JP7320182B2 - 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物 - Google Patents

酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7320182B2
JP7320182B2 JP2019225181A JP2019225181A JP7320182B2 JP 7320182 B2 JP7320182 B2 JP 7320182B2 JP 2019225181 A JP2019225181 A JP 2019225181A JP 2019225181 A JP2019225181 A JP 2019225181A JP 7320182 B2 JP7320182 B2 JP 7320182B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
antioxidant
formula
atomic group
carbon atoms
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019225181A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021095430A (ja
Inventor
敬祐 竹下
健二 工藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2019225181A priority Critical patent/JP7320182B2/ja
Publication of JP2021095430A publication Critical patent/JP2021095430A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7320182B2 publication Critical patent/JP7320182B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Anti-Oxidant Or Stabilizer Compositions (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、新規な酸化防止剤、特に酸素バリア性樹脂に有効な酸化防止剤、及びこれを含有する樹脂組成物に関する。
プラスチックは、元来熱や光に対する安定性が十分でないため、成形加工時や使用時に加わる熱、紫外光により容易に酸化、劣化し、高分子材料が本来有する特性が損なわれるという欠点がある。
かかる欠点は、酸化防止剤、光安定剤、消光剤などの添加剤を添加することにより、一般に対処されている。
例えば、非特許文献1(車田知之「光安定剤の最近の動向」色材、62〔4〕215-222、1989年)には、ポリオレフィン成形品や各種塗料において、光安定化剤(ヒンダードアミン光安定剤:HALS)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が有効であることが説明されている。
また、特表平11-513676(特許文献1)では、特定構造のヒンダードフェノールタイプの酸化防止剤を、有機エラストマーに配合することで、当該エラストマーの老化試験後の引張強度、破断点伸びが改善されたことが示されている。
また、特許3533498号(特許文献2)には、酸化的及び/又は光誘導分解に対して安定な、新規の液状フェノール系酸化防止剤が提案されており、特許5925402号(特許文献3)には、熱可塑性樹脂に、高温での加工にも優れた安定性を付与できる新規な酸化防止剤として、p-ヒドロキシフェニルアルカノールを塩素化した新規化合物が提案されている。
さらに、ポリアミド用酸化防止剤として、特表2004-535504(特許文献4)には、ヒンダードフェノールを特殊な連結構造で連結した新規な酸化防止剤が提案されており、かかる酸化防止剤は、従来慣用のポリアミド酸化防止剤(イルガノックス1098など)よりも、変色並びに熱及び酸化的分解に対して優れていたことが示されている。
また、オレフィン系樹脂等の酸化劣化しやすい熱可塑性樹脂に対して、耐熱性を向上することができる新規なヒンダードフェノール系酸化防止剤の提案もある(WO2016/021315:特許文献5)。
一方、酸素バリア性ポリマーとして知られているビニルアルコール系樹脂についても、溶融成形を長時間、連続して行う場合(ロングラン成形)、成形品の品質がばらついたり、高温環境に長時間、曝される用途の成形品では、所期の酸素バリア性が損なわれることが知られていて、添加剤を工夫することで、特性の低下を防止できたことが開示されている。
例えば、特開2002-127135(特許文献6)では、エチレン・ビニルアルコール系樹脂(以下、EVOHと略記)のロングラン成形によるフィルムの成形について、酸化防止剤(チバガイギー社製の「イルガノックス1098」:[N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)])を0.1~5重量%添加することで、成形品であるフィルムの厚みのばらつきが抑制されることが開示されている。
また、特開2000-102918(特許文献7)には、酸化防止剤として、チバガイギー社製の「イルガノックス1098」を添加したEVOHを外層に用いた温水循環用パイプ(実施例8)、チバガイギー社製の「イルガノックス1010」([ペンタエリスリチル-テトラキス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}]とイルガフォス168([トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト])を添加したEVOH組成物を酸素バリア層として、高密度ポリエチレン層を表面層に用いた燃料用タンク(実施例9)は、長時間の熱処理後であっても、酸素透過性の低下が認められなかったことが開示されている。
特表平11-513676号公報 特許3533498号公報 特許5925402号公報 特表2004-535504号公報 WO2016/021315号公報 特開2002-127135号公報 特開2000-102918号公報
車田知之「光安定剤の最近の動向」色材、62〔4〕215-222頁、1989年
近年、上記のような温水循環用パイプや燃料用タンクについて、酸素バリア性だけでなく、破断伸びなどの物理的特性についての耐久性も求められるようになっている。
