JP7311758B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

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Description

本開示は、渦電流式減速装置に関する。
バスやトラック等の大型自動車は、フットブレーキや排気ブレーキ等の制動装置を備える。大型自動車ではさらに、渦電流式減速装置を備える場合がある。渦電流式減速装置は、リターダとも呼ばれる。たとえば、急勾配の長い下り坂等を走行する場合であって、エンジンブレーキや排気ブレーキを併用しても大型自動車の走行速度を減速しにくい場合、渦電流式減速装置を作動させることにより、制動力をさらに高め、大型自動車の走行速度を有効に減速させることができる。
渦電流式減速装置は、電磁石を用いたタイプと、永久磁石を用いたタイプとが存在する。永久磁石を用いた渦電流式減速装置は、ロータと、ロータに収納されるステータとを備える。ロータは、円筒部(ドラム)と、プロペラシャフトにロータを固定するための円環状のホイール部と、円筒部とホイール部とをつなぐ複数のアーム部とを備える。ステータは、円筒体と、極性の異なる2種類の複数の永久磁石と、複数のポールピースとを備える。極性の異なる複数の永久磁石は、円筒体の外周面上に、円周方向に交互に配列される。ポールピースは、ロータの円筒部の内周面と、永久磁石との間に配置される。ステータのうち、複数の永久磁石が取り付けられた円筒部は、複数のポールピースとは別個独立して、円筒体の軸まわりを回転可能である。
制動時、つまり、渦電流式減速装置を作動させる場合、ステータの永久磁石の磁束がポールピースを介してロータに到達して、永久磁石とロータの円筒部との間に磁気回路が形成される。このとき、ロータの円筒部に渦電流が発生する。渦電流の発生に伴い、ローレンツ力が発生する。このローレンツ力が制動トルクとなり、大型自動車に制動力を付与する。一方、非制動時、つまり、渦電流式減速装置の動作を停止する場合、ポールピースに対する永久磁石の相対位置をずらして、永久磁石の磁束をロータに到達しないようにする。この場合、永久磁石とロータの円筒部との間に磁気回路が形成されない。そのため、ロータの円筒部に渦電流が発生せず、制動力も発生しない。以上の動作により、渦電流式減速装置は、制動動作及び非制動動作を実行する。
渦電流式減速装置の制動力は、制動時のロータの円筒部に発生する渦電流量に依存する。そのため、制動時にロータの円筒部に発生する渦電流量は大きい方が好ましい。制動時に発生する渦電流量を増加させるためには、ロータの円筒部の電気抵抗が低い方が好ましい。
ロータの円筒部の内周面には、電気抵抗を下げるためにめっき皮膜が形成されることがある。これにより、渦電流式減速装置の制動力がより高まる。
一方、渦電流式減速装置の制動時において、渦電流とともに発生するジュール発熱により、ロータは加熱される。渦電流式減速装置の制動時には、ロータは600℃を超える高温にさらされる。他方、渦電流式減速装置の非制動時には、ロータは円筒部の外周面に形成されている複数の冷却フィンにより急速に冷却(空冷)される。つまり、ロータには、制動及び非制動の繰り返しにより、熱サイクルが負荷される。ロータの円筒部の内周面に形成されるめっき皮膜には、上述の熱サイクルに耐える十分な耐久性が要求される。
近年、深刻化する環境問題を背景として、燃費の向上、および車両の電動化による排気量の低減が推進されており、それに伴い排気ブレーキの制動力が低下している。さらに、従来よりも積載量の大きなトラックやトレーラーへの渦電流式減速装置の搭載が進められている。そのため、より高い制動力を有する渦電流式減速装置が求められている。制動力の増大に伴い渦電流式減速装置の制動中のロータの円筒部の内周面温度はより高温になることがあり、その表面に設けられているめっき皮膜には、さらなる熱的耐久性の向上が望まれている。
特開平11-308851号公報(特許文献1)、特開2005-020823号公報(特許文献2)及び特開2002-171744号公報(特許文献3)は、ロータが熱サイクルに曝された際の耐久性を向上する技術を提案する。
特許文献1に開示された渦電流式減速装置は、ロータと、該ロータの回転面に対向させ、固定して設けた磁石とを備え、該磁石の磁束によりロータに渦電流を発生させる方式の渦電流式減速装置である。この渦電流式減速装置は、磁石の側を向いた回転面に、ニッケル系合金からなる第1層、銅または銅合金からなる第2層、ニッケル系合金からなる第3層、およびニッケルからなる第4層を順次設けたことを特徴とする。これにより、ロータの温度が650℃程度にもなる過酷な使用条件下で、表面保護層の亀裂を防止し、かつ銅または銅合金層の強磁性体円筒部からの剥離を抑制する耐久性に優れた渦電流式減速装置が得られる、と特許文献1に記載されている。
特許文献2に開示された構造体は、構造体表面側から、ニッケル合金からなる第1層と、構造体を主に構成する部材の導電率よりも高い導電率を有する銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金のうち少なくとも一種を含む高導電率層を構成する第2層と、ニッケル合金からなる第3層と、ニッケル単体からなる第4層とを備える。この構造体は、第1層および第3層がリン、タングステン、ボロン、鉄、またはコバルトから選ばれる少なくとも一種かつ第1層および第3層が同一種の合金成分からなり、当該合金成分の質量%において、合金成分の第1層の含有量が第3層の含有量より少ない導電性皮膜を少なくとも一部に有することを特徴とする。これにより、高温また高負荷の熱サイクルに晒される環境においても、より高導電性の特性を維持することができる、従前より更に高温耐久性および耐熱サイクル性に優れた構造体が得られる、と特許文献2に記載されている。
特許文献3に開示された渦電流式減速装置は、強磁性材料からなる回転体を有し回転軸に連結されたロータと、回転体の内壁面と所定間隔をもって対向する位置に設置された複数個の磁石とを備え、磁石の磁束によりロータに渦電流を発生させて減速する方式の渦電流式減速装置である。この渦電流式減速装置は、回転体の磁石と対向する面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上に銅または銅合金からなる第一層、ニッケル合金からなる第二層、ニッケルからなる第三層が順次設けられていることを特徴とする。これにより、渦電流式減速装置を長期間使用した場合においても、ロータの回転体に設けた表面処理層が剥離、離脱することがない、耐久性に優れた渦電流式減速装置が得られる、と特許文献3に記載されている。
