以下、図面を参照して、本発明に係る長尺部材の保持具の一実施形態について説明する。
図1や図8に示すように、この実施形態の長尺部材の保持具10(以下、単に「保持具10」ともいう)は、突出した被固定部5を有する被固定部材1に、被固定部5を介して固定されると共に、長尺部材Pを保持するものであって、保持部材20と、防振部材40と、固定部材70とを有している。
図1に示すように、この実施形態では、車体パネルや車体フレーム等の、被固定部材1の被固定面3(被固定部材1の厚さ方向の一側部であり、保持具が配置される側の面を意味する)から被固定部5が突出している。
上記被固定部5としては、例えば、被固定面3から一体又は別体で立設し、外周面にネジ溝を設けたいわゆるスタッドボルトが挙げられる。なお、この実施形態の被固定部5は、上記のスタッドボルトであり、その軸方向が前記被固定面3の面方向に対して垂直となっている。また、被固定部5は、スタッドボルトに限定されるものではなく、例えば、角柱状や円柱状等のピンであったり、係合孔を設けた長板状のリブ等であってもよく、固定部材70の固定手段(これについては後述する)が係合可能であればよい。
前記長尺部材Pは、例えば、パイプや、チューブ、ホース、ロッド、ワイヤ、ケーブル、ハーネス、コード等の、線状、管状又は棒状の部材である。
次に、保持具10を構成する各部材について説明する。まず、保持部材20について説明する。図1や図4に示すように、この保持部材20は、長尺部材Pを保持する保持部21と、この保持部21が連結された枠状本体部30とを有している。
この実施形態における枠状本体部30は、互いに平行に配置された一対の側壁31,31と、これらの一対の側壁31,31どうしを互いに連結する一対の連結壁32,32とを有しており、略四角枠状をなしている。また、図7に示すように、枠状本体部30の一端33側には、略四角孔状をなした開口35が形成されている。この開口35からは、防振部材40が挿入されるようになっている(図4参照)。
一方、枠状本体部30の他端34側の内周からは、略四角環状をなした環状突部36が枠状本体部内方に向けて突設している。この環状突部36の内側が、開口37をなしている。図7に示すように、前記環状突部36の一端側(裏側)には、防振部材40の後述するストッパ突部46が当接する。
なお、枠状本体部30の一端33側とは、被固定面3に近接した側(被固定面3に向く側)を意味する。また、枠状本体部30の他端34側とは、一端33側とは反対側であって、被固定面3から離反する側を意味する。これは、以下に説明する、防振部材40の各部(枠状部41、台座部50、連結部55等)や固定部材70の各部(基部71、挿入部73等)における「一端側」や「他端側」も同様の意味である。
また、各連結壁32の他端34寄りの箇所であって、幅方向(一対の連結壁32,32の並列方向に直交する方向)の中央には、略四角孔状をなした第1係合孔38がそれぞれ形成されている。図5に示すように、この第1係合孔38には、防振部材40の後述する第1係合突部47が係合する。
一方、前記保持部21は、枠状本体部30の一方の側壁31側に連設されている。この保持部21は、前記側壁31の、被固定面3側の箇所から、枠状本体部30の軸方向C(図4参照)に直交する方向に所定長さで延びる底壁23と、該底壁23から所定間隔をあけて、枠状本体部30の軸方向Cに沿って延びる複数の保持壁25とを有している。底壁23と、複数の保持壁25とによって、長尺部材Pを保持するための保持空間27が、複数画成されている。また、各保持壁25の内面(保持空間27側に向く面)からは、複数の保持爪29が、前記底壁23側に向けて斜め内方に延出している。その結果、複数の保持空間27に、複数の長尺部材Pを、抜け止め保持可能となっている(図8参照)。なお、保持部の形状や構造は、長尺部材Pを保持可能であれば、特に限定はされない。
以上説明した保持部材は、この実施形態の場合、全ての部分(保持部、保持爪、枠状本体部、連結部、環状突部等)は、周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、保持部材の各部分(保持部、保持爪、枠状本体部、連結部、環状突部等)の形状は、特に限定されない。
