以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
すなわち、本明細書では、インクジェット記録装置の一例として、産業用インクジェットプリンタについて説明するが、ここに開示する技術は、インクジェット記録装置および産業用インクジェットプリンタという名称に関わらず、粒子状のインクを飛翔させてワークに着弾させるインクジェットを用いた一般の機器に適用することができる。
また、本明細書においては、インクジェット記録装置による印字について説明するが、ここでいう「印字」には、文字の印刷、図形のマーキング等、インクジェットを応用したあらゆる加工処理が含まれる。
<全体構成>
図1はインクジェット記録システムSの全体構成を例示する図である。また、図2はインクジェット記録装置Iの概略構成を例示する図であり、図3はインクジェット記録装置Iにおける印字ヘッド1の概略構成を例示する図である。そして、図4は、インクジェット記録装置Iにおけるインクおよび溶剤の経路を例示する図である。図1に例示する自動印字システムSは、例えば工場等の搬送ラインLに設置されており、その搬送ラインLを流れる各ワークWに対し、順番に印字を施すように構成されている。なお、本開示の適用対象は、自動印字システムSには限定されない。自動以外の方法を用いた印字システムに適用することもできる。搬送ラインLは、例えばベルトコンベア等で構成することができる。
具体的に、自動印字システムSは、粒子状のインク(インク粒)をワークWに着弾させることで印字を行うインクジェット記録装置Iと、インクジェット記録装置Iに接続される操作用端末800及び外部機器900と、インクジェット記録装置Iに接続されて印字ヘッド1の洗浄を行う洗浄載置部200と、を備えている。なお、操作用端末800および外部機器900は、必須ではない。
図1~図3に例示するインクジェット記録装置Iは、インク粒をノズル12から吐出するとともに、そのインク粒をワークWに着弾させる印字ヘッド1と、この印字ヘッド1に対し制御信号、インクおよび溶剤を供給するコントローラ100と、を備えている。コントローラ100が印字ヘッド1に制御信号を供給することで、インク粒の軌跡を制御する。これにより、ワークW上でのインク粒の着弾位置が調整されて、所望の印字が実現されるようになっている。
特に、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆるコンティニュアス方式のインクジェットプリンタ(Continuous Ink Jet printer:CIJ)として構成されている。すなわち、インクジェット記録装置Iは、インクの揮発に起因した目詰まり(特に、ノズル12の目詰まり)等を防止するために、印字を実行していないときであっても、インクジェット記録装置Iが稼働状態であれば、インクジェット記録装置Iの内部を常にインクが循環している。コンティニュアス方式を採用することで、インクによる目詰まりを招くことなく、速乾性のインクを用いることができるようになる。
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、溶剤を印字ヘッド1へ送り出すことで、ノズル12等、印字ヘッド1の各部を洗浄することができるようになっている。洗浄に用いられた溶剤は、必要に応じて回収されて、インクの濃度(粘度)を調整するために再利用することができる。
インクの循環を実現するために、印字ヘッド1は、インクまたは溶剤を吐出するノズル12に加えて、そのノズル12から吐出されたインクまたは溶剤を回収するガター16を備えている(図3参照)。コントローラ100から印字ヘッド1へ送り込まれたインクまたは溶剤は、ノズル12から吐出されてガター16によって回収される。そうして回収されたインクまたは溶剤は、コントローラ100へ送り戻されて再利用される。こうした工程を繰り返し行うことで、インクを循環させることができる。
操作用端末800は、例えば中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)および記憶装置を有しており、コントローラ100に接続されている。この操作用端末800は、印字における加工条件を設定するとともに、印字に関連した情報をユーザに示すための端末として機能する。
操作用端末800により設定される加工条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。コントローラ100の記憶部102に加えて、または、この記憶部102に代えて、操作用端末800が加工条件を記憶してもよい。
なお、本実施形態に係る加工条件には、印字されるべき文字列等の内容に加えて、後述の立下処理に関連した条件およびパラメータ(以下、これを「洗浄設定」ともいう)が含まれる。
なお、操作用端末800は、例えばコントローラ100に組み込んで一体化することができる。この場合は「操作用端末」という呼称ではなく、コントロールユニット等の呼称が用いられることになる。
外部機器900は、必要に応じてコントローラ100に接続される。図1および図2に示す例では、外部機器900として、ワーク検出センサ901、搬送速度センサ902およびプログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:PLC)903が設けられている。
具体的に、ワーク検出センサ901は、搬送ラインLにおけるワークWの有無を検出し、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。ワーク検出センサ901から出力される検出信号は、印字を開始するためのトリガー(印字トリガ)として機能する。
搬送速度センサ902は、例えばロータリエンコーダから構成されており、ワークWの搬送速度を検出することができる。搬送速度センサ902は、その検出結果を示す信号(検出信号)をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、搬送速度センサ902から入力された検出信号に基づいて、印字ヘッド1からインク粒を吐出するタイミング等を制御する。
またPLC903は、図2に例示するように、コントローラ100と電気的に接続されている。PLC903は、予め定めたシーケンスに従ってインクジェット記録システムSを制御するために用いられる。
インクジェット記録装置Iには、上述した機器や装置以外にも、操作および制御を行うための装置、その他の各種処理を行うためのコンピュータ、記憶装置、周辺機器等を接続することもできる。この場合の接続は、例えば、IEEE1394、RS-232、RS-422およびUSB等のシリアル接続、またはパラレル接続としてもよい。あるいは、10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T等のネットワークを介して電気的、磁気的または光学的な接続を採用することもできる。また、有線接続以外にも、IEEE802等の無線LAN、または、Bluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続でもよい。さらに、データの交換や各種設定の保存等を行うための記憶装置に用いる記憶媒体としては、例えば、各種メモリカード、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、ハードディスク等を利用することができる。
<コントローラ100>
コントローラ100は、印字ヘッド1を電気的に制御するとともに、印字用のインク、および、インクを希釈するための溶剤を印字ヘッド1へ供給することができるように構成されている。
具体的に、本実施形態に係るコントローラ100は、電気的な制御に関連した構成要素として、前述の加工条件を記憶する記憶部102と、コントローラ100および印字ヘッド1の各部を制御する制御部101と、ユーザによる操作を受け付けるとともに、ユーザへ情報を表示する操作表示部103と、外部から供給される電力を制御部101へ導く電源供給部121とを備えている。
コントローラ100はまた、インク等の供給に関連した構成要素として、印字ヘッド1のノズル12にインクを供給するインク供給部104と、このノズル12およびインク供給部104に溶剤を供給する溶剤供給部105と、を備えている。
制御部101と、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。記憶部102も、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。操作表示部103も、インク供給部104及び溶剤供給部105とは、別ユニットで構成されていてもよい。これらの場合も、構成要素を合わせてコントローラ100とすることができる。
(記憶部102)
記憶部102は、後述の操作表示部103、または、操作用端末800を介して設定された加工条件を記憶するとともに、外部からの制御信号に基づいて、記憶された加工条件を制御部101へと出力するように構成されている。
具体的に、記憶部102は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等を用いて構成されており、加工条件を示す情報を一時的または継続的に記憶することができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が記憶部102を兼用してもよい。
(制御部101)
制御部101は、記憶部102に記憶された加工条件に基づいて、少なくとも、コントローラ100におけるインク供給部104および溶剤供給部105と、印字ヘッド1におけるノズル12、帯電電極13および偏向電極15と、を制御する。制御部101が各部を制御することにより、ワークWへの印字が所定のタイミングで実施される。
具体的に、制御部101は、例えばCPU、メモリ、入出力バス等を有しており、操作表示部103または操作用端末800を介して入力された情報を示す信号と、記憶部102から読み込んだ加工条件を示す信号と、に基づいて制御信号を生成する。制御部101は、そうして生成した制御信号をコントローラ100およびインクジェット記録装置Iの各部へと出力することにより、ワークWに対する印字を制御する。
例えば制御部101は、ワークWに印字するときには、記憶部102に記憶されたワークWへの印字内容を読み込んで、その印字内容に基づいた制御信号を生成する。そして、制御部101は、その制御信号を帯電電極13へと出力することで、印字内容に対応した着弾位置を実現するようにインク粒の飛翔方向を設定する。
(操作表示部103)
図1に示すように、操作表示部103は、例えばコントローラ100を構成する筐体等に設けることができるが、筐体とは別に構成し、筐体とは異なる所に設置するようにしてもよい。この操作表示部103は、インクジェット記録装置Iに関連した種々の情報を表示する表示部103aと、例えば、タッチ式操作パネルやボタン、スイッチ等からなる操作部103bと、を備えている。表示部103aは、例えば液晶表示パネルや有機EL表示パネル等で構成されており、制御部101によって制御され、後述するようなユーザインターフェース等も表示可能に構成されている。
