本発明の実施形態の運転支援装置は、自転車の運転を支援する装置である。支援の対象である自転車は、電動アシスト自転車であり、主として乗員がペダルを踏む踏力により走行する車体と、車体を走行させるに当たり踏力を補うためのアシスト動力を生成する電動機と、アシスト動力を制御する制御部とを備えている。本発明の実施形態の運転支援装置は、一般的な、または既存の電動アシスト自転車に広く適用することができる。
状況検出部は、自転車の少なくとも前方の状況を検出する。状況検出部として、例えば撮像装置(カメラ)、並びにGPS(グローバルポジショニングシステム)受信機および地図情報等を用いることができる。
状況認識部は、状況検出部による検出結果に基づき、自転車から少なくとも前方に向かって所定距離内の領域に、停止を要する交差点が存在するか否かを認識する。この認識を行うに当たり、状況認識部は、例えば、交差点に信号機が設置され、その信号機が停止を指示しているとき、例えば、赤信号または赤の点滅信号であるとき、その交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。また、状況認識部は、一時停止の標識のある交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。なお、交差点に信号機や標識がなくても、交差点を人や車両が横断しており、自転車がその交差点に進入すると、人や車両に衝突するおそれがあるとき、状況認識部がその交差点を「停止を要する交差点」であると判断するようにしてもよい。また、状況認識部が見通しの悪い交差点を「停止を要する交差点」であると判断するようにしてもよい。
また、状況認識部は、例えば、GPS受信機により受信された自転車の位置情報、および地図情報に基づいて自転車の現在位置と交差点との距離を算出することにより、自転車から少なくとも前方に向かって所定距離内の領域に交差点が存在するか否かを判断する。また、状況認識部は、例えば、撮像装置によって撮像された画像に対して画像認識処理を行うことにより、交差点に設置された信号機が停止を指示しているか否か、または交差点に一時停止の標識があるか否かを判断する。
アシスト抑制部は、状況認識部の認識結果に基づき、自転車から少なくとも前方に向かって所定距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合には、当該領域に停止を要する交差点が存在しない場合と比較してアシスト動力を減少させる。なお、状況認識部の認識結果に基づき、自転車から少なくとも前方に向かって所定距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合には、アシスト抑制部が、電動機によるアシスト動力の生成を停止させるようにしてもよい。
本発明の実施形態の運転支援装置においては、停止を要する交差点に自転車が接近したとき、電動機によるアシスト動力が減少し、または停止する。アシスト動力が減少または停止することにより、自転車のペダルが重くなる。自転車のペダルが重くなると、運転者において自転車を漕ぐことが楽でなくなるため、運転者がペダルを回す速度が遅くなる。その結果、自転車の走行速度が低下し、自転車が停止し易い状態となる。このように、本発明の実施形態の運転支援装置によれば、停止を要する交差点に自転車が接近したときに、自転車がその交差点の手前で停止し易い状態を作り出すことができる。したがって、自転車を運転する者による交差点での一時不停止または信号無視等を抑制することができ、交差点での交通事故を減らすことができる。
(電動アシスト自転車)
図1は本発明の実施例の運転支援装置が設けられた電動アシスト自転車1(以下、「自転車1」という。)を示している。図1において、自転車1は、主として運転者(乗員)がペダル14を踏む踏力により走行する車体2を有している。車体2は、当該車体2の骨格を形成する車体フレーム3と、車体フレーム3の前側に回転可能に設けられたステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4の下端側にフロントフォーク5を介して回転可能に設けられた前輪6と、ステアリングシャフト4の上端側に設けられたハンドル7とを備えている。また、車体2は、車体フレーム3の後側に設けられたリアフォーク8と、リアフォーク8の後端側に回転可能に設けられた後輪9と、車体フレーム3の前後方向中央部の上側に設けられたサドル10とを備えている。さらに、車体2は、車体フレーム3の前後方向中央部の下側に回転可能に設けられたクランク軸11と、クランク軸11に固定された駆動スプロケット12と、一端側がクランク軸11に固定された一対のクランク13と、各クランク13の他端側に回転可能に設けられたペダル14と、駆動スプロケット12の回転を後輪9に伝達するチェーン15とを備えている。
また、フロントフォーク5には、前輪6の外周側における上部から後部にかけての領域を覆うフロントフェンダ16が取り付けられている。また、車体フレーム3の後側には、後輪9の外周側における略上半分の領域を覆うリアフェンダ17が取り付けられている。また、車体2において、ハンドル7の前側かつフロントフェンダ16の上側には、荷物を入れることができる荷籠18が取り付けられている。また、車体2において、サドル10の後側かつリアフェンダ17の上側には、荷物を載せることができる荷台19が取り付けられている。また、車体2の前部には前照灯31が取り付けられ、車体2の後部には反射鏡32が取り付けられている。
また、自転車1は、運転者の人力による自転車1の走行を補助する構成として、電動機21と、電動機21に電力を供給するバッテリ22と、運転者がペダル14を踏む踏力を検出するトルクセンサ23と、自転車1の走行速度を検出する速度センサ24とを備えている。電動機21は、運転者の踏力を補うための動力であるアシスト動力を生成する。電動機21は、例えば、クランク軸11の近傍に配置され、電動機21の出力軸は減速歯車等を介してクランク軸11に接続されている。電動機21の出力軸の回転は、減速歯車により減速され、クランク軸11に伝達される。
バッテリ22は例えばサドル10の下側に配置されている。トルクセンサ23は例えばクランク軸11の周囲に設けられている。速度センサ24は、車体2において、前輪6、後輪9またはクランク軸11等、自転車1の走行時に回転する部分の近傍に取り付けられている。例えば、速度センサ24は、前輪6の近傍、具体的にはフロントフォーク5に取り付けられている。なお、速度センサは速度検出部の具体例である。
さらに、自転車1は、CPU(中央演算処理装置)45および記憶回路46等を含むコントロールユニット25を備えている(図3参照)。後述するように、CPU45は、電動機21のアシスト動力を制御するアシスト制御部50等として機能する。コントロールユニット25は、CPU45および記憶回路46等を収容する防水ケースを有している。コントロールユニット25は、例えば、フロントフェンダ16と荷籠18との間に配置され、荷籠18の下面に取り付けられている。コントロールユニット25をこのように荷籠18の下に配置することで、自転車1の転倒時に、荷籠18によりコントロールユニット25を保護することができる。