特開平11-308851号公報 特開2005-020823号公報 特開2002-171744号公報
たとえば上述の特許文献1~特許文献3に開示された技術により、ロータが熱サイクルに曝された際の耐久性を向上でき、高温耐久性に優れた渦電流式減速装置が得られる。しかしながら、特許文献1~特許文献3に開示された方法以外の方法によっても、熱サイクルに対する優れた耐久性を有する渦電流式減速装置が得られれば、より好ましい。
本開示の目的は、600℃を超える熱サイクルに曝された場合であっても、優れた耐久性を有する渦電流式減速装置を提供することである。
本開示の渦電流式減速装置は、
円筒体と円筒体の外周面上に配置される複数の磁石とを備えるステータと、
円筒体を収容する円筒部を備えるロータとを備え、
ロータの円筒部の内周面上に、内周面側から順に、
ニッケル合金からなる第一層と、
銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなり、円筒部の軸方向断面において、第一層から円筒部の径方向に90μmの位置に内周面と並行な線分を仮定し、線分の全長を100%とした時に、線分と重複する長さが5μm以上の結晶粒が線分上の30%以上を占める第二層と、
ニッケル合金からなる第三層と、
ニッケルからなる第四層とを備える。
本開示による渦電流式減速装置は、600℃を超える熱サイクルに曝された場合であっても、優れた耐久性を有する。
図1は、渦電流式減速装置の正面図である。 図2は、図1に示す渦電流式減速装置をプロペラシャフトに固定した場合の、渦電流式減速装置の、プロペラシャフトの軸方向の断面図である。 図3は、非制動時の渦電流式減速装置の軸方向に垂直な断面図(径方向の断面図)である。 図4は、制動時の渦電流式減速装置の軸方向に垂直な断面図(径方向の断面図)である。 図5は、ロータの円筒部の軸方向断面の拡大図である。 図6は、第二層の写真画像の一例を示す図である。
本発明者らは、600℃を超える熱サイクルに曝された場合の渦電流式減速装置の耐久性について調査及び検討を行った。
ロータの円筒部の内周面に形成されるめっき皮膜は、電気抵抗が低いことが好ましい。銅を含むめっき層であれば、電気抵抗を下げることができ、渦電流式減速装置の制動力を高めることができる。しかしながら、従前の技術では、銅を含むめっき層自体の熱的耐久性は着目されてこなかった。たとえば、上述の特許文献3では、ロータの内周面の表面粗さを調整することで、その上に形成された銅又は銅合金からなる第一層の耐剥離性を向上させている。
そこで、本発明者らは、銅を含むめっき層自体の熱的耐久性を高める方法を種々検討した。その結果、従来知られていなかった新たな知見を得た。
銅を含むめっき層の結晶粒が小さすぎれば、600℃を超える熱サイクルを受けている最中に、銅を含むめっき層の内部にボイドが発生する。このボイドが起点となり、クラックが生じ、成長する。成長したクラックは、最終的に外気に到達する。600℃を超える環境下で、銅を含むめっき層の内部が外気に直接触れれば、銅の酸化が急速に進行する。その結果、銅を含むめっき層の破壊に至る。
以上の知見から、本発明者らは、銅を含むめっき層の結晶粒が小さくなり過ぎないように調整すれば、銅を含むめっき層内部のボイド形成及びボイドに起因するクラックを抑制でき、その結果、渦電流式減速装置の熱的耐久性を向上できると考えた。本発明者らは、さらに検討を行い、銅を含むめっき層において、5μm以上の結晶粒の占有率が30%以上であれば、銅を含むめっき層内部のボイド形成及びボイドに起因するクラックを抑制できることを見出した。
以上の知見に基づく本開示の渦電流式減速装置は、次の構成を備える。
[1]の渦電流式減速装置は、
円筒体と円筒体の外周面上に配置される複数の磁石とを備えるステータと、
円筒体を収容する円筒部を備えるロータとを備え、
ロータの円筒部の内周面上に、内周面側から順に、
ニッケル合金からなる第一層と、
銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなり、円筒部の軸方向断面において、第一層から円筒部の径方向に90μmの位置に内周面と並行な線分を仮定し、線分の全長を100%とした時に、線分と重複する長さが5μm以上の結晶粒が線分上の30%以上を占める第二層と、
ニッケル合金からなる第三層と、
ニッケルからなる第四層とを備える。
本開示の渦電流式減速装置は、銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなる第二層において、5μm以上の結晶粒の占有率が30%以上である。そのため、600℃を超える熱サイクルを受けた場合であっても、第二層内部のボイド形成及びボイドに起因するクラックを抑制できる。したがって、600℃を超える熱サイクルに曝された場合であっても、本開示の渦電流式減速装置は優れた耐久性を有する。
[2]の渦電流式減速装置は、[1]に記載の渦電流式減速装置であって、
第二層の表面における最大高さ粗さRz(μm)が、第二層の厚さ(μm)の30%未満である。
この場合、熱サイクル中の第二層への応力集中を抑制でき、第二層のクラックをさらに抑制できる。その結果、600℃を超える熱サイクルを受けた場合の、渦電流式減速装置の耐久性をさらに高めることができる。
以下、本開示の渦電流式減速装置について詳述する。
[渦電流式減速装置の構成]
図1は、渦電流式減速装置の正面図である。図1を参照して、渦電流式減速装置1は、ロータ10と、ステータ20とを備える。
図2は、図1に示す渦電流式減速装置1をプロペラシャフトに固定した場合の、渦電流式減速装置1の、プロペラシャフトの軸方向の断面図である。図2を参照して、本実施形態では、ロータ10がプロペラシャフト30に固定され、ステータ20が、図示しないトランスミッションに固定される。図1及び図2を参照して、ロータ10は、円筒部(ドラム)11と、アーム部12と、ホイール部13とを備える。円筒部11は、円筒状であり、ステータ20の外径よりも大きい内径を有する。ホイール部13は、円筒部11の内径よりも小さい外径を有する円環状の部材であり、中心部に貫通孔を有する。ホイール部13は、貫通孔にプロペラシャフト30を挿入し、プロペラシャフト30に固定される。アーム部12は、図1及び図2に示すとおり、円筒部11の端部と、ホイール部13とを繋いでいる。なお、円筒部11の外周面には、複数の冷却フィン11Fが形成されている。
