以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。各実施形態では、操作入力装置を備える電子機器の一例として撮像装置を示すが、本発明は操作入力装置を備える各種電子機器への適用が可能である。
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係る撮像装置の例として、デジタルカメラ100を示す外観斜視図である。図1(A)はデジタルカメラ100の前面斜視図であり、図1(B)はデジタルカメラ100の背面斜視図である。デジタルカメラ(以下、単にカメラともいう)100は、その本体部に不図示のレンズ装置を装着可能なレンズ交換式カメラである。カメラ100の底面には、互いに直交するX軸およびZ軸を定義し、X軸およびZ軸のそれぞれに対して直交する軸をY軸と定義する。Z軸方向は撮像装置の光軸に平行な方向である。
図1(B)に示すメイン表示部11はカメラ本体部の背面に設けられており、画像や各種情報を表示する。メイン表示部11の表示面にタッチパネルを有する構成の場合、表示面(操作面)に対するタッチ操作を検出することができる。サブ表示部12はカメラ本体部の上面に設けられており、シャッタ速度や絞り値等の、様々な設定値を表示する。
カメラ100は覗き込み型ファインダを備え、ユーザは接眼部20を介して内部のEVF(Electronic View Finder)に表示された映像を視認することができる。接眼検知部22は、接眼部20に対する目の接近(接眼)および離反(離眼)を検知する。
カメラ100は、ユーザが各種の操作に用いる操作部材を備え、その例を以下に示す。
(カメラ上面部)
・メイン電子ダイヤル31:回転操作部材であり、その回転によりシャッタ速度や絞り値等の設定値の変更等の指示が行われる。
・電源スイッチ32:カメラ100の電源のONおよびOFFを切り替える操作部材。
・サブ電子ダイヤル33:回転操作部材であり、その回転により選択枠の移動や画像送り等の指示が行われる。
・動画ボタン36:動画撮影(記録)の開始、停止の指示に用いられる。
・モード切替スイッチ41:各種モードを切り替えるための操作部材。
・シャッタボタン42:被写体側に配置され、撮影指示を行うための操作部材。
(カメラ背面部)
・十字キー34:上下左右の各部分をそれぞれ押し込み可能な十字キー(4方向キー)。
・SETボタン35:押しボタンであり、主に選択項目の決定等に用いられる。
・AEロックボタン37:撮影待機状態で押下され、露出状態を固定することができる。
・拡大ボタン38:ライブビュー表示において拡大モードのON、OFFを行うための操作部材。
・再生ボタン39:撮影モードと再生モードとを切り替える操作部材。
・メニューボタン40:各種の設定用のメニュー画面をメイン表示部11に表示するための操作部材。
グリップ部60の内部には操作入力装置が設けられており、図2に示す静電容量センサ63および圧力センサ64を備える。その詳細については後述する。
記録媒体300(図2参照)を格納したスロットの蓋50は、カメラ本体部の側面部に配置される。通信端子51は、カメラ100がレンズ装置と通信を行う為の端子である。端子カバー52はカメラ本体部の側面部に配置され、外部機器とカメラ100とを電気的に接続する接続ケーブル等のコネクタ(不図示)を保護する。
グリップ部60は、ユーザがカメラ本体部を把持する際に右手で握りやすい形状とした把持部である。ユーザがグリップ部60を右手の小指、薬指、中指で握ってカメラ100を把持した状態にて、右手の人差指で操作可能な位置にシャッタボタン42、メイン電子ダイヤル31が配置されている。この状態にて右手の親指で操作可能な位置には、サブ電子ダイヤル33、十字キー34、SETボタン35、AEロックボタン37、拡大ボタン38、再生ボタン39が配置されている。
図2は、デジタルカメラ100の構成例を示すブロック図である。カメラ本体部はシステム制御部80を備え、レンズユニット200はレンズシステム制御回路203を備え、両者は互いに通信可能である。
まず、カメラ本体部の構成を説明する。接眼検知部22は赤外線近接センサ等を有し、ファインダの接眼部20に対する接眼および離眼を検知する。システム制御部80は、接眼検知部22による検知状態に応じて、メイン表示部11とEVF21の表示状態と非表示状態とを切り替える。具体的には、少なくとも撮影待機状態で、かつ、自動切替である場合、非接眼中にメイン表示部11の表示がオンとなり、EVF21が非表示となる。また、接眼中にはEVF21の表示がオンとなり、メイン表示部11は非表示となる。
