本発明の実施の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について、図面を参照して具体的に説明する。
[電子部品]
図1(A)に示すように、本実施形態の成膜対象となる電子部品100は、半導体チップ、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ又はSAWフィルタ等の素子を、合成樹脂等の絶縁性のパッケージで封止した表面実装部品である。半導体チップは、複数の電子素子を集積化したICやLSI等の集積回路である。この電子部品は、略直方体形状を有し、一面が電極露出面111aとなっている。電極露出面111aは、電極112が露出し、実装基板と対面して実装基板と接続される面である。
電磁波シールド膜113は電磁波を遮蔽する材料により形成される。図1(A)では、電磁波シールド膜113のみを断面で示している。電磁波シールド膜113は、電子部品100の天面111b及び側面111c、即ち電極露出面111a以外の外面に成膜される。天面111bは電極露出面111aとは反対の面である。側面111cは天面111bと電極露出面111aとを繋ぎ、天面111b及び電極露出面111aとは異なる角度で延びる外周面である。
電磁波遮断のシールド効果を得るためには、電磁波シールド膜113は少なくとも天面111bに形成されていればよい。側面111cには図外のグランドピンが存在している。側面111cに対する電磁波シールド膜113の形成は、電磁波シールド膜113の接地のためでもある。
なお、電子部品100は、電磁波シールド膜113が形成された状態では、電磁波シールド膜113を含めて電子部品100と称することがある。また、天面111bと側面111cも電磁波シールド膜113が形成されていても形成されていなくても単に天面111b、側面111cと称する。つまり、電子部品100の天面111bに形成された電磁波シールド膜113の表面も天面111bと称し、側面111cに形成された電磁波シールド膜113の表面も側面111cと称する。
[保持シート]
図1(B)は、成膜処理を受けた後の電子部品100の状態を示す側面図である。図1(B)では、電子部品100以外を断面で示している。また、図2は、成膜処理を受けるために、電子部品100を搭載するための部材を示す斜視図である。図1(B)及び図2(A)に示すように、電子部品100は、一方の面に粘着性を有する粘着面を有する保持シート120によって保持される。より具体的には、あらかじめ電子部品100の電極露出面111aが保持シート120に密着され、電極112が保持シート120に埋設される。
保持シート120は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などの耐熱性のある合成樹脂である。保持シート120の電極露出面111aが密着する部品搭載面121と、これと反対側の支持面122は粘着面となっている。粘着面としては、保持シート120の表面に対して接着剤を適用するか、表面に接着性を生じさせた接着面とする。接着剤又は接着面の材質としては、例えば、シリコーン系、アクリル系の樹脂、その他、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂など、接着性のある種々の材料を使用できる。
本実施形態の保持シート120は、矩形である。保持シート120の部品搭載面121は、図2(A)に示すように、保持シート120の端から内側へ所定距離まで及ぶ外枠領域121aと、外枠領域121aの内側の中枠領域121bに区分される。電子部品100は中枠領域121bに貼り付けられる。中枠領域121bのうち、電子部品100が貼り付けられる領域が貼付領域121cである。本実施形態では、図中一点鎖線で囲まれた領域が、貼付領域121cである。
[フレーム]
保持シート120には、フレーム130が密着される。つまり、図2(A)、(B)に示すように、保持シート120の外枠領域121aに、矩形の枠状のフレーム130が貼り付けられる。フレーム130は、アルミニウム、SUS等の金属、セラミクス、樹脂、又はその他の熱伝導性の高い材質で形成される。本実施形態のフレーム130は、板状であり、中央に矩形の貫通穴131が形成されている。フレーム130の外形は、保持シート120の外形と一致する。貫通穴131の内縁は、中枠領域121bの外縁に一致する。フレーム130の貫通穴131からは、中枠領域121bが露出する。
[成膜装置]
本実施形態の成膜装置Sは、電子部品100に対して成膜を行う装置である。図3の平面図に示すように、成膜装置Sは、プレート装着部200、成膜部300、プレート離脱部400、冷却部500、搬送部600を備えている。図2(B)、(C)、図3[1]、図4[1]に示すように、電子部品100及びフレーム130が密着した保持シート120には、その支持面122に、搬送プレート140が密着される。この搬送プレート140の密着は、図3に示すプレート装着部200において行われる。これをプレート装着工程とする。
さらに、図3[2]、図4[2]に示すように、保持シート120が密着した搬送プレート140は、トレイ34に載置される。これをプレート載置工程とする。このトレイ34は、図3[3]、図4[3]に示すように、成膜部300に搬入され、電子部品100が成膜される。これを成膜工程とする。この成膜の過程で、電子部品100が加熱される。搬送プレート140は、電子部品100の熱を逃がし、過剰な蓄熱を抑制する放熱路として機能する。
成膜後は、トレイ34は成膜部300から搬出されて、図3[4]、図4[4]に示すように、搬送プレート140がトレイ34から取り出される。これをプレート取出工程とする。そして、図3[5]、図4[5]に示すように、プレート離脱部400において保持シート120が離脱される。これをプレート離脱工程とする。さらに、図3[6]、図4[6]に示すように、搬送プレート140は、冷却部500において冷却される。これをプレート冷却工程とする。その後、図3[1]、図4[1]に示すように、プレート装着部200において、再び保持シート120が密着される。このように、搬送プレート140には、保持シート120が密着される。
このように、搬送プレート140は、プレート装着工程、プレート載置工程、成膜工程、プレート取出工程、プレート離脱工程、プレート冷却工程を経て、繰り返し利用される。
(搬送プレート)
搬送プレート140は、アルミニウム、SUS等の熱伝導性及び導電性を有する金属で形成される板状体である。図2(B)に示すように、搬送プレート140の表面のうち、保持シート120が搭載される面を搭載面141とし、これと反対側の面を成膜部300での支持対象となる支持面142とする(図5参照)。保持シート120の支持面122は、上記のように粘着性を有し、搬送プレート140の搭載面141に密着する。これにより、電子部品100が搬送プレート140に搭載され、電子部品100から搬送プレート140への伝熱面積を確保する。なお、「電子部品100が搬送プレート140に搭載される」とは、電子部品100が搬送プレート140に伝熱可能となるように、直接又は間接に搬送プレート140に接することをいう。電子部品100が重力を利用して搬送プレート140上に載せられる場合には限定されず、搬送プレート140の方向にかかわらず、電子部品100が直接又は間接に接していればよい。また、電子部品100からの放熱のために、保持シート120の支持面122において、少なくとも貼付領域121cに対応する領域の全体に亘って、搬送プレート140が密着していることが好ましい。
搬送プレート140の表面のうち搭載面141以外の面、つまり支持面142及び側面は、凹凸を有するか又は多孔質となっている。凹凸は、例えば、粗面化処理を施すことにより形成できる。多孔質は、例えば、搬送プレート140がアルミニウムの場合に、アルマイト処理を施すことにより形成できる。また、図5(A)に示すように、搬送プレート140の支持面142には、4つの角の近傍に対応する領域に、規制部143が設けられている。本実施形態の規制部143は、深さが同じ4つの円形の窪み穴である。
