JP5949601B2 - 多層型熱反射板およびこれを用いた酸化物単結晶育成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、チョクラルスキー法により、サファイア単結晶などの高融点の酸化物単結晶を育成するための結晶育成装置に関する。
サファイア単結晶は、酸化アルミニウムのコランダム構造を有する結晶体であり、優れた機械的および熱的特性、化学安定性、光透過性を有することから、多くの分野ですでに利用されている。特に、サファイア単結晶は、光学分野における発光ダイオードの発光層を成長させるための基板として、あるいは、半導体分野におけるシリコン・オン・サファイア(SOS)デバイス用の基板として用いられており、これらの用途の重要性が高まるに応じて、その需要が飛躍的に伸びてきている。
サファイア単結晶を製造する主な方法として、サファイア原料を坩堝内で融解し、その原料融液表面に種結晶を接触させて徐々に引き上げることにより単結晶を育成するチョクラルスキー法(Cz法)やカイロポーラス法(Kyropulous法)などが知られている。なお、育成されたサファイア単結晶は、基板状に加工され、表面を研磨することによりサファイア基板とされる。
サファイア原料融液からチョクラルスキー法によりサファイア単結晶を製造するには、図3に示すようなサファイア単結晶育成装置が用いられる(たとえば、特開2011−195423号公報参照)。このサファイア単結晶育成装置は、炉体7により形成されるチャンバ内に、サファイア原料が充填される坩堝1と、坩堝1の外周面を加熱するカーボン製の円筒状ヒータ部3並びに坩堝1の底面を加熱するカーボン製の円盤状ヒータ部4と、断熱空間20を構成するためにカーボン製の断熱材6を備える。また、断熱材6の底面部60に設けられた開口に嵌入された酸化アルミニウム製の絶縁筒8を介して、断熱空間20の外側から内側に延在し、円筒状ヒータ部3および円盤状ヒータ部4のそれぞれに接続され、電力を供給するための2つの円筒状ヒータ電極5a、5bと、断熱材6の底面部60と円盤状ヒータ部4の開口を貫通して、坩堝1を支持する支持軸2が設けられている。さらに、断熱材6の上面部61に設けられた開口を通じて、先端に種結晶11が取り付けられた引き上げ軸9が挿入され、育成時に、坩堝1内の原料融液10からチョクラルスキー法によりサファイア単結晶12を育成できるようになっている。
ところで、融点が2040℃という高い融点を有するサファイア単結晶をチョクラルスキー法により育成する場合、断熱空間14内は、当然のごとく2000℃を超える高温環境となる。したがって、サファイア単結晶の育成においては、断熱空間14内の熱伝達は輻射が主体となることに加え、タンタル酸リチウム(LT)、ニオブ酸リチウム(LN)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などの他の酸化物結晶、あるいは、シリコン、リン化ガリウムなどの半導体単結晶の育成時の原料融液と比較して、原料融液の粘度が非常に低く、対流が不安定となることに起因して、育成結晶中および融液内の温度勾配の適正化が困難なものとなっている。また、チョクラルスキー法によるサファイア単結晶育成では、育成される単結晶は、成長界面が下方に向かって凸状(下側凸状)となって成長するが、このときの凸度(育成結晶径に対する、原料融液中の下側凸状部分の長さの割合)が大きくなりやすく、結晶成長の大部分が融液内で進行するという特性を有するため、断熱空間20内の温度勾配が不適切である場合、高品質サファイア単結晶の育成が困難となる。
さらに、サファイア単結晶の育成において、その初期段階での断熱空間20内の温度勾配が適正な範囲よりも小さい場合、種結晶を融液表面に接触させる作業(シーディング)において、原料融液表面の温度を適正な範囲に、具体的には、サファイアの融点2040℃に対して、+0.5℃〜+1.0℃以内に調整することが非常に困難となる。
このように温度勾配が小さく、かつ、原料融液表面の温度が適正範囲よりも高い状態でシーディングが行われると、サファイア単結晶が全く成長しないばかりか、種結晶の先端部分が融解してしまい、育成を中止せざるを得なくなる場合がある。一方、原料融液表面の温度が適正範囲よりも低い状態でシーディングが行われると、サファイア単結晶の急成長により結晶性が悪化したり、種結晶表面の残留加工歪みなどに起因して、種結晶と育成結晶の境界面から多結晶化したりして、高品質のサファイア単結晶が得られなくなるといった問題が生じる場合がある。なお、サファイア単結晶の急成長とは、育成初期段階での結晶成長速度の制御が困難であることに起因して、シーディング直後から短時間で、径方向へ結晶成長が進行し、肩部が形成されてしまうことを意味する。このように肩部が急成長すると、固化潜熱が肩部から放散されるようになり、原料融液と育成結晶の境界面である成長界面が、下方に向かって凹状(下側凹状)となる。このような成長界面が形成されると、ボイドやリネージなどの結晶欠陥の高密度化や多結晶化などの発生率が高くなる。
