JP7328536B2 - 熱風炉の解体方法および治具 - Google Patents

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Description

本発明は、熱風炉の解体方法および治具に関する。熱風炉とは、高炉に熱風を送風するための設備である。
熱風炉の老朽化が進むと、熱風炉を更新する必要が生じる。熱風炉の更新工事に必要な期間は、例えば1基当たり約29か月(約2年半)である。一般的に、1つの高炉には4基の熱風炉があるため、1つの高炉において全ての熱風炉の更新が完了するには、例えば約10年の期間が必要となる。
熱風炉の更新期間中、1つの高炉に対し、熱風炉を4基ではなく3基で運転する必要がある。熱風炉の稼働基数が1基減少することで、例えば、以下(1)、(2)のような状況が長期間(最大約10年)発生する。(1)熱風の高炉への送風温度の低下による還元材比の増加、すなわち操業コストおよびCO排出量の増加。(2)熱風炉でのトラブル発生時の高炉の停止リスクの増加(1基にトラブルが生じた場合、残りの2基での運転となるが、2基で高炉の操業を継続するだけの熱風を送ることができない場合、臨時休風する必要が生じ得る)。
上記(1)、(2)のような影響を無くすことはできないが、少しでもこれらの影響が発生する期間を短くするために、熱風炉の更新に必要な期間を短くする工法が望まれている。例えば、特許文献1では、熱風炉の解体工事の工期が短縮できる解体方法が提案されている。
特開2017-150032号公報
熱風炉の解体工事は、熱風炉内の狭隘な環境下での工事となるため、一般的には重機が使用できず、従来から手作業で実施していることが多い。数万個と数量が多いチェッカー煉瓦の解体に際し、これらのチェッカー煉瓦をひとつひとつ人力で吊り上げて手作業で解体する場合、チェッカー煉瓦の解体工事が工期期間に与える影響が大きい。
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、狭隘な環境下でチェッカー煉瓦の吊り上げを円滑に実施し、熱風炉を短工期で解体することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る一態様の熱風炉の解体方法は、複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉を解体する解体方法であって、各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、前記解体方法は、前記複数段のチェッカー煉瓦のうち、少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦の縦孔に上方から治具を差し込む工程と、前記縦孔内に前記治具が配置された少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦のうち、最下段の前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する工程と、前記最下段の前記チェッカー煉瓦に固定された前記治具を介して、前記最下段の前記チェッカー煉瓦及び前記最下段の前記チェッカー煉瓦に積み重ねられた前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程と、を備え、前記治具を固定する工程では、前記チェッカー煉瓦の前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てていない状態から、前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てる状態に変更することで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する。
ここで縦孔の形態は、1つの縦孔の全体が1つのチェッカー煉瓦に形成されている形態に限られない。例えば1つの縦孔が、複数のチェッカー煉瓦の間に形成されていてもよい。また「各段のチェッカー煉瓦における縦孔が水平方向に位置合わせされた状態」とは、上下方向に隣り合う各段のチェッカー煉瓦において互いの縦孔の位置が水平方向に合っていて、各段のチェッカー煉瓦の縦孔が上下方向につながっている状態を意味する。
縦孔に治具を差し込むことは、縦孔の外部から縦孔内に治具を突き入れる、差し入れる動作を意味する。
縦孔に治具が配置されていることは、縦孔内に治具が位置している状態を意味する。
チェッカー煉瓦に治具を固定することは、チェッカー煉瓦と治具との上下方向の相対的な移動が規制されていない状態から規制された状態に変更することを意味する。例えば、チェッカー煉瓦に治具を固定することには、チェッカー煉瓦の縦孔の内周面に治具を押し当てていない状態から、前記内周面に治具を押し当てる状態に変更する場合が含まれる。さらに例えば、治具の先端を縦孔に差し込んだ後、チェッカー煉瓦の底面に治具が引っ掛けられていない状態から、チェッカー煉瓦の下方において治具の先端を水平方向に広げ、チェッカー煉瓦の底面に治具を引っ掛ける状態に変更する場合が含まれる。
チェッカー煉瓦に治具が固定されていることは、チェッカー煉瓦と治具との上下方向の相対的な移動が規制されている状態であることを意味する。
この方法によれば、少なくとも最下段のチェッカー煉瓦に治具を固定することで、最下段のチェッカー煉瓦に対して積み重ねられている全てのチェッカー煉瓦を、最下段のチェッカー煉瓦を介して治具によって支持することができる。よって、最下段のチェッカー煉瓦に対して積み重ねられている全てのチェッカー煉瓦を、治具を介して、最下段のチェッカー煉瓦と一体に引き上げることができる。
本発明に係る一態様の熱風炉の解体方法は、複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉を解体する解体方法であって、各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、前記解体方法は、前記チェッカー煉瓦の縦孔に治具を差し込む工程と、前記縦孔内に前記治具が配置された前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する工程と、前記チェッカー煉瓦に固定された前記治具を介して前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程と、を備え、前記治具を固定する工程では、前記チェッカー煉瓦の前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てていない状態から、前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てる状態に変更することで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定し、前記治具は、前記複数段のチェッカー煉瓦のうち、少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦の縦孔に上方から差し込み可能である。
ここで治具が、複数段のチェッカー煉瓦のうち、少なくとも上から2段のチェッカー煉瓦の縦孔に上方から差し込み可能であるということは、治具の先端から所定の長さの領域が縦孔の孔径よりも細いことを意味する。前記所定の長さは、1段分超のチェッカー煉瓦の縦孔の深さに相当する長さである。前記所定の長さは、例えば縦孔の深さの1.2倍であってもよい。チェッカー煉瓦に十分に治具を固定するため、前記所定の長さは縦孔の深さの1.5倍以上であることが好ましい。
この方法によれば、治具によって複数段のチェッカー煉瓦を引き上げたり、1段のチェッカー煉瓦を引き上げたりすることができる。例えば、複数段のチェッカー煉瓦を引き上げた結果、局所的に1段のチェッカー煉瓦のみを引き上げることが望まれる状態が発生した場合などでも、治具を変更する必要がない。このような場合には、施工性を高めることができる。
前記治具は、前記縦孔に差し込まれる第1部材と前記第1部材に取り付けられて前記第1部材とともに前記縦孔に差し込まれ、前記第1部材に対して第1の位置と第2の位置との間を移動可能な第2部材と、を備え、前記治具を差し込む工程では、前記第2部材が前記第1の位置にある状態で、前記縦孔に前記第1部材および前記第2部材を差し込み、前記治具を固定する工程では、前記第2部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させることで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定してもよい。
この方法によれば、第2部材を第1の位置から第2の位置に移動させることで、チェッカー煉瓦に治具を固定することができる。