また、食品包装用フィルムや他の包装用フィルムについては、外観が重視されることから、酸化劣化、更に包装物の熱処理後による黄変などが問題視されるようになってきた。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ビニルアルコール系樹脂等の酸素バリア性ポリマーのロングラン成形、さらには成形品の熱劣化を抑制できる新規な酸化防止剤、並びに当該酸化防止剤を用いた樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、EVOHやポリビニルアルコールなどの酸素バリア性を有する樹脂であっても、溶融成形時や長時間の高温下に曝される環境下では酸化劣化が起こり、ポリマー鎖の分解による物理的強度の低下、黄変を生じていると考えた。そして、ビニルアルコール系樹脂等の酸素バリア性樹脂においてもラジカル捕捉機能を有効に発揮できる新規な酸化防止剤について種々検討した結果、ラジカル捕捉能を発揮する構造単位としてヒンダードフェノール単位を含み、且つ極性基を有することで、SP値が高められた本発明の酸化防止剤を案出した。
すなわち、本発明の酸化防止剤は、下記一般式(1)の構造を有し、且つHoyの式によるSP値が11以上である。
Figure 0007320182000001
式中、R,Rは電子供与性の嵩高い置換基であり、Aは炭素数1~5のアルキレン基、Lは単結合又は結合基であり、αは極性基を有する原子団である。
前記αに含まれる極性基は、水酸基であることが好ましく、前記αは、複数の水酸基を含む原子団、特に多価アルコールの縮合体を含む原子団であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記本発明の酸化防止剤、並びにビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物である。
別の見地として、本発明の樹脂組成物は、上記本発明の酸化防止剤、及び樹脂成分として、キシレンには溶解しないが、水とメタノールの1:1(重量比)混合溶媒には溶解する熱可塑性樹脂を含有する。
本明細書でいうSP(solubility parameter)値とは、特段の説明がなければHoyの式に基づいて算出されるSP値をいう。
Hoyの式により算出されるSP値とは、下記式で算出されるδtである。
Figure 0007320182000002
式中、Fti、Viは、置換基の化学構造に依拠する固有の値である。
本発明の酸化防止剤はビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルのように、SP値が低い溶剤には溶解せず、SP値が高い溶剤に溶解する樹脂に対して優れた相溶性を有し、これらの樹脂に対するラジカル捕捉タイプの酸化防止剤として優れている。
本発明の一実施形態であるエステル結合型酸化防止剤の合成方法を説明するための図である。 実施例で用いた酸化防止剤の合成工程を示す図である。 実施例で得られた酸化防止剤AO-1のNMRチャートである。
〔酸化防止剤〕
本発明にかかる酸化防止剤は、下記一般式(1)の構造を有し、且つHoyの式によるSP値が11以上である。
Figure 0007320182000003
式中、R,Rは電子供与性の嵩高い置換基であり、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基(tert-Bu)、メトキシ基などが挙げられ、好ましくはtert-ブチル基である。すなわち、式(11)で表される芳香族化合物部分は、ヒンダードフェノール単位を構成する。
Figure 0007320182000004
介在基Aは、通常、炭素数1~5の直鎖又は分岐を有するアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。
(1)式中、Lは単結合又は結合基である。結合基Lとしては、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、アミド結合(-CONH-)、カルボニル結合(-CO-)、スルフィド結合(-S-)、又はカーボネート結合(-O-(C=O)-O-)があげられ、製造上の簡便さの点から、エステル結合が好ましい。Lが単結合の場合とは、介在基Aと極性基を有する原子団αが直接結合している場合に該当する。
(1)式中、αは、極性基を有する原子団である。
極性基としては、水酸基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、スルホニル基(-SO)、スルホ基(-SOH)、アミノ基(-NH)などが挙げられ、これらのうち、水酸基が好ましい。
極性基を有する原子団αは、上記極性基を少なくとも1個、好ましくは2個以上含む原子団であることが好ましい。複数個の極性基を含む場合には、極性基は同一であっても異なっていてもよい。
原子団αは、極性基がアルキレン鎖(好ましくは炭素数1~5、より好ましくは1~3のアルキレン鎖)、エーテル結合などで連結されていることが好ましい。
好ましい原子団αとしては、複数の水酸基を含む多価アルコール又はその誘導体から、1つの水素または1つの水酸基を脱離して得られる残基(「多価アルコール含有原子団」という)である。多価アルコールの誘導体としては、最終的に(1)式で示される構造の酸化防止剤が、Hoyの式によるSP値11以上となるような誘導体である。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、糖アルコール、又はこれらの縮合体が挙げられる。
好ましい多価アルコール含有原子団は、例えば、下記(2)式で示す多価アルコール縮合体の誘導体を含む原子団である。
Figure 0007320182000005
式中、Bは、水素、炭素数1~6の直鎖又は分岐を有するアルキル基であってもよいし、下記式(3)で表されるヒンダードフェノール単位含有原子団であってもよい。好ましくは、酸化防止能の点から、(3)式で表されるヒンダードフェノール単位含有原子団である。
Figure 0007320182000006
(3)式中、ヒンダードフェノール単位の構成要素となるR,Rは電子供与性の嵩高い置換基であり、それぞれ独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基(tert-Bu)、メトキシ基などが挙げられ、好ましくはtert-ブチル基である。
介在基A’は通常、炭素数1~5の直鎖又は分岐を有するアルキレン基であり、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。
(3)式中、L′は、単結合又は結合基である。結合基としては、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、アミド結合(-CONH-)、カルボニル結合(-CO-)、スルフィド結合(-S-)、又はカーボネート結合(-O-(C=O)-O-)があげられ、好ましくはエステル結合である。L′が単結合の場合とは、Lが単結合の場合と同様である。
したがって、好ましい酸化防止剤としては、下記(4)式で表される構造を有する。
Figure 0007320182000007
