以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、一分子中に、上記式(a)で表される2価の基と、オキサゾリドン環構造とを、各々少なくとも1個有し、Mwが1000~20000である。ここで、MwはGPC測定により求められ、GPC測定条件は実施例に記載した条件による。
式(a)において、置換基R1は必須であり、それぞれ独立して、炭素数1~11の炭化水素基又は炭素数1~11の炭化水素オキシ基を表す。R2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~11の炭化水素基、又は炭素数1~11の炭化水素オキシ基を表す。
炭素数1~11の炭化水素基としては、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~11のアラルキル基等が挙げられる。炭素数1~11の炭化水素オキシ基としては、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数7~11のアラルキルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数6~10のアリールオキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基がより好ましい。
炭素数1~8のアルキル基又はアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、メチルブチル基、ジメチルブチル基、メチルヘキシル基、ジメチルペンチル基、エチルペンチル基、トリメチルブチル基、イソオクチル基、エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、t-ペンチルオキシ基、メチルブトキシ基、ジメチルブトキシ基、メチルヘキシルオキシ基、ジメチルペンチルオキシ基、エチルペンチルオキシ基、トリメチルブトキシ基、イソオクチルオキシ基、エチルヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、メチルシクロヘキシルオキシ基、ジメチルシクロヘキシルオキシ基、エチルシクロヘキシルオキシ基、メチルシクロヘプチルオキシ基等が挙げられる。
炭素数6~10のアリール基又はアリールオキシ基としては、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、キシリル基、プロピルフェニル基、トリメチルフェニル基、ナフチル基、インダニル基、フェノキシ基、トリルオキシ基、エチルフェノキシ基、キシリルオキシ基、プロピルフェノキシ基、トリメチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
炭素数7~11のアラルキル基又はアラルキルオキシ基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、フェネチル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルイソプロピル基、ナフチルメチル基、ベンジルオキシ基、メチルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、トリメチルベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、1-フェニルエチルオキシ基、2-フェニルイソプロピルオキシ基、ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
R1の置換位置は、Xと結合する炭素原子に対して、オルソ位、メタ位、パラ位のいずれかであってもよいが、オルソ位、メタ位が好ましい。
式(a)において、R2はそれぞれ独立して、水素原子又はR1と同様の置換基である。R1は、R2とは異なり、水素原子であることは無いので、式(a)の2つのベンゼン環は、それぞれ、少なくとも2つの置換基R1で置換されている必要がある。
式(a)において、Xは、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C2H4-、-C(CF3)2-、-S-、-S-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-CO-O-、-CH2-O-CH2-、フェニレン基、フェニレンビス(メチレン)基、フェニルメチレン基、ジフェニルメチレン基、9H-フルオレン-9-イリデン基、又は多環脂肪族環のジイル基のいずれかを表す。なお、Xがベンゼン環を有する場合、そのベンゼン環は上記R1と同様の置換基を有してもよい。
多環脂肪族環のジイル基としては、脂肪族環が2個以上ある構造のジイルであればよい。例えば、ビシクロ[4.4.0]デシルジイル基、ビシクロヘキシルジイル基、スピロビシクロヘキサンジイル基、アダマンタンジイル基、アダマンタンビス(メチレン)基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジイル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイル基(テトラヒドロジシクロペンタジエンジイル基)、4,9:5,8-ジメタノドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[b]ナフタレンジイル基(テトラヒドロトリシクロペンタジエンジイル基)、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレンジイル基等が挙げられる。
式(a)において、各ベンゼン環の置換基はそれぞれ2個以上が必要であり、多いほど溶剤溶解性が良好になる。また、置換基の炭素数の総和は誘電特性に影響があり、多いほど誘電特性の低減に効果がある。よって、置換基の数が2個以上であり、各置換基の炭素数が3以上のものを含むことが好ましい。好ましいR1としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、1-フェニルエチル基であり、好ましいR2としては、水素原子、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、1-フェニルエチル基である。
Xとしては、溶剤溶解性と耐熱性の観点から、-S-、-S-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-CO-O-、-CH2-O-CH2-、-C(CF3)2-、テトラヒドロジシクロペンタジエンジイル基、テトラヒドロトリシクロペンタジエンジイル基が好ましく、-S-、-S-S-、-SO2-、-O-、-CO-、-CO-O-、-CH2-O-CH2-、-C(CF3)2-、テトラヒドロジシクロペンタジエンジイル基がより好ましく、-O-、-S-、-SO2-、テトラヒドロジシクロペンタジエンジイル基が更に好ましい。これらの構造は、運動性が制御されるために耐熱性が向上し、かつ分極構造をとるために溶剤溶解性は良好になると考えられる。
式(a)において、2つのベンゼン環に対するXの結合位置は、2,2’位、2,3’位、2,4’位、3,3’位、3,4’位、4,4’位のいずれでもよいが、好ましくは4,4’位である。
式(a)は、下記式(1a)~(1i)で表される構造が好ましい。
式(a)で表される2価の基とオキサゾリドン環構造とを一分子内に有する好ましい構造は、上記式(1)で表される構造であり、より好ましい構造は上記式(2)で表される構造である。
式(1)において、Wは上記式(a)で表される2価の基である。Yはポリイソシアネート化合物からイソシアネート基を2個除いた残基であり、置換基を有していてもよい2価以上の官能基を表し、下記式(2a)~(2k)で表される構造が好ましい。Yが3官能以上のポリイソシアネート化合物から生じる基である場合は、置換基としてオキサゾリドン環含有基、ウレタン結合含有基等を有することができる。
本発明のオキサゾリドン環エポキシ樹脂は、上記式(1)、式(2)等で表されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂単独であってもよい。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、後記する本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の製造方法により有利に得ることができるが、通常、副生物を含むオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂として得られる。ここで、副生物は未反応物を含む意味であると解される。本発明のオキサゾリドン環エポキシ樹脂は、この副生物を含むオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を含む。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂単独のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1と、副生物を含むオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2を区別する必要があるときは、上記のようにA1、A2を付すものとする。
好適な本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2は、上記のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1を5~55質量%と、上記式(a)の2価の基を有し、オキサゾリドン環を含有しないエポキシ樹脂Bを含むオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。
ここで、上記エポキシ樹脂Bは、上記副生物に対応する。副生物としては、エポキシ樹脂とポリイソシアネートから、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を得る場合において、未反応エポキシ樹脂、ウレタン構造を有するエポキシ樹脂等がある。
また、本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、上記式(3)で表されるエポキシ樹脂(a1)を50質量%以上含有するエポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)より得られ、エポキシ当量(g/eq.)は200~1600である。
このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、通常、副生物を含むオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2である。これから、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1を単離することも可能であるが、多くの用途にあってはその必要がなく、単離することなく使用される。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2からオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1を単離又は濃縮する場合、従来の単離方法が使用できる。例えば、高真空下で、エポキシ樹脂A2を加熱することで、未反応エポキシ樹脂を蒸発別離し、残留分として単離又は濃縮されたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を得る方法や、クロマトグラフィー分離により単離又は濃縮されたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を得る方法等が挙げられる。しかしながら、いずれの方法でも工業的に量産化が難しく実用的ではないため、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2の状態で使用する方が好ましい。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2中の式(1)で表される構造の含有量は、5~65質量%が好ましく、10~65質量%がより好ましく、15~60質量%が更に好ましい。この含有量が少ないと誘電率、誘電正接を下げる効果が発現しない恐れがある。また、含有量が多いと溶剤溶解性の悪化や樹脂粘度の増大といった悪影響や半田リフローの温度において弾性率が低下し使用上の懸念がある。なお、この含有量が100質量%近くにならない理由は、前述した通り、オキサゾリドン環構造を有しない原料エポキシ樹脂(a)等の副生物を含むためである。
式(2)中、Zは置換基を有していてもよい2価の基を表し、全Z中の5~100モル%が式(a)で表される2価の基である。Yは式(1)のYと同義である。Gはグリシジル基を表す。nは繰り返し数を表し、その平均値は1~5であり、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量と、Z,Yの構造によって、計算で求められる。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1の形で使用する場合、Zの内、式(a)は5モル%以上あれば本発明の効果を発現する。しかしながら、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2の形で使用する場合は、Zの内、式(a)は50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましい。
以下、本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の製造方法について説明し、併せて本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の説明をする。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の製造方法では、上記式(3)で表されるエポキシ樹脂(a1)を50質量%以上含有するエポキシ樹脂(a)と、イソシアネート化合物(b)を、触媒存在下で、反応温度100℃以上250℃以下の範囲で反応させる。