操作部30はシステム制御部80に各種指示を入力する際にユーザが使用し、ユーザ操作を受け付ける入力部としての各種の操作部材を備える。操作部材については図1で説明済みであり、例えば、メニューボタン40の押下によりメニュー画面がメイン表示部11に表示され、ユーザはメニュー画面を見ながら十字キー34、SETボタン35を用いて直感的に設定を行える。また、拡大ボタン38により、拡大モードをONとしてからメイン電子ダイヤル31を操作することにより、ライブビュー画像の拡大、縮小の指示を行い、再生モードにて再生画像の拡大指示を行うことができる。
操作部30には、グリップ部60がその内部に備える静電容量センサ63および圧力センサ64が含まれる。グリップ部60において、ユーザがカメラ本体部を把持する領域には静電容量センサ63および圧力センサ64が配置され、ユーザによるカメラ100の把持状態や指の動きを検出することができる。
システム制御部80はモード切替スイッチ41からの信号により、動作モードを静止画撮影モード、動画撮影モード、再生モード等に切り替える。第1シャッタスイッチ43および第2シャッタスイッチ44は、シャッタボタン42の操作によってON・OFFする段階式スイッチである。第1シャッタスイッチ43は、シャッタボタン42の操作途中、いわゆる半押し(撮影準備指示)でONとなり、第1シャッタスイッチ信号SW1を発生する。システム制御部80はSW1により、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理、EF(フラッシュプリ発光)処理等の撮影準備動作を開始させる。第2シャッタスイッチ44は、シャッタボタン42の操作完了、いわゆる全押し(撮影指示)でONとなり、第2シャッタスイッチ信号SW2を発生する。システム制御部80はSW2により、撮像部84からの信号読み出しから撮像された画像を記録媒体300に画像ファイルとして書き込むまでの一連の撮影処理を開始させる。
AEセンサ81は、レンズユニット200を通した被写体の輝度を測光し、測光結果をシステム制御部80に出力する。焦点検出部82は、撮像光学系の焦点状態を検出してシステム制御部80にデフォーカス量の情報を出力する。システム制御部80は当該情報に基づいてレンズユニット200を制御し、位相差AFを行う。焦点検出部82は、専用の位相差センサを有するか、または撮像部84が備える撮像素子(撮像面位相差センサ)を利用して焦点検出を行う。シャッタ83はフォーカルプレーンシャッタであり、システム制御部80の指令により撮像部84の露光時間を制御する装置である。
撮像部84は、撮像光学系を介して結像される光学像を電気信号に光電変換する撮像素子を備える。CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を用いたイメージセンサが使用される。A/D変換器85は、撮像部84の出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器85の出力データは、画像処理部86およびメモリ制御部87を介して、或いは、メモリ制御部87を介してメモリ88に直接書き込まれる。
画像処理部86は、A/D変換器85からのデータ、または、メモリ制御部87からのデータに対してリサイズ処理や色変換処理等を行い、また、撮像画像のデータを用いて所定の演算処理を行う。演算結果に基づいてシステム制御部80は露光制御、測距制御を行い、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF処理、AWB処理、AE処理、EF処理等が行われる。
メモリ88は、A/D変換器85による変換後のデジタル画像データと、メイン表示部11,EVF21に表示するための画像データを記憶する。メモリ88は、所定枚数の静止画像や所定時間に亘る動画像および音声のデータの格納に十分な記憶容量を有し、画像表示用のビデオメモリを兼ねている。
D/A変換器89は、メモリ88に格納されている画像表示用のデータをアナログ信号に変換してメイン表示部11,EVF21に供給する。メモリ88に書き込まれた表示用の画像データは、メイン表示部11,EVF21により表示される。メモリ88に蓄積されたデジタル信号を、D/A変換器89においてアナログ変換して、メイン表示部11またはEVF21に逐次転送して表示させることにより、ライブビュー表示が行われる。サブ表示部駆動回路90はシステム制御部80の指令にしたがい、サブ表示部12の画面上にシャッタ速度や絞り値等の設定値を表示させる。
不揮発性メモリ91は、EEPROM等の電気的に消去および記録が可能なメモリであり、システム制御部80の動作用の定数、プログラム等を記憶している。システム制御部80は、例えばCPU(中央演算処理装置)を備え、デジタルカメラ100全体を制御する。CPUは不揮発性メモリ91に記録されたプログラムを実行することで各処理を実現する。システムメモリ92は、例えばRAM(ランダム・アクセス・メモリ)が用いられ、システム制御部80の動作用の定数、変数、不揮発性メモリ91から読み出したプログラム等が展開される。システムタイマ93は各種制御に用いる時間や内蔵時計の時間を計測する。
