本発明のオキサジン樹脂組成物は、オキサジン樹脂(A)とフェノール化合物(B)とを含む。
本発明で用いるオキサジン樹脂(A)は、上記式(1)で表され、GPC測定におけるn=0体、n=1体とn=2体の合計(n=1+2体)、及びn=3以上体の面積%が、それぞれ15〜60%、25〜40%、及び15〜45%である。ここで、n=1体は、式(1)におけるnが1の成分を言い、n=0体はnが0の成分を言い、n=1+2体はnが1の成分と2の成分の両成分を言い、n=3以上体はnが3以上である成分をいう。GPC測定条件は実施例に記載の条件に従う。なお、面積%は含有率と相関するので、含有率ともいう。
また、このオキサジン樹脂のMwは、標準ポリスチレン換算値で700〜1300であり、式(1)における水酸基(OH)とオキサジン環(Z)のモル比(OH/Z)が10/90〜30/70である。
式(1)中、A1は置換基を有してもよいベンゼン環、ナフタレン環、又はビフェニル環からなる基のいずれかから選ばれる芳香族環基である。これら芳香族環基の芳香族環には置換基を有することができ、この置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数7〜12のアラルキル基、又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基のいずれかである。置換基が複数ある場合は各々同一でも異なっていてもよい。しかし、ヒドロオキサジン環の一部を構成する2つの炭素は置換基を有せず、この2つの炭素に隣接する1つの炭素も置換基を有しないことがよい。なお、式(1)〜(7)、(11)、(21)、(22)において、共通の記号は特に断りがない限り同義である。
アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状よりも分岐鎖状又は環状のアルキル基が高耐熱性を与える傾向にある。炭素数は鎖状のアルキル基の場合は1〜4が好ましく、環状のアルキル基の場合は6が好ましい。好ましくはイソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくはtert−ブチル基、シクロヘキシル基である。また、難燃性が向上する傾向にあるため、メチル基も好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、1−フェニルエチル基等が挙げられ、好ましくはベンジル基、1−フェニルエチル基である。
Xは2価の脂肪族環状炭化水素基、又は上記式(1a)もしくは上記式(1b)で表される架橋基のいずれかである。2価の脂肪族環状炭化水素基の炭素数は5〜15が好ましく、5〜10がより好ましい。ここで、2価の脂肪族環状炭化水素基とは、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の不飽和環状脂肪族炭化水素化合物から誘導される2価の脂肪族環状炭化水素基が挙げられる。これらの脂肪族環状炭化水素基のなかでも特に耐熱性の点からジシクロペンタジエンから誘導される2価の炭化水素基が好ましい。
また、式(1a)、式(1b)において、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示す。A2は価数が2価である他は、上記式(1)におけるA1と同様な意味を有する。
R1はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、フェニル基、トリル基である。
R2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基を示す。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられ、好ましくは、水素原子、メチル基、フェニル基である。
m1及びm2はそれぞれ独立に、0、1又は2であり、同じA1に結合するm1とm2の和は1又は2であり、原料ノボラックフェノール化合物の水酸基の数に対応する。m1はオキサジン環の数を示し、m2は未反応の水酸基の数を示す。
nは繰り返し単位であって0以上の整数を示し、その平均値(数平均)は0.7〜2.1であり、好ましくは0.8〜1.8であり、より好ましくは0.85〜1.5であり、さらに好ましくは0.9〜1.3である。この範囲であれば、硬化性、耐熱性、流動性を兼備することができる点から好ましい。なお、上記式(1)中のnは以下の様にして求めることができる。
上記GPC測定により、n=0体、n=1体、n=2体、n=3体、のそれぞれに対応するスチレン換算の数平均分子量Mn(α0、α1、α2、α3)と、n=0体、n=1体、n=2体、n=3体のそれぞれの理論分子量(β0、β1、β2、β3)との比率(β0/α0、β1/α1、β2/α2、β3/α3)を求め、これら(β0/α0〜β3/α3)の平均値を求める。上記Mnにこの平均値を掛け合わせた数値を平均分子量Mn'とする。次いで、上記式(1)の理論分子量を前記平均分子量Mn'としてnの値を算出する。
