以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
[被塗物]
本発明の複層塗膜形成方法が適用される被塗物は、特に限定されない。該被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。これらのうち、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましく、自動車車体の外板部が特に好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂、これらの樹脂の混合物、各種の繊維強化プラスチック(FRP)等の樹脂材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等を挙げることができる。これらのうち、金属材料及び樹脂材料が好ましい。また、被塗物は、上記金属材料と樹脂材料とが組み合わさったものであってもよい。
上記被塗物は、上記金属材料又はそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。また、上記被塗物は、上記樹脂材料又はそれから成形された自動車部品等の樹脂表面に塗膜が形成されているものであってもよい。
塗膜形成を施した被塗物としては、基材に必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗塗膜を形成したもの等を挙げることができる。該下塗塗膜は、通常、防食性、基材との密着性、基材表面の凹凸の隠蔽性(「下地隠蔽性」と呼称されることもある)等を付与することを目的として形成される。該下塗塗膜を形成するために用いられる下塗塗料としては、それ自体既知のものを用いることができる。
このような被塗物としては、例えば、基材である鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成してなる被塗物を用いることができる。電着塗料が基材である鋼板の表面に塗装されることにより、鋼板上の錆、腐食を抑制することができる。このため、被塗物として、上記基材である鋼板上に電着塗料を塗装し、加熱硬化させて硬化電着塗膜を形成してなる被塗物を用いることが好ましい。
硬化電着塗膜の形成
基材である鋼板としては、例えば、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛-鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al素材、Mg素材等を用いることができる。また、これらの金属板を必要に応じてアルカリ脱脂等の表面を洗浄化した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理を行ったものを用いてもよい。
この電着塗膜の形成工程において使用される電着塗料は、当該分野で慣用されている熱硬化性の水性塗料であることが好ましく、カチオン型電着塗料又はアニオン型電着塗料のいずれも使用することができる。かかる電着塗料は、基体樹脂及び架橋剤と、水及び/又は親水性有機溶剤からなる水性媒体とを含有する水性塗料であることが好ましい。
防錆性の観点から、基体樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を使用することが好ましい。なかでも、防錆性の観点から、基体樹脂の少なくとも一種として、芳香環を有する樹脂を使用することが好ましく、なかでも芳香環を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また架橋剤としては、例えば、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等を使用することが好ましい。ここで、親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等を挙げることができる。電着塗料を塗装することにより、防錆性の高い塗膜を得ることができる。
本工程において、電着塗料を鋼板上に塗装する手段は、当該分野で慣用されている電着塗装方法を採用することができる。この塗装方法により、予め成形処理が施された被塗装物においても、その表面のほぼ全体にわたって防錆性の高い塗膜を形成させることができる。
本工程において形成される電着塗膜は、同塗膜の上に形成される塗膜との間における混層の発生を防止し、結果として得られる複層塗膜の塗装外観を向上させるために、熱硬化性の電着塗料を塗装した後、未硬化の該塗膜を焼付処理して加熱硬化させる。なお、本明細書において「硬化電着塗膜」は、鋼板上に形成された電着塗膜を加熱硬化して得られる塗膜を意味する。
一般に190℃を超える温度で焼付処理を行うと、塗膜が固くなりすぎて脆くなり、逆に110℃未満の温度で焼付処理を行うと、上記の成分の反応が不十分となり、いずれも好ましくない。それ故、本工程において、未硬化の電着塗膜の焼付処理の温度は一般に110~190℃、特に120~180℃の範囲内であることが好ましい。また、焼付処理の時間は通常10~60分間であることが好ましい。上記の条件下で焼付処理を行うことにより、硬化した乾燥状態の電着塗膜を得ることができる。
また、上記の条件下で焼付処理した後の、硬化電着塗膜の乾燥膜厚は通常5~40μm、特に10~30μmの範囲内であることが好ましい。
上記に従い電着塗膜を形成させることにより、塗装鋼板の防錆性を向上させることができる。
本発明が適用される被塗物としては、前記した電着塗膜形成工程で得られる硬化電着塗膜上にさらに中塗り塗料を塗装して、中塗り塗膜が形成されたものを用いてもよい。硬化電着塗膜上にさらに中塗り塗料が形成されることにより、耐衝撃性及び平滑性等に優れた複層塗膜を形成することができる。このため、被塗物として上記硬化電着塗膜上にさらに中塗り塗膜が形成されたものを用いることが好ましい。
中塗り塗膜の形成
中塗り塗料としては、バインダー成分及び着色顔料を含有する塗料を用いることができる。中塗り塗料に用いられるバインダー成分としては、中塗り塗料に通常用いられる塗膜形成性樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物としては、例えば、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を基体樹脂とし、これに架橋剤を併用したものを挙げることができる。また、架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂や、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等を挙げることができる。樹脂組成物中における基体樹脂と架橋剤の割合には特に制限はないが、一般に、架橋剤は、基体樹脂固形分総量に対して、10~100質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~60質量%の範囲内で使用することができる。これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒に溶解又は分散して使用することができる。
中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、特段の制限はなく、従来公知の着色顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、二酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料やカーボンブラック顔料等を使用することができる。中塗り塗料に用いられる着色顔料としては、形成される複層塗膜の耐候性等の観点から、少なくともその1種として、二酸化チタン顔料又はカーボンブラック顔料を使用することが好ましい。
中塗り塗料中の着色顔料の含有量は、中塗り塗料中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは0.01~150質量部の範囲であり、より好ましくは0.02~140質量部、特に好ましくは0.03~130質量部の範囲である。
中塗り塗料が上記二酸化チタン顔料を含有する場合、該二酸化チタン顔料の含有量は、中塗り塗料中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは5~150質量部の範囲であり、より好ましくは6~140質量部、特に好ましくは7~130質量部の範囲である。
中塗り塗料が上記カーボンブラック顔料を含有する場合、該カーボンブラック顔料の含有量は、中塗り塗料中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは0.01~3質量部の範囲であり、より好ましくは0.02~2.5質量部、特に好ましくは0.03~2.0質量部の範囲である。
中塗り塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤等の各種添加剤、アルミニウム顔料等の光輝性顔料、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の体質顔料等を適宜配合することができる。
中塗り塗料は、水性塗料であっても有機溶剤型塗料であってもよいが、VOC削減の観点からは、水性塗料であることが好ましい。ここで、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、バインダー成分、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。中塗り塗料が水性塗料である場合、中塗り塗料中の水の含有量は、20~80質量%程度が好ましく、30~60質量%程度がより好ましい。
中塗り塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。中塗り塗料の塗料固形分濃度(NV)は、30~60質量%、より好ましくは40~55質量%の範囲に調整しておくことが好ましい。
中塗り塗料は、水や有機溶媒等を加えて、塗装に適正な粘度に調整した後に、回転霧化塗装、エアスプレー、エアレススプレー等公知の方法で、必要に応じて印加して、塗装することができる。また、その膜厚は、塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、硬化膜厚に基づいて、好ましくは10~40μm、より好ましくは15~35μm、さらに好ましくは20~30μmの範囲内となるように塗装することができる。
上記中塗り塗料は、厚さ30μmの硬化塗膜を形成した場合の、L*a*b*表色系における明度であるL*値が、特に限定されないが、通常、1以上95以下である。なかでも、形成される複層塗膜のフリップフロップ性の観点から、上記中塗り塗料は、厚さ30μmの硬化塗膜を形成した場合の、L*a*b*表色系における明度であるL*値が、1~90であることが好ましく、2~85であることがより好ましく、3~80であることがさらに好ましい。
L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJIS Z 8784-1に採用された表色系であり、明度をL*、色相と彩度を示す色度をa*及びb*で表すものである。a*は赤方向(-a*は緑方向)、b*は黄方向(-b*は青方向)を示すものである。本明細書におけるL*、a*及びb*は、多角度分光光度計CM512m3(商品名、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、塗膜表面の垂直な軸に対して45度の照射光で、塗膜表面に対して90度で受光した分光反射率から計算した数値として定義するものとする。
被塗物として中塗り塗膜が形成された被塗物を用いる場合、上記中塗り塗膜は、次の工程である第1塗膜の形成に先立って加熱硬化させてもよいし、未硬化のままで次の工程(1)である第1塗膜の形成に供し、後述する工程(4)において、工程(1)~(3)で形成される第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化させてもよい。なかでも、使用エネルギーの低減等の観点から、上記中塗り塗膜は、未硬化のままで次の工程(1)である第1塗膜の形成に供し、後述する工程(4)において、工程(1)~(3)で形成される第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化させることが好ましい。また、必要に応じて、次の工程(1)である第1塗膜の形成を行う前に、得られた未硬化の中塗り塗膜を、プレヒート(予備加熱)、エアブロー等の手段によって、実質的に硬化しない程度に乾燥させたり、乾燥しない程度に固形分含有率を調整したりしてもよい。上記プレヒートは、公知の加熱手段により行うことが可能であり、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。
上記プレヒートは、通常、中塗り塗料が塗装された被塗物を乾燥炉内で40~100℃、好ましくは50~90℃、さらに好ましくは60~80℃の温度で、30秒間~20分間、好ましくは1~15分間、さらに好ましくは2~10分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃~約80℃の温度に加熱された空気を30秒間~15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
本発明において、硬化塗膜とは、JIS K 5600-1-1:1999に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。一方、未硬化塗膜とは、塗膜が上記硬化乾燥状態に至っていない状態であって、JIS K 5600-1-1:1999に規定された指触乾燥状態及び半硬化乾燥状態をも含むものである。
被塗物として、未硬化の中塗り塗膜が形成された被塗物を用いる場合、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点からは、上記中塗り塗膜形成工程と工程(1)との間において、未硬化の中塗り塗膜に上記プレヒートを行うことが好ましい。一方、使用エネルギーの低減及び塗装ラインの短縮化等の観点からは、上記中塗り塗膜形成工程と工程(1)との間において、未硬化の中塗り塗膜に上記プレヒートを行わないことが好ましい。本発明の複層塗膜形成方法は、上記中塗り塗膜形成工程と工程(1)との間において、上記プレヒートを行わない場合においても、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成できるという利点を有する。
[第1塗膜の形成]
工程(1)では、被塗物上に、水性塗料である第1水性塗料(P1)を塗装して、硬化膜厚(TP1)が5~20μmの範囲内である第1塗膜を形成させる。ここで第1水性塗料(P1)は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアクリル樹脂成分の酸価が20mgKOH/g以下のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)を含有するものである。
水酸基含有アクリル樹脂(A)
水酸基含有アクリル樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するアクリル樹脂である。水酸基含有アクリル樹脂(A)は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)を、例えば有機溶媒中での溶液重合法や水性媒体中でのエマルション重合法等の、それ自体既知の方法によって共重合させることにより製造することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端に水酸基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
但し、本発明においては、後述する(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)」として規定されるべきものであり、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)」からは除かれる。上記水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)としては、水酸基含有アクリル樹脂(A)に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該モノマー(b)の具体例としては、以下の(i)~(xix)に記載するものを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリル(メタ)アクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:例えば、N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv)分子末端にアルコキシ基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩、アンモニウム塩等。
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等。
(xviii)光安定性重合性不飽和モノマー:例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、モノマー(a)及びモノマー(b)の合計量を基準にして、一般に1~50質量%、好ましくは2~40質量%、さらに好ましくは3~30質量%の範囲内で使用することができる。
水酸基含有アクリル樹脂(A)は、貯蔵安定性や形成される複層塗膜の耐水性等の観点から、一般に1~200mgKOH/g、特に2~150mgKOH/g、さらに特に5~100mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(A)は、また、形成される複層塗膜の耐水性等の観点から、一般に1~200mgKOH/g、特に2~150mgKOH/g、さらに特に5~80mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価、及びアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分の水酸基価は理論水酸基価を意味する。理論水酸基価とは、樹脂成分1gに含まれる水酸基の量を水酸化カリウムに換算したときの水酸化カリウムのmg数であって、構成重合性不飽和モノマー中に含有される水酸基のモル量と、構成重合性不飽和モノマーの総質量から計算される水酸基価である。具体的には、下記の式に基づき算出することができる。
理論水酸基価(mgKOH/g)
=[水酸基含有重合性不飽和モノマー由来の水酸基のモル数(mmol)]×56.1/[重合性不飽和モノマー仕込み量(g)]
ここで、「56.1」はKOHの分子量であり、上記「重合性不飽和モノマー仕込み量」とは、重合性不飽和モノマーの総質量である。
本明細書において、水酸基含有アクリル樹脂(A)の酸価、及びアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分の酸価は理論酸価を意味する。理論酸価とは、樹脂成分1gを中和するのに理論上要する水酸化カリウムのmg数であって、構成重合性不飽和モノマー中に含有される酸性基のモル量と、構成重合性不飽和モノマーの総質量から計算される酸価である。具体的には、下記の式に基づき算出することができる。
理論酸価(mgKOH/g)
=[酸基含有重合性不飽和モノマー由来の酸基のモル数(mmol)]×56.1/[重合性不飽和モノマー仕込み量(g)]
ここで、「56.1」はKOHの分子量であり、上記「重合性不飽和モノマー仕込み量」とは、重合性不飽和モノマーの総質量である。
水酸基含有アクリル樹脂(A)としては、水溶性又は水分散性の水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができるが、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A)は水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含むことが好ましい。水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)を、水性媒体中での乳化重合法等によって共重合させることにより製造することができる。
なかでも、前記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、酸価が20mgKOH/g以下の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)が好適に使用できる。酸価が20mgKOH/g以下の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の酸価は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、18mgKOH/g以下であることがより好ましく、15mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。また、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の酸価は、塗料中における該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の安定性等の観点から、3mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、8mgKOH/g以上であることが特に好ましい。上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の酸価は、例えば、原料として使用する重合性不飽和モノマー中の後記カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(e2)の割合を調整することによって、調整することができる。
また、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)0.1~30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)70~99.9質量%を共重合することにより得られる共重合体(I)をコア部として含み、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)1~35質量%及び水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)65~99質量%を共重合することにより得られる共重合体(II)をシェル部として含む、架橋されたコア部を有するコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)を含むことが好ましい。
なかでも、上記架橋されたコア部を有するコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、酸価が20mgKOH/g以下であり、かつ架橋されたコア部を有するコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11’)を含むことが好ましい。なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11’)の酸価が18mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。また、塗料中における該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11’)の安定性等の観点から、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11’)の酸価が3mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、8mgKOH/g以上であることが特に好ましい。