電源制御部94は、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行う。電源スイッチ32の操作信号をトリガーとして電源制御部94は、その検出結果およびシステム制御部80の指令にしたがい、内部のDC-DCコンバータを制御し、記録媒体300を含む各部への電源供給を行う。電源部95は一次電池または二次電池、ACアダプター等を備える。
記録媒体I/F(インターフェース)部96は記録媒体300とシステム制御部80とを接続する。撮像画像データ等を記録する記録媒体300は、半導体メモリや磁気ディスク等から構成される。例えば、撮影モード中にユーザが再生ボタン39を押下すると、再生モードに移行し、記録媒体300に記録された画像のうち最新の画像をメイン表示部11に表示させることができる。
通信部97は、映像信号や音声信号の送受信を行う際、ネットワークに接続可能である。通信部97は撮像部84による撮像画像データや記録媒体300に記録された画像データを外部機器へ送信可能であり、また外部機器から画像データや各種情報を受信可能である。
姿勢検知部98は加速度センサやジャイロセンサ等を備え、重力方向に対するカメラ100の姿勢を検知する。例えば、姿勢検知部98で検知された姿勢に基づいて、ユーザがカメラ100を横に構えているか、縦に構えているかを判別可能であり、パンニング等の状態や静止状態を検知可能である。
次にレンズユニット200の構成を説明する。レンズユニット200はズームレンズ、フォーカスレンズ等のレンズ群を備えるが、図2では1枚のレンズ201として簡略的に示す。レンズユニット200は、デジタルカメラ100と通信を行う通信端子202を備える。レンズユニット200は、通信端子51、202を介してシステム制御部80と通信可能である。レンズシステム制御回路203は、システム制御部80の指令にしたがって、絞り駆動回路204とAF駆動回路206を制御する。絞り駆動回路204を介して絞り205の制御が行われ、AF駆動回路206を介して、レンズ201内のフォーカスレンズの位置を変位させることで焦点調節制御が行われる。
次に、本実施形態の操作入力装置を、特許文献1に開示された構成と比較しつつ説明する。特許文献1の図1に示された操作入力装置は、操作入力部にてマトリクス状に配置された静電容量センサ(120)と圧力センサ(130)を重ねて配置した操作検出部を有する。静電容量センサを介して圧力センサに圧力が加わると、圧力センサは圧延される。
圧力センサの導体パターンの断面積をAと表記し、その長さをLと表記する。圧延による圧力センサの変形前後で断面積Aと長さLは変化する。導体固有の電気抵抗率をρと表記し、電気抵抗値をRと表記するとき、Rとρ、L、Aとの関係は下記式(1)で表される。
圧力センサが手指等の押圧体から圧力を受けたときに、断面積Aが小さくなり、長さLが大きくなるので、電気抵抗値Rは大きくなる。従って、一定の圧力を受けたときの導体の変形が大きくなるほど、電気抵抗値Rの変化は大きくなる。この場合、導体の変形が容易な構成にすることで、圧力の検出をより敏感に、すなわち圧力検出のダイナミックレンジを大きくすることが可能である。
特許文献1に開示の構成において、圧力センサの変形代(しろ)は圧力センサの圧延により潰れる量(以後、潰れ量Δtと記す)に依存する。この潰れ量Δtが小さいと、圧力検出のダイナミックレンジを大きくすることは容易でない。
図3は、特許文献1に開示された構成に対して改良を施し、簡易的に圧力センサ64の圧力検出のダイナミックレンジを大きくした構成例を説明する模式図である。図3(A)は圧力センサ64に圧力を加える前の状態を示す要部の断面図である。図3(B)は圧力センサ64に圧力を加えている状態を示す要部の断面図である。
圧力センサ64はその両端が固定されており、押圧が想定される箇所にて圧力センサ64の変形方向に圧力センサ64の変形代となる空間部69が設けられている。図3(B)に示すように、圧力センサ64は、空間部69内では圧力を受けた分だけ変形できるため、圧力検出のダイナミックレンジを大きくすることが可能となる。このような構成を、本実施形態の撮像装置のグリップ部60に適用する場合、ユーザが撮影姿勢を維持し、且つ、撮像画像のブレを抑制させるためには、高いグリップ性能を有する必要がある。ゆえに、圧力が加わる前の状態と、ユーザがグリップ部60を把持して圧力が加わっている状態との間で、グリップ部60の形状差は小さいことが好ましい。特にユーザが力を加える方向への変形量、すなわちストローク量は小さいほど好ましいが、図3の構成では高いグリップ性を実現することは難しい。
