以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.第1の実施の形態]
[1-1.バルブ状態検出システムの構成]
図1に示すように、第1の実施の形態によるバルブ状態検出システム1は、発電所10に設けられており、主に光ファイバー2、温度測定装置3及び管理装置4により構成されている。このうち温度測定装置3及び管理装置4は、ネットワーク5を介して相互に接続されている。ネットワーク5は、例えばルータやハブのような種々のネットワーク機器(図示せず)によって構成されており、接続された機器の間で相互に情報を送受信することができる。
発電所10は、例えば火力発電所であり、その施設内に、冷却水等の液体や蒸気等の気体(以下、両者をまとめて流動体と呼ぶ)を輸送するための配管11が張り巡らされている。また発電所10には、配管11の随所に開閉可能なバルブ12が多数設けられると共に、各バルブ12の開閉を制御する開閉指示装置13が設けられている。
光ファイバー2は、例えば1[km]のような比較的長い全長を有しており、その一部が配管11に沿って敷設されている。また光ファイバー2は、各バルブ12の上流側及び下流側それぞれにおける当該バルブ12の近傍において、配管11の近傍を通るような経路に沿って配置されており、具体的には該配管の周囲に複数回巻き付けられている。この光ファイバー2の一端(以下これを接続端2Aと呼ぶ)は、温度測定装置3に接続されている。
光ファイバーセンサー装置としての温度測定装置3は、光ファイバー2に対し接続端2Aから所定周波数の散乱光を入射させ、該光ファイバー2から戻ってくる光を受光し、この光に基づいた電気信号を生成した上で、所定の信号処理や演算処理等を行う。これにより温度測定装置3は、光ファイバー2における接続端2Aからの距離ごとの温度を測定することができる(詳しくは後述する)。
管理装置4は、図2に模式的なブロック図を示すように、一般的なコンピュータ装置と同様に構成されており、その内部に制御部21、記憶部22、通信部23、表示部24及び操作部25を有している。制御部21は、例えば図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有している。制御部21は、CPUによりROMや記憶部22等から所定のプログラムを読み出し、RAMをワークエリアとして使用しながら実行することにより、種々の処理を実行する。
記憶部22は、例えばSSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブ等のような不揮発性の情報記憶媒体であり、種々の情報を記憶する。通信部23は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/ab/an/ae等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)、或いはIEEE802.11a/b/g/n/ac等の規格に準拠した無線LANのインタフェースであり、ネットワーク5との間で種々の情報を送受信する。
表示部24は、例えば液晶パネルであり、制御部21の制御に基づき、文字や図形、或いは画像等により、種々の情報を表示する。操作部25は、例えばキーボード及びタッチパッドであり、ユーザによる文字入力や位置指定等の操作を受け付けて制御部21に通知する。例えば管理装置4は、温度測定装置3から温度の測定結果に関する情報を取得し、これを基に発電所10の配管11やバルブ12における異常の発生に関する情報を表示部24に表示して、ユーザに通知する。
[1-2.温度測定装置の構成]
次に、温度測定装置3の構成について説明する。温度測定装置3は、図2に示したように、その内部に主制御部31、測定処理部32、表示操作部33、シャットダウンスイッチ34、電源部35、主電源スイッチ36、予備電源部37、光ファイバー接続端子38及び予備光ファイバー接続端子39等を有している。
主制御部31は、温度測定装置3を統括的に制御する部分であり、図3に模式的なブロック図を示すように、バス40を介して制御部41、記憶部42、通信部43及びUSB(Universal Serial Bus)インタフェース(I/F)44等が相互に接続された構成となっている。
制御部41は、上述した管理装置4の制御部21と同様、図示しないCPU、ROM及びRAM等を有しており、このCPUによりROMや記憶部42等から所定のプログラムを読み出し、RAMをワークエリアとして使用しながら実行することにより、種々の処理を実行する。
記憶部42は、例えばSSDやハードディスクドライブ等のような不揮発性の情報記憶媒体であり、種々の情報を記憶する。この記憶部42には、例えばバルブ12に関する情報や、配管11を流れる流動体の温度に関する情報等が記憶される。通信部43は、例えばIEEE802.3u/ab/an/ae等の規格に準拠した有線LANのインタフェースであり、ネットワーク5との間で種々の情報を送受信する。
USBインタフェース44は、USB規格に基づいたホスト側の接続インタフェースであり、複数のUSB接続端子を有している。各USB接続端子には、それぞれ種々のUSBデバイスを接続することができる。また各USB接続端子には、ハブ(USBハブとも呼ばれる)を介して、複数のUSBデバイスを接続することもできる。
このUSBインタフェース44は、USB接続端子にUSBデバイスが接続された状態で電源が投入されると、又は電源が投入された状態においてUSB接続端子にUSBデバイスが接続されると、当該USBデバイスとの間で所定の接続処理を行う。これによりUSBインタフェース44は、当該USBデバイスを認識し、当該USBデバイスとの間で相互にデータを送受信することができる。
測定処理部32(図2)は、光ファイバー接続端子38を介して光ファイバー2と接続されている。また測定処理部32は、複数のUSBデバイスの組み合わせとしての機能を有しており、複数のUSBケーブルUCを介して主制御部31と接続されている。この測定処理部32は、主制御部31の制御に基づき、光及び電気信号に関する種々の処理を行うことにより、温度の測定結果を表す測定データ取得し、この測定データを該主制御部31に供給する(詳しくは後述する)。
ここで、USBケーブルUCは、少なくとも電気信号が通る2本の線路(電線又は回路)で接続する平衡接続を実現するケーブルであるといえる。したがって、測定処理部32と主制御部31とは、耐ノイズ性能が考慮された平衡接続(USBケーブルUC)を介して接続されている。測定処理部32と主制御部31とは、平衡接続(USBケーブルUC)における1本目の線路で元の信号を送り、2本目の線路で位相を反転させた逆位相の信号を送るよう、差動信号(differential signaling)でやりとりする。
表示操作部33は、例えば液晶パネル等の表示デバイスと及びタッチセンサのような入力デバイスとが一体化されたタッチパネルであり、主制御部31に接続され、また温度測定装置3の正面に取り付けられている(図1)。この表示操作部33は、主制御部31の制御に基づき、所定の表示画面を表示すると共に、ユーザからの操作指示を受け付ける。