搬送プレート140の熱容量は、電子部品100の熱容量、より好ましくは保持シート120の熱容量よりも大きいものとすることができ、例えば2500~5000(J/K)とする。これにより、電子部品100から放出された熱、または保持シート120が受ける熱を、熱容量の大きい搬送プレート140に移動させ、放出することができる。前述したように、保持シート120は耐熱性のある樹脂材料で形成されているが、コストの面から一般的に使用されるPETシートは、耐熱温度が100℃~150℃程度である。このようなシートを保持シート120として使用する場合、電子部品100から放出される熱、または保持シート120が受ける熱が保持シート120に蓄積して耐熱温度を超えると、保持シート120が熱変形し、電子部品100が剥離する可能性がある。そこで、搬送プレート140を保持シート120よりも熱容量の大きいものとすれば、保持シート120が受ける熱を効率的に搬送プレート140に放出することができる。これにより、保持シート120の熱変形を抑制し、保持シート120から電子部品100が剥離することを抑制できる。
また、平面視したときの搬送プレート140の面積(搭載面141の面積)は、保持シート120の面積(部品搭載面121の面積)以下の大きさになるように形成される。例えば、搬送プレート140の面積は、保持シート120の面積に対して同じか、搬送プレート140の外縁が保持シート120の外縁よりも1mm程度内側に小さくなるような面積にする。後述する逆スパッタを行う場合、搬送プレート140も電極の一部として作用するためイオンの衝突を受ける。しかし、保持シート120を搭載した搬送プレート140が露出しないようにすることで、搬送プレート140がスパッタによって損傷を受けないようにすることが可能となる。
(トレイ)
トレイ34は、図4に示すように、搬送プレート140を搭載して成膜部300に搬入、搬出される部材である。図6(A)、図7(A)に示すように、トレイ34は、対向面34a、周縁部34b、支持部35を有する。対向面34aは、方形状の平板の一方の平面であり、搬送プレート140に対向する。対向面34aの周縁には、周縁部34bが形成されている。周縁部34bは、対向面34aを囲う矩形状の枠である。トレイ34の材質としては、導電性を有する材質、例えば金属により形成する。本実施形態では、トレイ34の材質は、アルミニウム又はSUS等の熱伝導性及び導電性を有する金属である。
支持部35は、図6(A)、(B)、図7(A)、(B)に示すように、トレイ34に設けられ、搬送プレート140を、トレイ34との間に間隙が生じるように支持する。搬送プレート140の支持面142とトレイ34の対向面34aとの間隔dは、成膜工程において成膜材料が回り込まず、断熱効果が得られる距離、例えば、2~5mm程度とすることが好ましいが、この値には限定されない。
支持部35は、対向面34aから突出した突出部材35aを有する。本実施形態の突出部材35aは、4本の円錐形状のピンである。4本のピンは、搬送プレート140の規制部143に対応し、その先端が規制部143に挿入される位置に設けられている。この規制部143に、突出部材35aが嵌ることにより、支持部35に支持された搬送プレート140の移動が規制される。支持部35と搬送プレート140との接触面積(図5の黒塗の円で示す面積の合計)は、熱伝導を抑制するために、例えば、搬送プレート140の支持面142の面積の5%以下とすることが好ましい。但し、好ましい比率は、搬送プレート140及び支持部35の材質、形状、温度条件、接触点数等、種々の要因によっても変わりうる。このため、本発明は、これらの比率の記載に限定されるものではない。なお、支持部35は、トレイ34と同じ材質により形成されている。支持部35とトレイ34とは、一体的に形成されていても、別々に形成された部材を組み合わせて構成されてもよい。但し、支持部35及びトレイ34は、導電性を有し、互いに電気的に接続されている。
支持部35の支持位置、つまり突出部材35aによる搬送プレート140の支持位置は、「搬送プレート140の外周と規制部143との間の距離 > 突出部材35aが規制部143に嵌まっている状態での搬送プレート140の外周とトレイ34の周縁部34bの内周との間の距離」となるようにするとよい。そうすれば、搬送プレート140の規制部143から突出部材35aがずれたとしても、周縁部34bの内周面で搬送プレート140が規制されて保持されるようにすることができる。
なお、「搬送プレート140が支持部35に支持される」とは、搬送プレート140と支持部35との間の伝熱が抑制されるように、直接又は間接に搬送プレート140と支持部35とが接することをいう。搬送プレート140が重力を利用して支持部35上に載せられる場合には限定されず、支持部35の方向にかかわらず、搬送プレート140が直接又は間接に接していればよい。なお、本実施形態では、搬送プレート140は導電性を有し、支持部35を介して搬送プレート140とトレイ34との電気的な接続が確保される。
また、搬送プレート140は、電子部品100からの熱やプラズマからの熱を蓄積するため熱膨張が生じる。そのため、搬送プレート140の支持面142に設けられた規制部143の位置が移動する。一方、支持部35を有するトレイ34は、搬送プレート140と断熱されており、熱膨張が生じたとしても搬送プレート140とは異なる変化が生じる。そのため、支持部35の位置と規制部143の位置は処理中に相対的に移動し、規制部143から支持部35がずれて外れ、搬送プレート140の保持が不安定になる可能性がある。そこで、複数の規制部143の各々の形状を異なるようにすることで、搬送プレート140の熱膨張による支持部35との位置ずれを許容し、安定保持を維持することができる。例えば、図5(B)に示すように、4つの規制部143のうちの1つを基準穴143sとし、他3つを、基準穴143sよりも大きい穴とすることで、搬送プレート140が熱膨張しても、支持部35の突出部材35aとの位置ずれを許容できる。さらに、搬送プレート140において、基準穴143sと同じ辺上に設けられた2つの穴を辺に沿った長孔とし、基準穴143sと対角に位置する穴を、少なくとも基準穴143sよりも径の大きい丸孔とすることで、基準穴143sによって1角を固定させ、熱膨張が生じても搬送プレート140の移動方向を規制することができる。
[プレート装着部]
プレート装着部200は、図示はしないが、搬送プレート140に保持シート120を押し付けることで、保持シート120を搬送プレート140に密着させる押付装置を有している。このプレート装着部200には、あらかじめ電子部品100が圧着され、フレーム130が貼り付けられた保持シート120と、搬送プレート140とが投入される。冷却部500にて冷却済の搬送プレート140が投入されて、再利用される場合も含む。
[成膜部]
成膜部300は、個々の電子部品100の外表面に、スパッタリングにより電磁波シールド膜113を形成する。成膜部300は、図9に示すように、回転テーブル31が回転すると、保持部33に保持されたトレイ34上の電子部品100が、円周の軌跡で移動して、スパッタ源4に対向する位置を通過するときに、ターゲット41からスパッタされた粒子を付着させて成膜する。
成膜部300は、図8及び図9に示すように、チャンバ20、搬送装置30、成膜処理部40A、40B、表面処理部50、ロードロック部60、制御装置700を有する。
(チャンバ)
チャンバ20は、反応ガスGが導入される容器である。反応ガスGは、スパッタ用のスパッタガスG1、各種処理用のプロセスガスG2を含む(図10参照)。以下の説明では、スパッタガスG1、プロセスガスG2を区別しない場合には、反応ガスGと呼ぶ場合がある。スパッタガスG1は、電力の印加により生じるプラズマにより、発生するイオン等をターゲット41(41A、41B)に衝突させて、電子部品100の表面にスパッタリングによる成膜を実施するためのガスである。例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを、スパッタガスG1として用いることができる。
プロセスガスG2は、エッチングやアッシングによる表面処理を行うためのガスである。以下、このような表面処理を、逆スパッタと呼ぶ場合がある。プロセスガスG2は、処理の目的によって適宜変更可能である。例えば、エッチングを行う場合は、エッチングガスとしてアルゴンガス等の不活性ガスを用いることができる。本実施形態においては、アルゴンガスによって、電子部品100の表面の洗浄と、粗面化処理を行う。例えば、表面を洗浄およびナノオーダーで粗面化処理を行うことにより、膜の密着力を高めることができる。
チャンバ20の内部の空間は真空室21を形成している。この真空室21は、気密性があり、減圧により真空とすることができる空間である。例えば、図8及び図10に示すように、真空室21は、チャンバ20の内部の天井20a、内底面20b及び内周面20cによって形成される円柱形状の密閉空間である。
