JP7321952B2 - 透明低誘電ガラスプリプレグ、透明低誘電ガラスフィルムおよび透明低誘電ガラス基板並びにこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の透明低誘電ガラスプリプレグは、(A)1GHzにおける誘電率が6以下であるガラスクロス、及び、(B)1分子中に1個以上のSi-N結合および1個以上のヒドロシリル基を有し、重量平均分子量が1,000~2,000,000であるポリシラザン化合物を含むものである。また、必要に応じて上記(A)、(B)成分以外の成分を更に含むことができる。
以下、各成分について詳しく説明する。
本発明におけるガラスクロスは、1GHzにおける誘電率が6以下であれば特に限定されず、ガラスの種類としてはTガラス、NEガラス、Sガラス、石英ガラスなどが挙げられるが、低熱膨張と低誘電特性を兼ね備えたNEガラス、石英ガラスが好ましく、石英ガラスがより好ましい。また、ガラスクロスの製織方法としては平織、朱子織、綾織などが挙げられるが、厚さの均一性などから平織、朱子織が好ましく、薄型化という観点から平織がさらに好ましい。
また、ガラスクロスの誘電率は、好ましくは3.5~6.0、さらに好ましくは3.5~5.0である。なお、試料の周波数1GHzにおける誘電率は、インピーダンスアナライザーや、スプリットポスト誘電体共振器を用いて測定することができる。
本発明の(B)成分として用いられるポリシラザン化合物は、(A)成分のガラスクロスと化学的に密に結着させてプリプレグを形成し、更に硬化後にガラスクロスと一体化することによってガラスフィルムとなる。また、プリプレグを積層することによって、容易に厚膜化でき、ガラス基板を形成する。なお、本発明で使用するガラスについては、SiO結合を有し、硬化し冷却すると流動せず固体状になるガラス質物質、および溶融したものを冷却して固体になるガラスのことをまとめてガラスと定義する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperMP-M
TSKgel SupermultiHZ-M(6.0mmI.D.×15cm×4)(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.1質量%のTHF溶液)
本発明の透明低誘電ガラスプリプレグは、必要に応じて上記(A)、(B)成分以外に、前述のシランカップリング剤(表面処理剤)のほか、硬化剤、充填材などを含むことができる。
透明低誘電ガラスプリプレグには、必要に応じて(B)ポリシラザン化合物(ヒドロシラン誘導体)の硬化を促進させるための硬化剤を添加することもできる。
硬化剤としては、アルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン類;シュウ酸無水物、マロン酸無水物等のカルボン酸無水物;アルキルイソシアネート、例えばメチルイソシアネート、ジメチルシリルジイソシアネート等のイソシアネート類;ブタンジチオール、ベンゼンジチオール等のチオール類;マロン酸イミド、コハク酸イミドの如きカルボキシミド類;元素周期仲表第IIa族及び第III族~第V族の金属元素の群から選択される金属を含む等の金属アルコキシド類;鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、金、水銀、亜鉛、ルテニウム、パラジウム、インジウム、イリジウム、チタン、ハフニウム、ジルコニウム等の化合物;チタン、ハフニウム、ジルコニウム、アルミニウム、ホウ素、リン等のハロゲン化物等が使用できる。
なお、硬化剤を添加することで誘電特性に影響を与える場合があるため、本発明において硬化剤は添加しなくてもよい。
成形体を熱処理した後のクラックの発生防止、更には強度の増加を図るための充填材を添加することもできる。
これは、添加された充填材(セラミックス粒子など)が熱処理時のマトリックスの収縮に伴うクラックの発生を防止し、結果的に欠陥が除去されて強度が向上すること、及び、充填材により、発生したクラックが偏向、鈍化、停留し、マトリックスが高靭化することで、複合体の強度と靭性が向上するものである。
充填材としては、各種金属の窒化物、炭化物、酸化物及び炭素等の粒子が挙げられ、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。
なお、充填材を添加することで透明性、誘電特性に影響を与える場合があるため、本発明において充填材は添加しなくともよい。
本発明は、上記ガラスプリプレグの硬化物からガラスフィルムを作製でき、更に、上記ガラスプリプレグの積層硬化物から多層透明低誘電ガラス基板を提供することもできる。
本発明の透明低誘電ガラスプリプレグの製造方法において含浸工程とは、前記ガラスクロスの両面に前記ポリシラザン化合物を含浸させる工程である。前記ポリシラザン化合物は、ガラスクロスとの濡れ性を考慮してポリシラザン化合物が低粘度になるように有機溶剤で希釈して用いてもよい。有機溶剤の例としては、前記ポリシラザン化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、キシレンやジブチルエーテルなどが挙げられる。
また、前記ポリシラザン化合物のガラスクロス表面との反応を促進するための触媒を添加してもよい。触媒の例としては、塩化パラジウムが挙げられる。なお、触媒を添加することで誘電特性が影響を受けることがあるため、本発明において前記触媒は添加しなくともよい。
