(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る導電膜形成方法を図1及び図2(a)~(f)を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の導電膜形成方法は、基材1上に導電膜2を形成する方法である。
図2(a)に示すように、先ず、銅微粒子分散液から成る液膜3が基材1上に成膜される。基材1は、導電膜を支持するための支持体であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)をフィルム状に成形したものである。基材1は、ソーダガラスを板状に成形したものであってもよい。
銅微粒子分散液は、銅微粒子31と、分散媒と、銅微粒子31を分散媒に分散させる分散剤とを有する。基材1上の液膜3は、例えば、印刷法で形成される。印刷法では、銅微粒子分散液が印刷用のインクとして用いられ、印刷装置によって基材1上に所定のパターンが印刷され、そのパターンの液膜3が形成される。
銅微粒子31は、メジアン径(D50)が1nm以上100nm未満のナノ粒子を含む。このため、この銅微粒子分散液は、銅ナノインクとも呼ばれる。銅微粒子分散液は、銅のナノ粒子(銅ナノ粒子)に加えて、μmオーダーの銅微粒子を含んでもよい。
分散媒は、銅微粒子31を分散する液体であり、例えば、プロトン性分散媒又は比誘電率が30以上の非プロトン性の極性分散媒である。
プロトン性分散媒は、1個のヒドロキシル基を有する炭素数が5以上30以下の直鎖又は分岐鎖状のアルキル化合物もしくはアルケニル化合物である。このプロトン性分散媒は、1個以上10個以下のエーテル結合を有してもよく、1個以上5個以下のカルボニル基を有してもよい。
このようなプロトン性分散媒としては、例えば、3-メトキシ-3-メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、2-オクタノール、等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、プロトン性分散媒は、2個以上6個以下のヒドロキシル基を有する炭素数が2以上30以下の直鎖又は分岐鎖状のアルキル化合物もしくはアルケニル化合物であってもよい。このプロトン性分散媒は、1個以上10個以下のエーテル結合を有してもよく、1個以上5個以下のカルボニル基を有してもよい。
このようなプロトン性分散媒としては、例えば、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられるが、これらに限定されない。
比誘電率が30以上の非プロトン性極性分散媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルフォスフォラミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ニトロベンゼン、N、N-ジエチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、フルフラール、γ-ブチロラクトン、エチレンスルファイト、スルホラン、ジメチルスルホキシド、スクシノニトリル、エチレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの極性分散媒は、1種類を単独で用いても、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。
分散剤は、有機物であり、少なくとも1個の酸性官能基を有する有機化合物又はその塩である。分散剤の酸性官能基は、酸性、すなわち、プロトン供与性を有する官能基であり、例えば、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、硫酸基及びカルボキシル基である。分散媒の分子量は、望ましくは、200以上100000以下である。
1種類の分散剤を単独で用いても、2種類以上の分散剤を混合して用いてもよい。なお、銅微粒子分散液が粘度の高いペーストの場合、分散剤の必要性は低くなるが、そのような場合にも分散剤は用いられる。
そして、図2(b)に示すように、液膜3が乾燥され、膜状の凝集体4(乾燥凝集体)が基材1上に形成される。例えば、液膜3を有する基材1を温める又は、液膜3に温風を当てる等によって基材1上の液膜3が乾燥される。
そして、図2(c)に示すように、基材1上の凝集体4が前処理液5に浸漬される。
前処理液5は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有する。
そして、図2(d)に示すように、基材1上の凝集体4が前処理液5から取り出され、図2(e)に示すように、その凝集体4上の液体51が除去される。液体51の成分は、主に前処理液5である。本実施形態では、基材1上の凝集体4に空気流を当てることによって、凝集体4上の液体51が除去される。凝集体4に窒素ガスを噴出して液体51を除去してもよい。なお、液体51を乾燥しても、液体51中の水分が蒸発するだけであるので、液体51を除去したことにはならない。液体51が、凝集体4が形成されていない基材1の裏面に付着していても構わない。
そして、基材1上の凝集体4が焼成され、図2(f)に示すように、導電膜2が形成される(焼成工程)。この焼成工程において、凝集体4は、光が照射され、光焼成される。光焼成は、大気下、室温で行われる。光焼成に用いられる光源は、例えば、キセノンランプである。光源にレーザー装置を用いてもよい。光焼成において、凝集体4内の銅微粒子31がネッキング(粒子間結合)するとともに、基材1に密着する。
なお、焼成工程において、凝集体4を熱焼成してもよい。熱焼成において、基材1上の凝集体4は、不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で加熱される。例えば、凝集体4は、炉内において、窒素雰囲気下で昇温されて熱焼成される。熱焼成において、凝集体4内の銅微粒子31がネッキング(粒子間結合)するとともに、基材1に密着する。
