JP3731468B2 - 渦電流式減速装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラックやバスなどの大型車両に使用される渦電流式減速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トラックやバスなどの大型自動車の制動装置には、主ブレーキであるフットブレーキ、補助ブレーキである排気ブレーキの他に、長い坂道の降坂時などにおいて安定した減速を行い、かつフットブレーキの焼損を防止するために渦電流式減速装置が使用されている。
【0003】
図1は、渦電流式減速装置の一例を示す縦断面図である。
【0004】
ロータ1は、強磁性材料からなる円筒部3がアーム2を介して回転軸11に取り付けられて構成されている。ロータの円筒部3は、回転軸11と一体に回転する。
【0005】
ステータ5は、複数個の永久磁石6が周設された支持リング7を内蔵し、その支持リングを軸方向に往復運動させる空圧装置10を備えている。
【0006】
永久磁石6を周設した支持リング7は、空圧装置10のピストンロッド9に連結され、複数本の案内棒12に沿ってステータ5の内部を回転軸11の軸方向に往復移動する。永久磁石6がポールピース8の位置、すなわち円筒部3の内周面13と磁気的に対向する位置まで挿入されると、制動オンの状態(図示の上側の状態)となる。反対に、永久磁石6がポールピース8から離れた位置に引き出されると制動オフの状態(図示の下側の状態)となる。
【0007】
制動オンの状態では、永久磁石6から発する磁束を横切って円筒部3が回転するので、円筒部3の内周面13の近傍に渦電流が流れる。この渦電流と磁束の相互作用によって、ロータ1には制動トルクが発生する。この円筒部3は、渦電流にともなうジュール熱で加熱され、制動オフの状態で冷却フィン4によって冷却される。このため、円筒部3には、制動のオン・オフの繰返しによって熱サイクルが負荷される。
【0008】
上述した図1は、磁石として永久磁石6を使用し、永久磁石6は円筒部3の内周面13に対向して設けられているが、円筒部の外周面に対向して設けることもできる。また、磁石として電磁石を使用することもできる。
【0009】
電磁石を使用した渦電流式減速装置においても制動トルクの発生原理は、永久磁石の場合と同じである。ただし、永久磁石を用いる場合には、前記のように磁石が往復運動することによって制動のオン・オフを切り替えるのに対して、電磁石を用いる場合には、電磁石コイルの電流を調整することによって制動のオン・オフを切り替える。
【0010】
近年、渦電流式減速装置を搭載する大型車両が増加しており、従来よりも積載量の大きなトラックやトレーラーへの搭載が進められている。このため、渦電流式減速装置に要求される制動能力は増大する傾向にあり、渦電流式減速装置の制動中におけるロータの回転面温度は、650℃以上に達し、さらに耐久性に優れた装置が望まれている。
【0011】
制動トルクが大きく、過酷な使用条件での耐久性に優れた渦電流式減速装置が下記のとおり提案されている。
(1) ロータの円筒部の磁石と対向する内面に、電気抵抗の小さな材料(銅または銅合金など)からなる表面処理層を設けた渦電流式減速装置(特開平1-288636号公報、参照)。
(2) ロータの円筒部の磁石と対向する内面に、ニッケル−銅−ニッケルクロム合金の3層で被覆した渦電流式減速装置(特開平5-236732号公報、参照)。
(3) ロータの円筒部の磁石と対向する内面に、銅−ニッケル合金−ニッケルの3層で被覆した渦電流式減速装置(特開平10-155266号公報、参照)。
(4) ロータの円筒部の磁石と対向する内面に、ニッケル合金−銅−ニッケル合金−ニッケルの4層で被覆した渦電流式減速装置(特開平11-308851号公報、参照)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記に提案されている渦電流式減速装置では、ロータの円筒部の磁石と対向する内面に設けた表面処理層は、使用中に剥離、脱落することがある。
【0013】
本発明の目的は、渦電流式減速装置を長期間使用した場合においても、ロータの回転体に設けた表面処理層が剥離、離脱することがない、耐久性に優れた渦電流式減速装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ロータの回転体に設けた表面処理層が剥離、離脱しないようにするため、回転体の表面性状に着目して研究を行い、回転体の表面粗さが十点平均粗さで10μm以下にすればよいことを見いだし、本発明を完成した。
