本発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
実施の形態1.
図1および図2は、実施の形態1に係るエレベーターの構成図である。
図1に示す例において、エレベーター1は、複数の階床を有する建物2に適用される。エレベーター1において、昇降路3が、建物2の複数の階床にわたって設けられる。エレベーター1において、機械室4が、昇降路3の上方に設けられる。機械室4において、ロープダクト5が、床面に設けられる。ロープダクト5は、機械室4から昇降路3に通じる開口である。エレベーター1において、例えばピット6が、昇降路3の下端部に設けられる。
エレベーター1は、巻上機7と、主ロープ8と、かご9と、釣合い錘10と、釣合いロープ11と、張り車12と、を備える。巻上機7は、例えば機械室4に設けられる。巻上機7は、シーブおよびモーターを有する。巻上機7のシーブは、巻上機7のモーターの回転軸に接続される。巻上機7のモーターは、巻上機7のシーブを回転させる駆動力を発生させる機器である。主ロープ8は、巻上機7のシーブに巻き掛けられる。主ロープ8は、ロープダクト5を通じて機械室4から昇降路3に延びる。かご9および釣合い錘10は、昇降路3において主ロープ8によって吊られている。かご9は、昇降路3の内部を鉛直方向に走行することで乗客などを複数の階床の間で輸送する機器である。釣合い錘10は、主ロープ8を通じて巻上機7のシーブにかかる荷重の釣合いをかご9との間でとる機器である。かご9および釣合い錘10は、巻上機7のシーブの回転によって主ロープ8が移動することで、昇降路3において互いに反対方向に走行する。釣合いロープ11は、主ロープ8の移動によって生じる主ロープ8のかご9の側の自重および主ロープ8の釣合い錘10の側の自重の不均衡を補償する機器である。釣合いロープ11の一端は、かご9に取り付けられる。釣合いロープ11の他端は、釣合い錘10に取り付けられる。釣合いロープ11は、張り車12に巻き掛けられる。張り車12は、釣合いロープ11に張力をかけるシーブである。張り車12は、例えばピット6に設けられる。主ロープ8は、エレベーター1の索条体の例である。釣合いロープ11は、エレベーター1の索条体の例である。エレベーター1の索条体は、例えばワイヤロープ、ベルトロープ、またはチェーンなどを含んでもよい。
エレベーター1は、調速機13と、調速機ロープ14と、調速機ロープ張り車15と、を備える。調速機13は、例えば機械室4に設けられる。調速機13は、かご9の過剰な走行速度を抑える機器である。調速機13は、シーブを有する。調速機ロープ14は、調速機13のシーブに巻き掛けられる。調速機ロープ14の両端は、かご9に取り付けられる。調速機ロープ14は、調速機ロープ張り車15に巻き掛けられる。調速機ロープ張り車15は、調速機ロープ14に張力をかけるシーブである。調速機ロープ張り車15は、例えばピット6に設けられる。調速機ロープ14は、エレベーター1の索条体の例である。
エレベーター1は、制御ケーブル16と、制御盤17と、を備える。制御ケーブル16は、制御信号などを通信するケーブルである。制御ケーブル16の一端は、かご9に接続される。制御ケーブル16の他端は、例えば昇降路3の壁面に取付けられる。制御盤17は、エレベーター1の動作を制御する装置である。制御盤17は、例えば機械室4に設けられる。制御盤17は、例えば制御ケーブル16を通じてかご9との間で制御信号を通信する。制御ケーブル16は、エレベーター1の索条体の例である。
以下において、次のように設定されるxyz直交座標系を用いて説明する。x軸の正の方向は、鉛直下方向である。yz平面は、水平面である。z軸の方向は、例えば巻上機7のシーブの回転軸の方向である。
図2は、エレベーター1において、建物揺れ18が発生している状態を示す図である。建物揺れ18は、例えば地震、または風などの外乱によって発生する建物2の揺れである。建物揺れ18の発生によって、建物2に固定されている巻上機7および調速機13などは、建物2とともに揺れる。これにより、エレベーター1の索条体の例である主ロープ8、釣合いロープ11、調速機ロープ14、および制御ケーブル16は、振動を加えられる。ここで、建物揺れ18の周波数および索条体の固有振動数が一致するときに、索条体の揺れは、共振現象によって大きくなる。エレベーター1において共振現象が発生する場合に、索条体は、基本振動によって共振することが多い。基本振動は、最も低い固有振動数に対応する振動である。図2に示す例において、主ロープ8のかご9の側の部分の基本振動による共振現象が発生している。
この例において、主ロープ8のかご9の側の部分は、巻上機7のシーブから昇降路3に引き出されてかご9に取り付けられる。このため、主ロープ8のかご9の側の部分の基本振動の節は、巻上機7のシーブから引き出される点N1、およびかご9に取り付けられる点N2である。主ロープ8のかご9の側の部分の基本振動の腹は、2つの節の中間の点Mである。主ロープ8のかご9の側の部分は、平衡位置19を中心として正の復元力によって横方向に振動する。平衡位置19は、振動していない状態の索条体の位置である。正の復元力は、平衡位置19から変位した索条体に働く、索条体を平衡位置19に戻す方向の力である。正の復元力は、例えば索条体の張力による力である。横方向は、例えば索条体の長手方向に垂直な方向である。以下において、主ロープ8のかご9の側の部分を、索条体の振動する部分の例とする。ここで、主ロープ8などの索条体は、例えば強磁性体を含むことなどによって強磁性を有している。
主ロープ8などの索条体が大きく振動すると、エレベーター1の運転に支障をきたすことがある。このため、制振装置が、エレベーター1に設けられる。制振装置は、索条体の振動部分の振動を抑制する装置である。制振装置は、例えば索条体の振動部分の腹より節に近い部分に設けられる。この例において、制振装置は、かご9の上部に設けられる。