図3は、非制動時の渦電流式減速装置1の軸方向に垂直な断面図(径方向の断面図)である。図3を参照して、ステータ20は、円筒形の磁石保持リング21と、複数の永久磁石22及び23と、複数のポールピース24とを備える。永久磁石22及び永久磁石23は、磁石保持リング21の外周面上に、円周方向に交互に配列されている。ロータ10の円筒部11の内周面は、ステータ20の保持リング21の外周面上に配置された永久磁石22及び23と対向する。永久磁石22の表面のうち、ロータ10の円筒部11の内周面と対向する表面はN極である。永久磁石23の表面のうち、ロータ10の円筒部11の内周面と対向する表面はS極である。複数のポールピース24は、ステータ20の円周方向に配列されている。複数のポールピース24は、複数の永久磁石22及び23と、円筒部11の内周面との間に配列されている。
[渦電流式減速装置1の制動及び非制動の動作について]
図3を参照して、非制動時において、渦電流式減速装置1の径方向に見た場合、各永久磁石22又は23は、互いに隣り合う2つのポールピース24と重複している。この場合、磁束Bは図3に示すとおり、ステータ20内に流れ、具体的には、永久磁石22及び23と、ポールピース24と、磁石保持リング21との間を流れる。この場合、ロータ10と永久磁石22及び23との間には磁気回路が形成されておらず、ロータ10にローレンツ力が発生しない。そのため、制動力が発生しない。
図4は、制動時の渦電流式減速装置1の軸方向に垂直な断面図(径方向の断面図)である。制動時において、ステータ20内の磁石保持リング21が回転して、図3と比較して、永久磁石22及び23の、ポールピース24に対する相対位置をずらす。具体的には、図4では、制動時において、渦電流式減速装置1の径方向に見た場合、各永久磁石22又は23は、1つのポールピース24のみと重複しており、2つのポールピース24には重複していない状態となる。そのため、磁束Bは図4に示すとおり、磁石保持リング21、永久磁石22又は23、ポールピース24、及び、円筒部11との間を流れる。この場合、ロータ10と永久磁石22又は23との間には磁気回路が形成される。このとき、ロータ10の円筒部11に渦電流が発生する。渦電流の発生に伴い、ローレンツ力が発生する。このローレンツ力が制動トルクとなり、制動力が発生する。
以上のとおり、渦電流式減速装置1は、ロータ10に発生する渦電流により、制動力を発生させる。したがって、ロータ10の円筒部11は渦電流の発生量が大きくなる方が好ましい。円筒部11の電気抵抗が小さいほど、渦電流の発生量が大きくなる。そのため、ロータ10の円筒部11は、電気抵抗が小さい方が好ましい。渦電流は、ロータ10の円筒部11の内周面近傍を流れる。そのため、本開示の渦電流式減速装置1では、ロータ10の円筒部11の内周面上にめっき層を形成して、ロータ10の円筒部11の内周面近傍の電気抵抗を小さくする。ロータ10にはさらに、制動及び非制動を繰り返すことにより、熱サイクルが負荷される。上述のとおり、600℃を超える熱サイクルに曝された場合であっても、渦電流式減速装置1は、優れた耐久性を有することが好ましい。したがって、ロータ10の円筒部11の内周面上に形成されるめっき層が、600℃を超える熱サイクルに曝された場合の優れた耐久性を有することが好ましい。以下、ロータ10について詳述する。
図5は、ロータ10の円筒部11の軸方向断面の拡大図である。図5を参照して、ロータ10の円筒部11は、内周面100上に、内周面100側から順に、第一層110と、第二層120と、第三層130と、第四層140とを備える。第一層110~第四層140はそれぞれ、めっき層である。以下、各めっき層について詳述する。
[第一層について]
第一層110は、ロータ10の円筒部11の内周面100上に形成されるめっき層である。第一層110はニッケル合金からなる。第一層110は、ロータ10の円筒部11と、高伝導率層である第二層120との熱膨張率の差によって生じる非弾性ひずみを緩和する。第一層110はさらに、第二層120に含まれる銅原子の円筒部11への拡散を抑制する。第一層110がニッケル合金であれば、第一層110の線膨張係数を、円筒部11の主成分である鉄及び第二層120に含まれる銅の線膨張係数と近似させることができる。これにより、熱サイクルを受けた場合にも、円筒部11と、第二層120との密着性を高めることができる。
第一層110はニッケル合金からなる。ニッケル合金は、ニッケルを50質量%以上含む合金であれば特に限定されない。ニッケル合金はたとえば、Ni-W合金、Ni-Fe合金、Ni-B合金、Ni-Co合金及びNi-P合金からなる群から選択される。なお、ニッケル合金からなるとは、不純物を含む場合を含む。つまり、第一層110はニッケル合金及び不純物からなるめっき層であってもよい。また、ニッケル合金は、複数の合金元素を含んでもよい。つまり、ニッケル合金は、タングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、残部はニッケル及び不純物からなるめっき層であってもよい。
ニッケル合金が合金元素としてタングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、ニッケル合金中の銅の拡散速度は、ニッケル中の銅の拡散速度と比較して遅い。そのため、第二層120に含まれる銅原子が、第一層110に侵入しにくくなる。
ニッケル合金がNi-W合金の場合、ニッケル合金はタングステン(W)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Wの含有量は1~50質量%未満である。Wの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Wの含有量が50質量%未満であれば、第一層110の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Wの含有量の下限は、より好ましくは10質量%である。Wの含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