なお、第1部材および第2部材は、直接的でなく間接的に取り付けられていてもよい。言い換えると、第1部材と第2部材との間に他の部材が介在しない状態で、第1部材および第2部材が直接的に取り付けられていてもよい。第1部材と第2部材との間に他の部材が介在した状態で、第1部材および第2部材が間接的に取り付けられていてもよい。さらに、第1部材が、1つの部品によって形成されていてもよく、複数の部品によって形成されていてもよい。第2部材が、1つの部品によって形成されていてもよく、複数の部品によって形成されていてもよい。
前記治具を固定する工程では、前記第2部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるときに、前記縦孔の内周面に前記第2部材を押し当てることで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定してもよい。
この方法によれば、第2部材を第1の位置から第2の位置に移動させるときに、縦孔の内周面に第2部材を押し当てることで、チェッカー煉瓦に治具を固定することができる。
前記チェッカー煉瓦を除去することによって前記熱風炉にシュート縦穴を形成する第1工程と、前記シュート縦穴を外部に開口させる第2工程と、前記熱風炉の外部に開口した前記シュート縦穴を通して前記熱風炉内の前記チェッカー煉瓦を前記熱風炉の外部に搬出する第3工程と、を備え、前記第3工程において、前記治具を差し込む工程および前記治具を固定する工程を実施した後、前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程を実施することで引き上げられた前記チェッカー煉瓦を前記シュート縦穴に搬送してもよい。
前記チェッカー煉瓦を除去することによって前記熱風炉にシュート縦穴を形成する第1工程と、前記シュート縦穴を外部に開口させる第2工程と、前記熱風炉の外部に開口した前記シュート縦穴を通して前記熱風炉内の前記チェッカー煉瓦を前記熱風炉の外部に搬出する第3工程と、を備え、前記第1工程において、前記治具を差し込む工程および前記治具を固定する工程を実施した後、前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程を実施することで引き上げられた前記チェッカー煉瓦を除去してもよい。
この方法によれば、熱風炉のシュート縦穴を形成することができ、当該シュート縦穴を通してチェッカー煉瓦を落下させて搬出することができる。よって、更なる短工期化を図ること等ができる。
前記第2工程では、前記熱風炉の外部から鉄皮を通して前記チェッカー煉瓦を除去し、前記シュート縦穴に連通する横穴を形成し、前記横穴を通して前記シュート縦穴を外部に開口させてもよい。
この方法によれば、チェッカー煉瓦を除去して横穴を形成するので、横穴を深く形成することができる。よって、例えばシュート縦穴を鉄皮から離れた位置に形成することが可能になり、熱風炉のシュート縦穴の位置の自由度を高めること等ができる。
前記第2工程では、前記横穴の深さを、上方から下方に向けて徐々に小さくし、前記横穴の底面の一部を階段状に形成してもよい。
この方法によれば、横穴の底面の一部を階段状に形成するので、この底面の一部(階段状の部分)を利用して、チェッカー煉瓦を熱風炉の外部に容易に搬送することができる。
前記第1工程から前記第3工程を複数回繰り返し、前記複数段のチェッカー煉瓦を所定の高さずつ複数回に分けて解体してもよい。
この方法によれば、一度に深いシュート縦穴を形成するのではなく、浅いシュート縦穴を複数回形成することができる。したがって、例えば、解体中のチェッカー煉瓦を足場として利用して、炉壁の解体をすることができる。一度に深いシュート縦穴を形成するのは、大規模な作業となるものの、浅いシュート縦穴を複数回形成することにより、作業性及び安全性を向上させることができる。
前記所定高さは1~5mであってもよい。
この方法によれば、一度に形成するシュート縦穴の深さを抑えることができる。その結果、上述したように解体するチェッカー煉瓦を足場として利用するときに、円滑な作業を実施することができる。
前記第3工程では、前記チェッカー煉瓦上に設置されたコンベヤを利用して前記チェッカー煉瓦を前記シュート縦穴に搬送してもよい。
この方法によれば、コンベヤを利用してチェッカー煉瓦を容易に解体することができる。
前記熱風炉は、外燃式であってもよい。
内燃式の熱風炉においては燃焼室が炉内シュートの役割を果たすため、チェッカー煉瓦を含む炉内の解体物を地上まで搬送することは比較的容易である。しかしながら、外燃式の熱風炉は炉内に燃焼室がないため、内燃式の熱風炉と同様の方法で地上まで解体物を搬送することはできない。言い換えると、外燃式の熱風炉は、内燃式の熱風炉とは異なり、炉内に炉下部まで通じた開口がない。そのため、炉内の解体物を地上まで運搬することが困難である。その結果、外燃式の熱風炉の解体工事では、内燃式の熱風炉の解体工事よりも、工期が長くなり、作業も複雑となる。
そこで、例えば外燃式の熱風炉において前述のようにシュート縦穴をまず形成し、内燃式の熱風炉における燃焼室のような役割を果たす炉内シュートを形成する。これにより、外燃式の熱風炉であっても内燃式の熱風炉並の工期・作業性を確保することが可能となる。
前記熱風炉内において、前記治具を吊り下げるビームより上側に炉内デッキを設置し、または前記ビームによって炉内デッキを形成してもよい。
この方法によれば、例えば、治具によってチェッカー煉瓦を吊り下げながら、炉内デッキ上で作業することができる。よって、熱風炉の解体作業を並行して実施することが可能になり、更なる短工期化を図ることができる。
前記治具を差し込む工程では、水平方向に並ぶ複数の前記縦孔に前記治具を差し込み、前記治具を固定する工程では、水平方向に並ぶ複数の前記チェッカー煉瓦それぞれに前記治具を固定し、前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程では、前記治具が固定された水平方向に並ぶ複数の前記チェッカー煉瓦を引き上げてもよい。
この方法によれば、水平方向に並ぶ複数のチェッカー煉瓦を一度に除去することができる。
本発明に係る一態様の治具は、複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉に用いられる治具であって、各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、前記治具は、前記熱風炉内において、前記縦孔内に配置された状態で前記チェッカー煉瓦を吊り下げ、前記治具は、先端から前記縦孔に差し込まれる棒状の第1部材と、前記第1部材に取り付けられて前記第1部材とともに前記縦孔に差し込まれ、前記第1部材に対して第1の位置と第2の位置との間を移動可能な第2部材と、を備え、前記第1部材の軸方向から前記治具を見た平面視において、前記第2部材が前記第2の位置にあるときには、前記第2部材が前記第1の位置にあるときに比べて、前記第2部材が、前記第1部材に対して前記第1部材の軸方向と直交する方向に離れ、前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって100mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅40mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置されるとともに、前記第2部材は、前記第2部材が前記第1部材に対して前記第1部材の軸方向と直交する方向に離れた際に前記チェッカー煉瓦の前記縦孔内で前記第1部材の軸方向と直交する方向に押し広げられる複数の可動片を有する治具。
前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって200mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅40mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置されてもよい。
前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって100mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅20mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置されてもよい。
ここで、第1部材の径方向とは、第1部材の軸方向と直交する方向をいう。また、第2部材が第1部材に対して第1部材の径方向に離れるとは、両部材が完全に離間する場合のみでなく、例えば第1部材に第2部材が一部接しながらその接点を中心に回転する場合も含む。
一般に、チェッカー煉瓦の高さは100mm~200mm程度であり、縦孔の最小幅は40mm以上である。長さが100mm超かつ最大幅40mm未満の先端領域を有する治具によれば、治具の先端領域を、複数段のチェッカー煉瓦の縦孔に上方から差し込むことができる。先端領域の長さが200mm超であれば、より高さの高いチェッカー煉瓦にも適用することができる。