チャンバ20は、図10に示すように、排気口22、導入口24を有する。排気口22は、真空室21と外部との間で気体の流通を確保して、排気Eを行うための開口である。この排気口22は、例えば、チャンバ20の底部に形成されている。排気口22には、排気部23が接続されている。排気部23は、配管及び図示しないポンプ、バルブ等を有する。この排気部23による排気処理により、真空室21内は減圧される。
導入口24は、真空室21のターゲット41の近傍に、スパッタガスG1を導入するための開口である。この導入口24には、ガス供給部25が接続されている。ガス供給部25は、各スパッタ源4に対して1つずつ設けられている。また、ガス供給部25は、配管の他、図示しない反応ガスGのガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。このガス供給部25によって、導入口24から真空室21内にスパッタガスG1が導入される。なお、チャンバ20の上部には、後述するように、処理ユニット5が挿入される開口21aが設けられている。
(搬送部)
搬送装置30は、チャンバ20内に設けられ、電子部品100を円周の軌跡で循環搬送する装置である。循環搬送は、電子部品100を搭載したトレイ34を円周の軌跡で周回移動させることをいう。搬送装置30によってトレイ34が移動する軌跡を、搬送経路Lと呼ぶ。搬送装置30は、回転テーブル31、モータ32、保持部33を有する。また、保持部33には、支持部35を介して搬送プレート140を搭載したトレイ34が保持される。
回転テーブル31は、円形の板である。モータ32は、回転テーブル31に駆動力を与え、円の中心を軸として回転させる駆動源である。保持部33は、搬送装置30により搬送されるトレイ34を保持する構成部である。回転テーブル31の天面には、複数の保持部33が円周等配位置に配設されている。例えば、各保持部33がトレイ34を保持する領域は、回転テーブル31の周方向の円の接線に平行な向きで形成され、かつ、周方向において等間隔に設けられている。より具体的には、保持部33は、トレイ34を保持する溝、穴、突起、治具、ホルダ等である。メカチャック、粘着チャックによって構成することができる。
このように、保持部33に保持されるトレイ34によって、電子部品100が回転テーブル31上に位置決めされる。なお、本実施形態では、保持部33は6つ設けられているため、回転テーブル31上には60°間隔で6つのトレイ34が保持される。但し、保持部33は、一つであっても、複数であってもよい。
(成膜処理部)
成膜処理部40A、40Bは、搬送装置30により搬送される電子部品100に成膜を行う処理部である。以下、複数の成膜処理部40A、40Bを区別しない場合には、成膜処理部40として説明する。成膜処理部40は、図10に示すように、スパッタ源4、区切部44、電源部6を有する。
<スパッタ源>
スパッタ源4は、電子部品100にスパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜する成膜材料の供給源である。スパッタ源4は、ターゲット41、バッキングプレート42、電極43を有する。ターゲット41は、電子部品100に堆積されて膜となる成膜材料によって形成され、搬送経路Lに離隔して対向する位置に設けられている。本実施形態のターゲット41は、図9に示すように、2つのターゲット41A、41Bが搬送方向に直交する方向、つまり回転テーブル31の回転の半径方向に並んでいる。以下、ターゲット41A、41Bを区別しない場合には、ターゲット41とする。ターゲット41の底面側は、搬送装置30により移動する電子部品100に、離隔して対向する。なお、回転テーブル31の径方向におけるトレイ34の大きさよりも、2つのターゲット41A、41Bによって、成膜材料を付着させることができる実行領域である処理領域の方が大きい。
成膜材料は、後述するように、例えば、Cu、Ni、Fe、SUSなどを使用する。但し、スパッタリングにより成膜される材料であれば、種々の材料を適用可能である。また、ターゲット41は、例えば、円柱形状である。但し、長円柱形状、角柱形状等、他の形状であってもよい。
バッキングプレート42は、ターゲット41を保持する部材である。電極43は、チャンバ20の外部からターゲット41に電力を印加するための導電性の部材である。なお、スパッタ源4には、必要に応じてマグネット、冷却機構などが適宜具備されている。
<区切部>
区切部44は、スパッタ源4により電子部品100が成膜される成膜ポジションM1、M2、表面処理を行う処理ポジションM3を仕切る部材である。以下、成膜ポジションM1、M2を区別しない場合には、成膜ポジションMとして説明する。区切部44は、図9に示すように、搬送経路Lの円周の中心、つまり搬送装置30の回転テーブル31の回転中心から、放射状に配設された方形の壁板44a、44bを有する。壁板44a、44bは、例えば、真空室21の天井に、ターゲット41を挟む位置に設けられている。区切部44の下端は、電子部品100が通過する隙間を空けて、回転テーブルに対向している。この区切部44があることによって、反応ガスG及び成膜材料が真空室21に拡散することを抑制できる。
成膜ポジションM1、M2、処理ポジションM3は、区切部44で区切られた空間である。成膜ポジションM1.M2は、スパッタ源4のターゲット41を含む。より具体的には、図9に示すように、成膜ポジションM1、M2、処理ポジションM3は、平面方向から見て、区切部44の壁板44a、44bと、チャンバ20の内周面20cによって扇形に囲まれた空間である。成膜ポジションM1、M2、処理ポジションM3の水平方向の範囲は、一対の壁板44a、44bによって区切られた領域となる。なお、成膜ポジションMにおけるターゲット41に対向する位置を通過する電子部品100に、成膜材料が膜として堆積する。この成膜ポジションMは、成膜の大半が行われる領域であるが、成膜ポジションMから外れる領域であっても、成膜ポジションMからの成膜材料の漏れはあるため、全く膜の堆積がないわけではない。つまり、成膜が行われる処理領域は、成膜ポジションMよりもやや広い領域となる。
<電源部>
電源部6は、ターゲット41に電力を印加する構成部である。この電源部6によってターゲット41に電力を印加することにより、スパッタガスG1をプラズマ化させ、成膜材料を、電子部品100に堆積させることができる。本実施形態においては、電源部6は、例えば、高電圧を印加するDC電源である。なお、高周波スパッタを行う装置の場合には、RF電源とすることもできる。回転テーブル31は、接地されたチャンバ20と同電位であり、ターゲット41側に高電圧を印加することにより、電位差を発生させている。これにより、可動の回転テーブル31をマイナス電位とするために電源部6と接続する困難さを回避している。
複数の成膜処理部40は、成膜材料を選択的に堆積させることにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成する。特に、本実施形態では、異なる種類の成膜材料に対応するスパッタ源4を含み、成膜材料を選択的に堆積させることにより、複数種類の成膜材料の層から成る膜を形成する。異なる種類の成膜材料に対応するスパッタ源4を含むとは、全ての成膜処理部40の成膜材料が異なる場合も、複数の成膜処理部40が共通の成膜材料であるが、他がこれと異なる場合も含む。成膜材料を1種ずつ選択的に堆積させるとは、いずれか1種の成膜材料の成膜処理部40が成膜を行う間、他の成膜材料の成膜処理部40は成膜を行わないことをいう。また、成膜中の成膜処理部40または成膜ポジションMとは、成膜処理部40のターゲット41に電力が印加され、電子部品100に成膜が行える状態にある成膜処理部40または成膜ポジションMのことをいう。
本実施形態では、搬送経路Lの搬送方向に、表面処理部50を挟んで、2つの成膜処理部40A、40Bが配設されている。2つの成膜処理部40A、40Bに、成膜ポジションM1、M2が対応している。これらの成膜処理部40A、40Bのうち、成膜処理部40Aは、成膜材料がSUSである。つまり、成膜処理部40Aのスパッタ源4は、SUSから成るターゲット41A、41Bを備えている。他の成膜処理部40Bは、成膜材料がCuである。つまり、成膜処理部40Bのスパッタ源4は、Cuから成るターゲット41A、41Bを備えている。本実施形態では、いずれか一つの成膜処理部40が成膜処理を行っている間は、他の成膜処理部40は、成膜処理を行わない。
(表面処理部)
