以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用してフルカラー画像を形成することが可能な、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラープリンタである。
本実施例の画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するためのステーション9Y、9M、9C、9Kを有する。これらの4個のステーション9Y、9M、9C、9Kは、後述する中間転写ベルト7の表面の移動方向に沿って一定の間隔をおいて1列に並べられて配置されている。
なお、各ステーション9Y、9M、9C、9Kにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用に設けられた要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して、総括的に説明することがある。ステーション9は、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。図2(a)は、代表してY用のステーション9Yを示す概略断面図である。
トナー像を担持する像担持体としての、ドラム型の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1は、駆動源によって図中矢印R1方向(時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1は、負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、アルミニウム製のドラム基体上に感光層を有している。
回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に帯電処理される。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に所定の圧接力で接触するようにして配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に伴って従動して回転する。本実施例では、YMC用の帯電ローラ2Y、2M、2Cには、帯電工程時に、共通のYMC用帯電電源43から、負極性の帯電バイアス(帯電電圧)が印加される。また、本実施例では、K用の帯電ローラ2Kには、帯電工程時に、K用帯電電源44から、負極性の帯電バイアスが印加される。ここで、感光ドラム1の回転方向に関し帯電ローラ2による帯電処理が行われる位置が帯電位置(帯電部)Paである。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転方向における帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部の上流側及び下流側に形成される帯電ローラ2と感光ドラム1との間の微小な間隙の少なくとも一方で生じる放電によって感光ドラム1を帯電処理する。ただし、簡単のため、帯電ローラ2と感光ドラム1との接触部が帯電位置Paであると擬制して考えてもよい。
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての露光装置(レーザースキャナ装置)3によって画像情報に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。ここで、感光ドラム1の回転方向に関し露光装置3による露光が行われる位置が露光位置(露光部)Pbである。
感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーを用いて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ4aと、現像容器4bと、を有する。なお、本実施例では、画像形成装置100は、現像装置4の現像ローラ4aを感光ドラム1に対して当接及び離間させることが可能とされており、現像工程時に現像ローラ4aが感光ドラム1に当接させられる(接触現像方式)。現像容器4b内に収納されたトナーは、現像ローラ4a上に薄層状に担持される。現像ローラ4a上に担持されたトナーは、駆動源によって現像ローラ4aが回転駆動されることで、感光ドラム1との対向部(当接部)に搬送される。また、現像工程時に、現像ローラ4aには、現像電源45(図6)から、負極性の現像バイアス(現像電圧)が印加される。これにより、感光ドラム1上に形成された静電潜像に応じて、現像ローラ4aから感光ドラム1にトナーが移動する。なお、現像バイアスは、現像ローラ4aが感光ドラム1に当接している際に現像ローラ4aに印加される。本実施例では、一様に帯電処理させられた後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着(静電吸着)する(反転現像方式)。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、トナー像を構成するトナーは主として負極性の電荷を有している。各現像装置4Y、4M、4C、4Kには、それぞれYMCKの各色のトナーが収納されている。ここで、感光ドラム1の回転方向に関し現像ローラ4aから感光ドラム1へのトナーの供給が行われる位置(本実施例では現像ローラ4aと感光ドラム1との当接部)が現像位置(現像部)Pcである。
4個の感光ドラム1と対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラ(支持部材)としてのテンションローラ31、2次転写対向ローラ32、駆動ローラ33に掛け回されて、所定の張力で張架されている。中間転写ベルト7は、駆動源によって駆動ローラ33が回転駆動されることで駆動力が伝達され、図中矢印R2方向(反時計回り)に回転(周回移動)する。中間転写ベルト7の内周面側(裏面側)には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kが配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて押圧され、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する1次転写部T1を形成する。上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用により、回転している中間転写ベルト7上に1次転写される。1次転写工程時に、1次転写ローラ5には、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の1次転写バイアス(1次転写電圧)が印加される。本実施例では、1次転写工程時に、YMCK用の1次転写ローラ5には、共通の1次転写電源40から電圧が印加される。例えば、フルカラーモード時には、YMCK用の感光ドラム1上に形成されたYMCKの各色のトナー像が、各1次転写部T1において中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。なお、画像形成モードについては後述して更に詳しく説明する。
中間転写ベルト7の外周面側(表面側)において、2次転写対向ローラ32と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ8が配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ32に向けて押圧され、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とが接触する2次転写部T2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ8の作用により、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とに挟持されて搬送されている記録用紙などの記録材P上に2次転写される。2次転写工程時に、2次転写ローラ8には、2次転写電源41から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写バイアス(2次転写電圧)が印加される。記録材Pは、記録材収納部(図示せず)から給送され、中間転写ベルト7上のトナー像の先端が2次転写部T2に移動するタイミングに合わせて、記録材供給手段としてのレジストローラ11により2次転写部T2に搬送される。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置12へと搬送される。定着装置12は、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧し、記録材P上にトナー像を定着(溶融、固着)させる。その後、記録材Pは、画像形成装置100の装置本体の外部に排出(出力)される。
また、1次転写工程時に中間転写ベルト7に転写されずに感光ドラム1上に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1の表面に当接するようにして配置されたクリーニング部材としてのクリーニングブレード6aと、回収トナー容器6bと、を有する。ドラムクリーニング装置6は、クリーニングブレード6aによって、回転する感光ドラム1上から1次転写残トナーを掻き取って、回収トナー容器6b内に収容する。ここで、感光ドラム1の回転方向におけるクリーニングブレード6aと感光ドラム1との当接部がクリーニング位置(クリーニング部)Pdである。また、2次転写工程時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト7上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、帯電ブラシ10によって正極性に帯電させられた後に、1次転写部T1で感光ドラム1上に転移させられる。これにより、2次転写残トナーは中間転写ベルト7上から除去されて回収される。帯電ブラシ10については後述して更に詳しく説明する。