(4)式中、R,R,R,Rは同一又は異なっていてもよい電子供与性の嵩高い置換基であり、A、A’は同一又は異なっていてもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、L、L′は同一又は異なっていてもよい結合基である。製法上の簡便さの点からは、ヒンダードフェノール単位が等しいことが好ましい。すなわち、R,R,R,Rが同一、AとA’が同一、LとL′が同一の対称形が好ましい。また、嵩高い置換基として、tert-ブチル基が好ましいことから、一般式(4)式で示される酸化防止剤の好ましい構造は、下記(5)式で表れる。
Figure 0007320182000008
以上のような構造を有する酸化防止剤のうち、好ましい酸化防止剤である(4)式の構造で、結合基(L、L′)がエステル結合である酸化防止剤の合成方法の一例について、図1に基づいて説明する。
出発物質となる多価アルコールの縮合体としてジペンタエリスリトールを使用し、まずエリスリトール部の隣接する水酸基をアセタールに変換することで保護し、ジアルコール(アルコール性水酸基保護体)とする。
得られたジアルコールを、ヒンダードフェノール単位としてのカルボン酸(カルボキシル基含有ヒンダードフェノール)とエステル化反応させ、ヒンダードフェノール単位含有原子団と多価アルコール含有原子団とを、エステル結合により結合させる。
得られたエステル結合体において、多価アルコールの水酸基保護基を脱離して元の水酸基に戻せばよい。
上記構造を有する酸化防止剤は、ヒンダードフェノール単位が、対象とするポリマー鎖の酸化により生じたラジカルを捕捉してフェノキシラジカルとなり、フェノキシラジカルとして安定化することができる。一方、オレフィン結合部分を有するポリマー鎖は、酸素と反応して、ペルオキシラジカル(ROO・)を生成し、このラジカルがRHから水素を引き抜いてR・を生成し、自身はハイドロパーオキサイド(ROOH)となり、この繰り返しにより酸化劣化が進行すると考えられる。したがって、式(1)で表される化合物は、ポリマー鎖から生じたペルオキシラジカルを捕捉する、ラジカル捕捉型酸化防止剤として機能できる。
図1に示す合成方法では、多価アルコール縮合体としてジペンタエリスリトールを使用し、ヒンダードフェノール単位をエステル結合により連結したが、ジペンタエリスリトール中の一部の水酸基をカルボキシル基に代えたオキソ酸を、ヒンダードフェノール基が結合したアルコール(アルコール性水酸基含有ヒンダードフェノール)とを反応させてエステル結合を形成してもよい。
結合基(L)の種類に応じて、出発物質として用いるジペンタエリスリトールの水酸基を、カルボキシル基、アミンなどに変換して使用した化合物を出発物質として使用し、ヒンダードフェノール単位の末端官能基をアミン、水酸基、酸ハロゲン化物などに変換することで、結合基Lが、アミド結合、カルボニル結合、エーテル結合、カーボネート結合の化合物を合成することが可能である。
本発明の酸化防止剤は、以上のような構成を有する酸化防止剤であって、Hoyの式により算出されるSP値が11(cal/cm1/2以上のものである。換言すると、本発明にかかる酸化防止剤は、嵩高い置換基(R、R、R、R)の種類、介在基A、A′の種類、結合基L、L′の種類、極性基を有する原子団αの構造により異なるが、Hoyの式により算出されるSP値が11(cal/cm1/2以上という特徴を有する。
ここでHoyの式とは、下記式で表され、δtがSP値となる。
Figure 0007320182000009
式中、Fti、Viは、置換基の化学構造に依拠する固有の値である。したがって、化学構造に基づき、Hoyの式によりSP値を算出してもよいし、市販の計算ソフト(例えば、Hoy solubility parameter (Computer Chemistry Consultancy 社)などを用いて、計算することもできる。
本発明の酸化防止剤は、分子量が通常、400~1500であり、好ましくは500~1000である。
また、本発明の酸化防止剤は、融点が通常30~300℃であり、好ましくは50~250℃である。
一般に用いられているフェノール系酸化防止剤は、Hoyの式により算出されるSP値が11未満である。具体的には、ポリオレフィン成形品の分野でよく用いられるヒンダードフェノール型酸化防止剤であるBHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)のHoyの式で算出されるSP値は9.11であり、特許文献1で用いられているイルガノックス1098のSP値は9.89であり、特許文献2で用いられているイルガノックス1010のSP値は、9.93である。
したがって、本発明の酸化防止剤は、Hoyの式により算出されるSP値が11(cal/cm1/2以上という特徴も有する。
本発明の酸化防止剤は、かかる特徴に基づき、ビニルアルコール系樹脂のように、SP値が低い溶剤(例えばキシレン(SP値:9.04)など)には溶解せず、SP値が高い溶剤(例えば、水(SP値:23.47)/メタノール(SP値:14.52)の1:1混合溶媒など)には溶解する樹脂に対しても、優れた相溶性を示すと考えられる。このような優れた相溶性を可能とすることで、ヒンダードフェノール単位のラジカル捕捉作用が、樹脂に対して有効に発揮される。
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、上記本発明にかかる酸化防止剤を、ビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種、あるいはSP値が低い溶剤(例えばキシレン(SP値:9.04)など)には溶解せず、SP値が高い溶剤(例えば、水(SP値:23.47)/メタノール(SP値:14.52)の1:1混合溶媒など)には溶解する樹脂をベース樹脂として含有する樹脂組成物である。
(A)ベース樹脂
ベース樹脂とは、組成物のマトリックスとなる樹脂であり、樹脂成分の60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上含有されている樹脂である。
ビニルアルコール系樹脂とは、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、及びこれらの変性体をいう。ここで、EVOHは、エチレン単位を10~60モル%、好ましくは20~50モル%含有するビニルアルコール系樹脂である。
ビニルアルコール系樹脂は、構造単位として、以下に示すビニルアルコール単位(式(a))を必須成分として含み、EVOHの場合には、さらにエチレン単位(式(b))を含んでいる。
Figure 0007320182000010
このようなビニルアルコール系樹脂は、通常、ビニルエステル重合体をケン化することにより合成されることから、ケン化度が100モル%未満の場合には、未ケン化部分として、ビニルエステル単位(式(c))も含む。
Figure 0007320182000011
