sは畳ルーム71の壁面71aに設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sは、LDK52の天井段差部73に設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
また、図26に示すように、建物H4の1階部分において居住者の滞在時間が短いと想定される領域である、ホール54、脱衣所62、廊下63、LDK52の階段近傍並びに畳ルーム71の物入64の天井部分の下方に下部天井75(ハッチング部分)が設けられ、下部天井75の上方の天井裏空間に空調機10、給気ダクト19a、ダクト23a,23b,23c、分岐ダクト23sが配設され、下部天井75に隣接する領域内の壁面50a,71a,74並びに天井段差部73に吹出口14または分岐吹出口14sが設置されている。従って、下部天井75の天井裏空間に、ダクト23a,23b,23c(分岐ダクト23s)と吹出口14(分岐吹出口14s)とを接続するためのチャンバ24(図9参照)を収容可能であり、チャンバ24の納まりが良好である。
図27に示すように、空調機20には、3本のダクト23d,23e,23fがそれぞれ接続されている。ダクト23dの下流側は二つの分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側はホール82に臨む壁面82aに設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は主寝室83に臨む壁面83aに設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
ダクト23eの下流側は二つの分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は、ウォークインクローゼット84の天井段差部84aに設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は、書斎85に臨む壁面85aに設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
ダクト23fの下流側は二つの分岐ダクト23s,23sに分かれ、一方の分岐ダクト23sの下流側は、洋室80に臨む壁面80aに設けられた分岐吹出口14sに接続され、他方の分岐ダクト23sの下流側は、洋室81に臨む壁面81aに設けられた分岐吹出口14sに接続されている。
また、図27に示すように、建物H4の2階部分において居住者の滞在時間が短いと想定される領域の天井部分の下方に下部天井88(ハッチング部分)が設けられ、下部天井88の上方の天井裏空間に空調機20、給気ダクト19b、ダクト23d,23e,23f、分岐ダクト23sが配設され、下部天井88に隣接する領域内の壁面80a,81a,82a,83a並びに天井段差部84aに吹出口14または分岐吹出口14sが設置されている。従って、下部天井88の上方の天井裏空間に、ダクト23d,23e,23f(分岐ダクト23s)と吹出口14(分岐吹出口14s)とを接続するためのチャンバ24(図9参照)を収容可能であり、チャンバ24の納まりが良好である。
図25~図27に示すように、全館空調システム400においては、玄関ホール50、キッチンK、ホール82、ウォークインクローゼット84など、居住者の滞在時間はリビング、ダイニング、居室ほど長くないものの、居住者が通行するための領域内、居住者が特定目的を果たすため一時的に滞在する領域内にもそれぞれ分岐吹出口14sを配置している。これにより、建物H4の内部をムラなく空調することができるので、空調効率が高まり、居住者の体感性が向上し、空調エネルギを削減することができる。
また、ダクト23a~23fからそれぞれ二つに分かれた分岐ダクト23sの風量は元のダクト23a~23fの風量の半分になるので、居住者の滞在時間が長いと想定される部分を優先的に空調しながら、居住者の滞在が短いと想定される部分への空調空気の供給を抑制することが可能となり、空調効率の向上及び空調エネルギの削減に有効である。また、領域の規模(容積)が小さく、空調負荷の低い部分に適度な空調空気を供給することができ、建物H4内の温度分布を均一化することができる。
なお、図1~図27に基づいて説明した全館空調システム100,200,300,400は、本発明に係る全館空調システムの一例を示すものであり、本発明に係る全館空調システムは前述した全館空調システム100,200,300,400に限定されない。