以下、好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態におけるクッションパッド20が装着されたシートクッション10の左右方向中央の断面図である。図2は、図1のII部分を拡大して示したシートクッション10の拡大断面図である。図3は、図1のIII-III線におけるシートクッション10の切断部端面図である。なお、図1では紙面奥側に見えるシートクッション10の一部を省略している。図3では、シートクッション10の右側を拡大して示しているが、シートクッション10の左側も対称に形成されている。
図1から図3の矢印L,R,F,Bは、後述する着座面22aに平行な方向のうち、シートクッション10に着座した着座者2から見た左方、右方、前方、後方をそれぞれ示している。図1から図3の矢印X,Yは、着座面22aに垂直な方向のうち、シートクッション10に着座した着座者2から見た上方、下方をそれぞれ示している。
図1から図3に示すように、シートクッション10は、自動車に搭載されるシートのうち着座者2が着座する部分であり、左右対称に形成されている。このシートクッション10の後端には、着座者2の背中や腰を支持する背凭れとしてのシートバック(図示せず)が配置される。シートクッション10は、シートクッション10の基材としてのクッション体であるクッションパッド20と、クッションパッド20が取り付けられるフレーム11と、クッションパッド20を覆う表皮材18と、を備えている。
フレーム11は、シートクッション10を支持する金属や合成樹脂製の部材である。フレーム11は、前後方向に長い左右一対のサイドフレーム12と、左右一対のサイドフレーム12の前端部に架け渡されるフロントフレーム13と、左右一対のサイドフレーム12の後端部に架け渡される円筒状のリアフレーム14と、フロントフレーム13とリアフレーム14との間に架け渡される複数のクッションスプリング15と、を備えている。
フロントフレーム13は、前後方向および左右方向に長い板状の部材であり、前端部13a及び左右の側端部13bがそれぞれ下方を向くように、その前端部13a側および側端部13b側の一部を下方へ屈曲させている。フロントフレーム13には、前端部13aの前後方向内側や側端部13bの左右方向内側に、ワイヤ状の係合部16が固定されている。
表皮材18は、ファブリックや合成皮革、皮革等により形成される部材である。表皮材18は、縫い目などに固定されたフック等(図示せず)を、クッションパッド20内に埋設されるワイヤ等(図示せず)に引っ掛けることで、クッションパッド20に固定される。また、表皮材18は、前端縁や左右の側端縁に固定されたフック19をフレーム11に固定された係合部16に引っ掛けることで、フレーム11に固定される。
クッションパッド20は、弾力性に富んだ発泡合成樹脂成形体である軟質フォーム(例えば軟質ポリウレタンフォーム)製のパッド本体21と、パッド本体21の裏面23に一体化される布状の裏面材24と、を備えている。パッド本体21の表面22は、シートクッション10に着座者2が着座したときに着座者2に面する部位であり、表皮材18によって覆われる。パッド本体21の裏面23は、表面22とは反対側の面であり、フレーム11に密着して支持される部位である。
パッド本体21は、尻下部26と、腿下部27と、第1張出部28と、第1突出部29と、サイド部30と、第2張出部31と、第2突出部32と、を備え、これらの各部が一体成形されている。尻下部26、腿下部27及びサイド部30は、フレーム11の上に載せられて着座者2を主に支持するサポート部であり、各部の境界の表面22に溝33が形成されている。
図1及び図2に示すように、尻下部26は、着座者2の臀部3を下方(矢印D方向)から支持する部位であり、リアフレーム14及びクッションスプリング15により下方から支持される。尻下部26は、着座者2がシートクッション10に着座したときに、着座者2のヒップポイント6の直下(鉛直下方、図1紙面上下方向)に位置する平面状の着座面22aを備えている。着座面22aは、尻下部26の表面22の一部である。なお、ヒップポイント6は、JIS D4607:1994又はJIS D0024:1985(ISO 6549-1980に対応)に定められた三次元マネキン(人体模型)をシートクッション10に着座させた場合の三次元マネキンのH点(ヒップポイント、股関節に相当する点)である。
腿下部27は、着座者2の大腿部4を下方から支持する部位であり、尻下部26の前方(矢印F方向)に配置される。腿下部27は、フロントフレーム13により下方から支持される。第1張出部28は、腿下部27の前方の縁部から下方へ張り出す部位であり、フロントフレーム13の前方を覆っている。
第1張出部28は、前方を向く第1張出外面28aと、第1張出外面28aの下端縁から後方へ延びて下方を向く張出傾斜面(張出下面)28bと、後方を向く第1張出内面28cと、を備えている。第1張出外面28aは、表面22の一部であって着座者2の脹脛5に面する。第1張出外面28aは、下方へ向かうにつれて僅かに後方へ湾曲する滑らかな曲面状に形成されている。第1張出内面28cは、裏面23の一部であってフロントフレーム13に密着する。