ニッケル合金がNi-Fe合金の場合、ニッケル合金は鉄(Fe)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Feの含有量は1~15質量%である。Feの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Feの含有量が15質量%以下であれば、熱膨張率が過剰に小さくなるのを抑制できる。その結果、熱サイクルを受けた場合の第一層110の密着性を高めることができる。Feの含有量の下限は、より好ましくは3質量%である。Feの含有量の上限は、より好ましくは12質量%である。
ニッケル合金がNi-B合金の場合、ニッケル合金はボロン(B)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Bの含有量は1~20質量%である。Bの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Bの含有量が20質量%以下であれば、第一層110の硬度を抑制し、靱性を高め、剥離や割れを抑制できる。Bの含有量の下限は、より好ましくは5質量%である。Bの含有量の上限は、より好ましくは18質量%である。
ニッケル合金がNi-Co合金の場合、ニッケル合金はコバルト(Co)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Coの含有量は1~50質量%未満である。Coの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Coの含有量が50質量%未満であれば、第一層110の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Coの含有量の下限は、より好ましくは10質量%である。Coの含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
ニッケル合金がNi-P合金の場合、ニッケル合金はリン(P)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Pの含有量は1~20質量%である。Pの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Pの含有量が20質量%以下であれば、第一層110の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Pの含有量の下限は、より好ましくは2質量%である。Pの含有量の上限は、より好ましくは14質量%である。
ニッケル合金がタングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される2種以上を含有し、残部がニッケル及び不純物からなる合金の場合、合金元素(W,Fe、B、Co及びP)の合計含有量は1~50質量%未満であり、かつ、Wの含有量が50質量%未満、Feの含有量が15質量%以下、Bの含有量が20質量%以下、Coの含有量が50質量%未満及びPの含有量が20質量%以下である。合金元素(W,Fe、B、Co及びP)の合計含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
第一層110の厚さは、好ましくは2~20μmである。第一層110の厚さの下限が2μm以上であれば、円筒部11と第二層120との熱膨張率の差によって生じる非弾性ひずみをより安定して緩和できる。第一層110の厚さが20μm以下であれば、第一層110中に生じ得る欠陥や割れをより安定して抑制できる。第一層110の厚さの下限はより好ましくは5μm、さらに好ましくは8μmである。第一層110の厚さの上限はより好ましくは15μm、さらに好ましくは12μmである。
[第二層について]
第二層120は、第一層110上に積層されるめっき層である。第二層120は、銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなる。銅、又は、銅合金は、いずれも電気抵抗が小さい。電気抵抗が小さい第二層120を形成することにより、渦電流式減速装置1の制動時に発生する渦電流量が高まる。その結果、渦電流式減速装置1の制動力が高まる。
第二層120は、銅及び銅合金であれば特に限定されない。銅合金は、銅を80%以上含む合金であれば特に限定されない。しかしながら、高伝導率層としての作用、効果、及びコストを考慮すれば、好ましくは、第二層120は銅からなるめっき層である。なお、銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなるとは、不純物を含む場合を含む。つまり、第二層120は銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種及び不純物からなるめっき層であってもよいし、銅及び不純物からなるめっき層であってもよいし、銅合金及び不純物からなるめっき層であってもよい。
第二層120の厚さは、好ましくは90~300μmである。第二層120の厚さが90μm以上であれば、高い伝導率を安定的に確保できる。第二層120の厚さが300μmより厚くても、導電性能は飽和する。第二層120の厚さの下限はより好ましくは100μm、さらに好ましくは120μmである。第二層120の厚さの上限はより好ましくは280μm、さらに好ましくは250μmである。
[第二層における5μm以上の結晶粒の占有率について]
第二層120は、円筒部11の軸方向断面において、第一層110から円筒部11の径方向に90μmの位置に内周面100と並行な線分Lを仮定し、線分Lの全長を100%とした時に、線分Lと重複する長さが5μm以上の結晶粒が線分L上の30%以上を占める。以下、第二層120の線分L上を5μm以上の結晶粒が占める割合を、5μm以上の結晶粒の占有率ともいう。第二層120の結晶粒が小さくなり過ぎないように調整することにより、第二層120内部のボイド形成及びボイドに起因するクラックを抑制できる。その結果、600℃を超える熱サイクルに曝された場合であっても、渦電流式減速装置1の熱的耐久性を向上できる。