続いて、図3および図4を用いて、制振装置20の構成を説明する。
図3および図4は、実施の形態1に係る制振装置の構成図である。
図3において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。この例において、制振装置20は、主ロープ8のy軸方向の振動を抑制する。なお、制振装置20は、主ロープ8などの索条体の、z軸方向を含むyz平面内の他の方向の振動を抑制するように配置されてもよい。制振装置20は、例えばかご9の上部のかご枠に設けられる。かご9の上部において、支持台21が設けられる。支持台21は、かご9に固定して設けられる。この例において、支持台21の上面は、平坦な面である。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、を備える。
一対の可動ユニット22は、主ロープ8に関して互いに対称に配置される。一方の可動ユニット22は、主ロープ8よりy軸方向の正の側に配置される。他方の可動ユニット22は、主ロープ8よりy軸方向の負の側に配置される。一対の可動ユニット22の各々は、索条体の長手方向の第1位置P1に向けて配置される。第1位置P1は、例えば主ロープ8などの索条体の基本振動の腹より節に近い位置である。一対の可動ユニット22の各々は、第1ユニットの例である。一対の可動ユニット22の各々は、可動台車24と、磁石ユニット25と、を備える。
可動台車24は、主ロープ8の平衡位置19からの距離が変わる方向の移動が可能な台車である。この例において、可動台車24は、y軸方向に移動が可能である。また、可動台車24は、主ロープ8の振動面内において移動する。可動台車24は、車輪26を備える。車輪26は、支持台21の上面においてy軸方向に転がる。車輪26は、可動ユニット22の重量を支持する。可動ユニット22は、可動台車24によって、主ロープ8の平衡位置19からの距離が変わる方向に移動する。
磁石ユニット25は、可動台車24とともに移動する。磁石ユニット25は、変位増幅磁石27と、制限部材28と、を備える。
変位増幅磁石27は、例えば永久磁石である。変位増幅磁石27の端部の磁極は、主ロープ8の第1位置P1に向けられる。変位増幅磁石27は、磁界によって磁力を引力として索条体に作用させる。磁力による引力は、主ロープ8が変位増幅磁石27に近づくほど強くなる。主ロープ8が振動によって変位するときに、変位増幅磁石27は、主ロープ8の変位と同じ方向に主ロープ8に引力を作用させる。この引力は、主ロープ8の振動の変位を増幅する負の復元力として働く。負の復元力は、例えば負の剛性力である。変位増幅磁石27は、主ロープ8の振動の変位を増幅する第1変位増幅器の例である。
制限部材28は、主ロープ8の第1位置P1に向けられた変位増幅磁石27の磁極に設けられる。制限部材28は、変位増幅磁石27の端部の磁極と主ロープ8との間に配置される。制限部材28は、主ロープ8が変位増幅磁石27に制限部材28の厚さより近づくことを抑制する。制限部材28は、第1制限部材の例である。制限部材28は、非磁性体である。
一対のストッパー23の各々は、例えば支持台21に固定される。一対のストッパー23は、主ロープ8に関して互いに対称に配置される。一方のストッパー23は、主ロープ8よりy軸方向の正の側に配置される。他方のストッパー23は、主ロープ8よりy軸方向の負の側に配置される。y軸方向の正の側のストッパー23は、y軸方向の正の側の可動ユニット22に対応する。y軸方向の負の側のストッパー23は、y軸方向の負の側の可動ユニット22に対応する。ストッパー23は、対応する可動ユニット22の移動を制限する部材である。一対のストッパー23の各々は、第1ストッパーの例である。
図4において、上方から見た制振装置20が示される。ストッパー23は、対応する可動ユニット22が主ロープ8の平衡位置19から第1距離d1より近くに移動することを制限する。第1距離d1は、制振装置20に必要な制振性能に基づいて予め設定される距離である。制振装置20の制振性能は、例えば変位増幅磁石27が作用させる磁力によって定まる。ストッパー23は、制限部材28を主ロープ8の側から支えることで、可動ユニット22の移動を制限する。ストッパー23は、主ロープ8の振動面の外に配置される。この例において、ストッパー23は、振動面に関して対称な2つの部分に分離されている。
制限部材28の厚さは、主ロープ8の正の復元力および変位増幅磁石27が作用させる磁力に基づいて設定される。制限部材28の厚さは、平衡位置19から第1距離d1の位置にある可動ユニット22の制限部材28に主ロープ8が接触するときの磁力が主ロープ8の正の復元力を超えない厚さに設定される。すなわち、制限部材28の厚さは、変位増幅器による負の復元力が主ロープ8などの索条体の正の復元力を超えない厚さに設定される。
続いて、図5から図7を用いて、制振装置20の動作の例を説明する。
図5および図6は、実施の形態1に係る制振装置の構成図である。
図7は、実施の形態1に係る制振装置による負の復元力の例を示す図である。
図5において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。主ロープ8は、振動によって横方向に変位する。主ロープ8は、張力などによる正の復元力によって、平衡位置19を中心として振動する。主ロープ8が平衡位置19の近傍にあるときに、主ロープ8は、制限部材28に接触していない。このとき、可動ユニット22は、平衡位置19から第1距離d1の位置にある。この位置にある可動ユニット22は、変位増幅磁石27の磁力によって主ロープ8の変位と同じ方向の引力を主ロープ8に作用させる。ここで、可動ユニット22は、反作用として平衡位置19に近づく方向の力を受ける。このとき、ストッパー23が対応する可動ユニット22の移動を制限するため、可動ユニット22は移動しない。これにより、主ロープ8の第1位置P1の変位が増幅される。第1位置P1の変位が増幅されることにより、例えば主ロープ8とかご9との接続部における摩擦抵抗などによるエネルギーの散逸が増幅される。また、エネルギーの散逸をより高めるため、支持台21および可動ユニット22の間に別途ダンパーが取り付けられていてもよい。すなわち、主ロープ8の振動のエネルギーが消費されることによって、主ロープ8が制振される。