第1突出部29は、第1張出部28の下端から後方へ突出する部位であり、腿下部27と上下方向に対向する。なお、第1張出内面28cの下端を着座面22aに垂直な方向へ延長した仮想面Aよりも前方側を第1張出部28とし、仮想面Aよりも後方側を第1突出部29とする。
第1突出部29は、第1張出外面28aから後方に最も離れた第1先端部29aと、張出傾斜面28bと第1先端部29aとを繋ぐ第1傾斜面29bと、フロントフレーム13の前端部13aに密着する第1引掛面29cと、第1引掛面29cと第1先端部29aとを繋ぐ第1凸面部29dと、を備えている。第1凸面部29dは、腿下部27側へ凸状に湾曲している。
ここで、着座者2がシートクッション10に着座するとき、尻下部26が大きく沈んで腿下部27が後方へ引っ張られ、フロントフレーム13に対して第1張出部28が上方へずれようとする。しかし、前端部13aに第1突出部29の第1引掛面29cが密着して引っ掛かるので、フロントフレーム13に対して第1張出部28をずれ難くできる。よって、第1突出部29を設けることで、第1張出部28のずれに起因して表皮材18にしわ等が発生することを抑制できる。
第1張出部28及び第1突出部29は、フック19を係合部16に引っ掛けた表皮材18によってフレーム11側へ大きく圧縮変形される。図1には、第1張出部28及び第1突出部29(パッド本体21)を圧縮していない状態(無圧縮状態)における第1張出外面28a、張出傾斜面28b及び第1傾斜面29bを二点鎖線で示している。なお、第1張出部28及び第1突出部29以外のパッド本体21の各部位も表皮材18によってフレーム11側へ圧縮されるが、その圧縮量が全体に亘って略均一であり、第1張出部28及び第1突出部29の圧縮量よりも少ないため、無圧縮状態の図示を省略している。
無圧縮状態における第1張出外面28aと張出傾斜面28bとの稜28d(第1張出外面28aの下端縁)がフレーム11から離れた位置にある程、表皮材18によって圧縮された第1張出部28及び第1突出部29の圧縮量を多くできる。この圧縮量が多い程、フック19をフレーム11から離れる方向へ引っ張ることができ、フック19を係合部16から外れ難くできる。
着座面22aが上方を向いた無圧縮状態において、第1傾斜面29b及び張出傾斜面28bは、稜28dへ向かうにつれて下方へ傾斜する。これにより、稜28dを下方へ大きく張り出させ易くできる。その結果、表皮材18による第1張出部28及び第1突出部29の圧縮量を多くできるので、フック19を係合部16から外れ難くできる。
無圧縮状態の第1先端部29aは、左右方向に垂直な断面において着座面22aと略垂直に形成されている。無圧縮状態において、第1先端部29aと仮想面A(第1張出内面28c)との前後方向の距離L1は、仮想面A上の第1突出部29の上下寸法(第1張出内面28cの下端から第1傾斜面29bまでの仮想面A上の距離)L2以下である。
図1及び図3に示すように、サイド部30は、着座者2の臀部3や大腿部4を左右方向外側から支持する部位であり、尻下部26及び腿下部27の左右方向両側にそれぞれ配置される。サイド部30は、フロントフレーム13及びサイドフレーム12により下方から支持される。サイド部30は、尻下部26や腿下部27に対して上方へ張り出している。
第2張出部31は、サイド部30の左右方向外側の縁部から下方へ張り出す部位であり、フロントフレーム13の左右方向外側を覆っている。第2張出部31は、左右方向外側を向く第2張出外面31aと、第2張出外面31aの下端縁から左右方向内側へ延びて下方を向く張出下面31bと、左右方向内側を向く第2張出内面31cと、を備えている。
第2張出外面31aは、表面22の一部である。第2張出外面31aには、左右方向内側へ向かって切り込まれたスリット31eが形成されている。第2張出内面31cは、裏面23の一部であってフロントフレーム13に密着する。
なお、第2張出外面31aと張出下面31bとの稜31d(第2張出外面31aの下端縁)は、無圧縮状態において角張るが、表皮材18によって圧縮されて丸みを帯びる。図示の都合上、図2には稜31dが角張った状態を示している。
第2突出部32は、第2張出部31の下端から左右方向内側へ突出する部位であり、サイド部30と上下方向に対向する。なお、第2張出内面31cの下端を着座面22aに垂直な方向へ延長した仮想面Bよりも左右方向外側を第2張出部31とし、仮想面Bよりも左右方向内側を第2突出部32とする。
第2突出部32は、第2張出外面31aから左右方向内側に最も離れた第2先端部32aと、張出下面31bと第2先端部32aとを繋ぐ第2傾斜面32bと、フロントフレーム13の側端部13bに密着する第2引掛面32cと、第2引掛面32cと第2先端部32aとを繋ぐ第2凸面部32dと、を備えている。第2凸面部32dは、サイド部30側へ凸状に湾曲している。第2引掛面32cを左右方向外側へ延長した部分にスリット31eが位置する。