ユーザが操作表示部103の操作部103bを操作すると、その操作情報が制御部101に入力され、制御部101はどのような操作が行われたか検知することができる。例えば、操作部103bを操作することで、インクジェット記録装置Iの電源ON/OFF等を切替えることや、各種設定、情報の入力等を行うことができる。なお、操作用端末800をコントローラ100に組み込んだ場合には、操作用端末800が操作表示部103を兼用してもよい。操作表示部103の表示部103aは、ユーザに各種情報を通知する通知部であり、また、操作部103bは各種情報を入力可能な入力部である。
この操作表示部103は、前述の操作用端末800と同様に、印字における加工条件を設定することもできる。操作表示部103により設定される加工条件は、コントローラ100に出力されて、その記憶部102に記憶される。以下の記載では、ユーザが操作表示部103を操作するケースを前提に説明するが、操作表示部103の代わりに操作用端末800を用いることもできる。
(インク供給部104)
インク供給部104は、主たる構成要素として、補充用のインクを収容したインクカートリッジ104aと、このインクカートリッジ104aからインクが供給されるメインタンク(インク容器)104bと、インク流通経路104cとを有している。インクカートリッジ104a、メインタンク104bおよび印字ヘッド1は、インク流通経路104cを介して流体的に接続されている。
このうち、インクカートリッジ104aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されており、これを付け替えることで、メインタンク104bにインクを補充することができる。
このように、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、いわゆる“カートリッジ式”のインクジェットプリンタとして構成されているが、この構成には限定されない。例えば、手動で開閉可能なタンクを設けるとともに、そのタンクに対してインクを補充するように構成してもよい。
メインタンク104bは、ノズル12へ供給されるインクを蓄える容器であり、具体的には溶剤によって濃度(粘度)調整されたインクを収容するように構成されている。こうした構成を実現するために、インクカートリッジ104aからメインタンク104bへ至る経路には、溶剤供給用の経路が接続されている。
また、インク流通経路104cは、印字ヘッド1にインクを供給するための経路であり、例えば、ノズル12にインクを送り込むための経路と、ガター16からインクを送り戻すための経路と、を有している。ノズル12にインクを送り込むための経路は、インクカートリッジ104aと、メインタンク104bと、ノズル12とを接続している。ガター16からインクを送り戻すための経路は、ガター16と、メインタンク104bとを接続している。これらの経路によって、印字ヘッド1とコントローラ100との間でインクを循環させることができる。
後述の如く、インク流通経路104cには、第1バルブV1をはじめとする複数の電磁弁と、インクポンプP1をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、インクの流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けてインクを圧送し、電磁弁と同様に、インクの流れを制御することができる。
(溶剤供給部105)
溶剤供給部105は、主たる構成要素として、補充用の溶剤を収容した溶剤カートリッジ105aと、洗浄に用いられた溶剤を蓄えるコンディショニングタンク105bと、溶剤流通経路105cと、を有している。溶剤カートリッジ105a、コンディショニングタンク105bおよび印字ヘッド1は、溶剤流通経路105cを介して流体的に接続されている。溶剤が流通する溶剤流通経路105cは、複数の経路からなり、そのうちの一部は、ガター16からインクを送り戻す経路により兼用されている。
溶剤カートリッジ105aは、コントローラ100に対して着脱自在に構成されている。この溶剤カートリッジ105aを付け替えることで、コントローラ100に溶剤を補充することができる。溶剤カートリッジ105aの代わりに溶剤タンクを設けてもよい。なお、溶剤供給部105は、溶剤カートリッジ105a内の溶剤が空になったか否か、又は、溶剤が残り少なくなったか否かを検知する機能を有する。溶剤カートリッジ105aに収容されている溶剤は、インクの濃度調整に用いられるとともに、インクが流通する経路等を洗浄する洗浄剤としても使用される。
コンディショニングタンク105bは、洗浄に用いられた溶剤を収容するように構成されている。前述のように、ノズル12から吐出された溶剤は、インクと同様にガター16によって回収される。そのため、ガター16からインクを送り戻すための経路は、溶剤を送り戻すための経路を兼用している。
また、溶剤流通経路105cは、印字ヘッド1およびメインタンク104b等に溶剤を供給するための経路を含み、例えば、ノズル12に溶剤を送り込むための経路と、ガター16から溶剤を送り戻すための経路と、を有している。ノズル12に溶剤を送り込むための経路は、溶剤カートリッジ105aとノズル12とを接続している。ガター16から溶剤を送り戻すための経路は、前述のように、インクを送り戻すための経路を兼ねている。
後述の如く、溶剤流通経路105cには、第16バルブV16をはじめとする複数の電磁弁と、溶剤ポンプP2をはじめとする複数のポンプと、が設けられている。このうち、各電磁弁は、制御部101から出力された制御信号を受けて開閉し、溶剤の流れを制御することができる。一方、各ポンプは、制御部101から出力された制御信号を受けて溶剤を圧送し、電磁弁と同様に、溶剤の流れを制御することができる。
なお、溶剤流通経路105c、および、前述のインク流通経路104cという分類は、説明を簡潔にするためになされた便宜上の分類に過ぎない。溶剤流通経路105cおよびインク流通経路104cは、相互に接続されていたり、一方が他方を兼ねていたりするため、実質的に不可分となっている。
(電源供給部121)
電源供給部121は、商用電源700と制御部101の間に介在しており、商用電源700)から供給される電力を中継し、これを制御部101へと供給することができる。
(他の構成要素)
コントローラ100には、制御信号を送受するための電気配線と、インクを送受するためのチューブ(具体的には、インク流通経路104cを区画するチューブ)と、溶剤を送受するためのチューブ(具体的には、溶剤流通経路105cを区画するチューブ)と、が束になって被覆された接続ケーブル107が設けられている。この接続ケーブル107は可撓性を有しており、印字ヘッド1の上端部に接続されている(図1を参照)。コントローラ100と印字ヘッド1は、この接続ケーブル107を介して電気的にかつ流体的に接続されている。
<印字ヘッド1>
印字ヘッド1は、コントローラ100から供給される制御信号、インクおよび溶剤に基づいて濃度調整されたインクを粒子状のインク粒として吐出する。印字ヘッド1は、そうして吐出されたインク粒の飛翔方向を偏向せしめるとともに、偏向されたインク粒をワークWの表面に着弾させることで、そのワークWに対して印字を実行することができる。
具体的には、図3に示すように、本実施形態に係る印字ヘッド1は、インクを加振する加振器11と、加振器11により加振されたインクを吐出するノズル12と、ノズル12から吐出された粒子状のインクを帯電させる帯電電極13と、インクの帯電状態を監視する帯電検出センサ14と、帯電電極13により帯電されたインクの飛翔方向を偏向させる偏向電極15と、偏向電極15により非偏向とされたインク、または、ノズル12から吐出された溶剤を回収するガター16と、を備えている。
印字ヘッド1は、加振器11、ノズル12、帯電電極13、帯電検出センサ14、偏向電極15およびガター16を内部に収容し、かつ、インク粒の飛翔空間S1を区画する筐体10を備えている。この印字ヘッド1は、偏向電極15によって偏向されたインク粒を、飛翔空間S1を介して筐体10の外部に吐出することができる。
図5にも示すように、印字ヘッド1の外形状をなす筐体10の下面には、偏向電極15により偏向されたインクを外部に吐出するための吐出口Aが開口している。インクは、この吐出口Aから筐体10の下方へ向けて吐出されるようになっている。
図1に示すように、印字時における印字ヘッド1は、例えば支持部材2によって支持されている。支持部材2によって支持された状態の印字ヘッド1は、その吐出孔AがワークWの印字面に対して上方向から対向するように配置される。この場所が、インクジェット記録装置Iにより印字を行う際の印字ヘッド1の設置場所の一例である。
以下、印字ヘッド1をなす各部について、順番に説明をする。なお、以下の記載において「上下方向」とは、鉛直方向に沿った方向を指す。例えば、図3の紙面上方が「上方向」に相当し、同図の紙面下方が「下方向」に相当する。他の図においても、これに対応する方向を「上下方向」という。
(加振器11)
図3に例示するように、加振器11は、筐体10の飛翔空間S1における上端付近に配置されている。本実施形態に係る加振器11には、インクに上下振動を付与(加振)するためのデバイス(例えばピエゾ素子)が内蔵されている。この加振器11は、接続ケーブル107を介してインクが供給されるように構成されており、そうして供給されたインクを加振することができる。加振器11によって加振されたインクは、ノズル12へと供給される。
なお、図示は省略したが、本実施形態に係る加振器11は接地されている。
(ノズル12)
図3に例示するように、ノズル12は、加振器11の下端部に接続されており、その開口端(インクの噴射口)を下方に向けた姿勢で配置されている。ノズル12の開口端から、加振器11によって加振されたインクを吐出することができる。このノズル12には、例えば立下時に印字ヘッド1内部の圧力を抜くためのリターン経路として機能する吸引経路27が接続されている(図4を参照)。また、吸引経路27を通じて、ノズル12から溶剤を吸引させることもできる。
ここで、加振器11によって加振されずにノズル12から吐出されたインクは、軸状のいわゆる“インク軸”となって流れる。一方、加振されたインクは、ノズル12から吐出された直後に粒子化されて、いわゆる“インク粒”となる。ノズル12から吐出されたインクは、ノズル12から吐出された直後は軸状であるが、ノズル12から離れるに従って粒子状になる。この粒子状になる位置をブレークポイントと呼ぶ。ノズル12から吐出されたインク(インク粒)は、後述する帯電電極13を通過する。
なお、印字ヘッド1を洗浄すべく供給された溶剤は、加振器11とノズル12を順番に通過して、ノズル12の先端部から吐出される。そうして吐出される溶剤は、軸状に流れて、帯電電極13を通過する。
(帯電電極13)
図3に例示するように、帯電電極13は、一対の伝導性を有する金属板によって構成されており、ノズル12の下方に配置されている。ここで、帯電電極13を構成する一対の金属板は、それぞれの長手方向を上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向い合うような姿勢で筐体10に固定されている。一対の金属板の間隔は、ノズル12から吐出されたインクの粒径よりも大きく設定されており、ノズル12から吐出されたインクが一対の金属板の間を通過することになる。
本実施形態に係る帯電電極13には、少なくとも印字動作を実行するときに電位(正電位)が印加される。これにより、加振器11と帯電電極13との間に電位差を生じさせ、帯電電極13を通過するインク粒を帯電させることが可能となる。各インク粒を帯電させるために、本実施形態に係る帯電電極13は、ノズル12から吐出されたインクが粒子化するブレークポイント付近に配置される。