次に、防振部材40について説明する。図2に示すように、この防振部材40は、保持部材20の枠状本体部30の内側に挿入される枠状部41と、被固定部材1に当接する台座部50と、枠状部41及び台座部50を連結する連結部55とを有している。
この実施形態における枠状部41は、互いに平行に配置された一対の側壁42,42と、これらの一対の側壁42,42どうしを互いに連結する一対の連結壁43,43とを有しており、略四角枠状をなしている。枠状部41の一端44側及び他端45側は、それぞれ開口しており、他端45側の開口から、固定部材70の後述する挿入部73(図3参照)が挿入されるようになっている。また、図9に示すように、枠状部41の内側に挿入された挿入部73は、一端44側の開口から突出する。
なお、各側壁42,42の一端44側は、各連結壁43の一端44側よりも、被固定面3側に向けてやや突出した形状となっている。これにより、一対の連結壁43,43の一端44側の端面と、後述する一対の連結部55,55との間隙G4(図2参照)を広く確保して、一対の連結部55,55を撓み変形させやすくしている。
また、略四角枠状をなした枠状部41は、略四角枠状をなした枠状本体部30に対して相似形状でかつ一回り小さい形状となっている。具体的には、枠状部41の一対の側壁42,42の幅(一対の側壁42,42の配列方向に直交する方向の長さ)は、枠状本体部30の一対の側壁31,31の幅(一対の側壁31,31の配列方向に直交する方向の長さ)よりも小さく、かつ、枠状部41の一対の連結壁43,43の幅(一対の連結壁43,43の配列方向に直交する方向の長さ)は、枠状本体部30の一対の連結壁32,32(一対の連結壁32,32の配列方向に直交する方向の長さ)よりも小さく形成されている。その結果、図9に示すように、枠状本体部30の内側に枠状部41が挿入された状態では、枠状本体部30の内周全周と、枠状部41の外周全周との間に、第1隙間S1が形成されるようになっている。
また、枠状部41の、他端45側の外周からは、略四角環状をなしたストッパ突部46が枠状部外方に向けて突設されている。このストッパ突部46は、開口35側から枠状本体部30の内側に、枠状部41が最大限挿入されたときに、図9に示すように、前記環状突部36の一端側(裏側)に当接して、それ以上の挿入を規制する。
また、各連結壁43の他端45寄りの箇所であって、幅方向の中央には、外面にテーパ面を有する突起状をなした第1係合突部47がそれぞれ突設されている。図5に示すように、この第1係合突部47が、枠状本体部30の第1係合孔38に係合することで、枠状本体部30の内側に、防振部材40が装着されるようになっている。
なお、この実施形態では、枠状部41側に突起状の第1係合突部47が形成され、枠状本体部30側に孔状の第1係合孔38が形成されているが、枠状部41側に係合孔を形成し、枠状本体部30側に、係合孔に係合する係合突起を形成してもよい。また、枠状本体部30と枠状部41とを係合させる構造は、上記構造に限定されるものではない。
更に、各連結壁43の他端45寄りの箇所であって、幅方向の両側には、略四角孔状をなした第2係合孔48,48がそれぞれ形成されている。これらの第2係合孔48,48には、固定部材70の後述する第2係合突部80,80がそれぞれ係合する。
また、各連結壁43の他端45側の端面の幅方向中央からは、幅方向に沿って所定長さで形成されたストッパリブ49がそれぞれ突設されている。このストッパリブ49は、固定部材70の後述する基部71のフランジ部71aが当接可能となっており(図10に示す状態から、枠状部41に対して挿入部73が更に押し込まれたときに当接する)、固定部材70の押込みストッパをなしている。