逆に、断熱空間14内の温度勾配が適正な範囲を超えている場合、シーディング温度の調整や結晶成長速度の制御は容易になるが、育成結晶内の温度差が大きくなるために、育成後に、得られたサファイア単結晶を炉から取出すために室温まで冷却する際に、結晶内の温度差に起因した熱歪により、サファイア単結晶にクラックが発生し、サファイア単結晶基板の収率が著しく低下してしまう場合がある。
したがって、サファイア単結晶育成の収率を向上させるためには、断熱空間20内の温度勾配を適正化し、かつ、原料融液表面の温度を高い精度で制御することで、結晶成長速度を適正に制御するとともに、育成された結晶内の温度差に起因する冷却中のクラックの発生を抑制することが必要とされている。
このような温度勾配およびシーディング温度を含む育成条件を制御するためには、複数個のヒータを配置し、それらのヒータの出力を制御することが考えられる。しかしながら、2000℃を超える育成温度が必要とされる、サファイア単結晶などの高融点の酸化物単結晶の育成に際しては、輻射による熱エネルギの伝達が支配的となるため均熱化しやすく、ヒータの出力の制御のみでは、適正な育成条件の形成はきわめて困難である。
このように、サファイア単結晶などの高融点の酸化物単結晶の育成では、原料融液を含めて、炉内全体の温度勾配を適正な範囲に制御することが極めて重要となるが、このような環境を実現するための手段の一つとして、融液から放出される輻射熱を融液に戻すための熱反射板13を設けることが提案されている(特開2007−223830号公報参照)。
しかしながら、高温環境下において、単純に熱反射板または熱遮蔽板を設置するだけでは、適正な温度勾配を形成し、これを制御することは困難である。これに対して、熱反射板または熱遮蔽板を多層にわたって設置することが考えられる。たとえば、特開平5−254996号公報には、ニオブ酸リチウムの液相エピタキシャル法による結晶育成において、断熱空間上部に2層以上の熱反射板を配置する技術が開示されている。また、特開平10−101474号公報には、同様に、液相エピタキシャル法による成長において、融液表面近傍の温度勾配を小さくすることを目的として、熱遮蔽板を多段に配置する技術が開示されている。
特開2011−195423号公報 特開2007−223830号公報 特開平5−254996号公報 特開平10−101474号公報
しかしながら、これらの特許文献に記載された技術は、基本的には断熱空間内の温度を均一にすることを目的とするものであり、原料融液の温度勾配を適正範囲に形成することまでをも企図したものではない。また、育成炉の構成の相違とともに、高い融点や融液内で結晶成長が進行するといったサファイア単結晶の特性を考慮すると、これらの技術をそのまま適用することはできない。
本発明は、このような問題に鑑み、チョクラルスキー法によるサファイア単結晶を含む高融点の酸化物単結晶の結晶育成において、原料融液および断熱空間の温度勾配を適正範囲に制御することを可能とする結晶育成装置を提供することを目的とする。
本発明は、チョクラルスキー法による酸化物単結晶育成装置において、該単結晶育成装置の断熱空間内であって、坩堝の上方に配置される多層型熱反射板に関する。
この多層型熱反射板は、前記結晶育成装置の引き上げ軸の軸方向に伸長し、断熱空間内に支持される保持部材と、該保持部材に前記引き上げ軸の軸方向に所定間隔をもって配置固定され、径方向中央部に開口を有する、複数の円輪状の熱反射板とを備える。特に、本発明の多層型熱反射板は、前記複数の円輪状の熱反射板の前記開口の開口径が、前記坩堝側から上方に向かうに従って、順次、小さくなっていることを特徴としている。
このような多層型熱反射板は、サファイア単結晶などの2000℃を超える高い融点を有する酸化物単結晶の育成装置に好適に適用される。
すなわち、本発明は、チョクラルスキー法による酸化物単結晶育成装置に関する。本発明の装置は、育成時に、断熱空間内で坩堝の上方に、引き上げ軸の軸方向に所定間隔をもって配置され、径方向中央部に開口を有する、複数の円輪状の熱反射板を備える多層型熱反射板が設けられ、かつ、前記複数の円輪状の熱反射板の前記開口の開口径が、前記坩堝側から上方に向かうに従って、順次、小さくなっていることを特徴としている。
このような熱反射板は、たとえば、前記断熱空間を構成する断熱材のうち、前記引き上げ軸の軸方向に伸長する側壁の上方部に直接支持固定することも可能であるが、以下のような構成とすることが好ましい。