ビニルエステル単位は、重合体の合成に使用したビニルエステル系モノマーに由来する。ビニルエステルモノマーとして用いられるビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、これらのうち、酢酸ビニルが好ましく用いられる。よって、式(c)式中、R11は、炭素数1~18のアルキル基、好ましくはメチル基である。
ビニルアルコール系樹脂の変性体としては、ガスバリア性を損なわない範囲(通常10モル%未満、好ましくは5モル%以下)で、ビニルエステルモノマーの一部を、ビニルエステルと共重合可能な下記化合物と共重合することにより得られた共重合体が挙げられる。上記共重合可能なモノマーとしては、アセト酢酸ビニル、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド等の活性メチレン含有ビニルモノマー;エチレン(但し、EVOHの場合を除く)やプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン、グリセリンモノアリルエーテル等のビニル化合物;酢酸イソプロペニル、1-メトキシビニルアセテート等の置換酢酸ビニル類、塩化ビニリデン、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、ビニレンカ-ボネート;アリルアルコール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール等のモノヒドロキシアルキル基含有モノマー;2-メチレン-1,3-プロパンジオール、2-メチレン-1,3-プロパンジオール等の2置換ジオールモノマー;3,4-ジオール-1-ブテン、4,5-ジオール-1-ペンテン、4,5-ジオール-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジオール-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジオール-1-ヘキセン等の1,2-ジオール基含有モノマー;ヒドロキシメチルビニリデンジアセテートが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を含んでいてもよい。
また、ビニルアルコール系樹脂の変性体は、エーテル結合(-O-)などの各種結合鎖を含んでも良い。
かかる結合鎖としては特に限定されないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い)の他、-O-、-(CHO)m-、-(OCH)m-、-(CHO)mCH-等のエーテル結合部位を含む構造;-CO-、-COCO-、-CO(CH)mCO-、-CO(C)CO-等のカルボニル基を含む構造;-S-、-CS-、-SO-、-SO-等の硫黄原子を含む構造;-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-等の窒素原子を含む構造;-HPO-等のリン原子を含む構造などのヘテロ原子を含む構造;-Si(OR)-、-OSi(OR)-、-OSi(OR)O-等の珪素原子を含む構造;-Ti(OR)-、-OTi(OR)-、-OTi(OR)O-等のチタン原子を含む構造;-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等のアルミニウム原子を含む構造などの金属原子を含む構造等が挙げられる(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは自然数であり、通常1~30、好ましくは1~15、さらに好ましくは1~10である。)。その中でも製造時あるいは使用時の安定性の点でエーテル結合(-O-)、および炭素数1~10の炭化水素鎖が好ましく、さらにはエーテル結合(-O-)、炭素数1~6の炭化水素鎖であることが好ましい。
変性体としては、ビニルアルコール系樹脂の水酸基を、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化、アセチル化、アセトアセチル化等の「後変性」したものでもよい。
このような変性ビニルアルコール系樹脂のうち、側鎖に1級水酸基を有する構造単位が好ましく用いられる。特に、1,2-ジオール構造を側鎖に有する下記構造単位を含有する変性ビニルアルコール系樹脂は、溶融成形性に優れている変性ビニルアルコール系樹脂として好ましく用いられる。
Figure 0007320182000012
本発明で用いられるビニルアルコール系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠)は、通常200~3000、特には300~2500、さらには500~2300であることが好ましい。
また、ケン化度は、通常80~100モル%であり、好ましくは85~100モル%、より好ましくは90~100モル%である。ケン化度は、樹脂中の残存酢酸エステル基の加水分解に要するアルカリ消費量から求めた量であり、JIS K6726に基づいて測定される。
本発明の樹脂組成物のベース樹脂としては、ビニルアルコール系樹脂のほか、SP値が低い溶剤(例えばキシレン(SP値:9.04)など)には溶解せず、SP値が高い溶剤(例えば、水(SP値:23.47)/メタノール(SP値:14.52)の1:1混合溶媒など)には溶解する樹脂、例えば、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルまたはこれらの組合せを用いることもできる。
ポリビニルアルコール系樹脂と、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリロニトリルからなる群から選ばれる少なくとも1種との組み合わせを、ベース樹脂と用いてもよい。
(B)その他の樹脂
樹脂成分の30重量%以下、好ましくは28重量%以下、より好ましくは25重量%以下であれば、SP値が高い溶剤(例えば、水(SP値:23.47)/メタノール(SP値:14.52)の1:1混合溶媒など)には溶解する樹脂に該当しない樹脂を含んでもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリスチレン;フッ素ゴム、ポリイソブチレン、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム類;ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチルなどが挙げられる。
(C)その他の添加剤
本発明の樹脂組成物は、酸化防止剤として、本発明の酸化防止剤とともに、従来より用いられている酸化防止剤を併用してもよい。
併用可能な酸化防止剤としては、ラジカル捕捉型酸化防止剤に分類されるフェノール系酸化防止剤、芳香族アミン系酸化防止剤の他、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤は、過酸化物分解作用を有する過酸化分解型酸化防止剤などが挙げられる。