さらに、自転車1は操作ユニット26を備えている。操作ユニット26は、運転者または他の利用者が、電動機21およびコントロールユニット25等への電力の供給のオン・オフ、すなわち、自転車1の電源オン・オフの切換、および自転車1に関する各種設定を行うための装置である。操作ユニット26は、図2に示すように、ハンドル7に取り付けられている。また、操作ユニット26は、ケーシング27を有し、ケーシング27には、電源オン・オフの切換を行う電源スイッチ28、自転車1に関する各種設定を行う操作ボタン29、および例えば液晶ディスプレイ等の表示装置30が設けられている。
(運転支援装置)
図3は自転車1および運転支援装置41の電気的構成を示している。図3において、運転支援装置41は、カメラ42、GPS受信機43および傾斜センサ44、並びにCPU45における状況認識部51、アシスト抑制部52、抑制程度設定部53、抑制態様設定部54および注意喚起部55を備えている。また、上述した速度センサ24および操作ユニット26も運転支援装置41の一部である。また、地図情報47が記憶された記憶回路46も運転支援装置41の一部である。
カメラ42は、自転車1の前方を撮像する装置である。カメラ42は、GPS受信機43および地図情報47と共に、自転車1の前方の状況を検出する手段(状況検出部)として機能する。カメラ42はスチールカメラでもよいし、ビデオカメラでもよい。カメラ42は、カメラ42のレンズが自転車1の前方を向くように、自転車1に取り付けられている。例えば、カメラ42は、車体2に設けられたコントロールユニット25の防水ケースの前面に取り付けられている。このようにカメラ42をコントロールユニット25の近傍に配置することにより、カメラ42とコントロールユニット25(CPU45)との間を接続する配線を短くすることができる。
GPS受信機43は、GPS衛星からの信号を受け取り、自転車1の現在位置を検出する装置である。GPS受信機43は例えばコントロールユニット25の防水ケース内に収容されている。
傾斜センサ44は、自転車1が走行している路面の傾斜角度を検出する装置である。具体的には、傾斜センサ44は、自転車1の前後方向における傾斜角度を検出する。自転車1の前後方向の傾斜角度は、自転車1が走行している路面の傾斜角度と同視することができる。傾斜センサ44は、例えば車体2においてサドル10の下側に取り付けられている。なお、傾斜センサ44は傾斜検出部の具体例である。
また、コントロールユニット25において、CPU45は、例えば記憶回路46に記憶されたコンピュータプログラムを読み取って実行することにより、アシスト制御部50、状況認識部51 アシスト抑制部52、抑制程度設定部53、抑制態様設定部54および注意喚起部55として機能する。なお、本実施例のCPU45において、アシスト制御部50は運転支援装置41外の要素であり、状況認識部51、アシスト抑制部52、抑制程度設定部53、抑制態様設定部54および注意喚起部55は運転支援装置41に含まれる要素である。また、記憶回路46は例えば不揮発性の書換可能な半導体メモリ等を備えており、記憶回路46には地図情報47が記憶されている。なお、記憶回路は記憶部の具体例である。
アシスト制御部50は、トルクセンサ23により検出された運転者によるペダル14への踏力、および速度センサ24により検出された自転車1の走行速度に基づいて電動機21のアシスト動力を制御する。
状況認識部51は、カメラ42、GPS受信機43および地図情報47を用いて、自転車1から前方に向かって所定のアシスト抑制基準距離内の領域に、停止を要する交差点が存在するか否かを認識する。
アシスト抑制部52は、状況認識部51の認識結果に基づき、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合には、当該領域に停止を要する交差点が存在しない場合と比較してアシスト動力を減少させ、または電動機21を停止させてアシスト動力が生成されないようにする。以下、この処理を「アシスト抑制処理」という。
抑制程度設定部53は、運転者または他の利用者による操作入力に基づき、アシスト抑制処理において適用される、アシスト動力を減少させる程度(具体的には、後述する目標アシスト比の最大値の減少率)を設定する。
抑制態様設定部54は、運転者または他の利用者による操作入力に基づき、アシスト抑制処理において適用される、自転車1の走行速度に対するアシスト動力の変化の態様(具体的には、後述するように、自転車1の走行速度に対する目標アシスト比の変化の態様)を設定する。
注意喚起部55は、状況認識部51による認識結果に基づき、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に、停止を要しない交差点が存在する場合には、運転者に対して注意喚起を行う。
(アシスト制御)
図4は自転車1の走行速度と目標アシスト比との関係を示すグラフである。図4のグラフ中において、破線aは、走行速度と目標アシスト比との関係を示している。なお、図4中のグラフにおける実線b、一点鎖線cおよび二点鎖線dについては後述する。
CPU45のアシスト制御部50は、実際のアシスト比が目標アシスト比と一致するように電動機21のアシスト動力を制御する。「アシスト比」とは、運転者によるペダル14への踏力と、電動機21により生成されるアシスト動力との比率を意味する。
図4のグラフ中の破線aは、目標アシスト比の最大値を1に設定したときの、走行速度と目標アシスト比との関係を例示している。破線aが示すように、目標アシスト比は、自転車1の走行速度に応じて変化する。具体的に説明すると、本実施例においては、運転者によるペダル14への踏力がトルクセンサ23により検出された後(すなわち、運転者が自転車1の走行を開始した後)、自転車1の走行速度が時速10km未満である間、目標アシスト比は、当該目標アシスト比の最大値となる。また、自転車1の走行速度が時速10km以上となったとき、目標アシスト比は、自転車1の走行速度に比例して減少する。また、自転車1の走行速度が時速24kmを超えたとき、目標アシスト比は0になる。アシスト制御部50は、トルクセンサ23により検出された、運転者によるペダル14への踏力、および速度センサ24により検出された自転車1の走行速度に基づいて、実際のアシスト比が、図4中の破線aが示すような目標アシスト比と一致するように電動機21のアシスト動力を制御する。
なお、本実施例の自転車1は、運転者または他の利用者による操作入力に基づいて、目標アシスト比の最大値を設定する機能を有している。例えば、運転者または他の利用者は、操作ユニット26の操作ボタン29を操作することにより、目標アシスト比の最大値を0から2までの範囲における任意の値に設定することができる。
(状況認識)
図5は、自転車1が、信号機62の設置された交差点61に接近している状態を示している。図5を用いて、CPU45の状況認識部51の動作について説明する。
状況認識部51は、カメラ42により撮像された画像、GPS受信機43により受信された自転車1の位置情報、および記憶回路46に記憶された地図情報47に基づいて、自転車1から前方に向かって所定のアシスト抑制基準距離内の領域に、停止を要する交差点が存在するか否かを認識する。