すなわち、前記複数の円輪状の熱反射板を、引き上げ軸の軸方向に伸長する保持部材により支持して、該保持部材を、前記断熱空間を構成する断熱材のうち、前記引き上げ軸の軸方向に伸長する側壁の上方部に固定された支持部材に支持させて、前記多層型熱反射板が該支持部材を介して吊り下げられるようにすることができる。
あるいは、前記複数の円輪状の熱反射板を、引き上げ軸の軸方向に伸長する保持部材により支持して、該保持部材の下端部を前記坩堝の上端部に支持固定して、前記多層型熱反射板が前記坩堝の上方に配置されるようにすることもできる。
前記複数の円輪状の熱反射板のそれぞれは、水平方向に伸長していることが好ましい。
なお、前記複数の円輪状の熱反射板の数は、特に制限されるものではないが、2枚〜10枚であることが好ましい。
本発明によれば、チョクラルスキー法によりサファイア単結晶を育成するに際し、原料融液および断熱空間の温度勾配を適正に制御することができ、特に、結晶育成の初期段階において、単結晶の急激な成長を防止することができるため、結晶欠陥(ボイド、多結晶化)の少ない、高品質なサファイア単結晶を収率よく製造することができる。また、融液表面からの放射熱を効率よく活用することができるため、エネルギコストの低減を図ることができる。
図1は、本発明の多層型熱反射板(6枚構成)が、断熱材側壁の上方部から支持部材を介して吊り下げられた結晶育成装置を示す概略断面図である。 図2は、本発明の多層型熱反射板(6枚構成)が、坩堝の上端部に載置された結晶育成装置を示す概略断面図である。 図3は、従来技術の熱反射板を示す概略断面図である。
以下、図1および図2を参照しながら、本発明の多層型熱反射板、および、これを用いた酸化物単結晶育成装置について詳細に説明をする。なお、本発明は、サファイア単結晶の結晶育成を前提とするものであるが、その他、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、ガドリニウム・シリケート(GSO)、ルテチウム・シリケート(LSO)などの融点が2000℃近傍、もしくは2000℃を超える高い融点を有する酸化物単結晶育成にも適用することができる。また、本発明の特徴は、多層型熱反射板の構造に工夫を施した点にあり、その他の基本構造については、図3に示す従来構造と同様であるから、これらの点についての説明は省略する。
(1)多層型熱反射板
以下、本発明の多層型熱反射板について詳細に説明する。なお、この多層型熱反射板の各部の寸法は、使用する単結晶育成装置の寸法に対応させて適宜選択されるものであるが、以下の説明では、特に、該単結晶育成装置の断熱空間(断熱材の側壁)の上部の内径が300mm、高さが300mmであるものを例に挙げて説明する。
本発明の多層型熱反射板は、チョクラルスキー法による単結晶育成装置の断熱空間内に、この単結晶育成装置の引き上げ軸と同軸上に配置され、少なくとも2枚以上の円輪状の熱反射板を備えている。
円輪状の熱反射板の外径は、断熱空間上部の側壁の内径よりも5mm〜50mm、好ましくは10mm〜35mm、より好ましくは20mm〜25mm小さいものを用いる。5mm未満では、育成時の高温環境下における熱反射板の膨張で断熱材と熱反射板が接触し、反応による異物形成や脆化、さらには、破損を引き起こす可能性が高くなる。一方、50mmを超える場合は、融液表面からの放射熱を十分に活用することができない。
また、それぞれの熱反射板は、径方向中央部に開口を有する円輪状であって、その外周部を貫通し、これらの熱反射板を保持する保持部材である支柱に、所定間隔をもって取り付けられている。特に、本発明では、それぞれの熱反射板の開口径が融液側から上方に向かって順次小さくなっている。換言すると、多層型熱反射板全体における前記複数の熱反射板の開口部により構成される空間が、凸状円錐形状(軸方向断面において凸状)となっている。
それぞれの熱反射板の間隔および開口径は、育成するサファイア単結晶など酸化物単結晶の直径、坩堝の直径、融液表面と熱反射板の距離、あるいは、断熱空間の形状および寸法などを総合的に考慮して、決定する必要がある。特に、サファイア単結晶では、結晶欠陥の発生を防止する観点から、サファイア単結晶の育成初期段階から、この育成結晶の成長界面先端部の形状が下側凸状となるような温度勾配を形成するように、それぞれの熱反射板の形状および配置を決定することが好ましい。
なお、本発明者らが、さまざまな形状および数の熱反射板を用いた多層型熱反射板を作製し、実験および検討を行った結果、得られた知見によれば、少なくとも2枚の熱反射板(外径が280mm、開口径が200mmと100mm、下方の熱反射板を坩堝の上方30mmに配置、それぞれの間隔が30mm)について、本発明の構成を採用した場合、2枚の熱反射板を、その開口部の開口径が同じもの(開口径が200mm、その他のサイズは同じ)を採用した場合、および、単一の熱反射板を坩堝の30mm上方で、断熱材の内壁から直接径方向内方に50mm伸長するように設置した場合と比較すると、原料融液および坩堝上方の断熱空間における温度勾配に、明らかな改善がみられる。