表面処理部50は、搬送装置30により搬送される電子部品100に表面処理、つまり、スパッタ源4を有しないプラズマ処理である逆スパッタを行う処理部である。この表面処理部50は、区切部44により仕切られた、処理ポジションM3に設けられている。表面処理部50は、処理ユニット5を有する。この処理ユニット5の構成例を図9及び図10を参照して説明する。
処理ユニット5は、チャンバ20の上部から内部にかけて設けられた筒形電極51を備えている。筒形電極51は、角筒状であり、一端に開口部51aを有し、他端は閉塞されている。筒形電極51は、開口部51aを有する一端が回転テーブル31に向かうように、チャンバ20の天面に設けられた開口21aに絶縁部材52を介して取り付けられている。筒形電極51の側壁はチャンバ20の内部に延在している。
筒形電極51の、開口部51aと反対端には、外方へ張り出すフランジ51bが設けられている。絶縁部材52が、フランジ51bとチャンバ20の開口21aの周縁との間に固定されることで、チャンバ20の内部を気密に保っている。絶縁部材52は絶縁性があればよく、特定の材料に限定されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料から構成することができる。
筒形電極51の開口部51aは、回転テーブル31の搬送経路Lと向かい合う位置に配置される。回転テーブル31は、搬送装置30として、電子部品100を搭載したトレイ34を搬送して開口部51aに対向する位置を通過させる。なお、回転テーブル31の径方向におけるトレイ34の大きさよりも、筒形電極51の開口部51aの方が大きい。
図9に示すように、筒形電極51は平面方向から見ると回転テーブル31の半径方向における中心側から外側に向けて拡径する扇形になっている。ここでいう扇形とは、扇子の扇面の部分の形を意味する。筒形電極51の開口部51aも、同様に扇形である。回転テーブル31上のトレイ34が開口部51aに対向する位置を通過する速度は、回転テーブル31の半径方向において中心側に向かうほど遅くなり、外側へ向かうほど速くなる。そのため、開口部51aが単なる長方形又は正方形であると、半径方向における中心側と外側とで電子部品100が開口部51aに対向する位置を通過する時間に差が生じる。開口部51aを半径方向における中心側から外側に向けて拡径させることで、開口部51aを通過する時間を一定とすることができ、後述するプラズマ処理を均等にできる。ただし、通過する時間の差が製品上問題にならない程度であれば、長方形又は正方形でもよい。
上述したように、筒形電極51はチャンバ20の開口21aを貫通し、一部がチャンバ20の外部に露出している。この筒形電極51におけるチャンバ20の外部に露出した部分は、図8に示すように、ハウジング53に覆われている。ハウジング53によってチャンバ20の内部の空間が気密に保たれる。筒形電極51のチャンバ20の内部に位置する部分、すなわち側壁の周囲は、シールド54によって覆われている。
シールド54は、筒形電極51と同軸の扇形の角筒であり、筒形電極51よりも大きい。シールド54はチャンバ20に接続されている。具体的には、シールド54はチャンバ20の開口21aの縁から立設し、チャンバ20の内部に向かって延びた端部は、筒形電極51の開口部51aと同じ高さに位置する。シールド54は、チャンバ20と同様にカソードとして作用するので、電気抵抗の少ない導電性の金属部材で構成すると良い。シールド54はチャンバ20と一体的に成型しても良く、あるいはチャンバ20に固定金具等を用いて取り付けても良い。
シールド54は筒形電極51内でプラズマを安定して発生させるために設けられている。シールド54の各側壁は、筒形電極51の各側壁と所定の隙間を介して略平行に延びるように設けられる。隙間が大きくなりすぎると静電容量が小さくなったり、筒形電極51内で発生したプラズマが隙間に入り込んだりしてしまうため、隙間はできるだけ小さいことが望ましい。ただし、隙間が小さくなり過ぎても、筒形電極51とシールド54との間の静電容量が大きくなってしまうため好ましくない。隙間の大きさは、プラズマの発生に必要とされる静電容量に応じて適宜設定すると良い。なお、図10は、シールド54及び筒形電極51の半径方向に延びる2つの側壁面しか図示していないが、シールド54及び筒形電極51の周方向に延びる2つの側壁面の間も、半径方向の側壁面と同じ大きさの隙間が設けられている。
また、筒形電極51にはプロセスガス導入部55が接続されている。プロセスガス導入部55は、配管の他、図示しないプロセスガスG2のガス供給源、ポンプ、バルブ等を有する。このプロセスガス導入部55によって、筒形電極51内にプロセスガスG2が導入される。プロセスガスG2は、上記のように、処理の目的によって適宜変更可能である。
筒形電極51には、高周波電圧を印加するためのRF電源56が接続されている。RF電源56の出力側には整合回路であるマッチングボックス57が直列に接続されている。RF電源56はチャンバ20にも接続されている。RF電源56から電圧を印加すると、筒形電極51がアノードとして作用し、チャンバ20、シールド54、回転テーブル31、トレイ34及び搬送プレート140がカソードとして作用する。つまり、逆スパッタのための電極として機能する。このため、上記のように、回転テーブル31、トレイ34及び搬送プレート140は導電性を有し、電気的に接続されるように接触している。
マッチングボックス57は、入力側及び出力側のインピーダンスを整合させることで、プラズマの放電を安定化させる。なお、チャンバ20や回転テーブル31は接地されている。チャンバ20に接続されるシールド54も接地される。RF電源56及びプロセスガス導入部55はともに、ハウジング53に設けられた貫通孔を介して筒形電極51に接続する。
プロセスガス導入部55から筒形電極51内にプロセスガスG2であるアルゴンガスを導入し、RF電源56から筒形電極51に高周波電圧を印加すると、アルゴンガスがプラズマ化され、電子、イオン及びラジカル等が発生する。
(ロードロック部)
ロードロック部60は、真空室21の真空を維持した状態で、図示しない搬送手段によって、搬送プレート140を介して未処理の電子部品100を搭載したトレイ34を、真空室21に搬入し、搬送プレート140を介して処理済みの電子部品100を搭載したトレイ34を真空室21の外部へ搬出する装置である。このロードロック部60は、周知の構造のものを適用することができるため、説明を省略する。
[プレート離脱部]
プレート離脱部400は、電子部品100に成膜された後、トレイ34から取り出された搬送プレート140が投入される。プレート離脱部400は、図示はしないが、搬送プレート140に設けられた穴又は溝から、プッシャを挿入して保持シート120を付勢することにより、保持シート120の一部を搬送プレート140から剥離して、把持部材によって持ち上げるようにして保持シート120を搬送プレート140から離脱させる。
[冷却部]
冷却部500は、成膜部300による電子部品100に対する成膜により、加熱された搬送プレート140を冷却する。冷却部500は、図4、図11に示すように、収容部510、噴霧部520、減圧部530、ベント部540を有する。収容部510は、搬送プレート140を収容する容器である。収容部510は、気密性があり、内部を真空とすることができる。
収容部510は、開口511、シャッター512、支持台513、排気口514、噴霧口515を有する。開口511は、搬送プレート140を出し入れ可能な大きさを有する。シャッター512は、開口511に設けられ、開口511を開閉する。シャッター512により開口511を閉じると、収容部510内は外気から密閉され、シャッター512により開口511を開くと、収容部510内は大気開放される。
支持台513は、収容部510に収容された搬送プレート140を支持する台である。支持台513は、搬送プレート140の支持面142の一部を支持する。つまり、支持台513により支持された搬送プレート140は、搭載面141、支持面142の一部及び側面は収容部510内に露出している。排気口514は、排気により収容部510内の減圧を行うための開口である。噴霧口515は、液体を噴霧するための開口である。噴霧口515は、大気を導入することにより収容部510内の真空破壊を行うための開口でもある。