また、縦孔の最小幅が20mm程度のチェッカー煉瓦の使用が検討される場合がある。先端領域の最大幅が20mm未満であれば、そのような特殊なチェッカー煉瓦にも適用することができる。
その後、最下段のチェッカー煉瓦に治具を固定することで、最下段のチェッカー煉瓦に対して積み重ねられている全てのチェッカー煉瓦を、最下段のチェッカー煉瓦を介して治具によって支持することができる。よって、最下段のチェッカー煉瓦に対して積み重ねられている全てのチェッカー煉瓦を、治具を介して、最下段のチェッカー煉瓦と一体に引き上げることができる。
本発明によれば、狭隘な環境下でチェッカー煉瓦の吊り上げを円滑に実施することが可能になり、ひいては、熱風炉を短工期で解体することに寄与する。
本発明の一実施形態に係る治具および解体方法の対象となる外燃式の熱風炉を示す縦断面図である。 図1に示す熱風炉に設けられた煉瓦積層体を拡大して示す平面図である。 図1に示す熱風炉に設けられたビームの平面図である。 図1に示す熱風炉に設けられたコンベヤの平面図である。 図1に示す治具の使用方法の一例を示す図である。 図1に示す治具の使用方法の一例を示す図であって、図5に示す状態に対して、本体部を引き上げた状態を示す図である。 図1に示す熱風炉を解体するための治具の第1例であって、一部断面を含む正面図である。 図7に示す治具の一部を示す図であって、一部断面を含む正面図である。 図7に示す治具の一部の動作を説明する図であって、一部断面を含む正面図である。 図7に示す治具の一部の動作を説明する図であって、一部断面を含む正面図である。 図1に示す熱風炉を解体するための治具の第2例であって、一部断面を含む正面図である。 図11に示す治具を示す図であって、一部断面を含む正面図である。 図11に示す治具の動作を説明する図であって、一部断面を含む正面図である。 図11に示す治具の動作を説明する図であって、一部断面を含む正面図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第1工程を説明する断面図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第1工程を説明する断面図であって、図15に示す状態に対して、縦コアボーリング機によって煉瓦積層体の一部を除去した状態を示す図である。 図16に示す作業が完了した状態において、煉瓦積層体に形成されるボーリング穴の平面図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第1工程を説明する断面図であって、図15に示す状態に対して、治具によって煉瓦積層体の一部を除去する状態を示す図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第1工程の変形例を説明する断面図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第2工程を説明する断面図であって、一部のボーリング穴を二点鎖線で示した図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第2工程を説明する断面図であって、炉内シュートが形成された状態を示す図である。 図1に示す熱風炉の解体方法の第3工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る治具および解体方法の対象となる内燃式の熱風炉を示す縦断面図である。
以下、図1から図23を参照し、本発明の一実施形態に係る治具50および熱風炉の解体方法を説明する。まず、解体の対象となる熱風炉1について説明する。
(熱風炉)
図1に示すように、熱風炉1は、外燃式の熱風炉1である。熱風炉1は、高炉に吹き込む熱風を生成する。なお熱風炉1は、後述する内燃式の熱風炉1A(図23参照)や、頂部燃焼式の熱風炉(不図示)であってもよい。
熱風炉1は、蓄熱室10と、蓄熱室10の外部に設置された燃焼室20と、を備えている。
蓄熱室10は、円筒状の炉体11(直胴部)と、炉体11の底部に設置されたチェッカー受け金物12と、チェッカー受け金物12の上面に設置された煉瓦積層体13と、炉体11の上部に設置されたコニカル部14と、コニカル部14の上部に設置された蓄熱室ドーム部15と、を備えている。
煉瓦積層体13は、多数のチェッカー煉瓦130を炉高方向に積層したチェッカー煉瓦の煉瓦積層体である(以下、単に煉瓦積層体という)。煉瓦積層体13は、複数段のチェッカー煉瓦130によって形成されている。各段のチェッカー煉瓦130は、炉体11の水平断面の全域にわたって密に設けられている。チェッカー煉瓦130は、炉体11の下部(底部)から上部までの領域にわたって複数段積み上げられている。なお、煉瓦積層体13を構成するチェッカー煉瓦130は、上下に接する各段で相互に荷重負担するために水平方向にずらされて積まれていることが多い(いわゆるAB積み、ABC積み)が、水平方向にずらされて積まれていなくてもよい(いわゆるAA積み)。
なお、いわゆるAB積みでは、各段におけるチェッカー煉瓦130の配置パターンが、AパターンおよびBパターンの2種類である。この場合、チェッカー煉瓦130がAパターンで配置されている段に対して上下隣り合う段では、チェッカー煉瓦130がBパターンで配置されている。
ABC積みでは、各段におけるチェッカー煉瓦130の配置パターンが、Aパターン、BパターンおよびCパターンの3種類である。この場合、Aパターンで配置されている段に対して上下隣り合う2つの段の一方では、チェッカー煉瓦130がBパターンで配置され、他方ではチェッカー煉瓦130がCパターンで配置されている。
AB積み、ABC積みのいずれであっても、上下に接する各段でチェッカー煉瓦130が水平方向にずらされて積まれている場合、1つのチェッカー煉瓦130には、そのチェッカー煉瓦130に対して水平方向にずらされた複数のチェッカー煉瓦130が積み重ねられる。
またいわゆるAA積みでは、各段におけるチェッカー煉瓦130の配置パターンが、同一パターン(Aパターンの1種類のみ)である。
図2に、炉高方向から平面視した煉瓦積層体13の拡大図を示す。図2において、紙面に垂直な方向が炉高方向であり、上下方向である。以下、各段のチェッカー煉瓦130について詳述するが、各段のチェッカー煉瓦130の構造はこれに限定されない。
図2に示すように、各段のチェッカー煉瓦130には、縦孔131が形成されている。縦孔131は、各段のチェッカー煉瓦130を上下方向に貫通している。縦孔131は、第1縦孔131aと、第2縦孔131bと、を備えている。
第1縦孔131aは、1つのチェッカー煉瓦130の内部に形成されている。言い換えると、チェッカー煉瓦130を上下方向から見た平面視において、第1縦孔131aは、チェッカー煉瓦130の外周縁の内側に配置されている。
第2縦孔131bは、隣り合うチェッカー煉瓦130の間に形成される。言い換えると、チェッカー煉瓦130を上下方向から見た平面視において、第2縦孔131bは、チェッカー煉瓦130の外周縁の外側に配置されている。
以上のように、縦孔131の形態は、1つの縦孔131の全体が1つのチェッカー煉瓦130に形成されている形態に限られない。例えば1つの縦孔131が、複数のチェッカー煉瓦130の間に形成されていてもよい。
第1縦孔131aおよび第2縦孔131bは、いずれも平面視形状が同等である。なお前述したように、チェッカー煉瓦130は上下に接する各段で水平方向にずらされた積み方をされているが、各段の縦孔131は、重ね合わされている。すなわち、各段におけるチェッカー煉瓦130の縦孔131は、水平方向の位置が同等とされている。言い換えると、複数段のチェッカー煉瓦130は、各段のチェッカー煉瓦130における縦孔131が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられている。すなわち、上下方向に隣り合う各段のチェッカー煉瓦130において互いの縦孔131の位置が水平方向に合っていて、各段のチェッカー煉瓦130の縦孔131が上下方向につながっている。その結果、同軸的に配置された縦孔131を通して、気体(燃焼ガス)が煉瓦積層体13を上下方向に円滑に流通する。なお、各段のチェッカー煉瓦130において、複数の縦孔131は、水平方向に互いに同等の距離に配置されている。
図1に示すように、燃焼室20は、円筒状の炉体21と、炉体21の底部に設置された加熱用のバーナー22と、炉体21の側面に接続された図示しない混合室と、前記混合室と高炉とを接続する図示しない送風管と、炉体21の上部に設置された燃焼室ドーム部16と、を備えている。燃焼室ドーム部16は、前述した蓄熱室ドーム部15に接続されている。炉体21の内部は、燃焼室ドーム部16および蓄熱室ドーム部15を介して蓄熱室10の炉体11の内部と連通されている。