帯電電極13には、コントローラ100によって制御可能なパルス電位が印加される。ここで、帯電電極13に対して相対的に高い電圧を印加した場合は、それよりも低い電圧を印加した場合に比して、各インク粒の帯電量(負の電荷の大きさ)が大きくなる。各インク粒は、その帯電量が大きい場合には、それが小さい場合に比して、偏向電極15によって大きく偏向される。コントローラ100がパルス電位の大きさを調整することで、インク粒の偏向量を制御することができる。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14の側方を通過した偏向電極15へ至る。
また、ノズル12から吐出される溶剤は、帯電されることなく、帯電検出センサ14の側方を通過して偏向電極15へ至る。
(帯電検出センサ14)
図3に例示するように、帯電検出センサ14は、帯電電極13の下方に配置されている。詳しくは、帯電検出センサ14は、帯電電極13を構成する金属板(図3に示す例では、紙面右側の金属板)の下方において、インク粒が飛翔する際の軌跡と交わらないように配置されている。帯電検出センサ14をこのように配置することで、インク粒と帯電検出センサ14との衝突を避けることが可能となる。
また、本実施形態に係る帯電検出センサ14は、筐体10の内部に設けた回路基板に接続されている。帯電検出センサ14は、その側方を通過するインク粒の帯電状態を検出することができる。帯電検出センサ14による検出結果は、検出信号として制御部101に出力される。この検出信号に基づいて、制御部101は、各インク粒が適切に帯電しているか否かを判定することができる。
(偏向電極15)
図3に例示するように、偏向電極15は、一対の伝導性を有する金属板(いわゆる「対向電極」)によって構成されており、第1電極部材15aと第2電極部材15bとを備えている。第1電極部材15aと第2電極部材15bは、帯電電極13および帯電検出センサ14の下方に配置されている。
第1電極部材15aと第2電極部材15bは、それぞれの長手方向を略上下方向に沿わせた姿勢で、かつ互いに水平方向に向い合うような姿勢で筐体10に固定されている。具体的には、図3におけるXXI-XXI線に相当する断面を示す図21のように、第1電極部材15aと第2電極部材15bは、電極支持部材15cを介して筐体10に固定されている。帯電電極13を構成する一対の金属板の間を通過したインク粒は、偏向電極15を構成する第1電極部材15aと第2電極部材15bの間を通過することになる。
図22に示すように、コントローラ100には、偏向電極15に印加する電圧を発生させる偏向電圧発生部120が設けられている。この偏向電圧発生部120の出力部は、抵抗120aを介して印字ヘッド1の第1電極部材15aに接続されている。第2電極部材15bはGNDに接続されている。偏向電圧発生部120は、偏向電極に対して所定電圧を印加する電圧印加部である。詳細は後述するが、コントローラ100には、第1電極部材15aと第2電極部材15bの電位差を測定するための偏向電圧測定部120cが設けられている。
偏向電極15には、コントローラ100の偏向電圧発生部120によって制御可能な電圧が印加される。これにより、偏向電極15を構成する第1電極部材15aと第2電極部材15bの間には電位差が生じることになる。この電位差によって、インク粒の帯電量に応じて、そのインク粒の飛翔方向を偏向させることができる。インク粒の飛翔方向は、偏向電極15を構成する1電極部材15aと第2電極部材15bの並び方向に沿って偏向され得る。
すなわち、帯電電極13および偏向電極15のそれぞれに印加される電圧を介して、インク粒の飛翔方向を制御することができる。そうして飛翔方向が制御されるインク粒には、偏向電極15により偏向されたものと、偏向電極15により偏向されないもの(非偏向とされたもの)と、が含まれる。このうち、偏向電極15により偏向されたインク粒がワークWの印字に関与する。偏向電極15により偏向されたインク粒は、筐体10の下面に設けた吐出口Aから吐出されて、ワークWに着弾する。
一方、偏向電極15により非偏向とされたインク粒は、ワークWの印字に関与しない。こうしたインク粒、または、そもそも粒子化されていない軸状のインクは、図3において鎖線で例示したように、ガター16の中に到達する。同様に、印字ヘッド1におけるノズル12等の洗浄に用いられて偏向電極15を通過した溶剤もまた、ガター16の中に至る。
(ガター16)
図3に例示するように、ガター16は、その開口端を上方に向けた曲管によって構成されており、偏向電極15の下方に配置されている。本実施形態に係るガター16は、ワークWの印字に関与しないインクと、ノズル12を通過した溶剤(具体的には、ノズル12から吐出された溶剤)と、を回収することができる。
詳しくは、本実施形態においては、ガター16の開口端(上流端)と、ノズル12の開口端とが互いに向い合うように配置されており、ガター16の開口端の真上にノズル12の開口端が位置している。このように配置することで、ノズル12の開口端から鉛直方向に沿って流れた流体を、ガター16の開口端から受け入れることが可能になる。
ガター16によって回収されたインクまたは溶剤は、インク流通経路104c、溶剤流通経路105c等を通じてコントローラ100に送り戻されて、メインタンク104bまたはコンディショニングタンク105bに蓄えられるようになっている。
(ヒータ1b)
図2に示すように、印字ヘッド1にはヒータ1bが設けられている。ヒータ1bは、印字ヘッド1内のインクを加温するための温度調節部であり、コントローラ100の制御部101によって制御される。ヒータ1bはノズル12の近傍に設けることができる。インクが低温であるとインクの粘度が高く、印字に適さないため、ノズル12から吐出されるインク粒の温度が印字に適した所定温度となるようにヒータ1bによってインクを加温し、インクの温度を調節する。ノズル12から吐出される前のインクの温度は、ヒータ1bと共に、またはヒータ1bとは別に設けられた温度センサ等によって取得することができる。制御部101は、温度センサで取得されたインクの温度に基づいてヒータ1bを制御し、インクが所定温度になるとヒータ1bの動作を停止させるように構成されている。
ヒータ1bによるインクの温度調節には、初期のインクの温度にもよるが、数分から10分程度要する場合がある。インクの温度が既に印字に適した温度になっている場合には、ヒータ1bによる加温制御は行われない。
(フロントカバー10A)
図5に示すように、筐体10にはフロントカバー10Aが着脱可能に設けられている。フロントカバー10Aは、加振器11、ノズル12、帯電電極1、帯電検出センサ14、偏向電極15を前側から覆うように形成されている。例えばインク軸の調整時等にフロントカバー10Aを取り外すことで、加振器11、ノズル12、帯電電極1、帯電検出センサ14、偏向電極15等を露出させることができる。フロントカバー10Aを取り外すことで、ガター16の開口16aも露出させることができる。
図2に示すように、印字ヘッド1には、フロントカバー10Aの着脱状態を検知するカバーセンサ1aが設けられている。カバーセンサ1aは、フロントカバー10Aが筐体10に取り付けられていることや、フロントカバー10Aが筐体10から取り外されていることを、例えばON/OFFスイッチ等により検知することが可能に構成されている。カバーセンサ1aは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に対して検知信号を出力している。
以下、ガター16によるインクまたは溶剤の回収について詳細に説明するために、インク流通経路104cおよび溶剤流通経路105cに係る構成について、図4を用いて説明をする。なお、図4において符号Fが付された構成要素は、フィルタを例示している。以下の記載では、フィルタFの配置、構成等の説明を省略する。
<インクおよび溶剤の経路について>
前述のように、本実施形態に係るコントローラ100は、印字ヘッド1にインクを供給するためのインク流通経路104cと、印字ヘッド1およびメインタンク104b等に溶剤を供給するための溶剤流通経路105cと、を備えている。
具体的に、インク流通経路104cは、ノズル12へのインクの供給に関連した経路として、インクカートリッジ104aおよび第1分岐部51を接続する第1インク経路21と、第1分岐部51(詳細には、第2インク経路22における中途の部位)、および、第2分岐部52を接続する第6インク経路26と、第2分岐部52およびメインタンク104bを接続する第8インク経路28と、メインタンク104bおよびノズル12を接続する第4インク経路24と、を有している。ここで、本実施形態に係る第6インク経路26は、後述の第5インク経路25を介して第2分岐部52と接続されるようになっている。
また、インク流通経路104cは、粘度計53による粘度測定に関連した経路として、第1分岐部51およびメインタンク104bを接続し、かつ粘度計53が介設された第2インク経路22と、この第2インク経路22とは独立して設けられ、メインタンク104bおよび第1分岐部51を接続する第3インク経路23と、を有している。
また、インク流通経路104cは、ガター16によるインクの回収に関連した経路として、ガター16およびメインタンク104bを接続する第5インク経路25を有している。第5インク経路25は、ガター16にインク粒が回収された場合には、回収されたインク粒をインク供給部104へと導く回収経路に相当する経路である。ガター16に溶剤が供給された場合には、溶剤が第5インク経路25によって回収される。
第5インク経路25によって回収された液体の量は、図2に示す回収量検知部101dで検知することができる。回収量検知部101dは、液体の流量を測定可能なセンサ等で構成されており、第5インク経路25を通過した流体の量を、第5インク経路25によって回収された液体の量として検知できる。回収量検知部101dは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に対して検知結果を出力するように構成されている。
ここで、第2インク経路22には、循環ポンプP4と、第11バルブV11と、粘度計53と、が順番に設けられている。第4インク経路24には、インクポンプP1と、減圧弁と、圧力計と、第14バルブV14と、が順番に設けられている。第5インク経路25には、第10バルブV10と、ガターポンプP3と、第2分岐部52と、が順番に設けられている。ガターポンプP3は、第5インク経路25を負圧にすることで、ガター16にインク粒が回収された場合にはインク粒を吸引し、ガター16に溶剤が回収された場合には溶剤を吸引する吸引ポンプである。
一方、溶剤流通経路105cは、ノズル12への溶剤の供給に関連した経路として、溶剤カートリッジ105aおよびノズル12を接続する第1溶剤経路31を有している。
また、溶剤流通経路105cは、溶剤カートリッジ105aに収容された溶剤によるインクの濃度(粘度)調整に関連した経路(溶剤カートリッジ105aとメインタンク104bとを結ぶ経路の一部要素)として、第1溶剤経路31における中途の部位、および、第1分岐部51を接続する第2溶剤経路32を有していてもよい。
また、溶剤流通経路105cは、コンディショニングタンク105bに収納された溶剤による濃度調整に関連した経路(メインタンク104bとコンディショニングタンク105bとを結ぶ経路の一部要素)として、第1分岐部51とコンディショニングタンク105bを接続する第3溶剤経路33を有していてもよい。