噴霧部520は、収容部510内に液体を噴霧する。液体としては、水を用いる。噴霧部520は、図示しない水の供給源に連通した配管521を有する。また、噴霧部520は、配管521から噴霧口515に延びた図示しないスプレーノズルを有する。減圧部530は、噴霧部520により噴霧された液体の気化熱により搬送プレート140が冷却されるように、収容部510の内部を減圧する。減圧部530は、排気口514に接続された配管531を含み、この配管531に接続された図示しない空気圧回路に接続されている。減圧部530による排気により、収容部510内が減圧されて真空となる。
ベント部540は、収容部510を大気開放させる。ベント部540は、噴霧口515及び配管521に接続された配管541を含み、この配管541に接続された図示しない弁を有する。ベント部540は、収容部510内が真空となった状態で、弁を開放することにより、真空破壊を行う。
[搬送部]
搬送部600は、図3に示すように、プレート装着部200、成膜部300、プレート離脱部400、冷却部500の間で、必要な部材を搬送する。本実施形態の搬送部600は、回転アーム610、620、ロボットアーム630を有する。回転アーム610は、搬送プレート140を搭載したトレイ34を、ロードロック部60を介して、チャンバ20から出し入れする。回転アーム620は、保持シート120が装着された搬送プレート140を、トレイ34に対して出し入れする。ロボットアーム630は、搬送プレート140を、プレート装着部200、回転アーム620、プレート離脱部400、冷却部500との間で搬送する。
[制御装置]
制御装置700は、成膜装置Sの各部を制御する装置である。この制御装置700は、例えば、専用の電子回路若しくは所定のプログラムで動作するコンピュータ等によって構成できる。つまり、制御装置70は、プレート装着部200、成膜部300、プレート離脱部400、冷却部500、搬送部600の制御に関して、その制御内容がプログラムされており、PLC(Programmable Logic Controller)やCPU(Central Processing Unit)などの処理装置により実行される。
具体的に制御される内容としては、回転アーム620による搬送プレート140の搬送、回転アーム610によるトレイ34の成膜部300への搬入搬出、プレート装着部200による搬送プレート140への保持シート120の装着、プレート離脱部400による搬送プレート140からの保持シート120の離脱、ロボットアーム630による冷却部500への搬送プレート140の搬入搬出、シャッター512の開閉、噴霧部520による液体の噴霧、減圧部530による排気、ベント部540による真空破壊などの動作及びそのタイミングを含む。
また、制御装置700は、成膜装置Sの初期排気圧力、スパッタ源4の選択、ターゲット41及び筒形電極51への印加電力、スパッタガスG1及びプロセスガスG2の流量、種類、導入時間及び排気時間、成膜時間、モータ32の回転速度などを制御する。
上記のように各部の動作を実行させるための制御装置700の構成を、仮想的な機能ブロック図である図12を参照して説明する。すなわち、制御装置700は、機構制御部71、記憶部72、設定部73、入出力制御部74を有する。
機構制御部71は、プレート装着部200、成膜部300、プレート離脱部400、冷却部500、搬送部600を構成する各部の機構を制御する処理部である。また、機構制御部71は、排気部23、ガス供給部25、プロセスガス導入部55、搬送装置30のモータ32、ロードロック部60等の駆動源、バルブ、スイッチ、電源、電源部6、RF電源56等を制御する。
記憶部72は、本実施形態の制御に必要な情報を記憶する構成部である。例えば、噴霧部520による液体の噴霧量及び噴霧タイミング、減圧部530による排気量及び排気タイミング、ベント部540による真空破壊のタイミング等は記憶部72に記憶される情報に含まれる。設定部73は、外部から入力された情報を、記憶部72に設定する処理部である。入出力制御部74は、制御対象となる各部との間での信号の変換や入出力を制御するインタフェースである。
さらに、制御装置700には、入力装置75、出力装置76が接続されている。入力装置75は、オペレータが、制御装置700を介して成膜装置Sを操作するためのスイッチ、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力手段である。例えば、成膜を行うスパッタ源4の選択を、入力手段により入力できる。出力装置76は、装置の状態を確認するための情報を、オペレータが視認可能な状態とするディスプレイ、ランプ、メータ等の出力手段である。
[動作]
以上のような本実施形態の動作を、上記の図1~図12を参照して以下に説明する。まず、図2(A)、(B)に示すように、電子部品100は、あらかじめ保持シート120における貼付領域121c上に、間隔を空けてマトリクス状に並べて貼着され、保持シート120の外枠領域121aには、フレーム130が密着されている。
(プレート装着工程:図3[1]、図4[1])
このような保持シート120と、搬送プレート140が、プレート装着部200に投入される。そして、プレート装着部200において、搬送プレート140に保持シート120の支持面122に、搬送プレート140の搭載面141が密着される。
(プレート載置工程:図3[2]、図4[2])
保持シート120が密着された搬送プレート140は、図6(A)、(B)、図7(A)、(B)に示すように、回転アーム620によりトレイ34の対向面34aに搭載される。このとき、突出部材35aの先端が規制部143に嵌り、支持部35によって搬送プレート140が支持される。
(成膜工程:図3[3]、図4[3])
複数のトレイ34は、回転アーム610により、ロードロック部60から、チャンバ20内に順次搬入される。回転テーブル31は、空の保持部33を、順次、ロードロック部60からの搬入箇所に移動させる。保持部33は、搬送手段により搬入されたトレイ34を、それぞれ個別に保持する。このようにして、図8及び図9に示すように、成膜対象となる電子部品100を、保持シート120及び搬送プレート140を介して搭載したトレイ34が、回転テーブル31上に全て載置される。なお、図8~図9では、トレイ34に搭載された電子部品100、保持シート120及び搬送プレート140は図示を省略している。
以上のように成膜装置Sに導入された電子部品100に対する成膜処理を説明する。なお、以下の動作は、表面処理部50によって電子部品100の表面を、洗浄および粗面化した後、成膜処理部40A、40Bによって、電子部品100の表面に、電磁波シールド膜113を形成する例である。電磁波シールド膜113は、SUSの層、Cuの層を、交互に積層することにより形成される。電子部品100に直接形成されるSUSの層は、モールド樹脂と、Cuとの密着度を高める下地となる。中間のCuの層は、電磁波を遮蔽する機能を有する層である。最上層のSUSの層は、Cuの錆等を防ぐ保護層である。
まず、真空室21は、排気部23によって常に排気され減圧されている。真空室21が所定の圧力に到達すると、回転テーブル31が回転して、所定の回転速度に達する。電子部品100は、処理ユニット5において、筒形電極51の開口部51aに対向する位置を通過する。処理ユニット5では、プロセスガス導入部55から筒形電極51にプロセスガスG2であるアルゴンガスを導入し、RF電源56から筒形電極51に高周波電圧を印加する。高周波電圧の印加によってアルゴンガスがプラズマ化され、イオン等を含む活性種が発生する。プラズマはアノードである筒形電極51の開口部51aから、カソードである搬送プレート140、トレイ34及び回転テーブル31へ流れる。プラズマ中のイオン等が開口部51aの下を通過する電子部品100の表面に衝突することで、表面が洗浄および粗面化される。そして、表面処理部50による表面処理時間が経過したら、表面処理部50を停止する。つまり、プロセスガス導入部55からのプロセスガスG2の供給、RF電源56による電圧の印加を停止する。
次に、成膜処理部40Aのガス供給部25は、スパッタガスG1を、ターゲット41の周囲に供給する。この状態下で、保持部33に保持された電子部品100は、搬送経路L上を円を描く軌跡で移動して、スパッタ源4に対向する位置を通過する。
次に、成膜処理部40Aのみ、電源部6がターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Aの成膜ポジションM1を通過する電子部品100の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、SUSの層が形成される。このとき、プラズマにより加熱される電子部品100の熱は、保持シート120を介して搬送プレート140に放出される。
