JP7301731B2 - マスク用シート及びマスク - Google Patents

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Description

本発明は、マスク用シート及びマスクに関する。
マスクとして、綿などのセルロース系繊維で形成されたガーゼと、不織布とを接合してマスク本体を形成したものが知られている。例えば、特許文献1には、熱融着性繊維を含む不織布を用いて、熱溶着によりガーゼと一体化させたマスクが開示されている。
実開平3-41459号公報
しかし、上述したようなマスクでは、不織布の溶解した繊維(熱融着性繊維)がガーゼ生地に入り込んで一体となっているだけであり、不織布とガーゼとの接合強度が弱くて剥がれやすいという問題があった。不織布とガーゼが剥がれると、肌側のガーゼが着用者の口元に当たり、呼吸しにくくなるというおそれがあった。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、不織布とガーゼを剥がれにくくすることを目的とする。
上記目的を達成するための主たる発明は、
熱融着性繊維を含む不織布に接合されてマスクを構成するマスク用シートであって、
前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維層と、
を備え、
前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維のうち、前記ガーゼの前記肌側面から突出している繊維の本数が、前記肌側面から突出していない繊維の本数よりも少ない、
ことを特徴とするマスク用シートである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
本発明によれば、不織布とガーゼを剥がれにくくすることができる。
マスク1を非肌側から見た平面図である。 マスク1を肌側から見た平面図である。 図1中のX-X線に沿う断面図である。 マスク用シート20を肌側から見た場合の一部拡大図である。 マスク用シート20をガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50とに分離した状態を示す図である。 図4中のY-Y線に沿う断面図である。
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
熱融着性繊維を含む不織布に接合されてマスクを構成するマスク用シートであって、前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維層と、を備え、前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡していることを特徴とするマスク用シートである。
このようなマスク用シートによれば、不織布と熱融着性繊維層とを加熱によって確実に接合(熱融着)することが可能であり、また、熱融着性繊維層の繊維がガーゼと交絡しているため、ガーゼが熱融着性繊維層から剥がれにくい。よって、不織布とガーゼを剥がれにくくすることができる。
かかるマスク用シートであって、前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出していることが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、ガーゼの肌側面にも部材(融着性繊維を含む部材)を接合させやすくなる。また、側部の耳掛け部などとの接合部分を強固にできる。
かかるマスク用シートであって、前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維のうち、前記ガーゼの前記肌側面から突出している繊維の本数が、前記肌側面から突出していない繊維の本数よりも少ないことが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、マスク着用時のチクチク感が低減され、肌当たりが良くなる。
かかるマスク用シートであって、前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼの前記肌側面の側よりも非肌側面の側の方が単位面積当たりの繊維量が多いことが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、肌当たりを良好に保ちつつ、不織布との接合強度を高めることができる。
かかるマスク用シートであって、前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼよりも肌側に設けられた肌側延出部分と、前記ガーゼよりも非肌側に設けられた非肌側延出部分とを含み、前記非肌側延出部分の最大厚みは、前記肌側延出部分の最大厚みよりも大きいことが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、肌当たりを良好に保ちつつ、不織布との接合強度を高めることができる。