一方、建物揺れ18が大きい場合などに、主ロープ8の振動による第1位置P1の変位の大きさは、第1距離d1を超えることがある。
図6において、上方から見た制振装置20が示される。ストッパー23が主ロープ8の振動面の外に配置されているので、主ロープ8は、制限部材28に接触する。主ロープ8は、慣性によって平衡位置19から離れる方向の運動を続ける。主ロープ8は、制限部材28を介して、可動ユニット22を平衡位置19から離れる方向に押す。可動ユニット22は、支持台21の上面を平衡位置19から離れる方向に移動する。このとき、可動ユニット22は、主ロープ8とともに運動する。変位増幅磁石27の磁力は、可動ユニット22および主ロープ8からなる系の内力として働く。このため、変位増幅磁石27の磁力は、可動ユニット22が主ロープ8とともに運動しているときに、負の復元力を主ロープ8に作用させない。この間、制限部材28は、主ロープ8と変位増幅磁石27との間の距離が制限部材28の厚さより近づくことを抑制している。
主ロープ8が正の復元力によって平衡位置19に戻る過程において、主ロープ8とともに運動する可動ユニット22はストッパー23に接触する。制限部材28によって、主ロープ8は、制限部材28の厚さより近く変位増幅磁石27に近づかない。このため、可動ユニット22がストッパー23に接触するときの主ロープ8の正の復元力の大きさは、変位増幅磁石27による負の復元力の大きさより大きい。これにより、主ロープ8は、正の復元力によって平衡位置19まで戻る。
図7において、主ロープ8の第1位置P1の変位と負の復元力の大きさとの関係が示される。図7のグラフの横軸は、主ロープ8の第1位置P1の横方向の変位の大きさを表す。図7のグラフの縦軸は、変位増幅磁石27が主ロープ8に加える負の復元力の大きさを表す。図7のグラフにおいて、変位v1は、主ロープ8が制限部材28に接触するときの変位を表す。
制振装置20は、第1位置P1の変位を増幅することによって、主ロープ8を制振する。このため、負の復元力の大きさと正の復元力の大きさとが近いときに、制振装置20の制振性能は高くなる。一方、負の復元力の大きさが正の復元力の大きさを超えるときに、主ロープ8の変位は不安定になる。このとき、主ロープ8は、平衡位置19に戻らない。直線aは、主ロープ8に働く線形な正の復元力の大きさを示す。図7のグラフにおいて、直線aより上の領域は不安定領域である。
線fは、制振装置20による負の復元力を表す。変位がv1より小さい領域において、主ロープ8は、変位増幅磁石27から負の復元力を受ける。不安定性による負の復元力は、変位に対して非線形な力である。このため、変位が大きくなっても負の復元力を作用させ続ける場合に、負の復元力の大きさは、線形な正の復元力の大きさを超えることがある。一方、変位がv1より大きい領域において、可動ユニット22は主ロープ8とともに運動する。このとき、可動ユニット22は、負の復元力を主ロープ8に作用させない。また、変位がv1より大きい領域においても、正の復元力は主ロープ8に作用している。このため、変位がv1を超えても主ロープ8の変位は不安定にならない。
以上に説明したように、実施の形態1に係る制振装置20は、第1ユニットと、第1ストッパーと、を備える。第1ユニットは、エレベーター1の索条体の振動の平衡位置19からの距離が変わる方向の移動が可能な部分である。第1ストッパーは、平衡位置19から第1距離d1より近くへの第1ユニットの移動を制限する。第1ユニットは、第1変位増幅器と、第1制限部材と、を備える。第1変位増幅器は、索条体の長手方向の第1位置P1に向けて配置される。第1変位増幅器は、索条体が近づくほど強くなる引力によって索条体の振動の変位を増幅する。第1制限部材は、索条体が予め設定された距離より第1変位増幅器に近づくことを抑制する。
第1制限部材によって、索条体は変位が不安定になる距離まで第1変位増幅器に接近しない。このため、変位の増幅によって索条体の変位が不安定になることが抑制される。また、第1ユニットは、平衡位置19から離れる方向に移動が可能な部分である。このため、索条体が第1制限部材に接触するときに、第1ユニットは、索条体とともに移動できる。これにより、索条体の第1位置P1の可動域がより広くなる。したがって、制振装置20は、索条体をより効果的に制振できるようになる。
また、第1変位増幅器は、磁性を有する索条体の変位を磁力によって増幅する。第1制限部材は、第1変位増幅器の索条体に向けられる側の端部に設けられる。第1制限部材は、非磁性体である。
これにより、制振装置20をパッシブな装置として構成できる。特に第1変位増幅器が永久磁石である場合に、制振装置20は外部からのエネルギーの供給を必要としない。
なお、可動ユニット22は、可動台車24を有していなくてもよい。可動ユニット22は、例えば支持台21に設けられるガイドレールなどによって水平方向に移動する磁石ユニット25であってもよい。
また、エレベーター1の索条体は、例えば可撓性を有し特に長手方向の引張り荷重に耐えうる長尺な構造物であってもよい。索条体は、例えば複数の主ロープ8の束であってもよい。
また、制振装置20は、機械室4に設けられていてもよい。索条体が例えばピット6に設けられるシーブに巻きかけられている場合に、制振装置20は、ピット6において、腹よりもシーブに近い位置に設けられていてもよい。また、エレベーター1が機械室4を有していない場合に、巻上機7は、例えば昇降路3の上部または下部に設けられる。このとき、制振装置20は、昇降路3において、腹よりも巻上機7に近い位置に設けられていてもよい。
実施の形態2.