蓄熱室10の炉体11、コニカル部14、蓄熱室ドーム部15や、燃焼室20の炉体21、燃焼室ドーム部16はいずれも、炉壁30によって形成されている。炉壁30は、鉄皮31と、鉄皮31の内面に配置された炉壁煉瓦32と、を備えている。炉壁煉瓦32は、断熱煉瓦や耐火煉瓦である。断熱煉瓦および耐火煉瓦は、鉄皮31側からこの順に配置される。
(熱風炉の解体システム)
なお図1では、熱風炉1が高炉に熱風を送風している状態ではなく、熱風炉1を解体するための準備がされている状態を示している。図1に示す熱風炉1には、作業者Pが蓄熱室ドーム部15の解体作業を実施するための炉内デッキ42と、炉内デッキ42から吊り下げられたビーム45と、ビーム45から吊り下げられ、煉瓦積層体13を解体するための治具50と、煉瓦積層体13上に設けられ、チェッカー煉瓦130を搬送するコンベヤ41と、が設けられている。これらの炉内デッキ42、ビーム45、治具50およびコンベヤ41は、熱風炉の解体システム40を構成する。
(炉内デッキ)
炉内デッキ42は、熱風炉1内においてビーム45より上側に設置されている。なお炉内デッキ42は、ビーム45によって形成されていてもよい。
チェッカー煉瓦130の解体の着手前に炉内デッキ42を設置することにより、蓄熱室ドーム部15の炉壁煉瓦32の解体および煉瓦積層体13のチェッカー煉瓦130の解体の同時開始(並行作業)が可能となる。これにより、例えば、蓄熱室ドーム部15の炉壁煉瓦32の解体が終了するまで、煉瓦積層体13のチェッカー煉瓦130の解体に着手できない等といったことがなくなり、待ち時間をなくして工期短縮が可能となる。例えば、炉内デッキ42をコニカル部14に設置し、蓄熱室ドーム部15やコニカル部14の炉壁煉瓦32の解体と、煉瓦積層体13のチェッカー煉瓦130の解体と、に同時に着手してもよい。
(ビーム)
図3に示すように、ビーム45は、上下方向(炉頂部)から見た平面視において格子状に形成されている。ただし、ビーム45の配置は、図3に示す格子状に限定されず、例えば、上下方向(炉頂部)から見た平面視において同心円状に形成されていてもよい。
(治具)
治具50は、チェッカー煉瓦130を吊り下げる。チェッカー煉瓦130には、前述したように燃焼ガスの流路となる縦孔131が存在する。その縦孔131に治具50を入れて吊り上げることで、チェッカー煉瓦130を狭隘な環境下でも重機を使用せずに機械的に解体することができる。
治具50は、ウィンチ51(チェーンブロック)と、連結部52と、本体部53と、を備えている。
ウィンチ51は、電動ウィンチである。ウィンチ51は、ビーム45に接続されている。ウィンチ51は、ビーム45に、ビーム45上を摺動可能であるようにスライド金具を介して接続されていてもよい。この場合、治具50をビーム45に沿ってスライド移動させることができる。その結果、水平方向に沿って所望の位置のチェッカー煉瓦130を吊り上げたり、チェッカー煉瓦130の搬送を容易にしたりすることができる。また、ビーム45が平面視において格子状に形成されている場合には、治具50をビーム45に沿ってスライド移動させることで、治具50を熱風炉1内において多様な位置に移動させることができる。
連結部52は、ウィンチ51に接続されている。連結部52は、水平方向に延びている。
本体部53は、連結部52から下方に向けて延びている。本体部53は、連結部52に、水平方向に間隔をあけて複数設けられている。なお本体部53は、1つであってもよく、このとき、連結部52は不要である。
本体部53は、複数段のチェッカー煉瓦130のうち、少なくとも上から2段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に上方から差し込み可能である。縦孔131に本体部53を差し込むことは、縦孔131の外部から縦孔131内に本体部53を突き入れる、差し入れる動作を意味する。また本体部53が、複数段のチェッカー煉瓦130のうち、少なくとも上から2段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に上方から差し込み可能であるということは、本体部53の先端から所定の長さの領域が縦孔131の孔径よりも細いことを意味する。前記所定の長さは、少なくとも1段分のチェッカー煉瓦130の縦孔131の深さによりも長い。すなわち、前記所定の長さは、1段分超のチェッカー煉瓦130の縦孔131の深さに相当する長さである。前記所定の長さは、例えば縦孔131の深さの1.2倍であってもよい。チェッカー煉瓦130に十分に治具を固定するため、前記所定の長さは縦孔131の深さの1.5倍以上であることが好ましい。各本体部53は、縦孔131に挿入され、例えば縦孔131の内周面からチェッカー煉瓦130を保持して吊り上げる。
なお、本体部53が連結部52に対してスライド可能であってもよい。この場合、チェッカー煉瓦130の寸法(縦孔131間の距離)にあわせて本体部53の位置を調節することができる。ここでチェッカー煉瓦130の寸法は、熱風炉1によって異なる。よって、本体部53が連結部52に対してスライド可能であると、同一の治具50を異なる熱風炉1にも適用することができる。
また治具50は、ビーム45から吊り下げるのに代えて、蓄熱室ドーム部15の頂部や基部から吊り下げてもよい。なおまた、治具50は、炉内デッキ42から吊り下げてもよい。
(コンベヤ)
図1および図4に示すように、コンベヤ41は、チェッカー煉瓦130を搬送する。コンベヤ41は、煉瓦積層体13の上面に設置される。コンベヤ41は、例えば、外部電源が不要なローラコンベヤである。コンベヤ41は、後述するシュート縦穴71にチェッカー煉瓦130を搬送する。コンベヤ41は、シュート縦穴71(または、シュート縦穴71の形成予定地)を中心として放射状に配置されていることが好ましい。
(チェッカー煉瓦の引き上げ方法)
ここで、上記治具50を利用したチェッカー煉瓦の引き上げ方法(煉瓦積層体の解体方法)の概要を、図5および図6を用いて説明する。
なお図示の例では、煉瓦積層体13を構成するチェッカー煉瓦130が、いわゆるAB積みされているが、この方法は、チェッカー煉瓦130がABC積みやAA積みされている煉瓦積層体13に適用することも可能である。
本実施形態では、治具50によって一度に複数のチェッカー煉瓦130を吊り下げることができる。この治具50によれば、水平方向に並んだ複数のチェッカー煉瓦130を数段分、一度に吊り下げることができる。
具体的には、まず図5に示すように、チェッカー煉瓦130の縦孔131に治具50(本体部53。以下、本段落において同じ)を差し込む。このとき、煉瓦積層体13のうち、少なくとも上から2段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に上方から治具50を差し込む。また、水平方向に並ぶ複数の縦孔131に治具50を差し込む。これにより、少なくとも上から2段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に治具50が配置される。ここで、縦孔131に治具50が配置されていることは、縦孔131内に治具50が位置している状態を意味する。なお図示の例では、上から3段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に治具50が配置されている。
この工程の実施に際しては、例えば治具50のウィンチ51を利用して連結部52および本体部53を下降させ、本体部53を縦孔131内に挿入させる。
次いで、チェッカー煉瓦130に治具50(本体部53。以下、本段落において同じ)を固定する。このとき、縦孔131内に治具50が配置された3段のチェッカー煉瓦130のうち、少なくとも最下段のチェッカー煉瓦130である3段目のチェッカー煉瓦130に治具50を固定する。また、水平方向に並ぶ複数のチェッカー煉瓦130それぞれに治具50を固定する。
またチェッカー煉瓦130に治具50を固定することは、チェッカー煉瓦130と治具50との上下方向の相対的な移動が規制されていない状態から規制された状態に変更することを意味する。例えば、チェッカー煉瓦130に治具50を固定することには、チェッカー煉瓦130の縦孔131の内周面に治具50を押し当てていない状態から、前記内周面に治具50を押し当てる状態に変更する場合が含まれる。
さらに、チェッカー煉瓦130に治具50が固定されていることは、チェッカー煉瓦130と治具50との上下方向の相対的な移動が規制されている状態であることを意味する。
なお、この工程を実施するための具体的な治具50の構造については後述する。
そして図6に示すように、チェッカー煉瓦130に固定された治具50(本体部53。以下、本段落において同じ)を介してチェッカー煉瓦130を引き上げる。このとき、前記3段目のチェッカー煉瓦130に固定された治具50を介して、3段目のチェッカー煉瓦130に積み重ねられたチェッカー煉瓦130を引き上げる。また、治具50が固定された水平方向に並ぶ複数のチェッカー煉瓦130を引き上げる。
