JP7311775B2 - 回転部材およびその形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材およびその形成方法に関するものである。
従来、ボス部を有し、ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面からトルクを伝達可能な回転部材において、当該端面に滑り止め加工を施した滑り止め面を設けたものは公知である。
例えば、図1に示すような、ボス部501と、外周に沿って形成された複数の歯502とを有する回転部材であるスプロケット500を、クランクシャフト(図示せず)に固定する際には、クランクシャフトの端部にボス部501を挿入し、ボルト等で軸方向に締め付けることで、クランクシャフトの端面とボス部501の端面503の間でトルクが伝達されるものが知られている。
このような回転部材において、周方向に滑りが生じないように、対向する端面と当接する端面503に滑り止め面511が形成されたものが知られている。
そして、一般的な滑り止め面の形成手段として、ショットピーニング等で表面に凹凸を付与して粗面化し、摩擦係数を増加させるものは周知である。
また、スプロケットのボス部の端面にレーザー加工により凹凸を形成し、締付け力によって凸部を積極的に対向面に食い込ませることでより強固に滑り止めをするものも公知である(特許文献1等参照。)。
米国特許第7472467号明細書
ショットピーニング等で表面に凹凸を付与して粗面化したものでは、摩擦係数は増大するもの、対向面に食い込むような凸部を設けることができない。
特許文献1に記載された技術では、レーザー加工により対向面に食い込むような凸部を設けることが可能となるものの、溶融した材料が溝の周辺に盛り上がって凸部が形成されるため、凸部の頂点は滑らかな曲線となり、レーザーの熱による硬化、対向面の材料等の諸条件をクリアする必要があり、出力の調整も精度良く行う必要があった。
また、レーザー加工によって形成された凸部は、その凸量(高さや幅)を大きなものとすることが困難なために微小なものとなるので、摩擦係数を一定以上には大きくできず、要求される滑りトルクが大きい場合に対応できない、という問題があった。また、締結すべきクランクシャフトの端面の粗さや平面度等の精度に依って滑りトルクのバラツキが大きくなる、という問題がある。
さらに、ボス部の両面にレーザー加工によって凸部を設ける場合、両面に同時にレーザー加工を行うことが困難で片面ずつレーザー加工を行うことになるため、工程が複雑かつ加工時間が長くなって生産性が低くなる、という問題がある。また、レーザー加工機自体も高価なものであり、製造コストが高くなるという問題もある。
本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡単な構成で、対向面に食い込ませる凸部を形成することができて高い滑りトルク性が得られる回転部材およびその形成方法を提供するものである。
本発明に係る回転部材は、ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材であって、前記滑り止め面は、複数の凹凸列部を有し、前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を有し、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を有することにより、前記課題を解決するものである。
本発明に係る回転部材の滑り止め形成方法は、ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材の形成方法であって、前記滑り止め面に、複数の凹凸列部を形成し、前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を鍛造により形成することにより、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を得ることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項1に係る回転部材および請求項7に係る回転部材の滑り止めの形成方法によれば、滑り止め面に、主溝と当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝と、これらの間に滑り止め面よりも突出した突条とを有する凹凸列部が鍛造によって形成されていることにより、レーザー加工によって形成された凸部と比較して突条の形状の設計の自由度が高く、突条の高さや幅を大きく設定することができるので、突条について対向面に食い込む突条にかかる剪断応力が材料の許容応力以下となる形状を積極的に確保することによって対向面に容易に食い込ませることができる。従って、突条の強度の滑りトルクに対する依存度が高くなるため、対向面の粗さや平面度等の精度に関わらず高い滑りトルク性が得られ、大きな滑りトルクが要求される場合にも十分に対応することができる。
また、突条が対向面に食い込むことからすべての方向に対して滑り止め効果を奏するものとなり、方向による滑り止め効果の減少を抑制し、トルク方向と同時に径方向に対しても充分に滑り止めを行うことが可能となる。
さらに、鍛造によって凹凸列部を形成する装置は汎用品が使用可能であり、その制御も容易であることから、簡単な構成で、少ないコストで回転部材を製造可能である。