(2)転写構成
図2(b)は、本実施例における中間転写ベルト7の層構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、中間転写ベルト7は、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂をベースとした基層7aと、アクリル樹脂をベースとした薄膜コート層7bと、からなる2層構成の無端状ベルトである。本実施例では、中間転写ベルト7の基層7aとコート層7bとを含む全体の厚さは70μmである。中間転写ベルト7の各層には、適量の導電剤が添加され、電気抵抗値がコントロールされている。本実施例では、中間転写ベルト7は、温度15℃、相対湿度10%の環境(低温低湿環境)下で、表面抵抗率が1.0×1011Ω/□であり、体積抵抗率が1.0×1012Ωcmである。
中間転写ベルト7の表面抵抗率は、高抵抗抵抗率計Hiresta-UP(MCP-HT450)(三菱化学製)を用いて測定した。測定用プローブとしての金属製のUR100プローブ(MCP-HTP16)を中間転写ベルト7の表面に押し当てて使用し、対向板としてはレジテーブルUFL(MCP-ST03)のテフロン(登録商標)面(絶縁面)を使用した。そして、印加電圧250[V]、測定時間10[s]、表面抵抗測定モードの条件で、金属プローブによる中間転写ベルト7の抵抗率(単位はΩ/□)を測定した。また、中間転写ベルト7の体積抵抗率は、上記表面抵抗率の測定方法を次のように変えることで測定した。つまり、対向板にレジテーブルUFL(MCP-ST03)の金属面(導電面)を使用し、体積抵抗測定モードの条件にすることで抵抗率(単位はΩcm)を測定した。
中間転写ベルト7の基層7aのベース材料としては、本実施例のPEN樹脂以外に、例えば、PVDF(弗化ビニリデン樹脂)、ETFE(四弗化エチレン-エチレン共重合樹脂)、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂を用いることもできる。また、中間転写ベルト7のコート層7bのベース材料としては、本実施例のアクリル樹脂以外に、例えばメラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂などの硬化性樹脂を用いることもできる。
駆動ローラ33は、図中矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。これによって、中間転写ベルト7は、感光ドラム1の周速度と略等しい周速度(プロセススピード)で図中矢印R2方向に回転(周回移動)する。なお、駆動ローラ33はGNDに接続されている。
1次転写ローラ5は、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材の層を有して構成される。本実施例では、1次転写ローラ5は、芯金(芯材)としての直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、弾性部材としての厚さ4mmのNBRヒドリンゴムの層を被覆したものを用いた。本実施例では、1次転写ローラ5の電気抵抗値は、1次転写ローラ5をアルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、50mm/secで回転させた状態で100Vを印加した場合において1.0×105Ωである。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に当接し、中間転写ベルト7と感光ドラム1との接触部に1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。そして、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の移動に伴って従動して回転する。1次転写ローラ5には、1次転写電源40が接続されており、この1次転写電源40から1次転写ローラ5に正極性の直流電圧である1次転写バイアスが印加される。1次転写電源40には、1次転写電流検知手段としての1次転写電流検知部(電流検知回路)50が接続されている。1次転写電流検知部50の検知結果を示す信号は、制御部70に入力される(図6)。
本実施例では、ジョブごとの前回転工程(すなわち、画像形成直前)において、ATVC制御法(Active Transfer Voltage Control:以下「ATVC」という。)により、そのジョブにおける1次転写バイアスが設定される。つまり、制御部70は、ジョブの動作開始指令(開始指示、開始信号)が入力されると、感光ドラム1、中間転写ベルト7などの回転駆動を開始し、後述する画像形成モードに応じて、所定の感光ドラム1の表面を帯電ローラ2によって所定の電位に帯電させる。その後、制御部70は、1次転写電流検知部50により検知される電流値が予め設定された目標電流値になるように、1次転写ローラ5に印加する1次転写バイアスを定電流制御する。また、制御部70は、その際の1次転写電源40の出力電圧値に基づいて、画像形成時(1次転写時)に1次転写電源40から1次転写ローラ5に印加する1次転写バイアスの電圧値を決定する。そして、制御部70は、画像形成時には、その決定した電圧値で1次転写バイアスを定電圧制御する。なお、1次転写電源40の出力電圧値は、電圧出力の制御値から求めたり、電圧検知手段としての電圧検知部(電圧検知回路)によって検知したりすることができる。また、1次転写バイアスの電圧値は、上記定電流制御時の出力電圧値自体であってもよいし、その出力電圧値に基づいて所定の処理を行って求めた値であってもよい。なお、本実施例では、1次転写電源40は、正極性及び負極性のバイアスを選択して1次転写ローラ5に印加することができる。
2次転写ローラ8は、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材の層を有して構成される。本実施例では、2次転写ローラ8は、芯金(芯材)としての直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、弾性部材としての厚さ6mmのNBRヒドリンゴムの層を被覆したものを用いた。本実施例では、2次転写ローラ8の電気抵抗値は、2次転写ローラ8をアルミシリンダ上に9.8Nの力で押圧し、50mm/secで回転させた状態で1000Vを印加した場合において3.0×107Ωである。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ32に当接し、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8との接触部に2次転写部(2次転写ニップ)T2を形成する。そして、2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7、又は中間転写ベルト7及び記録材Pの移動に伴って従動して回転する。2次転写ローラ8には、2次転写電源41が接続されており、この2次転写電源41から2次転写ローラ8に正極性の直流電圧である2次転写バイアスが印加される。なお、2次転写対向ローラ32はGNDと接続されており、2次転写ローラ8に2次転写バイアスが印加されることで2次転写ローラ8から2次転写対向ローラ32に直流電流が流れる。また、本実施例では、2次転写バイアス電源41は、正極性及び負極性のバイアスを選択して2次転写ローラ8に印加することができる。
(3)トナー帯電部材
本実施例では、画像形成装置100は、2次転写後に中間転写ベルト7上に残留した2次転写残トナーを帯電させるトナー帯電部材として、導電性のブラシ部材で構成された帯電ブラシ10を有する。帯電ブラシ10は、中間転写ベルト7の外周面側において、中間転写ベルト7の回転方向に関し2次転写部T2よりも下流、かつ、1次転写部T1(最上流の1次転写部T1Y)よりも上流に配置されている。本実施例では、帯電ブラシ10は、中間転写ベルト7の外周面側において、駆動ローラ33と対向する位置で中間転写ベルト7の表面に当接するように、中間転写ベルト7に対して固定位置に配置されている。ここで、中間転写ベルト7の回転方向に関し帯電ブラシ10と中間転写ベルト7との当接部がトナー帯電位置(トナー帯電部)Peである。
本実施例では、帯電ブラシ10は、導電性を付与したナイロン(導電性材料)の繊維を使用して構成されたブラシ部10aを有する。本実施例では、ブラシ部10aのブラシ繊維の繊度は7デシテックス、パイル長さは5mm、ブラシ幅(中間転写ベルト7の表面の移動方向と略平行な方向)は5mmである。また、本実施例では、中間転写ベルト7の幅方向(表面の移動方向と略直交する幅方向)と略平行な方向におけるブラシ部10aの長さは、中間転写ベルト7の同方向の幅と同等(中間転写ベルト7上のトナー像が形成され得る画像形成領域の幅以上)である。
本実施例では、帯電ブラシ10の電気抵抗値は、次のようにして測定した場合において3.0×107Ωである。つまり、帯電ブラシ10を、アルミシリンダに対してブラシ部10aのパイル長さ方向にパイルの先端から1mm進入させた状態で固定した。そして、中間転写ベルト7を50mm/secで回転させた状態で帯電ブラシ10に500Vを印加して帯電ブラシ10の電気抵抗値を測定した。
なお、トナー帯電部材は、導電性のブラシ部材に限定されるものではない。トナー帯電部材としては、例えば次のような導電性のローラ部材を用いてもよい。つまり、例えばウレタンゴムやNBRヒドリンゴムを使用して形成された導電性の発泡弾性体の層を有する回転可能なスポンジローラを用いることができる。また、例えばEPDMゴムを使用して形成された導電性のソリッド弾性体の層を有する回転可能なソリッド弾性体ローラを用いることができる。また、ローラ状に形成された導電性のブラシ部を有する回転可能なファーブラシローラを用いることができる。