式(3)において、Wは式(1)のWと同義であり、Gはグリシジル基を表し、mは繰り返し数を表し、平均値は0~5である。
上記製造方法では、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2を有利に製造することができる。この製造方法で得られるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、目的生成物である上記式(1)で表される構造を有するオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のほか、副生物として、式(3)で表される原料エポキシ樹脂や、式(3)で表される原料エポキシ樹脂のOH基とポリイソシアネート化合物から生じるウレタン結合を有するエポキシ樹脂を含む。
式(1)で表される構造の含有量は定量MNR等で求めることができる。定量NMRで測定する場合、まず構造因子分析により使用されている原料(エポキシ樹脂、イソシアネート化合物)を推測し、推測した原料から検量線用の標準物質を合成する。この場合の原料エポキシ樹脂は、式(3)のmが0であることが好ましい。mを0にする方法は従来知られている方法で構わない。例えば、原料フェノール化合物に対し、10~20倍モル量のエピクロルヒドリンを用いて反応を行った後、得られたエポキシ樹脂を減圧蒸留によってm=0成分のみを流出成分として分離する方法等がある。こうして得られたm=0成分のエポキシ樹脂をイソシアネート化合物と反応し、得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂から式(2)のn=1成分のみを分別して検量線用の標準物質とする。検量線用には少量でも構わないので、GPCによる分取が効率的である。こうして得られた標準物質を用いて検量線を作成することで定量が可能となる。
上記オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、赤外吸収スペクトルによる分析で、オキサゾリドン環のカルボニル基の伸縮振動に由来する1745~1760cm-1に含まれるピークの最大値を吸光度Ox、ウレタン結合構造のカルボニル基の伸縮振動ピークに由来する1730~1740cm-1に含まれるピークの最大値を吸光度Urとしたとき、吸光度比Ox/Urが1.35以上であることが好ましい。吸光度比Ox/Urが1.35以上であれば、ウレタン結合はほぼ無視できるため、原料のエポキシ樹脂とイソシアネート化合物の種類や仕込量が分かっていれば、オキサゾリドン環構造の生成量を計算で求めることもできる。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1のGPC測定による重量平均分子量Mwは、1000~20000の範囲であり、1200~18000以下の範囲が好ましく、1300~16000がより好ましく、1400~14000が更に好ましい。Mwが低いと接着性が悪化する恐れがある。また、オキサゾリドン環の含有量が少なくなり、誘電率が高くなる恐れがある。また、Mwが高いとオキサゾリドン環の含有量が必要以上に多くなり、溶剤溶解性の悪化や樹脂粘度の増大といった悪影響や、半田リフローの温度において弾性率が低下し使用上の懸念がある。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1のエポキシ当量(g/eq.)は、500~2500が好ましく、600~2000がより好ましく、650~1500が更に好ましい。エポキシ当量が低いと、分子長が短くなり接着性が悪化する恐れがある。また、硬化物中の水酸基濃度が高くなるため、誘電率、誘電正接が高くなる恐れがある。エポキシ当量が高いと必要以上に分子長が長くなり、溶剤溶解性の悪化や樹脂粘度の増大といった悪影響や、半田リフローの温度において弾性率が低下し使用上の懸念がある。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1の軟化点は、式(1)のXやYの構造や、エポキシ当量によって変化する。プリプレグやフィルム材料にオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1を単独で使用する場合は、90~150℃が好ましく、90~160℃がより好ましく、90~140℃が更に好ましい。この場合、軟化点が低すぎることの懸念はないので下限値は特に気にすることはない。軟化点が高いと樹脂粘度が高くなり、プリプレグへの含浸性の悪化や、溶剤溶解性の悪化や、加熱乾燥するときに希釈溶媒が揮発せずに樹脂中に残存することから積層板を作成するときにボイドが発生する等、使用上問題となる恐れがある。
本発明の製造方法において、イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基が、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基と反応するとオキサゾリドン環が形成され、エポキシ樹脂(a)に含まれるアルコール性水酸基と反応するとウレタン結合が形成される。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂中に含まれるウレタン結合の濃度が高くなると、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。吸光度比Ox/Urは1.35以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。吸光度比Ox/Urは1.35未満の場合、これを含むエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2のエポキシ当量は、200~1600が好ましく、250~1400がより好ましく、275~1300が更に好ましく、275~1200が特に好ましい。エポキシ当量が低いと、オキサゾリドン環の含有量が少なくなり、また硬化物中の水酸基濃度が高くなるため、誘電率、誘電正接が高くなる恐れがある。また、エポキシ当量が高いとオキサゾリドン環の含有量が必要以上に多くなり、溶剤溶解性の悪化や樹脂粘度の増大や半田リフローの温度において弾性率が低下し使用上の懸念がある。
また、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2の軟化点は、プリプレグやフィルム材料に使用する場合は50~150℃が好ましく、65~135℃がより好ましく、70~110℃が更に好ましい。軟化点が低いと樹脂ワニスをガラスクロス含浸した後、オーブン中で加熱乾燥するときに粘度が低いため樹脂の付着量が少なくなる恐れがある。軟化点が高いと樹脂粘度が高くなり、プリプレグへの含浸性の悪化や、溶剤溶解性の悪化や、加熱乾燥するときに希釈溶媒が揮発せずに樹脂中に残存することから積層板を作成するときにボイドが発生する等、使用上問題となる恐れがある。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂には、式(a)の構造以外に、ビフェノール、ビスフェノールZ、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール又はフェノールノボラック等由来の骨格を含んでもよく、その芳香族環に置換基として、上記R1と同様の置換基を有してもよい。また、式(a)のR2が全て水素原子であり、R1の1つ以上が水素原子である構造を含んでもよい。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の製造方法で使用するエポキシ樹脂(a)は、式(3)で表されるエポキシ樹脂(a1)を50質量%以上含有する。含有率は65質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。本発明の効果が最も発現される配合は、エポキシ樹脂(a1)の単独使用(100質量%)である。
式(3)中、mは繰り返し数であり、その平均値(数平均)は0~5であり、0~3が好ましい範囲であり、0~1がより好ましい範囲であり、0~0.5が更に好ましい範囲である。そして、繰り返し数(整数)は、6以上の場合もあるが、通常0~5の整数の範囲内にあることがよい。繰り返し数が0~5のいずれか一つの整数である単一化合物であっても、mが0~5のうち複数の整数である混合物であってもよい。通常の多価ヒドロキシ樹脂のエピハロヒドリン等によるエポキシ化では、混合物として得られるので、混合物であればそのまま使用できるという利点がある。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量は、180~400が好ましく、200~350がより好ましい。同様に、エポキシ樹脂(a1)のエポキシ当量も、180~400が好ましく、200~350がより好ましい。また、複数のエポキシ樹脂を併用する場合は、混合後に測定を行うことで求められる。また、それぞれのエポキシ当量が既知の場合は計算によって求めてもよい。
エポキシ樹脂(a)中に含まれるアルコール性水酸基はイソシアネートと反応してウレタン結合を形成することから、エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物の耐熱性を低下させる。そのため、エポキシ樹脂(a)のアルコール性水酸基当量は1000以上が好ましく、3000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。複数のエポキシ樹脂を併用する場合は、混合後に測定を行うことで求められる。また、それぞれのアルコール性水酸基当量が既知の場合は計算によって求めてもよい。
また、エポキシ樹脂(a)のアルコール性水酸基は、フェノール化合物とエピハロヒドリンの反応に伴い発生したアルコール性水酸基である。エピハロヒドリンがエピクロロヒドリンの場合、これらのアルコール性水酸基は、フェノール化合物がエピクロロヒドリンのα位に付加することで発生する2-クロロ-3-ヒドロシプロピル基に由来するアルコール性水酸基(α)、フェノール化合物がエピクロロヒドリンのβ位に付加することで発生する1-クロロメチル-2-ヒドロキシエチル基に由来するアルコール性水酸基(β)、エポキシ樹脂にフェノール化合物が付加することで発生する2級アルコール性水酸基(γ)、エポキシ樹脂のエポキシ基が加水分解することで発生するα-グリコール(δ)である。本発明でのアルコール性水酸基は、(α)、(β)、(γ)及び(δ)の全てを指すので、アルコール性水酸基当量は、(α)、(β)、(γ)及び(δ)の全てが測定対象である。
2級アルコール性水酸基(γ)の低減には、式(3)中の繰り返し数(整数)が小さいほうが好ましい。そのため、繰り返し数は0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましい。6以上である化合物を含む場合は、エポキシ樹脂(a)中のアルコール性水酸基が多くなり、これとイソシアネートが反応することによりウレタン結合が生じるため、硬化物のガラス転移点を低下させることから好ましくない。また、硬化物中の水酸基濃度が増えるため硬化物の誘電率、誘電正接を高くすることからも好ましくない。mが0の場合、アルコール性水酸基が無くなり、アルコール性水酸基当量は理論上無限大になるため、その上限値を特に定める必要はない。
エポキシ樹脂(a1)は、下記式(4)で表されるフェノール化合物とエピハロヒドリンとを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下で反応させる方法や、式(4)で表されるフェノール化合物をアリルエーテル化物によってアリルエーテル化した後に過酸化物等の酸化剤でアリル基を酸化してエポキシ化する方法等の公知の方法で得ることができる。
式(4)において、R
1、R
2及びXは上記式(a)のR
1、R
2及びXとそれぞれ同義である。
式(3)で表されるエポキシ樹脂(a1)としては、上記式(4)で表されるフェノール化合物類とエピハロヒドリンから得られるエポキシ樹脂が挙げられる。例えば、2-(1,1-ジメチルエチル)-4[[2-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシー6-メチルフェニル]チオ]-5-メチルフェノール、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-スルホニルジフェノール、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルメタン、2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロパン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルベンゾフェノン等が挙げられるがこれらに限定されず、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の製造方法で用いるエポキシ樹脂(a)としては、本発明の効果を阻害しない限り、エポキシ樹脂(a1)以外のエポキシ樹脂(a2)を、50質量%未満で併用してもよい。エポキシ樹脂(a2)は、式(3)で表される構造を有しないものであると理解される。本発明の効果が最も発現される配合は、エポキシ樹脂(a1)の単独使用(100質量%)である。また、エポキシ樹脂(a1)の使用量が50質量%未満では本発明の効果が発現されない恐れがある。併用できるエポキシ樹脂(a2)を使用する目的は、例えば、溶剤溶解性の更なる向上等の別特性の付与のためである。従って、エポキシ樹脂(a2)の使用量はできるだけ少ない方が好ましい。併用できるエポキシ樹脂(a2)の使用量は、35質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