かかるマスク用シートであって、前記マスクはプリーツ型であり、前記ガーゼの前記肌側面同士が重なり合うように折り畳まれて、幅方向の端部で接合されていることが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、プリーツ型構造のマスクで、不織布とガーゼの剥離を抑制でき、より効果的である。
かかるマスク用シートであって、前記熱融着性繊維層は、親水性繊維と疎水性繊維を含むことが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、親水性繊維を含むことにより、水分(着用者の呼気や汗など)を吸収でき、マスク内の環境を快適に保つことができる。また、疎水性繊維を含むことにより、水分が分散し通気性が良くなる。
かかるマスク用シートであって、前記不織布は、非熱融着性繊維をさらに含むことが望ましい。
このようなマスク用シートによれば、溶着の程度を適度に制御することができる。
また、前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられるとともに、前記不織布と接合される熱融着性繊維層と、を備え、前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡していることを特徴とするマスクである。
このようなマスクによれば、不織布とガーゼを剥がれにくくすることができる。
===実施形態===
<マスク1の構成>
図1は、マスク1を非肌側から見た平面図である。図2は、マスク1を肌側から見た平面図である。図3は、図1中のX-X線に沿う断面図である。マスク1は、互いに直交する上下方向と左右方向と厚さ方向とを有する。厚さ方向において、着用者の肌に対向する側(マスク1の着用時に、着用者の肌に相対的に近い側)を肌側、その反対側を非肌側とする。上下方向において、マスク1を着用した状態で鉛直上方に位置する側(鼻側)を上側、その反対側(顎側)を下側とする。また、左右方向において、マスク1の着用時に、着用者の右側に位置する側(肌側から見て右側)を右側、その反対側を左側とする。なお、左右方向は幅方向に相当する。
図1、図2に示すように、本実施形態のマスク1は、着用者の顔面(口元や鼻)を覆うためのマスク本体3と、マスク本体3から延出する耳掛け部5を備えている。
耳掛け部5は、着用者の耳に掛ける部位であり、着用者の両耳に対応するように、マスク本体3の左右方向の両端部(右端3c、左端3d)に一対設けられている。なお、耳掛け部5は、マスク本体3の非肌側の面に接合されている。耳掛け部5は、弾性的に伸縮可能なものが好ましく、例えば、ゴム紐、不織布や織布、プラスチックフィルム、などの公知の材料によって形成できる。
マスク本体3は、図1及び図2に示すように、着用前(未使用)の状態において、平面視にて左右方向に長尺な矩形形状である。また、本実施形態のマスク本体3は、襞状に折り畳まれており、着用時に非肌側に隆起する襞型(プリーツ型)である。マスク本体3は、右端3cと左端3dの間に亘って形成された複数の折り目(後述する折り返し部35)によって上下方向に段階的に折り畳まれており、これにより複数の襞部30が形成されている。これらの複数の折り目は、左右方向の両端部を除いて、マスク1の着用時に展開されることになる。
本実施形態のマスク本体3は、主として、不織布10及びマスク用シート20を備えて構成されている。
不織布10は、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、及び、エアスルー不織布等の各種公知の合成繊維不織布のうち、通気性の良好な材料を適宜選択して形成することができる。本実施形態の不織布10は、熱融着性繊維(熱可塑性繊維)を含んで構成されている。熱融着性繊維としては、ポリエチレン(PE)繊維、ポリプロピレン(PP)繊維等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ナイロンなどのポリアミド系繊維等が挙げられる。なお、不織布10が、熱融着性繊維以外の繊維(すなわち非熱融着性繊維)を含んでいても良い。これにより、非熱融着性繊維の量を調整することで、溶着部36(後述)を形成する際に、溶着の程度を適度に制御することができる。
マスク用シート20は、不織布10よりも肌側に配置されたシート部材であり、ガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50(熱融着性繊維層に相当)とを備えて構成されている。マスク用シート20の詳細については後述する。