第二層120における5μm以上の結晶粒の占有率は、次の方法で測定する。第一層110と第二層120との界面を含む、第二層120の写真画像を準備する。第二層120の写真画像は、ロータ10の円筒部11の軸方向断面の写真画像である。写真画像の拡大率は適宜設定する。図6は、第二層120の写真画像の一例を示す図である。図6を参照して、第一層110から円筒部11の径方向に90μmの位置に内周面100と平行な線分Lを仮定する。より具体的には、第一層110と第二層120との界面から円筒部11の径方向内側に90μmの位置に内周面100と平行な線分Lを仮定する。線分Lの全長L1は500μmである。線分Lは、第二層120中の結晶粒と重複する。線分Lと重複する長さが5μm以上の結晶粒の重複長さをD1とする。重複長さD1は、線分Lと交差する結晶粒の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、5μm以上の長さを有する線分の長さを意味する。重複長さD1の合計を求める。重複長さD1の合計を、線分Lの全長L1(500μm)で除する。これにより、線分Lの全長L1を100%とした時に、線分Lと重複する長さが5μm以上の結晶粒が線分L上を占める割合(%)を算出する。算出された値を、第二層120における5μm以上の結晶粒の占有率(%)とする。
第二層120における5μm以上の結晶粒の占有率の下限は、好ましくは32%、より好ましくは35%、さらに好ましくは40%である。第二層120における5μm以上の結晶粒の占有率の上限は特に限定されない。第二層120における5μm以上の結晶粒の占有率は100%であってもよい。
[第二層の表面粗さについて]
好ましくは、第二層120の最大高さ粗さRz(μm)は、第二層120の厚さ(μm)の30%未満である。第二層120の表面粗さが小さければ、熱サイクル中の応力集中を抑制でき、第二層120のクラックをさらに抑制できる。その結果、600℃を超える熱サイクルを受けた場合の、渦電流式減速装置1の耐久性をさらに高めることができる。
[第二層の表面粗さの測定方法]
第二層120の表面粗さは次の方法で測定する。めっき層を形成したロータ10の円筒部11を準備する。ロータ10の円筒部11を、円筒部11の軸方向に切断する。現れためっき層の断面の写真画像を作成する。得られた写真画像から、JIS B0601(2013)に準拠した方法で第二層120の表層の最大高さ粗さRz(μm)を求める。より具体的には、第一層110の表面、すなわち、第一層110と第二層120との界面を基準とし、基準から円筒部11の径方向に向かって、第二層120表面の最も高い部分の高さ(A)と、第二層120表面の最も低い部分の高さ(B)とを測定し、その差(A-B)を最大高さ(Zz)とする。このとき、基準長さは2.5mm、評価長さは12.5mmとする。
より好ましくは、第二層120の最大高さ粗さRz(μm)が第二層120の厚さ(μm)の27%以下であり、さらに好ましくは25%以下である。第二層120の最大高さ粗さRz(μm)は小さい程好ましく、下限は特に限定されない。しかしながら、実製造上、最大高さ粗さRz(μm)を過剰に小さくすることは生産性を損なう場合がある。そのため、第二層120の最大高さ粗さRz(μm)は第二層120の厚さ(μm)の1%以上であってもよい。
[第三層について]
第三層130は、第二層120上に積層されるめっき層である。第三層130はニッケル合金からなる。第三層130は、第二層120と、第四層140との間に配置される。第三層130は、第二層120からの銅原子の熱拡散及び第四層140からのニッケル原子の熱拡散を抑制する。
第三層130はニッケル合金からなる。ニッケル合金は、ニッケルを50質量%以上含む合金であれば特に限定されない。ニッケル合金はたとえば、Ni-W合金、Ni-Fe合金、Ni-B合金、Ni-Co合金及びNi-P合金からなる群から選択される。なお、ニッケル合金からなるとは、不純物を含む場合を含む。つまり、第三層130はニッケル合金及び不純物からなるめっき層であってもよい。また、ニッケル合金は、複数の合金元素を含んでもよい。つまり、ニッケル合金は、タングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、残部はニッケル及び不純物からなるめっき層であってもよい。
ニッケル合金が合金元素としてタングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、これらの合金元素を含むニッケル合金中の銅の拡散速度は、ニッケル中の銅の拡散速度と比較して遅い。そのため、第二層120に含まれる銅原子が、第三層130に侵入しにくくなる。
ニッケル合金がNi-W合金の場合、ニッケル合金はタングステン(W)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Wの含有量は1~50質量%未満である。Wの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Wの含有量が50質量%未満であれば、第三層130の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Wの含有量の下限は、より好ましくは10質量%である。Wの含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
ニッケル合金がNi-Fe合金の場合、ニッケル合金は鉄(Fe)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Feの含有量は1~15質量%である。Feの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Feの含有量が15質量%以下であれば、熱膨張率が過剰に小さくなるのを抑制できる。その結果、熱サイクルを受けた場合の第三層130の密着性を高めることができる。Feの含有量の下限は、より好ましくは3質量%である。Feの含有量の上限は、より好ましくは12質量%である。
ニッケル合金がNi-B合金の場合、ニッケル合金はボロン(B)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Bの含有量は1~20質量%である。Bの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Bの含有量が20質量%以下であれば、第三層130の硬度を抑制し、靱性を高め、剥離や割れを抑制できる。Bの含有量の下限は、より好ましくは5質量%である。Bの含有量の上限は、より好ましくは18質量%である。