図4に示すように、被固定部材1に当接する台座部50は、枠状部41の一端44側に、距離間隔をあけて配置されており、連結部55を介して連結されている。この実施形態における台座部50は、略四角枠状をなした枠状部41の外周形状に適合して、それよりも一回り大きな形状をなした、略四角板状をなしたプレート部51と、このプレート部51の一端側から突出する突部53とを有している。この実施形態における突部53は、プレート部51の一端側であって、その幅方向両側に、前記一対の側壁42,42対して平行となるように突条に延びる、一対のものからなる。図9に示すように、これら一対の突部53,53が、被固定部材1(ここでは被固定面3)に当接するようになっている。また、一対の突部53,53は、連結部55とプレート部51との連結部分(ここでは連結部55の一端58とプレート部51との連結部分)よりも、外側に位置するように設けられている。なお、一対の突部53,53は、連結部55と挿入部73の一端との当接部分T(図9参照)よりも、外側に位置するように設けられている、ともいえる。更に、プレート部51の中央には、被固定部5が挿入される、円形状の挿入孔51aが形成されている。
また、図9に示すように、枠状本体部30の内側に枠状部41が挿入された状態で、連結部55の外面は、枠状本体部30に対して離間している。なお、この保持具10においては、枠状本体部30の内側に枠状部41が挿入された状態では、図9に示すように、連結部55も枠状本体部30の内側に挿入されることになるが、上記の連結部55の外面とは、枠状本体部30の内面に向く面(内面に対向する面)を意味する。また、上記のように、枠状本体部30の内側に枠状部41が挿入された状態で、連結部55の外面は、枠状本体部30に対して離間していることで、一対の連結部55,55の外面と、枠状本体部30の内面(ここでは一対の側壁31,31の内面)との間に、所定の間隙G1が形成されることになり、連結部55が撓み変形可能となっている。
また、連結部55は、台座部50に向けて窄まるように斜めに延びて、台座部50に連結されている。更に、この連結部55は、撓み変形可能とされており、固定部材70の後述する挿入部73の一端76に、弾性的に当接するようになっている(図9参照)。
この実施形態では、一対の連結部55,55を有している。図2や図4に示すように、これらの一対の連結部55,55は、その他端56,56が、枠状部41の一対の側壁42,42の一端側の端面にそれぞれ連結されていると共に、台座部50側に向けて窄まるように、略逆ハの字状をなすように互いに近接しつつ斜め内方に延びており、更に一端58,58が互いに平行となるように屈曲して、台座部50の他端側(表側)にそれぞれ連結されている。なお、連結部55の一端58は、枠状部41の内側への、挿入部73の挿入方向(挿入部73の軸方向C(図9参照)に沿った方向)に沿って設けられている、ともいえる。また、図2に示すように、各連結部55は、枠状部41の側壁42の幅と同一幅で形成されている。
そして、図9に示すように、一対の連結部55,55の内面(相手側の連結部55との対向面)に、固定部材70の挿入部73の一端76が当接した状態から、枠状部41に対して更に挿入部73が押込まれると、図10に示すように、挿入部73の一端76によって、一対の連結部55,55が押圧されて撓み変形するようになっている。
なお、図9に示すように、挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55の内面に当接した状態では、上述したように、一対の連結部55,55の外面と、枠状本体部30の一対の側壁31,31の内面との間に、所定の間隙G1が形成されていると共に、挿入部73の一端76側の端面と、一対の連結部55,55の内面との間に、所定の間隙G2が形成されている。その結果、挿入部73の一端76により、一対の連結部55,55が押圧される際に、一対の連結部55,55が撓み変形しやすくなっている(上記のような間隙G1,G2がないと、連結部55が撓み変形する余地が少なくなり、撓み変形しにくくなる)。
なお、この実施形態の連結部55は、上述したように一端58が屈曲した形状となっているが、これに限定されるものではない。例えば、連結部としては、他端から一端に至るまで屈曲せずに傾斜して延びる形状であったり、角度の異なる傾斜部が複数あったり、湾曲した形状であったりしてもよく、挿入部の一端が当接して撓み変形可能な形状であればよい。