第1突出部29と同様に、着座者2がシートクッション10に着座してサイド部30が左右方向内側へ引っ張られても、側端部13bに第2突出部32の第2引掛面32cが密着して引っ掛かるので、フロントフレーム13に対して第2張出部31が上方へずれることを抑制できる。よって、第2突出部32を設けることで、第2張出部31のずれに起因して表皮材18にしわ等が発生することを抑制できる。
着座面22aが上方を向いた無圧縮状態において、第2傾斜面32bは、稜31dへ向かうにつれて下方へ傾斜する。無圧縮状態における張出下面31bは、前後方向に垂直な断面において着座面22aと略平行に形成されている。これにより、第1張出部28と比較して、表皮材18による第2張出部31の圧縮量を少なくできるので、表皮材18を張出下面31bに沿わせて装着させ易くできる。
無圧縮状態の第2先端部32aは、左右方向に垂直な断面において着座面22aと略垂直に形成されている。無圧縮状態において、第2先端部32aと仮想面B(第2張出内面31c)との左右方向の距離L3は、仮想面B上の第2突出部32の上下寸法(第2張出内面31cの下端から第2傾斜面32bまでの仮想面B上の距離)L4以下である。
裏面材24は、複数の繊維から布状に形成される部材であり、フレーム11とクッションパッド20との擦れ合いによる異音の発生やクッションパッド20の破れ等を抑制するためのものである。本実施形態では、裏面材24は不織布からなる。なお、裏面材24は、不織布に限らず、粗毛布、寒冷紗、フェルト、織編物あるいはこれらの積層複合体等により形成しても良い。また、裏面材24には、合成樹脂や金属等のワイヤを織り込んだり接着したりしても良い。
裏面材24は、パッド本体21の裏面23の略全体に亘って配置されている。具体的に、尻下部26、腿下部27、第1張出部28、サイド部30及び第2張出部31の裏面23の略全体に配置されている。さらに、裏面材24の前端縁24aは、第1凸面部29dと第1張出内面28cとの間の第1引掛面29cに位置し、第1凸面部29dまで裏面材24が設けられていない。また、裏面材24の側端縁24bが第2張出内面31cの下端に位置し、第2引掛面32cまで裏面材24が設けられていない。
次に図4、図5(a)及び図5(b)を参照して、クッションパッド20を成形する成形型40について説明する。図4は、成形型40の切断部端面図である。図5(a)は図4の一部を拡大した成形型40の切断部端面図である。図5(b)は図4のVb-Vb線における成形型40の切断部端面図である。
なお、図4から図5(b)の矢印L,R,F,B,X,Yは、成形型40によりクッションパッド20を形成したときの図1から図3の矢印L,R,F,B,X,Yにそれぞれ対応する。図5(b)では、成形型40の左側を拡大して示しているが、成形型40の右側も対称に形成されている。
図4に示すように、成形型40は、クッションパッド20を成形する金型であり、左右対称に形成されている。成形型40は、下型41と上型43とを備えている。下型41には、クッションパッド20の表面22を主に成形する下成形面42が設けられている。上型43には、クッションパッド20の裏面23を主に成形する上成形面44が設けられている。下型41の上(矢印Y方向)に上型43を載せて型閉めすることで、下成形面42と上成形面44との間にキャビティ45が形成され、下型41と上型43との合わせ面がパーティング面46となる。なお、下成形面42や上成形面44の各部は、その各部によって成形される無荷重状態のパッド本体21の形状と同一であるため、その各部の形状の説明を一部省略する。
下成形面42は、キャビティ45のうち下面と外周壁面とを主に形成する部位である。下成形面42は、尻下部26の着座面22aを成形する平面状の着座成形面42aと、第1張出部28の第1張出外面28aを成形する第1外壁面42bと、第2張出部31の第2張出外面31aを成形する第2外壁面42cと、を備えている。
着座成形面42aは、パッド本体21の発泡成形時に、上方を向いて略水平に設定される。この略水平とは、水平面に対する着座成形面42aの傾きが10°以下であることを示す。着座成形面42aを下型41に設けて上方に向けつつ略水平にし、下型41と上型43とを型締めした状態を、基本成形状態とする。以下、基本成形状態における成形型40の各部について説明する。また、基本成形状態では、図4から図5(b)の矢印Xが鉛直下方であり、矢印Yは鉛直上方であり、矢印L,R,F,Bが水平方向である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、第1外壁面42bは、水平方向のうち前方(矢印F方向)の壁面を構成する部位である。第2外壁面42cは、水平方向のうち左右方向(矢印L-R方向)の外側の壁面をそれぞれ構成する部位である。第1外壁面42b及び第2外壁面42cは、上方(矢印Y方向)へ立ち上がってパーティング面46まで設けられる。