ここで図示の例では、上下に接する各段のチェッカー煉瓦130が、水平方向にずらされて積まれている。したがって、3段目の各チェッカー煉瓦130には、前述したように、それぞれのチェッカー煉瓦130に対して水平方向にずらされた複数のチェッカー煉瓦130が2段目から積み重ねられる。2段目の各チェッカー煉瓦130にも同様に、それぞれのチェッカー煉瓦130に対して水平方向にずらされた複数のチェッカー煉瓦130が1段目から積み重ねられる。よって、3段目のチェッカー煉瓦に固定された治具を介してチェッカー煉瓦130を引き上げたとき、2段目のチェッカー煉瓦130、1段目のチェッカー煉瓦130の方が、引き上げられるチェッカー煉瓦130の水平方向の数が多くなる。言い換えると、前記3段目のチェッカー煉瓦130を引き上げたとき、一体に引き上げられるチェッカー煉瓦130の数は、上の段に向かうに従い、多くなる。
この工程の実施に際しては、例えば治具50のウィンチ51を利用して連結部52および本体部53を上昇させ、本体部53をチェッカー煉瓦130とともに引き上げる。言い換えると、一つずつではなく複数段のチェッカー煉瓦130を一気に吊り上げることが可能である。
なお図示の例では、治具50によって複数段のチェッカー煉瓦130を引き上げているが、最も上側に位置する1段のチェッカー煉瓦130のみを引き上げてもよい。この場合、治具50を差し込むときに、複数段のチェッカー煉瓦130に差し込まなくてよく、最も上側に位置する1段のチェッカー煉瓦130のみに差し込めばよい。このとき、当該チェッカー煉瓦130は、最上段かつ最下段のチェッカー煉瓦130である。
ここで、前述のように、上下に接する各段のチェッカー煉瓦130が水平方向にずらされて積まれている場合、上から3段目のチェッカー煉瓦130を引き上げたとき、一体に引き上げられるチェッカー煉瓦130の数は、上の段に向かうに従い、多くなる。そのため、チェッカー煉瓦130を解体する過程で、最終的には下の段のチェッカー煉瓦130のみが残ることが考えられる。このように、複数段のチェッカー煉瓦130を引き上げた結果、局所的に1段のチェッカー煉瓦130のみを引き上げることが望まれる状態が発生した場合などであっても、1段のチェッカー煉瓦130も除去できる治具50であれば、治具50を変更する必要がない。このような場合には、施工性を高めることができる。
(治具の具体的な構成)
次に上記治具50の具体的な構成の第1例および第2例を示す。治具50の形態は、これらの形態に限られない。例えば、以下の構成では第1部材55を第2部材56に対して上昇させることにより第2部材56を第1の位置から第2の位置に移動させてチェッカー煉瓦130に治具を固定するが、第1部材55を第2部材56に対して下降させることにより第2部材56を第1の位置から第2の位置に移動させてチェッカー煉瓦130に治具を固定する構成としてもよい。
(第1例に係る治具)
図7に示すように、第1例に係る治具50では、各本体部53は、チェーン54と、第1部材55と、第2部材56と、移動機構57と、レバー58と、を備えている。なお第1部材55は、1つの部品によって形成されていてもよく、複数の部品によって形成されていてもよい。第2部材56は、1つの部品によって形成されていてもよく、複数の部品によって形成されていてもよい。
第1部材55は、その先端から縦孔131に差し込まれる。第1部材55は、棒状に形成されている。第1部材55は、上下方向に延びている。第1部材55は、チェーン54を介して連結部52に連結されている。第1部材55は、楔部分55aを備えている。楔部分55aは、下方に向かうに従い拡径している。なお楔部分55aは、下方に向かうに従い全周にわたって拡径していなくてもよい。言い換えると、楔部分55aは、下方に向かうに従い水平方向のうちの第1方向Xに拡幅してもよい。
第2部材56は、第1部材55に取り付けられて第1部材55とともに縦孔131に差し込まれる。第2部材56は、第1部材55の周囲に配置された複数の可動片59を備えている。
本実施形態では、複数の可動片59として、2つの可動片59が設けられている。2つの可動片59は、例えば、1つの円筒を第1方向Xに半円状に分割して形成される。2つの可動片59のうち、第1方向Xの第1側X1に位置する可動片59を第1可動片59aといい、第1方向Xの第2側X2に位置する可動片59を第2可動片59bという。第1可動片59aには、後述する第1ピン63が連結される突部61が設けられている。
ここで第1部材55および第2部材56は、直接的でなく間接的に取り付けられていてもよい。言い換えると、第1部材55と第2部材56との間に他の部材が介在しない状態で、第1部材55および第2部材56が直接的に取り付けられていてもよい。第1部材55と第2部材56との間に他の部材が介在した状態で、第1部材55および第2部材56が間接的に取り付けられていてもよい。本実施形態では、第1部材55と第2部材56との間には、ピン60が設けられている。
ピン60は、可動片59に差し込まれ水平方向に延びている。ピン60は、可動片59の上端に差し込まれる。ピン60は、水平方向のうち、第1方向Xに直交する第2方向Yに延びている。可動片59は、ピン60回りに回転可能である。可動片59の下端が第1方向Xに押し広げられると、可動片59がピン60回りに回転する。ピン60は、可動片59における第2方向Yの端部に設けられている。ピン60は、2つ(複数)の可動片59を一体に連結する。
移動機構57は、第2部材56に対して第1部材55を上下方向に移動させる。その結果、第2部材56は、第1部材55に対して第1の位置と第2の位置との間を移動する。第1部材55が下降端位置に位置するとき、第2部材56は第1の位置に位置する。第1部材55が上昇端位置に位置するとき、第2部材56は第2の位置に位置する。
移動機構57は、梃子(第1種梃子)である。移動機構57は、棒材62と、第1ピン63と、第2ピン64と、を備えている。棒材62は、第1方向Xに延びる。棒材62は第1方向Xの第1側X1から第2側X2に向かうに従い下側に延びている。棒材62の第1方向Xの中央部は、第1ピン63を介して第1可動片59a(突部61)に固定されている。第1ピン63は、移動機構57の支点となる。棒材62の第2側X2の端部は、第1部材55に第2ピン64を介して連結されている。第2ピン64は、移動機構57の作用点となる。
レバー58は、移動機構57と一体に形成されている。レバー58は、複数の本体部53それぞれに独立して設けられている。言い換えると、複数の本体部53のうち、ある1つの本体部53のレバー58を操作しても、他の本体部53の移動機構57に影響は生じない。
レバー58は、棒材62の第1側X1の端部によって形成されている。レバー58は、移動機構57における力点となる。
上記移動機構57において、レバー58を下方に向けて押し下げると、棒材62が第1ピン63を中心として回転する。これにより、第2ピン64が上昇して第1部材55が上昇する。
第1部材55は、第2部材56に対して上昇したときに複数の可動片59を第1部材55の径方向に押し広げる。このとき、第2部材56は第1の位置から第2の位置に移動する。本実施形態では、第1部材55が上昇すると、楔部分55aが、複数の可動片59を第1方向X(水平方向)の外側に向けて押し広げる。このとき、複数の可動片59はそれぞれ、前述のピン60回りに回転する。このように、第1部材55の軸方向から治具50を見た平面視において、第2部材56が第2の位置にあるときには、第2部材56が第1の位置にあるときに比べて、第2部材56が第1部材55の径方向に離れる。
ここで、第1部材55の径方向とは、第1部材55の軸方向と直交する方向をいう。また、第2部材56が第1部材55に対して第1部材55の径方向に離れるとは、両部材が完全に離間する場合のみでなく、例えば第1部材55に第2部材56が一部接しながらその接点を中心に回転する場合(第2部材56が径方向に広がる場合)も含む。
ここで第2部材56が第1の位置にあるとき、治具50(第1部材55)の先端から100mm超の領域が最大幅40mm未満の先端領域Rであり、第2部材56は先端領域Rに配置される。好ましくは、第2部材56が第1の位置にあるとき、治具50の先端から200mm超の領域が最大幅40mm未満の先端領域Rであり、第2部材56は先端領域Rに配置される。より好ましくは、第2部材56が第1の位置にあるとき、治具50の先端から100mm超の領域が最大幅20mm未満の先端領域Rであり、第2部材56は先端領域Rに配置される。
一般に、チェッカー煉瓦130の高さは100mm~200mm程度であり、縦孔131の最小幅は40mm以上である。長さが100mm超かつ最大幅40mm未満の先端領域Rを有する治具50によれば、治具50の先端領域Rを、複数段のチェッカー煉瓦130の縦孔131に上方から差し込むことができる。先端領域Rの長さが200mm超であれば、より高さの高いチェッカー煉瓦130にも適用することができる。
また、縦孔131の最小幅が20mm程度のチェッカー煉瓦130の使用が検討される場合がある。先端領域Rの最大幅が20mm未満であれば、そのような特殊なチェッカー煉瓦130にも適用することができる。