帯電ブラシ10には、クリーニング電源42が接続されている。また、クリーニング電源42には、クリーニング電流検知手段としてのクリーニング電流検知部(電流検知回路)52が接続されている。クリーニング電流検知部52の検知結果を示す信号は、制御部70に入力される(図6)。本実施例では、クリーニング動作時に、帯電ブラシ10には、クリーニング電源42からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧であるクリーニングバイアス(クリーニング電圧)が印加される。クリーニングバイアスの出力値は、制御部70によって、クリーニング電流検知部52の検知結果に基づいてコントロールされる。本実施例では、クリーニングバイアスの出力値は、クリーニング電流検知部52によって検知される電流値が予め設定された目標電流値になるように定電流制御される。この目標電流値としては、2次転写残トナーを過剰に帯電させること、及び2次転写残トナーの帯電不足によりクリーニング不良が生じることを十分に抑制することのできる値が選択される。本実施例では、クリーニングバイアスの目標電流値は30μAである。
なお、駆動ローラ33はGNDと接続されており、帯電ブラシ10にクリーニングバイアスが印加されることで帯電ブラシ10から駆動ローラ33に直流電流が流れる。また、本実施例では、クリーニング電源42は、正極性及び負極性のバイアスを選択して帯電ブラシ10に印加することができる。
クリーニング動作時に、帯電ブラシ10に正極性のクリーニングバイアスが印加されることで、帯電ブラシ10から中間転写ベルト7に向けて正の電界が形成される。これにより、2次転写残トナーのうち負極性に帯電したトナーが帯電ブラシ10に静電的に回収(一時回収)される。また、このとき、帯電ブラシ10と2次転写残トナーとの間の放電により、中間転写ベルト7上のトナー又は帯電ブラシ10に一時回収されたトナーが正極性側に帯電させられる。なお、トナー帯電部材がブラシ部材である場合、トナー帯電部材によって中間転写ベルト7上の2次転写残トナーを機械的に散らす効果も得られ、2次転写残トナーを均一に帯電させやすくなる。帯電ブラシ10によって正極性に帯電させられたトナーは、中間転写ベルト7上に載ったまま又は帯電ブラシ10から中間転写ベルト7上に静電的に吐き出されて、トナー帯電位置Peを通過する。このトナーは、中間転写ベルト7の回転によって1次転写部T1へと搬送される。そして、このトナーは、例えばフルカラーモード時には、主にY用のステーション9Yにおいて、1次転写ローラ5Yに印加される正極性の1次転写バイアスの作用により、中間転写ベルト7から感光ドラム1Yに転移させられる。この感光ドラム1Yに転移させられたトナーは、その後1次転写残トナーと同様にしてドラムクリーニング装置6Yにより回収される。なお、後述するモノモード時には、2次転写残トナーは、主にK用のステーション9Kにおいて回収される。
このように、本実施例では、帯電ブラシ10によって2次転写残トナーを一時回収すると共にトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる。その後、このトナーを1次転写部T1で感光ドラム1に転移させて回収する。これにより、2次転写残トナーを中間転写ベルト7上から除去する。上記中間転写ベルト7から感光ドラム1へのトナーの転移は、1次転写工程と同時に行うことができる。つまり、本実施例では、中間転写ベルト7は、所謂、転写同時回収によってクリーニングされる。
本実施例では、中間転写ベルト7が回転している際には常に帯電ブラシ10にクリーニングバイアスが印加される。
(4)画像形成モード
本実施例の画像形成装置100は、画像形成モードとして、YMCKの各色のトナー像を形成してフルカラー画像を形成することが可能なフルカラーモードと、K単色のトナー像を形成してK単色画像を形成することが可能なモノモードと、を実行可能である。
<フルカラーモード>
フルカラーモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する。また、フルカラーモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1の帯電処理が行われる。また、フルカラーモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、現像ローラ4aが感光ドラム1に当接する。また、フルカラーモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、1次転写ローラ5に1次転写バイアスが印加され、1次転写ローラ5から感光ドラム1に電流が流れる。また、フルカラーモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1が回転する。図1は、フルカラーモード時(及び後述するモノCモード時)の画像形成装置100の状態を示している。
本実施例では、フルカラーモードにおいてYMC用帯電電源43からYMC用の帯電ローラ2Y、2M、2Cに印加される帯電バイアス、K用帯電電源44からK用の帯電ローラ2Kに印加される帯電バイアスは、それぞれ-1000Vに設定されている。これにより、YMCK用の感光ドラム1の帯電位置Paを通過した後の表面電位(帯電電位)はそれぞれ-500Vとされる。なお、本実施例では、露光装置3によって露光されない場合、感光ドラム1の表面が帯電位置Paから1次転写部T1まで移動する間における感光ドラム1の表面電位の減衰はほとんどない。ここでは、帯電処理後にトナー像が形成されることなく1次転写部T1に到達する感光ドラム1上の非画像部の表面電位である非画像部電位は、感光ドラム1の回転方向に関し露光位置Pbよりも下流かつ現像位置Pcよりも上流の位置における表面電位で代表する。また、本実施例では、フルカラーモードにおいて1次転写電源40からYMCK用の1次転写ローラ5に印加される1次転写バイアスは、次のように設定される。つまり、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて1次転写ローラ5から感光ドラム1に流れる電流を合算した電流値が目標電流値である28μAとなるようにATVCで求められた電圧値とされる。これは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kでそれぞれ7μAの電流(1次転写電流)を流すことを目標とするものである。
<モノモード>
本実施例の画像形成装置100は、モノモードとしては、次の「モノAモード」、「モノBモード」、「モノCモード」の3つのモノモードを実行可能である。
(モノAモード)
モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては感光ドラム1と中間転写ベルト7とが離間され、K用のステーション9Kにおいてのみ感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する。また、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては感光ドラム1の帯電処理は行われず、K用のステーション9Kにおいてのみ感光ドラム1の帯電処理が行われる。また、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては現像ローラ4aが感光ドラム1から離間され、K用のステーション9Kにおいてのみ現像ローラ4aKが感光ドラム1Kに当接する。また、本実施例では、YMCK用の1次転写ローラ5に共通の1次転写電源40から電圧が印加されるので、モノAモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて1次転写ローラ5に1次転写バイアスが印加される。ただし、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1と中間転写ベルト7とが離間され、更に本実施例では中間転写ベルト7と1次転写ローラ5とが離間される。そのため、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては1次転写ローラ5から感光ドラム1に電流(1次転写電流)は流れない。また、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては感光ドラム1の回転は停止され、K用のステーション9Kにおいてのみ感光ドラム1が回転する。図3は、モノAモード時の画像形成装置100の状態を示している。
本実施例では、モノAモードにおいてK用帯電電源44からK用の帯電ローラ2Kに印加される帯電バイアスは-1000Vに設定されている。これにより、K用の感光ドラム1Kの表面電位(帯電電位)は-500Vとされる。また、本実施例では、モノAモードにおいて1次転写電源40からYMCK用の1次転写ローラ5に印加される1次転写バイアスは、次のように設定される。つまり、K用のステーション9Kにおいて1次転写ローラ5から感光ドラム1に流れる電流値が7μAとなるようにATVCで求められた電圧値とされる。
モノAモードでは、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1と中間転写ベルト7とが離間されることで、その感光ドラム1や中間転写ベルト7の劣化や消耗を抑制することができる。また、モノAモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1の帯電ローラ2による帯電処理を行わないことで、その帯電ローラ2や感光ドラム1の劣化や消耗を抑制することができる。
(モノBモード)
モノBモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する。また、モノBモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては感光ドラム1の帯電処理は行われず、K用のステーション9Kにおいてのみ感光ドラム1の帯電処理が行われる。また、モノBモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては現像ローラ4aが感光ドラム1から離間され、K用のステーション9Kにおいてのみ現像ローラ4aKが感光ドラム1Kに当接する。また、本実施例では、YMCK用の1次転写ローラ5に共通の1次転写電源40から電圧が印加されるので、モノBモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて1次転写ローラ5に1次転写バイアスが印加される。ただし、モノBモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1の帯電処理が行われないため、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては1次転写ローラ5から感光ドラム1に電流(1次転写電流)は流れない。これは、感光ドラム1と1次転写ローラ5との間の電位差が放電閾値(本実施例では、中間転写ベルト7が介在した状態で1000V程度)より小さいためである。なお、感光ドラム1の帯電状態によっては、1次転写バイアスの印加開始時などに一時的に1次転写ローラ5と感光ドラム1との間に電流が流れる場合がある。しかし、感光ドラム1の帯電処理が行われないため、画像形成動作中に1次転写ローラ5から感光ドラム1に継続して電流が流れることはない。また、モノBモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1が回転する。図4は、モノBモード時の画像形成装置100の状態を示している。
本実施例では、モノBモードにおいてK用帯電電源44からK用の帯電ローラ2Kに印加される帯電バイアスは-1000Vに設定されている。これにより、K用の感光ドラム1Kの表面電位(帯電電位)は-500Vとされる。また、本実施例ではモノBモードにおいて1次転写電源40からYMCK用の1次転写ローラ5に印加される1次転写バイアスは、次のように設定される。つまり、K用のステーション9Kにおいて1次転写ローラ5から感光ドラム1に流れる電流値が7μAとなるようにATVCで求められた電圧値とされる。
モノBモードでは、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1の帯電ローラ2による帯電処理を行わないことで、その帯電ローラ2や感光ドラム1の劣化や消耗を抑制することができる。また、モノBモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいても、感光ドラム1と1次転写ローラ5とによって中間転写ベルト7が挟持されている。そのため、例えば記録材Pとして比較的厚さ(坪量)が大きい厚紙を用いる場合などに記録材Pが2次転写部T2に進入する際に生じることのある中間転写ベルト7の搬送速度変動を抑制することができる。
(モノCモード)
モノCモードは、詳しくは後述するようにモノモード時の画像の濃度変化や濃度ムラを抑制することを可能とする本発明に従うモノモードである。
モノCモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する。また、モノCモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて感光ドラム1の帯電処理が行われる。また、本実施例では、モノCモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、現像ローラ4aが感光ドラム1に当接する。また、モノCモードでは、詳しくは後述するように、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、1次転写ローラ5に1次転写バイアスが印加され、1次転写ローラ5から感光ドラム1に電流(1次転写電流)が流れる。また、モノCモードでは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて、感光ドラム1が回転する。したがって、モノCモード時の画像形成装置100の状態は、図1に示すフルカラーモード時の状態と同じである。
本実施例では、モノCモードにおいてトナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cの帯電ローラ2Y、2M、2Cに印加される帯電バイアスの絶対値は、フルカラーモードにおける帯電バイアスの絶対値よりも大きく設定されている。本実施例では、モノCモードにおいてYMC用のステーション9Y、9M、9Cの帯電ローラ2Y、2M、2Cに印加される帯電バイアスは、-1100Vに設定されている。これにより、YMC用の感光ドラム1Y、1M、1C上の非画像部電位は、それぞれ-600Vとされる。また、本実施例では、モノCモードにおいてK用帯電電源44からK用の帯電ローラ2Kに印加される帯電バイアスは-1000Vに設定されている。これにより、K用の感光ドラム1Kの表面電位(帯電電位)は-500Vとされる。また、モノCモードでは、1次転写電源40からYMCK用の1次転写ローラ5に印加される1次転写バイアスは、次のように設定される。つまり、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kにおいて1次転写ローラ5から感光ドラム1に流れる電流を合算した電流値が目標電流値である31μAとなるようにATVCで求められた電圧値とされる。これは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cではそれぞれ8μAの電流(1次転写電流)を流し、K用のステーション9Kでは7μAの電流(1次転写電流)を流すことを目標とするものである。
モノCモードでは、上記設定により、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいても、感光ドラム1と1次転写ローラ5との間の電位差が画像形成動作中に継続して放電閾値以上となる。そのため、モノCモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいても、画像形成動作中に1次転写ローラ5から感光ドラム1に継続して電流が流れる。モノCモードの作用、効果については後述して詳しく説明する。
<離接機構等>
本実施例では、画像形成装置100は、モノモードとして上述のモノAモード、モノBモード、モノCモードを選択して実行することが可能とされている。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、モノモードとして、少なくともモノCモードを実行可能とすればよい。また、モノAモードとモノCモードとを選択して実行可能としてもよいし、あるいはモノBモードとモノCモードとを選択して実行可能としてもよい。
現像装置4の現像ローラ4aを感光ドラム1に対して当接及び離間させる現像離接手段としての現像離接機構80(図6)としては、利用可能な任意の構成のものを用いることができる。例えば、現像離接機構80は、駆動源から駆動力が伝達されて現像装置4に作用する移動部材によって、現像装置4を回動移動又はスライド移動させるように構成することができる。これによって、現像ローラ4aを感光ドラム1に対して近付く方向及び離れる方向に移動させて、感光ドラム1に対して当接及び離間させることが可能となる。
また、感光ドラム1と中間転写ベルト7とを接触及び離間させる1次転写離接手段としての1次転写離接機構90(図6)としては、利用可能な任意の構成のものを用いることができる。例えば、1次転写離接機構90は、駆動源から駆動力が伝達されて1次転写ローラ5に作用する移動部材によって、1次転写ローラ5を回動移動又はスライド移動させるように構成することができる。これによって、1次転写ローラ5を感光ドラム1に対して近付く方向及び離れる方向に移動させて、中間転写ベルト7を感光ドラム1に対して接触及び離間させることが可能となる。本実施例では、1次転写離接機構90は、1次転写ローラ5を中間転写ベルト7の内周面から離間させることで、感光ドラム1から中間転写ベルト7を離間させる。図3では、便宜上、感光ドラム1が中間転写ベルト7から離れる方向に移動するように図示されているが、本実施例では1次転写離接機構90は、感光ドラム1は移動させない(ただし、感光ドラム1を移動させる構成としてもよい。)。
(5)モノCモード作用
中間転写ベルト7の表面電位は、2次転写部T2及びトナー帯電部eにおける帯電と、1次転写部T1における除電と、の関係で決まる。2次転写ローラ8及び帯電ブラシ10は、それぞれ中間転写ベルト7の表面(外周面)に当接し、正極性のバイアスが印加される。そのため、2次転写部T2及びトナー帯電部eでは、中間転写ベルト7には表面から裏面に向かう方向に電流が流れる。一方、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の裏面(内周面)に当接され、正極性のバイアスが印加される。このとき、中間転写ベルト7を介して1次転写ローラ5と当接する感光ドラム1の表面が帯電処理されて負極性の電位が維持されていると、1次転写部T1において中間転写ベルト7には裏面から表面に向かう方向に電流が流れる。そのため、2次転写部T2及びトナー帯電部eでは中間転写ベルト7の表面が正極性に帯電させられ、電流が流れている1次転写部T1ではその正極性の電荷が除電される。特に、中間転写ベルト7の回転方向に関し2次転写部T2よりも下流側に帯電ブラシ10などのトナー帯電部材が設けられている構成では、トナー帯電部eで中間転写ベルト7の表面に付与された電荷を1次転写部T1で十分に除電することが重要となる。この除電が不十分である場合には、中間転写ベルト7が許容範囲を超えてチャージアップしてしまうことがある。この中間転写ベルト7のチャージアップは、中間転写ベルト7が少なくとも表面(外周面)を形成する層として電気抵抗が比較的高い層(例えば表面抵抗率が1.0×109Ω/□~1.0×1013Ω/□)を有する場合に生じやすい。なお、中間転写ベルト7は単層構成であってもよい。