第2外壁面42cから後方(矢印B方向)へ突出片47が突出している。突出片47は、第2張出外面31aにスリット31eを成形するための部位であり、前後方向に垂直な断面において着座成形面42aと略平行な板状に形成されている。
上成形面44は、キャビティ45のうち上面と内周壁面とを主に形成する部位である。上成形面44は、第1下内壁面44aと、第1上内壁面44bと、第1傾斜成形面(天井面の一部)44fと、張出傾斜成形面(天井面の一部)44gと、第2下内壁面44hと、第2上内壁面44iと、第2傾斜成形面(天井面の一部)44mと、張出下成形面(天井面の一部)44nと、を備えている。
第1下内壁面44aは、第1張出内面28cを成形する部位である。第1下内壁面44aは、第1外壁面42bの後方に配置されて第1外壁面42bと前後方向に対向し、左右方向に垂直な断面において着座成形面42aと略垂直に形成されている。第2下内壁面44hは、第2張出内面31cを成形する部位である。第2下内壁面44hは、第2外壁面42cの左右方向内側に配置されて第2外壁面42cと左右方向に対向し、前後方向に垂直な断面において着座成形面42aと略垂直に形成されている。
第1上内壁面44bは、第1先端部29aを主に形成する部位である。第1上内壁面44bは、第1下内壁面44aに対して後方へ凹むように第1下内壁面44aの上端に連なり、第1外壁面42bと前後方向に対向する。第1上内壁面44bは、第1外壁面42bやパーティング面46から後方に最も離れた上端44cと、第1下内壁面44aの上端から後方へ延びる第1引掛成形面44dと、第1引掛成形面44dの後端から上方へ湾曲する第1凸成形面44eと、を備えている。
第1引掛成形面44dは、第1引掛面29cを成形する平面状の部位であり、第1下内壁面44aと略垂直に形成されている。第1凸成形面44eは、第1凸面部29dを成形する部位であり、凹状に湾曲している。
第2上内壁面44iは、第2先端部32aを主に形成する部位である。第2上内壁面44iは、第2下内壁面44hに対して左右方向内側へ凹むように第2下内壁面44hの上端に連なり、第2外壁面42cと左右方向に対向する。第2上内壁面44iは、第2外壁面42cやパーティング面46から左右方向内側に最も離れた上端44jと、第2下内壁面44hの上端から左右方向内側へ延びる第2引掛成形面44kと、第2引掛成形面44kの左右方向内側の端部から上方へ湾曲する第2凸成形面44lと、を備えている。
第2引掛成形面44kは、第2引掛面32cを成形する平面状の部位であり、第2下内壁面44hと略垂直に形成されている。第2引掛成形面44kを左右方向外側に延長した部分に突出片47が位置する。第2凸成形面44lは、第2凸面部32dを成形する部位であり、凹状に湾曲している。
第1傾斜成形面44fは、第1傾斜面29bを成形する部位であって、第1上内壁面44bの上端44cに連なり、下方(矢印X方向)を向く。第1下内壁面44aの上端を直上に延長した仮想面Aと、第1傾斜成形面44fの前端とで交線を形成する。第1傾斜成形面44fは、第1上内壁面44bへ向かうにつれて下方へ傾斜する。
第2傾斜成形面44mは、第2傾斜面32bを成形する部位であって、第2上内壁面44iの上端44jに連なり、下方を向く。第2下内壁面44hの上端を直上に延長した仮想面Bと、第2傾斜成形面44mの左右方向外側の端部とで交線を形成する。第2傾斜成形面44mは、第2上内壁面44iへ向かうにつれて下方へ傾斜する。
第1上内壁面44bの上端44cと、仮想面Aとの間の前後方向の距離L1は、第1下内壁面44aの上端から第1傾斜成形面44fまでの仮想面A上(上下方向)の距離L2以下である。また、第2上内壁面44iの上端44jと仮想面Bとの間の左右方向の距離L3は、第2下内壁面44hの上端から第2傾斜成形面44mまでの仮想面B上(上下方向)の距離L4以下である。
張出傾斜成形面44gは、張出傾斜面28bを成形する部位であって、第1傾斜成形面44fの前端からパーティング面46まで設けられ、下方を向く。張出傾斜成形面44gと第1外壁面42bとの境界であるパーティング面46により稜28dが成形される。張出傾斜成形面44gは、パーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜する。
張出下成形面44nは、張出下面31bを成形する部位であって、第2傾斜成形面44mの左右方向外側の端部からパーティング面46まで設けられ、下方を向く。張出下成形面44nと第2外壁面42cとの境界であるパーティング面46により稜31dが成形される。張出下成形面44nは、前後方向に垂直な断面において着座成形面42aと略平行に形成されている。