実施の形態2において、実施の形態1で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態2で説明しない特徴については、実施の形態1で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
図8は、実施の形態2に係る制振装置の構成図である。
図8において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。制振装置20は、例えばかご9の上部のかご枠に設けられる。かご9の上部において、支持台21が設けられる。支持台21は、かご9に固定して設けられる。この例において、支持台21の上面は、平坦な面である。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、一対の固定ユニット29と、を備える。
一対の固定ユニット29は、主ロープ8に関して互いに対称に配置される。一方の固定ユニット29は、主ロープ8よりy軸方向の正の側に配置される。他方の固定ユニット29は、主ロープ8よりy軸方向の負の側に配置される。y軸方向の正の側の固定ユニット29は、y軸方向の正の側の可動ユニット22と鉛直面内において平行に並ぶように配置される。y軸方向の負の側の固定ユニット29は、y軸方向の負の側の可動ユニット22と鉛直面内において平行に並ぶように配置される。一対の固定ユニット29の各々は、索条体の長手方向の第2位置P2に向けて配置される。第2位置P2は、例えば主ロープ8などの索条体の基本振動の腹より節に近い位置である。第2位置P2は、第1位置P1と主ロープ8の長手方向において異なる位置である。この例において、第2位置P2は、第1位置P1より基本振動の腹に近い位置である。一対の固定ユニット29の各々は、主ロープ8の平衡位置19から第2距離d2の位置に配置される。第2距離d2は、制振装置20に必要な制振性能に基づいて予め設定される距離である。この例において、第2距離d2は、第1距離d1より長い距離である。一対の固定ユニット29の各々は、第2ユニットの例である。一対の固定ユニット29の各々は、磁石ユニット25を備える。
固定ユニット29の磁石ユニット25は、変位増幅磁石27と、制限部材28と、を備える。
固定ユニット29の変位増幅磁石27は、例えば可動ユニット22の変位増幅磁石27と同様に構成される。固定ユニット29の変位増幅磁石27の端部の磁極は、主ロープ8の第2位置P2に向けられる。固定ユニット29の変位増幅磁石27は、第2変位増幅器の例である。
固定ユニット29の制限部材28は、例えば可動ユニット22の制限部材28と同様に構成される。固定ユニット29の制限部材28は、主ロープ8の第2位置P2に向けられた変位増幅磁石27の磁極に設けられる。固定ユニット29の制限部材28は、第2制限部材の例である。
固定ユニット29の制限部材28の厚さは、主ロープ8の正の復元力および変位増幅磁石27が作用させる磁力に基づいて設定される。固定ユニット29の制限部材28の厚さは、平衡位置19から第2距離d2の位置にある固定ユニット29の制限部材28に主ロープ8が接触するときの磁力が主ロープ8の正の復元力を超えない厚さに設定される。すなわち、固定ユニット29の制限部材28の厚さは、変位増幅器による負の復元力が主ロープ8などの索条体の正の復元力を超えない厚さに設定される。固定ユニット29の制限部材28の厚さは、可動ユニット22の制限部材28の厚さと異なっていてもよい。
続いて、図9および図10を用いて、制振装置20の動作の例を説明する。
図9は、実施の形態2に係る制振装置の構成図である。
図10は、実施の形態2に係る制振装置による負の復元力の例を示す図である。
図9において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。主ロープ8は、振動によって横方向に変位する。主ロープ8は、張力などによる正の復元力によって、平衡位置19を中心として振動する。主ロープ8が平衡位置19の近傍にあるときに、主ロープ8は、可動ユニット22の制限部材28に接触していない。このとき、可動ユニット22は、平衡位置19から第1距離d1の位置にある。この位置にある可動ユニット22は、変位増幅磁石27の磁力によって主ロープ8の変位と同じ方向の引力を主ロープ8に作用させる。ここで、可動ユニット22は、反作用として平衡位置19に近づく方向の力を受ける。このとき、ストッパー23が対応する可動ユニット22の移動を制限するため、可動ユニット22は移動しない。これにより、主ロープ8の第1位置P1の変位が増幅される。また、固定ユニット29は、変位増幅磁石27の磁力によって主ロープ8の変位と同じ方向の引力を主ロープ8に作用させる。固定ユニット29は、かご9の上部において固定されている。このため、主ロープ8の第2位置P2の変位が増幅される。第1位置P1の変位および第2位置P2の変位が増幅されることにより、例えば主ロープ8とかご9との接続部における摩擦抵抗などによるエネルギーの散逸が増幅される。すなわち、主ロープ8の振動のエネルギーが消費されることによって、主ロープ8が制振される。
一方、建物揺れ18が大きい場合などに、主ロープ8の振動による第1位置P1の変位の大きさは、第1距離d1を超えることがある。このとき、主ロープ8は、可動ユニット22の制限部材28に接触する。主ロープ8は、慣性によって平衡位置19から離れる方向の運動を続ける。主ロープ8は、制限部材28を介して、可動ユニット22を平衡位置19から離れる方向に押す。可動ユニット22は、支持台21の上面を平衡位置19から離れる方向に移動する。このとき、可動ユニット22は、主ロープ8とともに運動する。可動ユニット22の変位増幅磁石27の磁力は、可動ユニット22および主ロープ8からなる系の内力として働く。このため、可動ユニット22の変位増幅磁石27の磁力は、可動ユニット22が主ロープ8とともに運動しているときに、負の復元力を主ロープ8に作用させない。この間、可動ユニット22の制限部材28は、主ロープ8と可動ユニット22の変位増幅磁石27との間の距離が制限部材28の厚さより近づくことを抑制している。
主ロープ8の振動による第2位置P2の変位の大きさが第2距離d2を超えない間、固定ユニット29の変位増幅磁石27は、主ロープ8の第2位置P2の変位の増幅を続ける。
ここで、建物揺れ18がさらに大きい場合などに、主ロープ8の振動による第2位置P2の変位の大きさが第2距離d2に達することがある。このとき、主ロープ8は、固定ユニット29の制限部材28に接触する。主ロープ8の第2位置P2より腹に近い部分は、慣性により運動を続ける。一方、主ロープ8の第2位置P2の部分は、固定ユニット29の制限部材28に接触して停止している。この間、固定ユニット29の制限部材28は、主ロープ8と固定ユニット29の変位増幅磁石27との間の距離が制限部材28の厚さより近づくことを抑制している。
