特許法第30条第2項適用 平成31年4月1日に一般社団法人日本鉄道車両機械技術協会発行の「Rollingstock & Machinery,2019,第4号,39-42頁」にて発表
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、列車又は車列の前端と後端とで情報の遣り取りができるホームドアシステム等を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためのホームドアシステムは、複数のホーム側ドアを有するホームドア装置と、ホーム側ドアの動作に付随する制御信号を伝送する制御線とを備え、制御線は、車両の第1端と第2端とに対して通信可能な固定通信部を介して、第1端と第2端との間で運転関連情報を受け渡す。
上記ホームドアシステムでは、制御線が車両の第1端と第2端とに対して通信可能な固定通信部を介して車両の第1端と第2端との間で運転関連情報を受け渡すので、車両に第1端と第2端とを連絡する通信装置を追加することなく第1及び第2端間で通信が可能になり、例えば鉄道列車の2マン運転に際して運転手と車掌との連携を容易にでき、或は、折り返し運転に際して条件入れ替えのための情報の遣り取りが容易になる。
本発明の具体的な側面では、定位置に停車した列車の第1端に対応する箇所と第2端に対応する箇所とにおいて、固定通信部として狭域用長波誘導式無線通信機を有する。この場合、安価で正確な通信機を利用して、列車の第1端とホームドア装置との通信や、列車の第2端とホームドア装置との通信が可能になる。
本発明の別の側面では、制御線を介してホームドア装置の所定箇所に制御信号を送信するホーム側ドア制御部をさらに備える。この場合、ホーム側ドア制御部の制御下でホームドア装置の開閉動作が可能になるだけでなく、列車の第1及び第2端間での運転関連情報の送受信を可能にする。
本発明のさらに別の側面では、列車の定位置停止を検出する定位置停止検出装置をさらに備える。この場合、検出結果である定位置停止は、列車の第1端及び第2端、つまり運転手及び車掌に伝えられる。
本発明のさらに別の側面では、運転関連情報は、定位置停止、ドア開閉状態、ドア操作、力行操作、故障情報、及び連携関連情報のうち1つ以上を含む。これらの情報の遣り取りによって、ホーム到着に伴う停車や折り返し運転を含む発車をスムーズに行うことができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る交通システムは、上述したホームドアシステムと、列車の第1端及び第2端に設けられた移動通信部とを備える。
上記交通システムでは、運転関連情報の受け渡しによって、列車と地上側と又は車列の第1端と第2端との連携(例えば運転手と車掌との連携)を容易にできる。
本発明の具体的な側面では、列車の第1端と第2端とに設置される走行制御部をさらに備え、第2端に配置された走行制御部は、車掌用として動作する場合、開扉要求信号をホームドアシステムに送信し、ホーム側ドアについて開扉応答信号を受け取った場合に、車両側ドアの駆動装置に開扉指令信号を送信する。この場合、ホームドアを開扉した後に車両側ドアを開扉することができ、ドアの操作が確実となり、運転手や車掌が状況を確認することが容易になる。
本発明の別の側面では、第2端に配置された走行制御部は、車掌用として動作する場合、車両側ドアの駆動装置に閉扉指令信号を送信して車両側ドアについて閉扉を確認した場合に、閉扉要求信号をホームドアシステムに送信する。この場合、車両側ドアを閉扉した後にホーム側ドアを閉扉することができ、ドアの操作が確実となり、運転手や車掌が状況を確認することが容易になる。
以下に、本発明に係るホームドアシステム及び交通システムの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、駅構内の特定のホーム10とそのホーム10に入線した列車20とを模式的に示した平面図であり、併せて、そのホーム10に設置されるホームドア装置40を示している。実施形態のホームドアシステム100は、ホームドア装置40を含んで列車20と連携するシステムである。実施形態の交通システム200は、ホームドアシステム100を含んでホームドア装置40及び列車20を統括的に動作させる。
特定のホーム10に入線した列車20は、ホーム10に沿って敷設された線路30上を図中A方向に進行し、最終的に停止した状態にある。ホーム10上には、その縁10aに沿ってホームドア装置40が設置されている。