シャットダウンスイッチ34は、自動復帰型の押しボタンスイッチ(モーメンタリスイッチとも呼ばれる)であり、測定処理部32に接続され、温度測定装置3の正面に取り付けられている(図1)。このシャットダウンスイッチ34は、温度測定装置3の状態を、温度測定を行わないシャットダウン状態から温度測定を行う起動状態に遷移させる場合、及び起動状態からシャットダウン状態に遷移させる場合に、ユーザにより操作される(詳しくは後述する)。
電源部35(図2)は、主電源スイッチ36を介して商用電源30に接続されており、該商用電源30から供給される電力を基に、各部の動作に必要な電圧及び電流でなる電力に変換して供給する。また電源部35は、予備電源部37にも電力を供給する。主電源スイッチ36は、例えば温度測定装置3の背面に設けられており、「オン」に切り替えられると商用電源30から供給される電力を電源部35に供給し、「オフ」に切り替えられるとこの電力を遮断する。
予備電源部37は、充電式のバッテリーや所定の電源制御回路等を有しており、主電源スイッチ36の操作や商用電源30の停電等によって電源部35からの電力供給が遮断された場合に、予め設定された供給先に対して動作に必要な電力を予備電力として供給する。
光ファイバー接続端子38は、例えば温度測定装置3の正面に設けられており(図1)、内部で測定処理部32と接続されている。また予備光ファイバー接続端子39は、例えば温度測定装置3の背面に設けられており(図1)、内部で測定処理部32と接続されている。光ファイバー接続端子38及び予備光ファイバー接続端子39は、何れも光ファイバー2が接続されると、該光ファイバー2と測定処理部32とを光学的に接続する。
[1-3.測定処理部の構成]
次に、測定処理部32(図2)の構成について、温度測定装置3による温度測定の基本原理と共に説明する。温度測定装置3は、本願の出願人らにより非特許文献1及び特許文献2等に開示された原理を利用して、光ファイバー2を用いて温度を測定するようになっている。
温度測定装置3は、光ファイバーを用いて種々の物理量を測定する分布型光ファイバセンシングのうち、光ファイバーの一端から光パルスを入射し、光ファイバー中で後方散乱された光を時間に対して測定する時間領域リフレクトメトリ(OTDR:Optical Time Domain Reflectometry)を用いる。光ファイバー中の後方散乱には、レイリー散乱、ブリルアン散乱及びラマン散乱がある。このうち自然ブリルアン散乱を測定するものは、BOTDR(Brillouin OTDR)と呼ばれる。
ブリルアン散乱は、光ファイバーに入射される光パルスの中心周波数に対して、ストークス側及び反ストークス側にGHz程度のオーダーで周波数シフトした位置に観測される。このブリルアン散乱のスペクトルは、ブリルアン利得スペクトル(BGS:Brillouin Gain Spectrum)と呼ばれる。BGSの周波数シフト及びスペクトル線幅は、それぞれブリルアン周波数シフト(BFS:Brillouin Frequency Shift)及びブリルアン線幅と呼ばれる。BFS及びブリルアン線幅は、光ファイバーの材質および入射光波長によって異なる。このBFSは、歪みと温度に対して依存性を持っている。
さらに温度測定装置3は、光の周波数変化をコヒーレント検波により与えられるビート信号の位相差として測定することにより、時間及び位相の2次元の情報を取得する、自然ブリルアン散乱光を用いている。具体的には、自己遅延ヘテロダイン型のBOTDR(SDH-BOTDR:Self-Delayed Heterodyne BOTDR)の技術を用いて、光の周波数変化をコヒーレント検波により与えられるビート信号の位相差として測定することにより、時間及び位相の2次元の情報を取得する。このSDH-BOTDRでは、周波数掃引を必要としないため、3次元の情報を取得する場合と比較して、測定時間の短縮が可能となっている。
次に、測定処理部32の具体的な構成について説明する。測定処理部32は、図4に模式的なブロック図を示すように、大きく分けて、主に光の発光や受光に関する処理を行う光回路部51と、主に電気信号やデジタルデータに関する処理を行う電気回路部52とにより構成されている。
光回路部51は、シリアル変換回路61、発光回路62、サーキュレータ63、受光回路64及び光干渉計65により構成されている。シリアル変換回路61は、USBデバイスであり、USBケーブルUCを介して主制御部31のUSBインタフェース44(図3)と接続され、また発光回路62、受光回路64及び光干渉計65とそれぞれ接続されている。
このシリアル変換回路61は、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)等の機能を有しており、USB上のシリアル信号と、I2C(Inter-Integrated Circuit)やSPI(Serial Peripheral Interface)、或いはRS-232C等の種々の型式のシリアル信号とを相互に変換する。例えばシリアル変換回路61は、主に主制御部31から供給される種々の制御信号を各回路に供給する。
発光回路62は、連続光を生成する周波数安定化狭線幅光源や、この連続光から光パルスを生成する光パルス発生器、及び各種タイミングを制御するタイミング制御器(何れも図示せず)等を有している。このうち光パルス発生器は、周知の音響光学(AO:Acoustic Optical)変調器又は電気光学(EO:Electric Optical)変調器により構成される。光パルス発生器は、タイミング制御器で生成された電気パルスに応じて、連続光から光パルスを生成する。この光パルスの繰り返し周期は、光ファイバー2を光パルスが往復するのに要する時間よりも長く設定される。光パルス発生器は、この光パルスをプローブ光としてサーキュレータ63へ供給する。
発光回路62から出力されたプローブ光は、サーキュレータ63を経て、光ファイバー2の接続端2Aに入射され、該光ファイバー2の内部を進行し、また反射される。この光ファイバー2からの戻り光、具体的に後方散乱光は、サーキュレータ63を経て、受光回路64に供給される。
受光回路64は、この戻り光を光増幅器(図示せず)により増幅し、10[GHz]程度の透過帯域を有する光バンドパスフィルタ(図示せず)により自然ブリルアン散乱光のみを透過して、これを光干渉計65へ供給する。
光干渉計65は、自己遅延ヘテロダイン干渉計となっており、局発電気信号源、分岐部、光周波数シフタ部、遅延部、合波部及びコヒーレント検波部(何れも図示せず)等を有している。局発電気信号源は、周波数fAOM(例えば数十[MHz]程度)の電気信号を生成し、これを光周波数シフタ部及び電気回路部52へ供給する。
分岐部は、後方ブリルアン散乱光を、光周波数シフタ部及び遅延部に2分岐させる。光周波数シフタ部は、局発電気信号源から供給される周波数fAOMの電気信号を用い、一方の後方ブリルアン散乱光に周波数fAOMの周波数シフトを与えて合波部に送る。遅延部は、他方の後方ブリルアン散乱光に時間τの遅延を与えて合波部に送る。合波部は、2系統の後方ブリルアン散乱光を合波して合波光を生成し、これをコヒーレント検波部へ送る。
コヒーレント検波部は、図示しないバランス型フォトダイオード(PD)及びFET(Field Effect Transistor)増幅器等を有しており、合波光をヘテロダイン検波して電気信号を生成し、これを電気回路部52へ供給する。
電気回路部52は、ハブ(HUB)71、シリアル変換回路72及び73、ADC(Analog/Digital Converter)75、演算制御回路76、並びにUSBバッファ77により構成されている。