【0015】
本発明の要旨は、図1に示す下記▲1▼または▲2▼の渦電流式減速装置である。
【0016】
▲1▼強磁性材料からなる回転体3を有し回転軸に連結されたロータと、前記回転体と所定間隔をもって対向する位置に設置された複数個の磁石とを備え、磁石の磁束により前記ロータに渦電流を発生させて減速する方式の渦電流式減速装置であって、前記回転体3の磁石と対向する面15の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上に銅または銅合金からなる第一層14-1、次にニッケル合金からなる第二層14-2、さらにニッケルからなる第三層14-3からなる表面処理層14を有する渦電流式減速装置。
【0017】
上記のニッケル合金からなる第二層の厚みt(μm)とニッケルからなる第三層の厚みt(μm)が、下記 (1)式または (2)式を満足することが望ましい。
+t=5〜80(μm)・・・(1)
/(t+t)=0.05〜0.8・・・(2)
▲2▼強磁性材料からなる回転体を有し回転軸に連結されたロータと、前記回転体と所定間隔をもって対向する位置に周設された複数個の磁石とを備え、磁石の磁束により前記ロータに渦電流を発生させて減速する方式の渦電流式減速装置であって、前記回転体の磁石と対向する面15の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上にニッケル合金からなる緩衝層14-0、銅または銅合金からなる第一層14-1、次にニッケル合金からなる第二層14-2、さらにニッケルからなる第三層14-3からなる表面処理層14を有する渦電流式減速装置。
【0018】
上記のニッケル合金からなる緩衝層の厚みt(μm)、ニッケル合金からなる第二層の厚みt(μm)とニッケルからなる第三層の厚みt(μm)が、下記 (1)式ないし(3)式のいずれかを満足することが望ましい。
+t=5〜80μm ・・・・・・(1)
/(t+t)=0.05〜0.8・・・(2)
=1〜30μm・・・・・・・・・(3)
本発明でいう「回転体」は、円筒体であっても、円板であってもよい。また、円筒体である場合、磁石に対向する面は、円筒部の内周面であっても、外周面であってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の渦電流式減速装置は、回転体の磁石と対向する面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上に表面処理層を形成したロータが回転軸に装着された装置である。
【0020】
図2は、本発明の渦電流式減速装置に装着したロータ円筒部の表面処理層の拡大断面図であり、(a)は3層からなる表面処理層を設けた断面、(b)は4層からなる表面処理層を設けた断面である。
【0021】
図2(a)に示すロータ円筒部3の磁石に対向する表面15(以下、これを単に「円筒部の表面」という)は、表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下に調整されており、その上に銅または銅合金からなる第一層14-1、次にニッケル合金からなる第二層14-2、さらにニッケルからなる第三層14-3が積層された表面処理層14で覆われている。また、図2(b)に示す表面処理層14-4は、ニッケル合金からなる緩衝層14-0、銅または銅合金からなる第一層14-1、次にニッケル合金からなる第二層14-2、さらにニッケルからなる第三層14-3から構成されている。
【0022】
次に、本発明でロータ円筒部の表面の表面粗さを十点平均粗さRzで10μm以下に調整する理由について説明する。
【0023】
制動オン・オフを多数回繰り返した渦電流式減速装置の円筒部を調査した結果、円筒部と表面処理層との界面、またはその界面近傍に、き裂が観察された。そして、円筒部表面の表面粗さが粗いほど、多くのき裂が観察された。これは、制動オン・オフの繰り返しによる加熱・冷却の熱サイクルによって表面処理層の界面近傍にひずみが集中するためであると考え、円筒部と表面処理層の界面に生じる非弾性ひずみ範囲と円筒部の表面粗さとの関係を、有限要素法解析で調査した。