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレ-ト、エチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、トリエチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、テトラエチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,3-ブチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロ-ルプロパントリ(メタ)アクリレ-ト、1,4-ブタンジオ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,6-ヘキサンジオ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリト-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリト-ルテトラ(メタ)アクリレ-ト、グリセロ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレ-ト、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレ-ト、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレ-ト、トリアリルイソシアヌレ-ト、ジアリルテレフタレ-ト、ジビニルベンゼン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)は、モノマー(c)及びモノマー(d)の合計質量を基準として、一般に0.1~30質量%、好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%の範囲内で使用することができる。
また、重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)と共重合可能な重合性不飽和モノマーであり、1分子中に1個の重合性不飽和基、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基等を含有する化合物が包含される。
重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)の具体例としては、例えば、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)」の説明において例示される水酸基含有重合性不飽和モノマー、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)」の説明において例示される、(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート,(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー、(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー、(v)芳香環含有不飽和モノマー、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、(xi)含窒素重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、その成分の少なくとも一部として、重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が4~22の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(d1)を含むことが好適である。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が4~22の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(d1)としては、炭素数が4~22の直鎖状、分岐状もしくは環状で飽和又は不飽和の炭化水素基を含有する重合性不飽和モノマーを使用することができる。該重合性不飽和モノマー(d1)としては、具体的には、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレ-ト、シクロドデシル(メタ)アクリレ-ト等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が4~22の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(d1)としては、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、なかでも、炭素数が4~8のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数が4~6のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがより好ましい。なかでも、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及びtert-ブチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のブチル(メタ)アクリレートが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましく、n-ブチルアクリレートが特に好ましい。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が4~22の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(d1)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、モノマー(c)及びモノマー(d)の合計質量を基準として、35~80質量%、特に40~70質量%、さらに特に45~65質量%の範囲内で使用することが好ましい。
また、上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が4~22の炭化水素基を有する重合性不飽和モノマー(d1)の少なくともその一種として、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及びtert-ブチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のブチル(メタ)アクリレートを使用する場合、該ブチル(メタ)アクリレートの合計量が、モノマー(c)及びモノマー(d)の合計量を基準として、35~70質量%、特に40~65質量%、さらに特に45~60質量%の範囲内で使用することが好ましい。
他方、シェルを構成するモノマー成分である、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)としては、前述したように、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;アリルアルコ-ル;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)は、モノマー(a)及びモノマー(e)の合計質量を基準として、1~35質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは8~20質量%の範囲内で使用することができる。
また、シェルを構成する水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)としては、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な重合性不飽和モノマー(b)」の具体例として例示したものの中から適宜選択して使用でき、例えば、(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート、(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー、(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー、(iv)芳香環含有重合性不飽和モノマー、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の点から、その成分の少なくとも一部として、重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(e1)を含むことが好適である。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(e1)としては、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、なかでも、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーが好ましく、メチルメタクリレート及びエチルアクリレートから選ばれる少なくとも1種の重合性不飽和モノマーがより好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましく、メチルメタクリレート及びエチルアクリレートの両方を使用することがさらに特に好ましい。
上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(e1)は、モノマー(a)及びモノマー(e)の合計質量を基準として、10~99質量%の範囲内で使用することが好ましい。なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、上記重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数が1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(e1)の使用割合は、モノマー(a)及びモノマー(e)の合計質量を基準として、51~95質量%の範囲内であることが好ましく、55~90質量%の範囲内であることがさらに好ましく、60~80質量%の範囲内であることが特に好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)は、形成される複層塗膜の平滑性等の点から、その成分の少なくとも一部として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(e2)を含むことが好適である。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(e2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等を挙げることができ、なかでも、(メタ)アクリル酸が好適である。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー(e2)は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)の水性媒体中における安定性ならびに形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性、光輝感及び耐水性等の観点から、モノマー(a)及びモノマー(e)の合計質量を基準として、1~25質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5~10質量%の範囲内の範囲内であることが特に好ましい。
また、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性、光輝感及び耐水性等の観点から、1~100mgKOH/g、特に2~85mgKOH/g、さらに特に5~75mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好適である。
さらに、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、モノマー(a)及びモノマー(e)として、重合性不飽和基を1分子中に1個のみ有する重合性不飽和モノマーを使用し、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)のシェルを未架橋型とすることが好ましい。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、例えば、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)0.1~30質量%及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)70~99.9質量%を含有するモノマー混合物(I)を乳化重合して得られるエマルション中に、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)1~35質量%及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)65~99質量%を含有するモノマー混合物(II)を添加し、さらに重合させることによって得ることができる。
上記モノマー混合物(I)の乳化重合は、それ自体既知の方法、例えば、乳化剤の存在下で重合開始剤を使用して行うことができる。
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等の有機酸のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、また、該ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用してもよく、なかでも、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好適である。
上記反応性アニオン性乳化剤としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。なかでも、形成される複層塗膜の耐水性に優れるため、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「ラテムルS-180A」(商品名、花王社製)等の市販品を挙げることができる。
上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製)、「SR-1025A」(商品名、ADEKA社製)等の市販品を挙げることができる。
上記乳化剤は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、通常0.1~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%の範囲内で使用することができる。
前記重合開始剤としては、油溶性、水溶性のいずれのタイプのものであってもよく、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用し、レドックス重合系としてもよい。
上記重合開始剤は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1~5質量%、特に0.2~3質量%の範囲内で使用することが好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類や量等に応じて適宜選択することができる。例えば、該重合開始剤は、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、上記のようにして得られるエマルションに、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)及び該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)を含むモノマー混合物(II)を添加し、さらに重合させることによって得ることができる。
モノマー混合物(II)は、必要に応じて、前記で列記したような重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、モノマー混合物(II)はそのまま滴下することもできるが、モノマー混合物(II)を水性媒体に分散し、モノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。モノマー混合物(II)の重合は、例えば、乳化されていてもよいモノマー混合物(II)を一括で又は滴下で上記エマルションに添加し、撹拌しながら適当な温度に加熱することにより行うことができる。
上記の如くして得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)及び重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(d)を含有するモノマー混合物(I)から形成される共重合体(I)をコアとし、水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)、該水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)以外の重合性不飽和モノマー(e)を含有するモノマー混合物(II)から形成される共重合体(II)をシェルとする、コア/シェル型複層構造を有することができる。
また、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)は、共重合体(I)を得る工程と共重合体(II)を得る工程の間に、他の樹脂層を形成する重合性不飽和モノマー(1種又は2種以上の混合物)を供給して乳化重合を行なう工程を追加することによって、3層又はそれ以上の層を含む樹脂粒子としてもよい。
なお、本発明において、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)の「シェル」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型構造」は上記コアとシェルを有する構造を意味するものである。上記コア/シェル型構造は、通常、コアがシェルに完全に被覆された層構造が一般的であるが、コアとシェルの質量比率等によっては、シェルのモノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コアの一部をシェルが被覆した構造であってもよく、あるいはコアの一部にシェルの構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。また、上記コア/シェル型構造における多層構造の概念は、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)においてコアに多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
コア/シェル型復層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)における共重合体(I)と共重合体(II)の割合は、形成される複層塗膜の平滑性等の観点から、共重合体(I)/共重合体(II)の固形分質量比で、一般に10/90~90/10、特に50/50~85/15、さらに特に65/35~80/20の範囲内にあることが好ましい。
上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、一般に10~1,000nm、特に20~500nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の平均粒子径が、30~180nmの範囲内であることが好ましく、40~150nmの範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「ELSZ-2000ZS」(商品名、大塚電子社製)を用いることができる。
本発明において、水酸基含有アクリル樹脂(A)が水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含む場合は、得られる水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の水分散体粒子の機械的安定性を向上させるために、水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)が有するカルボキシル基等の酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和することができるものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水等が挙げられる。これらの中和剤は、中和後の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の水分散液のpHが約6.5~約9.0となるような量で用いることが望ましい。
第1水性塗料(P1)中の上記水酸基含有アクリル樹脂(A)の含有量は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性、耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、5~60質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは15~35質量部の範囲内であることが好適である。
また、第1水性塗料(P1)中の上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の含有量は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性、耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、5~60質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは12~35質量部の範囲内であることが好適である。
架橋剤(B)
架橋剤(B)は、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)中の水酸基と反応し得る官能基を有する化合物である。上記架橋剤(B)としては、具体的には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物等を好適に用いることできる。なかでも、得られる塗膜の耐擦り傷性及び仕上り外観等の観点から、該架橋剤(B)が、アミノ樹脂を含有することが好ましい。