凝集体4を焼成するエネルギーは、基材1を損傷しないように設定される。本実施形態の導電膜形成方法では、前処理液5を用いた工程(前処理工程)を有することによって、凝集体4の焼成が促進され、その工程が無い場合よりも小さなエネルギーで基材1上の凝集体4が焼成され、基材1上に導電膜2が形成される。
本実施形態の導電膜形成方法における凝集体4の焼成の促進について説明する。銅微粒子分散液中の分散剤のうち、銅微粒子31の表面に結合しているものは一部であり、大部分は、分散媒中で粒子凝集に対する立体障害として銅微粒子31の分散に寄与している(図2(a)参照)。
銅微粒子分散液から成る液膜3を乾燥すると、液膜3中の分散媒が蒸発し、銅微粒子31と分散剤が基材1上に残る。凝集体4の銅微粒子31は、有機物である分散剤によって基材1に付着する(図2(b)参照)。
基材1への付着に寄与しない分散剤、すなわち、分散媒中で立体障害として分散に寄与していた大部分の分散剤は、凝集体4において不要であり、凝集体4の焼成を妨げ、形成される導電膜に残存して電気抵抗を高くする。
一方、銅微粒子31の表面に結合している分散剤は、その酸性官能基によって、水で洗っても銅微粒子31から流れ出さない程度には結合している。また、有機物である分散剤の酸性官能基以外の部分は、疎水性寄りであるので、分散剤を水で洗っても流れ出さないことに寄与している。なお、有機物である分散剤は、有機溶剤であるアセトンやアルコールで洗うと流れ出す。
膜状の凝集体4が、通常の取扱い操作程度では基材1から剥がれないのは、凝集体4に分散剤が残されているためである。このため、基材1上の凝集体4の焼成を促進するには、銅微粒子31の表面に結合している分散剤をなるべく残し、それ以外の分散剤をできるだけ洗い流せば、途中の工程で基材1上の凝集体4が剥がれず、凝集体4の焼成が促進される。
分散剤は、酸性官能基を有する有機物であるので、それを洗い流すには、酸又は塩基性化合物の水溶液に凝集体4を浸漬するという選択肢があり得る。しかし、強酸や塩基性化合物を用いると、銅微粒子31の表面に結合している分散剤も取れてしまうことが実験により判った。例えば、希硫酸を用いると、銅微粒子31が基材1から剥がれないように、凝集体4を浸漬する時間をコントロールすることが難しい。また、アミン等の弱アルカリを用いると、導電膜2中に残存して腐食を促進する事例があった。本願の発明者は、数多くの実験を行うことによって、ちょうどいい酸を見出した。それが、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸である。
前処理液5におけるその酸の濃度及び、凝集体4を前処理液5に浸漬する時間は、基材1上の凝集体4の銅微粒子31の表面に結合している分散剤をなるべく残し、それ以外の分散剤を洗い流すように設定することが望ましい。前処理液5の溶質をクエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸から選択すると、そのような設定が容易となる。
基材1上に形成された凝集体4において、銅微粒子31は、銅微粒子分散液に含まれる分散剤に覆われている。焼成エネルギーが十分に大きい場合には、銅微粒子31を覆う分散剤は、焼成エネルギーによって分解される。しかし、焼成エネルギーを小さく抑えた場合、銅微粒子31を覆う分散剤は、焼成エネルギーによって分解されず、銅微粒子31の焼成を妨げる。
基材1上の凝集体4が前処理液5に浸漬された後、凝集体4には液体51が付着している(図2(d)参照)。その液体51は、凝集体4から流れ出した分散剤を含んだ前処理液5である。そして、その凝集体4上の液体51が除去される(図2(e)参照)。すなわち、前処理液5とともに分散剤が除去される。
第1の実施形態に係る導電膜形成方法によれば、凝集体4に含まれ、基材1への付着に寄与しない分散剤が、前処理液5を用いて除去されるので、凝集体4の銅微粒子31が分散剤によって焼成を妨げられることが軽減され、凝集体4の焼成が促進され、前処理液5を用いない場合よりも小さな焼成エネルギーで基材1上に電気抵抗が低い導電膜2を形成することができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る導電膜形成方法を図1及び図3(a)~(g)を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の導電膜形成方法は、基材1上に導電膜2を形成する方法である。本実施形態の導電膜形成方法は、第1の実施形態と同様の工程を有し、基材1上の凝集体4を前処理液5に浸漬する工程の後に、その凝集体4を水に浸漬する工程をさらに有する。本実施形態において、第1の実施形態と同等の箇所には同じ符号を付している。以下の説明において、第1の実施形態と同様の工程の詳細な説明は省略する。
図3(a)に示すように、先ず、銅微粒子分散液から成る液膜3が基材1上に成膜される。
銅微粒子分散液は、銅微粒子31と、分散媒と、銅微粒子31を分散媒に分散させる分散剤とを有する。
分散剤は、少なくとも1個の酸性官能基を有する有機化合物又はその塩である。
そして、図3(b)に示すように、液膜3が乾燥され、膜状の凝集体4(乾燥凝集体)が基材1上に形成される。
そして、図3(c)に示すように、基材1上の凝集体4が前処理液5に浸漬される。
前処理液5は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有する。
そして、図3(d)に示すように、基材1上の凝集体4が水6に浸漬される。