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-チオビス-(6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、N,N’-ヘキサメチレン-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス〔2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニロキシ]-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5・5)ウンデカン等が挙げられる。
芳香族アミン系酸化防止剤としては、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルペピリジン重縮合物、ポリ〔[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]〕、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリス(p-ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のトリアリールホスファイト;モノアルキルジフェニルホスファイト(例えばジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト)、ジアルキルモノフェニルホスファイト(例えばフェニルジイソオクチルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト)等のアルキルアリールホスファイト;トリイソオクチルホスファイト、トリステアリルホスファイト等のトリアルキルホスファイト;ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリルチオプロピオネート)、テトラキス〔メチレン-3-(ドデシルチオ)プロピオネート〕メタン、ビス〔2-メチル-4-[3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ]-5-t-ブチルフェニル〕スルフィド、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミスチリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリル-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、さらに必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲(通常、樹脂組成物中の5重量%以下)において、一般に熱可塑性樹脂に配合する添加剤を含有してもよい。
上記添加剤としては、例えば、熱安定剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤などが挙げられる。
以上のような組成を有する樹脂組成物は、優れた耐酸化劣化性を有する。特に、溶融成形品の加熱に伴う酸化劣化に対して優れた耐性を有する。具体的には、成形品が長時間の加熱状態に曝されても、成形品の黄変が抑制され、破断強度などの強度低下も抑制されている。
本発明の酸化防止剤は、Hoyの式によるSP値が11以上であることから、SP値が低い溶剤には溶解せず、SP値が高い溶剤に溶解するベース樹脂との親和性が優れ、ベース樹脂で構成されるマトリックス中に微分散できると考えられる。特に加熱により、ベース樹脂が軟化するような条件であっても、微分散状態が維持されると考えられることから、加熱状態に曝されても、酸化劣化が抑制されていると考えられる。
以上のような組成を有する樹脂組成物において、本発明の酸化防止剤の含有率は、通常0.001~5重量%、好ましくは0.01~1重量%、より好ましくは0.05~0.5重量%である。また、樹脂成分に対する活性基当量として、通常2.6×10-5~1.3×10-1eq/樹脂kg、好ましくは2.6×10-4~2.6×10-2eq/樹脂kg、より好ましくは1.3×10-3~1.3×10-2eq/樹脂kgである。
本発明の酸化防止剤は、活性基当量あたりの熱による酸化劣化防止能が優れているので、2.1×10-3eq/樹脂kg程度でも、従来の酸化防止剤と同程度以上の酸化防止能を付与することができる。
〔酸化防止剤〕
(1)AO-1
本発明実施例にかかる、多価アルコール型ヒンダードフェノール系酸化防止剤を、図2に示す工程を経て合成した。
工程1:アルコール性水酸基保護体の合成
アルゴン雰囲気下、10Lの4つ口フラスコに、ジメチルホルムアミド(DMF:3.2L)を投じて、撹拌翼、メカニカルスターラーで撹拌しながら、ジペンタエリスリトール(400g、1.57モル)、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(598.5g、3.93モル)をゆっくり添加した。p-トルエンスルホン酸(p-TsOH・HO)29.9g(0.16モル)を加えた後、100℃となるまで加熱した。100℃で2時間、加熱撹拌した後、室温まで自然放冷した。
得られた反応液を10Lエバポレーターで濃縮し(水浴60℃)、831.4gの淡黄色オイル(粗体)を得た。当該粗体を、トルエン/酢酸エチル=1/1(2.0L)に溶解させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製した。
目的化合物を含有するフラクションを回収し、濃縮すると、白色固体が析出した。減圧濾過にて白色固体を得、ヘプタンでかけ洗いした後、50℃で減圧乾燥して、アルコール性水酸基保護体(白色固体、263.3g)を得た。
工程2:カルボキシル基含有ヒンダードフェノールの合成
アルゴン雰囲気下、10Lの4つ口フラスコに、アセトン(2.0L)を投じて、撹拌翼、メカニカルスターラーで撹拌しながら、3-(3,5-ジ-tert-ブチル―4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル(650g、1.22モル)をゆっくり添加した添加した後、アセトン(1.3L)で洗浄した。
水酸化ナトリウム水溶液を、上記溶液中にゆっくり添加し、55℃となるように加熱した。55℃にて9時間加熱撹拌して加水分解を行った。室温まで自然放冷した後、加水分解物を減圧濾過して、析出固体(淡黄色)を濾別した。当該固体をアセトン(3.3L)でかけ洗いした。
加水分解物の濾液と洗浄ろ液とを合一し、濃縮により得られた濃縮液を、イオン交換水(3.8L)で希釈した。
得られた希釈液に、濃塩酸を少量ずつ添加したところ、130ml添加したところで、酸性となり、析出物が多くなった。