架橋剤(B)として使用し得るアミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として上記アミノ樹脂を含有する場合、その含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、5~60質量部、好ましくは15~50質量部、さらに好ましくは20~45質量部の範囲内であることが好適である。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂(B1)が好ましい。メラミン樹脂(B1)としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を上記アルコールで部分的に又は完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。
上記アルキルエーテル化メラミン樹脂としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂等を好適に使用することができる。
なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、上記メラミン樹脂(B1)は、上記アルキルエーテル化メラミン樹脂におけるメチル基とブチル基のmol比が、メチル基/ブチル基のmol比で、55/45~100/0の範囲内であることが好ましく、60/40~80/20の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記メラミン樹脂(B1)は、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、重量平均分子量が400~6000、好ましくは500~3000、さらに好ましくは500~1500の範囲内であることが好適である。
メラミン樹脂(B1)としては市販品を使用できる。該メラミン樹脂(B1)の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
以上に述べたメラミン樹脂(B1)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として上記メラミン樹脂(B1)を含有する場合、その含有割合は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、5~60質量部、好ましくは15~50質量部、さらに好ましくは20~45質量部の範囲内であることが好適である。
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、該ポリイソシアネート化合物の誘導体等を挙げることができる。
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート化合物;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシ
アネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート化合物;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート化合物等を挙げることができる。
また、前記ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
上記ポリイソシアネート化合物としては、形成される塗膜の耐候性等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物及びこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、形成される塗膜の仕上り外観等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体を使用することがより好ましい。
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体としては、形成される塗膜の仕上り外観等の観点から、なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又はそのイソシアヌレート体を使用することが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はそのイソシアヌレート体を使用することがより好ましい。
第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として上記ポリイソシアネート化合物を含有する場合、該ポリイソシアネート化合物の含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2~60質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~45質量部の範囲内であることが好適である。
また、架橋剤(B)として使用し得る前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘
導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として上記ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、該ブロック化ポリイソシアネート化合物の含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2~60質量部、好ましくは3~50質量部、さらに好ましくは5~45質量部の範囲内であることが好適である。
第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として、前記ポリイソシアネート化合物及び/又は上記ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、その含有割合は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、該ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物の合計イソシアネート基(ブロック化イソシアネート基を含む)と、前記水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.2~2.5、好ましくは0.5~2.0、さらに好ましくは0.8~1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
また、第1水性塗料(P1)が、架橋剤(B)として、前記ポリイソシアネート化合物及び/又は上記ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、その含有割合は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、該ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物の合計イソシアネート基(ブロック化イソシアネート基を含む)と、第1水性塗料(P1)中の水酸基含有樹脂の合計水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.2~2.0、好ましくは0.5~1.8、さらに好ましくは特に0.8~1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
上記架橋剤(B)は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)
第1水性塗料(P1)はアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)を含有する。アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)は、同一ミセル内にウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とが存在してなる樹脂複合粒子である。本発明において、アクリルウレタン複合樹脂粒子は水に分散されていればその形態は特に限定されないが、ウレタン樹脂成分のまわりにアクリル樹脂成分が位置した構造を有する粒子として水に分散されていることが好ましい。言い換えると、アクリル樹脂成分の部分(以下、アクリル部ともいう。)を外側に、ウレタン樹脂成分の部分(以下、ウレタン部ともいう。)を内側にしたコアシェル構造を有するミセルとして水に分散していることが好ましい。なお、ここでいうコアシェル構造とは、具体的には同一ミセル内に異なる樹脂組成の成分が存在し、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなっている構造をいう。
アクリルウレタン複合樹脂粒子のウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分との構成比率は、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性の観点から、ウレタン樹脂:アクリル樹脂=5:95~90:10(質量比)とすることが好ましく、5:95~50:50(質量比)とすることがより好ましく、特に好ましくは10:90~40:60である。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)を得る方法としては、例えば、
少なくともその一種としてイソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリルモノマーを含む、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー中で、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを生成させ、該ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液を水分散させた後、必要に応じてウレタンプレポリマーの鎖延長を行うと共に、該重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;
少なくともその一種としてイソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリルモノマーを含む、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー中で、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを生成させ、該ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液を水分散させた後、必要に応じてウレタンプレポリマーの鎖延長を行うと共に、該重合性不飽和モノマーの重合を行なった後、さらに追加の重合性不飽和モノマーを添加し、これらの重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;
ウレタン樹脂粒子の水分散体中のウレタン樹脂粒子に、少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させた後、該重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;
ウレタン樹脂粒子の水分散体中のウレタン樹脂粒子に、少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させ、該重合性不飽和モノマーの重合を行なった後、さらに追加の重合性不飽和モノマーを添加し、これらの重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;
等が挙げられる。
ウレタン樹脂成分は、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
ウレタン樹脂成分は、例えば、以下のようにして合成することができる。
少なくともその一種としてイソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリルモノマーを含む、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー中で、ポリイソシアネート化合物、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを生成させる。
ここで上記ポリオール成分はコスト等の観点から、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールを有するポリオール成分であることが好ましい。
この反応において、ポリイソシアネート化合物のNCO基と、ポリオール及び活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物とを合わせた活性水素基との比率は1.1:1~3.0:1(モル比)の範囲であることが好ましい。
上記プレポリマー化反応は50~100℃で行うことが好ましく、上記少なくともその一種としてイソシアネート基との反応性を有しない(メタ)アクリルモノマーを含む、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマーが、熱により重合することを防ぐため、空気の存在下で、p-メトキシフェノール等の重合禁止剤を(メタ)アクリルモノマーに対して20~3000ppm程度の範囲で添加して行なうことが好ましい。
また、この際、ウレタン化反応の触媒としてジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物やトリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を必要に応じて使用することができる。このようにしてイソシアネート基末端のウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液を得ることができる。
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネート化合物の例としては、上記「架橋剤(B)」の説明において例示した各種ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体を挙げることができ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、又はこれらの誘導体を含むことが好ましく、脂肪族ポリイソシアネート化合物(c1-1)を含むことが特に好ましい。
ポリオールとしては、以下の化合物をあげることができる。
ジオール化合物:エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等。
ポリエーテルジオール:前記のジオール化合物のアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシドや環状エーテル(テトラヒドロフランなど)の開環(共)重合体、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールの(ブロックまたはランダム)共重合体、グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等。
ポリエステルジオール:アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と上記で挙げたエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物とを水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、エチレングリコール-アジピン酸縮合物、1,4-ブタンジオール-アジピン酸縮合物、1,6-ヘキサンジオール-アジピン酸縮合物、エチレングリコール-プロピレングリコール-アジピン酸縮合物、或いはグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させたポリラクトンジオール等を例示することができる。
ポリエーテルエステルジオール:エーテル基含有ジオール(前記ポリエーテルジオールやジエチレングリコール等)または、これと他のグリコールとの混合物を上記ポリエステルジオールで例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール-アジピン酸縮合物等。
ポリカーボネートジオール:一般式HO-R-(O-C(O)-O-R)x-OH(式中Rは炭素原子数1~12の飽和脂肪酸ジオール残基、xは分子の繰り返し単位の数を示し、通常5~50の整数である)で示される化合物等。これらは、飽和脂肪族ジオールと置換カーボネート(炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネート等)とを水酸基が過剰となる条件で反応させるエステル交換法、前記飽和脂肪族ジオールとホスゲンを反応させるか、または必要に応じて、その後さらに飽和脂肪族ジオールを反応させる方法等により得ることができる。
前記ポリオールの数平均分子量は、水分散性及び水性塗料組成物の洗浄性の観点から、好ましくは300~3000、さらに好ましくは500~2500である。
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等をあげることができる。この化合物は、ウレタン樹脂中でイオン形成基として作用する。
カルボキシル基を含有するものとしては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1-カルボキシ-1,5-ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸類、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸や無水フタル酸とのハーフエステル化合物等をあげることができる。
スルホン酸基を含有するものとしては、例えば、2-スルホン酸-1,4-ブタンジオール、5-スルホン酸-ジ-β-ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等をあげることができる。
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としてカルボキシル基、もしくはスルホン酸基を含有する化合物を使用した場合、塩を形成し親水性化するために中和剤としてトリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。カルボキシル基もしくはスルホン酸に対する中和率は通常50~100モル%とすることができる。中和剤としては、塩基性及び耐水性向上の観点からトリエチルアミンが好ましい。
また、前記ウレタン樹脂成分としては、例えば、前記ポリイソシアネート化合物、前記ポリオール及び前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を反応させて、イソシアネート基末端のウレタンプレポリマーを作製し、これを上記中和剤で中和し、水中に乳化分散させた後、必要に応じて鎖延長剤を添加して、イソシアネート基が実質的に無くなるまで反応させて得られる水分散性ウレタン樹脂を使用することができる。
上記水分散性ウレタン樹脂としては市販品を使用することができる。該水分散性ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、三洋化成工業社製のユーコートシリーズ、第一工業社製のスーパーフレックスシリーズ、住化コベストロウレタン社製のインプラニールシリーズ、ダイセルオルネクス社製のDAOTANシリーズ、DIC社製のハイドランシリーズ、日華化学社製のエバファノールシリーズ、ADEKA社製のアデカボンタイターシリーズ等が挙げられる。
例えば、上記水分散性ウレタン樹脂に、少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させた後、該重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)を得ることができる。
上記水分散性ウレタン樹脂に少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させる方法としては、例えば、必要に応じて加温しながら、該ウレタン樹脂粒子及び重合性不飽和モノマーを攪拌する方法等が挙げられる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)におけるアクリル樹脂成分は、少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを重合して得ることができる。
なかでも、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)におけるアクリル樹脂成分は、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、重合性不飽和基を1分子中に1個有し、かつ炭素数4~22のアルキル基を有する重合性不飽和モノマー(c2-1)、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー(c2-2)、及び必要に応じて、(c2-1)以外の重合性不飽和基を1分子中に1個有する重合性不飽和モノマー(c2-3)を構成モノマー成分として、重合して得ることが好ましい。
なお、水酸基を有する重合性不飽和モノマーは、炭素数4~22のアルキル基を有するものであっても、重合性不飽和モノマー(c2-1)ではなく、重合性不飽和モノマー(c2-3)に属するものとする。
重合性不飽和モノマー(c2-1)としては、例えば、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)」の説明において例示したアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
重合性不飽和モノマー(c2-1)としては、炭素数6~18のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーが好ましく、炭素数6~13のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーがさらに好ましい。なかでも、得られる塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートが好ましく、2-エチルヘキシルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルメタクリレートがさらに好ましく、2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。
重合性不飽和モノマー(c2-2)としては、例えば、「重合性不飽和基を1分子中に少なくとも2個有する重合性不飽和モノマー(c)」の説明において例示したモノマーや、メチレンビスアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
重合性不飽和モノマー(c2-2)としては、なかでも、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
重合性不飽和モノマー(c2-1)、重合性不飽和モノマー(c2-2)及び重合性不飽和モノマー(c2-3)の合計量を基準として、重合性不飽和モノマー(c2-1)の使用割合は、得られる複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、30~80質量%であり、特に30~60質量%の範囲内であることが好ましい。