そして、図3(e)に示すように、基材1上の凝集体4が水6から取り出され、図3(f)に示すように、その凝集体4上の液体61が除去される。液体61の成分は、ほぼ水6である。本実施形態では、基材1上の凝集体4に空気流を当てることによって、凝集体4上の液体61が除去される。凝集体4に窒素ガスを噴出して液体61を除去してもよい。なお、液体61を乾燥しても、液体61中の水分が蒸発するだけであるので、液体61を除去したことにはならない。
そして、基材1上の凝集体4が焼成され、図3(g)に示すように、導電膜2が形成される(焼成工程)。
凝集体4を焼成するエネルギーは、基材1を損傷しないように設定される。本実施形態の導電膜形成方法では、前処理液5及び水6を用いた工程を有することによって、凝集体4の焼成が促進され、それらの工程が無い場合よりも小さなエネルギーで基材1上の凝集体4が焼成され、基材1上に導電膜2が形成される。
本実施形態の導電膜形成方法における凝集体4の焼成の促進について説明する。本実施形態は、基材1上の凝集体4を前処理液5に浸漬する工程までは、第1の実施形態と同じである(図3(a)~(c)参照)。基材1上の凝集体4が前処理液5に浸漬された後、凝集体4には前処理液5が付着している。その前処理液5には、凝集体4から流れ出した分散剤を含んでいる。そして、前処理液5が付着した凝集体4が水6に浸漬される(図3(d)参照)。凝集体4に付着していた前処理液5及び前処理液5に含まれていた分散剤は、水6の中に拡散する。そして、基材1上の凝集体4が水6から取り出され(図3(e)参照)、その凝集体4上の液体61が除去される(図3(f)参照)。すなわち、前処理液5に浸漬された凝集体4が、水6によって洗われる。
第2の実施形態に係る導電膜形成方法によれば、凝集体4に含まれ、基材1への付着に寄与しない分散剤が、前処理液5及び水6を用いて除去されるので、凝集体4の銅微粒子31が分散剤によって焼成を妨げられることが軽減され、凝集体4の焼成が促進され、前処理液5及び水6を用いない場合よりも小さな焼成エネルギーで基材1上に電気抵抗が低い導電膜2を形成することができる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る導電膜形成方法を図1及び図4(a)~(g)を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の導電膜形成方法は、基材1上に導電膜2を形成する方法である。本実施形態の導電膜形成方法は、第1の実施形態と同様の工程を有し、2種類の前処理液を用いて2段階の前処理を行う点が相違する。本実施形態において、第1の実施形態と同等の箇所には同じ符号を付している。以下の説明において、第1の実施形態と同様の工程の詳細な説明は省略する。
図4(a)に示すように、先ず、銅微粒子分散液から成る液膜3が基材1上に成膜される。
銅微粒子分散液は、銅微粒子31と、分散媒と、銅微粒子31を分散媒に分散させる分散剤とを有する。
分散剤は、少なくとも1個の酸性官能基を有する有機化合物又はその塩である。
そして、図4(b)に示すように、液膜3が乾燥され、膜状の凝集体4(乾燥凝集体)が基材1上に形成される。
そして、図4(c)に示すように、基材1上の凝集体4が第1前処理液5に浸漬される。
第1前処理液5は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有する。
そして、図4(d)に示すように、基材1上の凝集体4が第2前処理液7に浸漬される。
第2前処理液7は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有し、その溶質が第1前処理液5の溶質と異なる。すなわち、第2前処理液7の溶質の選択肢は、第1前処理液5と同じ選択肢を含み、溶質の選択が第1前処理液5と異なる。なお、第2前処理液7の溶質の選択肢に、ホルムアルデヒドを加えてもよい。
そして、図4(e)に示すように、基材1上の凝集体4が第2前処理液7から取り出され、図4(f)に示すように、その凝集体4上の液体71が除去される。液体71の成分は、ほぼ第2前処理液7である。本実施形態では、基材1上の凝集体4に空気流を当てることによって、凝集体4上の液体71が除去される。凝集体4に窒素ガスを噴出して液体71を除去してもよい。なお、液体71を乾燥しても、液体71中の水分が蒸発するだけであるので、液体71を除去したことにはならない。
そして、基材1上の凝集体4が焼成され、図4(g)に示すように、導電膜2が形成される(焼成工程)。
凝集体4を焼成するエネルギーは、基材1を損傷しないように設定される。本実施形態の導電膜形成方法では、第1前処理液5及び第2前処理液7を用いた工程を有することによって、凝集体4の焼成が促進され、それらの工程が無い場合よりも小さなエネルギーで基材1上の凝集体4が焼成され、基材1上に導電膜2が形成される。
本実施形態の導電膜形成方法における凝集体4の焼成の促進について説明する。本実施形態は、基材1上の凝集体4を第1前処理液5に浸漬する工程までは、第1の実施形態と同じである(図4(a)~(c)参照)。基材1上の凝集体4が第1前処理液5に浸漬された後、凝集体4には第1前処理液5が付着している。その第1前処理液5には、凝集体4から流れ出した分散剤を含んでいる。そして、第1前処理液5が付着した凝集体4が第2前処理液7に浸漬される(図4(d)参照)。凝集体4に付着していた第1前処理液5及び第1前処理液5に含まれていた分散剤は、第2前処理液7の中に拡散する。また、凝集体4に残り、基材1への付着に寄与しない分散剤が、第2前処理液7に流れ出す。そして、基材1上の凝集体4が第2前処理液7から取り出され(図4(e)参照)、その凝集体4上の液体71が除去される(図4(f)参照)。