また、図9に示すように、一対の連結部55,55の一端58,58は、台座部50の挿入孔51aの外周縁であって、台座部50の一対の突部53,53よりも内側に連結されている。更に、台座部50の他端側(表側)の外周縁部に、枠状本体部30の一端33が当接するようになっている(図9参照)。また、連結部55のばね定数は、突部53のばね定数よりも小さくなっており、連結部55の方が、突部53よりも撓み変形しやすくなっている。
また、防振部材40は、枠状部41の、台座部50とは反対側からは延出片60が延出しており、この延出片60は、固定部材70の後述するフランジ部71aに押圧されて外方に屈曲可能とされている。この実施形態では、枠状部41を構成する一対の側壁42,42の他端45,45から、一対の延出片60,60が枠状部41の軸方向Cに沿って延びている。また、図2に示すように、各延出片60は、枠状部41の側壁42の幅と同一幅で形成されている。
また、各延出片60の、延出方向の基端61側(被固定面3に近接する一端側)の外面(相手側の延出片60との対向面とは反対側)には、凹状部63がそれぞれ形成されている。その結果、各延出片60は、基端61側に薄肉ヒンジを設けた板状片となっており、凹状部63を介して外方に屈曲しやすくなっている。
更に、上記一対の延出片60,60は、枠状部41の内側に挿入部73が挿入されて、フランジ部71aにより押圧される前の状態では、撓まずに枠状部41の軸方向Cに沿って真っ直ぐに延びており(図4参照)、このような一対の延出片60,60が真っ直ぐに延びた状態で、枠状部41は、枠状本体部30の一端33側の開口35から、枠状本体部30の内側に挿入されるようになっている(図5参照)。すなわち、撓まずに延びた状態での各延出片60の外面どうしの最大間隔は、一対の側壁31,31の内面どうしの最小間隔よりも小さく形成されており、一対の延出片60,60を、枠状本体部30の一対の側壁31,31の間に挿入可能となっている。また、撓まずに延びた状態での各延出片60の内面どうしの最小間隔は、固定部材70の挿入部73を構成する一対の側壁74,74の外面どうしの最大間隔よりも大きく形成されており、一対の延出片60,60の間に、固定部材70の後述する挿入部73を挿入可能となっている。
また、各延出片60の、延出方向の先端側(延出方向の基端61とは反対側で、被固定面3から離反する他端側)の内面には、延出片60を延出方向先端に向けて次第に先細とするテーパ面65が形成されている。図5に示すように、固定部材70の挿入部73の一対の側壁74,74の外面どうしの最大間隔は、延びた状態の各延出片60の内面どうしの最小間隔よりも小さいため、一対の延出片60,60が撓まずに真っ直ぐに延びた状態で、一対の延出片60,60の間を通って、枠状部41の内側に挿入されるが、その際に、上記のようなテーパ面65が一対の延出片60,60にそれぞれ形成されているので、一対の延出片60,60の間を、挿入部73が通過しやすくなる。また、図9に示すように、枠状部41の内側への挿入部73の挿入時に、各延出片60のテーパ面65に、固定部材70のフランジ部71aがそれぞれ面接触するので、当接面積を広げて、固定部材70からの押込み力を受け止めやすくなっている。
更に、上述したように、各延出片60の基端61側の外面に凹状部63がそれぞれ形成されていることで、固定部材70のフランジ部71aによって、各延出片60の延出方向先端側(被固定面3から離反する他端側)が押圧されて外方に屈曲された状態では、図10に示すように、延出片60の外面と、枠状本体部30との間に、凹状部63により空隙Kが形成されるようになっている。この実施形態では、図10に示すように、固定部材70のフランジ部71aに押圧されて、凹状部63を介して外方に屈曲した一対の延出片60,60は、その延出方向先端側の外面が、枠状本体部30の一対の側壁31,31の他端34側の端面や、環状突部36の他端側(表側)に当接して、凹状部63によって、環状突部36の内方角部から斜め外方に延びる、空隙Kが形成されるようになっている。
以上説明した防振部材40は、この実施形態の場合、全ての部分(枠状部、台座部、連結部、延出片等)が、例えば、ゴムや弾性エラストマー等の、防振性能を有する弾性樹脂材料によって、一体形成されている。また、防振部材の各部分(枠状部、台座部、連結部、延出片等)の形状は、特に限定されない。