例えば、図5において、状況認識部51は、GPS受信機43により受信された自転車1の位置情報に基づいて自転車1の現在位置Pを認識し、さらに、地図情報47に基づいて、自転車1の前方に存在する交差点61の位置Qを認識する。そして、状況認識部51は、位置Pと位置Qとの間の距離Dを算出し、その算出結果に基づいて、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点61が存在するか否かを判断する。
ここで、「アシスト抑制基準距離」は、例えばおよそ20m~25mに設定されている。この根拠は次の通りである。自転車1が交差点61の手前、具体的には交差点61への進入直前位置である停止線63の位置で停止し易い状態を作り出すためには、自転車1が停止線63の位置に到達するおよそ5秒前に、アシスト抑制部52によるアシスト抑制処理が実行されるようにすることが望ましい。自転車1がその一般的な速度である秒速3mで走行していると仮定すると、自転車1は5秒間に15m前方へ移動する。また、本実施例において、状況認識部51は交差点61の中央位置を、交差点61の位置Qとして認識する。また、交差点61の中央位置から停止線63の位置までの距離はおよそ5m~10mである。したがって、自転車1が停止線63の位置に到達するおよそ5秒前に、アシスト抑制部52によるアシスト抑制処理が実行されるようにするためには、自転車1の現在位置Pと交差点61の位置Qとの間の距離Dがおよそ20~25m以下となったときに、アシスト抑制部52によるアシスト抑制処理が実行されるようにする必要がある。それゆえ、本実施例においては、「アシスト抑制基準距離」が20m~25mに設定されている。
なお、「アシスト抑制基準距離」を、20mよりも小さい値、または25mよりも大きい値に調整してもよい。また、「アシスト抑制基準距離」を、自転車1の実際の走行速度、または交差点が大規模な交差点か小規模な交差点かに応じて自動的に変更するようにしてもよい。
また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に対して画像認識処理を行うことにより、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点が、停止を要する交差点か否かを判断する。本実施例において、状況認識部51は、図5に示すように、交差点61に信号機62が設置され、信号機62のうち、自転車1と対向する信号機62が自転車1の停止を指示しているとき、例えば、赤信号または赤の点滅信号であるとき、その交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。また、状況認識部51は、交差点に、自転車1と対向する一時停止の標識があるとき、その交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。また、状況認識部51は、交差点に信号機や標識がなくても、交差点を人や車両が横断しており、自転車1がその交差点に進入すると、人や車両に衝突するおそれがあるとき、その交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。また、状況認識部51は、高い建物に囲まれている交差点等、見通しの悪い交差点を「停止を要する交差点」であると判断する。
また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された画像に基づいて、交差点に設置され、かつ自転車1と対向する信号機が、停止を指示する状態から、進行を許可する状態に変化したこと、例えば、赤信号から青信号に変化したことを認識する。また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された画像に基づいて、人や車両が交差点を横断し終えて、自転車1がその交差点に進入しても人や車両に衝突するおそれがなくなったことを認識する。また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された画像、またはGPS受信機43により受信された自転車1の位置情報および地図情報47に基づいて、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在しなくなったことを認識する。
(アシスト抑制処理:アシスト動力を減少させる処理)
CPU45のアシスト抑制部52は、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合に、当該領域に停止を要する交差点が存在しない場合と比較してアシスト動力を減少させ、または電動機21を停止させる処理(アシスト抑制処理)を行う。
具体的には、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、目標アシスト比の最大値を、抑制程度設定部53により設定された減少率に基づいて減少させる。すなわち、CPU45は抑制程度設定部53を有しており、抑制程度設定部53は、運転者または他の利用者による操作入力に基づき、目標アシスト比の最大値の減少率を設定する機能を有している。例えば、運転者または他の利用者は、自転車1が停止しているときに、操作ユニット26の操作ボタン29を操作することにより、目標アシスト比の最大値の減少率を、予め設定された複数の減少率の中から選択して設定することができる。設定された目標アシスト比の最大値の減少率は記憶回路46に記憶され、保持される。アシスト抑制処理において、アシスト抑制部52は、記憶回路46に記憶された目標アシスト比の最大値の減少率に基づいて目標アシスト比の最大値を減少させる。
運転支援装置41は、停止を要する交差点に自転車1が接近したときに、運転者にとって自転車1を漕ぎ続けることが楽でなくなる程度、具体的には、自転車1を漕ぎ続けることに負担を感じ、漕ぎ続けることを一旦止めたいと感じる程度に自転車1のペダル14を重くする。アシスト抑制処理において目標アシスト比の最大値を減少させる程度は、自転車1のペダル14の重さをこの程度の重さにすることができるように設定することが望ましい。また、運転者の体力は年齢、性別および体格等により差があるので、このような差を考慮して、目標アシスト比の最大値を減少させる程度を予め複数用意しておき、運転者または他の利用者が任意に選べるようにすることが望ましい。このような観点から、本実施例における運転支援装置41においては、目標アシスト比の最大値の減少率として50%、75%および100%の3通りの減少率が用意されており、運転者または他の利用者がこれらの減少率の中から1つの減少率を任意に選んで設定できるようになっている。
以下、抑制程度設定部53により設定された50%、75%および100%の減少率に基づいて最大値が50%、75%および100%の割合でそれぞれ減少した目標アシスト比をそれぞれ、「減少率50%の目標アシスト比」、「減少率75%の目標アシスト比」および「減少率100%の目標アシスト比」という。