第3の実施形態に係る導電膜形成方法によれば、凝集体4に含まれ、基材1への付着に寄与しない分散剤が、第1前処理液5及び第2前処理液7を用いて除去されるので、凝集体4の銅微粒子31が分散剤によって焼成を妨げられることが軽減され、凝集体4の焼成が促進され、第1前処理液5及び第2前処理液7を用いない場合よりも小さな焼成エネルギーで基材1上に電気抵抗が低い導電膜2を形成することができる。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る導電膜形成方法を図1及び図5(a)~(h)を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の導電膜形成方法は、基材1上に導電膜2を形成する方法である。本実施形態の導電膜形成方法は、第3の実施形態と同様の工程を有し、2段階の前処理の後に、凝集体4を水に浸漬する工程をさらに有する。本実施形態において、第3の実施形態と同等の箇所には同じ符号を付している。以下の説明において、第3の実施形態と同様の工程の詳細な説明は省略する。
図5(a)に示すように、先ず、銅微粒子分散液から成る液膜3が基材1上に成膜される。
銅微粒子分散液は、銅微粒子31と、分散媒と、銅微粒子31を分散媒に分散させる分散剤とを有する。
分散剤は、少なくとも1個の酸性官能基を有する有機化合物又はその塩である。
そして、図5(b)に示すように、液膜3が乾燥され、膜状の凝集体4(乾燥凝集体)が基材1上に形成される。
そして、図5(c)に示すように、基材1上の凝集体4が第1前処理液5に浸漬される。
第1前処理液5は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有する。
そして、図5(d)に示すように、基材1上の凝集体4が第2前処理液7に浸漬される。
第2前処理液7は、分散剤を溶解する水溶液であり、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸ジヒドラジド及びp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される1つ又は複数の酸を溶質として含有し、その溶質が第1前処理液5の溶質と異なる。すなわち、第2前処理液7の溶質の選択肢は、第1前処理液5と同じ選択肢を含み、溶質の選択が第1前処理液5と異なる。なお、第2前処理液7の溶質の選択肢に、ホルムアルデヒドを加えてもよい。
そして、図5(e)に示すように、基材1上の凝集体4が水6に浸漬される。
そして、図5(f)に示すように、基材1上の凝集体4が水6から取り出され、図5(g)に示すように、その凝集体4上の液体62が除去される。液体62の成分は、ほぼ水6である。本実施形態では、基材1上の凝集体4に空気流を当てることによって、凝集体4上の液体62が除去される。凝集体4に窒素ガスを噴出して液体62を除去してもよい。なお、液体62を乾燥しても、液体62中の水分が蒸発するだけであるので、液体62を除去したことにはならない。
そして、基材1上の凝集体4が焼成され、図5(h)に示すように、導電膜2が形成される(焼成工程)。
凝集体4を焼成するエネルギーは、基材1を損傷しないように設定される。本実施形態の導電膜形成方法では、第1前処理液5、第2前処理液7及び水6を用いた工程を有することによって、凝集体4の焼成が促進され、それらの工程が無い場合よりも小さなエネルギーで基材1上の凝集体4が焼成され、基材1上に導電膜2が形成される。
本実施形態の導電膜形成方法における凝集体4の焼成の促進について説明する。本実施形態は、基材1上の凝集体4を第2前処理液7に浸漬する工程までは、第3の実施形態と同じである(図5(a)~(d)参照)。基材1上の凝集体4が第2前処理液7に浸漬された後、凝集体4には第2前処理液7が付着している。その第2前処理液7には、凝集体4から流れ出した分散剤を含んでいる。そして、第2前処理液7が付着した凝集体4が水6に浸漬される(図5(e)参照)。凝集体4に付着していた第2前処理液7、第2前処理液に含まれていた分散剤は、水6の中に拡散する。そして、基材1上の凝集体4が水6から取り出され(図3(e)参照)、その凝集体4上の液体62が除去される(図3(f)参照)。すなわち、第2前処理液7に浸漬された凝集体4が、水6によって洗われる。
第4の実施形態に係る導電膜形成方法によれば、凝集体4に含まれ、基材1への付着に寄与しない分散剤が、第1前処理液5、第2前処理液7及び水6を用いて除去されるので、凝集体4の銅微粒子31が分散剤によって焼成を妨げられることが軽減され、凝集体4の焼成が促進され、第1前処理液5、第2前処理液7及び水6を用いない場合よりも小さな焼成エネルギーで基材1上に電気抵抗が低い導電膜2を形成することができる。
上述した第1の実施形態乃至第4の実施形態の選択、並びに前処理液(前処理液5、第1前処理液5及び第2前処理液7)の選択は、適宜に行われる。焼成エネルギーは、小さ過ぎると導電膜2が形成されず、大き過ぎると基材1を損傷する。導電膜2の電気抵抗は、焼成エネルギー、前処理液の種類、水に浸漬する工程の有無によって影響される。導電膜2の電気抵抗は、低いほうが良い。したがって、選択のための指標は、基材1に許容される焼成エネルギーに対する導電膜2の電気抵抗である。導電膜2に必要な導電性(電気抵抗の逆数)が得られる選択肢が複数ある場合、よりシンプルな工程(実施形態)が望ましい。なお、熱焼成の場合、焼成温度が高いほど、凝集体4に加えられる焼成エネルギーが大きく、光焼成の場合、照射エネルギーが大きいほど、凝集体4に加えられる焼成エネルギーが大きい。
本発明の実施例として、前処理液を用いた工程を有する導電膜形成方法を用いて基材上に導電膜を形成した。また、比較例として、前処理液を用いずに、実施例と同じ焼成エネルギー(焼成温度又は照射エネルギー)で基材上に導電膜が形成されるかどうかを試験した。