主ロープ8が正の復元力によって平衡位置19に戻る過程において、主ロープ8は固定ユニット29の制限部材28から離れる。固定ユニット29の制限部材28によって、主ロープ8は、制限部材28の厚さより近く固定ユニット29の変位増幅磁石27に近づかない。このため、主ロープ8が固定ユニット29の制限部材28から離れるときの主ロープ8の正の復元力の大きさは、変位増幅磁石27による負の復元力の大きさより大きい。これにより、主ロープ8は、正の復元力によって平衡位置19に戻る運動を続ける。
その後、主ロープ8とともに運動する可動ユニット22はストッパー23に接触する。可動ユニット22の制限部材28によって、主ロープ8は、制限部材28の厚さより近く可動ユニット22の変位増幅磁石27に近づかない。このため、可動ユニット22がストッパー23に接触するときの主ロープ8の正の復元力の大きさは、可動ユニット22の変位増幅磁石27による負の復元力の大きさより大きい。これにより、主ロープ8は、正の復元力によって平衡位置19まで戻る。
図10において、図7と同様に主ロープ8の変位と負の復元力の大きさとの関係が示される。図10のグラフにおいて、変位v1は、主ロープ8の第1位置P1の部分が可動ユニット22の制限部材28に接触するときの変位を表す。図10のグラフにおいて、変位v3は、主ロープ8の第2位置P2の部分が固定ユニット29の制限部材28に接触するときの変位を表す。
ここで、線bは、固定ユニットを備え可動ユニットを備えない制振装置による負の復元力を表す。不安定性による負の復元力は、変位に対して非線形な力である。このため、変位v2において、負の復元力の大きさが、線形な正の復元力の大きさを超える。このような制振装置において、主ロープ8の変位は、v2を超えない範囲に制限される。
一方、線gは、実施の形態2に係る制振装置20による負の復元力を表す。変位がv1より小さい領域において、主ロープ8は、可動ユニット22および固定ユニット29の両方の変位増幅磁石27から負の復元力を受ける。一方、変位がv1より大きい領域において、可動ユニット22は主ロープ8とともに運動する。このとき、可動ユニット22は、負の復元力を主ロープ8に作用させない。ここで、変位がv3より小さい領域において、主ロープ8は、固定ユニット29の変位増幅磁石27から負の復元力を受ける。このため、負の復元力は、変位がv1を超えるときに一時的に低下する。このときに負の復元力は、0にはならない。変位がv1より大きい領域において可動ユニット22は負の復元力を作用させないので、固定ユニット29による負の復元力は、変位v2より大きい変位v3に至るまで、正の復元力の大きさを超えない。すなわち、主ロープ8の変位の可動域は、v2を超える範囲に拡張される。
以上に説明したように、実施の形態2に係る制振装置20は、第2ユニットを備える。第2ユニットは、平衡位置19から第2距離d2の位置に設けられる。第2ユニットは、第2変位増幅器と、第2制限部材と、を備える。第2変位増幅器は、索条体の長手方向の第2位置P2に向けて配置される。第2位置P2は、第1位置P1と長手方向に異なる位置である。第2変位増幅器は、索条体が近づくほど強くなる引力によって索条体の振動の変位を増幅する。第2制限部材は、索条体が予め設定された距離より第2変位増幅器に近づくことを抑制する。
これにより、索条体が第1ユニットの第1制限部材に接触した後においても、制振装置20は、第2ユニットによって索条体の変位を増幅できる。また、索条体の変位の可動域は、単一の固定ユニットによって制振を行う場合より広くなる。
なお、第2位置P2は、第1位置P1より主ロープ8の基本振動の腹から遠い位置であってもよい。このとき、第2位置P2における主ロープ8の変位は、第1位置P1における主ロープ8の変位より小さい。このため、第2距離d2は、第1距離d1より短い距離であってもよい。また、第2距離d2は、第1距離d1と同じ距離であってもよい。
また、制振装置20は、固定ユニットを2段以上備えていてもよい。すなわち、制振装置20は、第1位置P1および第2位置P2と異なる主ロープ8の長手方向の第3位置に向けられた固定ユニットをさらに備えていてもよい。
続いて、図11を用いて、実施の形態2の変形例を示す。
図11は、実施の形態2の変形例に係る制振装置の構成図である。
図11において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。制振装置20は、可動ユニットおよびストッパーを2段以上備えていてもよい。例えば、制振装置20は、主ロープ8の第1位置P1に向けられた主の可動ユニット22と、主ロープ8の第2位置P2に向けられた副の可動ユニット22aと、を備える。また、制振装置20は、主の可動ユニット22に対応するストッパー23と、副の可動ユニット22aに対応するストッパー23aと、を備える。
副の可動ユニット22aの磁石ユニット25は、固定ユニット29の磁石ユニット25と同様に構成される。副の可動ユニット22aに対応するストッパー23aは、対応する可動ユニット22aが主ロープ8の平衡位置19から第3距離d3より近くに移動することを制限する。第3距離d3は、制振装置20に必要な制振性能に基づいて予め設定される距離である。第3距離d3は、例えば第2距離d2と同様に設定される。副の可動ユニット22aは、第3ユニットの例である。第3ユニットに対応するストッパー23aは、第3ストッパーの例である。第3ユニットの磁石ユニット25の変位増幅磁石27は、第3変位増幅器の例である。当該磁石ユニット25の制限部材28は、第3制限部材の例である。
副の可動ユニット22aは、主ロープ8の振動による第2位置P2の変位の大きさが第3距離d3を超えない間、固定ユニット29と同様に動作する。主ロープ8の振動による第2位置P2の変位の大きさが第3距離d3を超えない間、副の可動ユニット22aの変位増幅磁石27は、主ロープ8の第2位置P2の変位の増幅を続ける。
ここで、建物揺れ18がさらに大きい場合などに、主ロープ8の振動による第2位置P2の変位の大きさが第3距離d3に達することがある。このとき、主ロープ8は、副の可動ユニット22aの制限部材28に接触する。副の可動ユニット22aは、主の可動ユニット22と同様に、主ロープ8の平衡位置19から離れる方向に主ロープ8とともに移動する。