ここで、フルカラーモードでは、4つの1次転写部T1で電流が流れる。そのため、中間転写ベルト7の表面に付与された電荷は十分に除電され、中間転写ベルト7のチャージアップの程度は比較的小さい。しかし、上述のモノAモード、モノBモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cでは1次転写部T1に電流が流れず、K用のステーション9Kの1つの1次転写部T1でしか電流が流れない。そのため、中間転写ベルト7の表面に付与された電荷の除電が不足して、チャージアップの程度が比較的大きくなり、許容範囲を超えてしまう場合がある。特に、低温低湿環境下では、中間転写ベルト7の表面に付与された電荷の減衰が遅いため、中間転写ベルト7がトナー帯電位置Peを通過するごとに中間転写ベルト7の表面電位は上昇する傾向がある。そのため、画像形成枚数が比較的多い連続画像形成のジョブを実施した場合などに、中間転写ベルト7のチャージアップが許容範囲を超えてしまうことがある。中間転写ベルト7のチャージアップが許容範囲を超えると、1次転写性が低下して画像濃度が低下する傾向となる。その結果、前述のように、同一ジョブ内で画像の濃度が変化したり、トナー帯電部材として帯電ブラシ10を用いる場合などにスジ状の濃度ムラ(1次転写ムラ)が助長されたりすることがある。
そこで、本実施例の画像形成装置100は、モノモードを、中間転写ベルト7の表面電位の上昇を抑制して、連続画像形成動作時の画像の濃度変化や濃度ムラを抑制することのできるモノCモードで実行することが可能とされている。つまり、モノCモードでは、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cの帯電ローラ2Y、2M、2Cに印加する帯電バイアスの絶対値を、フルカラーモードにおける帯電バイアスの絶対値よりも大きくする。これにより、モノCモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいても、画像形成動作中に1次転写ローラ5から感光ドラム1に継続して電流を流し、中間転写ベルト7の表面の電荷を除電する。
(6)効果確認
次に、本実施例の効果を確認するために行った画像出力実験の結果について説明する。画像出力実験は、上述のモノCモードである本実施例と、比較例1と、比較例2と、について行った。表1は、本実施例、比較例1、2における各ステーションでの電位関係を示す。
比較例1は、上述のモノBモードに対応する。つまり、比較例1では、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける帯電バイアスは0Vである。また、1次転写バイアスは、K用のステーション9Kで流れる電流が目標電流値である7μAとなるようにATVCで求められた電圧値で定電圧制御した。なお、上述のモノAモードは、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写部T1で電流が流れない点で、比較例1(モノBモード)と同等であるため、比較例1と同様の実験結果となる。
比較例2は、上述のフルカラーモードと同じ電位関係で、YMCK用のステーション9Y、9M、9Cでは露光装置3により静電像を形成しない場合に対応する。つまり、比較例2では、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける帯電バイアスは、フルカラーモードの場合と同じ-1000Vである。また、比較例2では、1次転写バイアスは、フルカラーモードの場合と同じ、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kで流れる電流の合計が目標電流値である28μAとなるようにATVCで求められた電圧値で定電圧制御した。
一方、本実施例(モノCモード)では、前述のように、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける帯電バイアスは-1100Vであり、その絶対値はフルカラーモードにおける帯電バイアスの絶対値よりも大きい。また、本実施例(モノCモード)では、1次転写バイアスは、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kで流れる電流の合計が目標電流値である31μAとなるようにATVCで求められた電圧値で定電圧制御した。
なお、クリーニングバイアスは、本実施例、比較例1、2のいずれにおいても、目標電流値である30μAで定電流制御した。
ここで、感光ドラム1上の非画像部電位と、中間転写ベルト7上の画像形成領域が1次転写部T1を通過している時に1次転写ローラ5に印加される1次転写バイアスと、の差分(電位差)を、「1次転写コントラスト」とする。なお、上記中間転写ベルト7上の画像形成領域は、中間転写ベルト7上の中間転写ベルト7の回転方向に関するトナー像が1次転写され得る領域である。つまり、1次転写部T1を通過した直後に2次転写部T2で記録材Pと接触する領域のうち、トナー像が形成され得る領域である。中間転写ベルト7上の画像形成領域間(所謂、紙間)の領域において1次転写バイアスが表1に示した値とは異なる値に変更される場合があってもよい。ここでは、画像形成動作中の1次転写バイアスの設定はATVCで求められた値で一定とした。
表1に示すように、モノCモード(本実施例)の実行時のトナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写コントラストは、フルカラーモードの実行時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写コントラストよりも大きい。なお、フルカラーモードの実行時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写コントラストは、表1に示す比較例2の1次転写コントラストに対応する。
画像出力実験は、次の条件で行った。温度15℃、相対湿度10%の環境(低温低湿環境)下にて、記録材PとしてGFC-081(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用い、K(ブラック)の50%ハーフトーン画像を30枚連続で形成して出力した。プロセススピードは150mm/sec、スループットは1分間に25枚とした(普通紙モード)。サンプリングした評価画像について、連続画像形成の1枚目、10枚目、20枚目、30枚目の画像濃度を測定し、1枚目の測定値に対する濃度変化率を確認した。画像濃度は記録材Pの4隅付近と中央部の5箇所を測定し、その平均値をその枚数での画像濃度とした。画像濃度の測定には、分光濃度計(X-Rite500series)を用いた。また、ここでいう濃度変化率は、連続画像形成の1枚目の画像濃度をD1、n枚目の濃度をDnとした場合に(D1-Dn)/D1と定義する。ここで、連続画像形成の1枚目のK(ブラック)の50%ハーフトーン画像の濃度測定値D1は約0.7であった。
表2は、上記画像出力実験における、本実施例、比較例1、2についてのK(ブラック)の50%ハーフトーン画像の濃度変化率の結果を示す。ここで、濃度変化率の符号(+)は濃度が低下していることを意味する。
表2から、比較例1、2では、連続画像形成枚数の増加に伴い画像の濃度変化が大きくなっているのに対して、本実施例(モノCモード)ではその画像の濃度変化がほとんどないことがわかる。
図5は、上述の画像出力実験の条件での、本実施例、比較例1、2における中間転写ベルト7の表面電位の推移を示すグラフ図である。表面電位は、表面電位測定プローブをテンションローラ31の直上(法線方向)10mm程度の位置に設置し、その信号を表面電位測定器に出力することで測定した。なお、テンションローラ31はGNDに接続されている。表面電位測定器としては、MODEL344(トレック・ジャパン株式会社)を使用し、表面電位測定プローブとしては、MODEL555P-4(トレック・ジャパン株式会社)を使用した。
比較例1では、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて、1次転写部T1に電流が流れない。つまり、比較例1では、連続画像形成中に1次転写部T1に電流が流れるのはK用のステーション9Kのみとなり、帯電ブラシ10によって中間転写ベルト7の表面に付与された電荷を除電する能力が弱い。そのため、中間転写ベルト7の表面電位の上昇も大きく、100V近くまで上昇する。
比較例2では、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて、1次転写部T1にはフルカラーモード時の非画像部と同等の電流が流れる。そのため、比較例2では、比較例1と比較して中間転写ベルト7の表面電位の上昇は緩和され、30V程度までの上昇に抑制されている。しかし、単色の画像、特に、本実施例のように視認性の高い黒色のトナーのみでハーフトーン画像を形成するモノモードの場合には、濃度変化が顕在化することがある。
一方、本実施例(モノCモード)では、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて、感光ドラム1はフルカラーモード時よりも負極性の高い電位に帯電させられている。そのため、本実施例(モノCモード)では、YMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写部T1には、フルカラーモード時の非画像部(比較例2のYMC用のステーションに流れる電流に対応)よりも多くの電流が流れる。これにより、本実施例(モノCモード)では、比較例2と比較して中間転写ベルト7の表面電位上昇は更に緩和され、20V以下の上昇に抑制されている。その結果、画像の濃度変化はほとんど発生しなかった。なお、このように画像の濃度変化が発生しない状況では、前述の帯電ブラシ10の電気抵抗ムラなどに起因する中間転写ベルト7の表面電位ムラが助長されることも抑制されるため、画像の濃度ムラも発生しない。