【0024】
図3は、円筒部と表面処理層との界面に生じる非弾性ひずみ範囲と円筒部の表面粗さとの関係を示す図である。
【0025】
この図は、円筒部の回転速度を2000rpm、最高温度を650℃、最低温度を100℃としたとき、円筒部と表面処理層との界面に生じる非弾性ひずみ範囲と円筒部の表面粗さとの関係を有限要素法で解析した結果である。実線で示す曲線は緩衝層を形成することなく複数の表面処理層を形成したもの、破線は緩衝層を形成した後複数の表面処理層を形成したものである。それらの表面処理層は、緩衝層としてNiPめっき層(91%Ni−9%P合金、厚さ5μm)、第一層として銅めっき層(厚さ200μm)、第二層としてNiPめっき層(91%Ni−9%P合金、厚さ10μm)、第三層としてNiめっき層(厚さ20μm)で構成されている。
【0026】
非弾性ひずみとは、塑性ひずみとクリープ歪みとの和であり、非弾性ひずみ範囲とは、繰り返し負荷される非弾性ひずみの変動幅である。
【0027】
図3から明らかなように、円筒部表面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であれば、円筒部と表面処理層との界面に生じる非弾性ひずみ範囲が急減する。すなわち、長期間の繰返し使用時においても、円筒部と表面処理層の界面にき裂が発生し難く、また表面処理層が剥離し難くなる。
【0028】
さらに、円筒部表面の表面粗さが粗ければ、表面処理層を形成したとき円筒部と表面処理層との界面に未結合部である空洞(めっき欠陥)が生じやすくなる。
【0029】
図4は、円筒部表面の表面粗さと、円筒部と表面処理層との界面に存在するめっき欠陥との関係を示す図である。この図は、表面粗さを種々変化させた円筒部の表面に、厚さ10μmのNiP層(91%Ni−9%P合金)を無電解めっきによって形成した後、円筒部を軸方向に切断して電子顕微鏡を用いて空洞の寸法を測定した結果である。
【0030】
円筒部表面の表面粗さは、表面粗さ測定器によって十点平均粗さRzを測定し、基準長さを2.5mm、測定長さを12.5mmとし、円筒部の円周部の6カ所で軸方向に測定し、その平均値である。
【0031】
図4から明らかなように、円筒部表面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以上では、円筒部と表面処理層との界面に生じるめっき欠陥が増加する。
【0032】
ロータの円筒部と表面処理層との界面に空洞(めっき欠陥)が存在すると、制動オン・オフの繰返しによる熱サイクルを受けたとき、空洞の周囲にひずみが集中する。このため、空洞からき裂が発生・進展して、長期間使用した場合には表面処理層が剥離する。しかし、円筒部の表面の粗さが十点平均粗さRで10μm以下であれば、めっきによる空洞の発生が少なく、表面処理層の剥離を抑制することができる。なお、表面処理層のばらつきなどを考慮すれば円筒部表面の表面粗さは、十点平均粗さRで8μm以下とするのが望ましい。
【0033】
次に、円筒部表面と銅または銅合金からなる層との間に緩衝層を設ける発明について説明する。
【0034】
図2(b)に示すように緩衝層14-0は、ニッケル合金からなる層であり、円筒部3(一般に鋼)と第一層の銅または銅合金からなる層14-1との熱膨張率の差によって生じる非弾性ひずみ範囲を緩和するための層である。これを、ニッケル合金としたのは、線膨張係数が鉄に近いこと、および銅の鉄への拡散を抑制できるためである。
【0035】
第一層14-1は、銅または銅合金からなる層である。第一層14-1の厚さが薄ければ、円筒部にも渦電流が流れるので、電気抵抗が増し、渦電流が小さくなって制動力が低下する。また、銅は非磁性のため、第一層14-1の厚さが厚ければ、円筒部に達する磁束密度が小さくなり、制動トルクが低下する。したがって、第一層14-1の厚さは、50〜400μmとするのが望ましい。
【0036】
第二層14-2は、ニッケル合金からなる層であり、第一層の銅または銅合金と第三層のニッケルとの拡散によって生じる拡散ボイドの生成を抑制する。
【0037】
緩衝層14-0および第二層14-2のニッケル合金は、合金元素としてタングステン、鉄、ボロン、コバルト、リンなどを含有する。これらのニッケル合金では、銅の拡散速度がニッケルに比べて小さく、銅原子をニッケルまたは鉄格子中に進入しにくくする。
【0038】