銅微粒子と、分散媒と、分散剤とを有する銅微粒子分散液(銅ナノインク)を作った。メジアン径(D50)が約40nmの銅微粒子(銅ナノ粒子)を用いた。銅微粒子の濃度は、40質量%(mass%)とした。分散媒には、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いた。分散媒は、銅微粒子分散液から成る液膜が乾燥されることによって凝集体に残らないので、凝集体の焼成に影響しない。分散剤は、銅微粒子の重量に対して8質量%添加した。分散剤には、リン酸エステル(ビックケミー(BYK-Chemie)社製、商品名「DISPERBYK(登録商標)-111」)を用いた。酸性官能基を有する分散剤は、酸を含有する前処理液に溶解するので、リン酸エステルに限定されない。基材として、30mm角、0.5mm厚のソーダガラスを用いた。
この基材に銅微粒子分散液をスピンコート法により塗布し、膜厚1.0μmの液膜を形成した。そして、その基材を80℃のホットプレートに載せ、液膜を乾燥して、膜状の凝集体を基材上に形成した。分散媒は蒸発し、凝集体は、銅微粒子と分散剤を有する。
前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。凝集体を有する基材を前処理液に15秒間浸漬した。
そして、凝集体を有する基材を前処理液から取り出して、水に10秒間浸漬した。そして、凝集体を有する基材を水から取り出して、凝集体に向けて窒素ガスを吹き付け、凝集体上の液体を除去した。
そして、基材上の凝集体を熱焼成した。その熱焼成には、赤外加熱式の炉を用いた。炉内に凝集体が形成された基材を入れ、窒素雰囲気で、250℃/分で昇温し、焼成温度を10分間保持した。焼成温度は、150℃、180℃、200℃の3条件とした。
いずれの焼成温度の場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。形成された導電膜のシート抵抗(電気抵抗)を四探針法で測定した。シート抵抗は、日本工業規格JIS C 5600:2006「電気技術基本用語」に規定されている。焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は79kΩ/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は7Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.4kΩ/□であった。焼成温度が高いほど、導電膜のシート抵抗が低かった。
前処理液として、2重量%のギ酸水溶液を用いた。前処理において、凝集体が形成された基材を前処理液に15秒間浸漬した。そして、凝集体を有する基材を前処理液から取り出して、凝集体に向けて窒素ガスを吹き付け、凝集体上の液体を除去した。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。
いずれの焼成温度の場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は48kΩ/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は17Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は36Ω/□であった。焼成温度が180℃と200℃の場合の導電膜のシート抵抗の差異は、ばらつきの範囲と推定される。焼成温度を200℃とするメリットが乏しいので、以下の一部の実施例において、焼成温度200℃の場合を省略した。
前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例2と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
いずれの焼成温度の場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は963Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は1.4Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は1.0Ω/□であった。焼成温度が180℃と200℃の場合の導電膜のシート抵抗の差異は、微差であった。焼成温度が180℃の場合、凝集体が十分に焼成されたと推定される。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のギ酸水溶液を用いた。前処理において、凝集体が形成された基材を第1前処理液に15秒間浸漬した。そして、凝集体を有する基材を第1前処理液から取り出して、第2前処理液に15秒間浸漬した。そして、凝集体を有する基材を第2前処理液から取り出して、凝集体に向けて窒素ガスを吹き付け、凝集体上の液体を除去した。それ以外の条件は、実施例2と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
いずれの焼成温度の場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は59Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は2Ω/□であった。実施例2(1段階の前処理)と比較して、2段階の前処理を行うことによって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例4と同じにした。
いずれの焼成温度の場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は2.3kΩ/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.8Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.7Ω/□であった。