ホームドア装置40は、可動式ホーム柵とも呼ばれ、列車20やホーム10の全長に対応する所定台数のホームドア要素41によって構成されている。これらのホームドア要素41は、列車20に面して一列に並べられている。各ホームドア要素41は、ホーム10の床に固定されたドア筐体部41aと、当該ドア筐体部41a内に収容され出し入れ自在に設けられた開閉自在なホーム側ドア41bとからなっている。全体としてのホームドア装置40は、複数のホーム側ドア41bを有するものとなっている。図1の例では、各ホームドア要素41において、ホーム側ドア41bがドア筐体部41aの端部開口部から出て当該ホーム側ドア41bが乗降通路を閉じた状態にあり、これにより全体としてホーム10の縁10aに沿って延びる一連のホーム柵が形成されている。
複数台のホームドア要素41の各々のドア筐体部41aの内部には、ホーム側ドア41bの収容部(戸袋構造部)、ホーム側ドア41bの進出及び後退動作(開閉動作)を行うドア駆動部、ホーム側ドア41bの移動動作を検出するドア検出部、ドア駆動部の動作を制御する制御基板等が内蔵されている。複数台のホームドア要素41の各々の開閉動作は、同時に行われ、かつ、後に詳述するように、ホーム10に停車した列車20を構成する各車両20tの車両側ドア20aの開閉動作と連動するようにして行われる。
ホームドアシステム100は、ホームドア装置40のほかに、ホームドア装置40を構成するホームドア要素41間を連絡するケーブル45を備える。ケーブル45は、ホームドア要素41の同期した開閉動作を可能にするものであり、制御線45aのほか、電力線等を含んでいる。ここで、制御線45aは、各ホームドア要素41に設けたホーム側ドア41bの動作に関連する制御信号SCを伝送する。制御線45aは、相互通信を可能にする回線であり、例えばデジタル多重通信を可能にする通信ネットワークによって構成されるものとすることができるが、上位の装置と下位の装置との間を直接又はリレー接点を介して接続する通信回線であってもよい。
ホームドア装置40は、複数のホームドア要素41のうち、先頭側のホームドア要素41Aの端部筐体42中において、第1ホームドア側制御装置50を有する。第1ホームドア側制御装置50は、ホームドア装置40を構成する全ホームドア要素41の動作を管理するものであり、ホームドア装置40の動作に関連する各種制御を行うホーム側ドア制御部としての主装置51と、主装置51に接続され狭い領域でのみ通信可能な第1固定通信部52とを有する。第1固定通信部52は、地上伝送装置であり、詳細は後述するが、定位置にある列車20の第1端E1に設けた第1車両側制御装置21に対して通信可能となっている。ホームドア装置40は、複数のホームドア要素41のうち、最後尾側のホームドア要素41Bの端部筐体43中において、狭い領域でのみ通信可能な第2固定通信部152を有する。第2固定通信部152は、地上伝送装置であり、詳細は後述するが、定位置にある列車20の第2端E2に設けた第2車両側制御装置22に対して通信可能となっている。先頭側のホームドア要素41Aと、最後尾側のホームドア要素41Bとは、制御線45aを介して通信可能になっている。第1ホームドア側制御装置50は、有線又は無線のネットワークを介して管理サーバ300に接続されており、ホームドア装置40の動作に関連する情報を管理サーバ300から受信するとともに、ホームドア装置40の状態等に関する情報を管理サーバ300に送信する。
ホームドア装置40の左端すなわち先頭側にある端部筐体42において、その線路側側壁面42wには、2つの列車定位置検知部61,62が設けられている。2つの列車定位置検知部61,62は、列車20の進行方向(A方向)に所定距離だけ位置をずらした場所に配置されている。2つの列車定位置検知部61,62の間に設定された所定距離の範囲は、列車20が停止した時に、最終的に列車20の先端部が到達する適正位置又は定位置の範囲を示している。列車20の先頭車両の先端部が、2つの列車定位置検知部61,62の間の所定距離範囲内の定位置領域に到達するように、列車20の停止制御が行われる。
列車定位置検知部61,62は例えば発光素子であり、対向する正面箇所にはそれぞれ反射板161,162が設置されている。2つの列車定位置検知部61,62の各々において、出射した光L1,L2について、対応する反射板161,162からの反射光を受ける場合には列車20が検知されない状態を意味し、反射光を受けない場合には列車20が検知された状態を意味する。