タングステンの含有量は、1〜50質量%が好ましい。1質量%未満では、銅の拡散抑制効果が小さく、50質量%を超えると、硬度が高くなり剥離や割れが生じやすい。さらに、好適な含有量は、10〜40質量%である。
【0039】
鉄の含有量は、1〜15質量%が好ましい。1質量%未満では銅の拡散抑制効果が小さく、15質量%を超えると、熱膨張率が小さくなる。さらに、好適な含有量は、3〜12質量%である。
【0040】
ボロンの含有量は、1〜20質量%が好ましい。1質量%未満では銅の拡散抑制効果が小さく、質量20%を超えると、硬度が高くなって靱性が低下するため、剥離や割れが生じやすい。さらに、好適な含有量は、5〜18質量%である。
【0041】
リンの含有量は、1〜20質量%が好ましい。1質量%未満では銅の拡散抑制効果が小さく、20質量%を超えると、硬度が高くなり剥離や割れが生じやすい。さらに、好適な含有量は、5〜14質量%である。
【0042】
これらの元素を複合して含有する場合は、それぞれの元素を単独に含有する場合の上限値を超えないようにして、合計含有量が1〜50質量%であるのが好ましい。さらに、好適な含有量は、1〜40質量%である。
【0043】
第三層14-3は、ニッケル層である。ニッケルは600〜700℃での耐酸化性に優れていること、また、軟質で延性に富んでいるため、熱サイクルや熱衝撃に対してもき裂の発生が少ないため、銅の酸化防止に寄与する。
【0044】
緩衝層のニッケル合金層の厚さtは、1〜30μmとするのが望ましい。緩衝層の厚さtが1μm未満では、円筒部と第一層との熱膨張率の差によって生じる非弾性ひずみ範囲の緩和効果が不十分となる。緩衝層の厚さtが30μmを超えると、緩衝効果が飽和し高コストになるうえ、めっき層内に欠陥が生じる可能性がある。さらに、好適な範囲は2〜20μmである。
【0045】
第二層のニッケル合金層の厚さtと第三層のニッケル層の厚さtの和(t+t)を5〜80μmの範囲とし、t/(t+t)を0.05〜0.8とするのが望ましい。このような層の厚さでは、温度が650℃まで上昇しても、銅とニッケル間の拡散による空孔の発生を防止することができ、熱ひずみや熱衝撃によるニッケル合金の中間保護膜のき裂を抑制できる。
【0046】
第二層および第三層の合計厚さ(t+t)が80μmを超えると、第一層(銅層)の保護効果は飽和し、コスト高となる。また、(t+t)が5μm未満では、最高温度が650℃程度の過酷な熱サイクルを受けた場合に、銅の拡散による空孔の発生を防止することができない。また、ニッケル合金層のき裂を防止することができない。
【0047】
/(t+t)が0.05未満では、最高温度が650℃を超える過酷な熱サイクルを受けた場合に、銅とニッケル間の拡散による空孔の発生を防止する効果が不十分となり、部分的に空孔が生じる場合がある。t/(t+t)が0.8を超えると、第二層のニッケル合金層の厚さに対して、第三層のニッケル層の厚みが薄くなり、最高温度が650℃を超える過酷な熱サイクルを受けた場合に、第二層のニッケル合金層にき裂が生じる場合がある。さらに好適な範囲は、(t+t)=15〜65μm、t/(t+t)=0.1〜0.6である。
【0048】
以上の説明は、図1に示したように、ロータが円筒状である渦電流式減速装置について行ったが、ロータがディスク状の渦電流式減速装置においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。さらに、磁石としては図1に示した永久磁石ではなく、電磁石であっても同様の効果が得られる。
【0049】
【実施例】
図2に示した渦電流式減速装置のロータの円筒部の内周面に、表1に示す構成の表面処理層(第一層、第二層および第三層または緩衝層、第一層、第二層および第三層)を記載の順序で、いずれもめっき法によって被覆を施し、試験体とした。
【0050】
【表1】
Figure 0003731468
【0051】
ロータの円筒部は、Cr-Mo系の低合金鋼からなり、円柱状の素材をローリング鍛造によりリング状にし、その後、冷却フィンおよび円筒部の内周面を加工し、所定の寸法に仕上げた。試験に供した渦電流式減速装置は10トン車であり、円筒部の内半径は400m、肉厚は10mm、軸方向長さは80mmである。
【0052】