なお、モノCモードにおいて、YMC用のステーション9Y、9M、9Cではトナー像の形成や1次転写を行うわけではない。そのため、良好なトナー像の形成や1次転写を行うとの観点から感光ドラム1の帯電電位(非画像部電位)を選択する必要はない。つまり、モノCモードでのYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける感光ドラム1の帯電電位(非画像部電位)は、中間転写ベルト7の表面電位の上昇を抑制する観点から、フルカラーモード時の電位よりも負極性側に高い電位に適宜設定できる。
(7)制御態様
図6は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100は、制御部(コントローラ回路)70を有する。制御部70は、演算処理を行う中心的素子である制御手段としてのCPU71、記憶手段としてのROM、RAMなどのメモリ(記憶媒体)72、外部の機器との通信を制御するインターフェース部73などを有して構成される。書き換え可能なメモリであるRAMには、制御部70に入力された情報、検知された情報、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。CPU71とメモリ72とは互いにデータの転送や読込みが可能となっている。
制御部70には、前述の画像形成プロセスにより記録材Pに画像を形成する機構(エンジン)の各部が接続されている。例えば、制御部70には、各露光装置3、帯電電源43、44、単一又は複数の現像電源45、1次転写電源40、1次転写電流検知部50、クリーニング電源42、クリーニング電流検知部52などが接続されている。また、制御部70には、感光ドラム1、現像ローラ4a、中間転写ベルト7などの駆動手段としての単一又は複数の駆動源46、操作部20、現像離接機構80、1次転写離接機構90が接続されている。また、制御部70には、画像形成装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置(ホスト機器)200が接続されている。
画像形成装置100には、外部装置200からジョブ情報(動作開始指令、画像形成モード情報などの動作設定情報及び画像信号などを含む)が送信され、制御部70に入力される。制御部70は、そのジョブ情報や、画像形成装置100に設けられた各種検知手段から入力された検知結果を示す信号などに基づいて画像形成装置100の各部を制御することによって、画像形成装置100に画像形成動作を実行させる。なお、ユーザなどの操作者は、外部装置200にインストールされたプリンタドライバによって外部装置200の表示部に表示される設定画面などから、動作設定情報や動作開始指令を入力することができる。画像形成装置100に送信されたジョブ情報は、制御部70において、画像形成動作に関する指示を制御手段に入力する入力手段として機能するインターフェース部73によって、制御手段としてのCPU71に入力される。
操作者は、例えば外部装置200の表示部に表示される図7(a)に示すような設定画面210から動作設定情報を入力することができる。本実施例では、設定画面210には、少なくとも画像形成モード選択部211が設けられている。操作者は、画像形成モード選択部211を選択(クリックなど)することで、図7(b)に示すようなメニュー(プルダウンメニューなど)213から、フルカラーモード211a、モノモード(モノカラーモード)211bを選択することができる。また、操作者は、図7(a)に示すような設定画面においてモノカラーモードが選択されている状態で、詳細設定部213を選択することで、図7(c)に示すような詳細設定画面214を呼び出すことができる。そして、操作者は、詳細設定画面214において、例えばモノAモード214a、モノBモード214b、モノCモード214cから所望のモノモードを選択することができる。その後、操作者は、図7(a)に示すような設定画面210において確定部(OKボタン)212を選択することによって設定を確定することができる。そして、操作者は、図7(a)に示すような設定画面や別の画面に設けられた動作開始指示部(印刷ボタンなど)(図示せず)を選択することで、プリンタドライバを介してジョブ情報を外部装置200から画像形成装置100に送信することができる。これにより、制御部70のCPU71に画像形成モード情報を含む動作設定情報が入力される。制御部70のCPU71は、その画像形成モード情報に応じた画像形成モードで画像形成動作を実行する。
なお、本実施例では、外部装置200において動作設定情報を入力するものとして説明しているが、画像形成装置100に設けられた操作部(操作パネル)20において上記同様の設定画面などから動作設定情報を入力できるようにしてもよい。
前述のように、モノモードにおける中間転写ベルト7のチャージアップによる画像の濃度変化や濃度ムラは、低温低湿環境化で、画像形成枚数が比較的多い連続画像形成を行う場合に、ハーフトーン画像などで生じやすくなる。したがって、操作者は、環境、ジョブの画像形成枚数、形成する画像の内容などを考慮して、画像の濃度変化や濃度ムラが生じやすいと判断した場合などに、予め上述のような方法でモノCモードを選択することができる。あるいは、操作者は、出力した画像に濃度変動や濃度ムラが生じたと判断した場合などに、上述のような方法でモノCモードを選択することができる。なお、モノBモードが設けられている場合は、操作者は、前述のように記録材Pとして厚紙を用いる場合などにおける中間転写ベルト7の速度変動による画像不良を抑制したい場合などにモノBモードを選択することができる。また、モノAモードが設けられている場合は、モノAモードをデフォルトの設定とすることができる。
以上説明したように、本実施例によれば、帯電ブラシを有し転写同時回収方式を採用した構成において、低温低湿環境下で比較的枚数の多い連続画像形成をモノモードで実施する場合に生じ得る中間転写ベルトのチャージアップによる画像不良を抑制できる。
なお、本実施例では、モノCモードにおいて、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cの感光ドラム1に現像ローラ4aを当接させた。モノCモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1の帯電処理が行われるので、現像ローラ4aを感光ドラム1に当接させても、トナー像を形成するような比較的多量のトナーが感光ドラム1に付着してしまうことはない。そのため、モノCモードでは、感光ドラム1に現像ローラ4aを当接させることが可能である。ここで、モノモードにおいて画像形成枚数が比較的多い連続画像形成を行うと、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて、クリーニングブレード6aと感光ドラム1との間の摩擦力が大きくなりやすい。クリーニングブレード6aと感光ドラム1との間に介在して潤滑剤の作用をするトナーやその外添剤が枯渇することがあるからである。この摩擦力が大きくなり過ぎると、例えばクリーニングブレード6aの先端が感光ドラム1の回転方向の下流側に捲れるブレードメクレが発生することなどにより、クリーニング不良の原因となることがある。これに対し、現像ローラ4aを感光ドラム1に当接させると、比較的少量の、帯電電荷量の小さいトナーや正規の帯電極性とは逆極性に帯電したトナー(所謂、カブリトナー)が、現像ローラ4aから感光ドラム1上の非画像部に移動する。このトナーは、感光ドラム1の回転により、1次転写部T1を通過した後にクリーニング部dへと送られ、上記潤滑剤として作用する。したがって、モノCモード時にトナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて感光ドラム1に現像ローラ4aを当接させることで、上記摩擦力が大きくなりすぎて、クリーニング不良の原因となる可能性を低減することができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、モノCモードにおいてYMC用のステーション9Y、9M、9Cの感光ドラム1に現像ローラ4aを当接させない構成としてもよい。現像ローラ4aを感光ドラム1に対して離接させる動作を行わない構成の場合は、画像形成装置100は現像離接機構80を有している必要はない。
また、本実施例では、画像形成装置100は、モノモードとして本発明に従うモノCモードに加えて、モノAモードやモノBモードを実行可能であるものとして説明した。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、画像形成装置100はモノモードとして本実施例におけるモノCモードに対応するモードのみを実行可能であってもよい。中間転写ベルト7を感光ドラム1に対して離接させる動作を行わない構成の場合は、画像形成装置100は、1次転写離接機構90を有している必要はない。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1の画像形成装置と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する(後述する他の実施例についても同様である。)。
実施例1では、画像形成装置100は、YMCK用のステーション9Y、9M、9C、9Kの1次転写ローラ5に共通の1次転写電源40から1次転写バイアスが印加される構成とされていた。この構成は、画像形成装置100の構成の簡易化や小型化を図る上で有利である。そのため、実施例1では、中間転写ベルト7を除電する電流を多くするために、モノCモードでトナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける帯電バイアスの絶対値をフルカラーモードにおける帯電バイアスの絶対値よりも大きくした。YMC用の1次転写ローラ5Y、5M、5Cに印加する1次転写バイアスを、K用の1次転写ローラ5Kに印加する1次転写バイアスとは独立して設定することができないためである。