前記ポリシラザン化合物、もしくは前記任意成分を加えて調製したポリシラザン化合物含有ワニスをガラスクロスに含浸し、ガラスクロス表面にポリシラザンを付着させる。前記ポリシラザン化合物をガラスクロスに含浸する方法としては、特に限定はされず、真空含浸、常圧含浸、加圧含浸などが挙げられるが、コストなどを考慮し常圧含浸が好ましく用いられる。ポリシラザン化合物をガラスクロスに含浸した後、ガラスクロス両面に均一に塗布するために、過剰のポリシラザン化合物をスキージロールでかきとり一定の厚さにすることが好ましい。
本発明の透明低誘電ガラスプリプレグの製造方法において乾燥工程とは、上記の含浸工程を経て得られたプリプレグを乾燥させる工程である。乾燥条件としては、好ましくは100~200℃で10分~24時間、より好ましくは100~180℃で10分~10時間、さらに好ましくは100~160℃で10分~1時間乾燥させる。100℃以上であれば、特に前記ポリシラザン化合物含有ワニスを用いた場合は有機溶剤を揮発させることができ、200℃以下であれば、ポリシラザン化合物の硬化反応の進行が抑えられるので後述するガラス基板の製造の際にプリプレグの多層化が容易であるため好ましい。
本発明の透明低誘電ガラスフィルムの製造方法において成型工程とは、プリプレグ1枚を加熱成型する(加熱して硬化させる)工程である。成型条件としては、好ましくは150~900℃で10分~24時間、より好ましくは150~600℃で10分~10時間、さらに好ましくは150~500℃で10分から5時間である。150℃以上だとポリシラザン化合物の硬化反応が十分に進行し、900℃以下であれば急激に反応が進むことによるボイドの発生が抑えられるため好ましい。
また、成型時に銅箔を片面もしくは両面に貼り合わせて成型してもよい。銅箔は、表面粗さが非常に少ない低粗化銅箔や無粗化銅箔が好ましい。
本発明の透明低誘電ガラス基板の製造方法は、上記透明低誘電ガラスプリプレグを2枚以上積層して成型する。成型条件としては、上記ガラスフィルムの成型工程で示される成型条件と同様の条件が好ましい。
(A1)石英ガラスクロスSQF1035(信越石英(株)製 平織 厚み30μm)
(A2)石英ガラスクロスSQF1078(信越石英(株)製 平織 厚み50μm)
(A3)NEガラスクロスNE1035(日東紡(株)製 平織 厚み30μm)
(A4)EガラスクロスE1035(日東紡(株)製 平織 厚み30μm)
(A1)石英ガラスクロスSQF1035: 3.7
(A2)石英ガラスクロスSQF1078: 3.7
(A3)NEガラスクロスNE1035 : 4.8
(A4)EガラスクロスE1035 : 6.8
(B1)ポリシラザン化合物1:下記式(2)
で示される重量平均分子量1,200のMHPS
(B2)ポリシラザン化合物2:前記式(2)(ただし、式中nは重量平均分子量10,000を満たす平均値)で示される重量平均分子量10,000のMHPS
(B3)ポリシラザン化合物3:前記式(2)ただし、式中nは重量平均分子量900,000を満たす平均値)で示される重量平均分子量900,000のMHPS
で示される重量平均分子量2,000のパーヒドロポリシラザン(以下、PHPSと略記)
(B5)ポリシラザン化合物5:前記式(3)(ただし、式中nは重量平均分子量900,000を満たす平均値)で示される重量平均分子量900,000のPHPS
(B7)ポリシラザン化合物7:下記式(5)
比較例では(B)のポリシラザンを用いずに、以下の化合物で作製した。
HMDS(ヘキサメチルジシラザン 信越化学工業製)
表1に示した組み合わせを用い、以下のようにプリプレグを作製した。
前記(B1)のポリシラザン化合物をキシレンで希釈し不揮発分を80%に調製してワニスにしたのちに、該ワニスを含浸ロール2本がついた含浸浴内に投入した。その後前記ワニスにガラスクロス(A1)を含浸させ、含浸ロールの隙間を100μmにして塗工し、150℃10分で乾燥させ、縦150mm×横150mm、厚さ40μmのプリプレグP1を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は30質量%であった。
(B)成分として(B2)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのプリプレグP2を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は40質量%であった。
(B)成分として(B3)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ50μmのプリプレグP3を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は50質量%であった。
(B)成分として(B4)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ40μmのプリプレグP4を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は30質量%であった。
(B)成分として(B5)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ45μmのプリプレグP5を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は40質量%であった。
(B)成分として(B6)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ40μmのプリプレグP6を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は30質量%であった。