列車20は、通常複数の車両20tを含み、先頭車両の前端(つまり第1端E1)には、前運転台20fが設けられ、最後尾車両の後端(つまり第2端E2)には、後運転台20rが設けられている。列車20の第1端E1又は前運転台20fは、第1車両側制御装置21を含み、列車20の第2端E2又は後運転台20rは、第2車両側制御装置22を含む。第1車両側制御装置21は、列車20の走行に関連する各種制御を行う走行制御部である車両側主装置79と、車両側主装置79に接続され狭い領域でのみ通信可能な2つの移動通信部71,72とを有する。第2車両側制御装置22は、列車20の走行に関連する各種制御を行う車両側主装置179と、車両側主装置179に接続され狭い領域でのみ通信可能な2つの移動通信部171,172とを有する。
第1車両側制御装置21において、近距離無線通信器74を構成する2つの移動通信部71,72のうち入線したホーム10側の第1移動通信部71は、車上伝送装置であり、ホームドア装置40の先頭側のホームドア要素41Aの第1固定通信部52と通信可能な状態となっている。ただし、左右に関する反対側つまり非到着ホーム側の第2移動通信部72は、車上伝送装置であるが、先頭側のホームドア要素41Aの第1固定通信部52から所定距離以上離れて配置され、第1固定通信部52に対して通信不能な状態となっている。第2車両側制御装置22を構成する移動通信部171,172のうち入線したホーム10側の第1移動通信部171は、ホームドア装置40の最後尾のホームドア要素41Bの第2固定通信部152と通信可能な状態となっている。ただし、左右に関する反対側つまり非到着ホーム側の第2移動通信部172は、最後尾側のホームドア要素41Aの第2固定通信部152から所定距離以上離れて配置され、第2固定通信部152に対して通信不能な状態となっている。
図2(A)及び図2(B)を参照して、先頭側のホームドア要素41Aに組み込まれた第1ホームドア側制御装置50について説明する。
第1ホームドア側制御装置50は、主装置51と近距離無線通信器54と車両定位置検知装置56とを有する。主装置(ホーム側ドア制御部)51は、既定の制御プログラムを実行するコンピュータであり、図1に示す管理サーバ300の管理下で動作し、ホームドア装置40全体の統括的な動作を可能にする。ホームドア要素41Aは、他のホームドア要素41と同様にホーム側ドア41bの開閉機構を有し、主装置51は、ホーム側ドア41bの開閉動作を行わせる制御基板51bを有する。近距離無線通信器54は、アンテナ52aと通信回路52bと制御部54cとを有し、これらのうち、アンテナ52aと通信回路52bとによって、第1固定通信部52が構成される。第1固定通信部52は、狭域用長波誘導式無線通信機である。アンテナ52aは、狭域用長波誘導式無線アンテナであり、通信回路52bに接続されている。制御部54cは、アンテナ52aを介して狭域用長波誘導式無線の電波による送受信を行うために、通信回路52b対して送受信動作に係る信号又は指令の送受を行う。以上において、狭域用長波誘導式無線は、距離減衰の大きな周波数帯の誘導無線(狭域用無線通信)であり、狭い領域でのみ通信可能なように設定している。アンテナ52aは、図示の状態ではドア筐体部41a内に収納されているが、これに限らず、ドア筐体部41a外に延びていてもよい。
車両定位置検知装置56は、前述した2つの列車定位置検知部61,62が出力する検知信号を入力し2つの当該検知信号の組合せに基づいてホーム10に入線した列車20の停止位置の結果を判別する。車両定位置検知装置56と列車定位置検知部61,62とを合わせて、列車20の定位置停止を検出する定位置停止検出装置156と呼ぶ。車両定位置検知装置56は、定位置停止の判別信号を主装置51に与える。主装置51は、車両定位置検知装置56又は定位置停止検出装置156から与えられる定位置停止の判別信号を、第1固定通信部52を介して列車20の第1車両側制御装置21に設けた第1移動通信部71に送信する。なお、列車20の先頭車両の先端部が2つの列車定位置検知部61,62の間の定位置及びその近傍にある場合、到着ホーム側の第1固定通信部52と、到着ホーム側の第1移動通信部71との間で通信可能な状態となる。