次に、固定部材70について説明する。図3に示すように、この固定部材70は、防振部材40の枠状部41の内側に挿入される挿入部73と、被固定部5に係合する固定手段を有している。
この実施形態における固定部材70は、保持具10の組付け作業者に押込まれる部分となる略四角板状をなした基部71を有しており、この基部71に前記挿入部73が連設されている。この挿入部73は、基部71の一端側(裏側)であって、その外周縁部よりもやや内側から、所定長さで互いに平行に延出した一対の側壁74,74と、それらの延出方向一端側を互いに連結する連結壁75とを有している。また、連結壁75の中央には、被固定部5が挿入される、円形状の挿入孔75aが形成されている。更に、基部71と連結壁75との間であって、挿入孔75aに挿入される被固定部5に干渉しない位置には、複数の補強部77が設けられており、固定部材70全体の補強が図られている。
そして、図9に示すように、枠状部41の内側に挿入部73が挿入された状態で、挿入部73の一端76が連結部55を押圧して、連結部55が撓み変形可能とされている。また、枠状部41の内側に挿入部73が挿入された状態で、挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55に対向する位置に配置されて、これらの一対の連結部55,55を押圧して撓み変形可能とされている(図9参照)。
また、図9に示すように、挿入部73を構成する一対の側壁74,74の最大距離(ここでは一対の側壁74,74の外面どうしの最大距離)を「W1」、一対の連結部55,55の他端56側の最小距離(ここでは一対の連結部55,55の他端56側における内面どうしの最小距離)を「W2」、一対の連結部55,55の一端58側の最小距離(ここでは一対の連結部55,55の一端58側における内面どうしの最小距離)を「W3」としたとき、W1は、W2よりも小さく、かつ、W3よりも大きくなるように設けられている(W3<W1<W2)。これにより、枠状部41に対して挿入部73を押込んだときに、挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55を確実に当接するようになっている。
なお、挿入部73の一対の側壁74,74の幅(一対の側壁74,74の配列方向に直交する方向の長さ)は、枠状部41の一対の側壁42,42の幅(一対の側壁42,42の配列方向に直交する方向の長さ)よりも小さく、かつ、挿入部73の一対の側壁74,74の配列方向における最大長さは、枠状部41の連結壁43(一対の連結壁43,43の配列方向に直交する方向の長さ)よりも小さく形成されている。その結果、図9に示すように、枠状部41の内側に挿入部73が挿入された状態で、枠状部41の内周全周と、挿入部73の外周全周との間に、第2隙間S2が形成されるようになっている。
また、図10に示すように、挿入部73は、防振部材40の枠状部41の内側に挿入されて、その一端76によって連結部55を押圧するが、この一端76とは反対側に位置する他端側にはフランジ部71aを有している。この実施形態においては、前記基部71の周縁部が、前記挿入部73の外周から外方に広がるフランジ状をなしており、この部分が前記フランジ部71aとなっている。図9や図10に示すように、このフランジ部71aは、防振部材40の延出片60を押圧して外方に屈曲させる。
更に、挿入部73を構成する一対の側壁74,74の一端76側であって、その外面側(挿入部73の内部空間に向く内面とは反対側)には、所定角度で面取りされた面取部74a,74aが形成されている。この面取部74a,74aは、図5に示すように、真っ直ぐに延びた一対の延出片60,60を通過させて、挿入部73を枠状部41の内側に挿入する際に、挿入部73を挿入しやすくすると共に、図9に示すように、一対の連結部55,55の内面に、挿入部73の一端76を当接しやすくする。