また、電子部品100は成膜処理部40Bの成膜ポジションM2を通過するが、成膜処理部40Bはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理は行われず、電子部品100は加熱されない。また、成膜ポジションM1、M2以外の領域においても、電子部品100は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品100及び搬送プレート140は熱を放出する。
成膜処理部40Aによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Aを停止する。つまり、電源部6によるターゲット41への電力の印加を停止する。そして、成膜処理部40Bの電源部6が、ターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Bの成膜ポジションM2を通過する電子部品100の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、Cuの層が形成される。この層は、電磁波シールド膜113の層の一部となる。このとき、プラズマにより加熱される電子部品100の熱は、保持シート120を介して搬送プレート140に放出される。
また、電子部品100は成膜処理部40Aの成膜ポジションM1を通過するが、成膜処理部40Aはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理を行われず、電子部品100は加熱されない。また、成膜ポジションM1、M2以外の領域においても、電子部品100は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品100、搬送プレート140は熱を放出する。
成膜処理部40Bによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Bを停止する。つまり、電源部6によるターゲット41への電力の印加を停止する。そして、成膜処理部40Aの電源部6が、ターゲット41に電力を印加する。これにより、スパッタガスG1がプラズマ化する。スパッタ源4において、プラズマにより発生したイオンは、ターゲット41に衝突して成膜材料の粒子を飛ばす。このため、成膜処理部40Aの成膜ポジションM1を通過する電子部品100の表面には、その通過毎に成膜材料の粒子が堆積されて、膜が生成される。ここでは、SUSの層が形成される。このとき、プラズマにより加熱される電子部品100の熱は、保持シート120を介して搬送プレート140に放出される。
また、電子部品100は成膜処理部40Bの成膜ポジションM2を通過するが、成膜処理部40Bはターゲット41に電力が印加されていないので、成膜処理を行われず、電子部品100は加熱されない。また、成膜ポジションM1、M2以外の領域においても、電子部品100は加熱されない。このように、加熱されない領域において、電子部品100、搬送プレート140は熱を放出する。
成膜処理部40Aによる成膜時間が経過したら、成膜処理部40Aを停止する。つまり、電源部6によるターゲット41への電力の印加を停止する。このように、成膜処理部40A、40Bによる成膜を繰り返すことにより、SUSの膜、Cuの膜、SUSの膜が積層された膜を形成する。なお、さらに、同様の成膜を繰り返すことにより、3層より多い膜を形成することもできる。これにより、図1(A)、図1(B)に示すように、電子部品100の天面111b及び側面111cに、電磁波シールド膜113が形成される。
以上のような成膜処理の間、回転テーブル31は回転を継続し電子部品100を搭載したトレイ34を循環搬送し続ける。そして、成膜処理が完了した後、電子部品100を搭載したトレイ34は、回転テーブル31の回転により、順次、ロードロック部60に位置決めされ、回転アーム610によって外部へ搬出される。
(プレート取出工程:図3[4]、図4[4])
成膜部300から搬出されたトレイ34から、回転アーム620によって搬送プレート140が取り出される。そして、ロボットアーム630によって、搬送プレート140がプレート離脱部400に投入される。
(プレート離脱工程:図3[5]、図4[5])
プレート離脱部400において、搬送プレート140から保持シート120が離脱される。さらに、図示しない部品離脱装置において、例えば、電子部品100を負圧で吸着しながら保持シート120を引き剥がすことにより、保持シート120から電子部品100を離脱させる。
(プレート冷却工程:図3[6]、図4[6])
搬送プレート140は、ロボットアーム630によって冷却部500に搬入される。つまり、図11(A)に示すように、シャッター512を開くことにより開放された開口511から、搬送プレート140が収容部510内に挿入され、支持台513に載置される。図11(B)に示すように、シャッター512を閉じて収容部510内を密閉した状態で、噴霧部520によって噴霧口515から、液体を噴霧する。
図11(C)に示すように、減圧部530によって排気口から排気することにより、収容部510内を真空状態にまで減圧する。このとき、噴霧された液体が気化するため、気化熱により搬送プレート140が冷却される。搬送プレート140は、成膜工程において加熱され60℃~70℃程度まで昇温しており、冷却によって、例えば、常温(25℃)程度まで降温すればよいが、これには限定されない。そして、図11(D)に示すように、ベント部540の弁を開放することにより、真空破壊を行う。その後、シャッター512を開放して、ロボットアーム630によって搬送プレート140を収容部510内から搬出して、プレート装着部200に投入する。
なお、図11(A)~(E)では、搬送プレート140の周縁を支持台513に保持しているが、これに限定されず、板状の支持台513に搬送プレート140の支持面142全面を面接触させて保持してもよい。冷却プレート516と搬送プレート140とが面接触していることで、接触面積が増え、冷却プレート516に搬送プレート140の熱が効率的に放熱され、冷却効果が向上する。板状の支持台513はアルミニウム、SUS等の金属、セラミクス、樹脂又はその他熱伝導性の高い材質で形成すればより冷却効果が向上する。
[比較試験]
以上のような実施形態に対応する実施例と比較例との比較試験の結果を、図13に示す。図13(a)~(d)は、90℃を初期温度として、成膜部の外部の真空室において、時間の経過に従った搬送プレートの温度を測定した結果である。この測定においては、搬送プレートとして、材質はアルミ合金、サイズは100mm×200mm×20mmの板状部材を用いた。また、温度検出部として、白金熱電対式温度計を用い、測定点は搬送プレートの上面中心とした。
図13(a)、(b)は、真空室において搬送プレートを放置した場合の冷却時間の測定結果である。図13(a)は、真空室内の他の部材に点接触のみで保持され、ほぼ断熱された状態で放置した場合である。図13(b)は、真空室内に設けられたアルミブロックの表面に直接置いた直置き、つまり面接触で保持された状態で放置した場合である。
図13(c)、(d)は、真空室において搬送プレートに液体を噴霧し、気化させることで気化冷却を行った場合の冷却時間の測定結果である。図13(c)は真空室内の他の部材に点接触のみで保持され、ほぼ断熱された状態で気化冷却を行った場合である。これは、図11で示した態様に対応する。図13(d)は、真空室内に設けられたアルミブロックに面接触保持された状態で気化冷却を行った場合である。噴霧する液体は純水とし、1回あたりの噴射量は、3.7g、噴霧間隔は、2回/minとした。
図13に示すように、冷却目標温度を常温(25℃)とした場合、(d)では9分、(c)では16分程度で目標温度に到達した。一方、(a)、(b)では、30分経過した時点でも(a)では70℃、(b)では30℃であり、目標温度に到達しなかった。なお、(a)、(b)は60分経過した時点でも目標温度に到達せず、(a)では46.6℃、(b)では26.7℃までしか降温しなかった。
[作用効果]
(1)本実施形態の成膜装置Sは、スパッタガスG1が導入されるチャンバ20と、チャンバ20内に設けられ、スパッタリングにより成膜材料を堆積させて成膜するスパッタ源4を有し、チャンバ20内において、搬送プレート140に搭載された電子部品100に、スパッタ源4により成膜する成膜処理部40と、チャンバ20外において、搬送プレート140を冷却する冷却部500と、を有する。そして、冷却部500は、搬送プレート140を収容する収容部510と、収容部510内に液体を噴霧する噴霧部520と、噴霧部520により噴霧された液体の気化熱により搬送プレート140が冷却されるように、収容部510の内部を減圧する減圧部530と、を有する。
