JP7308715B2 - 単結晶育成装置 - Google Patents
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Description
この方法は、単結晶がるつぼと接触せず、るつぼによる機械的歪が発生しないので、高品質で大口径の結晶を作製しやすいという利点がある。
このため、半導体シリコン(Si)、化合物半導体のヒ化ガリウム(GaAs)、リン化ガリウム(GaP)、リン化インジウム(InP)、酸化物結晶のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(Y3Al5O12;YAG)、サファイア(Al2O3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3;LN)、タンタル酸リチウム(LiTaO3;LT)、ゲルマニウム酸ビスマス(Bi4Ge3O12;BGO)等、種々の結晶がこの方法により製造されている。
これらの中で、ニオブ酸リチウム(LN)及びタンタル酸リチウム(LT)は、電子デバイス用や光デバイス用として重要な単結晶材料であり、特に、弾性表面波(Surface Acoustic Wave;SAW)デバイスに広く使用されている。
特許文献1には引上げ法によるタンタル酸リチウム単結晶の製造方法が記載されている。特許文献1に記載の単結晶引き上げ装置は、原料を入れ該原料を融解した融液を保持するるつぼ、原料を加熱するための加熱装置を構成するワークコイル、種子結晶が取り付けられる保持棒を含む引き上げ機構等から構成される。単結晶引き上げ装置は、育成する単結晶の種類に応じて設計されている。
単結晶の引き上げ装置の加熱装置として、結晶育成温度が約1200℃未満の場合には、抵抗加熱ヒータが用いられるが、1200℃以上では通常、高周波誘導加熱が用いられる。この場合、ワークコイル内部に、白金(Pt)やイリジウム(Ir)等の貴金属製のるつぼが置かれ、るつぼ自体が発熱体となる。ニオブ酸リチウム(LN)及びタンタル酸リチウム(LT)の結晶育成においても、通常、この高周波誘導加熱が用いられる。
また、単結晶の引き上げ装置では、一般的に結晶重量の変化を測り、ヒータ出力又は高周波出力にフィードバックをかけて単結晶の直径制御が行われている。
しかしながら、このようにるつぼの上方を保温した状態で、ニオブ酸リチウム(LN)及びタンタル酸リチウム(LT)のような単結晶を引き上げ法により育成する場合に、不純物混入により歩留りが急激に悪化傾向になることがある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、単結晶の温度勾配を低減できるとともに不純物混入による単結晶の歩留りの急激悪化を防ぐ単結晶育成装置を提供することを目的とする。
[1]引き上げ法によってるつぼ内の原料の融液から単結晶を育成する単結晶育成装置において、るつぼの上方の空間を覆う上部耐火物容器と、上部耐火物容器の外周を覆う断熱保温構造と、断熱保温構造の外周を覆う絶縁性セラミック材料とを備える単結晶育成装置。
[2]るつぼ内の原料は、るつぼの外周を囲む加熱コイルを使用した高周波誘導加熱方式で加熱されて融液となり、絶縁性セラミック材料は円筒形状であり、絶縁性セラミック材料の外径は加熱コイルの内径よりも小さい上記[1]に記載の単結晶育成装置。
[3]単結晶が、タンタル酸リチウムの単結晶またはニオブ酸リチウムの単結晶である上記[1]または[2]に記載の単結晶育成装置。
図1を参照して、本発明の一実施形態の単結晶育成装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態の単結晶育成装置を示す模式図である。本発明の一実施形態の単結晶育成装置90は、引き上げ法によってるつぼ1内の原料の融液12から単結晶13を育成する単結晶育成装置90において、るつぼ1の上方の空間16を覆う上部耐火物容器10bと、上部耐火物容器10bの外周を覆う断熱保温構造14と、断熱保温構造14の外周を覆う絶縁性セラミック材料15とを備える。これにより、単結晶の温度勾配を低減できるとともに不純物混入による単結晶の歩留りの急激悪化を防ぐことができる。
耐火物容器の外周を断熱保温構造で覆っており、断熱保温構造の外周を覆っていない単結晶育成装置では、結晶育成中、ルツボと加熱コイルが相対的に移動すると、加熱コイルと断熱保温構造はクリアランスがないと擦れてしまう。そのため、断熱保温構造は、単結晶の育成を複数回行っている間に毛羽立ち、塵が発生したと考えられる。そして、その塵は、耐火物容器の隙間を通って、るつぼの中へ侵入し、単結晶に不純物として混入したものと考えられる。しかし、本発明の一実施形態の単結晶育成装置90では、絶縁性セラミック材料15が断熱保温構造14の外周を覆っているので、断熱保温構造14からの塵の発生を抑制することができる。その結果、単結晶への不純物混入が抑制されたと考えられる。
本発明の一実施形態の単結晶育成装置90は、供給された原料を融解した融液12を保持するるつぼ1と、るつぼ1の周囲に設けられる保温構造(るつぼ台5、保温材6)と、保温材6を囲むように加熱コイル2を配置して、るつぼ1を誘導加熱する不図示の高周波誘導加熱装置と、種子結晶11を保持する保持棒3とを備えてもよい。そして、本発明の一実施形態の単結晶育成装置90は、種子結晶11を用いて育成する単結晶13の不図示の引き上げ機構と、上記加熱装置の出力を調整してるつぼ1内の原料を融解して融液12とするとともに、育成する単結晶13の直径を制御する不図示の出力制御部とをさらに備えてもよい。