また、一対の側壁74,74の内面側(挿入部73の内部空間に向く側であって、相手方の側壁74との対向面側)には、基部71側に向けて斜め内方に延出した、複数の固定爪79が延出している。これらの固定爪79が、被固定部5に係合して、被固定部5に対して固定部材70を固定する(図9及び図10参照)。ここでは、固定爪79の延出方向先端が、被固定部5であるスタッドボルトのネジ溝に係合する。すなわち、この実施形態では、この固定爪79が、本発明における「固定手段」をなしている。なお、固定手段としては、被固定部に係合可能で、被固定部に固定部材を固定できるものであれば、その形状や構造は特に限定されない。
更に、各側壁74の幅方向の外面側であって、他端寄り(基部71寄り)の箇所には、一対の第2係合突部80,80がそれぞれ突設されている(合計で4個の第2係合突部80が設けられている)。各第2係合突部80は、防振部材40の対応する第2係合孔48にそれぞれ係合し、それによって防振部材40に対して固定部材70が装着されるようになっている。
なお、各第2係合突部80の、挿入部73の軸方向Cに沿った長さは、枠状部41に設けた各第2係合孔48の、枠状部41の軸方向Cに沿った長さよりも短くなっている。その結果、第2係合孔48内で第2係合突部80が移動可能となり、枠状部41に対して挿入部73を相対的に軸方向移動可能としている。
なお、この実施形態では、挿入部73側に突起状の第2係合突部80が形成され、枠状部41側に孔状の第2係合孔48が形成されているが、挿入部73側に係合孔を形成し、枠状部41側に、係合孔に係合する係合突起を形成してもよい。また、枠状部41と挿入部73とを係合させる構造は、上記構造に限定されるものではない。
以上説明した固定部材は、この実施形態の場合、全ての部分(基部、挿入部、固定爪等)は、周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、固定部材の各部分(基部、挿入部、固定爪等)の形状は、特に限定されない。
次に、上記構成からなる保持具10の使用方法について説明する。
まず、図4の矢印に示すように、枠状本体部30の一端33側の開口35から、一対の延出片60,60側から枠状部41を挿入して押込んでいく。すると、一対の延出片60,60が、枠状本体部30の他端34側の開口37から挿出されると共に、枠状部41の第1係合突部47が、枠状本体部30の第1係合孔38に係合する。更に、枠状部41のストッパ突部46の他端側が、枠状本体部30の環状突部36の一端側に当接して、その押込み量が規制されると共に、枠状本体部30の一端33が台座部50の他端側の外周縁部に当接する。その結果、枠状本体部30の内側に、枠状部41が抜け止めされた状態で装着されて、保持部材20に防振部材40を組付けることができる(図5参照)。
この際、この実施形態では、枠状部41に設けた一対の延出片60,60は、固定部材70のフランジ部71aにより押圧される前の状態では、枠状部41の軸方向Cに沿って真っ直ぐに延びているので、枠状本体部30の内側に枠状部41をスムーズに挿入することができ、挿入作業性がよい(一対の延出片60,60が外方に屈曲していると、枠状本体部30の内側への枠状部41の挿入時に、枠状本体部30の一端33側の開口35に、一対の延出片60,60が引っ掛かりやすくなる)。
上記状態から今度は図5の矢印に示すように、枠状部41の他端45側の開口から、挿入部73を挿入していく。この際には、挿入部73を、真っ直ぐに延びた一対の延出片60,60の間を通過させて、その一端76側から枠状部41の内側に挿入していく。すると、図9に示すように、固定部材70のフランジ部71aが一対の延出片60,60を押圧して外方に屈曲させると共に、挿入部73の各第2係合突部80が、枠状部41の対応する各第2係合孔48にそれぞれ係合する。その結果、枠状部41の内側に挿入部73が装着されて、防振部材40に固定部材70を組付けることができる。また、この状態では、挿入部73の一端76が、枠状部41の一端44側の開口から突出して、一対の連結部55,55に対向配置されると共に、同挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55の内面に弾性的に当接して、連結部55からの弾性力が挿入部73に付与された状態で、防振部材40に固定部材70が組付けられるようになっている。