重合性不飽和モノマー(c2-2)の使用割合は、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の架橋の程度に応じて適宜決定し得るが、得られる複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性の観点から、1~20質量%であり、2~15質量%、特に3~12質量%、さらに特に3~10質量%程度であることが好ましい。
必要に応じて使用される重合性不飽和モノマー(c2-3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(b)」の説明において例示した、(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー、(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー、(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー、(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー、(ix)ビニル化合物、(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、(xi)含窒素重合性不飽和モノマー、(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー、(xiv)分子末端にアルコキシ基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート、(xix)カルボニル基含有重合性不飽和モノマー、「水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)」の説明において例示した水酸基含有重合性不飽和モノマー等をあげることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)におけるアクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマー(c2-3)として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、得られるアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)に、架橋剤(B)と架橋反応する水酸基を含有せしめることによって塗膜の耐水性等を向上させると共に、該アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の水性媒体中における安定性を向上せしめる機能を有する。
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記重合性不飽和モノマー(c2-3)の中で例示したものをあげることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上を組合せて使用することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、なかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
アクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、その使用割合は、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の水性媒体中における安定性及び得られる塗膜の耐水性に優れる観点から、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分の総量を基準として、1~30質量%であるのが好ましく、2~25質量%であるのがより好ましく、3~20質量%であるのが更に好ましい。
また、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)におけるアクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマー(c2-3)として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、前記重合性不飽和モノマー(c2-3)で例示したものをあげることができる。これらのモノマーは、単独でもしくは2種以上組合せて使用することができる。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることが好ましい。
アクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマーを含有する場合、その使用割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性ならびにアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の水性媒体中における安定性に優れる観点から、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分の総量を基準として、0.1~10質量%であるのが好ましく、0.2~5質量%であるのがより好ましく、0.5~4質量%であるのが更に好ましい。
また、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)におけるアクリル樹脂成分の重合性不飽和モノマー(c2-3)として、得られる複層塗膜の鮮映性及び耐水性向上の観点から、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有することが好ましい。
炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
また、上記炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーとしては、得られる複層塗膜の鮮映性及び耐水性を向上させる観点から、メチルメタクリレート及び/又はエチルメタクリレートを用いるのが好ましく、メチルメタクリレートを用いるのがより好ましい。
アクリル樹脂成分の構成モノマー成分として、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーを含有する場合、炭素数1又は2のアルキル基を有する重合性不飽和モノマーの使用割合は、得られる複層塗膜の鮮映性等を向上させる観点から、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分の総量を基準として、10~50質量%であるのが好ましく、15~50質量%であるのがより好ましく、20~40質量%であるのがさらに好ましい。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分は、アクリル樹脂成分として、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造を有しているものであることが、得られる塗膜の耐タレ性及び鮮映性等を向上させる観点から好ましい。
アクリル樹脂成分が、コアシェル構造を有するものである場合、そのコア/シェルの比率は、塗膜の耐タレ性及び鮮映性等向上の観点から、固形分質量比で5/95~95/5であるのが好ましく、50/50~90/10であるのがより好ましく、55/35~85/15であるのが更に好ましい。
前記のイソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー中でウレタンプレポリマーを生成させることで得られるウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液に、さらに重合性不飽和モノマーを追加する場合、追加時期は特に限定されず、後述のウレタンプレポリマーの中和工程の前または後の任意の時期に添加することができる。また、中和したウレタンプレポリマーを水に分散させた後、この分散液に重合性不飽和モノマーを添加することもできる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の代表的な製造方法を以下に示すが、この方法に限定されるものではなく、従来既知のアクリルウレタン複合樹脂粒子の製造方法も使用可能である。
ウレタン樹脂成分のウレタンプレポリマー生成までの方法は、前記した方法を用いることができる。この方法において、ウレタンプレポリマーの生成は、イソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマー中で行うことが好ましい。
ここで、このイソシアネート基との反応性を有しない重合性不飽和モノマーは、通常、アクリル樹脂成分の構成モノマー成分(アクリル樹脂成分が、コアシェル構造を有するものである場合は、アクリル樹脂成分の中心部分(コア部))の一部又は全部となるものである。
次いで中和剤を添加した後、水を加えて油層と水層を転相して水に分散させて水分散液を得る。この水分散液にラジカル重合開始剤を加えて、重合性不飽和モノマーの重合反応を行う。必要に応じて、ウレタン樹脂成分(ウレタンプレポリマー)の鎖伸長反応(イソシアネート基同士を水で鎖伸長反応させる)もさらに行うことにより、すべての重合反応を完結させる。
上記水分散液を得る方法としては、必要に応じて次にあげるような方法も行うことができる。
ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液を水に分散する際、ポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマーを添加することによって、水への分散が良好となり尚かつ均一でより安定な水分散液が得られる。ポリオキシアルキレン基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、末端にヒドロキシ基、又は炭素数1~3のアルキレンオキシ基を有し、且つポリオキシエチレン基、又はポリオキシプロピレン基を有する重合性不飽和モノマーを使用することができる。
また、ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液の水分散液の安定性、あるいは重合性不飽和モノマーを重合する際の安定性の向上の観点から、少量の界面活性剤を併用することも可能である。界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が好適であり、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートのノニオン性界面活性剤を併用することができる。また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン界面活性剤や、得られる塗膜の耐水性等の向上させる観点から、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基等の反応性基とを有する反応性アニオン性界面活性剤を併用することもできる。
上記界面活性剤の使用量は、アクリル樹脂成分に使用される全重合性不飽和モノマーの総量を基準にして、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%が更に好ましい。
ウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液を水に分散する方法としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
上記のようにしてウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液の水分散液を得た後、これに重合開始剤を添加して温度を上昇させて重合性不飽和モノマーの重合温度の範囲内で、必要に応じてウレタンプレポリマーの水による鎖延長を行うと共に、重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
該水分散液における重合反応は、公知のラジカル重合反応により行うことができる。重合開始剤は水溶性開始剤、油溶性開始剤のいずれも使用することができる。油溶性開始剤を使用する場合は、水分散液とする前に予めウレタンプレポリマーの重合性不飽和モノマー溶液に添加しておくことが好ましい。
重合開始剤は、通常、重合性不飽和モノマーの総量に対して、0.05~5質量%の範囲で使用することが好ましい。
重合温度は20~100℃程度で行うことができる。レドックス系開始剤を使用する場合は、75℃程度以下の温度で行うことができる。
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等の無機過酸化物をあげることができる。
これらの重合開始剤は、一種単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
有機又は無機過酸化物は、還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤として使用することもできる。還元剤としては、L-アスコルビン酸、L-ソルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、ロンガリット等が挙げることができる。
重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類及び量などに応じて適宜選択することができる。例えば、予め重合性不飽和モノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。また、始めに全量を一括仕込みする方法、全量を時間をかけて滴下する方法、始めに一部を仕込んで残りを後から追加する方法等のいずれの方法でも行うことができる。
また、重合反応を十分に行い、残存する重合性不飽和モノマーを削減する観点から、重合反応の途中、或いは一旦重合を終えた後に重合開始剤を追加して、さらに重合反応を行うこともできる。この際、重合開始剤の組み合わせは任意に選ぶことができる。
上記重合開始剤の使用量は、一般に、使用される全重合性不飽和モノマーの合計質量を基準にして、0.1~5質量%程度が好ましく、0.2~3質量%程度がより好ましい。
重合性不飽和モノマーの重合において、分子量を調節する目的で公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えばメルカプト基を有する化合物が包含され、具体的には例えば、ラウリルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2-メチル-5-tert-ブチルチオフェノール、メルカプトエタノール、チオグリセロール、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート等を使用することができる。
該連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、一般に、使用される全重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、0.05~10質量%、特に0.1~5質量%の範囲内が好適である。
アクリル樹脂成分を形成する重合性不飽和モノマー混合物は、必要に応じて、前記乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該重合性不飽和モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該重合性不飽和モノマー混合物を水性媒体に分散して得られる重合性不飽和モノマー乳化物として滴下することが望ましい。この場合における重合性不飽和モノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
ウレタンプレポリマーの鎖延長を行う場合、必要に応じて水以外の鎖延長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖延長剤とを反応させることもできる。鎖延長剤としては、活性水素を有する公知の鎖延長剤を使用することができる。具体的には、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン等のトリアミン類、ヒドラジン等をあげることができる。
また、前述の通り、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)は、ウレタン樹脂粒子の水分散体中のウレタン樹脂粒子に少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させた後、該重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;ウレタン樹脂粒子の水分散体中のウレタン樹脂粒子に少なくともその一種として(メタ)アクリルモノマーを含む重合性不飽和モノマーを含浸させ、該重合性不飽和モノマーの重合を行なった後、さらに追加の重合性不飽和モノマーを添加し、これらの重合性不飽和モノマーの重合を行なうことにより、ウレタン樹脂成分とアクリル樹脂成分とからなるアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得る方法;によっても得ることができる。
上記のウレタン樹脂粒子に重合性不飽和モノマーを含浸させる方法としては、例えば、必要に応じて加温しながら、該ウレタン樹脂粒子及び重合性不飽和モノマーを攪拌する方法等が挙げられる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体において、各樹脂成分(アクリル樹脂成分、ウレタン樹脂成分)の組成、反応条件等を調整することにより、コアシェル構造、アクリル樹脂成分とウレタン樹脂成分の一部或いは全部が混在する形態等の所望の形態を有するアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
前記した、アクリル樹脂成分を、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造とする場合は、組成の異なる2種以上の重合性不飽和モノマー混合物を使用して、多段階(例えば、組成の異なる重合性不飽和モノマー混合物を準備し、各重合性不飽和モノマー混合物ごとに多段階で添加して反応を行う)で反応させることにより、アクリル樹脂成分として、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造を有する、アクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体を得ることができる。
このアクリル樹脂成分として、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなるコアシェル構造を有する形態のアクリルウレタン複合樹脂粒子の水分散体においては、特に、そのアクリル樹脂成分の中心部分(コア)は、ウレタン樹脂成分が混在する態様であっても良い。
なお、本発明において、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)がコア/シェル型複層構造を有する場合、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の「シェル部」は該樹脂複合粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂複合粒子内層の重合体層を意味し、「コア/シェル型複層構造」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。
上記コア/シェル型複層構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部の重合性不飽和モノマー量が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよく、あるいはコア部の一部にシェル部の構成要素である重合性不飽和モノマーがグラフト重合した構造であってもよい。
また、上記コア/シェル型複層構造における多層構造の概念は、本発明のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)においてコア部に多層構造が形成される場合にも同様に当てはまるものとする。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)は、一般に10~5000nm、好ましくは10~1000nm、さらに好ましくは20~500nm、さらに特に好ましくは40~400nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。
本明細書において、上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の平均粒子径は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから、20℃で測定した値である。該動的光散乱法粒子径分布測定装置としては、例えば、「ELSZ-2000ZS」(商品名、大塚電子社製)を用いることができる。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)が、カルボキシル基等の酸性基を有する場合は、該アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の粒子の機械的安定性を向上させるために、該酸性基を中和剤により中和することが望ましい。該中和剤としては、酸性基を中和できるものであれば特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリメチルアミン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリエチルアミン、アンモニア水などが挙げられる。これらの中和剤は、中和後のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の水分散液のpHが6.0~9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分の酸価は20mgKOH/g以下である。酸価が20mgKOH/g以下とすることにより、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成できるという効果が得られる。アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分の酸価は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、15mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。また、該アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)のアクリル樹脂成分の酸価は、塗料中における該アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の安定性等の観点から、2mgKOH/g以上であることが好ましく、4mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。