ハブ71は、USBホストである主制御部31(図2)とUSBケーブルUCを介して接続されると共に、複数のUSBデバイスであるシリアル変換回路72及び73と接続されている。このハブ71は、主制御部31に対してシリアル変換回路72及び73をそれぞれ接続させている。
シリアル変換回路72及び73は、光回路部51のシリアル変換回路61と類似した構成であり、何れもUSBデバイスとなっている。シリアル変換回路72は、主に主制御部31から供給される種々の制御信号をSPI等の信号形式に変換し、演算制御回路76に供給する。シリアル変換回路73は、主にUSB上のシリアル信号とI2CやRS-232C等の形式のシリアル信号とを相互に変換して、主制御部31と所定のDAC(Digital/Analog Converter)や温度センサ等(図示せず)との間で通信処理を行わせる。
ADC75は、光回路部51から供給されるアナログの電気信号に対してアナログ・デジタル変換処理を施すことにより、デジタル形式のデータに変換し、これを演算制御回路76に供給する。
演算制御回路76は、SRAM(Static Random Access Memory)型FPGA(Field-Programmable Gate Array)であり、所定の記憶部(コンフィグレーションROM)から読み出したプログラム(コンフィグレーションデータ)(ビットストリーム)に従ってレジスタ81、演算回路82、パルス発生器83及び外部制御回路84等の論理回路を構成(コンフィグレーション)する。演算制御回路76の論理回路の構成に用いられるプログラムを保持する記憶部は、電気回路部52が有する、図示しないROMやSSDやハードディスクドライブ等のような不揮発性の情報記憶媒体であってもよい。
このうちレジスタ81は、主制御部31からハブ71及びシリアル変換回路72を介して供給される種々の値を記憶する。演算回路82は、ADC75から供給されるデータに対し、レジスタに記憶している値に基づいた高速な論理演算処理を行い、得られた演算結果をシリアル型式に変換した上でUSBバッファ77へ供給する。
具体的に演算回路82は、その内部に周波数シフト量取得部及び信号強度取得部を形成する。周波数シフト量取得部は、光干渉計65のコヒーレント検波部から供給される電気信号と、受光回路64の局発電気信号源から供給される電気信号とをホモダイン検波してホモダイン信号を生成し、その高周波成分を除去することにより周波数シフト量を生成する。信号強度取得部は、2乗回路、LPF(Low Pass Filter)及び1/2乗回路等を有しており、光干渉計65のコヒーレント検波部から供給される電気信号に対して包絡線検波を行うことにより、該電気信号の強度である信号強度δPB/PBを生成する。その上で演算回路82は、周波数シフト量及び信号強度δPB/PBを、測定データとしてUSBバッファ77へ供給する。
USBバッファ77は、USBケーブルUCを介して主制御部31(図2)に接続されると共に、演算制御回路76にも接続されている。このUSBバッファ77は、演算制御回路76の演算回路82から供給される測定データをバッファリングした上で、主制御部31に供給する。
これに応じて主制御部31(図2及び図3)は、測定処理部32から測定データとして得られた周波数シフト量及び信号強度δPB/PBと、予め取得しておいた種々の係数とを用いて、次の(1)式に示す光ファイバー2中の歪みδε及び(2)式に示す温度変化δTを算出(すなわち導出)する。
ただし主制御部31は、(1)式及び(2)式に用いられる係数のうち、光ファイバー2中の後方ブリルアン散乱における周波数シフトの歪み依存係数Cνε、温度依存係数CνT、及び後方ブリルアン散乱における散乱係数の歪み依存係数CPε及び温度依存係数CPTを予め取得している。
この(2)式を基に、温度変化δTと接続端からの距離との関係をグラフ化すると、例えば図5のように表すことができる。すなわち温度測定装置3は、得られた信号を基に、光ファイバー2における接続端からの距離ごとの温度変化δTを得ることができる。
パルス発生器83(図4)は、所定周波数のパルス信号を複数生成し、これらを光回路部51の発光回路62や光干渉計65等へ供給する。外部制御回路84は、例えば温度測定装置3内に設けられているファンから回転速度を表す信号を取得し、この信号を基に当該ファンの回転速度を調整するための信号を生成して供給することにより、当該ファンの回転速度を制御する。また外部制御回路84は、シャットダウンスイッチ34(図2)と接続されており、該シャットダウンスイッチ34が押下操作されると、このことを表す信号を主制御部31(図2)へ供給する。
[1-4.主制御部及び温度測定部における状態の遷移]
次に、温度測定装置3の主制御部31及び測定処理部32における、それぞれの状態の遷移について、状態の種類や遷移のための条件について説明すると共に、状態遷移のシーケンスについて説明する。
[1-4-1.主制御部及び温度測定部における状態の種類と遷移条件]
主制御部31は、図6(A)に模式的な状態遷移図を示すように、停止状態、シャットダウン状態及び起動状態といった3種類の状態に遷移し得るようになっている。このうち停止状態は、主電源スイッチ36が「オフ」であり、主制御部31に電力が全く供給されていない状態である。このとき主制御部31は、全く動作していない。主制御部31は、この停止状態において主電源スイッチ36が操作されて「オン」に切り替えられ、電力の供給が開始されると、シャットダウン状態に遷移する。
シャットダウン状態は、電力が供給されているものの、主制御部31が演算処理等の動作を何ら行っていない状態である。換言すれば、このシャットダウン状態は、主電源スイッチ36が「オン」から「オフ」に切り替えられても何ら問題がない状態である。主制御部31は、このシャットダウン状態において、シャットダウンスイッチ34が押下操作されたことを測定処理部32から通知されると、起動状態に遷移する。
具体的に主制御部31は、シャットダウン状態においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されると、制御部41(図3)のCPUが記憶部42(図3)等からOS(Operating System)や各種ドライバ、及び各種アプリケーション等のプログラムを順次読み出して実行する。これにより主制御部31は、測定処理部32を制御して温度を測定し得る状態、すなわち起動状態への遷移を完了する。この主制御部31は、この起動状態においてユーザから温度測定を開始する指示を受け付けると、測定処理部32に対して温度測定処理の実行を指示し、温度を測定させて測定データを取得する。
また主制御部31は、起動状態においてシャットダウンスイッチ34が押下操作され、このことが測定処理部32から通知された場合、シャットダウン状態への遷移を開始する。また主制御部31は、いわゆる停電により商用電源30からの電力供給が遮断された場合や、誤って主電源スイッチ36がオフにされた場合、直ちに予備電源部37からの電力供給が開始されて起動状態を維持した上で、測定処理部32からシャットダウンスイッチ34が押下操作された場合と同様の通知を受け、シャットダウン状態への遷移を開始する。