また、本実施形態のマスク本体3には、保持部材31、サイドシート32、切欠き部33、鼻カバー部34、折り返し部35、及び、溶着部36が設けられている。
保持部材31は、マスク本体3の上端3a側に設けられた薄板矩形形状の部材であり、上端縁の部位を所定の形状で保持するための部材である。保持部材31は、マスク本体3の折り返された部分(後述する山折り部35aで折り畳まれた部位)の間に配設されており、周囲に形成された複数の溶着部36によって位置がずれないように固定されている。
保持部材31は、可撓性の熱可塑性樹(例えばプラスチック)などで形成されていることが好ましい。このような保持部材31は、着用者が容易に曲げることができると共に、一旦所定形状に変形すると、再び外力がかからない限りその所定形状を保持する。このため、着用者がマスク1を着用する後に保持部材31を鼻の形状に合わせて変形させると、保持部材31は、マスク本体3の上端近傍を着用者の鼻の形状に合った状態で保持できる。これにより、マスク本体3の上端縁と着用者の顔面との間に隙間が生じることを抑制できる。
サイドシート32は、マスク本体3の右端3c及び左端3dにおいて、それぞれの肌側と非肌側を覆って設けられている。すなわち、サイドシート32は、不織布10及びマスク用シート20の左右方向の端部を厚さ方向に挟んだ状態で固定(接合)されている。このようなサイドシート32を設けることにより、ガーゼ40端部の糸(後述する構成糸41)がバラけることを抑制でき、また、耳掛け部5などとの接合強度を高めることができる。
サイドシート32は、不織布10と同様に、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布及びエアスルー不織布等の各種公知の合成繊維不織布シートのうち、通気性の良好な材料を適宜選択して形成することができる。また、サイドシート32として、織物や編物からなる材料を用いても良い。ただし、着用者の肌(顔面)に刺激を与えにくいものが良いので、不織布であることが好ましい。
切欠き部33は、マスク本体3を構成する不織布10及びマスク用シート20の左右方向の両端部(右端3c、左端3d)にそれぞれ(一対)設けられており、サイドシート32で覆われている。また、切欠き部33は、マスク本体3の左右方向の中央部に向かって凹となる形状、より具体的には、左右方向の端から中央に向かって次第に上下方向の長さが短くなる略V字状に形成されている。ただし、この形状には限定されず、単数又は複数の直線状、曲線状等の各種公知の形状であっても良い。切欠き部33を設けることによって、マスク1の使用時において、当該切欠き部33が変形の起点となり変形し易いので、着用者の顔面との密着性を高める(マスク本体3の顔面へのフィット性を高める)ことができる。
鼻カバー部34は、マスク本体3の肌側において上端3aから下方向に延在しており、上端は固定端、下端は自由端となっている。より具体的には、鼻カバー部34は、上端3aにおいて肌側に折り返されたマスク本体3(ここでは不織布10)に、溶着あるいはホットメルト接着剤により接合されている。鼻カバー部34は、不織布10と同様の不織布で構成されている。この鼻カバー部34は、マスク用シート20のガーゼ40が着用者の顔面(鼻部分)に触れることをより抑制し、マスク1を着用することによる違和感を抑制する。なお、鼻カバー部34は無くても良い。
折り返し部35は、マスク本体3を構成する不織布10及びマスク用シート20が折り返されている部位である。折り返し部35として、図3に示すように、マスク用シート20の肌側面同士が重なり合うように折り畳まれた山折り部35aと、不織布10の非肌側面が重なるように折り畳まれた谷折り部35bとがそれぞれ複数形成されている。これにより、マスク本体3には複数の襞部30が形成されている。
なお、下端3bにおける山折り部35aでは、不織布10のみが折り返されており、当該折り返された不織布10がマスク用シート20の肌側面に接合されている(図2、図3参照)。また、上端3aにおける山折り部35aでは、折り返されたマスク本体3同士が、間に保持部材31を挟んで接合され、さらに、前述したように、その肌側には鼻カバー部34が接合されている。本実施形態のマスク用シート20は、後述するように、ガーゼ40に対して両側に熱融着性繊維の層が存在するので、上述したような折り返し部分でも確実に接合することができる。
また、左右方向の端部(右端3c、左端3d)では、不織布10及びマスク用シート20が、襞状に折り畳まれた状態で、サイドシート32に厚さ方向に挟まれて接合されている。ここでも、マスク用シート20を用いていることにより、襞状に折り畳まれた部位同士の接合強度を高めることができる。よって、この部位の接合強度を高められるので、サイドシート32を省略することも可能である。
