JP7298454B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明は、トランスポンダが埋設された空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、トランスポンダの通信性を確保することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、ブラダーを用いてグリーンタイヤを加硫する際、ブラダーとグリーンタイヤの内表面とはブラダーが貼り付き易いため、グリーンタイヤの内表面に離型剤を塗布することにより、グリーンタイヤとブラダーとの貼り付きを防止するようにしている。一般に、離型剤にはカーボンやマイカ、シリコーン等の材料が含まれており、これら材料の中でカーボンは電波を反射し易い特性がある。
このような空気入りタイヤの内部にトランスポンダを埋設した場合(例えば、特許文献1参照)、リーダライタを用いてトランスポンダと通信する際に、タイヤ内表面に形成された離型剤層(カーボン層)によって電波の反射が発生し、電波の打ち消し合いにより通信距離が低下するという問題がある。
本発明の目的は、トランスポンダの通信性を確保することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、タイヤ内表面に離型剤からなる離型剤層が形成された空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mmの位置と前記ベルト層の端末からタイヤ径方向内側に5mmの位置との間にタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、前記離型剤層が形成された前記タイヤ内表面の表面電気抵抗率Rが109Ω・cm~1015Ω・cmであることを特徴とするものである。
本発明の発明者は、トランスポンダの通信性を確保するにあたって、タイヤ内表面の表面電気抵抗率を規定することが有効であることを知見し、本発明に至ったのである。
本発明では、ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mmの位置とベルト層の端末からタイヤ径方向内側に5mmの位置との間にタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設されているので、金属干渉が生じにくく、トランスポンダの通信性を確保することができる。タイヤ内表面に形成された離型剤層にカーボンが含まれているとタイヤ内表面の表面電気抵抗率が低下する傾向があるが、離型剤層が形成されたタイヤ内表面の表面電気抵抗率Rを109Ω・cm~1015Ω・cmの範囲に設定することで、離型剤層に含まれるカーボンの含有量が調整され、カーボンに起因する通信時の電波の打ち消し合いを抑制することができ、トランスポンダの通信性の改善に寄与する。
本発明の空気入りタイヤにおいて、離型剤層は絶縁体を95重量%以上含むことが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
離型剤層の絶縁体を構成するシリコーンの量は80重量%以上であることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
離型剤層の電気抵抗率は離型剤層と隣接するゴム部材の電気抵抗率より大きいことが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
離型剤層の比誘電率は10以下であることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
離型剤層の厚さは20μm~200μmの範囲であることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
離型剤層における蛍光X線分析法で検出されるシリコーンの量は10重量%~25重量%の範囲であることが好ましい。これにより、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
トランスポンダの中心はタイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
トランスポンダはカーカス層とサイドウォール部でカーカス層の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接するように配置されていることが好ましい。これにより、通信時における電波の減衰が抑制され、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
トランスポンダの断面中心とタイヤ外表面との距離は2mm以上であることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、タイヤの耐外傷性を改善することができる。
カーカス層に沿ってタイヤ内表面にインナーライナー層が配置された空気入りタイヤであって、トランスポンダはカーカス層とインナーライナー層との間に配置されていることが好ましい。トランスポンダをカーカス層の巻き上げ部のタイヤ幅方向外側に配置した場合、サイドウォール部の損傷に伴ってトランスポンダが損傷することがあるが、これに対して、サイドウォール部の損傷に起因するトランスポンダの損傷を防ぐことができる。
トランスポンダの断面中心とタイヤ内表面との距離は1mm以上であることが好ましい。これにより、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、リム組み時のインナーライナー層の損傷に起因するトランスポンダの損傷を防ぐことができる。