本請求項2および請求項8に記載の構成によれば、凹凸列部において補助溝が主溝の両側に配置されていることにより、凹凸列部の突条の配置密度が増大し、その垂直方向に対する滑り止め効果が極めて高くなる。
本請求項3および請求項9に記載の構成によれば、突条の主溝側の側面および補助溝側の側面がテーパー面であることにより、突条を対向面に確実に食い込ませることが可能となるので、回転トルクに対する滑り止め効果を高くすることができる。
本請求項4および請求項10に記載の構成によれば、突条の主溝側の側面と補助溝側の側面との角度が30°~60°であることにより、突条を対向面に一層確実に食い込ませることが可能となるので、回転トルクに対する滑り止め効果を極めて高くすることができる。
本請求項5および請求項11に記載の構成によれば、複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、滑り止め面に放射状に延びるよう形成されていることにより、全体として凹凸列部の方向をランダムとすることができるので、凹凸列部の伸びる方向の滑り止め効果を均一化することが可能となり、スプロケットの回転に対するゆるみが生じ難くなり、振動や軸ブレに対する回転部材のガタツキを充分に防止することができ、その結果、高い滑りトルク性が得られる。
本請求項6および請求項12に記載の構成によれば、複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、滑り止め面に螺旋状に延びるよう形成されていることにより、回転トルクに対する滑り止め効果と径方向に対する滑り止め効果のバランスを任意に設計することができるので、方向による滑り止め効果の減少を抑制し、トルク方向と同時に径方向に対しても充分に滑り止めを行うことが可能となる。
滑り止め面を有する回転部材(スプロケット)の(a)参考正面図および(b)参考側面図。 本発明の第1実施形態に係る回転部材の正面図(一部)。 図2のA-A線断面図。 本発明の第2実施形態に係る回転部材の正面図(一部)。
本発明の回転部材は、ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材であって、前記滑り止め面は、複数の凹凸列部を有し、前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を有し、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を有し、また、本発明に係る回転部材の滑り止め形成方法は、ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材の形成方法であって、前記滑り止め面に、複数の凹凸列部を形成し、前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を鍛造により形成することにより、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を得ることができ、簡単な構成で、対向面に食い込ませる凸部を形成することができて高い滑りトルク性が得られる回転部材およびその形成方法を提供するものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
本発明の第1実施形態に係る回転部材であるスプロケット100は、図2に示すように、外周に沿って形成された複数の歯102を有し、クランクシャフト(図示せず)に固定する際には、クランクシャフトの端部にボス部101が挿入され、ボルト等で軸方向に締め付けることで、ボス部101の端面103に形成された滑り止め面111がクランクシャフトに当接してトルクが伝達されるように形成されている。
滑り止め面111は、凹凸列部120を複数有しており、複数の凹凸列部120は、滑り止め面111の全面に放射状に延びる状態に規則的に離間して配置されている。
凹凸列部120は、図3に示すように、一方向に伸びる断面逆山形状の溝である主溝125と、この主溝125の両側に離間して並行に伸びる断面逆山形状の溝である補助溝127,127と、隣接する主溝125および補助溝127の間において滑り止め面111よりも突出した2本の突条123,123とを有する。突条123は、滑り止め面111から先端が鋭く立ち上がった断面山形状のものであって、対向面(締結するクランクシャフトの端面)に食い込む突条123にかかる剪断応力が材料の許容応力以下となる形状を有する。
突条123,123の主溝125側の側面123aおよび補助溝127側の側面123bは、それぞれテーパー面であり、突条123,123の主溝125側の側面123aと補助溝127側の側面123bとの角度θは例えば30°~60°とされている。
主溝125の滑り止め面111からの深さd1は、例えば0.4~1.0mmである。
また、補助溝127の滑り止め面111からの深さd2は、例えば主溝125の滑り止め面111からの深さd1よりも浅く、0.1~0.7mmである。
また、突条123の滑り止め面111からの高さtは、例えば0.1~0.8mmである。
本実施形態では、凹凸列部120は、主溝125および当該主溝125の両側に離間して並行に伸びる補助溝127,127を鍛造(プレス)工法によって打刻形成することにより、溝成形の余肉で主溝125と補助溝127との間に滑り止め面111よりも突出した凸形状(突条123)が隆起により得られ、これにより、形成される。