このとき主制御部31は、例えば各種アプリケーションの終了処理を行い、また未保存のデータ等を記憶部42に記憶させ、さらにSSDでなる当該記憶部42に対して電源を遮断するための準備処理を行わせ、さらにOSのシャットダウン処理を行う。主制御部31は、これらの処理が完了すると、シャットダウン状態への遷移を完了する。さらに主制御部31は、このシャットダウン状態において主電源スイッチ36が「オフ」に切り替えられると、停止状態に遷移する。因みに主制御部31は、商用電源30からの電力供給が遮断された場合等にシャットダウン状態に遷移した場合、この段階で予備電源部37からの電力供給が遮断されて停止状態に遷移する。
一方、測定処理部32は、図6(B)に模式的な状態遷移図を示すように、停止状態、ハードウェアデフォルト状態及び起動状態といった3種類の状態に遷移し得るようになっている。このうち停止状態は、主電源スイッチ36が「オフ」であり、測定処理部32に電力が全く供給されていない状態である。このとき測定処理部32は、全く動作していない。測定処理部32は、この停止状態において主電源スイッチ36が操作されて「オン」に切り替えられ、電力の供給が開始されると、直ちにハードウェアデフォルト状態への遷移を開始する。
測定処理部32(図4)は、電力の供給が開始されると、発光回路62やシリアル変換回路72等の各回路の動作を開始する。特に電気回路部52では、FPGAである演算制御回路76を起動させ、所定のプログラムを読み出して実行することにより各種論理回路を形成し、レジスタ81や演算回路82等を順次形成していく。やがて測定処理部32は、全ての回路の起動処理を完了すると、ハードウェアデフォルト状態への遷移を完了する。このハードウェアデフォルト状態は、温度測定処理を未だ実行していないものの、レジスタ81に対して必要な設定値が書き込まれると、直ちに温度測定処理を開始し得るような状態である。
測定処理部32は、ハードウェアデフォルト状態においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されると、起動状態に遷移する。具体的に測定処理部32は、主制御部31が起動状態にあり、温度測定処理に必要な設定値を該主制御部31から受信すると、これを演算制御回路76のレジスタ81に記憶させることにより、起動状態への遷移を完了する。この起動状態において、測定処理部32は、主制御部31から温度測定処理の実行が指示されると、温度を測定して測定データを生成し、これを該主制御部31へ供給する。
また測定処理部32は、起動状態においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されると、レジスタ81の内容を削除し、ハードウェアデフォルト状態に戻る。さらに測定処理部32は、ハードウェアデフォルト状態において主電源スイッチ36が「オフ」に切り替えられると、停止状態に遷移する。因みに測定処理部32は、起動状態において商用電源30からの電力供給が遮断された場合、又は主電源スイッチ36が「オフ」に切り替えられた場合、電力供給が遮断されるため、停止状態に遷移する。
このように温度測定装置3では、主電源スイッチ36やシャットダウンスイッチ34に対する操作に応じて、主制御部31及び測定処理部32が適宜連動しながら、それぞれの状態を遷移させるようになっている。
[1-4-2.状態遷移シーケンス]
次に、温度測定装置3において主制御部31及び測定処理部32がそれぞれ状態を遷移させる状態遷移シーケンスについて、起動シーケンス及び停止シーケンスに分けて、それぞれ説明する。
まず、温度測定装置3において主制御部31及び測定処理部32がそれぞれ停止状態から途中の状態を経て起動状態へ遷移する起動シーケンスについて、図7のシーケンスチャートを参照しながら説明する。
主制御部31は、停止状態(図6(A))において主電源スイッチ36(図2)が「オン」に切り替えられると、処理手順RT1を開始してステップSP11に移る。ステップSP11において主制御部31は、停止状態からシャットダウン状態に遷移し、次のステップSP12に移る。
主制御部31は、ステップSP12においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されたか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、主制御部31はこのステップSP12を繰り返すことにより、該シャットダウンスイッチ34が押下操作されるのを待ち受ける。
一方、測定処理部32は、主電源スイッチ36(図2)が「オン」に切り替えられると、処理手順RT2を開始してステップSP21に移る。ステップSP21において測定処理部32は、各回路を起動させると共に演算制御回路76(図4)内の各回路を形成してハードウェアデフォルト状態へ遷移し、次のステップSP22へ移る。
ステップSP22において測定処理部32は、シャットダウンスイッチ34が押下操作されたか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、測定処理部32はこのステップSP22を繰り返すことにより、該シャットダウンスイッチ34が押下操作されるのを待ち受ける。一方、ステップSP22において肯定結果が得られると、測定処理部32発議のステップSP23に移り、主制御部31に対してシャットダウンスイッチ34が押下操作されたことを通知する。
これに応じて主制御部31は、ステップSP12において肯定結果を得ることができ、次のステップSP13に移る。ステップSP13において主制御部31は、制御部41(図3)のCPUが記憶部42(図3)等から各種プログラムを順次読み出して実行し、起動状態へ遷移すると、次のステップSP14に移る。
ステップSP14において主制御部31は、USBインタフェース44(図3)により、測定処理部32における各USBデバイス、例えばシリアル変換回路61(図4)等との間で所定のネゴシエーション処理等を行う。このとき測定処理部32は、ステップSP24において、各USBデバイスが主制御部31のUSBインタフェース44との間で当該ネゴシエーション処理等を行う。この結果、主制御部31は、USB接続を確立すると、次のステップSP15に移る。また測定処理部32は、USB接続を確立すると、次のステップSP25に移る。
ステップSP15において主制御部31は、表示操作部33(図2)を介してユーザから温度測定を開始する指示である測定開始指示を受け付けたか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、主制御部31はこのステップSP15を繰り返すことにより、測定開始指示の受付を待ち受ける。
一方、ステップSP15において肯定結果が得られると、主制御部31は次のステップSP16に移り、USBインタフェース44(図3)を介して、測定開始情報を測定処理部32へ送信する。この測定開始情報には、温度測定処理の開始を表す開始指示と、レジスタ81(図4)に設定するための設定値等が含まれている。
これに応じて測定処理部32は、ステップSP25に移り、測定開始情報を受信すると、これをシリアル変換回路72等により所定のシリアル信号に変換した上で演算制御回路76等へ供給し、次のステップSP26に移る。ステップSP26において測定処理部32は、受信した測定開始情報に含まれていた設定値を演算制御回路76のレジスタ81に書き込むことにより起動状態に遷移し、次のステップSP27に移る。