図4および図5を参照して、本実施形態にて圧力センサ64の圧力検出のダイナミックレンジを向上させた構成例を説明する。図4は、グリップ部60の構成を表す分解斜視図であり、図5はグリップ部60の構成を表す断面図である。図5(A)は圧力センサ64に圧力を加える前の状態を示す要部の断面図である。図5(B)は圧力センサ64に圧力を加えている状態を示す要部の断面図である。
図4では、外観面から順に、第1の弾性部材61、静電容量センサ63、圧力センサ64、第2の弾性部材62、外装部材65を示している。外観面は操作入力装置の外観上の外表面である。つまり、第1の弾性部材61が最も外側に配置され、外装部材65が最も内側に配置される。
第1の弾性部材61は、外装部材65の外形形状に対応する形状を有し、エラストマー等の弾性を有する材料で形成されている。静電容量センサ63には、ポリイミド等の基材に金属導体パターンが配線されたフレキシブルプリント基板(以下、FPCという)が用いられる。あるいは、第1の弾性部材61自体に金属導体パターンが配線される筐体配線を用いてもよい。静電容量センサ63は、押圧体70(操作者の手指等)による静電容量の変化を検知することで、押圧体70が触れたことを検知する。例えば、押圧体70がグリップ部60に触れることで、グリップ部60に配置されているFPC上の金属導体パターンにおける静電容量の変化が検知される。このときの検知信号に応じた各種操作によって所望の処理が可能となる。
圧力センサ64は、タッチ操作の強度を検出するためのセンサであり、グリップ部60に対して押圧体70から受ける押圧の強度を検出する。グリップ部60がタッチ操作によって押圧された場合、圧力センサ64により、押圧の強度を連続的に検出することができる。圧力センサ64としては、ポリイミド等の基材に金属導体パターンが配線されたFPCが用いられる。あるいは、伸縮可能な繊維質の基材に対して、伸縮可能な伸縮性導体パターンが配線された構成でもよい。圧力センサ64は、金属導体パターンに応力を加えた際の歪みに応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗効果を利用して圧力を検出する。つまり、圧力センサ64に荷重を加えて導体パターンを変形させたときに、導体の電気抵抗値の変化を読み取ることで加えた荷重を逆算することができる。例えば導体の電気抵抗値(または電気抵抗値に対応する検出信号)に対して、1つまたは複数の閾値が設定される。検出部は導体の電気抵抗値と閾値とを比較し、所定の閾値に対して抵抗値が小さくなる方向に変化したときにシステム制御部80が所定の制御を行う。所定の制御とは、例えば電子機器の電源のON/OFFや、操作入力に応じて予め定められた機能の呼出等を行うための制御である。圧力センサ64による検出結果から操作入力の判別が可能であり、ユーザの意図する処理を実行することができる。
あるいは、グリップ部60と平行に備えられた静電容量センサ63により、距離検出を行い、距離に対応する圧力を検出することができる。この場合の距離とは、グリップ部60に対する押圧体70の押圧力によって操作面が歪んだことによる、グリップ部60上の押圧体70と静電容量センサ63との距離であり、静電容量値から算出できる。この距離に基づいて圧力を算出する方法、あるいは距離を圧力と同等に扱う方法がある。
本実施形態にて圧力センサ64については、グリップ部60に対する押圧の強度を検出可能であれば、他の方式のセンサを使用してもよい。様々な方法、および様々なセンサ、または複数のセンサの組合せ(例えば加重平均による出力信号の合成)を使用してタッチ操作の強度(圧力)を検出することが可能である。
第2の弾性部材62は、第1の弾性部材61と同様に、外装部材65の外形形状に対応する形状を有し、エラストマー等の弾性を有する材料で形成されている。第2の弾性部材62は第1の弾性部材61よりも高い剛性を有する。
外装部材65は、グリップ部60のグリップ形状を成す部材であり、第2の弾性部材62よりも高い剛性を有する。外装部材65は複数の凹部65a(図5)を有しており、凹部65aと第2の弾性部材62で囲まれる領域に空間部69が形成される。
本実施形態において、ユーザがグリップ部60を把持した際、少なくとも押圧体70が接触する部分には、1つまたは複数の静電容量センサ63と圧力センサ64が設置されている。静電容量センサ63により、その静電容量の変化を検知することで、ユーザの触れている箇所を特定することができる。そして、圧力センサ64の出力値によって、グリップ部60に対する押圧力を検出することができる。このように、静電容量センサ63と圧力センサ64とを組み合わせることにより、操作入力部にて、どの位置でどれだけの圧力を受けたかを検出可能である。例えば、同じ圧力を受けた場合でも、受けた位置に違いがあれば、位置ごとに、呼び出される機能が異なるように制御や処理を行うことができる。また、押圧体70によるスライド操作、タップ操作、タッチ操作等の各種操作を行うことが可能である。
