JP7316600B2 - 養殖用飼料の添加物 - Google Patents
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Description
家畜(豚、牛、馬など)や家禽(鶏など)の畜産動物または魚介類等の水棲動物を養殖する(すなわち動物を飼育および/または肥育する)ための飼料(単体飼料、混合飼料、配合飼料など)には、動物の疾病予防のために抗生物質が多く含まれている。しかしながら、耐性菌発生の問題などから、既にヨーロッパでは養殖用飼料への抗生物質の添加は禁止されている。
抗生物質代替物としての乳酸発酵豆乳
本発明者らは、植物由来の乳酸菌であるラクトバシルス・デルブリュッキ・サブスピーシーズ・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)TUA4408L株(以下、「TUA4408L株」と記載することがある)を用いて発酵させた豆乳(商品名:豆乳グルト)が、豚用飼料の抗生物質代替物として有効であることを報告している(非特許文献1)。具体的には、5週齢から17週齢の豚に豆乳グルトを毎日経口投与(3g/体重kg)し、以下の知見を得た。
(1)子豚の下痢発症や糞便中の病原性大腸菌の発生が有意に抑制されること。
(2)下痢多発時の5週齢より13週齢時では有用腸内細菌の割合が増加すること。
(3)大腸部における炎症性サイトカインの発現量を有意に低下すること。
(4)豚肉ロース芯部の総不飽和脂肪酸(特にリノール酸)割合が増加すること。
(5)枝肉格付け評価は上および中ランクの割合が3倍であること。
(6)抗生物質無添加飼料、抗生物質添加飼料および豆乳グルト投与のそれぞれの豚の成長期(5~22週齢)の間の体重変化に差がないこと(図1)。
養殖用飼料としての豆乳絞り粕(オカラ)
オカラは豆乳製造工程における廃棄物であり、その65%は飼料用として流用され、特に豚の飼育・肥育には有用であることが知られている。また、オカラの乳酸発酵物として、例えば特許文献1には、湿潤状で腐敗しやすいオカラを長期間保存可能にするために乳酸菌で発酵させたオカラ飼料が開示されている。さらに、特許文献2にはオカラと小麦破砕物との配合物を乳酸発酵させた配合飼料が開示されている。ただし従来の発酵オカラは、動物の飼育・肥育のための飼料としての使用に限定されている。
[1] 耐性菌発生の問題などを生じさせることなく動物の疾病予防が可能となる。
[2] 動物の成長を促進させることができる。
[3] 良質な食肉生産を可能とする。
[4] 動物種(家畜、家禽、魚介類)の区別なく、簡便に摂取させることできる。
豆乳製造工程中の遠心分離によりオカラを分離し、40~50℃まで冷却した。豆乳およびオカラを含むスターターで培養したTUA4408L株(1×108~1×109 cfu/g)をオカラに対し10%(W/W)添加撹拌し、密閉容器内にて43℃で12時間発酵した。豚へ給与するまで冷蔵にて1~3週間保管した。製造後の発酵オカラのpHは4.4、乳酸酸度は0.7%、乳酸菌数は3.2×108 cfu/g、一般生菌数は76 cfu/gであった。また、5週齢時から17週齢時における給与オカラの前記測定値は表1、表2に示したとおりであった。
豚LWD系統去勢雄15頭を、表3に示した3群に分けた。添加物である発酵オカラ、豆乳グルトは、1頭当たり3g/体重kgで体重増加に伴いステップワイズで5週齢から17週齢時まで毎日給与し、以下の項目について評価した。
・24週齢時まで毎日一回、疾病の確認、体重測定、糞便採取、採血を行った。
・糞便中毒素原生大腸菌K99をウエスタンブロッティング法で検出し、T-RFLP法により糞便腸内細菌叢を解析した。
・全血で末梢血顆粒球数/リンパ球数比を評価し、分離した血漿中のTG(中性脂肪)、CRP(C反応性タンパク質)、IgE各濃度を測定した。