ステップSP27において測定処理部32は、主制御部に指定されたタイミングで測定処理を行い、次のステップSP28に移る。すなわち測定処理部32は、光ファイバー2に光パルスを入射させ、戻り光を受光して自然ブリルアン散乱光のみを抽出し、分岐や周波数シフト、遅延及び合成等を経て検波し、得られた電気信号に対して所定の演算処理を施すことにより、周波数シフト量及び信号強度を取得する。
ステップSP28において測定処理部32は、得られた周波数シフト量及び信号強度を測定データとし、USBケーブルUC(図2)等を介して主制御部31へ送信する。その後、測定処理部32は再びステップSP27へ戻ることにより、温度の測定処理を繰り返す。
これに応じて主制御部31は、ステップSP17においてUSBインタフェース44により測定データを受信すると、次のステップSP18に移る。ステップSP18において主制御部31は、制御部41(図3)により、(1)式及び(2)式に従って温度変化δTを算出し、次のステップSP19に移る。ステップSP19において主制御部31は、算出した温度変化δTを記憶部42に記憶させると、再びステップSP17に戻り、一連の処理を繰り返す。
次に、温度測定装置3において主制御部31及び測定処理部32がそれぞれ起動状態から途中の状態を経て停止状態へ遷移する停止シーケンスについて、図8のシーケンスチャートを参照しながら説明する。
主制御部31は、起動状態(図6(A))においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されたことを測定処理部32から通知されると、処理手順RT3を開始してステップSP31に移る。ステップSP31において主制御部31は、測定処理部32から取得した測定データを基に制御部41において算出した温度変化δTのうち、記憶部42に記憶させていないものが残っていれば、これを該記憶部42に記憶させて、次のステップSP32に移る。
ステップSP32において主制御部31は、USBインタフェース44(図3)により測定処理部32の各USBデバイスとの間のUSB接続を切断し、次のステップSP33に移る。
一方、測定処理部32は、起動状態(図6(B))においてシャットダウンスイッチ34が押下操作されると、処理手順RT4を開始してステップSP41に移る。ステップSP41において測定処理部32は、シリアル変換回路61(図4)等の各USBデバイスと測定処理部32のUSBインタフェース44との間の接続を切断し、次のステップSP42に移る。
ステップSP42において測定処理部32は、演算制御回路76のレジスタ81を初期化し、次のステップSP43に移る。ステップSP43において測定処理部32は、ハードウェアデフォルト状態への遷移を完了すると、次のステップSP44において処理手順RT4を終了する。
一方、主制御部31は、ステップSP33において、SSDである記憶部42(図3)の電源を切断するための準備処理、例えば継続中の記録処理があれば、これを完了させる処理を行い、次のステップSP34に移る。ステップSP34において主制御部31は、シャットダウン処理、すなわち各種プログラムの動作を順次停止させ、さらにOSをシャットダウンさせる処理を行い、次のステップSP35に移る。ステップSP35において主制御部31は、各部の動作を停止させたシャットダウン状態への遷移を完了すると、その次のステップSP36に移って処理手順RT3を終了する。
因みに主制御部31及び測定処理部32は、主電源スイッチ36が「オフ」に切り替えられると、何れも停止状態に遷移する。
[1-5.バルブの構成及び光ファイバーの巻付]
次に、バルブの構成及び光ファイバー2の巻付について説明する。バルブ12は、図9(A)に模式的な断面図を示すように、弁箱部91を中心に構成されている。弁箱部91は、その内部に弁箱空間91Sを形成すると共に、該弁箱部91を挟んで互いに反対側に、何れも管状の第1接続部92及び第2接続部93がそれぞれ設けられている。
弁箱部91の弁箱空間91Sは、第1接続部92の内部に形成された第1接続空間92S及び第2接続部93の内部に形成された第2接続空間93Sと何れも連通している。因みにバルブ12では、第1接続部92側が上流側となっており、流動体が流入される。またバルブ12では、第2接続部93側が下流側となっており、上流側から流入してきた流動体を流出させる。
また弁箱空間91S内には、弁体94が設けられている。この弁体94は、弁棒95を介して駆動部96に取り付けられている。駆動部96は、内部に図示しないアクチュエータが組み込まれており、開閉指示装置13(図2)から供給される開閉指示、すなわち開放指示又は閉塞指示に従ってこのアクチュエータを作動させることにより、弁棒95及び弁体94を図の上下方向へ変位させることができる。
例えばバルブ12は、駆動部96により弁棒95と共に弁体94を図の下方へ変位させた場合(図9(A))、弁箱空間91Sと第1接続空間92Sとの接続部分を塞いだ状態となる。このときバルブ12は、仮に第1接続部92に接続された配管11(図1等)から流動体が流れてきたとしても、これを弁体94により堰き止め、第2接続空間93S内や第2接続部93に接続された配管11へは流さない。以下、バルブ12のこのような状態を閉塞状態と呼ぶ。
一方、バルブ12は、例えば図9(B)に示すように、駆動部96により弁棒95と共に弁体94を図の上方へ変位させた場合、弁箱空間91Sと第1接続空間92Sとの接続部分を開放し、両者を連通させた状態となる。このときバルブ12は、仮に第1接続部92に接続された上流側の配管11(図1等)から流動体が流入されると、これを弁箱空間91S内及び第2接続空間93S内へ流し、第2接続部93に接続された配管11へ流出させることができる。以下、バルブ12のこのような状態を開放状態と呼ぶ。
ところで、配管11(図2)におけるバルブ12の上流側であって、該バルブ12に近接した箇所(以下これを上流側測定箇所15と呼ぶ)には、光ファイバー2が巻き付けられている。また配管11におけるバルブ12の下流側であって、該バルブ12に近接した箇所(以下これを下流側測定箇所16と呼ぶ)にも、光ファイバー2が巻き付けられている。
上流側測定箇所15及び下流側測定箇所16では、配管11の外周に、該配管11に密接させるようにして、それぞれ光ファイバー2が複数回巻き付けられている。光ファイバー2は、上流側測定箇所15及び下流側測定箇所16に巻き付けられた部分の長さが、それぞれ2[m]以上となっている。
さらに図10(A)外観図を示すと共に図10(B)に断面図を示すように、上流側測定箇所15及び下流側測定箇所16には、配管11の外周に巻き付けられた光ファイバー2のさらに外側に、固定部材17が取り付けられている。押付部としての固定部材17は、例えば耐熱性を有するゴムによって構成されており、光ファイバー2を配管11の外周に押し付けて確実に当接させ、該配管11の温度を該光ファイバー2へ良好に伝達させることができる。
因みにバルブ状態検出システム1(図1)では、発電所10に設けられた複数のバルブ12におけるそれぞれの上流側(上流側測定箇所15)及び下流側(下流側測定箇所16)に対し、1本の光ファイバー2における接続端2Aからの距離が異なる複数の箇所が、それぞれ巻き付けられている。
[1-6.測定箇所及び閾値の記憶]
ところでバルブ状態検出システム1(図1)では、上述したように、光ファイバー2の一部が、配管11における各バルブ12の上流側及び下流側に設けられた測定箇所、具体的には上流側測定箇所15及び下流側測定箇所16において、該配管11にそれぞれ巻き付けられている。