また、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)は、耐タレ性、鮮映性及び光輝感等、耐水性の観点から、アクリル樹脂成分の水酸基価が1~85mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~75mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の水分散体中の固形分濃度は20~50質量%が好ましく、より好ましくは30~40質量%である。固形分濃度が50質量%を超えると乳化が困難となり、水分散体が得難くなる場合がある。20質量%未満であると、低濃度であるため溶媒(主として水)成分が多くなるため水性塗料組成物の構成成分として使用しにくくなる場合がある。
第1水性塗料(P1)中の上記アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の含有量は、形成される塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、5~60質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは15~35質量部の範囲内であることが好適である。
第1水性塗料(P1)は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアクリル樹脂成分の酸価が20mgKOH/g以下のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)以外の樹脂を含有することができる。このような樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、及びこれらの変性樹脂等であって、水酸基含有アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアクリル樹脂成分の酸価が20mgKOH/g以下のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)以外のものが挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上組み合わせて使用することができる。このような樹脂としては、特に耐タレ性、鮮映性及び光輝感向上等の観点から、水酸基含有ポリエステル樹脂又はアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、脂肪族多塩基酸を含むことが好ましい。
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂肪族多塩基酸としては、形成される複層塗膜の耐タレ性及び鮮映性等の観点から、少なくともその一種として、コハク酸、コハク酸無水物、アジピン酸及びアジピン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂肪族多塩基酸を用いることが好ましい。
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂環族多塩基酸としては、形成される複層塗膜の平滑性の観点から、少なくともその一種として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及び4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種の脂環族多塩基酸を用いることが好ましく、なかでも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記芳香族多塩基酸としては、少なくともその一種として、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸及び無水トリメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の芳香族多塩基酸を使用することが好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することも出来る。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150~250℃程度で、5~10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、水酸基含有ポリエステル樹脂を製造することができる。
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネート等のポリイソシアネートそれ自体;これらの各ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
また、水酸基含有ポリエステル樹脂としては、形成される複層塗膜の平滑性等に優れる観点から、原料の酸成分中の脂環族多塩基酸の含有量が、該酸成分の合計量を基準として20~100mol%の範囲内であることが好ましく、25~95mol%の範囲内であることがより好ましく、30~90mol%の範囲内であることが特に好ましい。特に、上記脂環族多塩基酸が、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物であることが、形成される複層塗膜の平滑性等に優れる観点から、好ましい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基価が1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~180mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~170mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂が、更にカルボキシル基を有する場合は、その酸価が5~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、10~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、15~80mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。また、水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、500~50,000の範囲内であることが好ましく、1,000~6,000の範囲内であることがより好ましく、1,200~4,000の範囲内であることが特に好ましい。
第1水性塗料(P1)が、上記水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、その含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~50質量部、好ましくは3~35質量部、さらに好ましくは5~25質量部の範囲内であることが好適である。
アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂からなるポリエステル部が主鎖であり、それをアクリル系(共)重合体からなるアクリル部で変性したものである。変性がグラフト変性の場合は、ポリエステル部が幹ポリマーでありアクリル部が枝ポリマーであって、アクリル部がグラフト点を介してポリエステル部に結合している。
アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されることなく、常法により合成することができる。具体的には例えば、不飽和基含有ポリエステル樹脂と不飽和モノマーとの混合物を重合する方法、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂とのエステル化反応による方法等を挙げることができる。
アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂のアクリル部とポリエステル部の比率は、塗膜物性の観点から、アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂(アクリル部とポリエステル部の総量)に対して、アクリル部が、5~40質量%、特に、5~30質量%、さらに特に、5~25質量%、ポリエステル部が、60~95質量%、特に、70~95質量%、さらに特に、75~95質量%の範囲内であることが好ましい。
アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、硬化性及び耐水性の観点から、水酸基価が20~200mgKOH/g、特に、30~150mgKOH/g、さらに特に、30~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
アクリル部の水酸基価は、0~70mgKOH/g、特に、0~50mgKOH/g、さらに特に、0~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
ポリエステル部の水酸基価は、20~200mgKOH/g、特に、30~150mgKOH/g、さらに特に、30~120mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
また、アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂は、水分散性の観点から、酸価が10~100mgKOH/g、特に、15~80mgKOH/g、さらに特に、15~60m
gKOH/gの範囲内であることが好ましい。
アクリル部の酸価は、50~500mgKOH/g、特に、80~400mgKOH/g、さらに特に、100~300mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
ポリエステル部の酸価は、0~20mgKOH/g、特に、0~15mgKOH/g、さらに特に、0~10mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。
また、アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂の数平均分子量は、塗膜外観、塗膜物性及び耐チッピング性の観点から、1000~100000、特に、2000~50000、さらに特に、2000~20000の範囲内であることが好ましい。
第1水性塗料(P1)が、上記アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、その含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~50質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部の範囲内であることが好適である。
第1水性塗料(P1)が、上記水酸基含有ポリエステル樹脂及びアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂及びアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂の合計含有割合は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、第1水性塗料(P1)中の樹脂固形分100質量部を基準として、2~60質量部、好ましくは10~50質量部、さらに好ましくは15~30質量部の範囲内であることが好適である。
第1水性塗料(P1)が、上記水酸基含有ポリエステル樹脂及びアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂とアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂との含有比は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び耐水性等の観点から、アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂/水酸基含有ポリエステル樹脂の比で、30/70~95/5、好ましくは50/50~90/10、さらに好ましくは60/40~85/15の範囲内であることが好適である。
第1水性塗料(P1)は、さらに顔料を含有することが好ましい。該顔料としては、例えば、着色顔料、光輝性顔料、体質顔料等を挙げることができる。
第1水性塗料(P1)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料としては、特段の制限はなく、中塗り塗料の場合と同様に、従来公知の着色顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。該着色顔料としては、該第1水性塗料(P1)の塗装部位の識別性向上及び該第1水性塗料(P1)によって形成される第1塗膜の光線透過率抑制の観点から、少なくともその1種として、カーボンブラックを使用することが好ましい。また、ホワイトパール色を有する複層塗膜を形成させる場合は、該第1水性塗料(P1)が、上記着色顔料の少なくともその1種として、二酸化チタン顔料を含有することが好ましい。
第1水性塗料(P1)が上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の含有量は、第1水性塗料(P1)中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは0.003~150質量部の範囲であり、より好ましくは0.005~140質量部、特に好ましくは0.03~130質量部の範囲である。
第1水性塗料(P1)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料としては、特段の制限はなく、従来公知の光輝性顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。該光輝性顔料としては、例えば、後記の第2水性着色塗料(P2)中の光輝性顔料(BP2)の説明において記載した光輝性顔料を用いることができる。該光輝性顔料としては、形成される複層塗膜の光輝感、平滑性、鮮映性等の観点から、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料及び金属酸化物被覆酸化アルミニウムフレーク顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種の光輝性顔料を使用することが好ましく、なかでも、アルミニウムフレーク顔料及び/又は金属酸化物被覆酸化アルミニウムフレーク顔料を使用することが好ましい。
第1水性塗料(P1)が上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の含有量は、第1水性塗料(P1)中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは0.1~20質量部の範囲であり、より好ましくは0.5~18質量部、特に好ましくは1~16質量部の範囲である。
第1水性塗料(P1)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料としては、特段の制限はなく、従来公知の体質顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。該体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等が挙げられる。なかでも形成される複層塗膜の光輝感、平滑性、鮮映性、耐チッピング性等の観点から、少なくともその1種として、硫酸バリウム及び/又はタルクを使用することが好ましく、形成される複層塗膜の光輝感、平滑性、鮮映性等の観点から、硫酸バリウムを使用することがより好ましい。
第1水性塗料(P1)が上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の含有量は、第1水性塗料(P1)中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは0.1~30質量部の範囲であり、より好ましくは2.5~25質量部、特に好ましくは5~20質量部の範囲である。
第1水性塗料(P1)は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝感等の観点から、さらにジエステル化合物(D)を含有することが好ましい。ジエステル化合物(D)は、下記一般式(1)で表される。
[式中、R1及びR2は独立して炭素数4~18の炭化水素基を表し、R3は炭素数2~4のアルキレン基を表し、mは3~20の整数であり、m個のR3は互いに同一であっても異なっていてもよい]
上記式(1)において、R1又はR2で表される炭化水素基としては、炭素数5~11のアルキル基が好ましく、炭素数5~9のアルキル基がより好ましく、炭素数6~8のアルキル基がさらに好ましい。特に、R1及びR2が、炭素数6~8の分岐状のアルキル基である場合、塗料を比較的長期間貯蔵した後に塗装した場合にも、形成される塗膜に優れた成膜性を付与することができる。また、R3は好ましくはエチレンであり、さらに、mは特に4~10の整数であることが好ましい。
ジエステル化合物(D)は、例えば、2個の末端水酸基を有するポリオキシアルキレングリコールと炭素数4~18の炭化水素基を有するモノカルボン酸とをエステル化反応させることにより得ることができる。
ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、ポリブチレングリコール等を挙げることができ、この中でも特に、ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。これらのポリオキシアルキレングリコールは、耐水性等の点から、一般に約120~約800、特に約150~約600、さらに特に約200~約400の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
また、上記炭素数4~18の炭化水素基を有するモノカルボン酸としては、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチルブタン酸、3-メチルペンタン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸、ヘプタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、ノナン酸、2-エチルヘプタン酸、デカン酸、2-エチルオクタン酸、4-エチルオクタン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸等を挙げることができる。この中でも、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、ノナン酸、2-エチルヘプタン酸、デカン酸、2-エチルオクタン酸、4-エチルオクタン酸等の炭素数5~9のアルキル基を有するモノカルボン酸が好ましく、ヘプタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、ノナン酸、2-エチルヘプタン酸等の炭素数6~8のアルキル基を有するモノカルボン酸がより好ましく、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、4-エチルヘキサン酸、2-エチルヘプタン酸等の炭素数6~8の分岐状のアルキル基を有するモノカルボン酸がさらに好ましい。
上記ポリオキシアルキレングリコールと上記モノカルボン酸とのジエステル化反応はそれ自体既知の方法で行うことができる。上記ポリオキシアルキレングリコール及び上記モノカルボン酸はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
得られるジエステル化合物(D)は、一般に約320~約1,000、特に約400~約800、さらに特に約500~約700の範囲内の分子量を有することが好ましい。
第1水性塗料(P1)は、形成される複層塗膜の平滑性、鮮映性、耐ワキ性及び光輝感等の観点から、さらに疎水性有機溶剤を含有することが好ましい。
上記疎水性有機溶剤は、20℃において、100gの水に溶解する質量が10g以下、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下の有機溶剤であるのが望ましい。かかる疎水性有機溶剤としては、例えば、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系疎水性有機溶剤;ゴム揮発油、ミネラルスピリット、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の炭化水素系疎水性有機溶剤;酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸メチルアミル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル等のエステル系疎水性有機溶剤;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルn-アミルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系疎水性有機溶剤等を挙げることができる。これらは、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記疎水性有機溶剤としては、得られる複層塗膜の平滑性、鮮映性及び光輝感向上の観点から、該疎水性有機溶剤の少なくともその一種として、アルコール系疎水性有機溶剤を含有することが好ましく、炭素数7~14のアルコール系疎水性有機溶剤を含有することがより好ましい。なかでも、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノn-ブチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶剤を含有することが好ましく、1-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール及びエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルコール系疎水性有機溶剤を含有することがより好ましい。なかでも、2-エチル-1-ヘキサノール及び/又はエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルを含有することが好ましく、2-エチル-1-ヘキサノールを含有することが特に好ましい。
本発明の水性塗料組成物が、上記疎水性有機溶剤を含有する場合、該疎水性有機溶剤の配合量は、第1水性塗料(P1)中のバインダー成分の合計固形分100質量部を基準として、好ましくは2~70質量部の範囲内であり、より好ましくは3~60質量部の範囲内である。なかでも、4~50質量部の範囲内であることが好ましく、5~45質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
第1水性塗料(P1)には、さらに必要に応じて、増粘剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を適宜配合することができる。