・24週齢時に屠殺解剖して枝肉評価を行い、大腸部から抽出した総RNAを用いて各種サイトカイン遺伝子発現量を測定した。併せて、肉質生化学分析を行った。
各群の豚の疾病状態は表3に示したとおりである。抗菌剤添加飼料のみを給与された豚(試験3区)は多種の疾病に罹患した。また豆乳グルトを添加した抗菌剤無添加飼料を給与された豚(試験2区)は、初期に軽度の下痢症状が観察されたが、深刻な疾病は生じなかった。これに対して、本発明の飼料添加物(発酵オカラ)を添加した抗菌剤無添加飼料を給与された豚(試験1区)には、いかなる疾病も観察されなかった。
図2は、表3の試験1区(抗菌剤無添加飼料+発酵オカラ)と試験3区(抗菌剤添加飼料)の豚の体重の推移である。試験1区の豚は有意に体重が増加した(p<0.05)。この結果は、前述の図1に示した従来の結果とは明らかに異なり、発酵オカラが抗菌剤や豆乳グルトにはない成長促進効果を有することが確認された。
図3は、5週齢から10週齢時に下痢が確認された累積日数を示す。発酵オカラを添加した飼料を給与された豚における下痢発症が顕著に少ないことが確認された。
図4は、8週齢時における糞便中毒素原生大腸菌K99の感染をウエスタンブロットで検出した結果である。発酵オカラを添加した飼料を給与された豚におけるK99検出数が有意に少ないことが確認された(p<0.05)。
図5は、5週齢時および17週齢時における各種腸内細菌をT-RFLP法で解析した結果である。5週齢時に比べ17週齢ではLactobacillusやLactococcusといった有用腸内細菌が増加しており、発酵オカラの給与は豚の腸内環境に好影響を与えることが確認された。
図6は、各試験区の豚の大腸(結腸)の写真像である。試験1区(発酵オカラ添加)の豚の大腸はヒダが豊富で輪郭が鮮明あり、腫のない健康な大腸組織であることが確認された。
図7は、各種サイトカイン遺伝子発現の発現量である。発酵オカラを添加した飼料を給与された豚では、炎症性サイトカインIL-6およびIL-8の発現量が有意に減少した(p<0.05)。
図8は、各試験区の豚から採取した末梢血を用いて免疫性(血顆粒球数/リンパ球数比、血漿中IgE)と健康性(CRPおよびTG)を評価した結果である。発酵オカラを添加した飼料を給与された豚は給与期間の増加に伴って各指標が有意に減少したことから(p<0.05)、免疫性および健康性を高める効果を有することが確認された。
表4は、各試験区の豚の背脂肪に含まれる脂肪酸量を解析した結果である。発酵オカラを添加した飼料を給与された豚では、他の試験区に比べて不飽和脂肪酸(オレイン酸)が増加していることが確認され、高品質な肉産生が可能であることが確認された。
図9は各試験区の豚のロース芯部断面の写真像である。図中に示したとおり、発酵オカラを添加した飼料を給与された豚からは良質な肉が産生された。また図10は、各試験区の豚の枝肉の質(格付)を評価した結果である。各試験区の豚の枝肉重量には差はなかったが、発酵オカラを添加した飼料を給与された豚からは格付け「上」の枝肉の割合が顕著に増加することが確認された。
Claims (4)
- 乳酸菌ラクトバシルス・デルブリュッキ・サブスピーシーズ・デルブリュッキ(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)TUA4408L株を用いて発酵させた豆乳絞り粕(オカラ)を主成分とする、養殖用飼料の添加物。
- 乾燥体である請求項1の添加物。
- 動物の体重1kg当たり1g~10gとなるように養殖用飼料へ添加されるように用いられる、請求項1または2の添加物。
- 請求項1、2または3に記載の添加物を配合した養殖用飼料。
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