なお、インク流通経路104cとして例示された第5インク経路25は、ガター16による溶剤の回収に関連している。前述のように、「インク流通経路104c」および「溶剤流通経路105c」という分類は、便宜上の分類に過ぎない。
ここで、第1溶剤経路31には、光学式空検知機構44と、溶剤ポンプP2と、第16バルブV16と、第12バルブV12と、が順番に設けられている。第1溶剤経路31には、溶剤噴射部としての洗浄ノズル19が接続されている。洗浄ノズル19は、印字ヘッド1における加振器11、ノズル12の先端部、帯電電極13、偏向電極15等に溶剤を噴射することによってそれらを洗浄するためのノズルであって、洗浄液としての溶剤を噴出することができる。洗浄ノズル19から第1溶剤経路31に至る途中には、第15バルブV15が設けられている。
ここで、第1分岐部51は、第3インク経路23および第2インク経路22の間を開閉する第5バルブV5と、第1インク経路21および第2インク経路22の間を開閉する第8バルブV8と、第3溶剤経路33および第2インク経路22の間を開閉する第9バルブV9と、第2溶剤経路32および第2インク経路の間を開閉する第13バルブV13と、を有している。
また、第2分岐部52は、第6インク経路26および第8インク経路28の間を開閉する第1バルブV1と、第6インク経路26およびコンディショニングタンク105bの間を開閉する第3バルブV3と、第6インク経路26および廃液タンク(図4において、「廃液」と図示)の間を開閉する第4バルブV4と、を有している。
制御部101は、第11バルブV11など、各経路に設けられたバルブに制御信号を出力したり、第1分岐部51および第2分岐部52をなす各バルブに制御信号を出力したりすることで、コントローラ100内に所望の流路を構成することができる。
例えば、第8バルブV8と第1バルブV1を開き、かつ、循環ポンプP4を作動させることで、循環ポンプP4が及ぼす負圧により、インクカートリッジ104aからメインタンク104bにインクを補充することが可能になる。第1バルブV1、第8バルブV8及び循環ポンプP4は、メインタンク104bにインクを補充するインク補充部を構成している。
また、本来の循環動作ではないが、第5バルブV5と第11バルブV11を開くことで、第2インク経路22と、メインタンクと、第3インク経路23と、の間でインクを循環させて、粘度計53によってインクの粘度を測定することが可能になる。
溶剤に関連した経路についても同様である。例えば、第13バルブV13と、第1バルブV1と、を開くことで、溶剤カートリッジ105aに収容された溶剤をメインタンク104bに供給し、同タンクに蓄えられたインクの濃度を調整することができるようになる。また、第9バルブV9と、第1バルブV1と、を開くことで、コンディショニングタンク105bに貯蔵されたインク混じりの溶剤が、第3溶剤経路33、第1分岐部51、第6インク経路26、第2分岐部52および第8インク経路28を通過して、メインタンク105aに供給される。
コントローラ100は、空気の流通に関連した経路も有している。例えば、メインタンク104bには、不図示の排気口に通じる第1排気管41が接続されている。同様に、コンディショニングタンク105bには、前記排気口に通じる第2排気管42が接続されている。
空気の流通に関連した経路の別例として、コントローラ100は、ノズル12および第1分岐部51を接続する吸引経路27を有している。吸引経路27には第6バルブV6が設けられていて、この第6バルブV6と、前述の第5バルブV5を開くことで、吸引経路27、第1分岐部51、第6インク経路26、第2分岐部52、第8インク経路28、メインタンク104bおよび第1排気管41を介してノズル12を大気と連通させることができる。これにより、ノズル12から吐出されるインク粒の噴射圧を調整することができるようになる。
また、印字を実施する際には、第14バルブV14を開くとともに、インクポンプP1を作動させることで、メインタンク104bから第4インク経路24を介してインクがノズル12に供給される。そうして供給されたインクは、柱状または粒子状のインク粒となってノズル12から吐出される。この第14バルブV14の開閉制御及びインクポンプP1の制御は、制御部101が有する吐出制御部101dが行うようになっている。
ここで、ノズル12から吐出されたインク(インク粒)のうち、印字に関与するインクは、図3を用いて説明したように印字ヘッド1から吐出される。一方、印字に関与しないインク、および、ノズル12等の洗浄に用いられた溶剤は、ガター16に回収されて、第5インク経路25を通じてコントローラ100に送り戻される。
その場合、メインタンク104bに送り戻されるべきインクは、第1分岐部51から、第6インク経路26、及び、第2分岐部52における第1バルブV1、および、第8インク経路28を介してメインタンク104bに供給される。一方、コンディショニングタンク105bに送り戻されるべき溶剤は、第5経路25から、第2分岐部52における第3バルブV3を介してコンディショニングタンク105bに供給される。
ガター16によるインクまたは溶剤の回収は、例えば、インクジェット記録装置Iの立上処理および立下処理と関連して行われるようになっている。ここで、「立上処理」とは、インクジェット記録装置Iへの電源投入時に、印字を開始する前に実行される処理をいう。一方、「立下処理」とは、インクジェット記録装置Iの電源遮断時に、同装置の動作を停止する前に実行される処理をいう。
詳しくは、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、電源スイッチがONにされても、印字を直ちには開始しない。インクジェット記録装置Iは、印字を開始する前に所定の立上処理を実行する。この立上処理においては、溶剤を用いて印字ヘッド1を洗浄した後に、インクの吐出が開始される。立上処理の開始直後に吐出されるインクは、前述したインク軸を形成し、ガター16によって回収される。
同様に、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、電源スイッチがOFFにされようとしたときには、その動作を直ちには停止しない。インクジェット記録装置Iは、動作を停止する前に、ノズル洗浄などからなる所定の立下処理を実行する。この立下処理においては、ノズル12から溶剤を吐出させて、これに残存したインクを洗浄および回収することができる。溶剤の吐出に伴ってノズル12から排出されたインクは、立上処理におけるインク軸と同様に、ガター16によって回収される。
なお、本実施形態における「電源スイッチ」には、物理的な押し釦に加えて、操作表示部103等に表示されるタッチ式操作パネルで構成されるスイッチ類も含む。そして、電源スイッチのOFF操作とは、押し釦等を物理的に押下する操作に加えて、操作用端末800、操作表示部103等を通じて指令されるシャットダウン操作も指す。電源スイッチのON操作についても同様である。
以下、インクジェット記録装置Iの立上処理および立下処理について詳細に説明する。
<インクジェット記録装置Iの基本動作>
図6は、インクジェット記録装置Iの基本動作を例示するフローチャートである。このフローチャートは、立上処理をはじめとするインクジェット記録装置Iの基本動作を例示している。
まず、図6のステップSA1では、インクジェット記録装置Iの電源スイッチがOFFFからONにされて、インクジェット記録装置Iに電源が投入される。
ステップSA1から続くステップSA2において、制御部101が立上処理を実行する。
図7は、インクジェット記録装置Iの立上処理を例示するフローチャートである。このフローチャートは、図6におけるステップSA2の詳細を例示している。すなわち、図7における4つのステップSB1、SB2、SB3、SB4が、図6のステップSA2を構成している。なお、立上処理の詳細については後述する。
また、図8は立上処理における工程Aを説明するための図であり、図9は立上処理における工程Bを説明するための図であり、図10は立上処理における工程Cを説明するための図である。
ステップSB1においては、制御部101が工程Aを実行し、インクジェット記録装置Iにおけるインクおよび溶剤の経路を昇圧する。この工程Aにおいては、溶剤を準備するために、制御部101は、第16バルブV16を開いた状態で、第12バルブV12を閉状態で待機させる。その状態で溶剤ポンプP2が作動することで、溶剤カートリッジ105aに収容された溶剤が、第1溶剤経路31を介して第12バルブV12付近まで供給される(図8の太線を参照)。
また、インクを準備するために、制御部101は、第14バルブV14を閉状態で待機させる。その状態でインクポンプP1が作動することで、第4インク経路24内のインクの圧力が上昇する(図8の太線を参照)。
また、ガター16を準備するために、制御部101は、第10バルブV10および第1バルブV1を開状態で待機させる。その状態でガターポンプP3が作動することで、ガター16によって回収されたインクまたは溶剤を、第5インク経路25および第2分岐部52を介してメインタンク104bまで送り戻すことができるようになる(図8の太線を参照)。
工程Aにおいて、制御部101には、圧力計の検知信号が入力される。制御部101は、そうした検知信号に基づいて、第4インク経路24の圧力が規定値以上になるまで待機する。
ステップSA1から続くステップSA2では、制御部101が工程Bを実行し、ノズル12から溶剤を吐出させる。この工程Bにおいては、制御部101が第12バルブV12を開くことで、ノズル12から溶剤が吸い出されて吐出される。そうして吐出された溶剤は、ガター16によって回収される。この工程Bは、1秒未満の短期間にわたって実行されるため、他の工程に比して、少量の溶剤が吐出されることになる。そのため、工程Bにおいて吐出される溶剤は、第1バルブV1を介して第5インク経路25からメインタンク104bに送り戻される(図9の太線を参照)。
なお、工程Bにおいて多量の溶剤が噴射される場合は、第1バルブV1ではなく第3バルブV3が開放されて、第5インク経路25からコンディショニングタンク105bへ溶剤が送り戻される。
ステップSA2から続くステップSA3では、制御部101が工程Cを実行し、ノズル12からインクを吐出させる。この工程Cにおいては、インクを吐出させるために、制御部101は、第12バルブV12を閉じて第14バルブV14を開く。これにより、ノズル12から軸状のインク(インク軸)が吐出される。そうして吐出されたインクは、ガター16によって回収される。そうして回収されたインクは、第1バルブV1を介して第5インク経路25からメインタンク104bに送り戻される(図10の太線を参照)。
ステップSA3から続くステップSA4では、制御部101が、ノズル12から吐出されるインクへの加振、並びに、帯電電極13および偏向電極15への印加を開始させる。これにより、インクを粒子化させたり、帯電させたり、偏向させたりすることが可能となる。
ステップSA4に示す処理が終了するとリターンされて、図7に示す制御プロセスから図6に示す制御プロセスに戻る。そして、制御部101が、ステップSA2から続くステップSA3を実行する。
ステップSA3において、制御部101は、粒子状のインク(インク粒)をワークWに着弾させることで、そのワークWに対して印字を行う。