第1の弾性部材61が押圧体70から押圧を受けると、第1の弾性部材61と外装部材65とに挟まれた圧力センサ64は圧延されて潰れる。押圧による圧力センサ64の変形の前後で、圧力センサ64の導体パターンの断面積Aと長さLは変化する。更に、圧力センサ64と接触している第2の弾性部材62も弾性を有するので、押圧により圧力センサ64の一部は第2の弾性部材62と共に空間部69内に沈み込む。これにより、圧力センサ64の変形量は、圧力センサ64の圧延による潰れ量Δtと、圧力センサ64の撓みによる変形量(Δdと記す)との和と同等となる。空間部69を設けない構成と比べると、圧力センサ64の変形量は圧力センサ64の撓みによる変形量Δd分だけ大きくなるので、局所的に圧力センサ64に変位量を発生させる構造とすることができる。よって、圧力検出のダイナミックレンジを拡大しつつ、圧力が加わる前の図5(A)の状態と、圧力が加わっている図5(B)の状態とに関して、形状差を小さくすることができる。
次に、押圧体70と空間部69との関係について説明する。グリップ部60の把持状態において、押圧体70がグリップ部60に接触する範囲を押圧体70の接触幅とし、第1の弾性部材61に対する押圧体70の接触幅をL1と表記し、外装部材65の凹部65aの幅をL2と表記する。
ユーザがグリップ部60を把持したときの圧力を、圧力センサ64により必ず検出できるようにするためには、凹部65aの幅L2を、押圧体70の接触幅L1よりも大きくする必要がある(L2>L1)。仮に、凹部65aの幅L2を押圧体70の接触幅L1より小さくした場合、押圧体70が凹部65aを跨いで覆ってしまう。そのため、圧力センサ64が撓み難くなり、凹部65aの幅L2が押圧体70の接触幅L1より大きい場合と比較すると前記変形量Δdが小さくなる。場合によっては「Δd≒0」となる可能性がある。本実施形態において、L1とL2の関係は、「L2/L1>1」の関係であるため、変形量Δdが極端に小さくなることを回避できる。ただし、これに限らず、L1とL2の関係は「L2/L1≧0.5」でもよい。
また、凹部65aの深さは、第2の弾性部材62が撓むことができる最大変形量以上になっている。押圧体70で押圧された際、第2の弾性部材62が外装部材65の凹部65aの底に接触してしまうと、ユーザの意図に反して圧力センサ64が圧延され、適切な圧力検出ができなくなる可能性がある。
押圧体70は、例えばユーザの手指であり、グリップ部60の把持状態においてユーザは手指でスライド操作やタップ操作を行う。この時、グリップ部60には薬指、中指の指先が接触することを想定しており、その時の接触部分の形状は略円形状になる。日本人の場合、成人の薬指の指先の幅は、最小値が10.2mm、最大値が17.7mmであり、中指の指先の幅は、最小値が10.7mm、最大値が18.6mmである。グリップ部60の把持時の接触幅は最大でも指の幅以下であるので、その最小値である10mm以上の値として設計される。また、指の大きい人でも確実に圧力センサ64による検出を可能にするためには、グリップ部60の把持時の接触幅を、その最大値の1.5倍程度の30mmと想定して設計すればよい。以上のことから、10mm<L1<30mmの範囲が望ましいが、本実施形態の効果を達成するためには、5mm≦L1<30mmの範囲でもよい。
第1の弾性部材61は、第2の弾性部材62よりも柔らかい材料で形成される。その理由は押圧位置の検出精度を高めるためである。押圧体70によって第1の弾性部材61が押圧されると、第1の弾性部材61より硬い第2の弾性部材62は、第1の弾性部材61全体を支持するように機能する。第1の弾性部材61は第2の弾性部材62により支持されるが、第2の弾性部材62に比べて柔らかい第1の弾性部材61は押圧された部分およびその近傍が沈み込む。そのため、第1の弾性部材61と第2の弾性部材62に挟まれる圧力センサ64は押圧された部分およびその近傍のみが圧延される。これにより、押圧体70による押圧位置を精度良く検出することが可能となる。
弾性部材の硬さについては、以下の方法で設定することが可能である。
・第1の弾性部材61と第2の弾性部材62とで、それらの厚さを同一に設定し、弾性部材に用いる材料の硬度の違いにより、第2の弾性部材62を第1の弾性部材61よりも硬くする方法。
・第1の弾性部材61と第2の弾性部材62とで同じ材料を使用し、厚さに変えることにより硬度に差をつけ、第2の弾性部材62の厚さを第1の弾性部材61の厚さより大きくすることで硬くする方法。