坩堝上方の断熱空間のサイズに制限されるものの、この熱反射板の数は多数であるほど効果的である。したがって、その他、製造コストや取扱いの容易性などを勘案しながら、熱反射板の数は適宜決定されることになる。ただし、多数の熱反射板を設置した場合において、温度勾配が大きくなりすぎると、得られるサファイア単結晶の上部にクラックが発生する場合がある。このようなことを防止し、収率よく、サファイア単結晶基板を得るためには、熱反射板の数は、2枚〜10枚程度であることが好ましく、4枚〜10枚程度であることがより好ましい。
また、前記熱反射板の開口部により構成される凸状円錐形状の空間の母線(断面において、最下部から最上部までの熱反射板の内周縁を結んだ線)は、直線に限られることはなく、融液方向に凸となる2次曲線(凸状円錐形状が火山体のような形状となる)も含まれる。また、前記熱反射板の開口部により構成される空間が半球状となる(その母線が外側方向に凸となる2次曲線となる)場合も含まれる。
なお、これらの母線の水平方向に対する斜度も、坩堝上の断熱空間の大きさなどにより制限されるが、原料融液およびその上方の断熱空間における温度勾配が、引き上げ軸の軸方向(縦方向)、径方向に急峻となるように構成することが好ましい。また、このような温度勾配の改善が得られないときは、炉内の断熱空間の大きさを変更し、熱反射板の数を増加させるなどして対応することもできる。
なお、熱反射板は、その円輪部が水平方向に伸長する、すなわち、原料融液の表面に対して平行に伸長する構成を採ることが好ましい。原則として、本発明の構成では、上記の開口部の関係を有する複数の熱反射板を設けることで、温度勾配の改善を図っており、その効果との関係では、熱反射板の形状が限定されることはない。たとえば、それぞれの熱反射板の内周部を径方向内側に向けて、斜め下方向に伸長させた構成を採ることもできる。また、熱反射板自体を径方向内側に向けて斜めに伸長する、すなわち、下方に凸となる円錐形状とすることも可能である。
熱反射板の厚さは任意であるが、0.5mm〜5mm、好ましくは1mm〜3mmとする。0.5mm未満では、該熱反射板の取付または取外業中に変形するおそれがある。また、5mmよりも厚いと、全体の重量が重くなり、作業効率が低下する原因になるばかりか、この多層型熱反射板を支持する部材にかかる負担も大きくなる。さらに、多層型熱反射板、および、これを支持する部材の熱容量が大きくなるため、これらの部材内部の熱伝導が大きくなり、投入電力(エネルギ)のロスが大きくなる。
反射部材の材質は、モリブデンやタングステンまたはこれらの合金、あるいはグラファイトなど、2000℃以上の高温環境下においても容易に変形しない材料を用いることが好ましい。また、該反射部材を支持する支持部材の材質は、グラファイト、あるいはモリブデン、タングステン、タンタルやそれらの炭化物などを使用することが好ましい。
(2)結晶育成装置
次に、本発明の多層型熱反射板を適用した単結晶育成装置について、図1および図2を参照して説明する。なお、本発明の多層型熱反射板14、14aを設置したこと以外は、従来の酸化物単結晶育成装置と同様であるため、以下の説明では、本発明の特徴的部分についてのみ説明する。
図1に、本発明の多層型熱反射板14を単結晶育成装置に設置した実施態様を示す。
このような実施態様では、多層型熱反射板14は、支持軸2上に設置された坩堝1の上方に、引き上げ軸9と同軸上に配置されている。また、この多層型熱反射板14を構成する支柱16の上端部が、断熱材内壁から伸長する支持部材であるステー17により支持されている。
この実施態様では、結晶育成終了後に育成された結晶を断熱空間内から取り出す際に、ステー17と支柱16との結合、あるいは、ステー17と断熱材内壁との結合を解除し、多層型熱反射板14を、上方より引き抜くことできるため、熱反射板15a〜fの取り外し作業が容易となる。また、結晶育成に際し、坩堝1を上下動させた場合であっても、円筒状ヒータ部3(図3参照)と多層型熱反射板14の位置関係が一定に保たれるため、断熱空間内に形成した温度勾配を維持しやすいという利点がある。
一方、図2に、本発明の多層型熱反射板14aを適用した単結晶育成装置の別の実施態様を示す。この実施態様では、多層型熱反射板14aが、支持軸2上に設置された坩堝1の上端部に載置された構造となっている。また、多層型熱反射板14aの最下部には、リッド(蓋)18が取り付けられている。このリッド18は、熱反射板による輻射熱の制御を補助する役目も有している。