これに対し、図8は本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。本実施例では、画像形成装置100は、YMC用の1次転写ローラ5Y、5M、5Cに1次転写バイアスを印加するYMC用1次転写電源40aと、K用の1次転写ローラ5Kに1次転写バイアスを印加するK用1次転写電源40bと、を有する。また、これら1次転写電源40a、40bには、それぞれ1次転写電流検知部50a、50bが接続されている。したがって、YMC用の1次転写ローラ5Y、5M、5Cに印加する1次転写バイアスを、K用の1次転写ローラ5Kに印加する1次転写バイアスとは独立して設定することができる。
この構成の場合、モノCモードでのYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける1次転写バイアスの絶対値をフルカラーモードでの1次転写バイアスの絶対値よりも大きくすることができる。これにより、モノCモードでの1次転写コントラストをフルカラーモードでの1次転写コントラストよりも大きくすることができる。この場合、モノCモードでのYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける帯電バイアスは、フルカラーモード時の帯電バイアスと同じであってもよいし、実施例1と同様にフルカラーモード時の帯電バイアスよりも絶対値が大きいバイアスとしてもよい。帯電バイアスと1次転写バイアスの両方の絶対値をフルカラーモード時よりも大きくすることで、1次転写部T1での中間転写ベルト7の除電効果が更に向上する。
なお、本実施例では、YMC用の1次転写ローラ5Y、5M、5Cには共通のYMC用1次転写電源40aから1次転写バイアスを印加するものとした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、YMC用の1次転写ローラ5Y、5M、5Cの全て又はいずれかの少なくとも1つが個別の1次転写電源から1次転写バイアスが印加される構成とされていてもよい。つまり、例えばYMCK用の1次転写ローラ5のそれぞれが個別の1次転写電源から1次転写バイアスが印加される構成であってもよい。
以上説明したように、本実施例によれば、1次転写バイアスの設定、あるいは1次転写バイアス及び帯電バイアスの設定によって、モノCモード時のYMC用のステーション9における1次転写コントラストをフルカラーモード時よりも大きくすることができる。
[実施例3]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、露光装置3により画像信号に応じた静電潜像を形成する際に、感光ドラム1上の非画像部を画像部よりも小さい露光量で露光(弱露光、非画像部露光)することで、感光ドラム1の表面電位を制御することができる。ここで、露光装置3の露光量は、感光ドラム1の表面の単位面積に単位時間あたりに照射される光の光量で表すことができる。また、弱露光は、感光ドラム1の表面の移動方向(回転軸線方向)に関するトナー像が形成され得る画像形成領域に行われるようになっていればよい。
まず、本実施例における非画像部の弱露光について、Y用のステーション9Yの露光装置3Yを例として説明する。図9は、露光装置3の模式図である。制御部70から送られてくる画像信号60は、8ビット=256階調の深さ方向を持つ多値信号(0~255)であり、この信号が0のときレーザー光はオフ、255のとき完全オン、1~254の間では両者の中間の値を持つものとする。ここで、非画像部の露光レベルは、上記多値信号のレベルにより任意に設定することが可能である。以下の説明においては、この多値信号のレベルとして32を用いて、非画像部の露光(弱露光、非画像部露光)を行うものとする。制御部70から送られてくる画像信号が0の非画像部の多値信号のレベルは、画像信号変換回路68Yにより32に変換され、画像信号が1から255の値の画像部の多値信号のレベルは、画像信号変換回路68Yにより33から255に圧縮変換される。その後、多値信号レベル群は、周波数変調回路61Yにより、シリアルな時間軸方向の信号に変換され、本実施例では解像度が600ドット/インチの各ドットパルスのパルス幅変調に用いられる。この信号により、レーザードライバー62Yが駆動されて、レーザーダイオード63Yが発光し、レーザー光Lが出射される。このレーザー光Lは、ポリゴンミラー64Y、レンズ65Y、折り返しミラー66Yを含む補正光学系67Yを経て、走査光として感光ドラム1Yに照射される。なお、周波数変調回路61Yは、レーザードライバー62Yとは離して、制御部70側に設けてもよい。
次に、本実施例におけるフルカラーモード時の各ステーション9での電位関係について説明する。YMCK用のステーション9のいずれにおいても、帯電バイアスは-1100Vに設定されている。これにより、YMCK用のステーション9のいずれにおいても、感光ドラム1の回転方向に関し帯電位置Paよりも下流、かつ、露光位置Pbよりも上流の位置における感光ドラム1上の表面電位(帯電電位)は-600Vとされる。また、YMCK用のステーション9のいずれにおいても、上述のような方法により弱露光が行われる。これにより、感光ドラム1の回転方向に関し露光位置Pbよりも下流、かつ、現像位置Pcよりも上流の位置における感光ドラム1上の非画像部の表面電位(非画像部電位)は、弱露光前の-600Vから-500Vまで絶対値が小さくされる。一方、YMCK用のステーション9のいずれにおいても、感光ドラム1の回転方向に関し露光位置Pbよりも下流、かつ、現像位置Pcよりも上流の位置における感光ドラム1上の画像部の表面電位(画像部電位)は、次のようにされる。つまり、レーザー光Lのフル発光により、露光前の-600Vから-150Vまで絶対値が小さくされる。
次に、本実施例におけるモノCモード時の各ステーション9での電位関係について説明する。トナー像を形成するK用のステーション9Kでは、フルカラーモード時と同様にして感光ドラム1K上の非画像部電位、画像部電位が制御される。一方、トナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cでは、感光ドラム1は、フルカラーモード時と同じ帯電バイアスにより帯電処理された後に、弱露光が行われない。つまり、YMC用のステーション9Y、9M、9Cでは、感光ドラム1の回転方向に関し露光位置Pbよりも下流、かつ、現像位置Pbよりも上流の位置における感光ドラム1上の非画像部の表面電位(非画像部電位)は、-600Vとされる。これにより、モノCモード時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cの感光ドラム1上の非画像部電位は、フルカラーモード時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cの感光ドラム1上の非画像部電位よりも絶対値が100V大きくなる。また、本実施例では、フルカラーモード及びモノCモードにおける1次転写バイアスの設定は実施例1と同じである。したがって、モノCモード時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける1次転写コントラストは、フルカラーモード時のYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおける1次転写コントラストよりも大きくなる。したがって、モノCモードでは、YMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいてフルカラーモード時よりも電流が多く流れる。
このように、本実施例では、弱露光の有無により、フルカラーモード時とモノCモード時とでの各ステーション9における電位関係を実施例1と同様に設定することができる。これにより、本実施例では、実施例1と同様の効果を得ることができる。
なお、非画像部の弱露光を行う構成において、モノAモード、モノBモードを実行する場合、これらのモードではトナー像を形成しないYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいては感光ドラム1の帯電処理は行われず、弱露光も行われない。
また、本実施例では、弱露光を行う方法として、画像信号に応じてパルス幅変調により行う方法を述べたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、微小電流で駆動するようにレーザードライバーを制御することでレーザーダイオードを微小発光させるアナログ方式の弱露光方式を採用しても、同様の効果を得ることができる。
また、本実施例では、モノCモードではYMC用のステーション9Y、9M、9Cにおいて弱露光を行わなかったが、フルカラーモード時よりも小さい露光量で弱露光を行ってフルカラーモード時よりも1次転写コントラストを大きくしてもよい。
また、実施例2で説明した構成において、本実施例の弱露光の有無により感光ドラム1の表面電位を制御する方法を適用してもよい。
[実施例4]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。
実施例1では、画像形成装置100が本発明に従うモノCモードと、モノAモード、モノBモードなどの他のモノモードと、を実行可能である場合に、操作者がモノモードの選択を行ったが、本実施例では制御部70のCPU71がその選択を行う。簡単のため、本実施例では、画像形成装置100は、フルカラーモードと、モノAモードと、モノCモードと、の3つの画像形成モードで画像形成動作を実行可能であるものとする。