トランスポンダはビードフィラーの上端からタイヤ径方向外側に5mmの位置とベルト層の端末からタイヤ径方向内側に5mmの位置との間に配置されていることが好ましい。これにより、トランスポンダはゴムゲージが薄いフレックスゾーンに配置されるが、この領域はトランスポンダの通信時における電波の減衰が少ないため、トランスポンダの通信性を効果的に改善することができる。
トランスポンダは被覆層により被覆され、被覆層の比誘電率は7以下であることが好ましい。これにより、トランスポンダが被覆層により保護され、トランスポンダの耐久性を改善することができると共に、トランスポンダの電波透過性を確保し、トランスポンダの通信性も十分に確保することができる。
トランスポンダは被覆層により被覆され、被覆層の厚さは0.5mm~3.0mmであることが好ましい。これにより、タイヤ外表面又はタイヤ内表面に凹凸を生じさせることなく、トランスポンダの通信性を十分に確保することができる。
トランスポンダはデータを記憶するIC基板とデータを送受信するアンテナとを有し、アンテナは螺旋状であることが好ましい。これにより、走行時におけるタイヤの変形に対して追従することができ、トランスポンダの耐久性を改善することができる。
本発明において、タイヤ内表面の表面電気抵抗率[Ω・cm]は、試験片(長さ50mm、幅50mm及び厚さ2mm)をタイヤから切り出し、その試験片の両端間に0.1Vの電圧を掛けて、測定環境23℃、60%RHの条件下で抵抗測定機を使用して測定される。また、ゴム部材の電気抵抗率は[Ω・cm]は、JIS-K6271に準拠して測定される。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1~4は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
一対のビード部3間には、複数本のカーカスコードをラジアル方向に配列してなる少なくとも1層(図1では1層)のカーカス層4が装架されている。カーカス層4を構成するカーカスコードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。各ビード部3には環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ外周側には、複数層(図1では2層)のベルト層7が埋設されている。ベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°~40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。
ベルト層7のタイヤ外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層(図1では2層)のベルトカバー層8が配置されている。図1において、タイヤ径方向内側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の全幅を覆うフルカバーを構成し、タイヤ径方向外側に位置するベルトカバー層8はベルト層7の端部のみを覆うエッジカバー層を構成している。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の両端末4eは、各ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返され、ビードコア5及びビードフィラー6を包み込むように配置されている。カーカス層4は、トレッド部1から各サイドウォール部2を経て各ビード部3に至る部分である本体部4Aと、各ビード部3においてビードコア5の廻りに巻き上げられて各サイドウォール部2側に向かって延在する部分である巻き上げ部4Bとを含む。
また、タイヤ内表面には、カーカス層4に沿ってインナーライナー層9が配置されている。トレッド部1にはキャップトレッドゴム層11が配置され、サイドウォール部2にはサイドウォールゴム層12が配置され、ビード部3にはリムクッションゴム層13が配置されている。サイドウォール部2でカーカス層4の外側に配置されたゴム層10は、サイドウォールゴム層12とリムクッションゴム層13とを含む。
また、上記空気入りタイヤにおいて、ビードコア5の上端5e(タイヤ径方向外側の端部)からタイヤ径方向外側に15mmの位置P1と、ベルト層7の端末7eからタイヤ径方向内側に5mmの位置P2との間にはトランスポンダ20が埋設されている。即ち、トランスポンダ20は、図2に示す領域S1に配置されている。また、トランスポンダ20はタイヤ周方向に沿って延在している。トランスポンダ20は、タイヤ周方向に対して-10°~10°の範囲で傾斜するように配置しても良い。
なお、図1及び図2の実施形態では、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがサイドウォール部2の中腹に配置された例を示したが、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがビードコア5の側方に配置されていても良い。このようなロータンナップ構造において、トランスポンダ20は、カーカス層4(より具体的にはビードフィラー6)とサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に当該ゴム層に当接しながら配置されていても良い。