図4のグラフ中において、実線bは、目標アシスト比の最大値を1に設定した場合における、自転車1の走行速度と、減少率50%の目標アシスト比との関係を示している。目標アシスト比の最大値の減少率が50%に設定されている場合、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、目標アシスト比の最大値を50%減少させる。これにより、目標アシスト比の最大値が1である場合には、目標アシスト比の最大値が1から0.5に減少する。このようなアシスト抑制処理が実行された後、アシスト制御部50は、実際のアシスト比が、例えば図4のグラフ中の実線bに示すような減少率50%の目標アシスト比と一致するように、電動機21のアシスト動力を制御する。その結果、アシスト抑制処理が実行された後の電動機21のアシスト動力は、アシスト抑制処理が実行される前の電動機21のアシスト動力よりも全体的に見て減少する。
また、図4のグラフ中において、一点鎖線cは、目標アシスト比の最大値を1に設定した場合における、自転車1の走行速度と、減少率75%の目標アシスト比との関係を示している。目標アシスト比の最大値の減少率が75%に設定されている場合、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、目標アシスト比の最大値を75%減少させる。これにより、目標アシスト比の最大値が1である場合には、目標アシスト比の最大値が1から0.25に減少する。このようなアシスト抑制処理が実行された後、アシスト制御部50は、実際のアシスト比が、例えば図4のグラフ中の一点鎖線cに示すような減少率75%の目標アシスト比と一致するように、電動機21のアシスト動力を制御する。その結果、アシスト抑制処理が実行された後の電動機21のアシスト動力は、アシスト抑制処理が実行される前の電動機21のアシスト動力よりも全体的に見て大幅に減少する。
また、図4中のグラフにおいて、二点鎖線dは、目標アシスト比の最大値を1に設定した場合における、自転車1の走行速度と、減少率100%の目標アシスト比との関係を示している。目標アシスト比の最大値の減少率が100%に設定されている場合、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、目標アシスト比の最大値を100%減少させる。その結果、目標アシスト比の最大値は0になる。このようなアシスト抑制処理が実行された後、アシスト制御部50は、自転車1の走行速度に拘わらず、電動機21を停止させ、アシスト動力が生成されないようにする。
なお、図4のグラフ中の実線b、一点鎖線cおよび二点鎖線dはそれぞれ、後述のアシスト比変化態様が第1態様に設定されている場合を例にあげている。
(アシスト抑制処理:アシスト比変化態様を変更する処理)
また、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、自転車1の走行速度に対する目標アシスト比の変化の態様を、必要に応じて変更する。以下、自転車1の走行速度に対する目標アシスト比の変化の態様を「アシスト比変化態様」という。
アシスト抑制処理におけるアシスト比変化態様の変更について説明する前に、アシスト抑制処理が実行される前におけるアシスト比変化態様(すなわち、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に停止を要する交差点が存在していないときのアシスト比変化態様)について説明する。図6(A)~(D)のグラフにおいて、破線aは、アシスト抑制処理が実行される前におけるアシスト比変化態様を示している。なお、図6(A)~(D)のグラフでは、目標アシスト比の最大値を1に設定した場合を例にあげている。また、図6(A)~(D)のグラフ中の破線aは図4のグラフ中の破線aと同じである。
本実施例においては、アシスト抑制処理が実行される前におけるアシスト比変化態様として、図6(A)~(D)のグラフ中の破線aが示すような第1態様が予め設定されている。アシスト抑制処理が実行される前におけるアシスト比変化態様は、常にこの第1態様であり、変更されない。第1態様は、自転車1の走行速度が時速10km未満である間、目標アシスト比がその最大値となり、自転車1の走行速度が時速10km以上となったとき、目標アシスト比が自転車1の走行速度に比例して減少し、自転車1の走行速度が時速24kmを超えたとき、目標アシスト比が0になるという態様である。この第1態様においては、目標アシスト比が、その最大値を維持している状態から、自転車1の走行速度に比例して減少する状態に転じる走行速度が時速10kmであり、目標アシスト比が0になる走行速度が24kmである。
さて、本実施例の運転支援装置41においては、アシスト比変化態様として、上記第1態様に加え、第2態様、第3態様および第4態様が用意されている。CPU45は抑制態様設定部54を有しており、抑制態様設定部54は、運転者または他の利用者による操作入力に基づき、アシスト比変化態様を設定する機能を有している。例えば、運転者または他の利用者は、自転車1が停止しているときに、操作ユニット26の操作ボタン29を操作することにより、アシスト比変化態様として、第1態様、第2態様、第3態様および第4態様のうちのいずれか1つの態様を選択して設定することができる。設定されたアシスト比変化態様は記憶回路46に記憶され、保持される。アシスト抑制部52は、抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様が、アシスト抑制処理が実行される前のアシスト比変化態様と同じ態様である場合、すなわち抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様が第1態様である場合には、アシスト抑制処理においてアシスト比変化態様を変更しない。一方、抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様が第2態様、第3態様または第4態様である場合には、アシスト抑制部52は、アシスト抑制処理において、アシスト比変化態様を抑制態様設定部54により設定された態様に変更する。
図6(A)のグラフ中の実線bは、アシスト抑制処理により目標アシスト比の最大値を50%減少させ、かつアシスト比変化態様として第1態様を維持した場合を示している。なお、この実線bは図4のグラフ中の実線bと同じである。実線bが示すように、目標アシスト比の最大値を50%減少させ、かつアシスト比変化態様として第1態様を維持した場合には、目標アシスト比は、走行速度0kmから24kmに亘って一様に50%減少する。
図6(B)のグラフ中の実線eは、アシスト抑制処理により目標アシスト比の最大値を50%減少させ、かつアシスト比変化態様を第2態様に変更した場合を示している。実線eが示すように、第2態様においては、減少率50%の目標アシスト比が、その最大値を維持している状態から、自転車1の走行速度に比例して減少する状態に転じる走行速度が時速10kmよりも低い速度(例えば時速5km)であり、減少率50%の目標アシスト比が0になる走行速度が24kmよりも低い速度(例えば時速12km)である。アシスト比変化態様を第2態様に設定した場合には、アシスト比変化態様を第1態様に設定した場合と比較して、自転車1の走行速度が高いとき(例えば時速5km以上のとき)の実際のアシスト比の減少量が大きくなる。したがって、自転車1が、停止を要する交差点に接近したときに、自転車1がその交差点の手前で停止し易い状態を確実に作り出すことができる。