エポキシ樹脂(a2)中に含まれるアルコール性水酸基もイソシアネートと反応してウレタン結合を形成することから、硬化物の耐熱性を低下させる恐れがある。そのため、エポキシ樹脂(a)として、上述した好ましいアルコール性水酸基当量の範囲になるような、アルコール性水酸基当量のエポキシ樹脂(a2)を使用する必要がある。
また、エポキシ樹脂(a2)のエポキシ当量は、特に限定されないが、100~300が好ましく、170~300がより好ましい。
使用できるエポキシ樹脂(a2)としては、無置換タイプ又は一置換タイプのビスフェノールタイプが使用できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYD-127、エポトートYD-128、エポトートYD-8125、エポトートYD-825GS(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製等]、ビスフェノールF型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYDF-170、エポトートYDF-1500、エポトートYDF-8170、エポトートYDF-870GS(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂[例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂[例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ビスフェノールS型エポキシ樹脂[例えば、TX-0710(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、エピクロンEXA-1515(大日本化学工業株式会社製)等]、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂[例えば、ZX-1201(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ジメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。その他、ビフェノール型エポキシ樹脂[例えば、YX-4000(三菱ケミカル株式会社製)、ZX-1251(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ヒドロキノン型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYDC-1312、ZX-1027(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、レゾルシノール型エポキシ樹脂[例えば、エポトートZX-1684(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、デナコールEX-201(ナガセケムテックス株式会社製)等]、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂[例えば、ZX-1355(日鉄ケミカル&マテリアル化学株式会社製)、エピクロンHP-4032D(DIC株式会社製)等]、フェノールノボラック型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYDPN-638(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、jER152、jER154(以上、三菱ケミカル株式会社製)、エピクロンN-740、エピクロンN-770、エピクロンN-775(以上、DIC株式会社製)等]、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYDCN-700シリーズ(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、エピクロンN-660、エピクロンN-665、エピクロンN-670、エピクロンN-673、エピクロンN-695(以上、DIC株式会社製)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(以上、日本化薬株式会社製)等]、アルキルノボラック型エポキシ樹脂[例えば、エポトートZX-1071T、エポトートZX-1270、エポトートZX-1342(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、芳香族変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂[例えば、エポトートZX-1247、GK-5855、エポトートTX-1210、エポトートYDAN-1000(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂[例えば、エポトートZX-1142L(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂[例えば、ESN-155、ESN-185V、ESN-175(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂[例えば、ESN-300シリーズのESN-355、ESN-375(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂[例えば、ESN-400シリーズのESN-475V、ESN-485(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂[例えば、NC-3000、NC-3000H(以上、日本化薬株式会社製)等]、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂[例えば、EPPN-501、EPPN-502(以上、日本化薬株式会社製)等]、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂[例えば、YDG-414(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂[例えば、エピクロンHP7200、エピクロンHP-7200H(以上、DIC株式会社製)等]、アルキレングリコール型エポキシ樹脂[エポトートPG-207、エポトートPG-207GS(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、SR-16H、SR-16HL、SR-PG、SR-4PG、SR-SBA、SR-EGM、SR-8EGS(以上、坂本薬品工業株式会社製)等]、脂肪族環状エポキシ樹脂[サントートST-3000、エポトートZX-1658、エポトートZX-1658GS、FX-318(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、HBPA-DGE(丸善石油化学株式会社製)等]等のポリグリシジルエーテル化合物や、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYH-434、エポトートYH-434GS(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ELM434(住友化学株式会社製)、アラルダイトMY720、アラルダイトMY721、アラルダイトMY9512、アラルダイトMY9663(以上、ハンツマン・アドバンスト・ケミカルズ社製)等]、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂[例えば、TETRADX(三菱ガス化学株式会社製)等]、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂[例えば、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社製)等]、イソシアヌレート型エポキシ樹脂[例えば、TEPIC-P(日産化学工業株式会社製)等]、アニリン型エポキシ樹脂[例えば、GAN、GOT(以上、日本化薬株式会社製)等]、ヒダントイン型エポキシ樹脂[例えば、Y238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等]、アミノフェノール型エポキシ樹脂[例えば、ELM120、ELM100(以上、住友化学株式会社製)、jER630(三菱ケミカル株式会社製)、アラルダイトMY0510、MY0600、MY0610(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等]等のポリグリシジルアミン化合物や、ダイマー酸型エポキシ樹脂[例えば、エポトートYD-171(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、jER871(三菱ケミカル株式会社製)等]、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂[例えば、SR-HHPA(坂本薬品工業株式会社製)等]等のポリグリシジルエステル化合物、脂肪族環状エポキシ樹脂[例えば、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド3000(以上、ダイセル化学工業株式会社製)、DCPD-EP、MCPD-EP、TCPD-EP(以上、丸善石油化学株式会社製)等]等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても良いし、2種類以上併用してもよい。
併用できるエポキシ樹脂(a2)の内、より誘電率、誘電正接を低下させる目的では脂肪族置換基を含むエポキシ樹脂やフッ素原子を分子内に有するビスフェノールA型又はF型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性をより向上する目的では多官能性であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、屈折率を高め耐熱性をより向上する目的ではビスフェノールS型エポキシ樹脂やビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましく、高熱伝導性を高める目的ではビフェノール型エポキシ樹脂やジフェニルエーテル型エポキシ樹脂やベンゾフェノン型エポキシ樹脂が好ましく、粘度を低下させる目的ではビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂やビスフェノールE型エポキシ樹脂がそれぞれ好ましいが、これらに限定するものではない。
本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を製造するには、エポキシ樹脂(a)と共に、イソシアネート化合物(b)を使用する。このエポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との反応によって、所望のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を得ることができる。このイソシアネート化合物(b)は、1分子内に平均で1.8個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有するイソシアネート化合物、すなわち実質的に2官能以上の多官能イソシアネート化合物であればよく、公知慣用のイソシアネート化合物が使用できる。単官能イソシアネート化合物は、少量含まれていてもよいが、これは末端基となるので、重合度を低下させる目的には有効であるが、重合度が上がらない。
具体的には、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,5-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイルジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイルジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイルジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイルビス(メチレン)ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビスフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,3’-ジメトキシビスフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジメトキシジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルサルフアイト-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルフォン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2,5-ジイルビスメチレンジイソシアナート、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2,6-ジイルビスメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,1-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,2-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,5-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-2,6-ジイソシアネート、1-メチルベンゼン-3,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メタンジイソシアネート、エタン-1,2-ジイソシアネート、プロパン-1,3-ジイソシアネート、ブタン-1,1-ジイソシアネート、ブタン-1,2-ジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、2-ブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブテン-1,4-ジイソシアネート、2-メチルブタン-1,4-ジイソシアネート、ペンタン-1,5-ジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート、ヘプタン-1,7-ジイソシアネート、オクタン-1,8-ジイソシアネート、ノナン-1,9-ジイソシアネート、デカン-1,10-ジイソシアネート、ジメチルシランジイソシアネート、ジフェニルシランジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物や、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアネナトメチルオクタン、ビシクロヘブタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、リジンエステルトリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、トリス(4-フェニルイソシアネートチオホスフェート)-3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物や、上記イソシアネート化合物の2量体や3量体等の多量体や、アルコールやフェノール等のブロック剤によりマスクされたブロック型イソシアネートや、ビスウレタン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらイソシアネート化合物は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