このように、冷却部500において搬送プレート140を冷却してから、再度、成膜に用いることによって、複数の電子部品の処理において、成膜部300に残存している前の処理の熱の影響を受けずに、温度条件の変動なく処理を行うことができる。冷却に液体の気化熱を利用するため、単に成膜部300の外部で放置する場合に比べて、高速に効率良く冷却でき、少ない数の搬送プレート140で効率良く成膜を行うことができる。
(2)搬送プレート140は、表面に凹凸又は多孔質の部分を有する。このため、表面に液体をより多く含むことができるので、気化する液体量が多く、冷却効率が高まる。
(3)本実施形態の成膜装置Sは、スパッタガスG1が導入されるチャンバ20と、スパッタ源4によりチャンバ20内において電子部品100に成膜する成膜処理部40と、チャンバ20内で成膜される電子部品100が搭載される搬送プレート140と、トレイ34を介して搬送プレート140を搬送する搬送装置30と、搬送装置30により搬送されるトレイ34と、トレイ34に設けられ、搬送プレート140を、トレイ34との間に間隙が生じるように支持する支持部35と、を有する。
本実施形態では、成膜対象である電子部品100を、搬送プレート140に搭載している。これにより、成膜中の電子部品100の熱を搬送プレート140に放出させて電子部品の温度上昇を抑制することができる。但し、成膜部300のチャンバ20内における回転テーブル31のような内部部材も、プラズマにより加熱される。すると、このような内部部材からの熱が、トレイ34を介して搬送プレート140に伝達されると、電子部品100の温度が上昇する。特に、成膜部300において連続して成膜を行う場合、前の成膜でのプラズマによる熱が、内部部材に残存する可能性がある。すると、次の成膜を行う電子部品100に、内部部材から残存した熱が伝わることにより、電子部品100の成膜の温度条件が変動し、膜質の変動を引き起こす可能性がある。本実施形態では、搬送プレート140と、成膜部300に設置されたトレイ34とが、間隔が生じるように支持部35によって支持されている。このため、搬送プレート140とトレイ34との断熱を図ることができ、搬送部600の回転テーブル31等の内部部材からの熱が、トレイ34及び搬送プレート140を介して、電子部品100に伝わり難くなり、電子部品100の温度上昇が抑制される。
(4)支持部35に支持される搬送プレート140の支持面142の面積に対して、支持部35の接触面積が5%以下である。このため、トレイ34から搬送プレート140への伝熱の経路が狭くなり、電子部品100に熱が伝わり難くなる。
(5)支持部35は、トレイ34から搬送プレート140に向かって突出し、先端が搬送プレート140に接する突出部材を有する。このため、簡単な構成で、搬送プレート140のトレイ34との間隔を空けた支持が可能となる。
(6)支持部35は、複数設けられている。このため、支持位置を複数とすることができ、トレイ34との間に間隔を空けつつ、搬送プレート140を安定して支持することができる。
(7)搬送プレート140は、支持部35に支持された搬送プレート140の支持部に対する移動を規制する規制部143を有する。このため、規制部143によって、搬送による搬送プレート140のずれを防止できる。
(8)チャンバ20内において、電子部品100又は電子部品100に形成された膜に対して、搬送プレート140を電極として作用させて表面処理を行う表面処理部50を有し、搬送プレート140及び支持部35は、導電性を有する。このため、搬送プレート140及び支持部35に、表面処理部50の電極としての機能を持たせることができる。
(9)電子部品100は、一方の面に粘着性を有する粘着面を有する保持シート120によって保持され、保持シート120の他方の面において、少なくとも電子部品100の貼付領域121cに対応する領域の全体に亘って、搬送プレート140が密着している。このため、電子部品100の熱が、搬送プレート140に効率良く伝達される。
[他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様も含む。
(1)支持部35の突出部材35aの形状は、上記の態様には限定されない。円柱状、角錐状、角柱状であってもよい。支持部35の数は、1つであってもよいが、支持の安定のためには、複数であることが好ましい。例えば、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、図14(A)に示すように、支持部35に弾性を持たせることにより、搬送プレート140の支持面142の歪み等があっても、支持部35を確実に接触させて、安定した支持と導電性の確保ができるようにしてもよい。例えば、突出部材35aを、バネ等の弾性部材35bによって支持し、搬送プレート140に向かって進退するように構成してもよい。
また、図14(B)に示すように、支持部35の突出部材35aを、対向面に沿って延びた壁形状又は土手形状としてもよい。これにより、突出部材35aと搬送プレート140との接触面積の増大による電気抵抗の低減と、支持の安定性を確保できる。
さらに、支持部35を柔軟性のある材料とすることによっても、搬送プレート140の支持面142の歪み等があっても、支持部35を確実に接触させて、安定した支持と導電性の確保ができるようにしてもよい。例えば、図14(C)に示すように、支持部35を銅などの金属製のブラシを適用してもよい。また金属製のメッシュ状の部材を適用してもよい。また、支持部35を機械的な支持用の支持部材と、電気的な導通用の支持部材とを組み合わせてもよい。例えば、上記の支持部材の態様を組み合わせてもよい。なお、電気的な接続のためには、搬送プレート140と支持部35とは、最低1箇所が接触していればよい。さらに、支持部35による搬送プレート140の支持位置は、電子部品100を載置する側の面と反対側の支持面142には限定されない。例えば、搬送プレート140の側面の一部又は側面と支持面142の双方を支持してもよい。
(2)成膜処理部40におけるターゲットの数は、2つには限定されない。ターゲットを1つとしても、3つ以上としてもよい。また、成膜ポジションも2つ以下としても、4つ以上としてもよい。また、図15に示すように、例えば、成膜処理部40A~40Cを有するが、搬送プレート140、トレイ34を電極の一部として用いる表面処理部50を有しない成膜部300であってもよい。この場合、搬送プレート140とトレイ34との導電性を確保するために、支持部35に導電性を持たせる必要はない。つまり、搬送プレート140、トレイ34、支持部35の材質は、導電性を有していなくてもよい。例えば、搬送プレート140、トレイ34、支持部35の少なくとも1つを、熱伝導性の良いセラミクスや合成樹脂、または、それらの複合材としてもよい。
(3)上記の態様において、冷却部500が、液体の噴霧と排気を複数回行うことにより、搬送プレート140の温度を低減してもよい。この場合、制御装置700の記憶部72に、実験等によりあらかじめ所望の温度になる回数を設定しておき、液体の噴霧と排気を設定した回数だけ実行するようにしてもよい。また、搬送プレート140の温度を測定する温度検出部を設け、制御装置700が、温度検出部による検出温度が、あらかじめ設定された温度に達するまで、液体の噴霧と排気を実行してもよい。これにより、1回毎の液体の噴霧量、搬送プレート140への液体の付着量が過大とならないように調整しつつ、繰り返しにより目標温度まで低減させることができるので、残留した液体が成膜に影響を与えることを防止できる。また、図16に示すように、冷却部500の収容部510内に、複数の搬送プレート140を収容可能に構成してもよい。例えば、収容部510内に、支持台を多段に設けてもよい。これにより、複数の搬送プレートをまとめて冷却できるので、作業効率を向上させることができる。なお、温度検出部513aは、例えば、図16に示すように、支持台513における搬送プレート140を支持する面に設ける。これにより、搬送プレート140を支持台513に載置したときに、温度検出部513aに接触させて、温度を検出することができる。温度検出部としては、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、放射温度計など、公知の温度センサを使用することが可能であり、その位置も前述の態様には限定されない。