図6(C)のグラフ中の実線fは、アシスト抑制処理により目標アシスト比の最大値を50%減少させ、かつアシスト比変化態様を第3態様に変更した場合を示している。実線fが示すように、第3態様においては、減少率50%の目標アシスト比が、その最大値を維持している状態から、自転車1の走行速度に比例して減少する状態に転じる走行速度、および減少率50%の目標アシスト比が0になる走行速度は第1態様と同じである。しかしながら、この第3態様においては、自転車1の走行速度が時速0kmに接近したとき、具体的には自転車1の走行速度が所定の停止直前判定基準速度以下となったとき、減少率50%の目標アシスト比が上昇している。停止直前判定基準速度は例えばおよそ時速1km~2kmである。アシスト抑制部52により目標アシスト比の最大値が50%減少し、アシスト比変化態様が第3態様に設定された場合、アシスト制御部50は、速度センサ24により検出された自転車1の走行速度が停止直前判定基準速度以下となったときに、電動機21のアシスト動力を増加させる。
アシスト比変化態様を第3態様に設定した場合には、自転車1が停止する直前に、実際のアシスト比が上昇し、ペダル14が軽くなる。したがって、運転者は、停止を要する交差点の手前で余裕をもって自転車1を停止させることができる。よって、停止を要する交差点の手前で自転車1が停止する直前に、自転車1がふらついて、自転車1が転倒してしまうことを防止することができる。
図6(D)のグラフ中の実線gは、アシスト抑制処理により目標アシスト比の最大値を50%減少させ、かつアシスト比変化態様を第4態様に変更した場合を示している。実線gが示すように、第4態様においては、減少率50%の目標アシスト比が、その最大値を維持している状態から、自転車1の走行速度に比例して減少する状態に転じる走行速度、および減少率50%の目標アシスト比が0になる走行速度は第2態様と同じである。しかしながら、この第4態様においては、自転車1の走行速度が時速0kmに接近したとき、具体的には自転車1の走行速度が停止直前判定基準速度以下となったとき、減少率50%の目標アシスト比が上昇している。アシスト比変化態様を第4態様に設定した場合にも、アシスト比変化態様を第3態様に設定した場合と同様に、自転車1が停止する直前に、実際のアシスト比が上昇してペダル14が軽くなるので、運転者は、停止を要する交差点の手前で余裕をもって自転車1を停止させることができる。
以上、4通りのアシスト比変化態様を減少率50%の目標アシスト比のアシスト比変化態様として設定した場合を例にあげたが、それら4通りのアシスト比変化態様は減少率75%の目標アシスト比にも適用することができる。なお、減少率100%の目標アシスト比のアシスト比変化態様として第1態様を適用しても、第2態様を適用しても、減少率100%の目標アシスト比は自転車1の走行速度に拘わらず0となる。しかしながら、減少率100%の目標アシスト比のアシスト比変化態様として第3態様または第4態様を適用した場合には、自転車1の走行速度が停止直前判定基準速度以下となったとき、減少率100%の目標アシスト比が、0から、図6(C)のグラフ中の実線fまたは図6(D)のグラフ中の実線gの左端部のカーブと同様のカーブを描くように上昇する。
(運転支援装置の動作)
図7および図8は、運転支援装置41の動作を示している。運転支援装置41は、自転車1の電源がオンである間、図7および図8に示す動作を繰り返し行う。
図7において、自転車1の電源がオンになったとき、まず、運転支援装置41のCPU45が、アシスト制御部50を初期化する(ステップS1)。具体的には、CPU45は、目標アシスト比の最大値を例えば1に設定する。また、CPU45は目標アシスト比の最大値の減少率を0%に設定し、アシスト比変化態様を第1態様に設定する。このように初期化されたアシスト制御部50は、後にアシスト抑制処理が実行されるまでの間、第1態様のアシスト比変化態様に従って、自転車1の走行時における実際のアシスト比が、最大値が1であり、減少率が0%である目標アシスト比と一致するように電動機21のアシスト動力を制御する。
続いて、運転支援装置41の状況認識部51が、GPS受信機43により受信された自転車1の位置情報、および地図情報47に基づいて、自転車1の現在位置および走行方向を認識する処理を開始する(ステップS2)。以降、この認識処理は、自転車1の電源がオンである間、ほぼ常時継続して行われる。
続いて、状況認識部51は、GPS受信機43により受信された自転車1の位置情報、および地図情報47に基づいて、自転車1の前方に交差点が存在するか否か判断する(ステップS3)。
自転車1の前方に交差点が存在する場合には(ステップS3:YES)、続いて、状況認識部51は、GPS受信機43により受信された自転車1の位置情報、および地図情報47に基づいて、自転車1の現在位置と当該交差点との距離がアシスト抑制基準距離以下となったか否かを判断する(ステップS4)。
自転車1の現在位置と交差点との距離がアシスト抑制基準距離以下となった場合には(ステップS4:YES)、続いて、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて、自転車1の前方に存在する交差点に信号機が設置されているか否かを判断する(ステップS5)。
自転車1の前方に存在する交差点に信号機が設置されている場合には(ステップS5:YES)、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて、当該交差点に設置された信号機のうち自転車1と対向する信号機が、自転車1の停止を指示しているか否かを判断する(ステップS6)。
自転車1の前方に存在する交差点に設置された信号機のうち、自転車1と対向する信号機が自転車1の停止を指示している場合には(ステップS6:YES)、運転支援装置41のアシスト抑制部52がアシスト抑制処理を実行する(ステップS7)。すなわち、ステップS3、S4、S5およびS6を経てステップS7に至った場合は、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合に相当する。したがって、アシスト抑制部52はアシスト抑制処理を実行する。具体的には、アシスト抑制部52は、抑制程度設定部53により設定された目標アシスト比の最大値の減少率に基づいて目標アシスト比の最大値を減少させる。また、アシスト抑制部52は、抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様が第1態様以外の態様である場合には、アシスト比変化態様を抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様に変更する。このようなアシスト抑制処理が実行されてから、後述するアシスト抑制を解除する処理が実行されるまでの間、アシスト制御部50は、抑制程度設定部53により設定された目標アシスト比の最大値の減少率に基づいて最大値が減少した目標アシスト比、および抑制態様設定部54により設定されたアシスト比変化態様に従って、電動機21のアシスト動力を制御する。その結果、アシスト抑制処理が実行された後においては、電動機21のアシスト動力が、アシスト抑制処理が実行される前と比較して減少し、または電動機21が停止し、それゆえ、自転車1のペダル14が重くなる。したがって、自転車1の走行速度が低下し、自転車1が停止し易い状態となる。