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
なお、以下の実施例および比較例において、偏光検査は、得られたサファイア結晶をヨウ化メチレンに浸して白色光源を照射することで行った。また、X線トポグラフは、大試料ラングカメラ(株式会社リガク製、LGL−8)を用いて、表面平坦度は、光学式表面平坦度測定器(株式会社ニデック製、フタットネステスター FT−900)を用いて評価した。
(実施例1)
図1に示す多層型反射板を採用した単結晶育成装置(基本構造は図3を参照)を使用して、サファイア単結晶のa軸育成を行った。初めに、原料として酸化アルミニウム(Al23)粉末を坩堝に挿入し、この坩堝を結晶育成装置の支持軸上に設置した。その後、断熱材の内壁から伸長するカーボン製の支持部材に、炭化タンタルの接続部材(カラー、ワッシャおよびナット)を介して、図1に示すような多層型熱反射板14を設置した。なお、実施例1では、多層型熱反射板14として、熱反射板の数が2枚ものを使用した。
その後、断熱空間を閉鎖し、Arガス雰囲気とした後、円筒状ヒータ部3、円盤状ヒータ部4により酸化アルミニウム(Al23)粉末を2050℃以上に加熱し、融解した。酸化アルミニウム(Al23)粉末が完全に融解したことを確認した後、融液表面の温度をシーディング温度に調整し、先端に種結晶が取り付けられた引き上げ軸を5rpmで回転させた状態で下降させ、酸化アルミニウム(Al23)融液に接触させた。その後、引き上げ速度1mm/hで5日間の引き上げを行った結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。
得られたサファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφサファイア基板を150枚得た。X線トポグラフ装置、表面平坦度測定装置を用いて得られた基板を評価したところ、良品率は92%であった。
(実施例2)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が4枚のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は99%であった。
(実施例3)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が6枚のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は98%であった。
(実施例4)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が8枚のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は96%であった。
(実施例5)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が10枚のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は95%であった。
(実施例6)
多層型熱反射板14aとして、図2に示すような載置型のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。なお、実施例6では、多層型熱反射板14aとして、熱反射板の数が2枚ものを使用した。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は90%であった。
(実施例7)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が4枚のものを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は98%であった。
(実施例8)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が6枚のものを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は96%であった。
(実施例9)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が8枚のものを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は94%であった。
(実施例10)
多層型熱反射板として、熱反射板の数が10枚のものを使用したこと以外は、実施例6と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は94%であった。
(実施例11)