温度測定装置3は、光ファイバー2のうち該配管11に巻き付けられている部分の位置、すなわち接続端2Aからの距離が予め測定されており、この距離を各バルブ12に関する情報と対応付けて主制御部31の記憶部42(図3)に記憶している。
具体的に記憶部42は、図11に示す測定箇所テーブルTBL1を記憶している。この測定箇所テーブルTBL1には、「管理番号」、「バルブ」、「上流/下流」、「光ファイバー」、「距離」といった項目が設けられ、さらに「距離」に「開始点」及び「終了点」といった副項目が設けられている。
これらの項目のうち「管理番号」は、管理上の都合により、1件ごとに連続した番号が割り当てられている。「バルブ」は、各バルブ12を識別するために、一意に割り当てられた名称や記号等である。「上流/下流」は、バルブ12の上流側測定箇所15であるか、或いは下流側測定箇所16であるかを表す。「光ファイバー」は、複数本の光ファイバー2を用いる場合に、各光ファイバー2に一意に割り当てられた名称や記号等である。このため、温度測定装置3において光ファイバー2が1本のみ用いられる場合、各「光ファイバー」の項目には全て同一の名称が格納される。「距離」の「開始点」及び「終了点」は、光ファイバー2において配管11に対する巻付が開始された点及び終了された点における、接続端2Aからの距離(以下これを接続端距離と呼ぶ)である。
例えば名称が「V001」であるバルブ12の上流側測定箇所15には、名称が「F01」の光ファイバー2における接続端距離が32[m]から34[m]までの範囲が、配管11に巻き付けられている。また名称が「V001」であるバルブ12の下流側測定箇所16には、名称が「F01」の光ファイバー2における接続端距離が35[m]から37[m]までの範囲が、配管11に巻き付けられている。
このため温度測定装置3は、例えば、名称が「F01」である光ファイバー2における接続端距離が32[m]から34[m]までの範囲における温度を測定することにより、名称が「V001」であるバルブ12における上流側測定箇所15の温度(以下これを上流側温度と呼ぶ)を知得できる。また温度測定装置3は、該光ファイバー2における接続端距離が35[m]から37[m]までの範囲における温度を測定することにより、名称が「V001」であるバルブ12における下流側測定箇所16の温度(以下これを下流側温度と呼ぶ)を知得できる。
因みに温度測定装置3では、変調周波数等に応じて分解能、すなわち光ファイバー2における接続端2Aからの距離に関して有効な細分化の最小単位が定められており、例えば1[m]となっている。このため測定箇所テーブルTBL1では、各接続端距離を1[m]単位の数値により表している。
ところで発電所10では、予め配管11ごとに輸送する媒体が決められており、該媒体の温度がある程度の範囲内に収まる場合が多い。この配管11にバルブ12が設けられている場合、下流側温度は、バルブ12の開閉に応じて変化することになる。
例えば、バルブ12の上流側から比較的高温の蒸気が輸送される場合、該バルブ12が開放状態であれば、下流側温度は、上流側温度とほぼ同等となる。またこの場合、該バルブ12が閉塞状態であれば、下流側温度は、周囲の温度(例えば気温や室温)とほぼ同等となる。
一方、例えばバルブ12が閉塞状態であるにも関わらず、下流側温度が周囲の温度と温度差を有する場合、バルブ12は、流動体を正常に堰き止めておらず、一部を下流側に流している状態、すなわち漏れが生じている状態であると推定できる。
そこで温度測定装置3は、予めバルブ12ごとに閾値を設定して記憶している。具体的に温度測定装置3は、図12に示す閾値テーブルTBL2を主制御部31の記憶部42(図3)に記憶させている。この閾値テーブルTBL2には、「バルブ」及び「閾値」といった項目が設けられている。このうち「バルブ」は、測定箇所テーブルTBL1(図11)の「バルブ」と同一のものである。「閾値」は、下流側温度と比較すべき温度の値であり、各「バルブ」と対応付けて、すなわちバルブ12毎に、それぞれ設定されている。
温度測定装置3は、光ファイバー2を用いて各バルブ12について上流側温度及び下流側温度を測定すると、このうち下流側温度と対応する閾値とを比較し、得られた比較結果をユーザに通知するようになっている。これによりユーザは、通知された比較結果を基に、各バルブ12の動作状態を把握することが可能となる。
[1-7.バルブ状態検出処理]
次に、バルブ状態検出システム1によるバルブ状態検出処理について、図13のフローチャートを参照しながら説明する。温度測定装置3における主制御部31の制御部41(図3)は、図示しない操作ボタンの操作等により、ユーザからバルブ状態検出処理の開始が指示されると、バルブ状態検出処理手順RT5(図13)を開始してステップSP51に移る。
ステップSP51において制御部41は、測定処理部32(図2)を制御することにより、光ファイバー2を用いた温度測定処理を行わせ、得られた温度測定結果を取得して、次のステップSP52へ移る。このとき得られた温度測定結果は、例えば図5に示したグラフのように、接続端距離と温度(又は温度変化)との関係として表されている。
ステップSP52において制御部41は、以降の処理において用いるカウンタの値を「1」に初期化し、次のステップSP53に移る。このカウンタの値は、測定箇所テーブルTBL1(図11)の管理番号と対応するものである。説明の都合上、以下では、測定箇所テーブルTBL1の管理番号がカウンタの値と一致するバルブ12を対象バルブと呼ぶ。
ステップSP53において制御部41は、測定箇所テーブルTBL1(図11)から対象バルブの上流側測定箇所15に関して光ファイバー2の名称、並びに開始点及び終了点の接続端距離をそれぞれ読み出し、次のステップSP54へ移る。
ステップSP54において制御部41は、対象バルブの上流側温度を取得し、次のステップSP55へ移る。具体的に制御部41は、ステップSP51において得られた温度測定結果を基に、光ファイバー2のうち対象バルブの上流側測定箇所15に相当する距離の部分に相当する開始点から終了点までの範囲の温度を取得し、これを上流側温度とする。このとき制御部41は、開始点から終了点までの範囲の温度として複数の値が得られた場合、その平均値を算出して上流側温度とする。
ステップSP55において制御部41は、測定箇所テーブルTBL1(図11)から対象バルブの下流側測定箇所16に関して光ファイバー2の名称、並びに開始点及び終了点の接続端距離をそれぞれ読み出し、次のステップSP56へ移る。
ステップSP56において制御部41は、対象バルブの下流側温度を取得し、次のステップSP57へ移る。具体的に制御部41は、ステップSP51において得られた温度測定結果を基に、光ファイバー2のうち対象バルブの下流側測定箇所16に相当する距離の部分に相当する開始点から終了点までの範囲の温度を取得し、これを下流側温度とする。このとき制御部41は、ステップSP54と同様、開始点から終了点までの範囲の温度として複数の値が得られた場合、その平均値を算出して下流側温度とする。
ステップSP57において制御部41は、閾値テーブルTBL2(図12)から対象バルブの閾値を読み出し、次のステップSP58へ移る。ステップSP58において制御部41は、ステップSP56において取得した対象バルブの下流側温度と、ステップSP57において取得した対象バルブの閾値との大小関係を判定し、次のステップSP59へ移る。