これらのイソシアネート化合物のうち、好ましくは2官能イソシアネート化合物又は3官能イソシアネート化合物であり、更に好ましくは2官能イソシアネート化合物である。イソシアネート化合物の官能基数が多いと貯蔵安定性が低下する恐れがあり、少ないと耐熱性や誘電特性が向上しない恐れがある。
特に好ましいイソシアネート化合物(b)は、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、3,5-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイルジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイルジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイルジイソシアネート、3,3’-ジメチルビスフェニル-4,4’-ジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイルジイソシアナート、シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイルビスメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2,5-ジイルビスメチレンジイソシアナート、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-2,6-ジイルビスメチレンジイソシアナート、及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選択される1種以上である。
エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との反応は、公知の方法で行うことができる。具体的な反応方法としては、(1)エポキシ樹脂(a)を溶融し、乾燥ガスパージや系内を減圧にする等の方法でエポキシ樹脂中の水分を除去したのち、イソシアネート化合物(b)と触媒を添加して反応を行う方法、また(2)エポキシ樹脂(a)と触媒を予め混合しておき、乾燥ガスパージや系内を減圧にする等の方法でエポキシ樹脂中の水分を除去したのち、イソシアネート化合物(b)を添加して反応を行う方法等がある。この時の系内水分量としては、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。また、どちらの方法でも、樹脂粘度が高く撹拌が難しい場合等必要であれば、非反応性の溶剤を使用することも可能である。
オキサゾリドン環を形成する反応機構は、下記反応式(5)で表される。エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)は触媒を添加することで、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基とイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基は反応し、オキサゾリドン環を形成する。なお、式(1)のYはこの反応でのイソシアネート化合物(b)の残基である。
また、エポキシ樹脂(a)がアルコール性水酸基を含む場合、下記反応式(6)で表されるように、イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基はアルコール性水酸基と付加反応し、ウレタン結合が形成する。
また、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、原料の仕込み量から下記計算式(7)に従い予測することができる。本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2の好ましいエポキシ当量は200~1600である。その範囲のエポキシ当量に調整することは、使用するイソシアネート化合物(b)のNCO濃度を調整することで可能である。
No:オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)
Ne:エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量(g/eq.)
Ni:イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基の当量(g/eq.)
Me:エポキシ樹脂(a)の仕込み量(g)
Mi:イソシアネート化合物(b)の仕込み量(g)
例えば、エポキシ樹脂(a)のエポキシ当量が218、イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基の当量が125の場合、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2のエポキシ当量が200~550g/eq.の範囲になる仕込み量は、計算式(7)からエポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)の仕込み比Me/Miは3.3以上である。
エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対し、イソシアネート化合物(b)のイソシアネート基を0.02モル以上0.7モル未満の範囲で使用することが好ましい。
換言すれば、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対するイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基のモル比[(b)/(a)]=0.02~0.70の範囲である。本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂は、原料エポキシ樹脂をイソシアネート化合物によって高変性したものであっても溶剤溶解性にも優れていることから、モル比[(b)/(a)]として、より好ましくは0.10~0.65、更に好ましくは0.30~0.60である。
エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との反応は、触媒を添加して行うことが好ましい。触媒の添加温度は、室温~150℃の範囲が好ましく、室温~100℃の範囲がより好ましい。
反応温度は、100~250℃が好ましく、100~200℃がより好ましく、120~160℃が更に好ましい。反応温度が低いとオキサゾリドン環形成が十分に行われず、イソシアネート基の三量化反応によるイソシアヌレート環を形成する。また、反応温度が高いと局所的な高分子量化が起こり、不溶解性のゲル成分の生成が多くなる。そのため、イソシアネート化合物(b)の添加速度を調整して、反応温度を適切な温度に維持することがよい。反応条件を適切に制御することにより、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基とイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基からオキサゾリドン環をほぼ定量的に生成させることが可能である。
反応時間はイソシアネート化合物(b)の添加終了から15分間~10時間の範囲が好ましく、30分間~8時間がより好ましく、1時間~5時間が更に好ましい。
上記反応に使用する触媒としては、塩基性触媒であれば種類は特に限定されない。具体的には、塩化リチウム、ブトキシリチウム等のリチウム化合物類、3フッ化ホウ素の錯塩類、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド等の4級アンモニウム塩類、ジメチルアミノエタール、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,4-ジエチルピペラジン等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、アミルトリフェニルホスホニウムブロミド、ジアリルジフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムアセテート・酢酸錯体、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルヨードイド等のホスホニウム塩類、トリフェニルアンチモン及びヨウ素の組み合わせ、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これら触媒は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。また、分割して数回に分けて使用しても良い。
これらの触媒のうち、4級アンモニウム塩類、3級アミン類、ホスフィン類、又はホスホニウム塩類が好ましく、反応活性、反応の選択性においてテトラメチルアンモニウムヨージドがより好ましい。反応活性が低い触媒では反応時間が長くなり生産性の低下を招く恐れがあり、反応の選択性が低い触媒ではエポキシ基同士の重合反応が進行し目的としている物性を得られない恐れがある。
触媒の使用量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との合計質量に対して、0.0001~5質量%であり、0.0005~1質量%が好ましく、0.001~0.5質量%がより好ましく、0.002~0.2質量%が更に好ましい。触媒量が多いと場合によってはエポキシ基の自己重合反応が進行するため、樹脂粘度が高くなる。また、イソシアネートの自己重合反応が促進され、オキサゾリドン環の生成が抑制される。更に、生成樹脂中に不純物として残留し、各種用途、特に積層板や封止材の材料として用いた場合に、絶縁性の低下や耐湿性の低下を招く恐れがある。
また、エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との反応を行う際に、本発明の作用効果に影響がない範囲において、更に、各種エポキシ樹脂変性剤を使用することにより分子量(エポキシ当量)等を調整することもできる。使用できる量は、エポキシ樹脂(a)100質量部に対し、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
使用できるエポキシ樹脂変性剤としては、具体的には、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、テトラブチルビスフェノールA、ビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールP、ビスフェノールAF、ビスフェノールAP、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、ビスフェノールZ、テトラメチルビスフェノールZ、ビスフェノールTMC、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、スチレン化フェノールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂等の種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジ
フェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらエポキシ樹脂変性剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