列車20側の近距離無線通信器74は、進行方向に向かって車体右側(紙面上左側)つまり到着ホーム側に設置される第1移動通信部71と、進行方向に向かって車体左側(紙面上右側)つまり非到着ホーム側に設置される第2移動通信部72と、車上伝送制御ユニット78とを備える。到着ホーム側の第1移動通信部71は、アンテナ71aと通信回路71bとを有する。アンテナ71aは、狭域用長波誘導式無線アンテナであり、通信回路71bに接続されている。非到着ホーム側の第2移動通信部72も、第1移動通信部71と同様の構造を有し、狭域用長波誘導式無線用のアンテナ72aと、これに接続される通信回路72bとを有する。車上伝送制御ユニット78は、制御部78cと通信インターフェース部78aとを有する。制御部78cは、第1及び第2移動通信部71,72のそれぞれと接続され、これらの要素と信号(指令、データ)の送受を行う。制御部78cは、通信インターフェース部78aを介して、列車20に元々装備されていた車両側主装置79と接続されている。この車両側主装置79は、新たに設けられた移動通信部71,72との間で通信可能に接続されることになる。制御部78cは、第1移動通信部71のアンテナ71a又は第2移動通信部72のアンテナ72aを介して狭域用長波誘導式無線の電波による送受信を行うために、通信回路71b,72bに対して送受信動作に係る信号又は指令の送受を行う。
車両側主装置79は、列車20の各部の動作を統括に制御するものであり、加速用の駆動装置、減速用のブレーキ装置等を遠隔的に動作させる。図示の状態(入線する状態)では、車両側主装置79は、運転士用として動作する。なお、列車20が逆方向に発車する場合、車両側主装置79は、車掌用として機能する。車両側主装置79には、通信部79aと操作インターフェース79bとが付随して設けられている。通信部79aは、不図示の列車運行管理システム又は指令所との間で通信を可能にし、操作インターフェース79bは、力行ハンドル、ブレーキハンドル、計器類、表示器、モニタ画面、無線通話器等で構成される。車両側主装置79には、車両側ドア20aの駆動装置であるドア開閉装置77が通信可能に接続されている。ドア開閉装置(駆動装置)77には、ドアスイッチ77a,77bが付属している。進行方向右側に設置されて操作が許容された状態のドアスイッチ77aに対して車掌が開扉操作を行うことにより、進行方向右側に設置された多数の車両側ドア20aを一括して開放することができ、操作が許容された状態のドアスイッチ77aに対して車掌が閉扉操作を行うことにより、進行方向右側に設置された多数の車両側ドア20aを一括して閉止することができる。同様に、図示の状態に対応しないが進行方向左側に設置されて操作が許容された状態のドアスイッチ77bに対して車掌が開扉操作を行うことにより、進行方向左側に設置された多数の車両側ドア20aを一括して開放することができ、操作が許容された状態のドアスイッチ77bに対して車掌が閉扉操作を行うことにより、進行方向左側に設置された多数の車両側ドア20aを一括して閉止することができる。
図3を参照して、最後尾側のホームドア要素41Bに組み込まれる第2ホームドア側制御装置150について説明する。第2ホームドア側制御装置150は、ホーム側ドア41bの開閉動作を行わせる制御基板51bの他に、近距離無線通信器54を有する。近距離無線通信器54は、先頭側のホームドア要素41Aの場合と同様に、アンテナ52aと通信回路52bと制御部54cとを有し、これらのうち、アンテナ52aと通信回路52bとによって、第2固定通信部152が構成される。最後尾側のホームドア要素41Bの第2固定通信部152は、制御基板51bと図2(A)等に示す制御線45aとによって、先頭側のホームドア要素41Aの第1ホームドア側制御装置50と電気的に連結されている。なお、最後尾側のホームドア要素41Bと先頭側のホームドア要素41Aとは機能が入れ替わってもよく、この場合、ホームドア装置40のうち列車20の最後尾側に対応する部分に第1ホームドア側制御装置50又は主装置51が設置されることになる。ホームドア装置40の動作を統括的に制御する主装置51は、固定通信部52,152を設置する先頭や最後尾に限らず、ホームドア装置40の任意の箇所に配置することができる。