円筒部の内周面の加工は、切削工具を変えることで円筒部内周面の表面粗さを変化させた。表面粗さは、表面粗さ測定器を用いて円筒部内周面の表面粗さを測定した。基準長さは2.5mm、測定長さは12.5mmであり、円周の6カ所で円筒部の軸線方向に十点平均粗さRzを測定し、その平均値を表1に示した。
【0053】
銅からなる第一層は、シアン系銅めっき浴を用いて電気めっき法によって形成した。この際のめっき浴の温度は、50℃、電流密度は2.5A/dmであった。形成されためっき層は、厚さが200μmで、99.9質量%以上の銅を含むものであった。
【0054】
ニッケルからなる第三層は、ワット浴を用いて電気めっき法によって形成した。この際のめっき浴の温度は、50℃、電流密度は1.5A/dmであった。形成されためっき層は99.9重量%以上のニッケルを含むものであった。
【0055】
ニッケル合金からなる緩衝層および第二層は、次に示すめっき法で形成した。ニッケル−タングステンめっき層;電気めっき法、浴温度50℃、電流密度2.0A/dm
ニッケル−鉄めっき層;電気めっき法、浴温度50℃、電流密度2.0A/dm
ニッケル−ボロンめっき層;無電解めっき法、浴温度65℃、
ニッケル−リンめっき層;無電解めっき法、浴温度90℃、
ニッケル−コバルトめっき層;電気めっき法、浴温度50℃、電流密度2.0A/dm
【0056】
これらの試験体を大型トラックのトランスミッション後部のプロペラシャフトの途中に装備して、耐久性を調査するための繰返し制動試験を実施し、耐久性を調査した。耐久試験は、プロペラシャフトの回転速度を2000rpmに一定として制動をオンとし、円筒部内表面の温度が650℃になったときオフとする。そして、円筒部内表面の温度が100℃になったとき再び制動をオンとする。この繰り返しを8000回行った後、ロータの円筒部内表面の損傷状況およびミクロ調査を行った。また、1回目および8000回目の制動トルクを測定した。それらの結果を表2にまとめて示した。
【0057】
【表2】
Figure 0003731468
【0058】
発明例1は、表1に示すようにロータの円筒部の内表面を十点平均粗さRzで10μm以下とし、緩衝層を設けない試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すように円筒部内表面および円筒部と銅層との界面にき裂が一部観察されたが、トルクの低下率は11.2%であり、実用上問題となるものではない。
【0059】
発明例2は、表1に示すようにロータの円筒部の内表面を十点平均粗さRzで10μm以下とし、緩衝層を設けないで(1)式および(2)式を満足する第二層ならびに第三層を形成した試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すように円筒部内表面の外観は僅かに変色し、円筒部と銅層との界面の一部にき裂が観察されたが、トルクの低下率は10.9%であり、実用上問題となるものではない。
【0060】
発明例3〜6は、表1に示すようにロータの円筒部の内表面を十点平均粗さRzで10μm以下とし、緩衝層を設けた試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すように発明例3の場合、円筒部内表面の外観では僅かに変色が観察され、円筒部と銅層との界面には一部にき裂が観察された。一方、発明例4〜6の場合、円筒部の内表面の一部にき裂が観察されたが、円筒部と銅層との界面にはき裂は発生していなかった。発明例3〜6の試験体のトルク低下率は、9.5〜11.3%であり、いずれも実用上問題となるものではない。
【0061】
発明例7〜13は、表1に示すようにロータの円筒部の内表面を十点平均粗さRzで10μm以下とし、緩衝層を設け、かつ(1)式および(2)式を満足する第二層ならびに第三層を形成した試験体である。それらの耐久試験の結果では、表2に示すように、いずれも円筒部内表面の外観が僅かに変色しただけで、円筒部と銅層との界面には、き裂は観察されなかった。また、トルクの低下率は6.1〜8.2%の範囲であり、実用上問題となるものではない。
【0062】
一方、比較例14は、ロータの円筒部の内表面の表面粗さが十点平均粗さRzで12.7μmで、緩衝層を設けない試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すように円筒部内表面の外観は剥離による脱落が多く観察され、円筒部と銅層との界面の一部にも剥離による脱落が多く観察された。また、トルクの低下率は36.6%と大きい。