また、前述した通り、エポキシ樹脂(a)とイソシアネート化合物(b)との反応を行う際に、必要に応じて非反応性の溶剤を使用しても良い。具体的には、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ジメチルブタン、ペンテン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジオキサン、メチルフラン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、メチルエチルカルビトール等のエーテル類や、メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセタート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類や、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類や、γ-ブチロラクトン等のラクトン類や、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類や、テトラメチル尿素等のウレア類や、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これら非反応性の溶剤は単独で使用しても良いし、2種類以上混合して使用しても良い。これら溶媒の使用量は、エポキシ樹脂(a)100質量部に対し、1~900質量部が好ましく、5~100質量部がより好ましい。
上記製造方法により、本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂が得られる。有利には、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2が得られる。
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1、A2は、他のエポキシ樹脂を配合することなく使用できるが、必要により他のエポキシ樹脂A3を配合してもよい。そして、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A2、又は他のエポキシ樹脂A3を配合したエポキシ樹脂混合物中の式(1)で表される構造の含有量は、5~55質量%が好ましく、10~45質量%がより好ましく、15~35質量%が更に好ましい。この含有量が少ないと誘電率、誘電正接を下げる効果が発現しない恐れがある。また、含有量が多いと誘電特性の向上効果より、溶剤溶解性の悪化や樹脂粘度の増大といった悪影響が多くなる恐れがある。また、エポキシ当量が高くなり得られる硬化物の架橋密度が低くなることから半田リフローの温度において弾性率が低下する等、使用上で大きな問題となる恐れがある。
次に、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物について、説明する。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、本発明のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂と硬化剤を含む。
上記硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ヒドラジッド系硬化剤、活性エステル系硬化剤、後述するリン含有硬化剤等のエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。これらのうち、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤又は活性エステル系硬化剤が好ましく、フェノール系硬化剤又は活性エステル系硬化剤がより好ましい。
硬化性エポキシ樹脂組成物において、硬化剤の使用量は、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を含む全エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の活性水素基が0.2~1.5モルとなる量である。エポキシ基1モルに対して活性水素基が、0.2モル未満又は1.5モルを超える場合は、硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。好ましい範囲は0.3~1.5モルであり、より好ましい範囲は0.5~1.5モルであり、更に好ましい範囲は0.8~1.2モルである。例えば、フェノール系硬化剤やアミン系硬化剤や活性エステル系硬化剤を用いた場合はエポキシ基に対して活性水素基をほぼ等モル配合し、酸無水物系硬化剤を用いた場合はエポキシ基1モルに対して酸無水物基を0.5~1.2モル、好ましくは、0.6~1.0モル配合する。ここで、エポキシ樹脂は、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂A1、A2、及び前記他のエポキシ樹脂A3を含み、リン含有エポキシ樹脂等のエポキシ基を有する化合物を含む。また、硬化剤は、リン含有硬化剤を含む。
本発明でいう活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、カルボキシル基(-COOH)やフェノール性水酸基(-OH)は1モルと、アミノ基(-NH2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ当量が既知のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
フェノール系硬化剤としては、具体例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ-t-ブチルハイドロキノン、ジ-t-ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類や、フェノールノボラック樹脂[例えば、ショウノールBRG-557(アイカ工業株式会社製)等)]、クレゾールノボラック樹脂[例えば、DC-5(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂[例えば、レヂトップTPM-100(群栄化学工業株式会社製)等]、ナフトールノボラック樹脂等のフェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類との縮合物や、ナフトールアラルキル樹脂[例えば、SN-160、SN-395、SN-485(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]のフェノール類及び/又はナフトール類とキシリレングリコール及び/又はキシリレンジハライドとの縮合物や、フェノール類及び/又はナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物や、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物や、フェノール類及び/又はナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物等のフェノール化合物等、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やこれらのフェノール化合物がアルキル基、アルコキシ基、アリール基等の置換基で核置換されたフェノール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのフェノール化合物の原料としては、フェノール類は、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられる。ナフトール類は、1-ナフトール、2-ナフトールが挙げられる。また、厳密にはナフトールではないが、1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、2,7-ナフタレンジオール等のナフタレンジオール類もナフトール類に含む。アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピ
ルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。ビフェニル系縮合剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が挙げられる。
また、加熱時開環してフェノール化合物となるベンゾオキサジン化合物も硬化剤として有用である。具体的には、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のベンゾオキサジン化合物[例えば、BF-BXZ、BS-BXZ(以上、小西化学工業株式会社製)等]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミドや、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
活性エステル系硬化剤としては、特許5152445号公報に記載されているような多官能フェノール化合物と芳香族カルボン酸類の反応生成物が挙げられ、市販品では、エピクロンHPC-8000-65T(DIC株式会社製)等があるがこれらに限定されるものではない。
その他の硬化剤としては、具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、ホウ酸等との塩であるイミダゾール塩類、トリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物、ジアザビシクロ化合物とフェノール類やフェノールノボラック樹脂類等との塩類、3フッ化ホウ素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム、又はヨードニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、前述したとおり、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物の物性を損ねない範囲で上記他のエポキシ樹脂A3を併用することができる。エポキシ樹脂組成物の物性を損ねない範囲とは、全エポキシ樹脂中において、式(1)で表される構造を5~55質量%含む範囲のことである。なお、他のエポキシ樹脂A3としては、従来公知のエポキシ樹脂が使用可能である。目標とする特性は用途によって異なるため一概に決められないが、使用量の目安としては、全エポキシ樹脂中に、0~95質量%が好ましく、0~80質量%がより好ましく、0~50質量%が更に好ましい。
上記他のエポキシ樹脂A3は、2官能以上の多官能エポキシ樹脂が好ましく、目的によって選ぶことができる。例えば、難燃性付与のためには、後述するリン含有エポキシ樹脂を、耐熱性のさらなる向上のためには、3官能以上のエポキシ樹脂等をそれぞれ併用することが好ましい。
上記他のエポキシ樹脂A3としては、前述したビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等のポリグリシジルエーテル化合物や、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂等のポリグリシジルアミン化合物や、ダイマー酸型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂等のポリグリシジルエステル化合物や、脂環式エポキシ化合物が挙げられる。その他に、ウレタン変性エポキシ樹脂[例えば、AER4152(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)等]、エポキシ樹脂(A1)以外のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体[例えば、PB-3600(ダイセル化学工業株式会社製)等]、CTBN変性エポキシ樹脂[例えば、エポトートYR-102、エポトートYR-450(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等]、後述するリン含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
硬化性エポキシ樹脂組成物には必要に応じて、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール誘導体、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン系化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら硬化促進剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、ビス-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物や、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-エチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2-エチル-4-メチル-1-(2’-シアノエチル)イミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられる。
第3級アミン類としては、例えば、2-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン(DBU)等が挙げられる。ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙がられる。金属化合物としては、例えば、オクチル酸スズ等が挙がられる。
これらの硬化促進剤の内、ビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、2-ジメチルアミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジンやイミダゾール類が好ましい。また、半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィンやDBUが好ましい。
硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100質量部に対して、0.02~15質量部が必要に応じて用いられる。好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、更に好ましくは0.5~5質量である。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げることや、硬化時間を短縮することができる。
硬化性エポキシ樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、慣用公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤(難燃剤としてのリン化合物)、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は使用に際してもなんら制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いてもよく、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
特に、難燃剤としてのリン化合物を更に配合したエポキシ樹脂組成物において、リン化合物は、添加系のリン系難燃剤(リン含有添加剤)と反応性のリン化合物の2タイプに分けられ、反応性のリン化合物は、更にリン含有エポキシ樹脂とリン含有硬化剤に分けられる。添加系のリン系難燃剤と反応性のリン化合物を比較した場合、反応性のリン化合物は、硬化の際にブリードアウトしない、相溶性が良い等の点から、難燃効果が大きく、反応性のリン化合物を使用する方が好ましい。
リン含有添加剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の含窒素無機リン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物[例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等]、縮合リン酸エステル類[例えば、PX-200(大八化学工業株式会社製)等]、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物[例えば、ジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等]、ホスホラン化合物[例えば、トリフェニル(9H-フルオレン-9-イリデン)ホスホラン等]等の汎用有機リン系化合物や、含窒素有機リン系化合物[例えば、SPS-100、SPB-100、SPE-100(以上、大塚化学株式会社製)等]や、ホスフィン酸金属塩[例えば、EXOLIT OP1230、EXOLIT OP1240、EXOLIT OP930、EXOLIT OP935(以上、クラリアント社製)等]の他、リン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物[例えば、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(以下、DOPOと略す)、ジフェニルホスフィンオキシド等]やリン含有フェノール化合物[例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(以下、DOPO-HQと略す)、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(以下、DOPO-NQと略す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等]等の有機リン系化合物や、それら有機リン系化合物をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤に使用される反応性リン化合物としては上記のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物やリン含有フェノール類が好ましく、具体的には、DOPO、DOPO-HQ、OPO-NQ等が挙げられる。
リン含有エポキシ樹脂としては、例えば、エポトートFX-305、エポトートFX-289B、TX-1320A、エポトートTX-1328(以上、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
リン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200~800が好ましく、300~780がより好ましく、400~760が更に好ましい。また、リン含有エポキシ樹脂のリン含有率は、0.5~6質量%が好ましく、2~5.5質量%がより好ましく、3~5質量%が更に好ましい。
リン含有硬化剤としては、上記のリン含有フェノール類の他に、特表2008-501063号公報や特許第4548547号公報に示すような製造方法で、例えば、DOPOとアルデヒド類とフェノール化合物とを反応することでリン含有フェノール化合物を得ることができる。また、特開2013-185002号公報に示すような製造方法で、更に芳香族カルボン酸類の反応させることで、リン含有フェノール化合物から、リン含有活性エステル化合物を得ることができる。また、特再公表WO2008/010429号公報に示すような製造方法で、リン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。
リン含有硬化剤のリン含有率は、0.5~12質量%が好ましく、2~11質量%がより好ましく、4~10質量%が更に好ましい。
リン化合物の配合量は、リン化合物の種類、エポキシ樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。リン化合物が反応性のリン化合物、すなわち、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤の場合、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、リン含有率は、0.2質量%以上6質量%以下が好ましく、0.4質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.5質量%以上3.5質量%以下が更に好ましく、0.6質量%以上3質量%以下が特に更に好ましい。リン含有率が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。
ここで、リン含有エポキシ樹脂は、リン化合物でもあるし、エポキシ樹脂でもあるとして扱う。同様に、リン含有硬化剤は、リン化合物でもあるし、硬化剤の両方に該当するものとして扱う。従って、リン含有硬化剤を使用する場合は、他の硬化剤又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。同様に、リン含有エポキシ樹脂を使用する場合は、他のエポキシ樹脂又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。
リン化合物が添加系のリン系難燃剤の場合の配合量は、硬化性エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、赤リンを使用する場合は0.1~2質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン系化合物を使用する場合は同様に0.1~10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5~6質量部の範囲で配合することが好ましい。
また、リン化合物を難燃剤として使用する場合、難燃助剤として、例えばハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛等を併用してもよい。
本発明においては、難燃剤としてこれらのリン化合物を使用することが好ましいが、以下に記載する難燃剤を、リン化合物と併用、又はリン化合物に代えて使用することもできる。
窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン[2,4,6-トリス(シアノアミノ)-1,3,5-トリアジン]、メラム[4,4’-イミノビス(1,3,5-トリアジン-2,6-ジアミン)]、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の硫酸アミノトリアジン化合物、アミノトリアジン変性フェノール樹脂[例えば、LA-7052(DIC株式会社製)等]、及びアミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シアヌル酸化合物としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05~10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1~5質量部の範囲で配合することが好ましい。また窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、硬化性エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05~20質量部の範囲で配合することが好ましい。またシリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属酸化物としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属粉としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。低融点ガラスとしては、例えば、水和ガラス、SiO2-MgO-H2O、PbO-B2O3系、ZnO-P2O5-MgO系、P2O5-B2O3-PbO-MgO系、P-Sn-O-F系、PbO-V2O5-TeO2系、Al2O3-H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05~20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5~15質量部の範囲で配合することが好ましい。
有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.005~10質量部の範囲で配合することが好ましい。
ハロゲン系難燃剤としては、臭素化合物や塩素化合物が挙げられるが、毒性問題から塩素化合物は好ましくない。臭素化合物としては、例えば、p-ジブロモベンゼン、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラデカブロモ-p-ジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、2,2’-エチレンビス(4,5,6,7-テトラブロモイソインドリン-1,3-ジオン[例えば、SAYTEX BT-93(アルべマール社製)等]、エタン-1,2-ビス(ペンタブロモフェニル)[例えば、SAYTEX8010(アルベマール社製)等や、臭素化エポキシオリゴマー[例えば、SR-T1000,SR-T2000(以上、阪本薬品工業製)等]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ハロゲン系難燃剤の配合量は、ハロゲン系難燃剤の種類、エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合したエポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、ハロゲン含有率は5質量%以上15質量%以下が好ましい。又はハロゲン系難燃剤を難燃剤として使用する場合、難燃助剤として、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系化合物、酸化スズ、水酸化スズ等のスズ系化合物、酸化モリブテン、モリブテン酸アンモニウム等のモリブテン系化合物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム系化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ素系化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、高分子量シリコーン等のケイ素系化合物、塩素化ポリエチレン等を併用してもよい。
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物には必要に応じて、充填材、熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等のその他の添加剤を配合することができる。更に、粘度調整用として有機溶剤や反応性希釈剤等を配合することができる。
充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、硫酸バリウム、炭素等の無機充填剤や、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維等の繊維状充填剤や、微粒子ゴム等が挙げられる。これらの中でも、硬化物の表面粗化処理に使用される過マンガン酸塩の水溶液等の酸化性化合物により、分解又は溶解しないものが好ましく、特に溶融シリカや結晶シリカが微細な粒子が得やすいため好ましい。また、充填材の配合量を特に大きくする場合には溶融シリカを用いることが好ましい。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高めつつ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方がより好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。なお、充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理を行ってもよい。一般的に充填材を用いる理由としては、硬化物の耐衝撃性の向上効果や、硬化物の低線膨張性化が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。導電ペースト等の用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