上記増粘剤としては、例えば、親水性部分と疎水性部分を有するアクリル樹脂、好ましくは親水性のアクリル主鎖と疎水性の側鎖を有するアクリル樹脂であるアクリル会合型増粘剤;1分子中に疎水性部分とウレタン結合とポリエーテル鎖とを有し、水性媒体中において、該疎水性部分同士が会合することにより効果的に増粘作用を示すウレタン会合型増粘剤(市販品として、例えば、ADEKA社製の「アデカノール UH-814N」、「アデカノール UH-462」、「アデカノール UH-420」、「アデカノール UH-472」、「アデカノール UH-540」、「アデカノール UH-756VF」、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」等が挙げられる);ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、有機モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリアクリル酸系増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニックポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤などが挙げられ、なかでも、アクリル会合型増粘剤及び/又はウレタン会合型増粘剤を用いることが好ましく、アクリル会合型増粘剤を用いることが特に好ましい。これらの増粘剤は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
第1水性塗料(P1)は、前述の成分を水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に溶解又は分散させて調製することができる。第1水性塗料(P1)の塗料固形分濃度(NVP1)は、耐タレ性、鮮映性及び光輝感等の観点から、16~60質量%の範囲内が適切であり、好ましくは18~55質量%の範囲内、より好ましくは20~53質量%の範囲内である。
第1水性塗料(P1)は、それにより形成される塗膜の硬化膜厚20μmにおける水膨潤率が100%以下となるものであることが、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感向上の観点から好ましい。
本明細書において、第1水性塗料(P1)により形成される塗膜の硬化膜厚20μmにおける水膨潤率とは、第1水性塗料(P1)を硬化膜厚で20μmとなるように塗装した後、温度23℃、湿度68%RHの条件下で3分間セッティングを行い、次いでセッティング後の塗膜を65℃で1分間加熱し、その後、温度23℃、湿度68%RHの条件下でセッティングを行い塗装板の温度を23℃とした後、さらに23℃の脱イオン水に30秒間浸漬した後の塗膜の水膨潤率をいい、より具体的には、以下のようにして測定される値のことをいう。
まず、イソプロパノールを用いて脱脂した50mm×90mmの自動車車体用電着塗料組成物が塗装された塗板を秤量し、その質量をaとする。該自動車車体用電着塗料組成物が塗装された塗板の表面に、第1水性塗料(P1)を、硬化膜厚で20μmとなるように自動塗装機で回転霧化方式により塗装する。空調(23℃、68%RH)されたブース内で3分間セッティングした後、65℃で1分間プレヒートを行い、質量を測定する。これをbとする。次に塗板を、23℃の脱イオン水に30秒間浸漬する。塗板を脱イオン水から取り出した後、塗板の脱イオン水をウエスでふき取り、塗板質量を秤量し、その質量をcとする。
以下の式で算出される値を本明細書における水膨潤率と定義する。
水膨潤率(%)={(c-b)/(b-a)}×100 (1)
上記硬化膜厚20μmにおける水膨潤率が100%を超えると、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性及び光輝感が低下する場合がある。第1水性塗料(P1)により形成される塗膜の硬化膜厚20μmにおける水膨潤率は好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、さらに特に好ましくは70%以下である。
上記第1水性塗料(P1)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の塗装方法を用いて、必要に応じて印加して、塗装することができる。
また、第1水性塗料(P1)により形成される第1塗膜の膜厚は、硬化膜厚(TP1)として5~20μmの範囲内であり、好ましくは6~16μmの範囲内、より好ましくは8~14mの範囲内である。第1水性塗料(P1)により形成される第1塗膜の膜厚を一定の範囲に調整することにより、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成することができる。
上記第1塗膜は、未硬化のままで次の工程(2)である第2着色塗膜の形成に供し、後述する工程(4)において、工程(1)~(3)で形成される第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化される。また、必要に応じて、次の工程(2)である第2着色塗膜の形成を行う前に、前記プレヒート、エアブロー等により、約40~約100℃、好ましくは約50~約90℃の温度で30秒~20分間程度、直接的又は間接的に加熱を行ってもよい。なかでも、使用エネルギーの低減、塗装ラインの短縮化及び形成される複層塗膜の密着性等の観点から、上記工程(1)と工程(2)との間において、加熱を行わないことが好ましい。
[第2着色塗膜の形成]
工程(2)では、工程(1)で得られる未硬化の第1塗膜上に、水性塗料である第2水性着色塗料(P2)を塗装して、硬化膜厚(TP2)が0.5~7μmの範囲内である第2着色塗膜を形成させる。ここで、第2水性着色塗料(P2)は、バインダー成分(AP2)及び光輝性顔料(BP2)を含有する水性着色塗料であって、特定の塗料固形分濃度(NVP2)を有するものである。
第2水性着色塗料(P2)に用いられるバインダー成分(AP2)としては、塗料に通常用いられる塗膜形成性樹脂を含有する樹脂組成物を用いることができる。このような樹脂組成物としては熱硬化性樹脂組成物を好適に用いることができ、具体的には、例えば、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の硬化剤とを併用したものを用いることができる。
なかでも、形成される複層塗膜の光輝感及び平滑性の観点から、上記基体樹脂が、少なくともその一種として、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することがより好ましく、水酸基含有アクリル樹脂を含有することが特に好ましい。
第2水性着色塗料(P2)に配合される光輝性顔料(BP2)は、塗膜に光輝感を付与することを目的として使用される顔料である。該光輝性顔料(BP2)は、鱗片状であることが好ましい。このような光輝性顔料としては、特に制限はなく、塗料分野において用いられる各種光輝性顔料を1種もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。このような光輝性顔料の具体例としては、例えば、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属酸化物被覆酸化アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料等を挙げることができる。また、上記光輝性顔料を被覆する金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等を使用することができる。
なかでも、形成される複層塗膜の光輝感及び平滑性等の観点から、上記光輝性顔料(BP2)として、アルミニウムフレーク顔料、蒸着アルミニウムフレーク顔料、着色アルミニウムフレーク顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料及び金属酸化物被覆酸化アルミニウムフレーク顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種の光輝性顔料を使用することが好ましい。
第2水性着色塗料(P2)において、前記バインダー成分(AP2)及び前記光輝性顔料(BP2)の含有割合は、形成される複層塗膜の光輝感、鮮映性及び平滑性等の観点から、前記バインダー成分(AP2)の固形分100質量部を基準として、前記光輝性顔料(BP2)が5~550質量部の範囲内であることが好ましく、15~400質量部の範囲内であることがより好ましく、20~350質量部の範囲内であることが特に好ましい。
また、第2水性着色塗料(P2)において、前記第2水性着色塗料(P2)中の光輝性顔料(BP2)の含有割合は、形成される複層塗膜の光輝感、鮮映性及び平滑性等の観点から、該第2水性着色塗料(P2)中の塗料固形分を基準として、4~85質量%の範囲内であることが好ましく、10~80質量部の範囲内であることがより好ましく、15~75質量部の範囲内であることが特に好ましい。
第2水性着色塗料(P2)には、さらに必要に応じて、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤、顔料分散剤等の各種添加剤、着色顔料、体質顔料等の上記光輝性顔料(BP2)以外の顔料を適宜配合することができる。
第2水性着色塗料(P2)は、前述の成分を水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に溶解又は分散させて調製することができる。また、第2水性着色塗料(P2)において、塗料固形分濃度(NVP2)は1質量%以上20質量%未満の範囲内である。塗料固形分濃度(NVP2)をこの範囲内に調整することにより、耐タレ性、鮮映性、光輝感及び平滑性等に優れた複層塗膜を得られるという効果が得られる。塗料固形分濃度(NVP2)は、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性、光輝感及び平滑性等の観点から、2~17質量%の範囲内であることが好ましく、3~14質量%の範囲内であることがより好ましい。なかでも、4~10質量%の範囲内であることが好ましく、5~7質量%の範囲内であることが特に好ましい。
上記第2水性着色塗料(P2)は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の公知の塗装方法を用いて、必要に応じて印加して、塗装することができる。
第2水性着色塗料(P2)により形成される第2着色塗膜の膜厚は、硬化膜厚(TP2)として0.5~7μmの範囲内であることが好ましく、0.7~5μmの範囲内であることがより好ましい。なかでも、0.8~4μmの範囲内であることが好ましく、0.9~3μmの範囲内の範囲内であることが好ましい。第2水性着色塗料(P2)により形成される第2着色塗膜の膜厚を一定の範囲に調整することにより、第1塗膜とあいまって、耐タレ性、鮮映性、平滑性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成することができる。
上記第2着色塗膜は、未硬化のままで次の工程(3)であるクリヤーコート塗膜の形成に供し、後述する工程(4)において、工程(1)~(3)で形成される第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜と一緒に加熱硬化される。また、必要に応じて、次の工程(3)であるクリヤーコート塗膜の形成を行う前に、前記プレヒート、エアブロー等の手段によって、上記第2着色塗膜を実質的に硬化しない程度に乾燥させたり、乾燥しない程度に固形分含有率を調整したりしてもよい。
上記プレヒートは、公知の加熱手段により行うことが可能であり、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。上記プレヒートは、通常、第2水性着色塗料(P2)が塗装された被塗物を乾燥炉内で40~100℃、好ましくは50~90℃、さらに好ましくは60~80℃の温度で、30秒間~20分間、好ましくは1~15分間、さらに好ましくは2~10分間直接的又は間接的に加熱することにより行うことができる。
また、上記エアブローは、通常、被塗物の塗装面に常温又は約25℃~約80℃の温度に加熱された空気を30秒間~15分間程度吹き付けることにより行うことができる。
なかでも、形成される複層塗膜の耐タレ性、鮮映性、平滑性及び光輝感等の観点から、上記工程(2)と工程(3)との間において、上記プレヒートを行うことが好ましい。
[クリヤーコート塗膜の形成]
本発明においては、工程(2)において形成された未硬化の第2着色塗膜上に、クリヤーコート塗料(P3)を塗装して、クリヤーコート塗膜を形成する(工程(3))。
クリヤーコート塗料(P3)としては、例えば、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知のものを使用することができ、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂等の架橋剤をビヒクル成分として含有する有機溶剤系熱硬化型塗料、水性熱硬化型塗料、熱硬化粉体塗料等が挙げられる。中でも、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含む有機溶剤系熱硬化型塗料、又は水酸基含有アクリル樹脂とブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物を含む熱硬化型塗料が好適である。クリヤーコート塗料は、一液型塗料であってもよく、あるいは二液型ウレタン樹脂塗料等の二液型塗料であってもよい。
また、上記クリヤーコート塗料(P3)には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料、つや消し剤等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤーコート塗料(P3)は、それ自体既知の方法、例えば、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機等により塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。
クリヤーコート塗料(P3)は、その膜厚が、硬化膜厚を基準として通常10~80μm、好ましくは15~60μm、より好ましくは20~50μmの範囲内になるように塗装することができる。また、塗膜欠陥の発生を防止する等の観点から、クリヤーコート塗料(P3)の塗装後は、必要に応じて、室温で1~60分間程度のインターバルをおいたり、約40~約80℃の温度で1~60分間程度プレヒートしたりすることができる。
[塗膜の加熱硬化]
工程(4)においては、工程(1)~(3)で形成される第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜を含む複層塗膜を加熱することによって、これら3つの塗膜を含む複層塗膜を一度に硬化させる。なお、被塗物として未硬化の中塗り塗膜が形成された被塗物を用いる場合は、すでに述べたように、中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜の4層を同時に硬化させることができる。加熱手段は、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱等により行うことができる。加熱温度は、60~160℃が好ましく、80~150℃がより好ましく、100~140℃が特に好ましい。また加熱時間は、10~60分間が好ましく、15~40分間がより好ましい。
[形成された複層塗膜]
以上の工程によって形成された複層塗膜は、被塗物の上に形成された第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜の3層、又は中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜の4層を含む積層構造を有する。本発明の方法は、第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜の3層、又は中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜、及びクリヤーコート塗膜の4層を含む複層塗膜を同時に硬化する方式を採用するものであるが、特定の組成・性質を有する第1水性塗料(P1)及び第2着色水性塗料(P2)を用いて、特定の特性、膜厚等を備えた第1塗膜、第2着色塗膜を形成することにより、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成することができる。
本発明により、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜を形成することができる理由は必ずしも明らかではないが、その一つとして以下の要素が推察される。すなわち、第1水性塗料(P1)として、水酸基含有アクリル樹脂(A)、架橋剤(B)及びアクリル樹脂成分の酸価が20mgKOH/g以下のアクリルウレタン複合樹脂粒子(C)を含有する塗料を使用することにより、水が比較的浸透しにくい未硬化の第1塗膜が形成されるため、該未硬化の第1塗膜上に塗料固形分濃度(NVP2)が比較的低く水を比較的多く含有する第2水性着色塗料(P2)が塗装されても、該第2水性着色塗料(P2)から該未硬化の第1塗膜への水の移行が抑制され、該未硬化の第1塗膜の粘度が低下しにくく、耐タレ性が向上することが推察される。また、第2水性着色塗料(P2)から該未硬化の第1塗膜への水の移行が抑制されることにより、該未硬化の第1塗膜と未硬化の第2着色塗膜との混層が抑制され、該未硬化の第1塗膜と未硬化の第2着色塗膜との界面が乱れにくくなるため鮮映性が向上することが推察される。さらに、該未硬化の第1塗膜と未硬化の第2着色塗膜との界面が乱れにくくなることにより、該第2水性着色塗料(P2)中の光輝性顔料(BP2)がその乾燥過程において該未硬化の第1塗膜上に平行に配向しやすくなるため、光輝感に優れた第2着色塗膜が形成されることが推測される。そして、これらの結果として、耐タレ性、鮮映性及び光輝感に優れた複層塗膜が形成されることが推測される。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化膜厚に基づく。
中塗り塗料の製造
製造例1 水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、2-(ジメチルアミノ)エタノールを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、酸価が35mgKOH/g、水酸基価が128mgKOH/g、重量平均分子量が13000であった。
製造例2 水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み、85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル13部を加え、固形分55%の水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/gであった。
製造例3 二酸化チタン顔料分散液の製造
撹拌混合容器に、製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-1)56部(樹脂固形分25部)、「JR-806」(テイカ社製、商品名、ルチル型二酸化チタン)90部及び脱イオン水5部を入れ、更に、2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェーカーにて30分間分散して、二酸化チタン顔料分散液(X-1)を得た。
製造例4 黒色顔料分散液の製造
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)18部(樹脂固形分10部)、「カーボンMA-100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック顔料)10部、及び脱イオン水60部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.2に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(X-2)を得た。
製造例5 体質顔料分散液の製造
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)18部(樹脂固形分10部)、「バリファインBF-20」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム顔料)25部、「サーフィノール104A」(商品名、EVONIK社製、消泡剤、固形分50%)0.6部(固形分0.3部)、及び脱イオン水36部を混合し、ペイントシェーカーで1時間分散して体質顔料分散液(X-3)を得た。
製造例6 水性中塗り塗料の製造
製造例1で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-1)54.9部(樹脂固形分24.7部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)2.5部(樹脂固形分1.4部)、「ユーコートUX-8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)42.9部(樹脂固形分15部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(樹脂固形分30部)、「バイヒジュールVPLS2310」(商品名、住化コベストロウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分38%)26.3部(樹脂固形分10部)、製造例3で得た二酸化チタン顔料分散液(X-1)16.7部(二酸化チタン顔料10部、水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-1)固形分2.8部)、製造例4で得た黒色顔料分散液(X-2)15部(カーボンブラック顔料1.7部、水酸基含有アクリル樹脂(A-1)固形分1.7部)及び製造例5で得た体質顔料分散液(X-3)115部(硫酸バリウム顔料36部、水酸基含有アクリル樹脂(A-1)固形分14.4部)を均一に混合した。 次いで、得られた混合物に、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、増粘剤)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分濃度が48%であり、温度20℃、回転数が6回転/分(6rpm)の測定条件でBROOKFIELD粘度計(B型粘度計)によって測定される粘度が1300mPa・secの、水性中塗り塗料(PR-1)を得た。上記BROOKFIELD粘度計(B型粘度計)としては、「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製)を使用した。