室温下で1時間撹拌した後、減圧濾過で析出固体をろ取し、濾過器上で乾燥した。固体を回収して、50℃で12時間減圧乾燥して、カルボキシル基含有ヒンダードフェノールの粗体を得た。粗体の乾燥後の重量は640.8gであった。
この粗体(640.8g)を、クロロホルム(2.0L)に溶解させた後、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:CHCl/MeOH=30/1)で精製した。
目的化合物を含有するフラクションを濃縮し、減圧濾過にて白色固体をろ取した。ヘプタンでかけ洗いした後、50℃で、減圧乾燥を行った(収量306.7g)。
工程3:エステル結合による連結
アルゴン雰囲気下、10Lの4つ口フラスコに、クロロホルム(2.0L)を投じて、撹拌翼、メカニカルスターラーで撹拌しながら、工程2で得られたカルボキシル基含有ヒンダードフェノール体(300g、0.92モル)と工程1で得られたアルコール性水酸基保護体(198.2g、0.46モル)をゆっくり添加し、反応させた。得られた反応液を、塩氷浴で、5℃以下にまで冷却し、5℃にてN,N′-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(285.1g、1.38モル)を2回に分けて添加した。
さらに、N,N′-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(16.9g、0.14モル)をゆっくり添加した。添加後には、混合液の温度は8.0℃まで上昇していた。発熱がおさまった後、氷浴からとりだし、室温下で12時間撹拌した。TLCで確認したところ、カルボキシル基含有ヒンダードフェノールが消失し、エステル結合による連結体が生成していることを確認できた。
白色懸濁の生成液を減圧濾過して、白色固体を濾別し、クロロホルム(1.0L)でかけ洗いした。
濾液と洗浄液とを合一し、エバポレータで濃縮して596.5gの黄色オイル(粗体)を得た。粗体(596.5g)をクロロホルムに溶解し、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:酢酸エチル/トルエン=1/30)で精製した。
目的化合物を含むフラクションを回収し、エバポレータで濃縮した後、50℃で12時間減圧乾燥し、エステル結合体を得た(白色固体、231.3g)。
工程4:AO-1の合成
アルゴン雰囲気下、3Lの4つ口フラスコに、酢酸エチル(1.2L)を投じて、撹拌翼、メカニカルスターラーで撹拌しながら、工程3で得られたエステル結合体(120g、0.12モル)をゆっくり添加した。エステル結合体は溶解し、無色透明の溶液が得られた。
Pd/C(12.0g、ASCA-2(含水)(エヌ・イー・ケムキャット社製)を反応液中へ添加した後、水素をバブリング(10ml/分)させながら、室温下で12時間撹拌した。反応液をサンプリングして、TLC上に添加したところ、保護基が脱離した、下記(5)式の構造を有する化合物の生成が確認できた。
Figure 0007320182000013
前記反応液を、セライト(560g)を敷いた濾過器で濾過し、得られた濾液を減圧濃縮して、上記構造化合物の粗体(167.0g)を得た。この粗体(167.0g)を、クロロホルム(1.0L)で溶解し、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:CHCl/メタノール=9/1)で精製した。
目的化合物を含むフラクションを回収し、エバポレータで濃縮し、濃縮途中でヘプタンを添加することにより、白色結晶を析出させた。減圧濾過にて、白色固体をろ取し、50℃で12時間減圧乾燥を行った。白色固体である目的化合物を得た(144.0g)。
さらに、クロロホルムで溶解し、ヘキサン中に投じて再沈殿させることにより、残存溶媒(ヘキサン)濃度が0.25重量%の白色固体を得た。かかる白色固体(多価アルコール連結型ヒンダードフェノール)のH-NMR(300MHz、CDCl)チャートを図3に示す。これをAO-1(分子量:774、融点:100~120℃)として用いた。
AO-1は、dD8.11、dP6.43、dH4.35であり、Hoyの式に基づくSP値は、11.23である。
(2)AO-2
BASFジャパン製のIrganox1076を用いた。下記化学構造を有し、Hoyの式で算出されるSP値は、8.69である。
Figure 0007320182000014
(3)AO-3
BASFジャパン製のIrganox1010を用いた。これは、([ペンタエリスリチル-テトラキス{3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート}](下記構造式参照)である。dD7.95、dP4.98、dH3.26であり、Hoyの式に基づくSP値は、9.93である。
Figure 0007320182000015
〔樹脂組成物の調製〕
ベース樹脂として、EVOH(エチレン含有率:29モル%、ケン化度:99.7%)を用いた。当該EVOHに対して、AO-1、AO-2、AO-3を、表1に示す割合で添加し、樹脂組成物No.1~4を調製した。
なお、参考例No.5として、酸化防止剤を含有しない組成物を用いた。
上記で調製した樹脂組成物No.1~5を、下記に示す条件で押出成形して、厚み100μmのEVOHフィルムを製造した。製造したフィルムNo.1~5について、後述の評価方法に基づき、耐熱老化性を測定評価した。結果をあわせて表1に示す。
また、フィルムNo.2~5について、後述の評価方法に基づき、引張破断強度を測定評価した。結果をあわせて表2に示す。
押出成形条件
成形装置:直径40mmの単軸押出機
スクリュー:フルフライト(圧縮比3.4)
ダイ:Tダイ
スクリュ回転数:40rpm
スクリーンメッシュ:90/120/90
ロール温度:80℃
温度:C1/C2/C3/C4/H/D=190/210/230/230/230/230℃
〔評価方法〕
(1)耐熱老化性(YI値)
作成したフィルム(厚み100μm、10cm×10cm)について、空気雰囲気下でオーブンにて、140℃で24時間、48時間、96時間、放置した後、フィルムの黄色度(YI値)を、分光色差計(日本電飾工業株式会社製のSE6000)を用いて、分光反射率を測定した。YI値が高い程、黄変度が高いことを示す。
(2)引張破断強度
製造したフィルムから、短冊状フィルムサンプル(厚み100μm、1.5cm×15cm)を作成し、当該サンプルを、空気雰囲気下で、庫内温度140℃に設定したオーブン内に96時間、放置した。加熱後、フィルムを23℃、相対湿度50%条件下で1週間調湿し、引張り破断試験を行った。
引張り破断試験は、SHIMAZU製のオートグラフAGS-Xを用いて行った。引張条件は、チャック間距離50mm、引張速度50mm/minである。
加熱前のフィルムの破断伸び100%に対する破断伸びの保持割合(%)を、下記式にて求めた。保持率が高いほど、熱による強度劣化が少ないことを示す。
保持率=(加熱試験後の破断伸び)/(加熱試験前の破断伸び)×100