以上のような成形型40を用いてクッションパッド20を製造するには、まず、下型41と上型43とを開いた状態で、上型43の上成形面44の略全面に、磁石やワイヤ、クリップ等を用いて裏面材24を密着させる。次いで、下型41と上型43とを型締めして基本成形状態にし、キャビティ45内で原料液を発泡させながら、下型41と上型43とが合わさるパーティング面46からキャビティ45内の空気を抜き、発泡した原料液を硬化させてパッド本体21を発泡成形する(成形工程)。
この発泡成形(成形工程)時には、裏面材24に原料液が含浸しながら発泡硬化するので、裏面材24の繊維間に侵入した状態で硬化した軟質フォームの一部によってパッド本体21に裏面材24が接合される。このようにして、軟質フォーム製のパッド本体21に裏面材24が一体化されたクッションパッド20が製造される。
基本成形状態での発泡成形時には、着座成形面42aが上方を向いて略水平なので、着座成形面42aの全体に亘って軟質フォームの原料液を均質に広げ易くできる。その結果、着座成形面42aにより成形された着座面22aの成形性を向上できる。
パッド本体21の発泡成形時、仮想面Aよりも後方側の空間によって第1突出部29が成形され、仮想面Bよりも左右方向内側の空間によって第2突出部32が成形される。第1突出部29を成形する空間の近傍における原料液の液面の上昇の仕方について、図5(a)を参照しながら説明する。原料液の発泡に伴って上昇する原料液の液面S1,S2,S3を破線で示す。
第1外壁面42bと第1下内壁面44aとの間における液面S1は、略水平を保っている。但し、第1下内壁面44aに密着した裏面材24に原料液が含浸しながら、液面S1が上昇していくので、裏面材24がない部分と比べて裏面材24の近傍では、液面S1の上昇が遅れる。
第1外壁面42bと第1上内壁面44bとの間における液面S2は、第1上内壁面44b側へ下降傾斜する。これは、第1下内壁面44aに対して後方へ凹んだ第1上内壁面44bへ発泡中の原料液が流れるためである。
第1傾斜成形面44fに達した液面S3は、未だに第1上内壁面44b側(パーティング面46とは反対側)へ下降傾斜している。ここで、第1傾斜成形面44fがパーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜しているので、液面S3が第1上内壁面44b側へ下降傾斜していても、液面S3が先にパーティング面46に達してパーティング面46が原料液で塞がれる前に、第1傾斜成形面44fに沿って空気をパーティング面46側へ導き易くできる。その結果、第1突出部29を成形する空間の全体に原料液を充填し易くできるので、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29の充填不良を抑制できる。
さらに、張出傾斜成形面44gがパーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜しているので、パーティング面46が原料液で塞がれる前に、張出傾斜成形面44gに沿って、第1傾斜成形面44fや張出傾斜成形面44g近傍の空気をパーティング面46側へ導き易くできる。その結果、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29の充填不良をより抑制できる。
次に、第2突出部32を成形する空間の近傍における原料液の液面の上昇の仕方について、図5(b)を参照しながら説明する。原料液の発泡に伴って上昇する原料液の液面S4,S5を破線で示す。
第2下内壁面44hに対して第2上内壁面44iが左右方向内側に凹むと共に、第2下内壁面44hの上端と左右方向に対向する位置の第2外壁面42cから左右方向内側へ突出片47が突出している。これにより、第2下内壁面44hの上端と突出片47との間よりも上方では、左右方向の両側に空間を広げることができる。
そのため、突出片47を超えた位置にあって、第2外壁面42cと第2上内壁面44iとの間における液面S4は、第2上内壁面44i側および第2外壁面42c側の両方へ向かって下降傾斜する。液面S4が更に上昇して、パーティング面46に近づいた液面S5も、未だに第2上内壁面44i側へ向かって下降傾斜している。
同様に、第2傾斜成形面44mがパーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜しているので、パーティング面46が原料液で塞がれる前に、第2傾斜成形面44mに沿って空気をパーティング面46側へ導き易くできる。その結果、第2突出部32を成形する空間の全体に原料液を充填し易くできるので、発泡成形されたパッド本体21の第2突出部32の充填不良を抑制できる。
また、液面S5が第2外壁面42c側にも下降傾斜しているので、液面S5がパーティング面46に達するのを遅らせることができる。これにより、第2傾斜成形面44mや張出下成形面44nの近傍の空気をパーティング面46から抜き易くできる。その結果、発泡成形されたパッド本体21の第2突出部32の充填不良をより抑制できる。