上記のようにして、枠状本体部30の内側に枠状部41を挿入すると共に、枠状部41の内側に挿入部73を挿入することで、保持部材20と、防振部材40と、固定部材70とを互いに組付けて一体化させて、保持具10を得ることができる。なお、この状態では、図9に示すように、一対の連結部55,55の内面に、挿入部73の一端76が当接している。
その後、保持部材20の保持部21の保持空間27に、長尺部材Pを挿入して、保持爪29により保持する。なお、長尺部材Pは、保持具10を被固定面3に固定した後で、保持するようにしてもよい。
次に、防振部材40の挿入孔51aや固定部材70の挿入孔75aを、被固定部5に整合させて、図8の矢印に示すように、被固定部材1の被固定面3に近接する方向に、保持具10を押込んでいく。すると、被固定部5が、防振部材40の挿入孔51aや固定部材70の挿入孔75aに挿入されて、挿入部73の内側に受け入れられて、固定手段である複数の固定爪79が被固定部5に係合していく。この際、被固定部5によって、固定部材70の挿入部73が、枠状部41の他端45側の開口から抜け出る方向に押し上げられるので、固定部材70の基部71を押えつつ保持具10全体を押込む。その後、防振部材40の台座部50の突部53,53が、被固定面3に当接するまで、保持具10を押込む。
ところで、上記のように、被固定部材1に対して保持具10を固定する際には、枠状部41に対して挿入部73が過度に押込まれることがある。この場合、図10に示すように、挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55の内面を押圧して、一対の連結部55,55を撓み変形させると共に、固定部材70のフランジ部71aが、一対の延出片60,60を押圧して外方に屈曲させる。この実施形態では、一対の連結部55,55は、挿入部73の一端76の外周形状に適合する形状となるように撓み変形する。すなわち、挿入部73の一端76の面取部74a,74aが、一対の連結部55,55の斜めに延出した部分の内面を押圧することで、一対の連結部55,55は、一端58,58の内面側が押圧されて圧縮変形しつつ(ただし、この状態でも一端58,58は互いに平行な状態に維持される)、一端58,58を介して連結部55,55が、外方(間隙G1側)に撓み変形するようになっている。
上記のようにして、図9や図10に示すように、被固定部材1に、被固定部5を介して保持具10が固定されて、被固定部材1に長尺部材Pを保持することができる。
そして、この保持具10においては、図9に示すように、枠状部41の内側に挿入部73が挿入された状態で、挿入部73の一端76が連結部55を押圧して、連結部55が撓み変形可能とされている(図10参照)。そのため、被固定部材1に保持具10を固定させる際に、枠状部41に対して挿入部73が過度に押されても、図10に示すように、挿入部73の一端76が、一対の連結部55,55を押圧して、これらの連結部55,55を撓み変形させるので、固定部材70からの押込み力を吸収することができ、台座部50の圧縮変形を抑制することが可能となる。その結果、防振部材40による所定の防振性能を得ることができる。
また、上記のように、台座部50の圧縮変形が抑制されるので、保持部21に保持された長尺部材Pの、被固定面3からの保持高さを一定にすることができ、被固定面3からの長尺部材Pの保持位置のバラ付きを抑えることができる。
また、この実施形態においては、図9に示すように、一対の連結部55,55は、台座部50側に向けて窄まるように、略逆ハの字状をなすように互いに近接しつつ斜め内方に延びると共に、一端58,58が互いに平行となるように屈曲して、台座部50の他端側に連結された形状となっている。このような形状の連結部55の場合、単に斜めに延びている連結部の場合よりも、その延出長さを長く確保することができるので、枠状部41の内側に挿入部73が挿入されて、その一端76が一対の連結部55,55を押圧するときに、一対の連結部55,55を撓み変形しさせやすくして、固定部材70からの押込み力をより効果的に吸収することができる。また、連結部55の一端58が屈曲しているので、挿入部73の一端76が一対の連結部55,55を押圧するときに、屈曲した一端58が主に押込み荷重を受け止めて、この一端58を支点として、斜めに延びる部分を撓み変形させやすくすることができる。