主溝125および補助溝127は、同時に打刻されてもよく、主溝125が打刻された後に補助溝127が打刻されてもよく、また補助溝127が打刻された後に主溝125が打刻されてもよい。
本発明の第2実施形態に係る回転部材であるスプロケットは、図4に示すように、複数の凹凸列部120が、螺旋状に伸びるように規則的に形成されており、その他の構成は、前述の第1実施形態と同様である。
以上説明した各実施形態は、それぞれ、全周にわたって同様に設けられることを想定したものであるが、部分ごとに凹凸列部の配置密度や方向が異なるもの、連続的に変化するもの、各実施形態の態様を混在させたものであってもよく、凹凸列部が交差するように設けられるものであってもよい。
また、凹凸列部は、主溝の両側に補助溝が配置されて2本の突条を有するものに限定されず、少なくとも1本の主溝の片側に1本の補助溝が配置されて1本の突条が形成されたものであればよい。
また、凹凸列部の主溝および補助溝は、断面逆山形状の溝として形成されるものを例示したが、主溝と補助溝との間に形成される突条にクランクシャフトの端面への食い込みが可能な形状が確保されるのであれば、断面逆半円状の溝として形成されてもよい。
主溝および補助溝を打刻するための装置は、所望の形状の主溝および補助溝を打刻できるものであれば、いかなるものであってもよい。
さらに、回転部材としてスプロケットを例示したが、端面からトルクを受ける回転部材であれば、いかなるものであってもよく、種々の産業分野において利用可能である。
100、500 ・・・ スプロケット(回転部材)
101、501 ・・・ ボス部
102、502 ・・・ 歯
103、503 ・・・ 端面
111、511 ・・・ 滑り止め面
120 ・・・ 凹凸列部
123 ・・・ 突条
123a、123b ・・・ 側面
125 ・・・ 主溝
127 ・・・ 補助溝

Claims (12)

  1. ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材であって、
    前記滑り止め面は、複数の凹凸列部を有し、
    前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を有し、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を有することを特徴とする回転部材。
  2. 前記凹凸列部は、前記補助溝が前記主溝の両側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転部材。
  3. 前記突条の主溝側の側面および当該突条の補助溝側の側面が、テーパー面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回転部材。
  4. 前記突条の主溝側の側面と当該突条の補助溝側の側面との角度が30°~60°であることを特徴とする請求項3に記載の回転部材。
  5. 前記複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、前記滑り止め面に放射状に延びるよう形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転部材。
  6. 前記複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、前記滑り止め面に螺旋状に延びるよう形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転部材。
  7. ボス部を有し、前記ボス部の軸方向の両端面の少なくとも一方の端面に滑り止め面を有する回転部材の形成方法であって、
    前記滑り止め面に、複数の凹凸列部を形成し、
    前記凹凸列部は、主溝および当該主溝に並行して伸びる少なくとも1つの補助溝を鍛造により形成することにより、前記主溝と前記補助溝との間に前記滑り止め面よりも突出した突条を得ることを特徴とする回転部材の形成方法。
  8. 前記凹凸列部は、前記補助溝が前記主溝の両側に配置されるよう形成されることを特徴とする請求項7に記載の回転部材の形成方法。
  9. 前記凹凸列部は、前記突条の主溝側の側面および当該突条の補助溝側の側面がテーパー面となるよう形成されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の回転部材の形成方法。
  10. 前記凹凸列部は、前記突条の主溝側の側面と当該突条の補助溝側の側面との角度が30°~60°となるよう形成されることを特徴とする請求項9に記載の回転部材の形成方法。
  11. 前記複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、前記滑り止め面に放射状に延びるよう形成されることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の回転部材の形成方法。
  12. 前記複数の凹凸列部の一部あるいは全部が、前記滑り止め面に螺旋状に延びるよう形成されることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の回転部材の形成方法。
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