(A)成分として(A2)の石英ガラスクロスを用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ60μmのプリプレグP7を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は25質量%であった。
(A)成分として(A3)のNEガラスクロスを用い、(B)成分として(B6)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ40μmのプリプレグP8を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は35質量%であった。
(B)成分として(B7)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ40μmのプリプレグP9を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は30質量%であった。
(A)成分として(A4)のEガラスクロスを用いた以外は調製例1と同様の操作を行い、厚さ40μmのプリプレグP10を製造した。ガラスクロスに付着したポリシラザンの付着量は25質量%であったがプリプレグが白濁していた。
(B)成分の代わりにHMDS(ヘキサメチルジシラザン)を用いた以外は調製例1と同様の操作を行ったが、白濁して透明なプリプレグを製造することができなかった。
表1に示された調製例及び比較調製例で調製したプリプレグについて、真空プレス機(北川精機(株)製 KVHC)を用いて180℃×4時間で成型し、ガラスフィルム及びガラス基板を作製した。得られた成型物について、以下の物性および特性を測定した。結果を表2に記載した。実施例1~8は本発明のガラスフィルムであり、実施例9~13はガラス基板である。一方、比較例1は低誘電ガラスクロスではなく、比較例2は(B)成分が本発明のポリシラザンの範囲外である。比較例3には従来のPTFE基板としてRO3003(ロジャーズ(株)社製)を用いた。
<誘電特性(Dk,Df)>
高周波帯の誘電特性を測定するにはスプリットポスト誘電体共振器(SPDR (株)AET 周波数:40GHz)を用いて測定した。
ガラスフィルム及びガラス基板について5mm×40mmの試験片を作製し、TMA(熱機械的分析)法によるX-Y方向の線膨張係数を昇温速度5℃/分で温度範囲-100℃~200℃を測定し、-50~0℃の線膨張係数を測定した。
透過率は300~800nmの範囲の光における透過率を紫外可視光分光光度計(日立テクノシステム社製 U-4100)で走査速度300nm/分で測定し、光透過率の最も低い値を評価した。
<ガラス回路基板の作製>
ガラスフィルム及びガラス基板について50mm×50mmに切り出し、スクリーン印刷機で銀ペースト(太陽インキ(株)製 ELEPASTE)をL/S 100μmで印刷しパターンを形成した。パターン付きガラス基板について以下の信頼性を確認した。
作製したパターン付きガラス基板を-60~150℃の熱衝撃試験を液相で2,000サイクル行い、クラックの有無を確認した。
作製したパターン付きガラス基板をマッフル炉に入れ、昇温速度10℃/分、600℃で10時間加熱し、基板のクラックを確認した。
Claims (9)
- (A)1GHzにおける誘電率が6以下であるガラスクロス、及び、
(B)1分子中に1個以上のSi-N結合および1個以上のヒドロシリル基を有し、重量平均分子量が1,000~2,000,000であるポリシラザン化合物
を含むものであることを特徴とする透明低誘電ガラスプリプレグ。 - 前記式(1)において、R2が前記1価炭化水素基であり、R1、R3が水素原子であることを特徴とする請求項2に記載の透明低誘電ガラスプリプレグ。
- 前記(A)成分が石英ガラスクロスであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の透明低誘電ガラスプリプレグ。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の透明低誘電ガラスプリプレグの硬化物からなることを特徴とする透明低誘電ガラスフィルム。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の透明低誘電ガラスプリプレグの積層硬化物からなることを特徴とする透明低誘電ガラス基板。
- (A)1GHzにおける誘電率が6以下であるガラスクロスに、(B)1個以上のSi-N結合および1個以上のヒドロシリル基を有し重量平均分子量が1,000~2,000,000であるポリシラザン化合物を含浸させて前記ガラスクロス両面にポリシラザン化合物を付着させる含浸工程と、次いで、該含浸物を乾燥させてプリプレグにする乾燥工程とを有することを特徴とする透明低誘電ガラスプリプレグの製造方法。
- 更に請求項7に記載の乾燥工程に次いで、前記工程で得られた透明低誘電ガラスプリプレグ1枚を、加熱して硬化させる成型工程を有することを特徴とする透明低誘電ガラスフィルムの製造方法。
- 更に請求項7に記載の乾燥工程に次いで、前記工程で得られた透明低誘電ガラスプリプレグを2枚以上積層して、加熱して硬化させる成型工程を有することを特徴とする透明低誘電ガラス基板の製造方法。
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