上記治具50を用いてチェッカー煉瓦130を除去する方法は、例えば以下のように実施することができる。
まず図8に示すように、第1部材55および第2部材56をチェッカー煉瓦130の縦孔131に差し込む。このとき、第2部材56が第1の位置にある閉状態で、縦孔131に第1部材55および第2部材56を差し込む。その後、図9に示すように、レバー58を操作して(押し下げて)、第2部材56に対して第1部材55を上昇させる。すなわち、第2部材56を第1の位置から第2の位置に移動させる。すると、複数の可動片59がチェッカー煉瓦130の縦孔131内で径方向(第1方向X)に押し広げられて開状態となる。これにより、複数の可動片59が縦孔131の内周面に押し当てられ、チェッカー煉瓦130に治具50が固定される。
複数の可動片59がチェッカー煉瓦130の縦孔131の内周面に押し当てられた状態で本体部53を引き上げると、可動片59の表面とチェッカー煉瓦130の縦孔131の内周面との間に生じる摩擦力により、チェッカー煉瓦130が本体部53とともに引き上げられて吊り下げられる。したがって、例えば上記連結部52を介して本体部53をウィンチ51により引き上げる等することで、チェッカー煉瓦130を人力によらず搬送することができる。
例えば、治具50によってチェッカー煉瓦130を搬送する等した後には、図8に示すように、レバー58を引き上げる。すると、第1部材55が第2部材56に対して下降する。これにより、第1部材55が可動片59を押し広げられていた状態が解除される。よって、複数の可動片59が、それぞれの自重によってピン60回りに回転する。その結果、第2部材56の外径が押し広げられる前の状態に縮径し(第1方向Xの幅が狭まり)、図10に示すように、本体部53をチェッカー煉瓦130の縦孔131から円滑に引き抜くことができる。
(第2例に係る治具)
前記第1例に係る治具50では、移動機構57が、1組の第1部材55および第2部材56に対して1つずつ設けられていたが、図11から図14に示す第2例に係る治具50Aのように、移動機構57が、複数組の第1部材55および第2部材56に対して1組設けられていてもよい。治具50Aでは、連結部52が、複数の第1部材55が一体に固定された第1連結部65と、複数の第2部材56が一体に固定された第2連結部66と、を備えている。複数の第1部材55は、第1連結部65の下側に向けて延びている。複数の第2部材56は、第2連結部66の下側に向けて延びている。移動機構57は、第2連結部66に対して第1連結部65を引き上げることで、第2部材56に対して第1部材55を上昇させる。移動機構57の第1ピン63(支点)は、第2連結部66に固定されている。移動機構57の第2ピン64(作用点)は、第1連結部65に固定されている。
以上説明したように、本実施形態に係る治具50、50Aによれば、狭隘な炉内の作業でも採用可能な機械による作業化を達成できる。それにより、チェッカー煉瓦130の解体作業の効率が改善され、解体工期の短縮が可能となる。
前記治具50、50Aによれば、チェッカー煉瓦130に縦孔131が形成されてさえいればチェッカー煉瓦130を吊り上げることができる。よって、例えば、治具を縦孔131に挿入して治具の爪によってチェッカー煉瓦130を下側から支える構造や、チェッカー煉瓦130に形成された凹部にバンドやロープを掛けることでチェッカー煉瓦130を吊り上げる方法よりも、適用可能なチェッカー煉瓦130の形状の制約が少ない。すなわち、縦孔131が形成されていれば、縦孔131の周辺におけるチェッカー煉瓦130の形状は特に限定されない。例えば、この治具50は、多角形のチェッカー煉瓦130に縦孔131が1つまたは複数開いている形状のチェッカー煉瓦130にも適用可能であり、円筒状のチェッカー煉瓦130に縦孔131が1つまたは複数開いている形状のチェッカー煉瓦130にも適用可能である。なお、縦孔の形状は円筒状(円形断面)に限定されない。
(熱風炉の解体方法)
次に、上記治具50を利用した熱風炉の解体方法を説明する。なおこの解体方法では、上記第1例に係る治具50に代えて、第2例に係る治具50Aを使用することもできる。さらに、これらの治具50、50Aとは異なる構成を採用してもよい。
まず図1に示すように、炉内デッキ42、ビーム45および治具50を設置する。そして、煉瓦積層体13を解体する工程と、蓄熱室ドーム部15を解体する工程と、を並行して実施することが好ましい。なお、煉瓦積層体13を解体した後に蓄熱室ドーム部15を解体してもよいし、蓄熱室ドーム部15を解体した後に煉瓦積層体13を解体してもよい。炉内デッキ42の早期設置する場合、蓄熱室ドーム部15の解体作業の完了を待たず、炉体11の解体作業を開始できるため、工期短縮が可能となる。
煉瓦積層体13を解体する工程では、煉瓦積層体13に炉内シュート70を形成することが好ましい。この炉内シュート70は、その内部を通してチェッカー煉瓦130を搬出する役割を有する。炉内シュート70は、シュート縦穴71および横穴72によって形成される。煉瓦積層体13を解体する工程は、以下に示す第1工程から第3工程を含む。
図15から図18に示すように、第1工程では、チェッカー煉瓦130を除去することによって熱風炉1にシュート縦穴71を形成する。本実施形態の第1工程では、治具50および縦コアボーリング機43の両方を用いてシュート縦穴71を形成する。縦コアボーリング機43は、熱風炉1内(煉瓦積層体13上)に配置される。なお本実施形態において、図15に示す通り、第1工程の前に作業用の炉外デッキ47を設けることができるが、後述する第2工程の前に炉外デッキ47を設けるようにしてもよい。
本実施形態では、まず図16および図17に示すように、例えば、直径0.7m、高さ1.7m分のチェッカー煉瓦130を縦コアボーリング機43により除去し、ボーリング穴71aを形成する。このとき、除去する部分(シュート縦穴71の形成予定地)の外縁に沿って、複数のボーリング穴71aを形成する。なお、複数台の縦コアボーリング機43により、複数のボーリング穴71aを同時に施工してもよい。各ボーリング穴71aは、例えば、直径160mmの大きさであってもよい。
その後、図18に示すように、シュート縦穴71の形成予定地のうち、外縁よりも内側に位置するチェッカー煉瓦130を、前記治具50によって吊り下げて搬送し、除去する。言い換えると、治具50を差し込む工程および治具50を固定する工程を実施した後、チェッカー煉瓦130を引き上げる工程を実施することで引き上げられたチェッカー煉瓦130を除去する。これにより、シュート縦穴71の形成予定地のチェッカー煉瓦130が除去され、シュート縦穴71が形成される。
なお、シュート縦穴71を形成するために、煉瓦積層体13においてチェッカー煉瓦130を除去する範囲は、上記寸法(直径0.7m、高さ1.7m)が望ましいが、解体する煉瓦積層体13の寸法に合わせて適宜変更してもよい。また、シュート縦穴71を形成する際には、治具50および縦コアボーリング機43の両方を用いる方法が望ましいが、図19に示すように治具50のみを用いたり、縦コアボーリング機43のみを用いたりしてチェッカー煉瓦130を取り除いてもよい。さらに、治具50および縦コアボーリング機43の両方を用いなくてもよい。
図20および図21に示すように、第2工程では、シュート縦穴71を外部に開口させる。本実施形態の第2工程では、熱風炉1の外部から鉄皮31を通してチェッカー煉瓦130を除去し、シュート縦穴71に連通する横穴72を形成する。第2工程では、横穴72を通してシュート縦穴71を外部に開口させる。
このとき図20に示すように、鉄皮31側から横コアボーリング機44によりチェッカー煉瓦130を除去することが好ましい。横コアボーリング機44は、熱風炉1外に配置される。またこのとき、シュート縦穴71の下端から炉外側にかけて、横穴72の底面の一部(傾斜部73)を階段状に形成することが好ましい。この場合、横穴72の深さを、上方から下方に向けて徐々に小さくする。
例えば、横穴72のうち、上段においてはボーリング穴72aを横6列で、各ボーリング穴72aの直径160mmで深さ1.6m(鉄皮31から水平方向に1.6mの位置)までボーリングをする。当該ボーリング穴72以下aのボーリング深さを漸減させ、横穴72のうち、下段においてはボーリング穴72aを横6列で、各ボーリング穴72aの直径160mmで深さ0.1m(鉄皮31から水平方向に0.1mの位置)までボーリングをする。これにより、前述の傾斜部73が形成される。ボーリング穴72aの断面を一部重複させつつ、上下方向(高さ方向)に例えば13段のボーリング穴72aを開けることにより、幅方向1.9m×高さ方向0.9mの開口を有する横穴72を形成することができる。このとき、複数台の横コアボーリング機44により同時施工してもよい。横穴72の開口の外縁に沿ってボーリング穴72aを開け、外縁よりも内側に位置するチェッカー煉瓦130を除去するようにしても良い。