前処理を1段階とした。前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のギ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例2と同じにした。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は6kΩ/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は26kΩ/□であった。焼成温度が150℃と180℃の場合の導電膜のシート抵抗の差異は、ばらつきの範囲と推定される。
前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例6と同じにした。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は1~400Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.7Ω/□であった。
前処理液として、0.7重量%のクエン酸、0.7重量%のギ酸、及び0.7重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例6と同じにした。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は3Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。
前処理液として、1重量%のギ酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例6と同じにした。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は2Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は7Ω/□であった。
実施例3と同様に、前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、実施例3と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は13Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は1.5Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.8Ω/□であった。実施例3と比較して、焼成温度が150℃の場合、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。焼成温度が180℃と200℃の場合、導電膜のシート抵抗は実施例3と同等であった。焼成温度が180℃と200℃の場合、水に浸漬する工程が無くても凝集体が十分に焼成されたためと推定される。
実施例6と同様に、前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のギ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、実施例6と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.7~7.6Ω/□であった。実施例6と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗の有意差は見られなかった。前処理液による効果が十分であったためと推定される。
実施例7と同様に、前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、実施例7と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は12Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.8Ω/□であった。焼成温度が200℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.5Ω/□であった。実施例7と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
実施例8と同様に、前処理液として、0.7重量%のクエン酸、0.7重量%のギ酸、及び0.7重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、実施例8と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は69Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。実施例8と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗の有意差は見られなかった。前処理液による効果が十分であったためと推定される。
実施例9と同様に、前処理液として、1重量%のギ酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、実施例9と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
焼成温度が150℃の場合、導電膜のシート抵抗は6Ω/□であった。焼成温度が180℃の場合、導電膜のシート抵抗は1.0Ω/□であった。実施例9と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗の有意差は見られなかった。前処理液による効果が十分であったためと推定される。
(比較例1)
前処理液に浸漬する工程、及び水に浸漬する工程をいずれも実施しなかった。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。焼成温度が150℃の場合、180℃の場合、200℃の場合、導電膜は形成されなかった。さらに焼成温度を高くすると、導電膜のシート抵抗は、250℃の場合、kΩ/□オーダー、300℃の場合、8~9Ω/□であった。前処理液を用いる工程を有しない場合、凝集体の焼成に高い温度、すなわち大きな焼成エネルギーが必要であることがわかった。