溶着部36は、各部材を熱溶着により接合している部位であり、マスク本体3において複数設けられている。また、本実施形態のマスク本体3の左下部には、微小な溶着部36を複数並べたパターンで形成された図柄36aが設けられている。本実施形態のマスク1では図柄36aとして、アルファベットの文字(abc)が形成されている。このような図柄36aを設けることにより、マスク1の表裏(肌側、非肌側)を識別しやすくなり、マスク1の装着方向の間違いを防止できる。特に本実施形態では、マスク用シート20を用いることによって、図柄36aを目立ちやすくすることができる。なお、図柄36aは図に示したものには限られず、マスク1の表裏(肌側、非肌側)を識別可能なもの(左右非対称なもの)であれば良い。例えば、アルファベット以外の文字、記号、図形、矢印などでも良い。
<マスク用シート20の構成>
前述したように本実施形態のマスク本体3は、主に、熱融着性繊維を含む不織布10と、マスク用シート20の2つのシート部材で構成されている。また、マスク用シート20は綿糸等で形成されたガーゼ40を有している。
もし、仮に、不織布10とガーゼ40を熱溶着により直接接合する場合、ガーゼ40には熱融着性繊維が含まれていないので、不織布10の溶解した繊維がガーゼ40の生地に入り込んだ状態となって一体化される。この場合、不織布10とガーゼ40との接合強度が弱く、剥がれやすくなる。不織布10とガーゼ40が剥がれると、ガーゼ40が着用者の口元に当たり、着用者が呼吸しにくくなるというおそれがある。そこで、本実施形態では、マスク用シート20を用いることにより、不織布10とガーゼ40を剥がれにくくしている。
図4は、マスク用シート20を肌側から見た場合の一部拡大図であり、図5は、マスク用シート20をガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50とに分離した状態を示す図である。図4及び図5に示すように、マスク用シート20は、ガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50の繊維51(熱融着性繊維)とが、互いに絡み合って(ガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50が交絡して)一体化されたシート部材である。ガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50とを交絡させたマスク用シート20の製造方法は、後述する。
図4に示すように、ガーゼ40は、格子状に織り込まれた構成糸41から構成されている。構成糸41は、複数の経糸42と、経糸42と互いに交差する複数の緯糸43とを有し、厚さ方向において互いに交差することによって形成された織目45(経糸42と緯糸43とで囲まれた貫通領域)が複数形成されている。ガーゼ40の構成糸41は、綿糸(コットン繊維)からなる原糸を撚って形成された撚糸である。原糸の材料には、コットン繊維のほかに、麻やパルプ繊維等の天然セルロース繊維、レーヨン等の再生セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロース繊維等のセルロース系繊維が好適に使用される。原糸に使用される綿糸としては、太さ10~100綿番手のものが好ましい。なお、ガーゼ40の織り方は、格子状に織り込まれた平織りに限定されず、綾織り、朱子織り、絡み織りなどの公知の織り方を適宜採用することができる。
熱融着性繊維ウェブ50(熱融着性繊維層)は、長繊維を使用したスパンボンド法や短繊維をカード機で一定方向へカーディングを行い、繊維を整えてウェブを形成する乾式法等の公知の製法によって形成された繊維集合体であり、フォーミングされて不織布となる前の段階の状態である。熱融着性繊維ウェブ50の繊維51としては、不織布10の説明で挙げた熱融着性繊維を用いることができる。なお、熱融着性繊維ウェブ50は、カード機を用いたカード法で形成されたものに限られず、エアレイド法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法等の方法で形成されたものを用いても良い。
本実施形態の熱融着性繊維ウェブ50は、少なくともガーゼ40と不織布10の間に設けられており(図6参照)、繊維51の一部がガーゼ40と交絡している。これにより、熱融着性繊維を含んでいる不織布10と熱融着性繊維ウェブ50とを加熱によって確実に接合(溶着)することが可能であり、また、熱融着性繊維ウェブ50の繊維51がガーゼ40と交絡しているため、ガーゼ40が熱融着性繊維ウェブ50から剥がれにくい。よって、不織布10とガーゼ40を剥がれにくくすることができる。