ステップSP59において制御部41は、ステップSP58において得られた判定結果をユーザに通知し、次のステップSP60へ移る。具体的に制御部41は、対象バルブの名称、上流側温度、下流側温度、閾値及び判定結果等をまとめて判定結果通知情報を生成し、これを通信部43(図3)により管理装置4へ送信する。管理装置4は、温度測定装置3から判定結果通知情報を受信すると、表示部24(図2)に所定の通知画面を表示することにより、判定結果通知情報に含まれていたバルブの名称やそれぞれの温度並びに判定結果をユーザに提示する。
ステップSP60において制御部41は、現在の対象バルブが測定箇所テーブルTBL1(図11)における最後の1件であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは測定箇所テーブルTBL1に登録されている残りのバルブ12についても順次温度の取得処理や閾値に関する判定処理を行うべきであることを表している。このとき制御部41は、次のステップSP61へ移り、項目カウンタに値「1」を加算してから、再度ステップSP53へ戻る。これにより制御部41は、次の対象バルブについても一連の処理を繰り返す。
一方、ステップSP60において肯定結果が得られると、このことは測定箇所テーブルTBL1に登録されている全てのバルブ12について、温度の取得処理や閾値に関する判定処理を完了したことを表している。このとき制御部41は、次のステップSP62へ移ってバルブ状態検出処理手順RT5を終了する。
[1-8.効果等]
以上の構成において、第1の実施の形態による温度測定装置3(図2)は、温度変化δTの算出処理や各バルブの状態を判定する主制御部31と、光の発光や受光、及び電気信号への変換や演算処理を行う測定処理部32とをUSBケーブルUCにより接続する構成とした。
このため温度測定装置3では、仮に内部で障害が発生した場合に、保守作業者等に対し、障害の内容からその原因を主制御部31と測定処理部32とに切り分けさせることが容易となり、さらに詳細な原因の特定や、不具合がある部品の交換を容易に効率良く行わせることができる。
また温度測定装置3では、主制御部31及び測定処理部32の接続に、汎用性が高いUSB接続を利用した。このため温度測定装置3では、両者の接続に専用の接続ケーブルや専用の通信プロトコルを用いる場合と比較して、開発作業の効率化や部品コストの低廉化、組立作業の容易化や保守作業時における代替部品の調達の容易化等を図ることができる。
さらに測定処理部32は、主制御部31からのUSB接続による給電機能を使用せず、電源部35から電力の供給を受けるようにした(図2)。これにより温度測定装置3では、主電源スイッチ36が「オン」に切り替えられて主制御部31及び測定処理部32に通電が開始された段階で、主制御部31をシャットダウン状態としたまま、測定処理部32をハードウェアデフォルト状態へ遷移させて各回路を動作させることができる(図6及び図7)。
特に測定処理部32では、演算制御回路76をFPGAとしたことにより、演算回路82等において極めて高速で高精度な演算処理を行い得る一方、起動に比較的長い時間を要してしまう。そこで温度測定装置3では、主電源スイッチ36が「オン」に切り替えられた段階でハードウェアデフォルト状態へ遷移しておくことにより、シャットダウンスイッチ34が押下操作されて主制御部31が起動状態へ遷移した段階で、測定処理部32の演算制御回路76を確実に起動させることができる。
これを換言すれば、温度測定装置3では、シャットダウンスイッチ34が押下操作されて主制御部31が起動状態への遷移を完了した時点で、測定処理部32を使用した温度の測定処理を直ちに開始できる。特に温度測定装置3では、測定時間が極めて短いSDH-BOTDRにより温度を測定するため、例えば温度測定が必要なときのみ主制御部31を起動させて温度測定を行い、終了したら該主制御部31のみをシャットダウンさせる、といった使い方が可能となる。この場合、測定処理部32はハードウェアデフォルト状態で待機しているため、次回の温度測定時にも、主制御部31が起動状態に遷移した時点で温度測定を直ちに開始できる。
さらに測定処理部32では、電気回路部52にハブ71を設け、このハブ71に複数のシリアル変換回路72及び73を接続した(図4)。このため温度測定装置3では、その製造工程において、測定処理部32にUSBデバイスであるシリアル変換回路72等が複数設けられているところ、これらを個別に主制御部31と接続する必要が無く、これらのUSBデバイスが予め接続されたハブ71と該主制御部31とを少数のUSBケーブルUCによって接続すれば良い。
以上の構成によれば、第1の実施の形態による温度測定装置3は、主制御部31と測定処理部32とをUSBケーブルUCにより接続する構成とし、主電源スイッチ36が「オン」に切り替えられると電源部35からそれぞれに対して電力を供給するようにした。これにより温度測定装置3は、保守作業における作業効率を格段に高め得ると共に、測定処理部32のみを予めハードウェアデフォルト状態へ移行させておくことができ、主制御部31が起動状態に遷移した時点で直ちに温度の測定処理を開始することができる。
[2.第2の実施の形態]
第2の実施の形態によるバルブ状態検出システム201(図1)は、第1の実施の形態によるバルブ状態検出システム1と比較して、光ファイバー2及び温度測定装置3に代わる光ファイバー202及び温度測定装置203を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
温度測定装置203は、図2の一部と対応する図14に示すように、温度測定装置3と比較して、主制御部31に代わる主制御部231が設けられ、また測定処理部32に代わる測定処理部232A、232B及び232Cが設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
各測定処理部232(232A、232B及び232C)は、何れもUSBデバイスとしての機能を有しており、それぞれUSBケーブルを介して主制御部31と接続され、且つそれぞれ電源部35から電力の供給を受けている。因みに各測定処理部232は、第1の実施の形態による測定処理部32と同様、複数のUSBケーブルUCにより主制御部31と接続されているものの、作図の都合により、図14では1本のUSBケーブルのみを表示している。
測定処理部232Aは、光ファイバー202Aと接続されており、BOTDR方式に対応した回路構成となっている。すなわち測定処理部232Aは、第1の実施の形態による測定処理部32(図4)と概ね同様に構成されている。この測定処理部232Aは、BOTDR方式で温度を測定し、得られた測定データをUSBケーブルUCにより主制御部231へ供給する。
測定処理部232Bは、光ファイバー202Bと接続されており、OTDR方式に対応した回路構成となっている。この測定処理部232Bは、OTDR方式で温度を測定し、得られた測定データをUSBケーブルUCにより主制御部231へ供給する。
測定処理部232Cは、光ファイバー202Cと接続されており、FBG方式に対応した回路構成となっている。この測定処理部232Cは、FBG方式で温度を測定し、得られた測定データをUSBケーブルUCにより主制御部231へ供給する。