図10は、本実施例における画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。図10に示す本実施例における制御態様は、図6に示した実施例1における制御態様と概略同様であるが、本実施例では制御部70には画像形成装置100に設けられた温湿度センサ47が接続されている。温湿度センサ47の検知結果を示す信号は、制御部70のCPU71に入力される。温湿度センサ47は、画像形成装置100に設けられた、画像形成装置100の装置本体の内部又は外部の少なくとも一方の温度又は湿度の少なくとも一方を検知する環境検知手段の一例である。本実施例では、温湿度センサ47は、画像形成装置100の装置本体の内部の温度及び湿度を検知する。制御部70のCPU71は、任意のタイミングで温湿度センサ47によって検知された温度及び湿度の情報を取得することができる。
また、本実施例では、ジョブサイズ情報及び画像形成モード情報を含む動作設定情報がパーソナルコンピュータなどの外部装置200から画像形成装置100に送信され、制御部70のCPU71に入力される。ジョブサイズ情報は、本実施例ではジョブにおける連続画像形成枚数に相当する。なお、ジョブサイズ情報は、ジョブにおける連続画像形成枚数と相関する指標値の情報であればよく、画像形成枚数(すなわち、ジョブで出力する記録材Pの枚数)に限定されるものではない。例えば、中間転写ベルト7、感光ドラム1などの任意の回転部材の回転時間(駆動時間)や回転回数、帯電ブラシ10、1次転写ローラ5、2次転写ローラ8などの電圧印加部材への電圧印加時間などであってもよい。また、本実施例では、上記画像形成モード情報は、ジョブの画像形成モードがフルカラーモードであるかモノモードであるかを指定する情報であり、モノモードをモノAモードで実行するかモノCモードで実行するかは制御部70のCPU71が判断する。画像形成モードをフルカラーモードとするかモノモードとするかは、図7を参照して説明した実施例1と同様の方法で操作者が選択することができる。なお、フルカラーモードとモノモードとが自動的に選択されるようになっていてもよい。
図11は、本実施例における画像形成モードを選択する制御の手順を示すフローチャート図である。この制御は、制御部70のCPU71が、制御部70のメモリ72に記憶されたプログラム及びデータ(閾値情報など)に従って実行する。
まず、CPU71は、外部装置200からジョブ情報を受信すると(S101)、ジョブ情報に含まれる画像形成モード情報を取得し、画像形成モード情報で指定された画像形成モードがモノモードであるか否かを判断する(S102)。CPU71は、S102でモノモードではない(すなわち、フルカラーモードである)と判断した場合は、フルカラーモードを選択する(S103)。また、CPU71は、S102でモノモードであると判断した場合は、続けてジョブ情報に含まれるジョブサイズ情報を取得し、ジョブサイズSjが予め設定された閾値以上であるか否かを判断する(S104)。本実施例では、モノモードでの連続画像形成に伴う画像の濃度変化率を2%以下に抑えるために、具体的にはジョブサイズの閾値を4(本実施例では単位は枚数)とした。
CPU71は、S104でジョブサイズSjが4未満であると判断した場合は、モノAモードを選択する(S105)。一方、CPU71は、S104でジョブサイズSjが4以上であると判断した場合は、続けて温湿度センサ47から温度及び湿度の情報を取得し(S106)、低温低湿環境であるか否かを判断する(S107)。具体的には、本実施例では、モノモードにおける連続画像形成に伴う画像の濃度変化が顕在化しやすい、温度が18℃以下、かつ、相対湿度が30%以下の環境である場合に、低温低湿環境であると判断する。
CPU71は、S107で低温低湿環境ではないと判断した場合は、モノAモードを選択する(S105)。一方、CPU71は、S107で低温低湿環境であると判断した場合は、モノCモードを選択する(S108)。
そして、CPU71は、以上のフローに従ってS103、S105、S108で選択した画像形成モードでの画像形成動作を開始する(S109)。
このように、本実施例では、CPU71は、外部装置200から取得したジョブ情報と、温湿度センサ47によって取得した環境情報と、に基づいて、モノモードをモノAモードで実行するかモノCモードで実行するかを判断する。特に、本実施例では、CPU71は、ジョブ情報に含まれるジョブサイズ情報に基づいてジョブの画像形成枚数が所定値以上の場合にモノCモードを実行可能とする。また、CPU71は、画像形成枚数が所定値以上であって、かつ、次の環境条件を満たす場合にモノCモードを選択する。つまり、温度が予め設定された所定の温度以下であること、及び湿度が予め設定された所定の湿度以下であることの両方を満たす場合に(すなわち、所定の低温低湿環境である場合)である。
以上説明したように、本実施例によれば、低温低湿環境下におけるモノモードでの連続画像形成に伴う画像の濃度変化や濃度ムラの抑制が必要な場合に、操作者の指示によらずに画像形成装置100が自動的にモノCモードを選択することができる。そのため、操作者の操作負担を軽減しつつ、上記画像の濃度変動や濃度ムラを抑制することができる。また、モノCモードを選択する必要のない場合にはモノAモードでモノモードを実行することで、モノモードでトナー像を形成しないステーションの感光ドラム1、帯電ローラ2などの劣化や消耗を抑制することが可能となる。
なお、本実施例ではジョブサイズの閾値を4枚とした。また、本実施例では、温度の閾値を18℃、相対湿度の閾値を30%として、温度18度以下かつ相対湿度30%以下の環境を低温低湿環境であると判断した。しかし、連続画像形成による画像の濃度変化や濃度ムラは、例えば中間転写ベルト7の表面抵抗などによって変わるため、これらの閾値は本実施例のものに限定されるものではない。
また、本実施例では、連続画像形成枚数と環境との両方が所定の条件を満たす場合にモノCモードを選択したが、本発明はこれに限定されるものではない。連続画像形成枚数又は環境の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合にモノCモードを選択するようにしてもよい。また、本実施例では、環境として温度及び湿度の両方が所定の条件を満たす場合にモノCモードを選択したが、本発明はこれに限定されるものではない。中間転写ベルト7のチャージアップのしやすさと、温度又は湿度の一方とに十分の相関がある場合、温度又は湿度の少なくとも一方が所定の条件を満たす場合にモノCモードを選択することができる。つまり、温度が予め設定された所定の温度以下であること、又は湿度が予め設定された所定の湿度以下であることの少なくとも一方を満たす場合に、モノCモードを選択することができる。
また、本実施例では、画像形成装置100は、モノモードとしてモノAモードとモノCモードとを実行可能であるものとして説明した。これに対し、モノAモードの代わりにモノBモードを実行可能としたり、モノAモード及びモノCモードに加えてモノBモードを実行可能としたりしてよい。モノAモード、モノCモードに加えてモノBモードを実行可能とする場合、CPU71は、例えば記録材Pの厚さ(坪量)が所定の閾値以上である場合などに、自動的にモノBモードを選択するようにすることができる。
また、本実施例においてモノCモードにおいてYMC用のステーション9Y、9M、9Cの1次転写コントラストをフルカラーモードにおける1次転写コントラストよりも大きくする方法は、実施例1~3で説明したいずれの方法であってもよい。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、モノモードは単色画像としてブラックの画像を形成するモードであったが、モノモードで形成する単色画像はブラックの画像に限定されるものではなく、他の色の単色画像であってもよい。また、上述の実施例におけるフルカラーモードは第1、第2の感光体の両方にトナー像を形成可能な第1のモードの一例である。また、上述の実施例におけるモノモードは第1、第2の感光体のうち第2の感光体にのみトナー像を形成可能な第2のモードの一例である。典型的には、画像形成装置は複数の第1の感光体を有し、第1のモードではフルカラー画像を形成する。また、典型的には、画像形成装置は単一の第2の感光体を有し、第2のモードでは単色画像を形成する。しかし、本発明の原理的には、第1の感光体は単数であってよいし、第2の感光体は複数であってもよい。画像形成装置が有する複数の感光体のうち、第1のモードでトナー像を形成可能な感光体の数よりも第2のモードでトナー像を形成可能な感光体の数の方が少ない構成であれば、本発明により中間転写体のチャージアップを抑制する相応の効果が得られる。
また、上述の実施例では、モノモードでトナー像を形成するステーションは、モノモードでトナー像を形成しないステーションよりも中間転写体の回転方向下流側に配置されていたが、上流側に配置されていてもよい。モノモードでの画像形成動作中の中間転写体の周回に伴って中間転写体を除電することができれば、モノモードでトナー像を形成しないステーションの配置によらず上述の実施例と同様の効果が期待できる。また、画像形成装置がモノモードでトナー像を形成しないステーションを複数有する場合において、それらのステーションの全てにおいてモノモード時に1次転写部に電流を流すことに限定されるものではない。モノモード時の中間転写体のチャージアップを十分に抑制できれば、それらのステーションのうち少なくとも1つにおいて1次転写部に電流を流せばよい。
また、モノモードでトナー像を形成しないステーションにおいて1次転写部に電流を流すことは、典型的にはジョブの1枚目の画像が1次転写される中間転写体上の領域の先端から最後の画像が1次転写される領域の後端までの全領域に対して行うことができる。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、ジョブの1枚目の画像が1次転写される中間転写体上の領域の先端から最後の画像が1次転写される領域の後端までの一部の領域に対して行うこともできる。ジョブを継続することで許容範囲を超えて中間転写体がチャージアップすることを抑制できればよい。