熱融着性繊維ウェブ50の繊維密度は、例えば、2.8~3.5×10-3g/cm3であり、坪量(単位面積当たりの重さ)は、例えば、20~70g/m2である。熱融着性繊維ウェブ50の厚みは、例えば、7~20mmであり、熱融着性繊維ウェブ50の繊維の長さは、例えば、1~100mmである。また、熱融着性繊維ウェブ50の繊度は、例えば、0.1~6dtexである。
また、本実施形態の熱融着性繊維ウェブ50は、繊維51として、親水性繊維と疎水性繊維を含んでいる。疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むポリエステル系、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を含むポリオレフィン系、PPとPEとからなる芯鞘構造の複合繊維、サイド・バイ・サイド型複合繊維等の複合繊維を用いることができる。親水性繊維としては、例えば、レーヨン、親水化処理を施した熱融着性繊維や複合繊維が挙げられる。なお、親水化処理とは、表面に界面活性剤を塗工することにより、繊維表面の接触角を低下させて親水性に改質することである。この際、用いられる好ましい界面活性剤としては、親水性シリコーンオイル等の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
熱融着性繊維ウェブ50が親水性繊維を含んでいることにより、水分(着用者の呼気や汗など)を吸収でき、マスク内(マスク1と着用者の顔面との間)の環境を快適に保つことができる。また、熱融着性繊維ウェブ50が疎水性繊維を含んでいることにより、水分が分散し通気性が良くなる。
なお、熱融着性繊維ウェブ50が親水性繊維と疎水性繊維を含む場合の親水性繊維と疎水性繊維の配合割合は、単位体積当たりに含まれる疎水性繊維の重量が、単位体積当たりに含まれる親水性繊維の重量よりも大きいことが好ましい。これにより、水分をより分散させやすくでき、通気性の向上を図ることができる。
ガーゼ40と熱融着性繊維ウェブ50とを交絡一体化する方法(マスク用シート20の製造方法)としては、例えば公知の水流交絡法を用いることができる。水流交絡法による透液性シートの製造工程では、ガーゼ40の資材である連続した格子状の織物の上面(ここでは非肌側面40a)の上に熱融着性繊維ウェブ50の資材である連続した繊維の集合体を積層してなる連続積層体に対して、連続積層体の搬送方向と交差する方向に間隔を空けて配置された複数のノズルから高圧水流を噴射する。すなわち、図5のようにガーゼ40の上に熱融着性繊維ウェブ50を重ねて、上側(非肌側)から下側に向けて高圧水流を噴射する。それにより、熱融着性繊維ウェブ50の構成繊維(繊維51)とガーゼ40の構成糸41とが絡み合い、一体化させることができる。また、水の圧力によって、一体化したシートに柄を付与することもできる。
水流交絡を施す際、連続したガーゼ40と連続した熱融着性繊維ウェブ50が積層された上述の連続積層体が金属製のメッシュベルトからなる搬送手段によって搬送され、ノズルから連続積層体の上面に高圧水流を噴射したときに、上面側において熱融着性繊維ウェブ50の繊維51とガーゼ40の構成糸41とが交絡するとともに、搬送手段と対向する下面側においても搬送手段に当たって跳ね返る水流によって交絡される。また、水流交絡法によれば、搬送手段のメッシュベルトの構成を適宜変更することによって、厚さ、質量、吸収速度、シート強度等について所望のシート特性を備えたマスク用シート20を得ることができる。
図6は、図4中のY-Y線に沿う断面図であり、マスク用シート20の非肌側に位置する不織布10を仮想線で示している。図6を参照すると、マスク用シート20において、熱融着性繊維ウェブ50の繊維51がガーゼ40と交絡しており、また、ガーゼ40と交絡している繊維51の一部が、ガーゼ40の肌側面40bから突出(延出)している。これにより、ガーゼ40の肌側面40bにも部材(熱融着性繊維を含む部材など)を接合させやすくなる。例えば、マスク本体3の下端3bにおいて折り返した不織布10をマスク用シート20の肌側(ガーゼ40の肌側面40b)に接合させやすくなる。また、耳掛け部5などとの接合部分を強固にすることができる。
このように、熱融着性繊維ウェブ50は、ガーゼ40の肌側面40bよりも肌側に設けられた肌側延出部分52と、ガーゼ40の非肌側面40aよりも非肌側に設けられた非肌側延出部分53とを含んでいる。非肌側延出部分53は、水流交絡法によって形成される時に、高圧水流が直接噴射された部分である。一方、肌側延出部分52は、高圧水流が噴射された際に下方に位置していたガーゼ40の格子状の構成糸41及び構成糸41間を貫通して搬送手段であるメッシュベルト側に延出した部分である。