主制御部231は、第1の実施の形態による主制御部31と概ね同様に構成されているものの、BOTDR方式、OTDR方式及びFBG方式それぞれにより得られた測定データから温度変化δTを算出(導出)し得るようになっている。
かかる構成により、温度測定装置203は、BOTDR方式、OTDR方式及びFBG方式といった異なる方式により、それぞれ温度を測定することができる。各方式では、温度の測定に要する時間や温度の精度及び光ファイバー202の長さの上限値等が互いに相違する。このため温度測定装置203は、測定する温度に求められる精度や時間、及び測定箇所までの距離等に応じて、各方式を適宜組み合わせながら、温度を適切に測定することができる。
また温度測定装置203は、第1の実施の形態と同様に、その内部において主制御部231と各測定処理部232とを分けた構成とし、且つ両者の間をUSBケーブルUCにより接続した(図14)。これにより温度測定装置203では、第1の実施の形態と同様、設計や製造作業、及び保守作業等の効率を高めることができる。
他の観点から見れば、バルブ状態検出システム201では、温度測定装置203のうち測定処理部232以外の部分を3台分用意する必要が無く、1台分のみを用意してこれを共用しながら、3本の光ファイバー202を用いた温度測定を行うことができる。
その他の点においても、第2の実施の形態による温度測定装置203は、第1の実施の形態による温度測定装置3と同様の作用効果を奏し得る。
以上の構成によれば、第2の実施の形態による温度測定装置203は、主制御部31と各測定処理部232とをUSBケーブルUCにより接続する構成とした。これにより温度測定装置203は、保守作業における作業効率を格段に高め得ると共に、各測定処理部232により得られた測定データを基に、1個の主制御部231においてそれぞれの温度変化を算出することができる。
[3.他の実施の形態]
さらに上述した第1の実施の形態においては、温度測定装置3(図2)において主制御部31及び測定処理部32の間をUSBの規格に準拠したUSBケーブルUCにより接続し、USBのプロトコルに従ってデータを送受信する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、他の種々の平衡接続の方式(IEEE1394、SATA(Serial ATA(AT Attachment interface))及びEIA-422等)による接続ケーブルを用いて主制御部31及び測定処理部32の間を接続し、データを送受信させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
また上述した第1の実施の形態においては、主制御部31及び測定処理部32の間を3本のUSBケーブルUCにより接続する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば2本以下又は4本以上のUSBケーブルUCにより主制御部31及び測定処理部32の間を接続しても良い。この場合、必要に応じて測定処理部32内にハブを増設し、若しくは削除しても良い。特にUSBケーブルUCの数を少なく抑えた場合、製造時や保守作業時に主制御部31及び測定処理部32の間を接続し、又は切り離す作業を簡略化することができる。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、停止シーケンス(図8)において起動状態でシャットダウンスイッチ34が押下操作された際に、測定処理部32における演算制御回路76のレジスタ81を初期化してハードウェアデフォルト状態とし、主電源スイッチ36が「オフ」に切り替わるまでこの状態を維持する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば起動状態でシャットダウンスイッチ34が押下操作された際に測定処理部32を停止状態に遷移させても良く、或いは該測定処理部32を再起動させてハードウェアデフォルト状態としてから、この状態で待機させても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、演算制御回路76をFPGAとし、該演算制御回路76において所定のプログラムを実行することにより演算回路82等を形成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば演算回路82等の各回路をハードウェアとして形成しても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに上述した第1の実施の形態においては、光ファイバー2を用いてSDH-BOTDR方式により温度を測定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばBOTDR方式やOTDR方式、或いはBFG方式等、種々の方式により光ファイバー2を用いて温度を測定しても良い。
さらに上述した第2の実施の形態においては、主制御部231に接続される3個の測定処理部232A、232B及び232Cがそれぞれ異なる方式(BOTDR方式、OTDR方式及びFBG方式)により温度データを生成する場合について述べた(図14)。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばBOTDR方式により温度データを生成する測定処理部232Aを3枚用意し、これらを全て主制御部231に接続しても良い。要は、主制御部231に対してUSBケーブルUCにより接続可能であり、光ファイバー202から得られた戻り光を基に測定データを生成して該主制御部231へ供給できるものであれば良い。また主制御部231に接続する測定処理部232の数は3個に限らず、2個以下又は4個以上でも良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、光ファイバー2を用いて温度を測定する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、(1)式により算出される歪みδεを基に、測定対象の歪みを測定しても良い。第2の実施の形態においては、各方式において温度以外に測定可能な種々の物理量を測定しても良い。
さらに上述した第1の実施の形態においては、バルブ状態検出システム1により発電所10の配管11における様々な箇所の温度を測定し、これを基にバルブ12の状態を検出する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば種々の工場や大型施設の空調設備等、種々の箇所において、温度測定装置3の設置場所から大きく離れた箇所の温度を測定しても良く、また温度の測定結果を基に種々の判定処理を行っても良い。第2の実施の形態についても同様である。
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
さらに上述した第1の実施の形態においては、測定処理部としての測定処理部32と、主制御部としての主制御部31と、接続ケーブルとしてのUSBケーブルUCとによって光ファイバーセンサー装置としての温度測定装置3を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる測定処理部と、主制御部と、接続ケーブルとによって光ファイバーセンサー装置を構成しても良い。