図5(a)及び図5(b)に示すように、基本成形状態での発泡成形時、裏面材24の前端縁24aが第1引掛成形面44dに位置する。また、裏面材24の側端縁24bが第2下内壁面44hの上端に位置する。これらの配置によって、発泡成形されたパッド本体21の第1張出内面28cや第2張出内面31cを全体に亘って裏面材24により補強できる。また、前端縁24aが第1引掛成形面44dに位置するので、第1引掛面29cを裏面材24により補強できる。
そして、第1傾斜成形面44fと前端縁24aとの間や、第2傾斜成形面44mと側端縁24bとの間は、少なくとも第1凸成形面44eや第2凸成形面44lによって上下方向に十分離れている。これにより、第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mの近傍の液面の上昇が裏面材24によって遅れることを防止でき、第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mの近傍に空気を残り難くできる。その結果、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29や第2突出部32の充填不良をより抑制できる。
また、第1凸成形面44eや第2凸成形面44lは凹状に湾曲しているので、第1凸成形面44eや第2凸成形面44lに裏面材24を密着させた状態を維持するためには、第1凸成形面44eや第2凸成形面44lへの裏面材24の取り付け箇所を多くする必要がある。即ち、裏面材24の装着にかかる工数が増大する。裏面材24を第1凸成形面44eや第2凸成形面44lまで設けないことで、裏面材24の装着にかかる工数を増大し難くできる。
また、裏面材24は、第1下内壁面44aの上下両側で後方へ曲がり、第1下内壁面44aの左右両側に位置する第2下内壁面44hの略全体に密着するので、裏面材24のうち前端縁24a近傍の一部を、第1下内壁面44aを覆う袋状に形成できる。このような裏面材24の袋状の部分を第1下内壁面44aに被せるだけで、裏面材24の前端縁24aを第1引掛成形面44dに密着させ易くできる。
一方、第2引掛成形面44kには裏面材24が密着していないので、第2引掛成形面44k上を原料液が速く流れる。これにより、原料液の液面が第2上内壁面44iに向かって下方へ傾斜したときの傾斜角度を小さくできる。その結果、第2傾斜成形面44mの近傍に空気を残り難くできるので、発泡成形されたパッド本体21の第2突出部32の充填不良をより抑制できる。
第1突出部29(第1突出部29を成形する空間)の左右方向寸法である距離L1は、第1突出部29の上下方向寸法である距離L2以下となっている。また、第2突出部32(第2突出部32を成形する空間)の左右方向寸法である距離L3は、第2突出部32の上下方向寸法である距離L4以下となっている。これにより、基本成形状態で第1突出部29や第2突出部32を成形するとき、原料液の液面が第1上内壁面44bや第2上内壁面44iへ向かって傾斜したとしても、その傾斜角度を小さくできる。そのため、第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mの近傍に空気を残り難くできるので、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29や第2突出部32の充填不良をより抑制できる。
水平面(着座成形面42a)に対する第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mの傾斜角度は、15°~45°であることが好ましく、30°以上であることが好ましい。この傾斜角度が15°以上であれば、パーティング面46から離れるにつれて下方へ原料液の液面が傾斜しても、液面と第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mとの間に空気が残ることを抑制できる。水平面に対する傾斜角度が30°以上であれば、液面と第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mとの間に空気をより残り難くできる。
水平面に対する傾斜角度が45°より大きいと、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29の第1先端部29a側の上下寸法や、第2突出部32の第2先端部32a側の上下寸法が小さくなって、第1突出部29や第2突出部32の強度が低下し易くなる。水平面に対する傾斜角度を45°以下にすることで、第1突出部29や第2突出部32の強度を確保できる。
なお、クッションパッド20の製造方法や成形型40を実際に確認しなくても、図1から図3に示した成形後のクッションパッド20を確認することで、クッションパッド20の製造方法などを把握できる。まず、最も座り心地に影響する着座面22aの成形性を向上させたり、成形後のパッド本体21を成形型40から脱型し易くしたり、キャビティ45内の空気を抜き易くしたりするために、以下の条件でパッド本体21を成形することが多い。