ニッケル合金がNi-Co合金の場合、ニッケル合金はコバルト(Co)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Coの含有量は1~50質量%未満である。Coの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Coの含有量が50質量%未満であれば、第三層130の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Coの含有量の下限は、より好ましくは10質量%である。Coの含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
ニッケル合金がNi-P合金の場合、ニッケル合金はリン(P)を含有し、残部はニッケル(Ni)及び不純物からなる。好ましくは、Pの含有量は1~20質量%である。Pの含有量が1質量%以上であれば、銅の拡散抑制効果を高めることができる。一方、Pの含有量が20質量%以下であれば、第三層130の硬度を抑制し、剥離や割れを抑制できる。Pの含有量の下限は、より好ましくは2質量%である。Pの含有量の上限は、より好ましくは14質量%である。
ニッケル合金がタングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される2種以上を含有し、残部がニッケル及び不純物からなる合金の場合、合金元素(W,Fe、B、Co及びP)の合計含有量は1~50質量%未満であり、かつ、Wの含有量が50質量%未満、Feの含有量が15質量%以下、Bの含有量が20質量%以下、Coの含有量が50質量%未満及びPの含有量が20質量%以下である。合金元素(W,Fe、B、Co及びP)の合計含有量の上限は、より好ましくは40質量%である。
第三層130の厚さは、好ましくは5~20μmである。第三層130の厚さが5μm以上であれば、第二層120からの銅原子の熱拡散及び第四層140からのニッケル原子の熱拡散をより安定して抑制できる。第三層130の厚さが20μm以下であれば、第二層120と第四層140との熱膨張率の差によって生じるひずみに起因する割れをより安定して抑制できる。第三層130の厚さの下限はより好ましくは8μm、さらに好ましくは10μmである。第三層130の厚さの上限はより好ましくは15μm、さらに好ましくは12μmである。
[第四層について]
第四層140は、第三層130上に積層されるめっき層である。第四層140はニッケルからなる。ニッケルは600~700℃の温度範囲で耐酸化性に優れている。ニッケルはさらに、軟質で延性に富んでいる。そのため、第四層140がニッケルからなる層であれば、熱サイクルや熱衝撃を受けた場合にもめっき層全体においてクラックの発生を抑制できる。その結果、高導電率層である第二層120の酸化防止に作用する。なお、ニッケルからなるとは、不純物を含む場合を含む。つまり、第四層140は、ニッケル及び不純物からなるめっき層であってもよい。
第四層140の厚さは、好ましくは20~100μmである。第四層140の厚さが20μm以上であれば、第四層140の下のめっき層の露出をより安定して抑制できる。第四層140の厚さが100μmを超えても、得られる効果は変わらなくなる。第四層140の厚さの下限はより好ましくは30μm、さらに好ましくは40μmである。第四層140の厚さの上限はより好ましくは90μm、さらに好ましくは80μmである。
[各めっき層の組成の測定方法]
各めっき層の組成は、EDAX社製のEDS(Energy-Dispersive X-ray Spectroscopy;エネルギー分散X線)を用いて測定する。具体的には、ロータ10の円筒部11の軸方向に沿ってめっき層を含む試験片を切り出し、樹脂に埋め込んで研磨する。各めっき層の断面に対して、SEMを用いて観察を行い、各めっき層を特定する。さらに、特定した各めっき層の断面に対してEDSを用いて、元素組成を分析する。第四層140であれば、ニッケルを特定する。第二層120であれば、銅を特定する。第一層110及び第三層130であれば、検出された元素全体(Ni及び合金元素)を100質量%として、合金元素(たとえばW、Fe、B、Co又はP)の割合(質量%)を算出する。各めっき層の組成は、たとえば、WDX(Wavelength Dispersive X-ray;波長分散型X線)を用いて測定してもよい。
[各めっき層の厚さの測定方法]
各めっき層の厚さは次の方法で測定する。具体的には、ロータ10の円筒部11の軸方向に沿ってめっき層を含む試験片を切り出し、樹脂に埋め込んで研磨する。各めっき層の円筒部11の軸方向断面に対して、光学顕微鏡を用いて観察を行い、各めっき層を特定する。特定された各めっき層の厚さを測定する。めっき層の厚さは、各めっき層において、円筒部11の径方向の最短距離とする。また、各めっき層の厚さは膜厚計で測定することもできる。具体的には、超音波式、電磁式、渦電流式などの膜厚計を、各めっき層を形成した後にロータ10の内周面100(各めっき層の表面)に押し当て、各めっき層の厚さを測定する。
[製造方法]
本開示の渦電流式減速装置1の製造方法の一例を説明する。以降に説明する製造方法は、本開示の渦電流式減速装置1を製造するための一例である。したがって、上述の構成を有する渦電流式減速装置1は、以降に説明する製造方法以外の他の製造方法により製造されてもよい。
本開示の渦電流式減速装置1の製造方法は、渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を成形する円筒部成形工程と、成形された円筒部11にめっき層を形成するめっき工程と、めっき層が形成された円筒部11を用いてロータ10を成形するロータ成形工程と、成形されたロータ10を用いて渦電流式減速装置1を組み立てる工程とを備える。以下、各工程について説明する。
[円筒部成形工程]