その後、主ロープ8が正の復元力によって平衡位置19に戻る過程において、副の可動ユニット22aは、ストッパー23aに接触する。ストッパー23aは、副の可動ユニット22aの平衡位置19に近づく方向の移動を制限する。副の可動ユニット22aの制限部材28によって、主ロープ8は、制限部材28の厚さより近く当該可動ユニット22aの変位増幅磁石27に近づかない。このため、副の可動ユニット22aがストッパー23aに接触するときの主ロープ8の正の復元力の大きさは、当該可動ユニット22aの変位増幅磁石27による負の復元力の大きさより大きい。これにより、主ロープ8は、正の復元力によって平衡位置19まで戻る。
このように、制振装置20は、第3ユニットと、第3ストッパーと、を備える。第3ユニットは、平衡位置19からの距離が変わる方向の移動が可能な部分である。第3ストッパーは、索条体の振動の平衡位置19から第3距離d3より近くへの第3ユニットの移動を制限する。第3ユニットは、第3変位増幅器と、第3制限部材と、を備える。第3変位増幅器は、索条体の長手方向の第2位置P2に向けて配置される。第2位置P2は、第1位置P1と長手方向に異なる位置である。第3変位増幅器は、索条体が近づくほど強くなる引力によって索条体の振動の変位を増幅する。第3制限部材は、索条体が予め設定された距離より第3変位増幅器に近づくことを抑制する。
これにより、索条体が第1ユニットの第1制限部材に接触した後においても、制振装置20は、第3ユニットによって索条体の変位を増幅できる。また、索条体が第3制限部材に接触するときに、第3ユニットは、索条体とともに移動できる。これにより、索条体の可動域がより広くなる。したがって、制振装置20は、索条体をより効果的に制振できるようになる。
続いて、図12を用いて、実施の形態2の他の変形例を示す。
図12は、実施の形態2の変形例に係る制振装置の構成図である。
図12において、制振装置20の斜視図が示される。この例において、制振装置20は、主ロープ8のz軸方向の振動を抑制する。なお、制振装置20は、主ロープ8などの索条体の、y軸方向を含むyz平面内の他の方向の振動を抑制するように配置されてもよい。制振装置20は、機械室4に設けられる。制振装置20は、ロープダクト5の周りに設けられる。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、一対の固定ユニット29と、を備える。
可動ユニット22の可動台車24において、磁石ユニット25より平衡位置19から遠い側に、z軸方向に伸びる長穴30が設けられる。可動台車24の車輪26は、機械室4の床面においてz軸方向に転がる。
ストッパー23は、例えば機械室4の床面に固定される。この例において、ストッパー23は、機械室4の床面から上方に突出する棒状の部材である。ストッパー23は、可動台車24の長穴30に通される。ストッパー23は、長穴30の端部に当たるときに、可動ユニット22の移動を制限する。ストッパー23は、主ロープ8の振動面内に配置されていてもよい。ストッパー23が磁石ユニット25より平衡位置19から遠い側に配置されるので、主ロープ8はストッパー23に接触しない。
可動ユニット22および固定ユニット29の磁石ユニット25は、例えば同様に構成される。磁石ユニット25は、2つの変位増幅磁石27と、2つの制限部材28と、ヨーク31と、コイル32と、抵抗器33と、を備える。
2つの変位増幅磁石27は、例えば永久磁石である。2つの変位増幅磁石27の端部の磁極は、互いに平行に向けられる。2つの変位増幅磁石27の磁極は、主ロープ8の第1位置P1に向けられる。2つの変位増幅磁石27は、上下に並ぶ。2つの変位増幅磁石27の磁極は、反平行に向けられる。
2つの制限部材28は、非磁性体である。2つの制限部材28は、上下に並ぶ。上側の制限部材28は、上側の変位増幅磁石27に対応する。下側の制限部材28は、下側の変位増幅磁石27に対応する。制限部材28は、対応する変位増幅磁石27の、主ロープ8に向けられた磁極に設けられる。制限部材28は、対応する変位増幅磁石27の端部の磁極と主ロープ8との間に配置される。なお、可動ユニット22および固定ユニット29において、制限部材28の厚さは互いに異なっていてもよい。
ヨーク31は、2つの変位増幅磁石27の主ロープ8から遠い側の磁極にわたって設けられる。コイル32は、ヨーク31に巻きつけられる。抵抗器33は、コイル32に電気的に接続される。
可動ユニット22および固定ユニット29の磁石ユニット25が主ロープ8の変位を増幅させるときに、主ロープ8の変位の変化によって、ヨーク31の内部を通る磁束が変化する。ヨーク31の内部を通る磁束は、コイル32を貫く磁束である。このため、主ロープ8の変位の変化によって、電磁誘導現象によってコイル32に起電力が生じる。コイル32に生じた起電力によって、抵抗器33に電流が流れる。抵抗器33に流れる電流のエネルギーは、ジュール熱として散逸する。このため、主ロープ8の振動のエネルギーは、ヨーク31、コイル32、および抵抗器33によって熱エネルギーに変換されて消費される。これにより、主ロープ8の磁石ユニット25が向けられる位置の変位は減衰する。すなわち、ヨーク31、コイル32、および抵抗器33の組は、減衰器の例である。
このように、制振装置20は、減衰器を備える。減衰器は、索条体の第1位置P1の振動を減衰させる。索条体の第1位置P1の変位は、第1ユニットなどによって増幅されている。減衰器は、変位が増幅された部分の振動を減衰させるので、制振装置20による索条体の制振がより効果的に行われる。
続いて、図13から図15を用いて、実施の形態2の他の変形例を説明する。
図13から図15は、実施の形態2の変形例に係る制振装置の構成図である。
図13において、制振装置20の斜視図が示される。この例において、エレベーター1のかご9は、複数の主ロープ8によって吊られている。複数の主ロープ8は、拘束部材34によって束ねられる。拘束部材34は、複数の主ロープ8の間の水平方向の位置を一定に保つ部材である。拘束部材34は、例えば複数の主ロープ8の各々に固定されるブロック状の部材である。拘束部材34は、主ロープ8を第1位置P1において束ねる。束ねられた複数の主ロープ8および拘束部材34は、エレベーター1の索条体の例である。拘束部材34は、例えば強磁性体で形成される。このとき、主ロープ8は、強磁性を有していなくてもよい。
この例において、制振装置20は、索条体のz軸方向の振動を抑制する。なお、制振装置20は、索条体の、y軸方向を含むyz平面内の他の方向の振動を抑制するように配置されてもよい。制振装置20は、かご9の上部に設けられる。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、4つの固定ユニット29と、を備える。