図1を参照して、主装置51は、列車20が適正位置に止まっている場合、先頭側の第1固定通信部52及び第1移動通信部71を介して前運転台20fの車両側主装置79との間でデータ通信等が可能であるだけでなく、最後尾側の第2固定通信部152及び第1移動通信部171を介して後運転台20rの車両側主装置179との間でデータ通信等が可能である。これにより、列車20の第1端E1に設けた第1車両側制御装置21と、列車20の第2端E2に設けた第2車両側制御装置22との間で、列車20やホームドア装置40の動作に関する指令、列車20やホームドア装置40の状態に関する監視情報等を含む運転関連情報を受け渡すことができる。具体的には、前運転台20fにある車両側主装置79又はこれを操作する運転手の指示又は指令によって、ホームドア装置40を動作させることができ、かつ、前運転台20fにある車両側主装置79又は運転手は、後運転台20rにある車両側主装置179又は車掌との間で制御関連信号を含む各種情報のやりとりが可能になる。同様に、後運転台20rにある車両側主装置179又は車掌の指示によって、ホームドア装置40を動作させることができ、かつ、後運転台20rにある車両側主装置179又は車掌は、前運転台20fにある車両側主装置79又は運転手との間で制御関連信号を含む各種情報のやりとりが可能になる。例えば車掌がホームドア装置40に開閉動作を行わせることができ、運転手がホームドア装置40の開閉状態をチェックすることができる。
説明を省略するが、最後尾側のホームドア要素41Bに隣接する第2車両側制御装置22は、先頭側のホームドア要素41Aに隣接する第1車両側制御装置21と同一の機能を実行することができるが、図1及び3に示す状態(入線する状態)では、運転用のキーが指し込まれておらず車掌用として機能する。
図2(A)等において、線路30を挟んでホームドア装置40の反対側にあるホームドア装置140については説明を省略した。ホームドア装置140は、ホームドア装置40と同様の構造を有する。ただし、図示のホームドア装置140は、列車20の入線に対応する到着ホームに設置されるものではなく、時刻表等に基づいて、予め列車20との間で通信を行わないように設定されている。
図4は、ドアスイッチ77a,77bを例示する概念図である。この場合、ドアスイッチ77a,77bは、ボタン操作部77iとドア状態表示部77jとを有する。ボタン操作部77iには、開ボタンB1と閉ボタンB2とが設けられ、ドア状態表示部77jには、ホームドアインジケータF1,F2と、車両ドアインジケータT1,T2とが設けられている。
許容されたタイミングで車掌が開ボタンB1を押すと、ホーム側ドア41bの開放が始まってホームドアインジケータF1が点滅し、ホーム側ドア41bの開放が完了した段階で、ホームドアインジケータF1が点灯状態となる。この際、ホームドアインジケータF2は、点灯状態から消灯状態に変化する。次いで、車両側ドア20aの開放が始まって車両ドアインジケータT1が点滅し、車両側ドア20aの開放が完了した段階で、車両ドアインジケータT1が点灯状態となる。この際、車両ドアインジケータT2は、点灯状態から消灯状態に変化する。
許容されたタイミングで車掌が閉ボタンB2を押すと、車両側ドア20aの閉止が始まって車両ドアインジケータT2が点滅し、車両側ドア20aの閉止が完了した段階で、車両ドアインジケータT2が点灯状態となる。この際、車両ドアインジケータT1は、点灯状態から消灯状態に変化する。次いで、ホーム側ドア41bの閉止が始まってホームドアインジケータF2が点滅し、ホーム側ドア41bの閉止が完了した段階で、ホームドアインジケータF2が点灯状態となる。この際、ホームドアインジケータF1は、点灯状態から消灯状態に変化する。
以上は、一表示例であり、ドアスイッチ77a,77bに付随するインジケータの表示パターンや表示状態の変化は様々な態様に変更することができる。
以下、図5を参照して、ホーム10に入線した列車20がホーム側ドア41b及び車両側ドア20aを開放又は開扉するまでについて説明する。最初の段階で、図1等に示すように列車20がホーム10の1つの番線に入線し、予め定められた適切な位置(定位置)に向けて減速する。この段階で、列車20の各車両側ドア20aと、ホームドア装置40のホーム側ドア41bとは閉じた状態にある。ホームドア装置40において、定位置停止検出装置156は、近づいて来る列車20に対して定位置停止を検出している。ホームドア装置40の主装置51は、列車20の定位置停止前から、第1固定通信部52を利用して列車20の第1移動通信部71との間で通信を確立し開始できるか否かを確認しており、通信を開始した場合、定位置停止検出装置156による判定結果を列車20の車両側主装置79,179に送信する(ステップS11)。この際、ホームドア装置40の主装置51と、列車20の前端側の車両側主装置79とは、入線したホームの番号、列車のID、開放する車両側ドア20aが左右いずれかといった入線情報を交換する。