図1に示す単結晶育成装置90のような単結晶育成装置を用いて実施例1のタンタル酸リチウム単結晶を作製した。
ここで、加熱コイル2の直径(内径)は280mmであり、加熱コイル2の高さは280mmであった。また、るつぼ1はイリジウム製るつぼであり、るつぼ1の外径は150mmであり、高さは150mmであり、外周部肉厚は2mmであり、底部肉厚は2mmであった。さらに、リフレクター8には、外径160mm、内径120mm、厚さ2mmのイリジウム製のドーナツ板状のものを用いた。リフレクター8の上方に設置したアフターヒータ7には、外径150mm、高さ180mmのイリジウム製の円筒状のものを用いた。
るつぼ1の外周面側には、るつぼ1の外周面と下部耐火物容器10aとの間に、保温材6としてジルコニア製中空バブル(中空粒子)を充填した。また、るつぼ台5の内部にもジルコニア製中空バブル(中空粒子)を詰め込んだ。
加熱コイル2よりも上側の上部耐火物容器10bには断熱性能を良くする目的でアルミナ製ブランケット14を巻き付け、その外側に石英ガラス製カバー15を取り付けた。そして、これらを取り付けた上部耐火物容器10bを下部耐火物容器10a上に配置した。
図2に示す単結晶育成装置90Aのような単結晶育成装置を用いて比較例1のタンタル酸リチウム単結晶を作製した。
比較例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置は、石英ガラス製カバーを取り付けなかった以外は、実施例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置と実質的に同一であった。
実施例1のタンタル酸リチウム単結晶及び比較例1のタンタル酸リチウム単結晶の結晶育成を繰り返した結果、実施例1のタンタル酸リチウム単結晶の方が比較例1のタンタル酸リチウム単結晶に比べて歩留りが10%程高かった。比較例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置では、アルミナ製ブランケットはむき出しになって結晶育成中のLi2O蒸気下による高温アルカリ雰囲気にアルミナ製ブランケットが晒されることにより発塵し、比較例1のタンタル酸リチウム単結晶に不純物が混入したと考えられる。
また、比較例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置では、タンタル酸リチウム単結晶の作製を10回実施した段階でアルミナ製ブランケットは毛羽立ち、断熱性能の劣化がみられたため、アルミナ製ブランケットの交換が必要となった。一方、実施例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置では、タンタル酸リチウム単結晶の作製を50回実施した段階でもアルミナ製ブランケットに毛羽立ち等の異常は見られず、断熱性能にも問題がなかったので、アルミナ製ブランケットをさらに継続して使用することが可能であった。
比較例1のタンタル酸リチウム単結晶の作製に用いた単結晶育成装置では、アルミナ製ブランケットはむき出しになって結晶育成中のLi2O蒸気下による高温アルカリ雰囲気にさらされること、また、原料のセット、結晶取出し時等で作業者がアルミナ製ブランケットに接触することにより、アルミナ製ブランケットが劣化してアルミナ製ブランケットの断熱性能が悪化すると考えられる。
1a るつぼ外周面
1b るつぼ底
2 加熱コイル
3 保持棒
4 熱電対
5 るつぼ台
6 保温材
7 アフターヒータ
8 リフレクター
9 アフターヒータ蓋
10a 下部耐火物容器
10b 上部耐火物容器
11 種子結晶
12 融液
13 単結晶
13a 肩部
13b 直胴部
14 断熱保温構造(アルミナ製ブランケット)
15 絶縁性セラミック材料(石英ガラス製カバー)
16 るつぼの上方の空間
90,90A 単結晶育成装置
Claims (2)
- 引き上げ法によってるつぼ内の原料の融液から単結晶を育成する単結晶育成装置において、
前記るつぼの上方の空間を覆う上部耐火物容器と、
前記上部耐火物容器の外周を覆う断熱保温構造と、
前記断熱保温構造の外周を覆う絶縁性セラミック材料とを備え、
前記断熱保温構造は、アルミナ繊維断熱材、シリカ繊維断熱材及びアルミナ-シリカ繊維断熱材からなる群から選択される少なくとも1種の断熱材料であり、
前記単結晶が、タンタル酸リチウムの単結晶またはニオブ酸リチウムの単結晶であり、
前記断熱保温構造は、前記上部耐火物容器及び前記絶縁性セラミック材料との間に挟まれることにより保持される単結晶育成装置。 - 前記るつぼ内の前記原料は、前記るつぼの外周を囲む加熱コイルを使用した高周波誘導加熱方式で加熱されて前記融液となり、
前記絶縁性セラミック材料は円筒形状であり、
前記絶縁性セラミック材料の外径は前記加熱コイルの内径よりも小さい請求項1に記載の単結晶育成装置。
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