一対の可動ユニット22は、索条体に関して互いに対称に配置される。一方の可動ユニット22は、索条体よりz軸方向の正の側に配置される。他方の可動ユニット22は、索条体よりz軸方向の負の側に配置される。一対の可動ユニット22の各々は、索条体の拘束部材34に向けて配置される。
一対のストッパー23の各々は、例えば支持台21に固定される。一対のストッパー23は、索条体に関して互いに対称に配置される。一方のストッパー23は、索条体よりz軸方向の正の側に配置される。他方のストッパー23は、索条体よりz軸方向の負の側に配置される。y軸方向の正の側のストッパー23は、z軸方向の正の側の可動ユニット22に対応する。z軸方向の負の側のストッパー23は、z軸方向の負の側の可動ユニット22に対応する。
図14において、上方から見た制振装置20が示される。4つの固定ユニット29は、索条体の振動面であるxz平面に関して対称に配置される。4つの固定ユニット29は、索条体の振動の対称面であるxy平面に関して対称に配置される。z軸方向の正の側に配置される2つの固定ユニット29は、z軸方向の正の側の可動ユニット22をy軸方向の両側から挟むように配置される。z軸方向の負の側に配置される2つの固定ユニット29は、z軸方向の負の側の可動ユニット22をy軸方向の両側から挟むように配置される。4つの固定ユニット29の各々は、索条体の拘束部材34に向けて配置される。4つの固定ユニット29の各々は、索条体の平衡位置19から第4距離d4の位置に配置される。第4距離d4は、制振装置20に必要な制振性能に基づいて予め設定される距離である。第4距離d4は、第1距離d1より長い距離である。4つの固定ユニット29の各々は、第4ユニットの例である。第4ユニットの磁石ユニット25の変位増幅磁石27は、第4変位増幅器の例である。当該磁石ユニット25の制限部材28は、第4制限部材の例である。
図15において、上方から見た制振装置20が示される。複数の主ロープ8が振動するときに、拘束部材34は、複数の主ロープ8の間の水平方向の位置を一定に保つ。このため、複数の主ロープ8および拘束部材34は、索条体として一体に振動する。制振装置20の可動ユニット22および固定ユニット29は、拘束部材34を介して索条体に負の復元力を作用させる。拘束部材34が可動ユニット22の制限部材28に接触するときに、可動ユニット22は、索条体とともに移動する。このとき、可動ユニット22は、負の復元力を索条体に作用させない。
このように、制振装置20は、第4ユニットを備える。第4ユニットは、平衡位置19から第4距離d4の位置に設けられる。第4距離d4は、第1距離d1より長い距離である。第4ユニットは、第4変位増幅器と、第4制限部材と、を備える。第4変位増幅器は、索条体の長手方向の第1位置P1に向けて配置される。第4変位増幅器は、索条体が近づくほど強くなる引力によって索条体の振動の変位を増幅する。第4制限部材は、索条体が予め設定された距離より第4変位増幅器に近づくことを抑制する。
これにより、索条体が第1ユニットの第1制限部材に接触した後においても、制振装置20は、第4ユニットによって索条体の変位を増幅できる。また、索条体の変位の可動域は、単一の固定ユニット29によって制振を行う場合より広くなる。また、第4ユニットは、第1ユニットと同じ高さに配置されるため、制振装置20の他の機器と干渉しにくい。
続いて、図16を用いて、実施の形態2の他の変形例を説明する。
図16は、実施の形態2の変形例に係る制振装置の構成図である。
図16において、上方から見た制振装置20が示される。制振装置20は、一対の可動ユニット22に加え、索条体の平衡位置19から遠い位置に配置される追加の可動ユニット22aをさらに備えてもよい。例えば、制振装置20は、索条体の中心線を含む面内に配置される一対の主の可動ユニット22と、一対の主の可動ユニット22の各々をy軸方向の両側から挟むように配置される4つの副の可動ユニット22aと、を備える。また、制振装置20は、主の可動ユニット22に対応するストッパー23と、副の可動ユニット22に対応するストッパー23aと、を備える。制振装置20は、主の可動ユニット22および副の可動ユニット22aをy軸方向の両側から挟むように配置される4つの固定ユニット29を備えてもよい。
副の可動ユニット22aの磁石ユニット25は、主の可動ユニット22の磁石ユニット25と同様に構成される。副の可動ユニット22aに対応するストッパー23aは、対応する可動ユニット22aが主ロープ8の平衡位置19から第5距離d5より近くに移動することを制限する。第5距離d5は、制振装置20に必要な制振性能に基づいて予め設定される距離である。第5距離d5は、例えば第4距離d4と同様に設定される。副の可動ユニット22aは、第5ユニットの例である。第5ユニットに対応するストッパー23aは、第5ストッパーの例である。第5ユニットの磁石ユニット25の変位増幅磁石27は、第5変位増幅器の例である。当該磁石ユニット25の制限部材28は、第5制限部材の例である。
このように、制振装置20は、第5ユニットと、第5ストッパーと、を備える。第5ユニットは、平衡位置19からの距離が変わる方向の移動が可能な部分である。第5ストッパーは、索条体の振動の平衡位置19から第5距離d5より近くへの第5ユニットの移動を制限する。第5距離d5は、第1距離d1より長い距離である。第5ユニットは、第5変位増幅器と、第5制限部材と、を備える。第5変位増幅器は、索条体の長手方向の第1位置P1に向けて配置される。第5変位増幅器は、索条体が近づくほど強くなる引力によって索条体の振動の変位を増幅する。第5制限部材は、索条体が予め設定された距離より第5変位増幅器に近づくことを抑制する。
これにより、索条体が第1ユニットの第1制限部材に接触した後においても、制振装置20は、第5ユニットによって索条体の変位を増幅できる。また、索条体が第5制限部材に接触するときに、第5ユニットは、索条体とともに移動できる。これにより、索条体の可動域がより広くなる。したがって、制振装置20は、索条体をより効果的に制振できるようになる。また、第5ユニットは、第1ユニットと同じ高さに配置されるため、制振装置20の他の機器と干渉しにくい。
なお、制振装置20は、第2ユニットから第5ユニットまでの各々のユニットの一部または全部を第1ユニットに組み合わせてもよい。第1ユニットから第5ユニットまでの各々のユニットの磁石ユニット25は、互いに異なる構成であってもよい。第1ユニットから第5ユニットまでの各々のユニットの磁石ユニット25は、互いに同様の構成であってもよい。第1変位増幅器から第5変位増幅器までの各々の変位増幅器の全部または一部は、例えば不安定性を有する機械的な機構、または静電気力などの磁力以外の力によって索条体の変位を増幅してもよい。
実施の形態3.