Figure 0007320182000016
Figure 0007320182000017
表1からわかるように、黄変度は、加熱時間が長くなるほど上昇する。
組成物No.2~4は、いずれも添加した酸化防止剤の活性基当量が等しい。したがって、ラジカル捕捉能は等しいと考えられる。加熱前では、本発明の酸化防止剤(No.2)の顕著な優位性は認められなかったが、加熱時間が長くなるにしたがって、酸化防止剤を含有しない場合(No.5)、従来の酸化防止剤(No.3、4)と比べて、本発明の酸化防止剤(No.2)では、黄変度の上昇が優位に抑制されていた。
No.1とNo.2では、酸化防止剤の配合量が相違し、活性基当量が異なる場合である。酸化防止剤の含有量が多い方(No.1)が、黄変度は低くなるが、加熱時間が長くなると、含有量の差異による黄変度の差異は小さくなった。黄変度抑制効果は、酸化防止剤の含有量の増大よりも、酸化防止剤の種類による効果の方が大きいと考えられる。
また、加熱後の引張り破断伸び率についても、表2に示すように、同じ活性基当量を有しているにもかかわらず、本発明の酸化防止剤を用いた場合(No.2)が、最も優れていた。
したがって、EVOH樹脂に対して、本発明の酸化防止剤は、優れた熱劣化防止効果を有することがわかる。
本発明の酸化防止剤は、ビニルアルコール系樹脂に代表されるガスバリア性樹脂や、SP値が低い溶剤には溶解しないが、SP値が高い溶剤には溶解する樹脂(ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル)の酸化劣化を防止する酸化防止剤として有用である。本発明の酸化防止剤を含有する樹脂組成物は、高温での酸化劣化に対する耐久性に優れるので、長時間にわたり、高温状態に曝される用途の成形品材料として有用である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)の構造を有し、且つHoyの式によるSP値が11以上である酸化防止剤。
    Figure 0007320182000018
    式中、R,Rt-ブチル基であり、Aは炭素数1~5のアルキレン基、Lはエステル結合であり、αは極性基を有する原子団である。
  2. 前記αに含まれる極性基は、水酸基である請求項1に記載の酸化防止剤。
  3. 前記αは、複数の水酸基を含む原子団である請求項1又は2に記載の酸化防止剤。
  4. 前記複数の水酸基を含む原子団は、多価アルコール又はその縮合体を含有する原子団である請求項に記載の酸化防止剤。
  5. 前記多価アルコールの縮合体を含有する原子団は、下記一般式(2)で示される原子団である請求項に記載の酸化防止剤。
    Figure 0007320182000019
    式中、Bは、水素、炭素数1~6の直鎖又は分岐を有するアルキル基、又は下記式(3)で表されるフェノール系化合物含有原子団であり、(3)式中、R,Rは電子供与性の嵩高い置換基、A’は炭素数1~5のアルキレン基、L’は単結合又は結合基である。
    Figure 0007320182000020
  6. 下記一般式(1)の構造を有し、且つHoyの式によるSP値が11以上である
    酸化防止剤。
    Figure 0007320182000021
    式中、R ,R は電子供与性の嵩高い置換基であり、Aは炭素数1~5のアルキレン基、Lは単結合又は結合基であり、αは多価アルコール又はその縮合体を含有する原子団であり、前記多価アルコールの縮合体を含有する原子団は、下記一般式(2)で示される原子団である
    Figure 0007320182000022
    式中、Bは、水素、炭素数1~6の直鎖又は分岐を有するアルキル基、又は下記式(3)で表されるフェノール系化合物含有原子団であり、(3)式中、R,Rは電子供与性の嵩高い置換基、A’は炭素数1~5のアルキレン基、L’は単結合又は結合基である。
    Figure 0007320182000023
  7. 下記一般式(4)で表される請求項6に記載の酸化防止剤。
    Figure 0007320182000024
    式中、R,R,R,Rは同一又は異なっていてもよい電子供与性の嵩高い置換基であり、A、A’は同一又は異なっていてもよい炭素数1~5のアルキレン基であり、L、L′は同一又は異なっていてもよい結合基である。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の酸化防止剤、並びにビニルアルコール系樹脂、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、及びポリアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を含有する樹脂組成物。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の酸化防止剤、及びキシレンには溶解しないが、水とメタノールの1:1(重量比)混合溶媒には溶解する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物。
JP2019225181A 2019-12-13 2019-12-13 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物 Active JP7320182B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019225181A JP7320182B2 (ja) 2019-12-13 2019-12-13 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019225181A JP7320182B2 (ja) 2019-12-13 2019-12-13 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021095430A JP2021095430A (ja) 2021-06-24
JP7320182B2 true JP7320182B2 (ja) 2023-08-03

Family

ID=76430563

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019225181A Active JP7320182B2 (ja) 2019-12-13 2019-12-13 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7320182B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000102918A (ja) 1998-09-28 2000-04-11 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットおよびその用途