充填材の配合量は、硬化物の低線膨張性化や難燃性を考慮した場合、高い方が好ましい。エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、1~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましく、40~80質量%が更に好ましく、50~70質量%が特に好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、更に硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填剤の配合効果がでない恐れがある。
また、無機充填剤の平均粒子径は、0.05~1.5μmが好ましく、0.1~1μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径がこの範囲であれば、エポキシ樹脂組成物の流動性を良好に保てる。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置により測定することができる。
熱可塑性樹脂を配合することは、特に、硬化性エポキシ樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成型する場合に有効である。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリテトラフ
ロロエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。エポキシ樹脂との相溶性の面からはフェノキシ樹脂が好ましく、低誘電特性面からはポリフェニレンエーテル樹脂や変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。
その他の添加剤としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、熱硬化性ポリイミド等のエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂や、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料や、酸化チタン、金属箔状顔料、防錆顔料等の無機顔料や、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤や、シラン系、チタン系等のカップリング剤や、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、ハジキ防止剤、消泡剤等の添加剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、0.01~20質量%の範囲が好ましい。また、粘度調整用として有機溶剤又は反応性希釈剤も用いることができる。
有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類や、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
反応性希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の単官能、レゾルシノールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の二官能、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの溶剤又は反応性希釈剤は、単独又は複数種類を混合したものを、不揮発分として90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1-メトキシ-2-プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40~80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、その使用量は不揮発分で30~60質量%が好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、公知のエポキシ樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって本発明の硬化物を得ることができる。硬化物を得るための方法としては、公知のエポキシ樹脂組成物と同様の方法をとることができ、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファー成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、100~300℃の範囲であり、硬化時間は通常、10分間~5時間程度である。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により各種添加剤の配合されたエポキシ樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。硬化物としては、積層物、注型物、成型物、接着層、絶縁層、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
硬化性エポキシ樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板用絶縁材料、半導体封止材料、導電ペースト、導電フィルム、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低誘電特性、及び溶剤溶解性といった特性からプリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等の回路基板(積層板)用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
硬化性エポキシ樹脂組成物を積層板等の板状とする場合、使用する充填材としては、その寸法安定性、曲げ強度等の点で、繊維状のものが好ましく、ガラス繊維を網目状に編み上げたガラス繊維布がより好ましい。
硬化性エポキシ樹脂組成物は繊維状の補強基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられる本発明のプリプレグを作成することができる。繊維状の補強基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。エポキシ樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、前記有機溶剤を含むワニス状のエポキシ樹脂組成物を、更に有機溶剤を配合して適切な粘度に調整した樹脂ワニスに作成し、その樹脂ワニスを前記繊維状基材に含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させることによって得られる。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50~200℃であり、より好ましくは100~170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1~40分間であり、より好ましくは3~20分間である。この際、用いるエポキシ樹脂組成物
と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~80質量%となるように調整することが好ましい。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、シート状又はフィルム状に成形して用いることができる。この場合、従来公知の方法を用いてシート化又はフィルム化することが可能である。接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、前記樹脂ワニスに溶解しない支持ベースフィルム上に、樹脂ワニスをリバースロールコータ、コンマコータ、ダイコーター等の塗布機を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分をBステージ化することで得られる。また、必要に応じて、塗布面(接着剤層)に別の支持ベースフィルムを保護フィルムとして重ね、乾燥することにより接着剤層の両面に剥離層を有する接着シートが得られる。支持ベースフィルムとしては、銅箔等の金属箔、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフインフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シリコンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、これらの中では、つぶ等、欠損がなく、寸法精度に優れコスト的にも優れるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、積層板の多層化が容易な金属箔、特に銅箔が好ましい。支持ベースフィルムの厚さは、特に限定されないが、支持体としての強度があり、ラミネート不良を起こしにくいことから10~150μmが好ましく、25~50μmがより好ましい。保護フィルムの厚さは、特に限定されないが、5~50μmが一般的である。なお、成型された接着シートを容易に剥離するため、あらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくことが好ましい。また、樹脂ワニスを塗布する厚みは、乾燥後の厚みで、5~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましい。加熱温度としては、用いた有機溶剤の種類に応じ、好ましくは50~200℃であり、より好ましくは100~170℃である。加熱時間は、用いた有機溶剤の種類やプリプレグの硬化性によって調整を行い、好ましくは1~40分間であり、より好ましくは3~20分間である。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁性を有する絶縁接着シートとなるが、エポキシ樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることもできる。なお、上記支持ベースフィルムは、回路基板にラミネートした後に、又は加熱硬化して絶縁層を形成した後に、剥離される。接着シートを加熱硬化した後に支持ベースフィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。ここで、上記絶縁接着シートは、本発明の絶縁シートでもある。
本発明のプリプレグや絶縁接着シートを用いて本発明の積層板を製造する方法を説明する。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、一枚又は複数枚のプリプレグを積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化、一体化させて、積層板を得ることができる。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。加熱温度は、160~250℃が好ましく、170~220℃がより好ましい。加圧圧力は、0.5~10MPaが好ましく、1~5MPaがより好ましい。加熱加圧時間は、10分間~4時間が好ましく、40分間~3時間がより好ましい。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成する。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。
また、前記プリプレグを用いて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層体を形成する。そしてこの積層体を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。また、このプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができる。
また、積層板に硬化性エポキシ樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、前記硬化性エポキシ樹脂組成物を好ましくは5~100μmの厚みに塗布した後、100~200℃で、好ましくは150~200℃で、1~120分間、好ましくは30~90分間、加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5~150μm、好ましくは5~80μmに形成することが望ましい。なお、硬化性エポキシ樹脂組成物の粘度は、十分な膜厚が得られ、塗装むらやスジが発生しにくいことから、25℃において10~40000mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは200~30000mPa・sである。このようにして形成された多層積層板の表面に、更に、アディティブ法やサブストラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。また、このプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、更に多層の積層板を形成することができる。
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を用いて得られる封止材としては、テープ状の半導体チップ用、ポッティング型液状封止用、アンダーフィル用、半導体の層間絶縁膜用等があり、これらに好適に用いることができる。例えば、半導体パッケージ成形としては、エポキシ樹脂組成物を注型、又はトランスファー成形機、射出成形機等を用いて成形し、更に50~200℃で2~10時間に加熱することにより成形物を得る方法が挙げられる。