ワークWへの印字動作を開始すると、図3に示すように、加振器11によって加振されたインクがノズル12から吐出される。このインクは、コントローラ100のインク供給部104から適宜供給されるようになっている。ノズル12から吐出されたインクは、その吐出直後から粒子化を開始し、粒子化した段階で帯電電極13によって帯電される。帯電電極13によって帯電されたインク粒は、帯電検出センサ14によって帯電状態が検出された上で、偏向電極15を通過する。
そして、偏向電極15によって飛翔方向が偏向されたインク粒は、筐体10内の飛翔区間S1を通過して、印字ヘッド1の外部に吐出される。印字ヘッド1から吐出されたインク粒は、図1に示すように、ワークWの表面上に着弾して文字や図形を形成する。ここで、インク粒の着弾位置は、各インク粒の帯電量と、偏向電極15への印加電圧を介して制御される。
また、前述のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置Iは、コンティニュアス方式のインクジェットプリンタとして構成されているため、立上処理後の印字可能状態(インクジェット記録装置Iの稼働状態)にあっては、印字を実行しないときであっても、ノズル12からインクが吐出され続けるようになっている。このときに吐出されるインクは、偏向電極15によって偏向されない(換言すれば、「非偏向」とされる)。非偏向とされたインクは、印字に関与することなく、ガター16により回収されて装置内部を循環し、再利用される。
ここで、印字が滞りなく完了し、インクジェット記録装置Iが正常にシャットダウンされる場合を考える。具体的に、ステップSA3において、インクジェット記録装置Iの電源スイッチがONからOFFに切り替えられようとしたものとする。
この場合、ステップSA4において、制御部101が立下処理を実行する。この立下処理は、本実施形態における「洗浄動作」の例示である。洗浄動作は、制御部101の洗浄動作部101aが実行する。
図11は、インクジェット記録装置Iの立下処理を例示するフローチャートである。このフローチャートは、図6におけるステップSA4の詳細を例示している。すなわち、図11における5つのステップSC1~ステップSC5が図6のステップSA4を構成している。
また、図12は立下処理における工程Dを説明するための図であり、図13は立下処理における工程Eを説明するための図であり、図14は立下処理における工程Fを説明するための図である。
ステップSC1においては、制御部101が、ノズル12から吐出されるインクへの加振、並びに、帯電電極13および偏向電極15への電圧印加を停止する(インクの粒子化、帯電、偏向:ON→OFF)。これにより、インクの粒子化、帯電および偏向が停止され、ノズル12からは軸状のインク軸が吐出されるようになる。
ステップSC1から続くステップSC2では、制御部101が、インク軸の吐出を停止させる(インクの吐出停止)。具体的に、このステップSC2では、インクの吐出を停止するために、制御部101は、第14バルブV14を閉じる。これにより、ノズル12からインクが吐出されないようになる。
ステップSC2から続くステップSC3では、制御部101が、溶剤の間欠吐出を実行する(溶剤の間欠噴出)。具体的に、制御部101は、溶剤を間欠的に吐出させるために、図12に例示する工程Dと、図13に例示する工程Eと、を交互に実行する。溶剤を間欠的に吐出することで、インクジェット記録装置I、特に印字ヘッド1をなすノズル12を洗浄することができる。以下、この動作を「間欠噴出動作」という。
このうち、図12に示す工程Dにおいては、制御部101の吐出制御部101dは、第16バルブV16と、第12バルブ(溶剤噴射バルブともいう。)V12と、第10バルブV10と、第1バルブV1と、を開く。その状態で吐出制御部101dが溶剤ポンプP2およびガターポンプP3を作動させることで、溶剤カートリッジ105aに収容された溶剤が、第1溶剤経路31を介してノズル12から吐出されてガター16により回収される。ガター16により回収された溶剤は、第5インク経路25および第2分岐部52を介してメインタンク104bに送り戻される(図12の太線を参照)。
図11に示す処理を開始した直後は、第5インク経路25に多くのインクが残存していると考えられるため、図12に示す工程Dにおける溶剤は、コンディショニングタンク105bではなく、メインタンク104bへ送り戻されるようになっている。
また、図13に示す工程Eにおいては、制御部101は、第12バルブV12を閉じて、第6バルブV6を開く。そうすると、循環ポンプP4が及ぼす負圧によって、ノズル12に残存した溶剤が、吸引経路27、第1分岐部51、第6インク経路26、第1バルブV1、第8インク経路28を介してメインタンク104bに吸い込まれるようになる(図13の太線を参照)。
なお、図13に示す工程Eにおいては、第12バルブV12を閉じずに、開いたままとしてもよい。その場合、溶剤カートリッジ105aからノズル12へ溶剤が供給されつつも、そうして供給された溶剤がそのまま、吸引経路27から吸い込まれるようになる。こうすることで、第6バルブV6を流れる溶剤の流量を向上させ、より十分に洗浄することができるようになる。
図12に示す工程Dと図13に示す工程Eとは、複数回(例えば数セット)にわたって繰り返される。ここで、ステップSC3において工程Dを実施する時間(例えば1秒未満)は、工程Eを実施する時間(例えば数秒程度)よりも短い。
また、工程Eにおいて第12バルブV12を閉じた後に、工程Dにおいて第12バルブV12を開くことで、溶剤が間欠的に噴射されるようになる。工程Dから工程Eへ移行する際に、数秒程度にわたって第12バルブV12を閉じてもよい。こうすることで、第12バルブV12付近における溶剤の圧力を高めることができ、第12バルブV12を開いたときに、溶剤を勢いよく吐出することができるようになる。
ステップSC3から続くステップSC4において、制御部101が図12に示す工程Dのみを実行し、ノズル12から溶剤を吐出させる。このステップSC4において工程Dを実施する時間は、例えば30秒程度であり、ステップSC3において工程Dを実施する時間よりも長い。このステップSC4を実行することで、主に、ガター16に通じる第5インク経路25を洗浄することができる。以下、この動作を「ガター洗浄動作」という。
ステップSC4から続くステップSC5において、制御部101が図14に示す工程Fを実行し、印字ヘッド1から溶剤を回収する。具体的に、この工程Fにおいて、制御部101は、第10バルブV10および第3バルブV3を開く。その状態でガターポンプP3が作動することで、ノズル12に残存した溶剤が、第5インク経路25および第2分岐部52を介してコンディショニングタンク105bに吸引される(図14の太線を参照)。このステップS65を実行することで、洗浄に用いた溶剤を回収することができる。
ステップSC5が実行される前に、ステップSC4において溶剤を吐出させたため、第5インク経路25には相対的に多くの溶剤が残存していると考えられる。そのため、工程Fにおける溶剤は、メインタンク104bではなく、コンディショニングタンク105bへと送り戻されるようになっている。
ステップSC5に示す処理が終了するとリターンされて、図11に示す制御プロセスから図6に示す制御プロセスに戻る。そして、ステップSA4から続くステップSA5では、インクジェット記録装置Iへの電源供給が遮断され、インクジェット記録装置Iは、その動作を停止する。
<洗浄載置部200>
図1に示すように、洗浄載置部200は、インクジェット記録装置Iにより印字を行う際の印字ヘッド1の設置場所とは異なる場所に配置されている。図15に示すように、洗浄載置部200は、洗浄液を用いて印字ヘッド1を洗浄する際に印字ヘッド1が載置されるように構成されたものである。
洗浄載置部200と印字ヘッド1とは、通信可能に接続されており、その接続形態は有線であってもよいし、無線であってもよい。また、印字ヘッド1と、コントローラ100とは通信可能に接続されており、その接続形態は有線であってもよいし、無線であってもよい。さらに、コントローラ100と洗浄載置部200とは通信可能に接続されており、その接続形態は有線であってもよいし、無線であってもよい。これらの接続形態の一例として、信号の送受信が可能な信号ラインを用いることができる。
インクジェット記録装置Iにより印字を行う際の印字ヘッド1の設置場所が図1に示すように規定されている場合、その設置場所から離れた場所に、洗浄載置部200が設置されている。洗浄載置部200は、コントローラ100から離して設置することができるが、コントローラ100と同じ場所に設置してもよい。洗浄載置部200は、印字ヘッド1が載置された状態で印字ヘッド1の洗浄を行うユニットであり、例えば、洗浄ステーション、洗浄ドック、洗浄載置装置、洗浄ユニット等と呼ぶこともできる。
図16に示すように、洗浄載置部200は、本体部210と、印字ヘッド1の洗浄液を回収するための回収容器300とを備えている。本体部210は、上下方向に延びる背板部211を備えている。背板部211の上部には、印字ヘッド1を案内するとともに支持する案内支持部材230が設けられている。図17に示すように、案内支持部材230は、左右一対のレール部230a、230aと、支持部230bとを有している。レール部230a、230aは互いに左右方向に間隔をあけて設けられており、共に上下方向に延びるとともに、背板部211の前面から前側へ突出するように配置されている。レール部230a、230aの上端部は開放されている。支持部230bは、正規の位置に載置された印字ヘッド1を支持する部分であり、レール部230a、230aの間から前側へ向けて突出する突出部で構成されている。支持部230bはストッパ部と呼ぶこともできる。
一方、図18に示すように、印字ヘッド1の筐体10の背面における上下方向中間部には、被案内部材18が設けられている。被案内部材18は、筐体10の背面から突出するように配設された板材等で構成されている。被案内部材18の左側には、洗浄載置部200の左側のレール部230aに嵌まるように形成された被案内部18aが左方向に突出するように形成されている。被案内部材18の右側には、洗浄載置部200の右側のレール部230aに嵌まるように形成された被案内部18aが右方向に突出するように形成されている。
左右の被案内部18a、18aは上下方向に延びており、洗浄載置部200のレール部230a、230aの上端部から当該レール部230a、230a内に差し込むことが可能に形成されている。被案内部18a、18aはレール部230a、230a内に差し込まれた状態で当該レール部230a、230aによって上下方向に案内される。このとき、印字ヘッド1の移動方向は上下方向のみに規制され、洗浄載置部200に対して左右方向や前後方向には移動しないようになっている。
被案内部材18の下端面は、洗浄載置部200の案内支持部材230に設けられている支持部230bの上面に当接する当接面18bとされている。当接面18bが図17に示す支持部230bの上面に当接するまで印字ヘッド1を洗浄載置部200に対して下方へ移動させることができる。言い換えると、被案内部材18の当接面18bの高さまたは支持部230bの上面の高さにより、洗浄載置部200に載置した状態の印字ヘッド1の高さを設定することができる。この実施形態では、洗浄載置部200に載置した状態の印字ヘッド1の高さは図15に示すように設定されており、この位置が正規の位置である。なお、図示しないが、レール部が印字ヘッド1に設けられていて、被案内部材が洗浄載置部200に設けられていてもよい。印字ヘッド1を正規の位置に位置決めする構造は上述した構造に限られるものではなく、印字ヘッド1を本体部210の一部によって正規の位置で支持可能な構成であればよい。