トランスポンダ20として、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いることができる。トランスポンダ20は、図5(a),(b)に示すにように、データを記憶するIC基板21とデータを非接触で送受信するアンテナ22とを有している。このようなトランスポンダ20を用いることで、適時にタイヤに関する情報を書き込み又は読み出し、タイヤを効率的に管理することができる。なお、RFIDとは、アンテナ及びコントローラを有するリーダライタと、IC基板及びアンテナを有するIDタグから構成され、無線方式によりデータを交信可能な自動認識技術である。
トランスポンダ20の全体の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、図5(a),(b)に示すにように柱状や板状のものを用いることができる。特に、図5(a)に示す柱状のトランスポンダ20を用いた場合、タイヤの各方向の変形に対して追従することができるので好適である。この場合、トランスポンダ20のアンテナ22は、IC基板21の両端部の各々から突出し、螺旋状を呈している。これにより、走行時におけるタイヤの変形に対して追従することができ、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。更に、アンテナ22の長さを適宜変更することにより、通信性を確保することができる。
更に、上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ内表面には、離型剤からなる離型剤層30が形成されている。タイヤ内表面の表面電気抵抗率Rは109Ω・cm~1015Ω・cmの範囲である。好ましくは、タイヤ内表面の表面電気抵抗率Rが1014Ω・cm~1015Ω・cmの範囲である。このようにタイヤ内表面の表面電気抵抗率Rの範囲を特定することで、離型剤層30に含まれるカーボンの含有量を調整することができる。離型剤層30にカーボンが含まれていると、タイヤ内表面の表面電気抵抗率Rが低下する傾向がある。なお、カーボンの電気抵抗率(体積抵抗率)は10-1Ω・cmである。
離型剤として、カーボンが含まれていない離型剤を用いることが好ましいが、カーボンの量が5重量%未満である離型剤を用いると良い。特に、離型剤はシリコーン、マイカ及びタルクから構成される絶縁体を含み、その絶縁体を構成するシリコーンの量が80重量%以上である離型剤を用いると良い。シリコーン成分としては、オルガノポリシロキサン類が挙げられ、例えば、ジアルキルポリシロキサン、アルキルフェニルポリシロキサン、アルキルアラルキルポリシロキサン、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等を挙げることができる。ジアルキルポリシロキサンは、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサンである。アルキルフェニルポリシロキサンは、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体である。アルキルアラルキルポリシロキサンは、例えば、メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサンである。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種または2種以上を併用してもよい。
上述した空気入りタイヤでは、ビードコア5の上端5eからタイヤ径方向外側に15mmの位置P1とベルト層7の端末7eからタイヤ径方向内側に5mmの位置P2との間にタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダ20が埋設されているので、金属干渉が生じにくく、トランスポンダ20の通信性を確保することができる。タイヤ内表面に形成された離型剤層30にカーボンが含まれているとタイヤ内表面の表面電気抵抗率が低下する傾向があるが、離型剤層30が形成されたタイヤ内表面の表面電気抵抗率Rを109Ω・cm~1015Ω・cmの範囲に設定することで、離型剤層30に含まれるカーボンの含有量が調整され、カーボンに起因する通信時の電波の打ち消し合いを抑制することができ、トランスポンダ20の通信性の改善に寄与する。
ここで、トランスポンダ20が位置P1よりタイヤ径方向内側に配置されていると、リムフランジとの金属干渉が発生し、トランスポンダ20の通信性が低下する傾向がある。また、トランスポンダ20が位置P2よりタイヤ径方向外側に配置されていると、ベルト層7との金属干渉が発生し、トランスポンダ20の通信性が低下する傾向がある。
上記空気入りタイヤにおいて、離型剤層30は絶縁体を95重量%以上含むことが好ましく、更には、離型剤層30の絶縁体を構成するシリコーンの量は80重量%以上であることがより好ましい。このように離型剤を組成することで、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、絶縁体を構成するシリコーン、マイカ及びタルクの電気抵抗率(体積抵抗率)は、順に1014Ω・cm~1015Ω・cm、1010Ω・cm~1013Ω・cm、1014Ω・cm以上である。
また、離型剤層30の電気抵抗率は、離型剤層30と隣接するゴム部材の電気抵抗率より大きいことが好ましい。例えば、離型剤層30と隣接するゴム部材は、ブチルゴムからなるインナーライナー層9である。このように離型剤層30の電気抵抗率を設定することで、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。