列車20の後端側の車両側主装置179は、列車20の定位置停止を示す信号を受け取った場合(ステップS12でYes)、列車20の完全停止を条件として、通信を確立した第1移動通信部71に対応する側のドアスイッチ77aの開扉ボタンの操作を確認する(ステップS13)。列車20の後端側の車両側主装置179は、車掌によってドアスイッチ77aが操作された結果としてドアスイッチ77aの開扉ボタンが押されたと判断した場合(ステップS13でYes)、列車20の前端側の車両側主装置79に対して、ホームドア装置40の制御線45a等を介して開扉ボタンの操作(つまりドア操作)に対応する開扉要求の発生を送信する(ステップS14)。運転士は、操作インターフェース79b又はドア開閉装置77に付随するインジケータによって開扉要求又はドア操作の発生を確認することができる。これと並行して、列車20の後端側の車両側主装置179は、列車20の完全停止を条件としてホームドア装置40の主装置51に対して、開扉要求信号を送信する(ステップS15)。列車20の後端側の車両側主装置179は、ホームドア装置40の主装置51から車両側ドア20aの開扉応答信号である開扉完了信号を受け付けており、ドア状態として開扉完了信号(開扉応答信号)を受け取った場合(ステップS16でYes)、列車20の前端側の車両側主装置79にその結果を転送し、ホーム側ドア41bの開扉完了に関する情報(ドア状態情報)を共有する(ステップS17)。なお、列車20の前端側の車両側主装置79は、ホームドア装置40の主装置51からホーム側ドア41bの開扉完了信号を直接受け取ることもできる。その後、列車20の後端側の車両側主装置179は、ドア開閉装置77に開扉指令信号を出力して、車両側ドア20aの開放を開始する(ステップS18)。列車20の後端側の車両側主装置179は、ドア開閉装置77から車両側ドア20aの開扉完了信号を受け取った場合(ステップS19でYes)、列車20の前端側の車両側主装置79にその結果を転送し、車両側ドア20aの開扉完了に関する情報(ドア状態情報)を共有する(ステップS20)。
以下、図6を参照して、ホーム10に入線した列車20がホーム側ドア41b及び車両側ドア20aを閉止又は閉扉して発車するまでについて説明する。この場合、列車20の進行方向は停止前と同じものとする。最初の状態で、図1等に示すように列車20がホーム10の1つの番線に在線しており、定位置で停止している。この状態で、列車20の各車両側ドア20aと、ホームドア装置40のホーム側ドア41bとは開いた状態にある。ホームドア装置40の主装置51は、列車20の発車時刻が近づいた場合、第1固定通信部52を利用して列車20の前端側つまり第1端E1に設けた第1移動通信部71との間で通信を開始する(ステップS21)。列車20の後端側つまり第2端E2に設けた車両側主装置179は、通信を確立した第1移動通信部71,171に対応する側のドアスイッチ77aの閉扉ボタンの操作を確認する(ステップS22)。列車20の後端側の車両側主装置179は、車掌によってドアスイッチ77aが操作された結果としてドアスイッチ77aの閉扉ボタンが押されたと判断した場合(ステップS22でYes)、列車20の前端側の車両側主装置79に対して、ホームドア装置40の制御線45a等を介して閉扉ボタンの操作に対応する閉扉要求の発生を送信する(ステップS23)。運転士は、操作インターフェース79b又はドア開閉装置77に付随するインジケータによって閉扉要求の発生を確認することができる。その後、列車20の後端側の車両側主装置179は、ドア開閉装置77に閉扉指令信号を出力して、車両側ドア20aの閉止を開始する(ステップS24)。列車20の後端側の車両側主装置179は、ドア開閉装置77から車両側ドア20aの閉扉完了信号を受け取った場合(ステップS25でYes)、ホームドア装置40の主装置51や列車20の前端側の車両側主装置79にその結果を転送し、車両側ドア20aの開扉完了に関する情報を共有する(ステップS26)。その後、列車20の後端側の車両側主装置179は、ホームドア装置40の主装置51に対して、閉扉要求信号を送信する(ステップS27)。列車20の後端側の車両側主装置179は、ホームドア装置40の主装置51から車両側ドア20aの閉扉完了信号を受け付けており、閉扉応答信号である閉扉完了信号を受け取った場合(ステップS28でYes)、列車20の前端側の車両側主装置79にその結果を転送し、ホーム側ドア41bの閉扉完了に関する情報を共有する(ステップS29)。なお、列車20の前端側の車両側主装置79は、ホームドア装置40の主装置51からホーム側ドア41bの閉扉完了信号を直接受け取ることもできる。