硬化性エポキシ樹脂組成物を半導体封止材料用に調製するためには、硬化性エポキシ樹脂組成物に、必要に応じて配合される、無機充填材等の配合剤や、カップリング剤、離型剤等の添加剤を予備混合した後、押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する手法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その場合、硬化性エポキシ樹脂組成物中、無機質充填剤を70~95質量%となる割合で配合することが好ましい。このようにして得られた硬化性エポキシ樹脂組成物を、テープ状封止材として使用する場合には、これを加熱して半硬化シートを作製し、封止材テープとした後、この封止材テープを半導体チップ上に置き、100~150℃に加熱して軟化させ成形し、170~250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。また、ポッティング型液状封止材として使用する場合には、得られた硬化性エポキシ樹脂組成物を必要に応じて溶剤に溶解した後、半導体チップや電子部品上塗布し、直接、硬化させればよい。
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、更にレジストインキとして使用することも可能である。この場合は、エポキシ樹脂組成物に、エチレン性不飽和二重結合を有するビニル系モノマーと、硬化剤としてカチオン重合触媒を配合し、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。この時の硬化温度は、20~250℃程度の温度範囲が好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。当量の単位はいずれもg/eq.である。
・エポキシ当量:JIS K7236規格に準じた。
・溶剤溶解性:メチルエチルケトンで不揮発分50%に希釈した時の状態を目視で判断した。完全に溶解し透明なものを○、白濁又は分離したものを×、微かに濁ったものを△をした。
・銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481に準じて測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
・ガラス転移温度:IPC-TM-650 2.4.25.cに準じて示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、EXSTAR6000 DSC6200)にて20℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC・Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)で表した。
・比誘電率及び誘電正接:IPC-TM-650 2.5.5.9に準じてマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
・GPC及び分子量:本体(東ソー株式会社製、HLC-8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgel G4000HXL、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1mL/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製、A-500、A-1000、A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40、F-80、F-128)より求めた検量線より換算した重量平均分子量を分子量とした。データ処理は、東ソー株式会社製GPC-8020モデルIIバージョン4.10を使用した。測定試料はサンプル0.1gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターでろ過したものを100μL使用した。
・IR:フーリエ変換型赤外分光光度計(PerkinEler Precisely製、Spectrum One FT-IR Spectrometer 1760X)の全反射測定法(ATR法)により波数650~4000cm-1の吸光度を測定した。
合成例1
ガラス製セパラブルフラスコに、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)(TBBC、水酸基当量179)を100部、エピクロロヒドリンを310部、イオン交換水を3部仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温した。均一に溶解後、49%水酸化ナトリウム水溶液を4.6部仕込み、3時間反応を行った。次に、64℃まで昇温した後、水の還流が起きる程度まで減圧を引き、49%水酸化ナトリウム水溶液41部を3時間かけて滴下し、この滴下中に還流留出した水とエピクロロヒドリンを分離槽で分離しエピクロロヒドリンは反応容器に戻し、水は系外に除いて反応した。反応終了後、温度を70℃まで上げ脱水を行い、温度を135℃として残存するエピクロロヒドリンを回収した。常圧に戻し、トルエンを197部加えて溶解した。イオン交換水を109部加え、撹拌静置して副生した食塩を水に溶解して除去した。次に、49%水酸化ナトリウム水溶液を5.8部仕込み、80℃で90分間撹拌反応して精製反応を行った。MIBKを追加、水洗を数回行い、イオン性不純物を除去した。溶剤を回収し、上記式(3)のWが下記式(8)で表されるエポキシ樹脂(a-1)を得た。得られたエポキシ樹脂(a-1)は、エポキシ当量245であり、mは0.04である。
合成例2
合成例1におけるTBBC100部を、4,4’-(テトラヒドロジシクロペンタジエンジイル)ビス(2,6-ジメチルフェノール)(水酸基当量188)105部に変えた以外は、合成例1と同様の装置を使用して同様の操作を行い、上記式(3)のWが下記式(9)で表されるエポキシ樹脂(a-2)を得た。得られたエポキシ樹脂(a-2)は、エポキシ当量261であり、mは0.07である。
合成例3
合成例1におけるTBBC100部を、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-スルホニルジフェノール(水酸基当量153)85部に変えた以外は、合成例1と同様の装置を使用して同様の操作を行い、上記式(3)のWが下記式(10)で表されるエポキシ樹脂(a-3)を得た。得られたエポキシ樹脂(a-3)は、エポキシ当量230であり、mは0.11である。
比較合成例1
合成例1におけるTBBC100部を、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール(BisP-TMC、本州化学工業株式会社製、水酸基当量155)87部に変えた以外は、合成例1と同様の装置を使用して同様の操作を行い、上記式(3)のWが下記式(12)で表されるエポキシ樹脂(a-5)を得た。得られたエポキシ樹脂(a-5)は、エポキシ当量219であり、mは0.04である。
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
[エポキシ樹脂]
(a-1):合成例1で得られたエポキシ樹脂
(a-2):合成例2で得られたエポキシ樹脂
(a-3):合成例3で得られたエポキシ樹脂
(a-4):ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、エポトートYD-128、エポキシ当量186、m=0.11)
(a-5):比較合成例1で得られたエポキシ樹脂
[イソシアネート]
(b-1):ジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学株式会社製、コスモネートPH、NCO濃度34%)
(b-2):2,4-トリレンジイソシアネート(80%)と2,6-トリレンジイソシアネート(20%)の混合物(三井化学株式会社製、コスモネートT-80、NO濃度48%)
[触媒]
TBAB:テトラブチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製、試薬)
[硬化剤]
(d-1):フェノールノボラック樹脂(アイカ工業株式会社製、ショウノールBRG-557、軟化点80℃、フェノール性水酸基当量105)
[硬化促進剤]
2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
実施例1
合成例1と同様な装置に、エポキシ樹脂として(a-1)を100部、触媒としてTBABを0.06部仕込み、窒素ガスを投入しながら昇温し、120℃にて30分間温度を維持して系内の水分を除去し、系内にある原料中の水分量が0.1%以下であることを確認した。次に、キシレン30部を投入し、130℃~140℃の反応温度を維持しながら、イソシアネート化合物として(b-1)を15.3部(エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1モルに対するイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基のモル比[(b)/(a)]=0.40)を60℃に加温しながら、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度を維持ながら更に180分間撹拌を続けて、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1)を得た。得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量、軟化点、溶剤溶解性、吸光度比を測定した結果を表1に示す。また、図1にGPCチャートを示す。図2にIRチャートを示す。
さらに、樹脂1をGPCによる分取を行い、原料エポキシ樹脂(a-1)を除去して、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂1D)を得た。樹脂1Dのエポキシ当量、分子量を測定した結果を表2に示す。
図1において、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂1Dに対応する成分はピーク群(a)であり、残存する原料エポキシ樹脂(a-1)はピーク(c)であり、式(2)で表されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂1Dのn=1成分はピーク(b)である。
実施例2~5、比較例1~2
表1に示す各原料の仕込量(部)に従い、実施例1と同様にして、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を合成した。なお、反応温度は表1に示す反応温度±5℃の温度範囲を維持し、反応溶媒は表1に示す種類を必要部数使用した。イソシアネート化合物の滴下は表1に示す滴下時間で行った。実施例1と同様に、得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂のエポキシ当量、溶剤溶解性を測定した結果を表1に示す。
実施例1で得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を樹脂1とし、以下同様に樹脂2~5とした。比較例1で得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を樹脂H1とし、以下同様に樹脂H2とした。
さらに、実施例1と同様に、得られた各樹脂2~5、H1、H2をGPCによる分取を行い、原料エポキシ樹脂(a-1)~(a-5)を除去して、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(樹脂2D~5D、H1D、H2D)を得た。得られた各樹脂のエポキシ当量、分子量を測定した結果を表2に示す。溶剤溶解性は、表1と同じである。
実施例6
エポキシ樹脂として樹脂1を100部、硬化剤として(d-1)を23.8部、硬化促進剤として2E4MZを0.16部配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテルで調整した混合溶剤に溶解してエポキシ樹脂組成物ワニスを得た。
得られたエポキシ樹脂組成物ワニスをガラスクロス(日東紡績株式会社製、WEA2116、0.1mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスaを150℃の熱風循環オーブン中で10分間乾燥してプリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚と、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、厚み35μm)を重ね、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、1mm厚の積層板を得た。積層板のガラス転移温度(Tg)、銅箔剥離強さ、及び層間接着力の測定結果を表3に示した。
また、得られたプリプレグをほぐし、篩で100メッシュパスの粉状のプリプレグパウダーとした。得られたプリプレグパウダーをフッ素樹脂製の型に入れて、130℃×15分+190℃×80分の温度条件で2MPaの真空プレスを行い、50mm角×2mm厚の試験片を得た。試験片の比誘電率及び誘電正接の測定結果を表3に示した。
実施例7~10
表3の処方の配合量(部)で配合し、実施例6と同様にして、エポキシ樹脂組成物ワニスを得て、更に積層板及び試験片を得た。実施例6と同様の試験を行い、その結果を表3に示す。
比較例3~4
表3の処方の配合量(部)で配合し、実施例6と同様にして、エポキシ樹脂組成物ワニスを得て、更に積層板及び試験片を得た。実施例6と同様の試験を行い、その結果を表3に示す。但し、樹脂H2を使用した比較例4は、プリプレグ作成時、含浸不良で、プリプレグができなかったため、試験は行っていない。表中の「×」は試験未実施を表す。