製造例7 水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)3部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)水分散液を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)は、酸価が12mgKOH/g、水酸基価が69mgKOH/gであった。また、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)は、前記酸価が20mgKOH/g以下であり、かつ架橋されたコア部を有するコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11’)に該当する。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、エチレングリコールジメタクリレート2部、アリルメタクリレート1部、n-ブチルアクリレート7部、n-ブチルメタクリレート31部、スチレン11部、メチルメタクリレート8部、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.4部、メチルメタクリレート12部、エチルアクリレート8部、メタクリル酸1.9部及びスチレン2.7部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
製造例8 水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水128部、「アデカリアソープSR-1025」(商品名、ADEKA製、乳化剤、有効成分25%)3部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温させた。
次いで下記コア部用モノマー乳化物の全量のうちの1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、コア部用モノマー乳化物の残部を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。次に、下記シェル部用モノマー乳化物を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%2-(ジメチルアミノ)エタノール水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径95nm、固形分30%の水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-3)水分散液を得た。得られた水分散性水酸基含有アクリル樹脂は、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。また、該水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-3)は、前記架橋されたコア部を有するコア/シェル型複層構造を有する水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A11)に該当する。
コア部用モノマー乳化物:脱イオン水40部、「アデカリアソープSR-1025」2.8部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、n-ブチルアクリレート21部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部及びエチルアクリレート28部を混合攪拌することにより、コア部用モノマー乳化物を得た。
シェル部用モノマー乳化物:脱イオン水17部、「アデカリアソープSR-1025」1.2部、過硫酸アンモニウム0.03部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部、メタクリル酸5.1部、スチレン3部及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌することにより、シェル部用モノマー乳化物を得た。
上記水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)及び(A-3)の各重合性不飽和モノマーの含有割合を下記表1に示す。
製造例9 水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にメトキシプロパノール27.5部、イソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱し、スチレン25部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部、tert-ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにtert-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%の水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A-4)溶液を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器にモノブチルリン酸57.5部、イソブタノール41部を入れ、90℃に昇温後、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーの酸価は285mgKOH/gであった。
製造例10 水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物に、カルボキシル基を導入するために、無水トリメリット酸38.3部を加えて、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分70%の水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-2)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-2)は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、数平均分子量が1,400であった。原料組成において、酸成分中の脂環族多塩基酸の合計含有量は、該酸成分の合計量を基準として46mol%であった。
製造例11 アクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応装置に、イソフタル酸18.9部、アジピン酸32.4部、無水マレイン酸0.7部、1,6-ヘキサンジオール40.3部及びトリメチロールプロパン5.2部を仕込み、攪拌しながら160℃まで昇温した。次いで、内容物を160℃から230℃まで3.5時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。230℃で90分間反応を続けた後、精留塔を水分離器と置換し、内容物にトルエン約4部を加え、水とトルエンを共沸させて縮合水を除去した。トルエン添加の1時間後から酸価の測定を開始し、酸価が6未満になったことを確認して加熱を停止し、トルエンを減圧除去した後、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル20部を加え希釈し、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(Mw1000)2.1部を加えた。次いで反応液を130℃まで冷却し、これにスチレン3部、アクリル酸3.3部、n-ブチルアクリレート6.6部及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.75部の混合物を30分間かけて滴下した。その後、130℃で30分間熟成し、追加触媒として、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.05部を添加してさらに1時間熟成した。その後、反応液を85℃まで冷却し、ジメチルエタノールアミンで中和し、脱イオン水を加え、水分散を行い、固形分40%の、アクリル樹脂で変性された水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)の水分散体を得た。得られたアクリル変性水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)は、酸価30mgKOH/g、水酸基価68mgKOH/g、数平均分子量3000(ポリエステル部の数平均分子量1850)であった。
製造例12 ブロック化ポリイソシアネート化合物の製造例
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管、滴下装置及び除去溶媒簡易トラップを備えた反応容器に、「スミジュールN-3300」(商品名、住化コベストロウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分:100%、イソシアネート基含有率:21.8%)360部、「ユニオックスM-550」(商品名、日油社製、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、平均分子量:約550)60部及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.2部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル110部及びマロン酸ジイソプロピル252部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液3部を加え、65℃で8時間攪拌した。得られた樹脂溶液中のイソシアネート量は0.12mol/kgであった。これに4-メチルー2-ペンタノール683部を加え、系の温度を80~85℃に保ちながら減圧条件下で3時間かけて溶剤を留去し、ブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO-1)溶液1010部を得た。除去溶媒簡易トラップには、イソプロパノールが95部含まれていた。得られたブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO-1)溶液の固形分濃度は約60%であった。
製造例13 アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌装置、滴下装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「ニッポラン4009」(商品名、東ソー製、ブチレンアジペートを主組成とするポリエステルポリオール、分子量約1000、固形分100%)26.1部、2-エチルヘキシルアクリレート35部、ブチルヒドロキシトルエン0.008部及びジブチル錫ラウレート0.03部を仕込み、90℃まで昇温させた後、ヘキサメチレンジイソシアネート3.9部を30分かけて滴下した。その後90℃を保持し、NCO価が1mg/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、n-ブチルアクリレート3部及びアリルメタクリレート2部を添加しアクリルモノマーで希釈された水酸基含有ポリウレタン樹脂(c1-1)を得た。得られたポリウレタン樹脂のウレタン樹脂成分の水酸基価は10mgKOH/g、重量平均分子量は30000であった。
その後ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間撹拌し予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を高圧乳化装置にて100MPaで高圧処理することにより、ポリウレタン含有アクリルモノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(1)組成
アクリルモノマー希釈水酸基含有ポリウレタン樹脂(c1-1)70部
「Newcol707SF」(商品名、日本乳化剤社製、ポリオキシエチレン鎖を有するアニオン性乳化剤、有効成分30%)4.7部
脱イオン水 65.3部
上記モノマー乳化物(1)140部をフラスコへ移し、脱イオン水42.5部で希釈した。撹拌しながら70℃まで昇温させ、「VA-057」(商品名、富士フイルム和光純薬社製、水溶性アゾ重合開始剤)0.2部を脱イオン水10部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに30分間かけて滴下し、該温度を保持しながら2時間撹拌した。その後、下記組成のモノマー乳化物(2)と「VA-057」0.15部を脱イオン水7.5部に溶解させたものを1.5時間かけて滴下し、該温度を保持しながら1時間撹拌した後、さらに「VA-057」0.1部を脱イオン水5部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに投入し、該温度を保持しながら2時間撹拌した後冷却し、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C-1)の水分散体を得た。
モノマー乳化物(2)組成
2-エチルヘキシルアクリレート 8部
n-ブチルアクリレート 4部
メチルメタクリレート 14部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 3.5部
アクリル酸 0.5部
「Newcol707SF」 2.0部
脱イオン水 18部
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-1)のアクリル樹脂成分の酸価は5.6mgKOH/g、アクリル樹脂成分の水酸基価は21.6mgKOH/g、質量固形分濃度は40%であった。
製造例14~17及び19
モノマー乳化物の組成を下記表2に示すように変更する以外は、製造例13と同様にして各アクリルウレタン樹脂複合粒子(C-2)~(C-5)及び(C-7)の水分散体を得た。得られた各アクリルウレタン複合樹脂粒子(C-2)~(C-5)及び(C-7)のアクリル樹脂成分の酸価及び水酸基価を併せて下記表2に示す。なお、製造例19で得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-7)の水分散体は比較例用である。
製造例18 アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌装置、滴下装置及び還流冷却器を備えた反応容器に、「ニッポラン4009」(商品名、東ソー製、ブチレンアジペートを主組成とするポリエステルポリオール、分子量約1000、固形分100%)26.1部、2-エチルヘキシルアクリレート43部、ブチルヒドロキシトルエン0.014部及びジブチル錫ラウレート0.03部を仕込み、90℃まで昇温させた後、ヘキサメチレンジイソシアネート3.9部を30分かけて滴下した。その後90℃を保持し、NCO価が1mg/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、n-ブチルアクリレート7部、アリルメタクリレート2部、メチルメタクリレート14部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート3.5部及びアクリル酸0.5部を添加しアクリルモノマーで希釈された水酸基含有ポリウレタン樹脂(c6-1)を得た。得られたポリウレタン樹脂のウレタン樹脂成分の水酸基価は10mgKOH/g、重量平均分子量は30000であった。
その後ガラスビーカーに下記成分を入れ、ディスパーにて2000rpmで15分間撹拌し予備乳化液を製造した後、この予備乳化液を高圧乳化装置にて100MPaで高圧処理することにより、ポリウレタン含有アクリルモノマー乳化物を得た。
モノマー乳化物組成
アクリルモノマー希釈水酸基含有ポリウレタン樹脂(c6-1) 100部
「Newcol707SF」 6.7部
脱イオン水 93.3部
上記モノマー乳化物200部をフラスコへ移し、脱イオン水28.8部で希釈した。撹拌しながら70℃まで昇温させ、「VA-057」0.35部を脱イオン水17.5部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに30分間かけて滴下し、該温度を保持しながら2時間撹拌した。さらに、「VA-057」0.175部を脱イオン水8.75部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに投入し、該温度を保持しながら2時間撹拌した後冷却し、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C-6)の水分散体を得た。
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-6)の水分散体のアクリル樹脂成分の酸価は5.6mgKOH/g、水酸基価は21.6mgKOH/g、質量固形分濃度は40%であった。
(注1)「ETERNACOLL UH-100」:商品名、宇部興産製、1,6-ヘキサンジオールベースポリカーボネートジオール、分子量約1000、固形分100%。
(注2)「PTMG1000」:商品名、三菱化学株式会社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、分子量約1000、固形分100%。
製造例20 アクリルウレタン複合樹脂粒子(C)の製造例
温度計、サーモスタット、攪拌装置、滴下装置及び還流冷却器を備えたフラスコに、ウレタン樹脂成分としてポリエーテル系ウレタン重合体(住化コベストロウレタン株式会社製、商品名:インプラニールDLE、固形分50%)60部(固形分30部)と、脱イオン水115部と、2-エチルヘキシルアクリレート35部、n-ブチルアクリレート3部及びアリルメタクリレート2部からなるモノマー混合物を仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温した。その後、重合開始剤として、「VA-057」(商品名、富士フイルム和光純薬社製、水溶性アゾ重合開始剤)0.2部を脱イオン水10部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに30分間かけて滴下し、該温度を保持しながら2時間撹拌した。その後、下記組成のモノマー乳化物(2)と「VA-057」0.15部を脱イオン水7.5部に溶解させたものを1.5時間かけて滴下し、該温度を保持しながら1時間撹拌した後、さらに「VA-057」0.1部を脱イオン水5部に溶解させた開始剤溶液をフラスコに投入し、該温度を保持しながら2時間撹拌した後冷却し、アクリルウレタン複合樹脂粒子(C-8)の水分散体を得た。
モノマー乳化物(2)組成
2-エチルヘキシルアクリレート 8部
n-ブチルアクリレート 4部
メチルメタクリレート 14部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 3.5部
アクリル酸 0.5部
「Newcol707SF」 2.0部
脱イオン水 18部
得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-8)のアクリル樹脂成分の酸価は5.6mgKOH/g、アクリル樹脂成分の水酸基価は21.6mgKOH/g、質量固形分濃度は35%であった。
製造例21~25
モノマー混合物及びモノマー乳化物(2)の組成を下記表3に示すように変更する以外は、製造例20と同様にして各アクリルウレタン樹脂複合粒子(C-9)~(C-13)の水分散体を得た。得られた各アクリルウレタン複合樹脂粒子(C-9)~(C-13)のアクリル樹脂成分の酸価及び水酸基価を併せて下記表3に示す。なお、製造例25で得られたアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-13)の水分散体は比較例用である。
製造例26 マクロモノマーの製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、エチレングリコールモノブチルエーテル16部及び2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン(以下、「MSD」と略称することがある)3.5部を仕込み、気相に窒素ガスを通気し、攪拌しながら160℃に昇温した。160℃に達したら、n-ブチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルメタクリレート40部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート30部及びジ-tert-アミルパーオキサイド7部からなる混合液を3時間かけて滴下し、同温度で2時間攪拌した。次いで、30℃まで冷却し、エチレングリコールモノブチルエーテルで希釈して固形分65%のマクロモノマー溶液(d1-1)を得た。得られたマクロモノマーの水酸基価は125mgKOH/g、数平均分子量は2,300であった。また、プロトンNMRでの解析によるとMSD由来のエチレン性不飽和基のうち97%以上がポリマー鎖末端に存在し、2%は消失していた。
なお、上記プロトンNMRでの解析は、溶媒として重クロロホルムを使用し、重合反応前後の、MSDの不飽和基のプロトンに基づくピーク(4.8ppm、5.1ppm)、マクロモノマー鎖末端のエチレン性不飽和基のプロトンに基づくピーク(5.0ppm、5.2ppm)及びMSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)のピークを測定した後、上記MSDに由来する芳香族プロトン(7.2ppm)は重合反応前後で変化しないと仮定し、これを基準として、各不飽和基(未反応、マクロモノマー鎖末端、消失)を定量化することによって行なった。
製造例27 アクリル会合型増粘剤の製造
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素ガス導入管及び2つの滴下装置を備えた反応容器に、製造例26で得たマクロモノマー溶液15.4部(固形分10部)、エチレングリコールモノブチルエーテル20部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート30部を仕込み、液中に窒素ガスを吹き込みながら85℃に昇温した。次いで、同温度に保持した反応容器内に、N,N-ジメチルアクリルアミド31.5部、N-イソプロピルアクリルアミド31.5部、2-ヒドロキシエチルアクリレート27部、エチレングリコールモノブチルエーテル10部及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート40部からなる混合液と、「パーブチル O」(商品名、日本油脂社製、重合開始剤、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート)0.15部及びエチレングリコールモノブチルエーテル20部からなる混合液とをそれぞれ4時間かけて、同時に反応容器内に滴下し、滴下終了後、同温度で2時間攪拌して熟成を行なった。次いで、同温度に保持した反応容器内に、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.3部及びエチレングリコールモノブチルエーテル15部からなる混合液を1時間かけて滴下し、滴下終了後、同温度で1時間攪拌して熟成を行なった。次いで、エチレングリコールモノブチルエーテルを添加しながら、30℃まで冷却し、固形分35%の共重合体溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は31万であった。得られた共重合体溶液に脱イオン水215部を添加し、固形分20%のアクリル会合型増粘剤希釈液(RC-1)を得た。
製造例28 第1水性塗料(P1)の製造