この実施形態においては、固定部材70は、他端側にフランジ部71aを有しており、防振部材40は、枠状部41の、台座部50側とは反対側から延出片60が延出しており、この延出片60は、フランジ部71aに押圧されて外方に屈曲可能とされている。
上記態様によれば、被固定部5に固定手段を係合させて、被固定部材1に保持具10を固定させるべく、被固定部5に対して保持具10を押込んで、挿入部73の一端76が一対の連結部55,55を撓み変形させる際に、図10に示すように、フランジ部71aが延出片60を押圧して外方に屈曲させるので、固定部材70からの押込み力を、連結部55の撓み変形と協働して吸収することができ、台座部50の圧縮変形をより効果的に抑制することが可能となる。その結果、防振部材40の防振性能をより効果的に維持できると共に、被固定面3からの長尺部材Pの保持位置のバラ付きを、より効果的に抑えることができる。
また、この実施形態においては、延出片60の、延出方向の基端61側の外面には、凹状部63が形成されており、フランジ部71aが延出片60を押圧して外方に屈曲させた際に、図10に示すように、延出片60の外面と、枠状本体部30との間には、凹状部63により空隙Kが形成されるようになっている。
上記態様によれば、延出片60の基端側外面に形成した凹状部63によって、フランジ部71aが延出片60に当接して外方に屈曲させる際に、より屈曲させやすくすることができるので、台座部50の圧縮変形を、更に効果的に抑制して、防振部材40の防振性能を更に効果的に維持できると共に、被固定面3からの長尺部材Pの保持位置のバラ付きを、更に効果的に抑制することができる。また、延出片60の屈曲時に、凹状部63を介して形成した空隙Kによって、延出片60のばね定数を下げて、撓み変形させやすくすることができ、防振部材40の防振性能をより高めることができる。
更に、この実施形態においては、図9に示すように、枠状本体部30の内側に枠状部41が挿入されると共に、枠状部41の内側に挿入部73が挿入された状態で、枠状本体部30と枠状部41との間に、第1隙間S1が形成されており、かつ、枠状部41と挿入部73との間に、第2隙間S2が形成されている。
上記態様によれば、上記のように第1隙間S1及び第2隙間S2が形成されているので、被固定部5に固定手段を係合させて、被固定部材1に保持具10を固定させるべく、被固定部5に対して固定部材70を押込むと、枠状部41が、枠状本体部30や挿入部73に部分的に接触するため、防振部材40の防振性能を高めることができる。すなわち、枠状部41を撓み変形させる余地が大きくなるので、防振部材40の防振性能がよい。上記のような隙間S1,S2がないと、枠状部41の撓み変形が制限されるため、防振部材40の防振性能が低くなりやすい。また、枠状本体部30の内側に枠状部41を挿入する際や、枠状部41の内側に挿入部73を挿入する際に、挿入しやすくなる。
また、この実施形態においては、図9に示すように、台座部50は、プレート部51と、このプレート部51の一端側から突出する突部53とを有しており、突部53は、連結部55とプレート部51との連結部分よりも、外側に位置するように設けられている。
上記態様の場合、図9に示すように、突部53が被固定面3に当接するので、プレート部51の一端側(裏面側)と、被固定面3との間には、間隙G3が生じることになる。そのため、被固定部5に固定手段を係合させて、被固定部材1に保持具10を固定させるべく、被固定部5に対して固定部材70を押込んで、挿入部73の一端76が連結部55を押圧すると、上記の間隙G3によりプレート部51が主に撓み変形するので、連結部55とプレート部51との連結部分よりも外側に位置する突部53の圧縮変形を抑制することができ、防振部材40の防振性能を、より一層効果的に維持することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。