多層型熱反射板として、熱反射板の内周部を径方向内側に向けて、斜め下方向に伸長させたものを用いたこと以外は、実施例3と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、粒界、リネージはもちろんのこと、ボイドなどの結晶欠陥もほとんど見つからなかった。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は96%であった。
(比較例1)
多層型熱反射板ではなく、図3に示すような単層型熱反射板を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により確認すると、ボイド、リネージなどの結晶欠陥が多数確認された。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は70%であった。これは、比較例1では熱反射板の数が1枚であったため、十分に大きな温度勾配が形成されず、育成初期段階において、短時間で、径方向への結晶成長が進行したためである。
(比較例2)
多層型熱反射板として、開口部の開口径が同じものを使用したこと以外は、実施例3と同様にして、サファイア結晶の育成を行った。その結果、35kg(直径:200mm、長さ:280mm)のサファイア単結晶を得た。このサファイア単結晶を偏光検査により結晶性を確認すると、ボイド、リネージなどの結晶欠陥が多数確認された。また、実施例1と同様に、サファイア単結晶に対して、スライス加工および研磨加工を行い、厚さ1mmの4inφのサファイア基板を150枚得た。このときの良品率は75%であった。これは、比較例2で使用した多層型熱反射板を構成する、6枚の熱反射板の開口径が全て同じであったため、原料融液表面における水平方向の温度勾配が、熱反射板の開口部に対応した位置で急峻に変化し、開口部よりも外側の領域において、径方向への結晶成長速度を制御することが困難となり、短時間で、結晶成長が進行したためである。
以上の結果を表1に示す。これより、本発明よる多層型熱反射板を使用した場合には、サファイア単結晶の育成収率が向上することが分かる。
1 坩堝
2 支持軸
3 円筒状ヒータ部
4 円盤状ヒータ部
5a、5b ヒータ電極
6 断熱材
7 炉体
8 絶縁筒
9 引き上げ軸
10 原料融液
11 種結晶
12 サファイア単結晶
13 熱反射板
14、14a 多層式熱反射板
15a〜f 熱反射板
16 支柱
17 ステー
18 リッド
20 断熱空間
60 底面部
61 上面部

Claims (7)

  1. チョクラルスキー法による酸化物単結晶育成装置において、該育成装置の断熱空間内であって、坩堝の上方に配置され、
    該育成装置の引き上げ軸の軸方向に伸長し、前記断熱空間内に支持される保持部材と、
    該保持部材に前記引き上げ軸の軸方向に所定間隔をもって配置固定され、径方向中央部に開口を有する、複数の円輪状の熱反射板と、
    を備え、
    前記複数の円輪状の熱反射板の前記開口の開口径が、前記坩堝側から上方に向かうに従って、順次、小さくなっていることを特徴とする、多層型熱反射板。
  2. 前記複数の円輪状の熱反射板のそれぞれが、水平方向に伸長している、請求項1に記載の多層型熱反射板。
  3. チョクラルスキー法による酸化物単結晶育成装置であって、育成時に、断熱空間内で坩堝の上方に、引き上げ軸の軸方向に所定間隔をもって配置され、径方向中央部に開口を有する、複数の円輪状の熱反射板を備える多層型熱反射板が設けられており、前記複数の円輪状の熱反射板の前記開口の開口径が、前記坩堝側から上方に向かうに従って、順次、小さくなっていることを特徴とする、酸化物単結晶育成装置。
  4. 前記複数の円輪状の熱反射板が、前記引き上げ軸の軸方向に伸長する保持部材により支持され、該保持部材が、前記断熱空間を構成する断熱材のうち、前記引き上げ軸の軸方向に伸長する側壁の上方部に固定された支持部材に支持されることにより、前記多層型熱反射板が該支持部材を介して吊り下げられている、請求項3に記載の酸化物単結晶育成装置。
  5. 前記複数の円輪状の熱反射板が、前記引き上げ軸の軸方向に伸長する保持部材により支持され、該保持部材の下端部が前記坩堝の上端部に支持固定されることにより、前記多層型熱反射板が前記坩堝の上方に配置されている、請求項3に酸化物単結晶育成装置。
  6. 前記複数の円輪状の熱反射板のそれぞれが、水平方向に伸長している、請求項3〜5のいずれかに記載の酸化物単結晶育成装置。
  7. 前記複数の円輪状の熱反射板の数が2枚〜10枚である、請求項3〜6のいずれかに記載の酸化物単結晶育成装置。
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