一方、自転車1の前方に交差点が存在しない場合(ステップS3:NO)、または自転車1の前方に交差点が存在するが、自転車1の現在位置と交差点との距離がアシスト抑制基準距離以下となっていない場合には(ステップS4:NO)、CPU45は処理をステップS3に戻す。また、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在するが、その交差点に信号機が設置されていない場合には(ステップS5:NO)、CPU45は処理をステップS5から図8中のステップS12へ移行させる。また、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に、信号機が設置された交差点が存在するが、それら信号機のうち自転車1と対向する信号機が自転車1の停止を指示していない場合(ステップS6:NO)には、CPU45は処理をステップS3に戻す。
ステップS7でアシスト抑制処理が実行された後に、次のような状況が認識された場合、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う。
すなわち、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在しなくなったことが状況認識部51により認識された場合には(ステップS8:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS11)。自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在しなくなったことは、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて認識することができる。また、このことは、GPS受信機43から受信された自転車1の位置情報からも認識することができる。例えば、自転車1が交差点の手前に到達する前に走行方向を変えたとき、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在しなくなる。この場合には、CPU45は、アシスト抑制を解除する処理を行う。
また、自転車1が停止してから所定時間(例えばおよそ5秒)が経過したことが認識された場合には(ステップS9:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS11)。自転車1が停止したことは、速度センサ24により検出することができる。また、自転車1が停止してからの経過時間は、CPU45に内蔵された時計を用いて測定することができる。例えば、自転車1が、その前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点の手前で停止し、その状態が例えばおよそ5秒間維持された場合には、すなわち、自転車1が当該交差点の手前で完全に停止した場合には、アシスト抑制を解除する処理が行われる。
また、自転車1が、その前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点の手前(具体的には当該交差点への進入直前位置である停止線の位置)に到達する前に、当該交差点に設置された信号機のうち、自転車1と対向する信号機の状態が、自転車1の停止を指示する状態から、自転車1の進行を許可する状態に変わったことが状況認識部51により認識された場合には(ステップS10:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS11)。自転車1が上記交差点の手前に到達する前であること、および信号機の指示が変わったことは、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像等に基づいて認識することができる。例えば、アシスト抑制処理が実行された後、自転車1が上記交差点の手前の停止線の位置に到達する前に、信号機の信号が赤信号から青信号に変わったときには、アシスト抑制を解除する処理が行われる。
また、自転車1が、その前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点の手前に停止してから上記所定時間(例えばおよそ5秒)が経過する前に、当該交差点に設置された信号機のうち、自転車1と対向する信号機が自転車1の停止を指示する状態から、自転車1の進行を許可する状態に変わったことが状況認識部51により認識された場合も(ステップS10:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS11)。
ステップS11のアシスト抑制を解除する処理として、CPU45は、目標アシスト比の最大値の減少率を0%に戻し、アシスト比変化態様が第1態様以外の態様に変更されている場合には、アシスト比変化態様を第1態様に戻す処理を行う。その結果、アシスト制御部50は、第1態様のアシスト比変化態様に従って、自転車1の走行時における実際のアシスト比が、最大値が1であり、減少率が0%である目標アシスト比と一致するように電動機21のアシスト動力を制御するようになる。アシスト抑制を解除する処理が行われた後においては、アシスト抑制を解除する処理が行われる前と比較して電動機21のアシスト動力が増加し、または電動機21によるアシスト動力の生成が再開される。したがって、自転車1を停止させた運転者は自転車1を楽に発進させることができ、また、自転車1の走行を継続している運転者においては自転車1の走行が楽になる。アシスト抑制を解除する処理を行った後、CPU45は処理をステップS11からステップS3に戻す。
また、上述したように、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在するが、その交差点に信号機が設置されていない場合には(ステップS5:NO)、CPU45は処理をステップS5から図8中のステップS12へ移行させる。そして、ステップS12において、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に、自転車1と対向する一時停止の標識があるか否かを判断する。自転車1と対向する一時停止の標識がある交差点は停止を要する交差点に当たる。自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に、自転車1と対向する一時停止の標識がある場合には(ステップS12:YES)、アシスト抑制部52はアシスト抑制処理を実行する(ステップS15)。ステップS15のアシスト抑制処理は、図7中のステップS7のアシスト抑制処理と同じである。