更に、離型剤層30の比誘電率は10以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、4以下であることが最も好ましい。このように離型剤層30の比誘電率を適度に設定することで、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、離型剤層30を構成するシリコーン、マイカ及びタルクの比誘電率は、順に2.60~2.75、5.0~8.0、1.6~2.0である。
上記空気入りタイヤにおいて、離型剤層30の厚さは20μm~200μmの範囲である、或いは、離型剤層30における蛍光X線分析法で検出されるシリコーンの量は10重量%~25重量%の範囲であることが好ましい。このように離型剤層30の厚さ又は量を適度に設定することで、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。
ここで、離型剤層30の厚さは電子顕微鏡を用いて検出することができる。電子顕微鏡で離型剤の厚さを測定する際には、上記空気入りタイヤをタイヤ幅方向に沿って切り出したサンプルを用い、該サンプルにおいて複数の箇所(例えば、タイヤ周方向4箇所及びタイヤ幅方向3箇所)の厚さを測定する。そして、上記複数の箇所で測定された測定値を平均することにより、離型剤の厚さ(平均厚さ)を算出する。
また、本発明では、タイヤ内表面に形成された離型剤層30の量を規定するにあたって、一般的な離型剤の主成分であるシリコーン(ケイ素)の量を指標とする。このシリコーン(ケイ素)の量は蛍光X線分析法を用いて検出することができ、一般に、蛍光X線分析法にはFP法(ファンダメンタルパラメータ法)と検量線法とがあるが、本発明ではFP法を採用する。離型剤(ケイ素)の量を測定する際には、上記空気入りタイヤの複数の箇所(例えば、タイヤ周方向4箇所及びタイヤ幅方向3箇所の計7箇所)においてカーカス層及びインナーライナー層を剥離して得られたシートサンプル(寸法:幅70mm、長さ100mm)を用い、各シートサンプルから更に角部4箇所及び中央部1箇所の計5箇所の測定サンプル(寸法:幅13mm~15mm、長さ35mm~40mm)を抜き取り、各測定サンプルについて蛍光X線分析装置を用いて離型剤の量を測定する。そして、上記シートサンプル毎に5つの測定サンプルの測定値を平均することによりシートサンプル毎の離型剤の量が算出され、その算出値がそれぞれ10重量%~25重量%の範囲である。また、蛍光X線粒子は原子番号に比例した固有のエネルギーを有しており、この固有エネルギーを測定することにより元素を特定することが可能となる。具体的には、ケイ素の固有エネルギーは1.74±0.05keVである。なお、離型剤(ケイ素)の蛍光X線粒子数(X線強度)は0.1cps/μA~1.5cps/μAの範囲である。
これに対して、離型剤層30の厚さが20μmより薄いと、タイヤ内表面の外観的な異常が発生しやすくなり、離型剤層30の厚さが200μmより厚いと、電波の減衰によりトランスポンダ20の通信距離が短くなる傾向がある。また、離型剤層30に含まれるシリコーンの量が10重量%より少ないと、タイヤ内表面の外観的な異常が発生しやすくなり、離型剤層30に含まれるシリコーンの量が25重量%より多いと、電波の減衰によりトランスポンダ20の通信距離が短くなる傾向がある。
上記空気入りタイヤにおいて、トランスポンダ20は、カーカス層4とゴム層10との間にゴム層10に当接するように配置されていると良い。即ち、トランスポンダ20は、タイヤ幅方向の配置領域として、カーカス層4とサイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13との間に当該ゴム層に当接しながら配置されていると良い。このようにトランスポンダ20が配置された場合、通信時における電波の減衰が抑制され、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。
また、トランスポンダ20は、ビードフィラー6の上端6eからタイヤ径方向外側に5mmの位置P3と、ベルト層7の端末7eからタイヤ径方向内側に5mmの位置P2との間に配置されていると良い。即ち、トランスポンダ20は、図2に示す領域S2に配置されていると良い。領域S2はゴムゲージが薄いフレックスゾーンであるが、トランスポンダ20が領域S2に配置された場合、トランスポンダ20の通信時における電波の減衰が少なくなり、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。
図3に示すように、タイヤ周上には、タイヤ構成部材の端部同士が重ねられてなる複数のスプライス部がある。図3には各スプライス部のタイヤ周方向の位置Qが示されている。トランスポンダ20の中心は、タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることが好ましい。即ち、トランスポンダ20は、図3に示す領域S3に配置されていると良い。具体的には、トランスポンダ20を構成するIC基板21が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していると良い。更には、アンテナ22を含むトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることがより好ましく、被覆ゴムにより被覆された状態のトランスポンダ20の全体が位置Qからタイヤ周方向に10mm以上離間していることが最も好ましい。また、トランスポンダ20と離間して配置するタイヤ構成部材として、トランスポンダ20と隣接して配置され得るインナーライナー層9、カーカス層4、サイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13であることが好ましい。このようにタイヤ構成部材のスプライス部から離間させてトランスポンダ20を配置することで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができる。