具体的な条件は、本実施形態の通り、着座成形面42aを上方に向けて略水平にした基本成形状態としつつ、外周壁としての第1外壁面42bや第2外壁面42cと、下方を向いた張出傾斜成形面44gや張出下成形面44nとの境界をパーティング面46にすることである。このような条件で成形された直後のパッド本体21(クッションパッド20)は、表皮材18等によって圧縮されておらず、着座面22aが下方を向いて略水平になっており、パーティング面46の位置に稜28d,31dが形成されている。このようなクッションパッド20の状態を成形直後状態とする。
クッションパッド20を成形直後状態とした場合に、第1張出部28や第1突出部29、第2張出部31、第2突出部32の各部(第1張出外面28aや第1傾斜面29b等)の形状や位置、寸法などは、基本成形状態において、それらの各部を成形する下成形面42や上成形面44の各部(第1外壁面42bや第1傾斜成形面44f等)の形状や位置、寸法などとそれぞれ同一であると判断できる。
例えば、クッションパッド20の成形直後状態において、第1張出外面28a(稜28d)から最も後方へ離れた位置にある第1先端部29aへ向かうにつれて、第1傾斜面29bが下方(矢印X方向)へ傾斜していれば、基本成形状態での発泡成形時に、第1傾斜面29bを成形する第1傾斜成形面44fがパーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜していたことが分かる。よって、成形直後状態において、第1先端部29aへ向かうにつれて第1傾斜面29bが下方へ傾斜していれば、上述した通り、発泡成形時に第1突出部29を成形する空間の全体に原料液を充填し易くできるので、発泡成形されたパッド本体21の第1突出部29の充填不良を抑制できる。
次に図6(a)及び図6(b)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第1張出外面28aが滑らかな曲面状である場合について説明した。これに対して第2実施形態では、後方へ凹む段差面54が第1張出外面53に形成されている場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6(a)は第2実施形態におけるクッションパッド50及び成形型60の一部を拡大して示した切断部端面図である。図6(b)はクッションパッド50を成形する成形型60の一部を拡大して示した切断部端面図である。図6(a)には、シートクッションに装着される場合のクッションパッド50の上方(矢印X方向)を下方に向け、シートクッションに装着される場合のクッションパッド50の下方(矢印Y方向)を上方に向けた状態(成形直後状態)が図示されている。
クッションパッド50のパッド本体51の第1張出部52は、前方(矢印F方向)を向く第1張出外面53と、張出傾斜面28bと、第1張出内面28cと、を備えている。第1張出外面53は、表面22の一部である。クッションパッド50が装着されたシートクッションでは、第1張出外面53が着座者2の脹脛5(図1参照)に面する。
第1張出外面53には、稜28d側の一部を後方へ向かって段差状に凹ませた段差面54が形成されている。着座面22aを下方に向けて略水平にしつつ、パッド本体51を圧縮していない成形直後状態において、第1張出内面28cよりも上方に段差面54が位置する。
このような段差面54を成形するために、クッションパッド50を成形する成形型60の下型61は、第1張出外面53を成形する第1外壁面63を備えている。第1外壁面63は、着座成形面42a(図1参照)を上方に向けて略水平にした基本成形状態において、水平方向のうち前方(矢印F方向)の壁面を構成する部位であり、上方(矢印Y方向)へ立ち上がってパーティング面46まで設けられる。
第1外壁面63は、段差面54を成形する段差成形面64を備えている。段差成形面64は、パーティング面46側の一部を後方(矢印B方向)へ向かって段差状に張り出させた部位である。段差成形面64は、基本成形状態において、第1下内壁面44aよりも上方に位置して、第1上内壁面44bと前後方向に対向する。
成形直後状態において、第1張出内面28c側へ段差状に凹む段差面54が第1張出外面53に設けられている場合、基本成形状態において、第1上内壁面44b側へ段差状に張り出す段差成形面64が第1下内壁面44aよりも上方に位置することが分かる。
図6(b)に示すように、第1下内壁面44aに対して第1上内壁面44bが後方へ凹んでいるため、段差成形面64よりも下方では、第1外壁面42bと第1上内壁面44bとの間の液面S2が第1上内壁面44b側へ下降傾斜する。さらに液面S2が上昇していき段差成形面64に達すると、段差成形面64によって原料液が第1上内壁面44b側へ流される。これにより、第1上内壁面44b側へ下降傾斜していた液面S2に対して、段差成形面64よりも上方における液面S6では、第1上内壁面44b側の液面S6を押し上げることができ、液面S6を略水平に近づけることができる。