図16及び図19に示すように、洗浄載置部200の背板部211の内部には、磁石211aが設けられている。磁石211aは、磁力が背板部211を透過して前方へ作用するように配置されている。また、図19に示すように、背板部211の内部には、基板211bが設けられており、この基板211bには、赤外線通信を行うための赤外光を発する発光素子211cが実装されている。図20に示すように、発光素子211cは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101によって制御されるようになっている。図19に示すように、発光素子211cの発光面は前に向いている。背板部211には、発光素子211cの赤外光を透過する透過部材211dが設けられている。発光素子211cから照射された赤外光は透過部材211dを透過して背板部211の前方へ向けて照射される。
一方、印字ヘッド1の筐体10の内部には、基板10aが設けられている。基板10aには、磁気センサ10bと、赤外線通信用の受光素子10cとが実装されている。磁気センサ10bは、所定閾値以上の磁力を検知したときに、そのことを電気信号に変換して出力するように構成された非接触の磁気センサであり、例えばホール素子等で構成することができる。磁気センサ10bは、印字ヘッド10が正規の位置にあるときに、洗浄載置部200の磁石211aと略同じ高さとなるように位置付けられている。磁石211aの前側において当該磁石211aと同じ高さが最も磁力の大きな所であり、この位置にあるときのみ、磁気センサ10bは、磁力検知信号を出力するように構成されている。したがって、例えば印字センサ1が正規の位置よりも上に載置されていた場合には、磁気センサ10bと磁石211aとの距離が遠くなるので、磁気センサ10bは磁力検知信号を出力しない。これを利用して印字ヘッド1が洗浄載置部200に載置されているか否か、正規の位置に載置されているか否かを検知できる。磁気センサ10bは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に信号を出力するように構成されている。印字ヘッド1が洗浄載置部200に載置されているか否か、正規の位置に載置されているか否かの判定は、制御部101が行うようにしてもよい。
受光素子10cは、洗浄載置部200の発光素子211cから照射された赤外光を受光可能となるように、受光面が後側に向いている。印字ヘッド10が正規の位置にあるときにのみ、受光素子10cが発光素子211cの赤外光を受光できるように、受光素子10cの高さが設定されている。発光素子211cの赤外光は広範囲に拡散しないように指向性を狭めておくとともに、受光素子10cの指向性も狭めておくことで、印字ヘッド10が正規の位置にあるときにのみ、受光素子10cが発光素子211cの赤外光を受光可能になる。この通信の成立可否に基づいて、印字ヘッド1が洗浄載置部200に載置されているか否か、正規の位置に載置されているか否かを検知できる。受光素子10cは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に信号を出力するように構成されている。印字ヘッド1が洗浄載置部200に載置されているか否か、正規の位置に載置されているか否かの判定は、通信の成立可否に基づいて、制御部101が行うようにしてもよい。なお、筐体10には、発光素子211cの赤外光を透過させる窓部10dが設けられている。
発光素子211c及び受光素子10cの位置は、図示した位置に限られるものではなく、印字ヘッド1が正規の位置に載置された状態でのみ、発光素子211cから照射された赤外光を受光素子10cが受光できる位置関係であればよい。同様に、磁石211a及び磁気センサ10bの位置は、図示した位置に限られるものではなく、印字ヘッド1が正規の位置に載置された状態でのみ、磁気センサ10bが磁力検知信号を出力する位置関係であればよい。
上述したように、洗浄載置部200に印字ヘッド1が載置されなければ磁気センサ10bが磁力検知信号を出力しないので、磁気センサ10bは、洗浄載置部200に印字ヘッド1が載置されたことを検知する載置検知部に相当するものである。また、洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置されていなければ磁気センサ10bが磁力検知信号を出力しないので、磁気センサ10bは、洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置したことを検知することもできる。磁力検知信号は、印字ヘッド1の載置確認に基づく信号である。洗浄載置部200に載置された印字ヘッド1と接続されているコントローラ100に対して磁気センサ10bが磁力検知信号を送る。
また、洗浄載置部200に印字ヘッド1が載置されなければ受光素子10cが発光素子211cから照射された赤外光を受光することができないので、受光素子10cは、洗浄載置部200に印字ヘッド1が載置されたことを検知する載置検知部に相当するものである。また、洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置されていなければ受光素子10cが発光素子211cから照射された赤外光を受光することができないので、受光素子10cは、洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置したことを検知することもできる。また、発光素子211cと受光素子10cとが赤外線通信を行うことができなければ印字ヘッド1が載置されていないと推定できるので、制御部101は、受光素子10cの出力に基づいて、赤外線通信が可能な状態であるときには洗浄載置部200に印字ヘッド1が載置されていると検知することができる。同様に、洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置されていなければ、発光素子211cと受光素子10cとが赤外線通信を行うことができないので、制御部101は、受光素子10cの出力に基づいて、赤外線通信が可能な状態であるときには洗浄載置部200に対して印字ヘッド1が正規の位置に載置されていると検知することができる。受光素子10cで取得された赤外線通信の信号は、印字ヘッド1の載置確認に基づく信号である。洗浄載置部200に載置された印字ヘッド1と接続されているコントローラ100に対して受光素子10cが当該信号を送る。
磁気センサ10bから出力される磁力検知信号及び受光素子10cで取得された赤外線通信の信号は、接続ケーブル107を介して印字ヘッド1からコントローラ100の制御部101に送られる。
載置検知部は、磁力検知信号や赤外線通信を利用したもの以外にも、例えば近接センサ、光電センサ、レーザセンサ等であってもよい。これらセンサを利用する場合、印字ヘッド1と洗浄載置部200との距離が所定距離以下となった場合に、印字ヘッド1が洗浄載置部200に対して載置した、または正規の位置に載置したことを検知できる。
この実施形態では、印字ヘッド1の載置確認に基づく信号として、磁力検知信号と赤外線通信との両方を出力可能構成しているが、これらのうち、一方のみ出力可能に構成してもよい。印字ヘッド1の載置確認に基づく信号を2種類以上出力することで、検知精度を向上させることができる。
図16に示すように、背板部211には、上下方向中間部から前側へ向けて延びる底壁部212と、底壁部212から上方へ延びる周壁部213とが設けられており、底壁部212と周壁部213とによってコップ形状をなしている。周壁部213内に、正規の位置に載置されている印字ヘッド1の下側が挿入されるようになっている。この状態で印字ヘッド1の上側は周壁部213の上端部から上方へ突出している。また、印字ヘッド1の吐出口A(図5に示す)から下方に離れた所に底壁部212が位置している。印字ヘッド1の洗浄時に使用された溶剤は、主に印字ヘッド1の吐出口Aから漏れ出すことになるが、この吐出口Aから漏れ出した溶剤を底壁部212と周壁部213とによって受けることができるようになっている。底壁部212と周壁部213とは、説明の上で区別して示しているが、これらの境界が区別不能に一体化した形状であってもよく、要するに、印字ヘッド1の下側を収容可能な有底筒状に形成されていればよい。
底壁部212には、印字ヘッド1の洗浄剤を回収するための回収容器300が取り付けられるようになっている。回収容器300は、例えば樹脂製ボトル等で構成することができ、内部の洗浄液量を外部から把握可能な透光性を有するものや、目盛りの付いたものを使用することができる。
底壁部212の下面には、取付筒部215が下方へ突出するように形成されている。取付筒部215の内周面には、図示しないがネジ溝が形成されている。ネジ溝には、回収容器300の上部に形成されたネジ山(図示せず)が螺合するようになっている。洗浄剤は、底壁部212に形成された通過孔(図示せず)を通って回収容器300に回収されるようになっている。
<洗浄動作部101a>
図2に示す洗浄動作部101aは、載置検知部である磁気センサ10bから送られた印字ヘッド1の載置確認に基づく信号(磁力検知信号)を受信した場合に、洗浄載置部200に載置された印字ヘッド1の洗浄動作を行い、それ以外の場合には洗浄動作を禁止する。また、コントローラ100の洗浄動作部101aは、受光素子10cで取得された赤外線通信の信号(印字ヘッド1の載置確認に基づく信号)を受信した場合に、洗浄載置部200に載置された印字ヘッド1の洗浄動作を行い、それ以外の場合には洗浄動作を禁止する。つまり、洗浄動作部101aが印字ヘッド1の載置確認に基づく信号を受信していない時には、印字ヘッド1の洗浄動作を禁止することができる。
<印字ヘッド1内部の濡れ現象及び電流リーク検出>
洗浄動作部101aによる洗浄動作時には、洗浄ノズル19から噴射された溶剤が印字ヘッド1内部に到達するので、ノズル12、帯電電極13、偏向電極15が溶剤で濡れる。例えば、偏向電極15に着目したとき、偏向電極15が溶剤で濡れたままになることがある。すなわち、図23の符号1000、1001で示す部分は、それぞれ洗浄後に残った溶剤を模式的に示しており、符号1000で示す溶剤は、高圧側電極である第1電極部材15aからGND側電極である第2電極部材15bに亘って存在しているので、この状態で偏向電圧発生部120が電圧を印加すると、符号1000で示す溶剤を伝ってリーク電流が流れることになる。また、符号1001で示す溶剤は、高圧側電極である第1電極部材15aから筐体10に亘って存在しているので、この状態で偏向電圧発生部120が電圧を印加すると、符号1001で示す溶剤を伝ってリーク電流が流れることになる。
例えば、図22に示すように、偏向電圧発生部120が所定電圧として7000Vを印加した場合、偏向電極15が乾燥していれば、抵抗120aと第1電極部材15aとの間の電圧を偏向電圧測定部120cで測定すると7000Vとなる。一方、偏向電極15が溶剤で濡れていると、偏向電圧発生部120が7000Vを印加しても、偏向電圧測定部120cで測定される電圧は6000V程度になる。これは、偏向電圧発生部120の抵抗120aと電流リーク部分の抵抗成分による分圧による電圧降下によって生じたものである。