また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点が見通しの悪い交差点であるか否かを判断する(ステップS13)。見通しの悪い交差点は停止を要する交差点に当たる。例えば、カメラ42により撮像された画像に基づいて、交差点が高い建物に囲まれていることが認識された場合には、状況認識部51は、その交差点を見通しの悪い交差点であると判断する。自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点が見通しの悪い交差点である場合(ステップS13:YES)。アシスト抑制部52はアシスト抑制処理を実行する(ステップS15)。
また、状況認識部51は、カメラ42により撮像された自転車1の前方の画像に基づいて、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点を人または車両が横断しており、自転車1がその交差点に進入すると人または車両に衝突するおそれがあるか否かを判断する(ステップS14)。このような状況の交差点は停止を要する交差点に当たる。自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点を人または車両が横断しており、自転車1がその交差点に進入すると人または車両に衝突するおそれがある場合には(ステップS14:YES)、アシスト抑制部52はアシスト抑制処理を実行する(ステップS15)。
ステップS15でアシスト抑制処理が実行された後に、次のような状況が認識された場合、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う。
すなわち、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に交差点が存在しなくなったことが状況認識部51により認識された場合(ステップS16:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS19)。ステップS19のアシスト抑制を解除する処理は、図7中のステップS11のアシスト抑制を解除する処理と同じである。
また、自転車1が停止してから上記所定時間(例えばおよそ5秒)が経過したことが認識された場合には(ステップS17:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS19)。
また、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に自転車1と対向する信号機も一時停止の標識もなく、かつその交差点が見通しの悪い交差点でない場合であって、自転車1がその交差点の手前に到達する前に、その交差点を横断する人または車両が存在しなくなり、自転車1がその交差点に進入しても人または車両に衝突するおそれがなくなった場合には(ステップS18:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS19)。
また、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に自転車1と対向する信号機も一時停止の標識もなく、かつその交差点が見通しの悪い交差点でない場合であって、自転車1がその交差点の手前に停止してから上記所定時間(例えばおよそ5秒)が経過する前に、その交差点を横断する人または車両が存在しなくなり、自転車1がその交差点に進入しても人または車両に衝突するおそれがなくなった場合には(ステップS18:YES)、CPU45はアシスト抑制を解除する処理を行う(ステップS19)。アシスト抑制を解除する処理を行った後、CPU45は処理をステップS19からステップS3に戻す。
一方、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に自転車1と対向する信号機も一時停止の標識もなく、かつその交差点が見通しの悪い交差点でなく、かつその交差点を横断する人または車両が存在せず、自転車1がその交差点に進入しても人または車両に衝突するおそれがない場合(ステップS5、S12、S13およびS14がいずれもNOの場合)、CPU45の注意喚起部55が、運転者に対して注意喚起を行う(ステップS20)。具体的には、図2に示すように、操作ユニット26に設けられた表示装置30に、注意を喚起するメッセージを表示する。メッセージの表示と同時に、操作ユニット26に設けられたスピーカまたはブザーから警報音を出力してもよい。注意喚起のメッセージは、例えば、交差点の接近を知らせるメッセージ、または交差点を通行する際に周囲に注意を払うことを促すメッセージとするのがよい。
(路面の傾斜に応じたアシスト抑制)
運転支援装置41のアシスト抑制部52は、自転車1が走行している路面の傾斜に応じて、アシスト抑制処理により電動機21のアシスト動力を減少させる程度を変化させる機能を有している。具体的には、アシスト抑制部52は、傾斜センサ44からの検出信号に基づいて、自転車1が走行している路面の傾斜を認識する。そして、自転車1が走行している路面が、自転車1の車体2の前部が斜め上を向くように傾斜している場合、アシスト抑制部52は、目標アシスト比の減少率を減少させる。例えば、抑制程度設定部53により設定されている目標アシスト比の最大値の減少率の値を、その半分の値にする。具体的には、抑制程度設定部53により設定されている目標アシスト比の最大値の減少率が50%である場合には、それを25%にする。これにより、自転車1がこのように上向きに傾斜した路面(上り坂)を走行している場合には、自転車1が水平な路面を走行している場合と比較して、アシスト抑制処理による電動機21のアシスト動力の減少の程度が小さくなる。したがって、自転車1が上り坂を走行している間にアシスト抑制処理が実行されても、自転車1の走行速度が急に低下して自転車1の運転が不安定になることを防止することができる。
また、自転車1が走行している路面が、自転車1の車体2の前部が斜め下を向くように傾斜している場合には、アシスト抑制部52は、目標アシスト比の減少率を増加させる。例えば、抑制程度設定部53により設定されている目標アシスト比の最大値の減少率の値を、その1.5倍の値にする。具体的には、抑制程度設定部53により設定されている目標アシスト比の最大値の減少率が50%である場合には、それを75%にする。これにより、自転車1がこのように下向きに傾斜した路面(下り坂)を走行している場合には、自転車1が水平な路面を走行している場合と比較して、アシスト抑制処理による電動機21のアシスト動力の減少の程度が大きくなる。したがって、アシスト抑制処理が実行されたときに、自転車1が下り坂を走行している場合でも、自転車1の走行速度を確実に低下させることができ、自転車1が交差点の手前で停止し易い状態を確実に作り出すことができる。