本実施形態では、第1の弾性部材61と第2の弾性部材62がそれぞれ1層である例を説明したが、多層構成でもよい。例えば、第1の弾性部材61は1層であって、第2の弾性部材62は2層の構成である。2層から成る第2の弾性部材62は第1の弾性部材61よりも硬い。それぞれの弾性部材の硬さ、厚さ、層数の組み合わせの如何は問わない。なお、硬さの関係は上記に限らず、必要に応じて第1の弾性部材61を第2の弾性部材62より硬くしてもよい。
押圧体70の押圧方向から見た場合、第2の弾性部材62と外装部材65の支持部(不図示)が重なる領域においては、圧力センサ64の導体パターンは配線されていない。その理由は、押圧体70から過度な圧力を受けた場合、局所的な圧力センサ64への加圧が破損に繋がり、適切な検出ができなくなる可能性があることによる。
また本実施形態において、静電容量センサ63は、圧力センサ64の外側(外観表面側)に配置されているが、他の実施形態では圧力センサ64の内側(外装部材側)に配置される。静電容量センサ63は、ユーザの手指が接触したときの静電容量の変化により接触位置を検出する。静電容量センサ63が静電容量の変化を検出する際に、ユーザの手指と静電容量センサ63との間に、電流が流れていると、静電容量が変化し、誤検出が発生しうる。また、静電容量センサ63はユーザの手指に極力近い方が検出性能を高くすることができる。そのため、静電容量センサ63を、電流が流れる圧力センサ64よりも、ユーザの指側に配置することが好ましい。
更に、操作入力装置の組立状態において、圧力センサ64は、第1の弾性部材61と外装部材65との間で、ある程度、変形させた状態となっている。その理由は、部品のばらつき、または、製造上のばらつきにより、組立状態における圧力センサ64の潰れ量Δtが異なり、初期状態に検出される電気抵抗値が異なる可能性があることによる。組立が完了した初期の変形状態において、検出荷重が0[N]となるようにキャリブレーションが行われる。
本実施形態によれば、ユーザが操作入力装置を把持した際のグリップ感を損なうことなく、圧力検出のダイナミックレンジをより大きくすることが可能な操作入力装置を提供することができる。
[第2実施形態]
次に、図6から図10を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。本実施形態では第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と同様の事項については既に使用した符号や記号を用いることで、それらの詳細な説明を省略する。尚、本実施形態では弾性部材61のみを示す。
図6は、本実施形態のグリップ部60の構成部品を表す分解斜視図である。外観面から、弾性部材61、外装部材65、静電容量センサ63、圧力センサ64、ベース部材66の順に構成される。
図7は、圧力センサ64の変形前後の状態を表した模式図である。圧力センサ64には、ポリイミド等の基材169に金属製の導体パターン170が配線されたFPCが使用される。あるいは、伸縮可能な繊維質の基材169に対して、伸縮可能な伸縮性導体パターン170が配線された構成でもよい。圧力センサ64は、金属に応力を加えた際の歪みに応じて電気抵抗値が変化するピエゾ抵抗効果を利用して圧力を検出する。つまり、圧力センサ64に荷重を加えると導体パターン170が変形するので、導体パターン170の電気抵抗値の変化を読み取ることで、加えられた荷重を逆算することができる。例えば、1つまたは複数の閾値に対して導体パターン170の電気抵抗値が変化したときに、電子機器にて対応する機能の制御が行われる。ユーザは操作入力装置を使用して電子機器に所望の指示を行うことができる。
図7(A)は、圧力センサ64が変形する前の状態を表し、図7(B)は、圧力センサ64が圧力を受けて変形した後の状態を表している。圧力センサ64の変形の前後で、導体パターン170の断面積Aや長さLが変化する。導体固有の電気抵抗率をρとしたとき、電気抵抗値Rは前記式(1)で表される。つまり、導体パターン170が変形した場合、断面積Aは小さくなり、長さLは大きくなるので、電気抵抗値Rは大きくなる。また一定の圧力を受けたときの導体パターン170の変形量が大きくなるほど、電気抵抗値Rの変化は大きくなる。導体パターン170がより変形可能な構成を採用することで、小さい圧力から大きな圧力まで検出まで行うこと、すなわち圧力検出のダイナミックレンジを拡大できる。尚、静電容量センサ63も図7(A)と同様の構成を有する。
従来技術の操作入力装置では、ユーザにより加えられた圧力が静電容量センサと圧力センサに直接伝わる構成となっている。例えば、特許文献1に開示された装置の場合、強い衝撃が加えられたときに、衝撃を加えた部材と、衝撃を受け止める部材との間に圧力センサが配置された構成である。そのため、圧力センサに配線される導体パターンが、衝撃を加えた部材と衝撃を受け止める部材とに挟まれ、断線の発生が懸念される。特に、デジタルカメラ等のモバイル機器は、ユーザが持ち運んでいる最中に機器を落下させてしまうリスクがある。