ステップS29の後、列車20の前端側の車両側主装置79は、運転士による操作インターフェース79bの操作をチェックしており、その結果を列車20の後端側の車両側主装置179に送信する。つまり、運転席の操作情報が車掌側に通知される(ステップS30)。具体的には、運転士による力行ハンドルの操作(つまり発車を示す力行操作)があった場合、列車20の前端側の車両側主装置79は、この力行操作に関する操作情報を、列車20の後端側の車両側主装置179に送信する。この場合、車両側主装置179又はドア開閉装置77の動作がロックされ、車両側ドア20aの開閉は不能となり、制御基板51bの制御下でホーム側ドア41bの開閉も不能となる。以上の説明では、列車20の進行方向が停止の前後で同じであるとしたが、停止の前後で進行方向が逆転する折り返し運転を行ってもよい。この場合、上記説明において、第1端E1の動作と第2端E2の動作とを入れ替える。この際、前後の車両側主装置79,179間で、ホームドア装置40又は制御線45aを介して条件入れ替えを含めた運行関連情報の交換が可能になる。
図7は、変形例のホームドアシステムを説明する図であり、図2(A)の一部を変更したものとなっている。この場合、近距離無線通信器74又は移動通信部71,72がドア開閉装置77に直接接続されている。ドア開閉装置77は、開扉要求信号、閉扉指令信号等を、第1移動通信部71や第1固定通信部52を介して第1ホームドア側制御装置50に送信し、開扉完了信号、閉扉完了信号等を、第1移動通信部71や第1固定通信部52介して第1ホームドア側制御装置50から受け取る。この場合、車両側主装置79,179に機能を追加する必要がなくなり、既存の列車20を改造する手間をより省くことができる。
以上で説明した実施形態のホームドアシステム100又は交通システム200では、制御線45aが列車20の第1端E1と第2端E2とに対して通信可能な固定通信部52,152を介して、列車20の第1端E1と第2端E2との間で運転関連情報を受け渡すので、車両20tに第1端と第2端とを連絡する通信装置を追加することなく第1及び第2端間で通信が可能になり、例えば鉄道列車の2マン運転に際して運転手と車掌との連携を容易にでき、或は、折り返し運転に際して条件入れ替えのための情報の遣り取りが容易になる。
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
例えば、運転関連情報には、故障情報を含めることができる。この場合、故障情報をホームドア装置40、第1車両側制御装置21、第2車両側制御装置22間で共有することができ、車両側ドア20a、ホーム側ドア41b、及びこれらの駆動機構が故障した場合に、連動を解除して、手動操作を行うことができる。
運転関連情報には、車両編成等の情報を含めることができる。この場合、車両数や車両側ドアの配置数に合わせてホーム側ドア41bの開閉を行うことができる。
運転関連情報には、連携関連情報を含めることができる。例えば列車20が切り離し部分からなる編成である場合、その切り離し部分に車掌を配置して、切り離し部分の前後でドア開閉のパターンを変更する場合がある。この場合、列車の第1端と第2端とは、切り離しの前後の列車を単位として判断することになる。
以上では、列車20が複数両の編成であるとしたが、列車20が単一車両であってもよく、この場合、単一車両の前端と後端とにおいて、第1車両側制御装置21と第2車両側制御装置22とを設ける。また、列車20の一端や他端とは、厳密な端部に限らず、列車20又は車両20tにおいて中央寄りの箇所を含む。
以上では、固定通信部52と移動通信部71,72の一方との間で狭域用長波誘導式無線を用いているが、狭域用長波誘導式無線に代えて、例えばRFID(タグ)の通信方式を含む様々な近距離通信方式を用いることができる。
ホームドアシステム100又は交通システム200は、鉄道に限らず、バス等の交通機関の停車場に適用することができる。この場合、停車場にホームドア装置を設け、先頭発着場と適宜後方の発着場とにそれぞれ固定通信部を設け、かつ、車両に移動通信部を設ければ、車両間でホームドアの開閉状態や停車場の状況について情報を共有することができる。
列車定位置検知部61,62は、例えば距離画像を計測するようなセンサに置き換えることができるが、光を用いるものに限らず、様々な原理で動作するセンサを用いることができる。
制御線45aは、有線のケーブル等に限らず、無線の回線を間に挟んだものであってもよい。