これに加えて、第1傾斜成形面44fがパーティング面46から離れるにつれて下方へ傾斜しているので、パーティング面46が原料液で塞がれる前に、第1傾斜成形面44fに沿って空気をパーティング面46側へより導き易くできる。その結果、第1突出部29を成形する空間の全体に原料液をより充填し易くできるので、発泡成形されたパッド本体51の第1突出部29の充填不良をより抑制できる。
また、第1引掛成形面44dには裏面材24が密着していないので、第1引掛成形面44d上を原料液が速く流れる。そのため、段差成形面64よりも下方における液面S2が、第1上内壁面44bに向かって下方へ傾斜したときの傾斜角度を小さくできる。その結果、第1傾斜成形面44fの近傍に空気をより残り難くできるので、発泡成形されたパッド本体51の第1突出部29の充填不良をより抑制できる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、クッションパッド20,50やフレーム11、成形型40,60等の各部の形状や寸法を適宜変更しても良く、各部を左右非対称に形成しても良い。また、第1張出部28,52や第1突出部29、第2張出部31、第2突出部32を省略しても良い。
上記形態では、自動車に搭載されるシートのシートクッション10について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。産業車両や鉄道車両など自動車以外の車両、航空機、船舶などの乗物に搭載されるシートの座部、家具などの座部にシートクッション10を用いても良い。
上記形態における第1張出部28,52や第1突出部29、それらを成形する空間の構成をそれぞれ、第2張出部31や第2突出部32、それらを成形する空間の構成に置き換えても良い。両者の対応する部位の向きを合わせるために、第1張出部28,52や第1突出部29、それらを成形する空間においては、上記形態の前方(矢印F方向)を第1方向とし、第1方向とは逆向きの上記形態の後方(矢印B方向)を第2方向とする。第2張出部31や第2突出部32、それらを成形する空間においては、上記形態の左右方向(矢印L-R方向)内側を第1方向とし、第1方向とは逆向きの上記形態の左右方向外側を第2方向とする。
例えば、張出傾斜面28bに代えて、着座面22aと略平行な張出下面31bを第1張出部28,52に設けても良い。逆に、張出下面31bに代えて、張出傾斜面28bを第2張出部31に設けても良い。また、着座面22aと略平行な張出下面のうち、第1傾斜面29bや第2傾斜面32bに連なる一部分を、着座面22aに対して傾斜する張出傾斜面28bとしても良い。同様に、張出傾斜成形面44gに代えて張出下成形面44nを上成形面44に設けたり、張出下成形面44nに代えて張出傾斜成形面44gを上成形面44に設けたりしても良い。また、略水平な張出下成形面のうち、第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44mに連なる一部分を、水平面に対して傾斜する張出傾斜成形面44gとしても良い。
また、スリット31eを第1張出外面28aに設けたり、突出片47を第1外壁面42bに設けたりしても良い。第2張出外面31aのスリット31eを省略したり、第2外壁面42cの突出片47を省略したりしても良い。さらに、スリット31eに代えて段差面54を第2張出外面31aに設けたり、突出片47に代えて段差成形面64を第2外壁面42cに設けたりしても良い。
上記形態では、着座成形面42aを略水平(水平面に対する傾きが10°以下)にした状態で発泡成形する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。パッド本体21,51の成形性を確保できれば、水平面に対する着座成形面42aの傾きを10°より大きくしても良い。また、着座成形面42aを平面状に限らず、曲面状に形成しても良い。この着座成形面42aとは無関係に、発泡成形時の水平面に対して、第1傾斜成形面44fや第2傾斜成形面44m、張出傾斜成形面44gをパーティング面46から離れるにつれて(第1上内壁面44bや第2上内壁面44iへ向かうにつれて)下方へ傾斜させても良い。
上記形態では、パッド本体21,51の各部が一体成形されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。パッド本体21,51の各部を別々に成形したり、パッド本体21,51を部分的に異硬度にしたりしても良い。
上記形態では、裏面材24の繊維間に侵入した状態で硬化した軟質フォームの一部によってパッド本体21,51に裏面材24が接合される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。パッド本体21,51を発泡成形した後、パッド本体21,51の裏面23に裏面材24を接着しても良い。