円筒部成形工程では、周知の方法により渦電流式減速装置1のロータ10の円筒部11を成形する。たとえば、溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。また、溶鋼を用いて連続鋳造法によりブルーム又はビレットを製造してもよい。製造されたビレットに対して、周知の熱間鍛造を行い、さらに、焼入れ及び焼戻し処理を実施する。焼戻し後の中間品の外周面を機械加工することにより、冷却フィン11Fを形成する。機械加工は周知の方法で実施すれば足りる。以上の工程により、円筒部11が成形される。
[めっき工程]
成形された円筒部11にめっき層を形成する。各めっき層の形成方法の一例を説明する。
[第一層について]
円筒部11の内周面100上に第一層110を形成する。第一層110は湿式の無電解めっき処理又は電気めっき処理により形成される。めっき液は、ニッケルイオンと合金元素のイオンとを含む。
Ni-W合金めっきを形成する場合、めっき液はたとえば、硫酸ニッケル:10~150g/L、タングステン酸ナトリウム:40~100g/Lを含有する。めっき液は市販のNi-Wめっき液を使用できる。Ni-W合金めっきは、電気めっき処理により形成してもよい。その場合、電気めっきの条件はたとえば、電流密度:0.5~20A/dm2、温度:40~100℃、pH:4~8である。電気めっきの条件は、適宜設定できる。
Ni-Fe合金めっきを形成する場合、めっき液はたとえば、硫酸ニッケル:50~400g/L、塩化ニッケル:30~250g/L、硫酸第一鉄:3~80g/Lを含有する。めっき液は市販のNi-Feめっき液を使用できる。Ni-Fe合金めっきは、電気めっき処理により形成してもよい。その場合、電気めっきの条件はたとえば、電流密度:1~15A/dm2、温度:45~75℃、pH:2~5である。電気めっきの条件は、適宜設定できる。
Ni-B合金めっきを形成する場合、めっき液はたとえば、硫酸ニッケル:15~80g/L、水酸化ほう素ナトリウム:0.2~2g/Lを含有する。めっき液は市販のNi-Bめっき液を使用できる。Ni-B合金めっきは、無電解めっき処理により形成してもよい。その場合、無電解めっきの条件はたとえば、温度:60~100℃、pH:12~14である。無電解めっきの条件は、適宜設定できる。
Ni-Co合金めっきを形成する場合、めっき液はたとえば、硫酸ニッケル:120~300g/L、硫酸コバルト:2~30g/Lを含有する。めっき液は市販のNi-Coめっき液を使用できる。Ni-Co合金めっきは、電気めっき処理により形成してもよい。その場合、電気めっきの条件はたとえば、電流密度:0.5~10A/dm2、温度:40~80℃、pH:2~5である。電気めっきの条件は、適宜設定できる。
Ni-P合金めっきを形成する場合、めっき液はたとえば、硫酸ニッケル:15~150g/L、ホスフィン酸ナトリウム:5~130g/Lを含有する。めっき液は市販のNi-Pめっき液を使用できる。Ni-P合金めっきは、無電解めっき処理により形成してもよい。その場合、無電解めっきの条件はたとえば、温度:30~100℃、pH:4~11である。無電解めっきの条件は、適宜設定できる。
ニッケル合金がタングステン(W)、鉄(Fe)、ボロン(B)、コバルト(Co)及びリン(P)からなる群から選択される2種以上を含有し、残部がニッケル及び不純物からなる合金の場合、めっき液は含有される合金元素と、ニッケルとを含有する。めっき液中の合金元素の含有量については、適宜設定できる。第一層110は、電気めっき処理により形成してもよく、無電解めっき処理により形成してもよい。無電解めっきの条件及び電気めっき処理の条件は、適宜設定できる。
[第二層について]
第一層110上に第二層120を形成する。第二層120は、湿式の電気めっき処理により形成できる。めっき液は市販のシアン系銅めっき浴、ピロリン酸系銅めっき浴、硫酸系銅めっき浴及び塩化物系銅めっき浴等が使用できる。銅合金の第二層120を形成する場合は、めっき浴はさらに合金元素を含む。めっき液はたとえば,シアン系銅めっき浴では、シアン化第一銅:15~100g/Lを含有する。この場合、電気めっきの条件はたとえば、電流密度:1~8A/dm2、温度:40~70℃、pH:8~13である。硫酸系銅めっき浴ではたとえば、硫酸銅:40~300g/Lを含有する。この場合、電気めっきの条件はたとえば、電流密度:0.5~15A/dm2、温度:15~60℃、pH:1未満である。電気めっきのその他の条件は、適宜設定できる。
ここで、めっき液の循環率は0.20~2.30/minとする。めっき液の循環率とは、めっき槽へのめっき液の注入量(L/min)をめっき槽の体積(L)で除したものである。これにより、第二層120において5μm以上の結晶粒の占有率を30%以上にできる。さらに、めっき液の循環率が0.20~2.30/minであることを前提として、電流密度とめっき液の循環率との比(つまり、電流密度(A/dm2)/めっき液の循環率(/min))を1.0~7.0に調整することにより、第二層120表面の最大高さ粗さRz(μm)を第二層120の厚さ(μm)の30%未満にできる。
[第三層について]
第二層120上に第三層130を形成する。第三層130は、湿式の無電解めっき処理又は電解めっき処理によって形成できる。めっき液は、ニッケルイオンと合金元素のイオンとを含有する。めっき処理の条件は適宜設定できる。第三層130は、第一層110と同様の方法により製造できる。
[第四層について]
第三層130上に第四層140を形成する。第四層140は、湿式の電解めっき処理によって形成できる。めっき液は、ニッケルイオンを含有する。めっき液は市販のワット浴、ウッド浴、塩化物系ニッケルめっき浴及びスルファミン酸系ニッケルめっき浴等が使用できる。たとえば、ワット浴では、硫酸ニッケル:150~350g/L、塩化ニッケル:30~70g/Lを含有する。電気めっきの条件はたとえば、電流密度:1~12A/dm2、温度:35~80℃、pH:3~5である。ウッド浴では、塩化ニッケル:150~320g/Lを含有する。電気めっきの条件はたとえば、電流密度:1~15A/dm2、温度:10~40℃、pH:1~2である。スルファミン酸浴では、スルファミン酸ニッケル:300~600g/Lを含有する。電気めっきの条件はたとえば、電流密度:1~30A/dm2、温度:35~70℃、pH:3~5である。電気めっきの条件は、適宜設定できる。
以上の条件で円筒部11の内周面100上に各めっき層を形成し、円筒部11を製造する。続いて、製造された円筒部11と、準備されたアーム部12及びホイール部13とを溶接により繋いで、ロータ10を製造する。溶接は周知の方法で実施すれば足りる。以上の工程により、ロータ10が製造される。さらに、製造されたロータ10と、準備されたステータ20とを用いて、渦電流式減速装置1を組み立てる。