基材として、ソーダガラスに替えて、30mm角、50μm厚のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東レ製、商品名「ルミラー(登録商標)T60」)を用いた。この基材に銅微粒子分散液を塗布し、膜厚0.5μmの液膜を形成した。凝集体の焼成は、熱焼成に替えて、光焼成とした。光焼成には、光源としてキセノンフラッシュランプを用いた。照射時間は、1.0ms、照射エネルギーは、1.2J/cm2、1.4J/cm2、1.7J/cm2の3条件とした。それ以外の条件は、実施例1と同じにした。すなわち、前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用い、水に浸漬する工程も実施した。
いずれの照射エネルギーの場合も、導電膜(銅皮膜)が基材上に形成された。照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は30kΩ/□であった。照射エネルギーが1.4J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.4Ω/□であった。照射エネルギーが1.7J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.3Ω/□であった。
前処理液として、2重量%のギ酸水溶液を用いた。水に浸漬する工程は実施しなかった。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.6Ω/□であった。照射エネルギーが1.4J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.4Ω/□であった。
前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例16と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は80Ω/□であった。照射エネルギーが1.4J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.5Ω/□であった。照射エネルギーが1.7J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.4Ω/□であった。
前処理液として、2重量%のアジピン酸ジヒドラジド水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例16と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜が形成されなかった。すなわち、照射エネルギーが足りなかった。照射エネルギーが1.7J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は1.1Ω/□であった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のギ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例18と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は2.4Ω/□であった。実施例16(1段階の前処理)と比較して、2段階の前処理を行うことによって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例19と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は26Ω/□であった。実施例17(1段階の前処理)と比較して、2段階の前処理を行うことによって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のアジピン酸ジヒドラジド水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例19と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は48kΩ/□であった。実施例18(1段階の前処理)と比較して、1.2J/cm2という小さな照射エネルギーで導電膜が形成された。
前処理を1段階とした。前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のギ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例16と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は20kΩ/□であった。
前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、それ以外の条件は、実施例22と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は74kΩ/□であった。
前処理液として、0.7重量%のクエン酸、0.7重量%のギ酸、及び0.7重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例22と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は47kΩ/□であった。
前処理液として、1重量%のギ酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例22と同じにした。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は25kΩ/□であった。