なお、図3の実施形態では、各タイヤ構成部材のスプライス部のタイヤ周方向の位置Qが等間隔に配置された例を示したが、これに限定されるものではない。タイヤ周方向の位置Qは任意の位置に設定することができ、いずれの場合であってもトランスポンダ20は各タイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間するように配置される。
図4に示すように、トランスポンダ20の断面中心とタイヤ外表面との距離d1は2mm以上であることが好ましい。このようにトランスポンダ20とタイヤ外表面とを離間させることで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、タイヤの耐外傷性を改善することができる。
また、トランスポンダ20は被覆層23により被覆されていると良い。この被覆層23は、トランスポンダ20の表裏両面を挟むようにしてトランスポンダ20の全体を被覆する。被覆層23は、サイドウォールゴム層12又はリムクッションゴム層13を構成するゴムと同じ物性を有するゴムで構成しても良く、異なる物性を有するゴムで構成しても良い。このようにトランスポンダ20が被覆層23により保護されていることで、トランスポンダ20の耐久性を改善することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、トランスポンダ20が被覆層23により被覆された状態で、被覆層23の比誘電率は7以下であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。このように被覆層23の比誘電率を適度に設定することで、トランスポンダ20が電波を放射する際の電波透過性を確保し、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。なお、被覆層23を構成するゴムの比誘電率は、常温において860MHz~960MHzの比誘電率である。ここで、常温はJIS規格の標準状態に準拠し、23±2℃、60%±5%RHである。当該ゴムは23℃、60%RHで24時間処理された後に比誘電率が計測される。上述した860MHz~960MHzの範囲は、現状のUHF帯のRFIDの割り当て周波数に該当するが、上記割り当て周波数が変更された場合、その割り当て周波数の範囲の比誘電率を上記の如く規定すれば良い。
また、トランスポンダ20が被覆層23により被覆された状態で、被覆層23の厚さtは0.5mm~3.0mmであることが好ましく、1.0mm~2.5mmであることがより好ましい。ここで、被覆層23の厚さtは、トランスポンダ20を含む位置でのゴム厚さであり、例えば、図4に示すようにトランスポンダ20の中心を通ってタイヤ外表面と直交する直線上での厚さt1と厚さt2を合計したゴム厚さである。このように被覆層23の厚さtを適度に設定することで、タイヤ外表面又はタイヤ内表面に凹凸を生じさせることなく、トランスポンダ20の通信性を効果的に改善することができる。ここで、被覆層23の厚さtが0.5mmより薄いと、トランスポンダ20の通信性の改善効果を得ることができず、逆に被覆層23の厚さtが3.0mmを超えると、タイヤ外表面又はタイヤ内表面に凹凸が生じ、好ましくない。なお、被覆層23の断面形状は、特に限定されるものではないが、例えば、三角形や長方形、台形、紡錘形を採用することができる。図4の被覆層23では略紡錘形の断面形状を有している。
図6及び図7は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤの変形例を示すものである。図6及び図7において、図1~図4と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
図6に示すように、カーカス層4とインナーライナー層9との間にはトランスポンダ20が埋設されている。トランスポンダをカーカス層とサイドウォールゴム層又はリムクッションゴム層との間に当該ゴム層に当接するように配置した場合、サイドウォール部の損傷に伴ってトランスポンダが損傷することがある。これに対して、図6のようにカーカス層4とインナーライナー層9との間にトランスポンダ20を埋設した場合、サイドウォール部2の損傷に起因するトランスポンダ20の損傷を防ぐことができる。
図7に示すように、トランスポンダ20の断面中心とタイヤ内表面との距離d2は1mm以上であることが好ましい。このようにトランスポンダ20とタイヤ内表面とを離間させることで、タイヤの耐久性を効果的に改善することができると共に、リム組み時のインナーライナー層9の損傷に起因するトランスポンダ20の損傷を防ぐことができる。
上述した実施形態では、1層のカーカス層を有する空気入りタイヤの例を示したが、特に限定されるものではなく、2層のカーカス層を有していても良い。また、上述した実施形態では、カーカス層4の巻き上げ部4Bの端末4eがビードフィラー6の上端6eを超えてサイドウォール部2の中腹に配置された例を示したが、これに限定されるものではなく、任意の高さに配置することができる。