以上の製造方法により、本開示の渦電流式減速装置1を製造できる。なお、本開示の渦電流式減速装置1の製造方法は、上記製造方法に限定されない。本開示の渦電流式減速装置1の製造方法は、上述の構成を有する渦電流式減速装置1が製造できれば、上記製造方法以外の他の製造方法でもよい。ただし、上記製造方法は、本開示の渦電流式減速装置1の製造に好適な例である。
本開示の渦電流式減速装置の熱サイクルに対する耐久性を確認するため、以下の試験を実施した。試験体として、内周面上に表1及び表2に示すめっき層を形成したロータの円筒部を準備した。形成された各めっき層の組成及び厚さを上述の方法により測定した。第二層については、全てのめっき層を形成した後に、上述の方法により第二層表面の最大高さ粗さRz(μm)を測定した。基準長さは2.5mm、評価長さは12.5mmとした。さらに、第二層については、上述の方法により、5μm以上の結晶粒の占有率(%)を求めた。結果を表1及び表2に示す。
Figure 0007311758000001
Figure 0007311758000002
表1及び表2の第一層及び第三層において、種類(mass%)の欄には、形成した合金めっきの種類及び合金元素の含有量を示す。たとえば、試験番号1の第一層について「Ni-4%P」とは、試験番号1の第一層が、4%のリンを含み残部はニッケル及び不純物からなる合金めっき層であったことを示す。
第一層は、ニッケル及び各合金元素を含むめっき浴を使用し、表1に示す条件で形成した。第二層はシアン系銅めっき浴又は硫酸銅めっき浴を用いて電気めっき処理によって形成した。シアン系銅めっき浴の温度は50℃、硫酸銅めっき浴の温度は40℃であった。ここで、めっき液の循環率を調整することで第二層における5μm以上の結晶粒の占有率(%)を変化させた。表1の占有率(%)の欄に示す。また、めっき液の撹拌速度とめっき液の循環率との比を調整することで第二層表面の最大高さ粗さRz(μm)を変化させた。表1のRz(μm)の欄に示す。第三層は、ニッケル及び各合金元素を含むめっき浴を使用し、表2に示す条件で形成した。第四層はワット浴を使用して、電気めっき処理により形成した。めっき液の温度は50℃とした。
[繰り返し制動試験]
製造したロータの円筒部を用いて、渦電流式減速装置を製造した。製造された渦電流式減速装置を回転試験機に取り付け、熱サイクルを受けた場合の耐久性を調査した。具体的には、渦電流式減速装置に対して繰り返し制動試験を実施した。繰り返し制動試験では、ロータの回転速度を2000rpmで一定とし、制動オンと制動オフとを繰り返して、ロータに繰り返し温度変動を与えた。制動オン及び制動オフの時間については、ロータの内表面の最高温度が約650℃、最低温度が約100℃となるように調整した。制動オン及び制動オフを10000サイクル繰り返した。試験後のロータの円筒部の断面に対して、光学顕微鏡を用いてのミクロ観察を行い、めっき層のクラックの発生状況を調査した。表2中、二重丸(◎)は、第二層においてボイド及びボイドに起因するクラックの両方が発生していなかったことを示す。白丸印(○)は、第二層においてボイドが発生しているもののボイドに起因するクラックが発生していなかったことを示す。バツ印(×)は、第二層においてボイド及びボイドに起因するクラックの両方が発生していたことを示す。
[評価結果]
表1及び表2を参照して、試験番号1~試験番号10のロータの円筒部は、内周面上に適切なめっき層を有した。そのため、試験番号1~試験番号10における、繰り返し制動試験後の第二層は、ボイドに起因するクラックが発生していなかった。つまり、試験番号1~試験番号10の渦電流式減速装置は、600℃を超える熱サイクルに曝された場合の優れた耐久性を示した。
また、第二層の表面における最大高さ粗さRz(μm)が、第二層の厚さ(μm)の30%以上であった試験番号9及び試験番号10と比較して、第二層の表面における最大高さ粗さRz(μm)が、第二層の厚さ(μm)の30%未満であった試験番号1~試験番号8では、繰り返し制動試験後の第二層において、ボイドに起因するクラックが発生しておらず、さらに、ボイド自体発生していなかった。つまり、試験番号9及び試験番号10の渦電流式減速装置と比較して、試験番号1~試験番号8の渦電流式減速装置は、600℃を超える熱サイクルに曝された場合のさらに優れた耐久性を示した。
一方、試験番号11及び試験番号12の第二層は、5μm以上の結晶粒の占有率が30%未満であった。そのため、繰り返し制動試験後の第二層において、ボイド及びボイドに起因するクラックの両方が発生した。つまり、試験番号11及び試験番号12の渦電流式減速装置は、600℃を超える熱サイクルに曝された場合の耐久性が低かった。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 渦電流式減速装置
10 ロータ
11 円筒部
12 アーム部
13 ホイール部
20 ステータ
100 ロータの円筒部の内周面
110 第一層
120 第二層
130 第三層
140 第四層

Claims (2)

  1. 渦電流式減速装置であって、
    円筒体と前記円筒体の外周面上に配置される複数の磁石とを備えるステータと、
    前記円筒体を収容する円筒部を備えるロータとを備え、
    前記ロータの前記円筒部の内周面上に、前記内周面側から順に、
    ニッケル合金からなる第一層と、
    銅及び銅合金からなる群から選択される1種又は2種からなり、前記円筒部の軸方向断面において、前記第一層から前記円筒部の径方向に90μmの位置に前記内周面と平行な線分を仮定し、前記線分の全長を100%とした時に、前記線分と重複する長さが5μm以上の結晶粒が前記線分上の30%以上を占める第二層と、
    ニッケル合金からなる第三層と、
    ニッケルからなる第四層とを備える、渦電流式減速装置。
  2. 請求項1に記載の渦電流式減速装置であって、
    前記第二層の表面における最大高さ粗さRz(μm)が、前記第二層の厚さ(μm)の30%未満である、渦電流式減速装置。
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