実施の形態3において、実施の形態1または実施の形態2で開示される例と相違する点について特に詳しく説明する。実施の形態3で説明しない特徴については、実施の形態1または実施の形態2で開示される例のいずれの特徴が採用されてもよい。
図17は、実施の形態3に係る制振装置の構成図である。
図17において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。この例において、制振装置20は、主ロープ8のy軸方向の振動を抑制する。なお、制振装置20は、主ロープ8などの索条体の、z軸方向を含むyz平面内の他の方向の振動を抑制するように配置されてもよい。制振装置20は、かご9の上部に設けられる。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、一対の復帰バネ35と、を備える。
一方の復帰バネ35は、y軸方向の正の側の可動ユニット22に設けられる。他方の復帰バネ35は、y軸方向の負の側の可動ユニット22に設けられる。復帰バネ35は、ストッパー23に可動ユニット22を弾性力によって押し付けるように、圧縮された状態で可動ユニット22のストッパー23の反対側の端部に設けられる。復帰バネ35は、例えば支持台21を含むかご9の上部の構造物などに固定される。復帰バネ35は、復帰機構の例である。
主ロープ8が正の復元力によって平衡位置19に戻る過程において、可動ユニット22は、変位増幅磁石27と主ロープ8との間に作用する力によって、平衡位置19に近づく方向に移動する。このとき、復帰バネ35が設けられていなければ、可動ユニット22は、例えば摩擦抵抗などによってストッパー23に接触する前に静止する可能性がある。また、ストッパー23に衝突した反作用によって、可動ユニット22が平衡位置19から離れる方向に再び移動して静止する可能性がある。ストッパー23より平衡位置19から遠い位置に可動ユニット22が静止していると、変位増幅磁石27によって主ロープ8の変位が有効に増幅されない。このため、復帰バネ35は、平衡位置19に近づけるように可動ユニット22を弾性力によって押す。このため、ストッパー23より平衡位置19から遠い位置に可動ユニット22が静止することが抑制される。
以上に説明したように、実施の形態3に係る制振装置20は、復帰機構を備える。復帰機構は、第1ユニットが平衡位置19から第1距離d1より離れたときに第1ユニットを平衡位置19に近づける。復帰機構は、復帰バネ35である。復帰バネ35は、弾性力により第1ユニットを平衡位置19に近づける。これにより、摩擦などによって第1ユニットが平衡位置19から第1距離d1より離れた位置に静止することが抑えられる。このため、制振装置20による索条体の制振がより安定に行われる。
続いて、図18を用いて、実施の形態3の変形例を説明する。
図18は、実施の形態3の変形例に係る制振装置の構成図である。
図18において、z軸に平行な方向から見た制振装置20が示される。この例において、制振装置20は、主ロープ8のy軸方向の振動を抑制する。なお、制振装置20は、主ロープ8などの索条体の、z軸方向を含むyz平面内の他の方向の振動を抑制するように配置されてもよい。制振装置20は、かご9の上部に設けられる。制振装置20は、一対の可動ユニット22と、一対のストッパー23と、一対の復帰スロープ36と、を備える。
可動ユニット22の可動台車24の下面は、主ロープ8の平衡位置19に近い側が下がるように傾斜している。可動台車24の車輪26は、傾斜した下面に沿って傾いて配置される。
一対の復帰スロープ36の各々は、例えば支持台21の上面に固定される。あるいは、一対の復帰スロープ36の各々は、支持台21と一体に形成されていてもよい。一方の復帰スロープ36は、y軸方向の正の側の可動ユニット22の下方に設けられる。他方の復帰スロープ36は、y軸方向の負の側の可動ユニット22の下方に設けられる。復帰スロープ36は、可動ユニット22が自重によってストッパー23に向かう力を受けるように、平衡位置19に近い側が下がるように傾斜している。復帰スロープ36の傾斜面は、例えば可動台車24の下面と平行に設定される。復帰スロープ36は、復帰機構の例である。
復帰スロープ36によって、可動ユニット22は、自重の重力の平衡位置19に近づく方向の分力を受ける。このため、ストッパー23より平衡位置19から遠い位置に可動ユニット22が静止することが抑制される。
このように、制振装置20の復帰機構は、復帰スロープ36である。復帰スロープ36は、第1ユニットにかかる重力により第1ユニットを平衡位置19に近づける。これにより、摩擦などによって第1ユニットが平衡位置19から第1距離d1より離れた位置に静止することが抑えられる。このため、制振装置20による索条体の制振がより安定に行われる。