タイヤサイズ265/40ZR20で、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、タイヤ内表面に離型剤からなる離型剤層が形成された空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、離型剤層(成分、表面電気抵抗率、比誘電率及び厚さ)、トランスポンダの位置(タイヤ径方向)を表1のように設定した比較例1~3及び実施例1~9のタイヤを製作した。
なお、表1において、タイヤ内表面に形成された離型剤層の厚さ[μm]は、走査電子顕微鏡(SEM-EDX)を用いて、製作工程終了後の各試験タイヤのタイヤ周方向4箇所及びタイヤ幅方向3箇所における離型剤層の厚さを測定し、これら測定値を平均したものである。また、表1において、トランスポンダの位置(タイヤ径方向)は、図8に示すA~Fのそれぞれの位置に対応する。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、トランスポンダの通信性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
通信性(トランスポンダ):
各試験タイヤについて、リーダライタを用いてトランスポンダとの通信作業を実施した。具体的には、リーダライタにおいて出力250mW、搬送波周波数860MHz~960MHzとして通信可能な最長距離を測定した。評価結果は、比較例2を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通信性が優れていることを意味する。
各試験タイヤについて、リーダライタを用いてトランスポンダとの通信作業を実施した。具体的には、リーダライタにおいて出力250mW、搬送波周波数860MHz~960MHzとして通信可能な最長距離を測定した。評価結果は、比較例2を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど通信性が優れていることを意味する。
この表1から判るように、実施例1~9の空気入りタイヤは、トランスポンダの通信性が改善されていた。
一方、比較例1においては、タイヤ内表面に形成された離型剤層にカーボンが含まれていたため、トランスポンダの通信性が悪化した。比較例3は、トランスポンダのタイヤ径方向の位置が本発明で規定する範囲から外れていたので、トランスポンダの通信性が悪化した。
次に、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、タイヤ内表面に離型剤からなる離型剤層が形成された空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、離型剤層(成分、表面電気抵抗率、比誘電率及び量)、トランスポンダの位置(タイヤ径方向)を表2のように設定した比較例4~6及び実施例10~18のタイヤを製作した。
なお、表2において、タイヤ内表面に形成された離型剤層のシリコーンの量は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(島津製作所社製 EDX-720)を用いて、製作工程終了後の各試験タイヤのタイヤ周方向4箇所及びタイヤ幅方向3箇所でそれぞれ測定されたシリコーンの量に基づいて算出された算出値を平均したものである。測定条件としては、真空状態で、電圧50kV、電流100μA、積分時間50秒、コリメータφ10mmである。
これら試験タイヤについて、トランスポンダの通信性を評価し、その結果を表2に併せて示した。なお、表2において、トランスポンダの通信性の評価結果は、比較例5を100とする指数にて示した。
この表2から判るように、実施例10~18の空気入りタイヤは、トランスポンダの通信性が改善されていた。
一方、比較例4においては、タイヤ内表面に形成された離型剤層にカーボンが含まれていたため、トランスポンダの通信性が悪化した。比較例6は、トランスポンダのタイヤ径方向の位置が本発明で規定する範囲から外れていたので、トランスポンダの通信性が悪化した。
次に、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、一対のビード部間にカーカス層が装架され、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、タイヤ内表面に離型剤からなる離型剤層が形成された空気入りタイヤにおいて、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向、タイヤ径方向及びタイヤ周方向)、トランスポンダとタイヤ外表面の距離、トランスポンダとタイヤ内表面の距離、被覆層の比誘電率、被覆層の厚さ、トランスポンダの形態を表3及び表4のように設定した比較例7及び実施例19~37のタイヤを製作した。
ここで、比較例7及び実施例19~37のタイヤはタイヤ内表面の表面電気抵抗率Rが109Ω・cmである。