このように製造された本実施形態のマスク用シート20では、熱融着性繊維ウェブ50のガーゼ40と交絡している繊維51のうち、ガーゼ40の肌側面40bから突出している繊維51の本数が、肌側面40bから突出していない繊維51の本数よりも少なくなっている。このように、ガーゼ40の肌側面40bから突出している繊維51の本数を少なくすることにより、マスク1着用時のチクチク感が低減され、肌当たりが良くなる。
なお、例えば、水流交絡法以外の製造方法を用いて、熱融着性繊維ウェブ50のガーゼ40と交絡している繊維51のうち、ガーゼ40の肌側面40bから突出している繊維51の本数が、肌側面40bから突出していない繊維51の本数よりも多くなるようにしても良い。この場合、ガーゼ40の肌側面40bから突出する繊維51が多くなることで、肌側面40bの側での絡み合いが強くなり、ガーゼ40が熱融着性繊維ウェブ50からさらに剥がれにくくなる。よって、不織布10とガーゼ40がさらに剥がれにくくなる。
また、図6に示すように、熱融着性繊維ウェブ50は、ガーゼ40の肌側面40bの側(肌側延出部分52)よりも非肌側面40aの側(非肌側延出部分53)の方が単位面積当たりの繊維量が多いことが好ましい。これにより、肌当たりを良好に保ちつつ、不織布10との接合強度を高めることができる。
また、図6において、ガーゼ40の肌側面40bから肌側延出部分52の最も肌側に延出している点51aまでの厚みを肌側延出部分52の最大厚みD1とし、ガーゼ40の非肌側面40aから非肌側延出部分53の最も非肌側に延出している点51bまでの厚みを非肌側延出部分53の最大厚みD2とすると、非肌側延出部分53の最大厚みD2は、肌側延出部分52の最大厚みD1よりも大きいことが好ましい。このように、熱融着性繊維ウェブ50の非肌側延出部分53の最大厚みD2の方が大きいことによっても、肌当たりを良好に保ちつつ、不織布10との接合強度を高めることができる。
なお、最大厚みD1及び最大厚みD2は見掛けの厚さであり、その厚さ寸法の測定は、例えば、まずマスク用シート20を好ましくは熱融着性繊維ウェブ50の厚さ方向に沿って切断して、切断面の拡大写真をキーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX-1000等を用いて撮影する。この拡大写真に基づいて、ガーゼ40の肌側面40bから肌側延出部分52の最も肌側に延出している点51aまでの離間寸法(D1)を測定し、ガーゼ40の非肌側面40aから非肌側延出部分53の最も非肌側に延出している点51bまでの離間寸法(D2)を測定する。このようにして、厚さ寸法(最大厚みD1及び最大厚みD2)を測定できる。
Figure 0007301731000001
表1は、ガーゼ40と不織布10の剥離強度の測定結果である。ここでは、ガーゼ40単体の場合と、ガーゼ40に熱融着性繊維ウェブ50を交絡させた場合(熱融着性繊維量が異なる2種類)について、ガーゼ40と不織布10との剥離強度を測定した。
なお、剥離強度は、SHIMADZU社製オートグラフのチャックにサンプル(サンプル幅25mm)を挟ませ、試験速度100mm/minで測定した。表1の各値は測定における最大点試験力を示している。
表1において、ガーゼ40単体よりも、ガーゼ40に熱融着性繊維ウェブ50を交絡させた方が、剥離強度が高くなっている。また、熱融着性繊維量が多いほど、剥離強度が高くなっている。このように、ガーゼ40に熱融着性繊維ウェブ50を交絡させる(マスク用シート20とする)ことにより、ガーゼ40と不織布10を剥離しにくくできることが確認された。
以上説明したように、本実施形態のマスク1は、熱融着性繊維を含む不織布10と不織布10に接合されるマスク用シート20を備えている。マスク用シート20は、不織布10よりも肌側に配置されるガーゼ40と、ガーゼ40と不織布10との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維ウェブ50を備えており、熱融着性繊維ウェブ50の繊維51(熱融着性繊維)の一部がガーゼ40と交絡している。
これにより、不織布10と熱融着性繊維ウェブ50の熱融着性繊維を加熱によって確実に接合(熱融着)することが可能であり、また、熱融着性繊維ウェブ50の繊維51がガーゼと交絡しているため、ガーゼ40が熱融着性繊維ウェブ50から剥がれにくい。よって、不織布10とガーゼ40を剥がれにくくすることができる。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
前述の実施形態では、マスク1(マスク本体3)はプリーツ型であったが、これには限られない。例えば、平型、立体型、カップ型などであっても良い。ただし、上述したようにガーゼ40の肌側面40bの側と非肌側面40aの側に熱融着性繊維ウェブ50の層があることにより、折り畳まれた状態のマスク用シート20の面(ガーゼ40の肌側面40b)同士を接合しやすくなる。よって、プリーツ型の場合により効果的である。