ただし、横穴72の開口寸法は上記寸法に限らず、解体するチェッカー煉瓦130の寸法に合わせて変更してもよい。また、横穴72の開口方法として横コアボーリング機44によってチェッカー煉瓦130を除去する方法が望ましいが、手作業で解体可能な範囲に関しては、手作業で行ってもよい。また、横穴72の底面が階段状でなくてもよく、傾斜部73がなくてもよい。ただし、横穴72の底面の一部を階段状に形成する場合、この底面の一部(階段状の部分)を利用して、チェッカー煉瓦130を熱風炉1の外部に容易に搬送することができる。
図21に示すように、シュート縦穴71および横穴72により、炉内シュート70が形成される。炉内シュート70は、チェッカー煉瓦130の落し口となる。
なお、炉内シュート70(シュート縦穴71)は、煉瓦積層体13の外周寄りに設けられていることが好ましい。この場合、横穴72の深さ(水平方向の大きさ)を浅くすることができ、場合によっては単に鉄皮31を除去するだけでシュート縦穴71を外部に開口させることが可能となる。ただし、チェッカー煉瓦130を除去して横穴72を形成する場合、横穴72を深く形成することができる。よって、例えばシュート縦穴71を鉄皮31から離れた位置に形成することが可能になり、熱風炉1のシュート縦穴71の位置の自由度を高めること等ができる。
炉内シュート70の形成にあわせ、図示しない仮設シュートを炉外に形成してもよい。仮設シュートは、炉内シュート70から搬出されたチェッカー煉瓦130を炉外で落下させるための構造物である。仮設シュートは、鉄皮31に沿って地上まで繋げることができる。
図22に示すように、第3工程では、熱風炉1の外部に開口したシュート縦穴71(熱風炉1のシュート縦穴71および横穴72)を通して熱風炉1内のチェッカー煉瓦130を熱風炉1の外部に搬出する。
このとき、煉瓦積層体13のうち、炉内シュート70が設けられていない領域のチェッカー煉瓦130を、治具50を利用して吊り上げることが好ましい。吊り上げたチェッカー煉瓦130は、例えば、コンベヤ41を利用して炉内シュート70に搬送し、炉内シュート70(および仮設シュート)を通して搬出する。言い換えると、治具50を差し込む工程および治具50を固定する工程を実施した後、チェッカー煉瓦130を引き上げる工程を実施することで引き上げられたチェッカー煉瓦130をシュート縦穴71に搬送する。
治具50により吊り上げたチェッカー煉瓦130は、所定位置に仮置きしてから人手で炉外に搬送してもよいし、コンベヤ41によって炉外に搬送してもよい。最も好ましくは、治具50により吊り上げたチェッカー煉瓦130をコンベヤ41に乗せて炉内シュート70に落とす。コンベヤ41を用いることにより、離れた場所で解体したチェッカー煉瓦130を人手で運ばなくても炉内シュート70に落とすことができるため好ましい。解体したチェッカー煉瓦130を治具50により吊り上げ、コンベヤ41により炉内シュート70に落とす。これにより、図22に示すように、チェッカー煉瓦130は炉内シュート70の階段状の底面(傾斜部73)を通って仮設シュートに至り、地上まで搬送される。このとき、傾斜部73では、階段が下る方向(炉内から炉外に向かう方向)に沿って、チェッカー煉瓦130が自重により移動する(落下する)。そのため、傾斜部73に対応する鉄皮31の位置に、チェッカー煉瓦130の飛び跳ねを防止する防止板を設けておくことが好ましい。
炉内シュート70の底部に対応する高さ位置までのチェッカー煉瓦130が解体されるまで、チェッカー煉瓦130(煉瓦積層体13)を解体したとき、本実施形態では、第1工程に戻りシュート縦穴71を再び形成する。なお、炉内シュート70の底部に対応する高さ位置までチェッカー煉瓦130を解体する前に、次のシュート縦穴71を形成してもよい。炉内シュート70の底部に対応する高さ位置よりも深くチェッカー煉瓦130を解体した後に、次のシュート縦穴71を形成してもよいが、このとき、解体したチェッカー煉瓦130を高く持ち上げて(吊り上げて)炉内シュート70から排出する必要が生じる。
その後、第2工程および第3工程を実施し、チェッカー煉瓦130を更に解体する。言い換えると、本実施形態では、第1工程から第3工程を複数回繰り返し、複数段のチェッカー煉瓦130を所定高さずつ(例えば1~5mずつ)複数回に分けて解体する。すなわち、2回目以降の第2工程において形成する熱風炉1の横穴72は、直前の第2工程において形成していた熱風炉1の横穴72よりも、1~5m低くすることができる。その結果、本実施形態では、炉体11に設けられた炉外デッキ47と同程度の間隔で炉内シュート70を掘り下げていくことになる。これにより、炉外デッキ47を利用して横穴72を形成することができる。この場合、横穴72を容易に形成することができる。
なお、炉体11の解体においては、数m(例えば3m)を1ブロックとして、チェッカー煉瓦130、炉壁煉瓦32、の順で解体を行うことができる。1ブロックの解体が完了した後に次のブロックの解体に移行するようにして、炉体11の底部まで解体を進めるとよい。例えば、炉体11の高さが36mである場合、3m×12回の繰り返しにより炉体11のチェッカー煉瓦130の解体を完了できる。
以上説明したように、本実施形態に係る熱風炉の解体方法によれば、炉内シュート70を形成することにより、外燃式の熱風炉1であっても内燃式の熱風炉1Aのように容易に炉内の解体物(例えば、チェッカー煉瓦130、炉壁煉瓦32など)を炉外に搬出できる。
すなわち、図23に示すような内燃式の熱風炉1Aは燃焼室20が炉内シュート70の役割を果たすため、炉内の解体物を地上まで搬送することは容易である。しかしながら、図1に示すような外燃式の熱風炉1は炉内に燃焼室20がないため、内燃式の熱風炉1Aと同様の方法で地上まで解体物を搬送することはできない。言い換えると、外燃式の熱風炉1は、内燃式の熱風炉1Aとは異なり、炉内に炉下部まで通じた開口がない。そのため、解体したチェッカー煉瓦130を地上まで運搬することが困難である。その結果、外燃式の熱風炉1の解体工事では、内燃式の熱風炉1Aの解体工事の工期よりも、工期が長くなり、作業も複雑となる。
そこで、外燃式の熱風炉1において前述のようにシュート縦穴71および横穴72をまず形成し、内燃式の熱風炉1Aにおける燃焼室20のような役割を果たす炉内シュート70を形成する。これにより、外燃式の熱風炉1であっても内燃式の熱風炉1A並の工期・作業性を確保することが可能となる。内燃式の熱風炉1Aにおいても、例えば、燃焼室20側の作業スペースに制約がある場合など、炉内シュート70を別途形成することが有効な場合がある。
また、一度に深いシュート縦穴71を形成するのではなく、浅いシュート縦穴71を複数回形成することができる。したがって、例えば、解体中のチェッカー煉瓦130を足場として利用して、炉壁の解体をすることができる。一度に深いシュート縦穴71を形成するのは、大規模な作業となるものの、浅いシュート縦穴71を複数回形成することにより、作業性及び安全性を向上させることができる。
ただし、第1工程から第3工程を繰り返さなくてもよい。言い換えると、一度に炉体11の底部に至るまで深い炉内シュート70を形成してもよい。
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
炉内シュート70を形成しないで熱風炉1を解体してもよい。
コンベヤ41、炉内デッキ42がなくてもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
1、1A 熱風炉
41 コンベヤ
42 炉内デッキ
45 ビーム
50、50A 治具
55 第1部材
56 第2部材
71 シュート縦穴
72 横穴
130 チェッカー煉瓦
131 縦孔

Claims (17)

  1. 複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉を解体する解体方法であって、
    各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、
    前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、
    前記解体方法は、
    前記複数段のチェッカー煉瓦のうち、少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦の縦孔に上方から治具を差し込む工程と、
    前記縦孔内に前記治具が配置された少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦のうち、最下段の前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する工程と、
    前記最下段の前記チェッカー煉瓦に固定された前記治具を介して、前記最下段の前記チェッカー煉瓦及び前記最下段の前記チェッカー煉瓦に積み重ねられた前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程と、を備え
    前記治具を固定する工程では、