図24は、偏向電圧測定部120cで測定される直流電圧を示しており、乾燥時に比べて非乾燥時には大きく低下することが分かる。偏向電圧測定部120cで測定される交流電圧については、図25に示すように、乾燥時と非乾燥時とを比べると、非乾燥時には大きく変動することが分かる。つまり、第1電極部材15aと第2電極部材15bの直流電圧が下がる時には電流が溶剤を通ってGND側に漏れている状態であり、小さい放電やそのインピーダンスの揺らぎに起因して交流電圧が大きく変動するためである。
<乾燥処理部130及び乾燥制御部101b>
洗浄後の偏向電極15が溶剤で濡れていると、偏向電圧測定部120cで測定される電圧が、偏向電圧発生部120により印加した電圧に比べて大幅に低下する。この電圧低下は、第1電極部材15aと第2電極部材15bの間に電界を発生させるための電圧低下を意味し、その結果、インク粒の飛翔方向が狙い通りにならず、印字品質の低下を招いてしまうおそれがある。
このことに対し、本例のインクジェット記録装置Iは、洗浄動作部101aによる印字ヘッド1内の洗浄後、印字ヘッド1にエアを供給することにより偏向電極15を乾燥させる乾燥処理部130(図2参照)を備えている。乾燥処理部130は、エア供給源となるポンプ130aと、ポンプ130aから供給されたエアを印字ヘッド1の内部へ供給するエア配管130b(図1及び図3に示す)を備えている。乾燥処理部130により、偏向電極15だけでなく、帯電電極13やノズル12周りも乾燥させることができる。
一方、コントローラ100の制御部101には、乾燥制御部101bが設けられている。乾燥制御部101bは、乾燥処理部130のポンプ130aを制御する部分であり、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを制御することにより、乾燥処理部130を、エア供給状態と非供給状態とに切り替えることができるようになっている。乾燥制御部101bは、後述する乾燥判断部101bの判断結果に基づいて、乾燥処理部130を制御することもできるようになっている。
乾燥制御部101bは、通常の印字処理の実行中や洗浄動作中等には、乾燥処理部130を非供給状態にしておき、洗浄動作が完了したことを洗浄動作部101aから取得すると、乾燥処理部130を供給状態に切り替える。これにより、乾燥処理部130が印字ヘッド1にエアを供給して印字ヘッド1内を乾燥させる。
<洗浄動作から立上処理の完了までの処理>
図27は、洗浄動作から立上処理が完了するまでの処理を例示するフローチャートであり、図7に示す例に対して乾燥工程、インク補充工程、インク温調工程が追加されている。図27に示すフローチャートは、自動洗浄開始の信号を制御部101が受信すると開始される。自動洗浄開始の信号は、例えばユーザによるインクジェット記録装置Iの電源ONや、立ち上げ指示等がなされた時に制御部101が受信するようになっている。洗浄開始前は偏向電圧発生部120が偏向電極15に対して電圧を印加していない。
ステップSD1では、制御部101は、第16バルブV16を開いた状態で、第12バルブV12及び第15バルブV15を閉状態で待機させ、溶剤ポンプP2を作動させることにより、第1溶剤経路31内の溶剤圧力を上昇させる。第1溶剤経路31内の溶剤圧力が高まるまで所定時間待った後、ステップSD2に進む。
ステップSD2では、洗浄動作を行う。具体的には、洗浄動作部101aが、第15バルブV15を開き、洗浄ノズル19から溶剤を吐出させてノズル12の先端部、帯電電極13、偏向電極15等を溶剤で洗浄する。溶剤を所定量吐出したら第15バルブV15を閉じ、ステップSD3に進む。
ステップSD3では、乾燥処理を行う。具体的には、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを作動させ、エア配管130bの先端部から印字ヘッド1の内部にエアを供給する。このエアの供給時間は、例えば20秒~1分程度に設定することができる。ステップSD3では、偏向電極15等が完全に乾燥していなくてもよい。ステップSD3は、後述するステップSD7の乾燥処理に先立って行われる予備乾燥処理である。エアの供給が終了するとステップSD4に進む。以上が自動洗浄工程であり、ステップSD4では自動洗浄工程を終了する。
その後、ステップSD5に進み、立上処理を開始するが、ステップSD1~SD3の自動洗浄工程が立上処理に含まれていてもよい。立上処理を開始すると、ステップSD6に進むのと並行してステップSD7にも進む。ステップSD7では、乾燥処理を行う。具体的には、ステップSD3の乾燥処理と同様にすることができるが、ステップSD7の乾燥処理は、エアの供給時間がステップSD3に比べて長く設定されている。ステップSD7におけるエアの供給時間は、例えば乾燥に有利な温度条件(高温環境)下で偏向電極15の乾燥に要する時間を実験により求めておき、このようにして求めた比較的短い時間とすることもできる。
一方、ステップSD6では、メインタンク104bの液量(レベル)が規定以下か否かを判定する。ステップSD6でYESと判定されてメインタンク104bの液量が規定以下であって残量が少ない場合にはステップSD8に進み、第8バルブV8と第1バルブV1を開き、かつ、循環ポンプP4を作動させることにより、インクカートリッジ104aからメインタンク104bにインクを補充する。メインタンク104bの液量によって異なるが、ステップSD8を完了するのに要する時間は最長で10分程度の場合がある。このインクの補充は、乾燥処理部130によるエアの供給と並行して行われる。
その後、ステップSD9に進み、制御部101は、第14バルブV14を閉状態で待機させた状態でインクポンプP1を作動させることで、メインタンク104bに蓄えられたインクを第4インク経路24に送り、第4インク経路24内のインク圧力を上昇させる。
インク圧力が上昇したら、ステップSD10に進み、制御部101はインクの温度を検知し、ノズル12から吐出されるインク粒の温度が印字に適した所定温度となるようにヒータ1bによってインクを加温し、インクの温度を調節する。加温前のインクの温度によって異なるが、ステップSD10を完了するのに要する時間は最長で5分程度の場合がある。乾燥処理部130によるエアの供給と並行して、ヒータ1b及び制御部101により、ノズル12から吐出されるインク粒の温度が所定温度になるようにインクの温度を調節することができる。
ステップSD10が完了すると、ステップSD11に進み、図7に示すフローチャートのステップSB2及びSB3を実行する。ここでは溶剤及びインクを柱状に吐出させる。
ステップSD7及びSD11からステップSD12に進む。ステップSD12では、ステップSD7で開始した乾燥処理が行われている時間、即ちエアの供給時間が規定時間に達したか否かについて判定する。ステップSD12の規定時間は、偏向電極15が乾燥しにくい温度条件下であっても乾燥するように、予め実験等で求めた長めの時間とすることができる。
ステップSD12でNOと判定されてエアの供給時間が規定時間に達していない場合には、ステップSD13に進み、例えば1秒程度の乾燥待ちを行い、その後、ステップSD12に進む。つまり、エアの供給時間が規定時間に達するまで待ち、エアの供給時間が規定時間に達すると、ステップSD12では、YESと判定されてステップSD14に進み、乾燥を停止する。その後、ステップSD15に進む。ステップSD15は、図7に示すフローチャートのステップSB4である。この例では、ヒータ1bによるインクの温度調節と、乾燥処理部130によるエアの供給との両方が完了した場合に、制御部101が偏向電圧発生部120を制御して、偏向電極15に対して所定電圧を印加して印字可能状態に遷移させる。
したがって、乾燥処理部130により印字ヘッド1内にエアを供給して洗浄後の印字ヘッド1内を乾燥しながら、インクの温度調節を行うことができるので、印字ヘッド1を洗浄した後、立上処理が完了するまでの時間を短縮することができる。また、乾燥処理部130により印字ヘッド1内にエアを供給して洗浄後の印字ヘッド1内を乾燥しながら、メインタンク104bにインクを補充できるので、印字ヘッド1を洗浄した後、立上処理が完了するまでの時間を短縮することができる。
また、乾燥処理部130によるエアの供給が完了する前に、インクの温度調節が完了した場合、乾燥処理部130によるエアの供給が完了するまで、偏向電圧発生部120は偏向電極14に対する所定電圧の印加を行わないように構成されている。すなわち、乾燥処理部130によるエアの供給が完了する前は、偏向電極15が溶剤で濡れている可能性が高く、この状態で偏向電圧発生部120が偏向電極15に対して所定電圧を印加すると、電流リークが発生して放電跡が残ったり、材質によっては炭化等のおそれがあるが、乾燥処理部130によるエアの供給が完了するまで、偏向電極15に対する所定電圧の印加を行わないようにすることで、溶剤の残存に起因する電流リークが起こらないようにすることができる。
<洗浄動作から立上処理の完了までの処理の変形例1>
図28は、洗浄動作から立上処理が完了するまでの処理の変形例1を例示するフローチャートであり、この例は、図27に示す例に対して、溶剤吐出及びインク吐出開始時に乾燥処理部130による乾燥を停止している。
ステップSE1~SE10は、図27に示すフローチャートのステップSD1~SD10と同じである。ステップSE7の乾燥処理後、ノズル12から溶剤及びインクの吐出を開始する前に、ステップSE11に進み、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを停止させる。その後、ステップSE12に進み、図7に示すフローチャートのステップSB2及びSB3を実行し、ノズル12から溶剤及びインクの吐出を開始する。ノズル12からインクまたは溶剤を吐出させる際に、乾燥処理部130がエアの供給を停止しているので、エアの影響による吐出不良を回避することができる。
ステップSE12でノズル12から溶剤及びインクの吐出を開始した後、ステップSE13において溶剤及びインクの吐出が完了した否かを判定する。例えば、ガター16から液体が吸入されたことを検知可能に構成しておき、溶剤を吐出したタイミングでガター16から液体が吸入されたことを検知すると、溶剤の吐出が完了したと判定することができ、また、インクを吐出したタイミングでガター16から液体が吸入されたことを検知すると、インクの吐出が完了したと判定することができる。
ステップSE13でNOと判定された場合にはステップSE12に戻る一方、ステップSE13でYESと判定された場合にはステップSE14に進む。ステップSE14では、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを作動させて乾燥処理を行う。つまり、乾燥処理部130は、ノズル12からインクまたは溶剤の吐出を開始して所定時間が経過するまでエアの供給を停止し、所定時間経過後にエアを供給するように構成されている。その理由は、インクや溶剤の吐出を開始した初期段階はインクや溶剤の吐出状態が不安定になりやすく、この間、エアの供給を停止することで、エアの影響による吐出不良を回避することができるからである。そして、吐出の初期段階を経過した後にエアを供給することで、偏向電極15を乾燥させることができる。