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液9.1部(樹脂固形分5部)、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-2)7.1部(樹脂固形分5部)、製造例11で得たアクリル樹脂で変性された水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)の水分散体37.5部(樹脂固形分15部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)120部及び「カーボンMA-100」(商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック)0.3部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して顔料分散ペーストを得た。次に、得られた顔料分散ペースト174部、製造例7で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)水分散液50部(樹脂固形分15部)、メラミン樹脂(B1-1)(メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分72%、重量平均分子量750、メチル基/ブチル基のmol比が65/35)34.7部(樹脂固形分25部)、製造例12で得たブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO-1)溶液8.3部(樹脂固形分5部)、製造例20で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-8)の水分散体85.7部(樹脂固形分30部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、製造例27で得たアクリル会合型増粘剤希釈液(RC-1)2部(樹脂固形分0.4部)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分濃度(NVP1)50%の第1水性塗料(P1-1)を得た。
製造例29~51
製造例28において、配合組成を下記表4~表6に示す通りとする以外は、製造例28と同様にして、pH8.0、塗料固形分濃度(NVP1)50%の第1水性塗料(P1-2)~(P1-24)を得た。なお、表中の配合量は、溶媒成分を除き、固形分を表す。
(注3)「MICRO ACE S-3」:商品名、日本タルク社製、タルク粉末)
(注4)「メラミン樹脂(B1-2)」:メチルエーテル化メラミン樹脂、固形分80%、重量平均分子量650、メチル基/ブチル基のmol比が100/0
(注5)「メラミン樹脂(B1-3)」メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分75%、重量平均分子量1400、メチル基/ブチル基のmol比30/70。
(注6)「ユーコートUX-8100」(商品名、三洋化成工業社製、ウレタンエマルション、固形分35%)
(注7)ジエステル化合物(D-1):ポリオキシエチレングリコールと2-エチルヘキサン酸とのジエステル化合物を用いた。当該化合物は、上記一般式(1)において、R1及びR2がそれぞれ2-エチルペンチル基であり、R3がエチレン基であり、mが7であり、分子量が578である。
製造例52 第1水性塗料(P1)の製造
撹拌混合容器内において、「アルミペースト GX-3108」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量77%)5.5部(固形分4.2部)、「アルミペースト GX-3100」(商品名、旭化成メタルズ社製、アルミニウム顔料ペースト、アルミニウム含有量74%)2.4部(固形分1.8部)、2-エチル-1-ヘキサノール35部並びに製造例9で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A-4)溶液3.6部(固形分1.8部)及び2-(ジメチルアミノ)エタノール0.2部を均一に混合して、光輝性顔料分散液を得た。次に、得られた光輝性顔料分散液46.7部、製造例7で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂(A-2)水分散液50部(樹脂固形分15部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A-1)溶液9.1部(樹脂固形分5部)、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-2)7.1部(樹脂固形分5部)、製造例11で得たアクリル樹脂で変性された水酸基含有ポリエステル樹脂(PE-3)の水分散体37.5部(樹脂固形分15部)、メラミン樹脂(B1-1)(メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分72%、重量平均分子量750、メチル基/ブチル基のmol比が65/35)34.7部(樹脂固形分25部)、製造例12で得たブロック化ポリイソシアネート化合物(BNCO-1)溶液8.3部(樹脂固形分5部)、製造例20で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-8)の水分散体80.6部(樹脂固形分28.2部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、製造例27で得たアクリル会合型増粘剤希釈液(RC-1)6部(樹脂固形分1.2部)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加し、pH8.0、塗料固形分濃度(NVP1)25%の第1水性塗料(P1-25)を得た。
製造例53 第1水性塗料(P1)の製造
製造例52において、製造例20で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-8)の水分散体80.6部(樹脂固形分28.2部)を製造例25で得たアクリルウレタン複合樹脂粒子(C-13)の水分散体80.6部(樹脂固形分28.2部)とする以外は、製造例52と同様にして、pH8.0、塗料固形分濃度(NVP1)25%の第1水性塗料(P1-26)を得た。上記第1水性塗料(P1-25)及び(P1-26)の配合組成を下記表7に示す。なお、表中の配合量は、溶媒成分を除き、固形分を表す。
製造例54 光輝性顔料分散液の製造
撹拌混合容器内において、「Xirallic T61-10 WNT Micro Silver」(商品名、メルク社製、酸化チタン被覆酸化アルミニウムフレーク顔料)140部及びエチレングリコールモノブチルエーテル35部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(X-4)を得た。
製造例55 光輝性顔料分散液の製造
撹拌混合容器内において、「TWINCLEPEARL SXA-SO」(商品名、日本光研工業社製、酸化チタン被覆マイカフレーク顔料)140部及びエチレングリコールモノブチルエーテル35部を均一に混合して、光輝性顔料分散液(X-5)を得た。
製造例56 光輝性顔料分散液の製造
撹拌混合容器内において、「Hydroshine WS-3001」(商品名、水性用蒸着アルミニウムフレーク顔料、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)720部(固形分72部)、「アルペースト EMR-B6360」(商品名、東洋アルミ社製、固形分:47%、ノンリーフィングアルミニウムフレーク、平均粒子径D50:10.3μm、厚さ:0.19μm、表面がシリカ処理されている)を46.8部(固形分22部)、イソプロパノール500部及び脱イオン水500部を攪拌混合し、光輝性顔料分散液(X-6)を得た。
製造例57 黒色顔料分散液の製造
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)25部(樹脂固形分14部)、「Raven 5000 ULTRA III BEADS」(商品名、BIRLA CARBON社製、カーボンブラック顔料)7部、及び脱イオン水68部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH7.5に調整した後、ペイントシェーカーで30分間分散して黒色顔料分散液(X-7)を得た。
製造例58 第2水性着色塗料(P2)の製造
攪拌混合容器に、脱イオン水450部、「アウロ・ヴィスコ」(商品名、増粘剤、王子製紙社製、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、固形分2%)500部(固形分10部)、「Dynol604」(商品名、アセチレンジオール系湿潤剤、エボニックインダストリーズ社製、固形分100%)15部、製造例54で得た光輝性顔料分散液(X-4)165部、「TINUVIN 384」(商品名、紫外線吸収剤、BASF社製、固形分95%)2.6部(固形分2.5部)、「TINUVIN 292」(商品名、光安定剤、BASF社製、固形100%)2.5部、製造例8で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A-3)66.7部(固形分20部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A-1)45.5部(固形分25部)、「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)12.5部(固形分10部)、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系増粘剤、固形分28%)53.6部(固形分15部)、脱イオン水3500部及び2-(ジメチルアミノ)エタノールを攪拌混合し、pH8.0、塗料固形分濃度(NVP2)が5%の第2水性着色塗料(P2-1)を得た。
製造例59~64
製造例58において、配合組成及び塗料固形分濃度(NVP2)を下記表8に示す通りとする以外は、製造例58と同様にして、第3水性着色塗料(P2-2)~(P2-7)を得た。なお、表中の配合量は溶媒成分を除き、溶媒成分を除き、固形分を表す。
製造例65 光輝性顔料分散液の製造
撹拌混合容器内において、「Xirallic T61-10 WNT Micro Silver」(商品名、メルク社製、酸化チタン被覆酸化アルミニウムフレーク顔料)50部及び2-エチル-1-ヘキサノール35部並びに製造例9で得た水酸基及びリン酸基を有するアクリル樹脂(A-4)溶液8部(固形分4部)を均一に混合して、光輝性顔料分散液(X-8)を得た。
製造例66 第2水性着色塗料(P2)の製造
撹拌混合容器に、製造例8で得た水分散性水酸基含有アクリル樹脂水分散液(A-3)133部(固形分40部)、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(A-1)20部(固形分11部)、製造例10で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(PE-2)21.4部(固形分15部)、製造例65で得た光輝性顔料分散液(X-8)93部及び「サイメル325」(商品名、オルネクス社製、メラミン樹脂、固形分80%)37.5部(固形分30部)を入れ、均一に混合し、更に、製造例27で得たアクリル会合型増粘剤希釈液(RC-1)7.5部(固形分1.5部)、「アデカノール UH-756VF」(商品名、ADEKA社製、ウレタン会合型増粘剤、固形分32%)6.3部(固形分2.0部)、「プライマル ASE-60」(商品名、ダウケミカル社製、ポリアクリル酸系増粘剤、固形分28%)10.7部(固形分3.0部)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分濃度(NVP2)が12%の第2水性着色塗料(P2-8)を得た。
製造例67~69
製造例66において、配合組成及び塗料固形分濃度(NVP3)を下記表9に示す通りとする以外は、製造例66と同様にして、pH8.0の第3水性着色塗料(P2-9)~(P2-11)を得た。なお、表中の配合量は、溶媒成分を除き、固形分を表す。
(試験板の作製)
実施例1
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT-10」関西ペイント株式会社製)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化した電着塗膜を形成させた。次いで、該硬化した電着塗膜上に、前記製造例6で得た水性中塗り塗料(PR-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が25μmとなるように静電塗装した後、6分間放置した。次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に、製造例28で得た第1水性塗料(P1-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が20μmとなるように静電塗装し、3分間放置した。次いで、該未硬化の第1塗膜上に、製造例58で得た第2水性着色塗料(P2-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が1μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の第2着色塗膜上に「KINO-6510T」(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含むアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料、以下「クリヤーコート塗料(P3-1)」ということがある)を、硬化した時の膜厚が35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、該中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより、鮮映性、フリップフロップ性及び粒子感を評価するための試験板を作製した。
本実施例において、上記第2着色塗膜の硬化塗膜の膜厚は、下記式から算出した。以下の実施例2~30及び比較例1~6についても同様である。
x=sc/sg/S*10000
x:膜厚[μm]
sc:塗着固形分[g]
sg:塗膜比重[g/cm3]
S:塗着固形分の評価面積[cm2]
実施例2~30、比較例1~6
実施例1において、第1水性塗料、第2水性着色塗料及びクリヤーコート塗料の種類と硬化膜厚を下記表10~表13に示す通りとする以外は、実施例1と同様にして試験板を作製した。
このうち、比較例1~5においては、第2水性着色塗料の硬化膜厚が1μmとなるように塗装し、比較例6においては、第2水性着色塗料の硬化膜厚が2μmとなるように塗装した。該比較例1~6においては、第2水性着色塗料を塗装した後、5分間放置している間に試験板の一部または全体にタレが発生したため、下記鮮映性、フリップフロップ性及び粒子感の評価を行わなかった。
実施例31
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、カチオン電着塗料(商品名「エレクロンGT-10」関西ペイント株式会社製)を硬化膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化した電着塗膜を形成させた。次いで、該硬化した電着塗膜上に、前記製造例6で得た水性中塗り塗料(PR-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が25μmとなるように静電塗装した後、6分間放置した。次いで、該未硬化の中塗り塗膜上に、製造例28で得た第1水性塗料(P1-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が20μmとなるように静電塗装し、3分間放置した。次いで、該未硬化の第1塗膜上に、製造例66で得た第2水性着色塗料(P2-8)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化した時の膜厚が4μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、該未硬化の第2着色塗膜上に「KINO-6510T」(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含むアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料)を、硬化した時の膜厚が35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱して、該中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜を同時に硬化させることにより、鮮映性、フリップフロップ性及び粒子感を評価するための試験板を作製した。
実施例32~33、比較例7
実施例31において、第1水性塗料、第2水性着色塗料及びクリヤーコート塗料の種類と硬化膜厚を下記表13に示す通りとする以外は、実施例31と同様にして試験板を作製した。
評価試験
上記実施例1~33及び比較例1~7で得られた各試験板について、下記の試験方法により耐タレ性、鮮映性及び光輝感の評価を行なった。また、耐タレ性は以下の試験方法で評価を行なった。評価結果を下記表10~表13に示す。
(試験方法)
第1水性塗料(P1)により形成される塗膜の水膨潤率:イソプロパノールを用いて脱脂した50mm×90mmの自動車車体用電着塗料組成物が塗装された塗板を秤量し、その質量をaとする。該自動車車体用電着塗料組成物が塗装された塗板の表面に、第1水性塗料(P1)を、硬化膜厚で20μmとなるように自動塗装機で回転霧化方式により塗装する。空調(23℃、68%RH)されたブース内で3分間セッティングした後、65℃で1分間プレヒートを行い、質量を測定する。これをbとする。次に塗板を、23℃の脱イオン水に30秒間浸漬する。塗板を脱イオン水から取り出した後、塗板の脱イオン水をウエスでふき取り、塗板質量を秤量し、その質量をcとする。
以下の式で算出される値を第1水性塗料(P1)により形成される塗膜の水膨潤率とした。
水膨潤率(%)={(c-b)/(b-a)}×100
耐タレ性:11×15cmの大きさの、自動車車体用電着塗料組成物が塗装された塗板の長尺側の端部から3cmの部分に、直径1cmのポンチ孔を、2cm間隔で4個一列状に設けたものを被塗物とした。該被塗物上に、製造例6で得た水性中塗り塗料(PR-1)を、硬化したときの膜厚が25μmとなるように塗装し、6分間放置した。次いで、未硬化の中塗り塗膜上に、各第1水性塗料を、硬化したときの膜厚が20μmとなるように塗装し、3分間放置した。次いで、未硬化の第1塗膜上に、各第2水性着色塗料を、硬化したときの膜厚が下記表10~表13に記載された膜厚となるように塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。さらに、未硬化の第2着色塗膜上に、前記「KINO-6510T」(商品名、関西ペイント社製、水酸基含有アクリル樹脂とポリイソシアネート化合物を含むアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料)を、硬化したときの膜厚が35μmとなるように塗装し、該塗装板をほぼ垂直に立てて、塗装後7分間経過後、140℃で30分間加熱して、中塗り塗膜、第1塗膜、第2着色塗膜及びクリヤーコート塗膜を硬化させることにより試験板を作製した。得られた各試験板について、4個のポンチ孔の下端部からの塗膜のタレのうち、最も長いタレの長さに基づいて、耐タレ性を下記基準にて評価した。タレの長さが短いほど耐タレ性が高いことを示す。また、A、B及びCを合格とした。
A:タレ長さが1mm未満
B:タレ長さが1mm以上5mm未満
C:タレ長さが5mm以上10mm未満
D:タレ長さが10mm以上50mm未満
E:タレ長さが50mm以上
鮮映性:各試験板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を下記基準にて評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。また、A、B及びCを合格とした。
A:SW値が15未満
B:SW値が15以上18未満
C:SW値が18以上20未満
D:SW値が20以上25未満
E:SW値が25以上。
フリップフロップ値:各試験板について、「三次元変角分光測色システムGCMS-4」(商品名、村上色彩研究所製)によって測定されるY値(5°)及びY値(25°)から下記式によって算出されるフリップフロップ値に基づいて、光輝感を下記基準にて評価した。フリップフロップ値が大きいほど塗面の光輝感が高いことを示す。また、A、B及びCを合格とした。
フリップフロップ値=Y値(5°)/Y値(25°)
ここで、上記Y値(5°)は、「三次元変角分光測色システムGCMS-4」(商品名、村上色彩研究所製)を用いて、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定対象面に測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に5°の角度で受光した光について測定したときの分光反射率に基づくXYZ表色系におけるY値を示す。正反射角から測定光の方向に5°の角度で受光した光は、言い換えると、正反射角に対して測定光に近い側に5°ずれた角度で受光した光と説明することができる。
また、上記Y値(25°)は、「三次元変角分光測色システムGCMS-4」(商品名、村上色彩研究所製)を用いて、測定対象面に垂直な軸に対し45°の角度から測定対象面に測定光を照射し、正反射角から測定光の方向に25°の角度で受光した光について測定したときの分光反射率に基づくXYZ表色系におけるY値を示す。正反射角から測定光の方向に25°の角度で受光した光は、言い換えると、正反射角に対して測定光に近い側に25°ずれた角度で受光した光と説明することができる。
A:フリップフロップ値が3.75以上
B:フリップフロップ値が3.25以上3.75未満
C:フリップフロップ値が2.75以上3.25未満
D:フリップフロップ値が2.25以上2.75未満
E:フリップフロップ値が2.25未満
粒子感:各試験板について、HG値に基づいて、光輝感を下記基準にて評価した。HG値は、Hi-light Graininess値の略称である。HG値は、塗膜面を微視的に観察した場合におけるミクロ光輝感の尺度の一つであり、ハイライトにおける粒子感を表す指標である。HG値は、次のようにして、算出される。先ず、塗膜面を、光の入射角15度/受光角0度にてCCDカメラで撮影し、得られたデジタル画像データ(2次元の輝度分布データ)を2次元フーリエ変換処理して、パワースペクトル画像を得る。次に、このパワースペクトル画像から、粒子感に対応する空間周波数領域のみを抽出して得られた計測パラメータを、更に0~100の数値を取り、且つ粒子感との間に直線的な関係が保たれるように変換した値が、HG値である。HG値は、光輝性顔料の粒子感が全くないものを0とし、光輝性顔料の粒子感が最も大きいものを100とした値である。
HG値が小さいほど塗面の光輝感が高いことを示す。また、A、B及びCを合格とした。
A:41以下
B:41より大きく43以下
C:43より大きく45以下
D:45より大きく47以下
E:47より大きい。
(注8)「マジクロンKINO-1210TW」:商品名、関西ペイント社製、カルボキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂を含むアクリル樹脂系有機溶剤型クリヤーコート塗料、以下「クリヤーコート塗料(P3-2)」ということがある。