以上説明した通り、本発明の実施例の運転支援装置41において、アシスト抑制部52は、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に停止を要する交差点が存在する場合には、アシスト抑制処理を実行することによりアシスト動力を減少させ、または電動機21を停止させる。したがって、停止を要する交差点に自転車1が接近したときに、自転車1のペダル14を重くし、自転車1が停止し易い状態を作り出すことができる。これにより、電動アシスト自転車を運転する者による交差点での一時不停止または信号無視等を抑制することができる。
すなわち、停止を要する交差点に自転車1が接近したときに自転車1のペダル14が重くなるので、運転者は、当該交差点に自転車1が接近したとき、当該交差点に接近する前と比較してペダル14を踏む力を強くしないと自転車1の走行速度を維持することができなくなる。その結果、運転者が体力の衰えた者(例えば高齢者)である場合には、体力的にも心理的にも、自転車1を漕ぎ続けることが楽でなくなる。それゆえ、停止を要する交差点に自転車1が接近したときには自転車1の走行速度が低下し、自転車1が停止し易い状態となる。したがって、自転車1の運転者は、半ば強制的に、交差点の手前で停止させられることとなる。よって、自転車1の運転者による交差点での一時不停止または信号無視等を抑制することができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41は、アシスト抑制処理により電動機21のアシスト動力を減少させる程度を、運転者または他の利用者の操作入力に基づいて変更することができる。具体的には、運転者または他の利用者は、目標アシスト比の最大値の減少率を50%、75%および100%の中から選ぶことができる。この構成により、停止を要する交差点に自転車1が接近したときにペダル14を重くする程度を、自転車1の運転者の体力、年齢、性別等に応じて適切に設定することができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41においては、アシスト抑制処理により電動機21のアシスト動力を減少させ、または停止させるために、目標アシスト比の最大値を減少させる。これにより、電動機21のアシスト動力の減少を容易かつ正確に行うことができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41において、状況認識部51は、交差点に信号機が設置され、それら信号機のうち自転車1と対向する信号機が停止を指示している場合に、その交差点を、停止を要する交差点として認識する。これに加え、自転車1と対向する一時停止の標識のある交差点、見通しの悪い交差点、および、人または車両が横断していて自転車1が人または車両と衝突するおそれのある交差点をそれぞれ、停止を要する交差点として認識する。このように、本発明の実施例の運転支援装置41によれば、停止を要する交差点として、様々な態様の交差点を認識することができる。したがって、都市、繁華街、住宅地、田舎等の様々な場所において、電動アシスト自転車の運転支援を精度良く行うことができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41は、アシスト抑制処理を実行した後、自転車1が、その前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点に到達する前に、当該交差点に設置された信号機のうち、自転車1と対向する信号機の状態が停止を指示する状態から進行を許可する状態に変わった場合には、アシスト抑制を解除する処理を直ちに行って電動機21のアシスト動力を増加(回復)させ、または電動機21によるアシスト動力の生成を再開させる。この構成によれば、信号機が進行を許可する状態に変わったにも拘わらず、自転車1が交差点付近で非常に低速で走行を続けたり、停止したりすることを防止することができ、交差点付近における交通の流れを良くすることができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41は、自転車1から前方に向かってアシスト抑制基準距離内の領域に存在する交差点が、停止を要する交差点でない場合には、運転者に対して注意喚起を行う。注意喚起を受けた運転者は、周囲に注意を払いつつ、交差点を安全に通過することができる。
また、本発明の実施例の運転支援装置41は、GPS受信機43および地図情報47を用いて、自転車1の現在位置と交差点との間の距離を認識する。この構成により、自転車1の現在位置と交差点との間の距離の認識に、レーダー等の大型の機器を用いる場合と比較して、電動アシスト自転車の軽量化および小型化を図ることができる。
なお、上記実施例では、カメラ42により自転車1の前方を撮像する場合を例にあげたが、カメラの撮像範囲を拡大し、または複数のカメラを設けて、自転車1の前方だけでなく、自転車1の左方および右方をも撮像するようにしてもよい。また、上記実施例では、自転車1の現在位置と交差点との間の距離をGPS受信機43および地図情報47を用いて認識する場合を例にあげたが、カメラ42により撮像された画像を用いて自転車1から交差点までの距離を認識するようにしてもよい。また、減少率の値やアシスト比変化態様は実施例で示したものに限定されない。
また、上記実施例では、コントロールユニット25を荷籠18の下に配置したが、コントロールユニット25を荷台19の下等、車体2の他の部分に配置してもよい。また、上記実施例では、カメラ42をコントロールユニット25の防水ケースに取り付けたが、カメラ42をハンドル7等、車体2の他の部分に取り付けてもよい。
また、上記実施例では、図3に示すように、運転支援装置41外の要素であるアシスト制御部50、並びに運転支援装置41に含まれる要素である状況認識部51、アシスト抑制部52、抑制程度設定部53、抑制態様設定部54および注意喚起部55として機能するCPU45を1つのコントロールユニット25の防水ケース内に収容する場合を例にあげた。しかしながら、アシスト制御部50等の、運転支援装置41外の要素であって、既存の電動アシスト自転車が有する要素と、運転支援装置41に含まれる要素とを互いに物理的に分離してもよい。例えば、運転支援装置41に含まれる要素である状況認識部51、アシスト抑制部52、抑制程度設定部53、抑制態様設定部54および注意喚起部55として機能するCPUを1つのコントロールユニットの防止ケースに収容し、そのコントロールユニットを荷籠18の下に取り付け、そのコントロールユニットを、既存の電動アシスト自転車に既に設けられた、アシスト制御部50としての機能を有する他のCPUにケーブル等を介して接続するようにしてもよい。このような構成とすることで、運転支援装置41を既存の電動アシスト自転車にオプションとして追加することが容易になる。これにより、例えば、高齢者が専ら利用する自転車には運転支援装置を設け、若年者が専ら利用する自転車には運転支援装置を設けないというように、運転支援装置の利用に柔軟性を持たせることができる。
また、本発明の運転支援装置は、二輪の自転車に限らず、三輪以上の自転車にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う運転支援装置もまた本発明の技術思想に含まれる。