なお、表3及び表4において、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「W」の場合、トランスポンダがビードフィラーとカーカス層との間に配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「X」の場合、トランスポンダがカーカス層とインナーライナー層との間に配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Y」の場合、トランスポンダがカーカス層とサイドウォールゴム層との間にサイドウォールゴム層に当接して配置され、トランスポンダの位置(タイヤ幅方向)が「Z」の場合、トランスポンダがカーカス層とリムクッションゴム層との間にリムクッションゴム層に当接して配置されていることを示す。また、表3及び表4において、トランスポンダの位置(タイヤ径方向)は、図8に示すA~Fのそれぞれの位置に対応する。更に、表3及び表4において、トランスポンダの位置(タイヤ周方向)は、トランスポンダの中心からタイヤ構成部材のスプライス部までのタイヤ周方向に測定された距離[mm]を示す。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、タイヤ評価(耐久性、耐外傷性及び
外観性)並びにトランスポンダ評価(通信性、耐久性、耐外傷性及び耐損傷性)を実施し、その結果を表3及び表4に併せて示した。なお、トランスポンダの通信性の評価結果は、実施例19を100とする指数にて示した。
外観性)並びにトランスポンダ評価(通信性、耐久性、耐外傷性及び耐損傷性)を実施し、その結果を表3及び表4に併せて示した。なお、トランスポンダの通信性の評価結果は、実施例19を100とする指数にて示した。
耐久性(タイヤ及びトランスポンダ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付け、空気圧120kPa、最大負荷荷重に対して102%、走行速度81kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した後、タイヤに故障が発生した際の走行距離を測定した。評価結果は、走行距離が6480kmに達した場合を「◎(優)」で示し、走行距離が4050km以上6480km未満の場合を「○(良)」で示し、走行距離が3240km以上4050km未満の場合を「△(可)」で示し、走行距離が3240km未満の場合を「×(不可)」の4段階で示した。更に、走行終了後に各試験タイヤのタイヤ外表面を目視し、タイヤの故障がトランスポンダを起点とするものであるか否かを確認した。評価結果はその故障の有無を示した。
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付け、空気圧120kPa、最大負荷荷重に対して102%、走行速度81kmの条件でドラム試験機にて走行試験を実施した後、タイヤに故障が発生した際の走行距離を測定した。評価結果は、走行距離が6480kmに達した場合を「◎(優)」で示し、走行距離が4050km以上6480km未満の場合を「○(良)」で示し、走行距離が3240km以上4050km未満の場合を「△(可)」で示し、走行距離が3240km未満の場合を「×(不可)」の4段階で示した。更に、走行終了後に各試験タイヤのタイヤ外表面を目視し、タイヤの故障がトランスポンダを起点とするものであるか否かを確認した。評価結果はその故障の有無を示した。
耐外傷性(タイヤ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPa、走行速度20km/hの条件で、高さ100mmの縁石に接触させながら走行するという走行試験を実施した。走行後に目視でタイヤ外表面の破損の有無を確認した。評価結果は、タイヤ外表面の破損の有無を示した。
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPa、走行速度20km/hの条件で、高さ100mmの縁石に接触させながら走行するという走行試験を実施した。走行後に目視でタイヤ外表面の破損の有無を確認した。評価結果は、タイヤ外表面の破損の有無を示した。
外観性(タイヤ):
各試験タイヤについて、トランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ外表面を目視で確認した。評価結果は、タイヤ外表面においてトランスポンダの配置に起因する凹凸がなかった場合を「良好」とし、凹凸があった場合を「不良」として示した。
各試験タイヤについて、トランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ外表面を目視で確認した。評価結果は、タイヤ外表面においてトランスポンダの配置に起因する凹凸がなかった場合を「良好」とし、凹凸があった場合を「不良」として示した。
耐外傷性(トランスポンダ):
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPa、走行速度20km/hの条件で、高さ100mmの縁石に乗り上げるという走行試験を実施した。走行後に、トランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ外表面の破損を確認した。評価結果は、トランスポンダの配置に起因するタイヤ外表面の破損の有無を示した。
各試験タイヤを標準リムのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧230kPa、走行速度20km/hの条件で、高さ100mmの縁石に乗り上げるという走行試験を実施した。走行後に、トランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ外表面の破損を確認した。評価結果は、トランスポンダの配置に起因するタイヤ外表面の破損の有無を示した。
リム組み時の耐損傷性(トランスポンダ):
各試験タイヤについて、リムの交換を実施した際にトランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ内表面を目視した。評価結果は、インナーライナーの損傷に起因するトランスポンダの損傷の有無を示した。