図8は、圧力センサ64の導体パターン170の断線を抑制するための構成を説明する断面図である。弾性部材61は複数の突起部72を有する。弾性部材61が外部から圧力を受けたときに、突起部72が圧力センサ64を変形させることで、圧力を検出することができる。弾性部材61は均質な材質であってもよく、また圧力センサ64への圧力の伝達を考慮して、突起部72の剛性を高めた材質であってもよい。
弾性部材61は外装部材65に接する複数の規制部162を有する。規制部162は弾性部材61全体が圧力によって変形しないようにするための部分であり、言い換えると突起部72の設けられている部分のみが変形するように形状変形を規制する役割を有する。ユーザが圧力を加えた際、弾性部材61の変形が局所的に発生することによって、ユーザに伝わる感触の変化を最小限に抑えることができる。
ベース部材66には凹部としてのポケット71が複数設けられている。ポケット71は圧力が加わった場合の圧力センサ64の変形代(しろ)となる。図8では半球形状をしたポケット71の例を示すが、これに限らず、例えば貫通穴部でもよい。
落下等によって電子機器に強い衝撃が加わった場合、外装部材65には弾性部材61を介して衝撃が加わることになる。そのため、圧力センサ64は外装部材65よりも内側に配置される。外装部材65は、衝撃耐性を高めるために、リブ(不図示)等で補強されている。圧力センサ64の導体パターン170は、外装表面に垂直な方向から見た場合にポケット71と投影上重なる位置に配線される。落下等で強い衝撃が加わった場合でも、圧力センサ64の導体パターン170には、弾性部材61が変形可能な範囲内での変形の影響しか及ばないので、圧力センサ64の導体パターン170に加える力に対して限度が設定される。従って、圧力センサ64の導体パターン170を断線させるほどの力が加わらないように、弾性部材61の最大変形量が設定され、圧力センサ64の導体パターン170が断線する可能性は低い。
操作入力装置における押圧箇所の部分が平面形状である場合には、図8に示す構造により、静電容量センサまたは圧力センサが一定以上に変形しなくなる。よって強い衝撃荷重から静電容量センサまたは圧力センサの配線を保護することができる。しかしながら、操作入力装置における押圧の該当箇所が曲率を持った曲面形状部である場合には、さらに工夫が必要である。この場合、圧力センサにFPC等の配線部材が用いられていると、圧力方向に対して配線部材が強度を有することや、圧力を加えた際に逆側に曲率を変える動作が起こりうる。圧力と配線部材の変形量との関係が崩れてしまう可能性がある。圧力検出機能を持つ外観面の部分が曲率を有する形状である場合、耐衝撃性能を向上させた結果として、圧力の検出精度が低下するという課題がある。そこで曲面形状部に対する構造について以下に説明する。
図9は、図8に示す構成、すなわち圧力センサ64の導体パターン170の断線を抑制するための構成を、曲面形状部に適用した場合の断面図である。複数の突起部72は、外装部材65に形成された複数の孔部65bをそれぞれ貫通した状態で圧力センサ64と接している。
ユーザが、例えばデジタルカメラ100を落下させてしまった場合、曲面形状をした外観面を有する部分に衝撃時の荷重が集中する可能性がある。集中する荷重に対し、導体パターン170の断線対策をより十分に講じることが必要である。
図9に示す圧力センサ64は、外観面(操作入力装置の外表面)である曲面に対して一定の間隔を保って配置されている。圧力センサ64についても所定の曲率で配置されている。圧力センサ64に用いられるFPC等は可撓性を有するが、図9のように円弧状に丸められた場合には、外観方向からの機械的な強度が高まる。つまり、平面状に配置されている場合と比較して、曲面形状に対して配置された圧力センサ64は変形し難くなる。圧力センサ64の変形量が小さいと、圧力センサ64の導体パターン170の電気抵抗値Rの変化は小さくなる。特に、ユーザの加えた圧力が小さい場合には、突起部72が圧力センサ64を押圧しても、圧力センサ64の変形量が小さいので、圧力センサ64の導体パターン170の電気抵抗値Rがあまり変化しない。場合によっては圧力が検出されないことも起こりうる。
また図9において、突起部72が圧力センサ64を押圧していない状態では、圧力センサ64は凸に変形しており、この状態を「上に凸」と定義する。ユーザが外部から圧力を加えた場合、突起部72は圧力センサ64を「下に凸」へ変形させる方向の力を加える。この変形の間、単純に凸方向への変化(凸の向きの変化)が生じたのみであり、圧力センサ64の導体パターン170の長さL、および電気抵抗値Rは変化しないことが起こりうる。従って、実際に加えられた圧力と、電気抵抗値Rとの関係が崩れてしまう可能性がある。