(4)さらに、図17に示すように、搬送プレート140に接触する接触面516aを有する冷却プレート516を有し、冷却プレート516における接触面516aと反対側に、噴霧部520により液体を噴霧し、減圧部530による減圧を行う構成としてもよい。この場合、冷却プレート516は、収容部510内を搬送プレート140が接触する接触面516a側とその反対側の冷却室517とに気密に区切り、冷却室517を減圧可能な空間としている。冷却プレート516は、アルミニウム、SUS等の金属、セラミクス、樹脂又はその他熱伝導性の高い材質で形成する。冷却プレート516の接触面516aと反対側の面、つまり、冷却室517側の面は、凹凸を有するか又は多孔質となっている。凹凸は、例えば、粗面化処理を施すことにより形成できる。また、放熱フィンとなるような比較的大きな凹凸としてもよい。多孔質は、例えば、搬送プレート140がアルミニウムの場合に、アルマイト処理を施すことにより形成できる。
また、排気口514、噴霧口515は、冷却室517に連通するように設けられ、それぞれに排気口514に減圧部530が接続され、噴霧口515に噴霧部520、ベント部540が接続されている。
この態様では、図17(A)に示すように、シャッター512を開くことにより開放された開口511から、搬送プレート140が収容部510内に挿入され、冷却プレート516の接触面516aに載置される。図17(B)に示すように、シャッター512を閉じて、噴霧部520によって噴霧口515から、冷却室517に液体を噴霧する。
図17(C)に示すように、減圧部530によって排気口から排気することにより、冷却室517内を減圧する。このとき、噴霧された液体が気化するので、冷却プレート516が冷却される。これにより、冷却プレート516に接触している搬送プレート140が冷却される。そして、図17(D)に示すように、ベント部540の弁を開放することにより、真空破壊を行う。その後、シャッター512を開放して、ロボットアーム630によって搬送プレート140を収容部510内から搬出して、プレート装着部200に投入する。
以上のような態様では、搬送プレート140に直接液体が付着することがないため、搬送プレート140に残留した液体が、成膜に影響を与えることを防止できる。また、冷却プレート516と搬送プレート140とが面接触していることで、接触面積が増える。このため、前述した図13(d)に示したように、冷却プレート516に搬送プレート140の熱が効率的に放出され、冷却効果が向上する。このような態様においても、冷却部500が、液体の噴霧と排気を複数回行うことにより、搬送プレートの温度を低減してもよい。この場合、制御装置700の記憶部72に、実験等によりあらかじめ所望の温度になる回数を設定しておき、液体の噴霧と排気を設定した回数だけ実行するようにしてもよい。また、搬送プレート140の温度を検出する温度検出部を設け、制御装置700が、温度検出部による検出温度が、あらかじめ設定された温度に達するまで、液体の噴霧と排気を繰り返し実行してもよい。
(5)搬送プレート140、トレイ34の形状も、矩形には限定されない。円形、楕円形等、種々の形状とすることができる。保持シート120と搬送プレート140との間に、粘着シートを介在させてもよい。搬送プレート140に対する電子部品100の搭載の態様は、上記の態様には限定されない。フレーム130を省略して、保持シート120のみによって、搬送プレート140に電子部品100が搭載されるようにしてもよい。さらに、電子部品100が直接搬送プレート140に保持されるようにしてもよい。トレイ34に搭載される搬送プレート140の数、搬送プレート140に搭載される電子部品100の数も1つであっても、複数であってもよい。支持部35が無いトレイ34であってもよい。つまり、トレイ34の対向面に、搬送プレート140が直接又は間接に搭載されていてもよい。間接に搭載とは、例えば、搬送プレート140とトレイ34との間に粘着シートのように、他の部材を介在させて搭載することをいう。
(6)成膜材料については、スパッタリングにより成膜可能な種々の材料を適用可能である。例えば、電磁波シールド膜としては、Al、Ag、Ti、Nb、Pd、Pt、Zr等を用いることもできる。さらに、磁性体として、Ni、Fe、Cr、Co等を使用することができる。さらに、また、下地の密着層として、SUS、Ni、Ti、V、Ta等を用いたり、最表面の保護層として、SUS、Au等を用いることができる。
(7)電子部品100のパッケージの形態は、例えば、BGA、LGA、SОP、QFP、WLPなど、現在又は将来において利用可能なあらゆる形態が適用可能である。電子部品100が外部との電気的な接続を行う端子としても、例えば、底面に設けるBGA等の半球状のものやLGA等の平面状のもの、側面に設けるSОP、QFPの細板状のもの等が考えられるが、現在又は将来において利用可能なあらゆる端子が適用可能であり、その形成位置も問わない。また、電子部品100の内部に封止される素子は、単数であっても複数であってもよい。
(8)搬送部により同時搬送されるトレイ、電子部品の数、これを保持する保持部の数は、少なくとも1つであればよく、上記の実施形態で例示した数には限定されない。つまり、1つの電子部品が循環して成膜を繰り返す態様でもよく、2つ以上の電子部品が循環して成膜を繰り返す態様でもよい。
(9)エッチングやアッシングによる洗浄や表面処理は、成膜ポジションを有するチャンバとは別のチャンバで行ってもよい。なお、酸化処理又は後酸化処理を行う場合は、プロセスガスG2として酸素を用いることができる。窒化処理を行う場合は、プロセスガスG2として窒素を用いることができる。
(10)上記の実施形態では、回転テーブル31が水平面内で回転する例としている。但し、搬送部の回転面の向きは、特定の方向には限定されない。例えば、垂直面内で回転する回転面とすることもできる。さらに、搬送部が有する搬送手段は、回転テーブルには限定されない。例えば、ワークを保持する保持部を有する円筒形状の部材が、軸を中心に回転する回転体としてもよい。また、循環搬送の軌跡は、円周には限定されない。無端状の搬送経路により、循環搬送される態様を広く含む。例えば、矩形や楕円であってもよいし、クランクや蛇行する経路を含んでいてもよい。搬送経路は、例えば、コンベア等により構成してもよい。
さらに、本発明は、スパッタガスG1が導入されるチャンバ20と、チャンバ20内に設けられ、スパッタ源4により電子部品100に成膜する成膜処理部40と、トレイ34に支持され、電子部品100を搭載するための搬送プレート140を有する成膜装置Sであればよい。このため、電子部品100を循環搬送せずに、静止した状態で成膜する成膜装置Sであってもよい。つまり、搬送プレート140を介して電子部品100を搭載したトレイ34を搬入して、処理領域に設置し、ターゲット41に対する相対位置を変化させずにスパッタリングを行う装置であってもよい。
(11)上記の実施形態では、成膜材料を1種ずつ選択的に堆積させて成膜するようにしている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、成膜材料を選択的に堆積させることにより、複数の成膜材料の層から成る膜を形成できればよい。このため、2種以上の成膜材料を同時に堆積させるようにしても良い。例えば、電磁波シールド膜を、Co、Zr、Nbの合金で形成することがある。このような場合に、複数の成膜処理部のうち、Coを成膜材料とする成膜処理部と、Zrを成膜材料とする成膜処理部とNbを成膜材料とする成膜処理部を同時に選択して成膜を行なうようにしても良い。
そしてこの場合、円周の軌跡のうち、これらの成膜中に成膜ポジションを通過する軌跡よりも、成膜中の成膜ポジション以外の部分を通過する軌跡の方が長くなるように、成膜に用いる成膜処理部を選択する、あるいは、成膜処理部を区切る区切部の配置を設定すると良い。
つまり、1種、または、複数種の成膜処理部を複数個選択して成膜を行なう場合、或いは単一の成膜処理部を選択して成膜を行なう場合のいずれにおいても、円周の軌跡のうち、成膜中に成膜ポジションを通過する軌跡よりも、成膜中の成膜ポジション以外の部分を通過する軌跡の方が長くなるように、成膜に用いる成膜処理部を選択する、あるいは、成膜処理部を区切る区切部の配置を設定すると良い。
(12)以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。