前述の実施形態では、マスク本体3は、不織布10とマスク用シート20が積層されて構成されていたが、これには限られない。例えば、他のシート部材(不織布等)がさらに積層されていてもよい。
1 マスク
3 マスク本体
3a 上端
3b 下端
3c 右端
3d 左端
5 耳掛け部
10 不織布
20 マスク用シート
30 襞部
31 保持部材
32 サイドシート
33 切欠き部
34 鼻カバー部
35 折り返し部
35a 山折り部
35b 谷折り部
36 溶着部
36a 図柄
40 ガーゼ
40a 非肌側面
40b 肌側面
41 構成糸
42 経糸
43 緯糸
45 織目
50 熱融着性繊維ウェブ(熱融着性繊維層)
51 繊維
D1、D2 最大厚み

Claims (9)

  1. 熱融着性繊維を含む不織布に接合されてマスクを構成するマスク用シートであって、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維のうち、前記ガーゼの前記肌側面から突出している繊維の本数が、前記肌側面から突出していない繊維の本数よりも少ない、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  2. 熱融着性繊維を含む不織布に接合されてマスクを構成するマスク用シートであって、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼの前記肌側面の側よりも非肌側面の側の方が単位面積当たりの繊維量が多い、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  3. 熱融着性繊維を含む不織布に接合されてマスクを構成するマスク用シートであって、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられる熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼよりも肌側に設けられた肌側延出部分と、前記ガーゼよりも非肌側に設けられた非肌側延出部分とを含み、前記非肌側延出部分の最大厚みは、前記肌側延出部分の最大厚みよりも大きい、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のマスク用シートであって、
    前記マスクはプリーツ型であり、
    前記ガーゼの前記肌側面同士が重なり合うように折り畳まれて、幅方向の端部で接合されている、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のマスク用シートであって、
    前記熱融着性繊維層は、親水性繊維と疎水性繊維を含む、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載のマスク用シートであって、
    前記不織布は、非熱融着性繊維をさらに含む、
    ことを特徴とするマスク用シート。
  7. 熱融着性繊維を含む不織布と、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられるとともに、前記不織布と接合される熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維のうち、前記ガーゼの前記肌側面から突出している繊維の本数が、前記肌側面から突出していない繊維の本数よりも少ない、
    ことを特徴とするマスク。
  8. 熱融着性繊維を含む不織布と、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられるとともに、前記不織布と接合される熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼの前記肌側面の側よりも非肌側面の側の方が単位面積当たりの繊維量が多い、
    ことを特徴とするマスク。
  9. 熱融着性繊維を含む不織布と、
    前記不織布よりも肌側に配置されるガーゼと、
    前記ガーゼと前記不織布との間に少なくとも設けられるとともに、前記不織布と接合される熱融着性繊維層と、
    を備え、
    前記熱融着性繊維層の繊維の一部が前記ガーゼと交絡しており、
    前記熱融着性繊維層の前記ガーゼと交絡している繊維の少なくとも一部は、前記ガーゼの肌側面から突出しており、
    前記熱融着性繊維層は、前記ガーゼよりも肌側に設けられた肌側延出部分と、前記ガーゼよりも非肌側に設けられた非肌側延出部分とを含み、前記非肌側延出部分の最大厚みは、前記肌側延出部分の最大厚みよりも大きい、
    ことを特徴とするマスク。
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