【0063】
比較例15および16は、ロータの円筒部の内表面の表面粗さが十点平均粗さRzで15.0μmおよび10.6μmで、緩衝層を設け(1)式ならびに(2)式を満足する第二層ならびに第三層を形成した試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すようにいずれも円筒部内表面の外観は一部に膨れの発生が観察され、円筒部と銅層との界面にも剥離が観察された。また、トルクの低下率は20.6%および20.1%と大きい。
【0064】
比較例17〜20は、ロータの円筒部の内表面の表面粗さが十点平均粗さRzで10.4〜20.3μmで、緩衝層を設け(1)式ないし(3)式のいずれか1つを満足しない第二層および第三層を形成した試験体である。その耐久試験の結果では、表2に示すように円筒部内表面の外観には、膨れやき裂の発生が観察され、円筒部と銅層との界面にも剥離やき裂が観察された。また、トルクの低下率は27.4〜29.6%と大きい。
【0065】
【発明の効果】
本発明の渦電流式減速装置は、ロータの回転体の磁石に対向する面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上に銅または銅合金のめっき層のほかにニッケルまたはニッケル合金のめっき層を複合した表面処理層を有するので、耐久性に優れており、長時間使用においても安定した制動力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】渦電流式減速装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の渦電流式減速装置に装着したロータ円筒部の表面処理層の拡大断面図であり、(a)は3層からなる表面処理層を設けた断面、(b)は4層からなる表面処理層を設けた断面である。
【図3】渦電流式減速装置を繰返し制動した時に円筒部の強磁性材料と表面処理層の界面に生じる非弾性ひずみ範囲と、円筒部の強磁性材料の表面粗さとの関係を示す図である。
【図4】円筒部の強磁性材料の表面粗さと、表面処理層形成時に強磁性材料と表面処理層の界面に生じる空洞(めっき欠陥)との関係を示す図である。
【符号の説明】
1.ロータ 2.アーム 3.円筒部 4.冷却フィン 5.ステータ
6.永久磁石 7.支持リング 8.ポールピース 9.ピストンロッド
10.空圧装置 11.回転軸 12.案内棒 13.内周面 14.表面処理層
15.円筒部の表面

Claims (4)

  1. 強磁性材料からなる回転体を有し回転軸に連結されたロータと、前記回転体の内壁面と所定間隔をもって対向する位置に設置された複数個の磁石とを備え、磁石の磁束により前記ロータに渦電流を発生させて減速する方式の渦電流式減速装置であって、前記回転体の磁石と対向する面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上に銅または銅合金からなる第一層、ニッケル合金からなる第二層、ニッケルからなる第三層が順次設けられていることを特徴とする渦電流式減速装置。
  2. ニッケル合金からなる第二層の厚みt(μm)とニッケルからなる第三層の厚みt(μm)が、下記 (1)式または (2)式を満足することを特徴とする請求項1に記載の渦電流式減速装置。
    Figure 0003731468
  3. 強磁性材料からなる回転体を有し回転軸に連結されたロータと、前記回転体の内壁面と所定間隔をもって対向する位置に設置された複数個の磁石とを備え、磁石の磁束により前記ロータに渦電流を発生させて減速する方式の渦電流式減速装置であって、前記回転体の磁石と対向する面の表面粗さが十点平均粗さRzで10μm以下であり、その上にニッケル合金からなる緩衝層、銅または銅合金からなる第一層、ニッケル合金からなる第二層、ニッケルからなる第三層が順次設けられていることを特徴とする渦電流式減速装置。
  4. ニッケル合金からなる緩衝層の厚みt(μm)、ニッケル合金からなる第二層の厚みt(μm)とニッケルからなる第三層の厚みt(μm)が、下記 (1)式ないし(3)式のいずれかを満足することを特徴とする請求項3に記載の渦電流式減速装置。
    Figure 0003731468
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