ステップSE15では、ステップSE14で開始した乾燥処理が行われている時間、即ちエアの供給時間が規定時間に達したか否かについて判定する。ステップSE15でNOと判定されてエアの供給時間が規定時間に達していない場合には、ステップSE16に進み、例えば1秒程度の乾燥待ちを行い、その後、ステップSE15に進む。つまり、エアの供給時間が規定時間に達するまで待ち、エアの供給時間が規定時間に達すると、ステップSE15では、YESと判定されてステップSE17及びSE18に進む。ステップSE17は、図7に示すフローチャートのステップSB4である。ステップSE18では、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを停止させる。
<洗浄動作から立上処理の完了までの処理の変形例2>
図29は、洗浄動作から立上処理が完了するまでの処理の変形例2を例示するフローチャートであり、この例は、図28に示す例に対して、予備乾燥処理を省略している。
ステップSF1、SF2、SF3、SF4は、それぞれ、図28に示すフローチャートのステップSE1、SE2、SE4、SE5と同じであるが、ステップSF2の後の予備洗浄処理を行わないようにしている。ステップSF5~SF9は、図28に示すステップSE6~SE10と同じである。
ステップSF10では、ステップSF6で開始した乾燥処理が行われている時間、即ちエアの供給時間が第1の規定時間に達したか否かについて判定する。ステップSF10でNOと判定されてエアの供給時間が第1の規定時間に達していない場合には、ステップSF11に進み、例えば1秒程度の乾燥待ちを行い、その後、ステップSF10に進む。つまり、エアの供給時間が第1の規定時間に達するまで待ち、エアの供給時間が第1の規定時間に達すると、ステップSF10では、YESと判定されてステップSF12に進む。
ステップSF12に進み、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを停止させる。その後、ステップSF13に進み、図7に示すフローチャートのステップSB2及びSB3を実行し、ノズル12から溶剤及びインクの吐出を開始する。
ステップSF13でノズル12から溶剤及びインクの吐出を開始した後、ステップSF14において溶剤及びインクの吐出が完了した否かを判定する。ステップSF14でNOと判定された場合にはステップSF13に戻る一方、ステップSF14でYESと判定された場合にはステップSF15に進む。ステップSF15では、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを作動させて乾燥処理を行う。
ステップSF16では、ステップSF15で開始した乾燥処理が行われている時間、即ちエアの供給時間が第2の規定時間に達したか否かについて判定する。第2の規定時間は、第1の規定時間と同じであってもよいし、異なっていてもよい。この例では、第2の規定時間を第1の規定時間よりも長く設定している。
ステップSF16でNOと判定されてエアの供給時間が第2の規定時間に達していない場合には、ステップSF17に進み、例えば1秒程度の乾燥待ちを行い、その後、ステップSF16に進む。つまり、エアの供給時間が第2の規定時間に達するまで待ち、エアの供給時間が第2の規定時間に達すると、ステップSF18及びSF19に進む。ステップSF18は、図7に示すフローチャートのステップSB4である。ステップSF19では、乾燥制御部101bが乾燥処理部130のポンプ130aを停止させる。
<乾燥時間の決定方法>
図27のステップSD3及び図28のステップSE3の予備乾燥処理を除き、乾燥処理の時間(規定時間)は、予め定めた時間であってもよいし、以下に述べるように、偏向電極15の乾燥状態を電流リークによって検出し、その検出結果を反映させた時間であってもよい。
図22に示す偏向電圧測定部120cは、偏向電圧発生部120により偏向電極15に対して所定電圧が印加されたとき、偏向電極15における電流リークを検出する電流リーク検出部としても機能する。すなわち、偏向電圧測定部120cは、偏向電圧発生部120により偏向電極15に対して所定電圧が印加されたときに、偏向電極15における第1電極部材15aと第2電極部材15bの電位差が所定の閾値以上であるか否かを判断することにより電流リークを検出するように構成されている。例えば、偏向電圧発生部120が7000Vを偏向電極15に印加したとき、偏向電圧測定部120cが6500V未満の直流電圧を検出した場合には電流リークが発生していると判断する一方、偏向電圧発生部120が7000Vを偏向電極15に印加したとき、偏向電圧測定部120cが6500V以上の直流電圧を検出した場合には電流リークが発生していないと判断する。「7000V」及び「6500V」は一例であり、この電圧に限られるものではない。この実施形態では、「6500V」が直流電圧閾値となる。
この実施形態では、偏向電圧測定部120cが、偏向電極15における電流リークを、直流電圧と交流電圧の両方で検出するようにしているが、これに限らず、いずれか一方のみ検出するようにしてもよい。直流電圧と交流電圧の両方を利用した乾燥状態の判断手法の詳細について後述するが、交流電圧を利用する場合、偏向電圧測定部120cで測定された交流電圧が所定の交流電圧閾値以下であるか否かを判断することにより電流リークを検出することができる。偏向電圧測定部120cは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に対して検出結果を出力する。
図26は、電流リーク検出部の変形例を示している。上述した例では、電流リーク検出部として偏向電圧測定部120cを用いていたが、変形例では、電流リーク検出部として電流測定部120dを用いている。電流測定部120dによりリーク電流を直接測定することができる。電流リークが発生していなければ、電流測定部120dで測定される電流値が0になる一方、電流リークが発生していれば、電流測定部120dで測定される電流値が例えば10μA等の値になる。電流測定部120dは、コントローラ100の制御部101に接続されており、制御部101に対して検出結果を出力する。
電流測定部120dは、偏向電圧発生部120により偏向電極15に対して所定電圧が印加されたとき、偏向電極15における電流リークを検出する電流リーク検出部としても機能する。電流測定部120dは、偏向電圧発生部120により偏向電極15に対して所定電圧が印加されたときに検出される電流値が所定の閾値以上であるか否かを判断することにより電流リークを検出するように構成されている。例えば、偏向電圧発生部120が7000Vを偏向電極15に印加したとき電流測定部120dが5μA以上の電流を検出した場合には電流リークが発生していると判断する一方、偏向電圧発生部120が7000Vを偏向電極15に印加したとき、電流測定部120dが5μA未満の電流を検出した場合には電流リークが発生していないと判断する。
図2に示すように、コントローラ100の制御部101には、乾燥判断部101cが設けられている。乾燥判断部101cは、図22に示す偏向電圧測定部120cまたは図26に示す電流測定部120dにより検出された電流リークに基づいて、偏向電極15の乾燥状態を判断する部分である。すなわち、偏向電圧測定部120cが、電流リークが発生していないと判断する場合には、乾燥判断部101cは、偏向電極15が乾燥状態であると判断する一方、偏向電圧測定部120cが、電流リークが発生していると判断する場合には、乾燥判断部101cは、偏向電極15が溶剤で濡れている状態(非乾燥状態)であると判断する。また、電流測定部120dが、電流リークが発生していないと判断する場合には、乾燥判断部101cは、偏向電極15が乾燥状態であると判断する一方、電流測定部120dが、電流リークが発生していると判断する場合には、乾燥判断部101cは、偏向電極15が溶剤で濡れている状態(非乾燥状態)であると判断する。
図30は、偏向電極15の乾燥状態の検出処理の例を示すフローチャートであり、乾燥処理部130が実行する乾燥処理の時間を決定するのに用いることができる。このフローチャートは、乾燥処理を開始した後、上記規定時間よりも短い時間が経過した後に始まる。ステップSG1では、制御部101が、カバーセンサ1aの検知信号に基づいてフロントカバー10Aが閉じているか否か、即ち、フロントカバー10Aが筐体10に装着されているか否かを判定する。ステップSG1でNOと判定された場合には、ステップSG3に進み、フロントカバーエラーを出力する。このエラー出力は、表示部103a等にエラー表示の形態で出力することができる。フロントカバーエラーの場合には後述する処理が行われないので、ユーザの安全を確保できる。
一方、ステップSG1でYESと判定されてフロントカバー10Aが閉じている場合にはステップSG2に進む。ステップSG2では、制御部101が偏向電圧発生部120を制御し、偏向電圧発生部120により偏向電極15に対して高電圧を印加し、高電圧を印加した状態で偏向電圧測定部120cが直流電圧を測定する。その後、ステップSG4に進み、偏向電圧測定部120cで測定された直流電圧が所定の直流電圧閾値以上であるか否かを判定する。偏向電圧測定部120cで測定された直流電圧が所定の直流電圧閾値以上である場合には、ステップSG4でYESと判定されて偏向電極15が乾燥していると判断する。一方、偏向電圧測定部120cで測定された直流電圧が所定の直流電圧閾値未満である場合には、ステップSG4でNOと判定されて偏向電極15が溶剤で濡れていると判断する。この判断は乾燥判断部101cで行われる。ステップSG4で偏向電極15が乾燥していると判断された時点で、乾燥処理部130による乾燥処理を停止する。ステップSG4で偏向電極15が溶剤で濡れていると判断されている間は、乾燥処理部130による乾燥処理を継続する。
図31は、偏向電極の乾燥状態の検出処理の別の例を示すフローチャートであり、この処理も、乾燥処理部130が実行する乾燥処理の時間を決定するのに用いることができる。この例では、直流電圧だけでなく交流電圧も利用して偏向電極15の乾燥状態を判断している。ステップSH1~SH4は、図30に示すフローチャートのステップSG1~SG4と同じである。ステップSH4でYESと判定された場合にはステップSH5に進み、偏向電圧測定部120cで測定された交流電圧が所定の交流電圧閾値以下であるか否かを判定する。偏向電圧測定部120cで測定された交流電圧が所定の交流電圧閾値以下である場合には、ステップSH5でYESと判定されて偏向電極15が乾燥していると判断する。一方、偏向電圧測定部120cで測定された交流電圧が所定の交流電圧閾値を超える場合には、ステップSH5でNOと判定されて偏向電極15が溶剤で濡れていると判断する。直流電圧及び交流電圧の両方を利用して偏向電極15の乾燥状態を判断することで、判断結果の信頼性を向上させることができ、ひいては、乾燥処理部130による乾燥時間を的確に決定することができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、印字ヘッド1の洗浄後、乾燥処理部130により印字ヘッド1内にエアを供給して洗浄後の印字ヘッド1内を乾燥しながら、ヒータ1bによってインクの温度調節を行うことができるので、偏向電極15が濡れたままになるのを回避して印字品質の低下を防止しながら、印字ヘッド1を洗浄した後、印字可能状態になるまでの時間を短縮することができる。
また、印字ヘッド1の洗浄後、乾燥処理部130により印字ヘッド1内にエアを供給して洗浄後の印字ヘッド1内を乾燥しながら、メインタンク104bにインクを補充することができるので、印字可能状態になるまでの時間をさらに短縮することができる。