JP2008094909A (ja) 2006-10-10 2008-04-24 Mitsui Chemicals Inc 4−メチル−1−ペンテン系重合体離型フィルム
JP2009269947A (ja) 2008-04-30 2009-11-19 Mizusawa Ind Chem Ltd 塩素化塩化ビニル樹脂組成物
WO2015147300A1 (ja) 2014-03-27 2015-10-01 新日本理化株式会社 非フタル酸系エステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤、及び該可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TW406127B (en) * 1992-12-21 2000-09-21 Ciba Sc Holding Ag Novel liquid phenolic antioxidants

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000102918A (ja) 1998-09-28 2000-04-11 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物ペレットおよびその用途
JP2008094909A (ja) 2006-10-10 2008-04-24 Mitsui Chemicals Inc 4−メチル−1−ペンテン系重合体離型フィルム
JP2009269947A (ja) 2008-04-30 2009-11-19 Mizusawa Ind Chem Ltd 塩素化塩化ビニル樹脂組成物
WO2015147300A1 (ja) 2014-03-27 2015-10-01 新日本理化株式会社 非フタル酸系エステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤、及び該可塑剤を含有する塩化ビニル系樹脂組成物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021095430A (ja) 2021-06-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5641769B2 (ja) 水溶性ポリビニルアルコール系樹脂組成物
WO2010126041A1 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂組成物
JP2012007184A (ja) フタル酸ジエステルを含有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤
CA1279738C (en) Resin compositions stabilized with piperidine derivatives
TWI522451B (zh) 長久抗靜電添加劑組合物
CA1145884A (en) Organic polymeric materials stabilized with acylated hydroxy acid type compounds
KR20190073615A (ko) 3-아릴벤조퓨라논 화합물 및 이로 구성되는 조성물
JP7320182B2 (ja) 酸化防止剤及びこれを含有する樹脂組成物
KR20180004737A (ko) 플라스틱 개질제
ES2551745T3 (es) Composición de resina de cloruro de polivinilo y su método de fabricación
JPS6197248A (ja) 新規のピロメリト酸エステル可塑剤および塩化ビニル組成物
EP1038914A1 (en) Croslinkable modified fluorinated polymers
US4578410A (en) Piperidine derivatives, their production and stabilized polymer compositions containing same
US5047461A (en) Butadiene polymer composition contains phenolic compound and sulfur-containing compound
JP4294189B2 (ja) ポリビニルアルコール系樹脂フィルム
JP5979996B2 (ja) 多層延伸フィルムの製造方法
JP2006022160A (ja) 変性ポリビニルアルコール
US4986932A (en) Stabilizer system for polyolefins comprised of monocarboxylic acid esters of a piperidinol and a benzophenone or benzotriazole
KR101528211B1 (ko) 폴리메타크릴레이트 조성물
JPH11181187A (ja) 架橋ポリオレフィン樹脂押出成形体及びその製造方法
EP0481533B1 (en) Stabilized resin composition
JP2009120673A (ja) 難燃性樹脂組成物
US5478884A (en) Oxyalkylene group-containing polyvinyl alcohol resin composition and process for the production of shaped articles from said composition
JPH06145434A (ja) 安定化ポリオレフィン組成物
KR102135408B1 (ko) 내이행성이 개선된 수지 조성물 및 이로부터 제조된 수지 성형품

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220622

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230424

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230427

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230601

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230622

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230705

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7320182

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151