図示は省略するが、外観面が球面形状である場合にも上記と同様であり、圧力センサ64に用いられるFPC等は、特に球面形状に配置させること自体が困難である。なお、本明細書中にて球面形状は「曲面形状」に含まれる。複数の要因により、図9の構成を適用した場合、ユーザが意図的に行う操作の押圧力が正しく検出されないか、あるいは検出精度が低下するという課題がある。図10を参照して、この課題に対する解決策について説明する。
図10(A)は、曲面形状部において圧力検出精度の低下を防ぐための構成を示す断面図である。複数の突起部72は、基本的に弾性部材61の外観面に対してほぼ垂直に立設されている。これは、ユーザが弾性部材61の外観面に対し垂直方向に加えた力を圧力センサ64へ正確に伝えるためである。複数の突起部72は、外装部材65に形成された複数の孔部65bをそれぞれ貫通した状態で、突起部72の先端部が圧力センサ64と接している。突起部72の先端部と圧力センサ64とが接している面内の所定領域は、圧力センサ64の圧力検出エリアとなる。圧力検出エリアにおいて、圧力センサ64は、曲率を持つ外観形状に対応する曲面形状ではなく、ほぼ平面形状である。圧力検出エリア内の圧力センサ64は、弾性部材61から一定のオフセットをもつ位置には配置されず、弾性部材61の曲面形状に比して曲率半径をできるだけ大きくし、平面に近づけたレイアウトである。つまり圧力センサ64は、圧力検出エリアにおける曲率半径が外観形状に対応する曲面の曲率半径よりも大きい。
圧力センサ64の形状を、より平面に近づけてレイアウトを行うことで、圧力センサ64が突起部72によって圧力を受けた際、圧力センサ64は図8に示す構成と同様の変形しやすさを有する。この場合、圧力センサ64は常に「下に凸」方向への変形となるので、実際に加えられた圧力と電気抵抗値Rとの関係が崩れることはなくなる。つまり、圧力センサ64が受けた圧力に応じて、導体パターン170の断面積Aおよび長さLが変化することになる。
図10(B)は、突起部72の圧力を2成分に分解して示す断面図である。弾性部材61は曲面部にて複数の突起部72を有しており、圧力センサ64は曲率を持つ外観形状に対応するオフセット位置に配置されていない。圧力検出エリア内の圧力センサ64はほぼ平面形状であるため、少なくとも1つの突起部72と圧力センサ64との間に成す角度が垂直ではなくなる。図10(B)では、3つの突起部721,722,723の例を示す。
突起部721は圧力センサ64に対して垂直であり、圧力センサ64における接触位置での法線方向に延在する。一方で、突起部722、723はいずれも、圧力センサ64に対して垂直ではなく、圧力センサ64における接触位置での法線方向に対して傾いている。
図10(B)に矢印で示す圧力73は、圧力センサ64に対して垂直ではない突起部722が伝える圧力を表し、2つの成分74と75に分解される。第1の成分74は、圧力センサ64に垂直な方向の成分、つまり、圧力73を圧力センサ64の法線方向に射影した成分である。第2の成分75は、圧力センサ64に平行な方向の成分、つまり圧力73を圧力センサ64の接線方向に射影した成分である。圧力センサ64に配線される導体パターン170の変形に寄与する成分、すなわち圧力センサ64が検出できる成分は、圧力センサ64に垂直な方向の成分74である。従って、圧力センサ64の検出値は、圧力センサ64に垂直な方向の成分74に対応する値であり、突起部722が伝える圧力73の値を検出値から算出することができる。
図10(B)の突起部722は、圧力センサ64の面における法線方向に対して、角度(θと記す)をもって動作する。ユーザが手指等で加える圧力73の値をFと表記し、突起部722上の弾性部材61に圧力が加えられたときに圧力センサ64が検出する圧力の値をfと表記する。圧力73の値Fは、検出圧力値fと余弦関数cosθにより、下記式(2)で表される。
突起部72と、圧力センサ64の押圧位置での法線方向とが成す角度θに応じて、圧力センサ64が検出したfをFに換算することで、ユーザが加えた圧力の値を導出できる。圧力センサ64は平面状に配置されているので、曲面状の場合と比較して、圧力と電気抵抗値の変化との関係が一意的である。よって、FPCの配置が困難な、球面形状の外観の部分においても、より高精度で圧力値を検出することが可能となる。
カメラ100のグリップ部60に上記の構成を適用する場合、外装部材65と圧力センサ64との間に静電容量センサ63を配置することで、ユーザの手指等の接触位置を検出することができる。
本実施形態によれば、外観面が曲面形状であっても、衝撃に強く、押圧力の検出をより高い精度で行うことが可能な操作入力装置を提供することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。