各試験タイヤについて、リムの交換を実施した際にトランスポンダの配置箇所に対応するタイヤ内表面を目視した。評価結果は、インナーライナーの損傷に起因するトランスポンダの損傷の有無を示した。
表3及び表4から判るように、実施例20~37は、タイヤ評価及びトランスポンダ評価において各種の改善効果が確認できた。一方、比較例7は、トランスポンダのタイヤ径方向の位置が本発明で規定する範囲から外れていたので、トランスポンダの通信性が悪化した。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4A 本体部
4B 巻き上げ部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
9 インナーライナー層
20 トランスポンダ
30 離型剤層
CL タイヤ中心線
P1~P3 位置
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4A 本体部
4B 巻き上げ部
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
9 インナーライナー層
20 トランスポンダ
30 離型剤層
CL タイヤ中心線
P1~P3 位置
Claims (16)
- タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、各ビード部のビードコアの外周上にビードフィラーが配置され、前記一対のビード部間に少なくとも1層のカーカス層が装架され、前記トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層が配置され、タイヤ内表面に離型剤からなる離型剤層が形成された空気入りタイヤにおいて、
前記ビードコアの上端からタイヤ径方向外側に15mmの位置と前記ベルト層の端末からタイヤ径方向内側に5mmの位置との間にタイヤ周方向に沿って延在するトランスポンダが埋設され、前記離型剤層が形成された前記タイヤ内表面の表面電気抵抗率Rが109Ω・cm~1015Ω・cmであることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記離型剤層が絶縁体を95重量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記離型剤層の絶縁体を構成するシリコーンの量が80重量%以上であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記離型剤層の電気抵抗率が該離型剤層と隣接するゴム部材の電気抵抗率より大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記離型剤層の比誘電率が10以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記離型剤層の厚さが20μm~200μmの範囲であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記離型剤層における蛍光X線分析法で検出されるシリコーンの量が10重量%~25重量%の範囲であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダの中心がタイヤ構成部材のスプライス部からタイヤ周方向に10mm以上離間して配置されていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが前記カーカス層と前記サイドウォール部で前記カーカス層の外側に配置されたゴム層との間に該ゴム層に当接するように配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダの断面中心とタイヤ外表面との距離が2mm以上であることを特徴とする請求項9に記載の空気入りタイヤ。
- 前記カーカス層に沿ってタイヤ内表面にインナーライナー層が配置された空気入りタイヤであって、前記トランスポンダが前記カーカス層と前記インナーライナー層との間に配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダの断面中心とタイヤ内表面との距離が1mm以上であることを特徴とする請求項11に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが前記ビードフィラーの上端からタイヤ径方向外側に5mmの位置と前記ベルト層の端末からタイヤ径方向内側に5mmの位置との間に配置されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが被覆層により被覆され、該被覆層の比誘電率が7以下であることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダが被覆層により被覆され、該被覆層の厚さが0.5mm~3.0mmであることを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記トランスポンダがデータを記憶するIC基板とデータを送受信するアンテナとを有し、該アンテナが螺旋状であることを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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