    前記チェッカー煉瓦の前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てていない状態から、前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てる状態に変更することで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する熱風炉の解体方法。
  2. 複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉を解体する解体方法であって、
    各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、
    前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、
    前記解体方法は、
    前記チェッカー煉瓦の縦孔に治具を差し込む工程と、
    前記縦孔内に前記治具が配置された前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する工程と、
    前記チェッカー煉瓦に固定された前記治具を介して前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程と、を備え、
    前記治具を固定する工程では、
    前記チェッカー煉瓦の前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てていない状態から、前記縦孔の内周面に前記治具を押し当てる状態に変更することで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定し、
    前記治具は、前記複数段のチェッカー煉瓦のうち、少なくとも上から2段の前記チェッカー煉瓦の縦孔に上方から差し込み可能である熱風炉の解体方法。
  3. 前記治具は、
    前記縦孔に差し込まれる第1部材と
    前記第1部材に取り付けられて前記第1部材とともに前記縦孔に差し込まれ、前記第1部材に対して第1の位置と第2の位置との間を移動可能な第2部材と、を備え、
    前記治具を差し込む工程では、前記第2部材が前記第1の位置にある状態で、前記縦孔に前記第1部材および前記第2部材を差し込み、
    前記治具を固定する工程では、前記第2部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させることで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する請求項1または2に記載の熱風炉の解体方法。
  4. 前記治具を固定する工程では、前記第2部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるときに、前記縦孔の内周面に前記第2部材を押し当てることで、前記チェッカー煉瓦に前記治具を固定する請求項3に記載の熱風炉の解体方法。
  5. 前記チェッカー煉瓦を除去することによって前記熱風炉にシュート縦穴を形成する第1工程と、
    前記シュート縦穴を外部に開口させる第2工程と、
    前記熱風炉の外部に開口した前記シュート縦穴を通して前記熱風炉内の前記チェッカー煉瓦を前記熱風炉の外部に搬出する第3工程と、を備え、
    前記第3工程において、前記治具を差し込む工程および前記治具を固定する工程を実施した後、前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程を実施することで引き上げられた前記チェッカー煉瓦を前記シュート縦穴に搬送する請求項1から4のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  6. 前記チェッカー煉瓦を除去することによって前記熱風炉にシュート縦穴を形成する第1工程と、
    前記シュート縦穴を外部に開口させる第2工程と、
    前記熱風炉の外部に開口した前記シュート縦穴を通して前記熱風炉内の前記チェッカー煉瓦を前記熱風炉の外部に搬出する第3工程と、を備え、
    前記第1工程において、前記治具を差し込む工程および前記治具を固定する工程を実施した後、前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程を実施することで引き上げられた前記チェッカー煉瓦を除去する請求項1から5のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  7. 前記第2工程では、前記熱風炉の外部から鉄皮を通して前記チェッカー煉瓦を除去し、前記シュート縦穴に連通する横穴を形成し、前記横穴を通して前記シュート縦穴を外部に開口させる請求項5または6に記載の熱風炉の解体方法。
  8. 前記第2工程では、前記横穴の深さを、上方から下方に向けて徐々に小さくし、前記横穴の底面の一部を階段状に形成する請求項7に記載の熱風炉の解体方法。
  9. 前記第1工程から前記第3工程を複数回繰り返し、前記複数段のチェッカー煉瓦を所定高さずつ複数回に分けて解体する請求項5から8のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  10. 前記所定高さは1~5mである請求項9に記載の熱風炉の解体方法。
  11. 前記第3工程では、前記チェッカー煉瓦上に設置されたコンベヤを利用して前記チェッカー煉瓦を前記シュート縦穴に搬送する請求項5から10のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  12. 前記熱風炉は、外燃式である請求項5から11のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  13. 前記熱風炉内において、前記治具を吊り下げるビームより上側に炉内デッキを設置し、または前記ビームによって炉内デッキを形成する請求項1から12のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  14. 前記治具を差し込む工程では、水平方向に並ぶ複数の前記縦孔に前記治具を差し込み、 前記治具を固定する工程では、水平方向に並ぶ複数の前記チェッカー煉瓦それぞれに前記治具を固定し、
    前記チェッカー煉瓦を引き上げる工程では、前記治具が固定された水平方向に並ぶ複数の前記チェッカー煉瓦を引き上げる請求項1から13のいずれか1項に記載の熱風炉の解体方法。
  15. 複数段のチェッカー煉瓦を備える熱風炉に用いられる治具であって、
    各段の前記チェッカー煉瓦には、各段の前記チェッカー煉瓦を上下方向に貫通する縦孔が形成され、
    前記複数段のチェッカー煉瓦は、各段の前記チェッカー煉瓦における前記縦孔が水平方向に位置合わせされた状態で積み重ねられ、
    前記治具は、前記熱風炉内において、前記縦孔内に配置された状態で前記チェッカー煉瓦を吊り下げ、
    前記治具は、
    先端から前記縦孔に差し込まれる棒状の第1部材と、
    前記第1部材に取り付けられて前記第1部材とともに前記縦孔に差し込まれ、前記第1部材に対して第1の位置と第2の位置との間を移動可能な第2部材と、を備え、
    前記第1部材の軸方向から前記治具を見た平面視において、前記第2部材が前記第2の位置にあるときには、前記第2部材が前記第1の位置にあるときに比べて、前記第2部材が前記第1部材に対して前記第1部材の軸方向と直交する方向に離れ、
    前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって100mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅40mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置されるとともに、前記第2部材は、前記第2部材が前記第1部材に対して前記第1部材の軸方向と直交する方向に離れた際に前記チェッカー煉瓦の前記縦孔内で前記第1部材の軸方向と直交する方向に押し広げられる複数の可動片を有する治具。
  16. 前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって200mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅40mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置される、請求項15記載の治具。
  17. 前記第2部材が前記第1の位置にあるとき、前記治具の先端から前記治具の基端に向かって100mmを超えて広がる先端領域であって、前記先端領域の最大幅20mm未満であり、前記第2部材は前記先端領域に配置される、請求項15記載の治具。
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