実施例16と同様に、前処理液として、2重量%のギ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例16と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.8Ω/□であった。実施例16と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
実施例17と同様に、前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例17と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は1.2Ω/□であった。実施例17と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
2段階の前処理を行った。実施例20と同様に、第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のシュウ酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例20と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は23Ω/□であった。実施例20と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が若干低くなった。
前処理を1段階とした。実施例22と同様に、前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のギ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例22と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は7kΩ/□であった。実施例22と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
実施例23と同様に、前処理液として、1重量%のクエン酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例23と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は4Ω/□であった。実施例23と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
実施例24と同様に、前処理液として、0.7重量%のクエン酸、0.7重量%のギ酸、及び0.7重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例24と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。実施例24と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
実施例25と同様に、前処理液として、1重量%のギ酸及び1重量%のシュウ酸を混合した水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。すなわち、実施例25と異なり、水に浸漬する工程を実施した。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は0.9Ω/□であった。実施例25と比較して、水に浸漬する工程によって、導電膜のシート抵抗が低くなった。
前処理液として、2重量%のp-トルエンスルホン酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例16と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は580kΩ/□であった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のホルムアルデヒド水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例19と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は26kΩ/□であった。実施例19(第2前処理液がギ酸水溶液)及び実施例20(第2前処理液がシュウ酸水溶液)と比較して、導電膜のシート抵抗が高かった。
2段階の前処理を行った。第1前処理液として、2重量%のクエン酸水溶液を用いた。第2前処理液として、2重量%のp-トルエンスルホン酸水溶液を用いた。それ以外の条件は、実施例19と同じにした。すなわち、水に浸漬する工程は実施しなかった。
照射エネルギーが1.2J/cm2の場合、導電膜のシート抵抗は27kΩ/□であった。実施例19(第2前処理液がギ酸水溶液)及び実施例20(第2前処理液がシュウ酸水溶液)と比較して、導電膜のシート抵抗が高かった。
(比較例2)
前処理液に浸漬する工程、及び水に浸漬する工程をいずれも実施しなかった。それ以外の条件は、実施例15と同じにした。照射エネルギーが1.2J/cm2、1.4J/cm2、1.7J/cm2の場合、導電膜は形成されなかった。さらに照射エネルギーを大きくすると、2.0、J/cm2で基材であるPETフィルムに損傷が生じた。前処理液を用いる工程を有しない場合、PETフィルムを損傷しない小さなエネルギーでは凝集体を焼成することはできなかった。
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、第3の実施形態及び第4の実施形態において、前記第1前処理液から取り出した後、凝集体上の液体を除去してから第2前処理液に浸漬してもよい。また、基材上の凝集体を前処理液に浸漬する工程において、前処理液を凝集体に塗布又は噴霧等して凝集体を前処理液に浸漬された状態にしてもよい(第1前処理液、第2前処理液に関しても同様)。