例えば、後記する実施例1のオキサジン樹脂の場合、構造式は後述する式(11)となる。理論上、水酸基(OH)とオキサジン環(Z)のモル比(OH/Z)は、全てのLが式(13)の化合物(11y)と全てのLが式(12)の化合物(11z)のモル比を同じになる。モル比(OH/Z)は21/79であり、化合物(11y)の理論分子量は200+106nであり、化合物(11z)の理論分子量は434+223nであるので、実施例1のオキサジン樹脂の理論分子量は384.86+198.43n=Mn’となる。また、GPC測定値より、Mnは509であり、(β0/α0〜β3/α3)の平均値は1.21となる。従って、384.86+198.43n=509×1.21より、n=1.2と計算で求めることができる。
本発明で用いられるオキサジン樹脂(A)は、所定量の水酸基を有していることが必須であり、水酸基(OH)とオキサジン環(Z)のモル比(OH/Z)は10/90〜30/70であり、12/88〜25/75が好ましく、15/85〜20/80がさらに好ましい。水酸基は原料フェノール由来であり、水酸基とオキサジン環のモル比は残存水酸基量(モル%)と同義である。例えば、水酸基とオキサジン環のモル比(OH/Z)=30/70と、残存水酸基量=30モル%とは同じ意味である。
さらにオキサジン樹脂(A)は、特定の分子量分布を持っていることが必須であり、n=0体の含有率と、n=1+2体の含有率が、それぞれ特定量の範囲にあり、n=3以上体の含有率は特定量以下であることが重要である。n=0体の含有率が60%(面積%)を超えると耐熱性は低下し、15%を下回ると粘度が高くなり流動性が悪化する恐れがある。n=0体の含有率は、20〜55%が好ましく、25〜50%がより好ましく、30〜50%がさらに好ましい。また、n=3体以上の含有率が45%を超えると流動性が著しく悪化し工業的に成形できない恐れがある。n=3以上体の含有率は、40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。上記範囲内であれば、n=0体の含有率が少ない場合は、n=3以上体の含有率も少ないことが好ましい。また、n=0体の含有率が多い場合は、n=3以上体の含有率が多くても構わない。そのため、n=0体の含有率とn=3以上体の含有率の差は0〜30%が好ましい。n=1体又はn=2体が特定量あるとその硬化物は高Tgでありながら、反応性も向上する。この傾向はn=1体又はn=2体のどちらが多くても起こるため、n=1体とn=2体の含有率の合計であるn=1+2体での含有率で管理することが好ましい。n=1体とn=2体の含有率の合計は、25〜35%が好ましい。
また、重量平均分子量Mwは、700〜1300であり、720〜1200が好ましく、750〜1100がより好ましく、800〜1000がさらに好ましい。
なお、GPC測定におけるn=2体以上のピークには、上記式(1)で表されるオキサジン樹脂(A)以外にも、ノボラックフェノール化合物(e)がモノアミノ化合物とアルデヒド類により自己重合した化合物も若干含まれるがこれらの化合物を分離することはできないため含んだ面積%で各含有率を求めた。したがって、面積%は式(1)におけるn=0体以上の成分と、ノボラックフェノール化合物(e)とアルデヒド類により自己重合した化合物等の少量成分の合計を100%として計算される。
オキサジン樹脂(A)は、A1がベンゼン環、Xがメチレン基、R1がフェニル基、R2が水素原子、m1+m2=1であるフェノールノボラック樹脂由来の下記式(11)で表されるオキサジン樹脂であることが好ましい。
H−L−(CH2−L)n−CH2−L−H (11)
式(11)において、Lはそれぞれ独立に、下記式(12)又は式(13)で表わされる二価の基を示し、式(12)及び式(13)で表される基の存在割合(モル比)は70:30〜90:10である。nは式(1)のnと同義である。
フェノールノボラック樹脂中のフェノールのOHは1個であるので、一部のフェノールは式(12)のオキサジン環を形成し、他の一部は未反応のまま式(13)のフェノールとして残る。この場合、オキサジン環とA1のモル数は一致しない。
なお、フェノールノボラック樹脂のフェノール分が2価のフェノールである場合は、2価のフェノール中の一方のOH基がオキサジン環の形成に関与し、他方のOH基が未反応のままであることもでき、この場合は、オキサジン環とA1のモル数が一致することがあり得る。
オキサジン樹脂(A)は、特定の分子量分布を有するノボラックフェノール化合物(e)とモノアミノ化合物とアルデヒド類から得られる。上記式(1)のR1はモノアミノ化合物由来の置換基であり、R2はアルデヒド類由来の置換基である。
ノボラックフェノール化合物(e)は上記式(2)で表される。kは繰り返し単位であって0以上の整数を示し、その平均値(数平均)は0.1〜1.3であり、好ましくは0.15〜1.2であり、より好ましくは0.2〜1.1であり、さらに好ましくは0.3〜1.0である。GPC測定において、k=0体が30〜90%(面積%)であり、k=1体とk=2体の含有率の合計が10〜65%であり、k=3以上体の含有率が1〜20%であり、Mwが標準ポリスチレン換算値で330〜550である特定の分子量分布を有する。このような分子量分布を持つことにより、本発明で用いられるオキサジン樹脂を収率良く得ることができる。
k=0体の含有率(面積%)は、30〜80%が好ましく、35〜75%がより好ましく、40〜70%がさらに好ましい。また、k=3以上体の高分子量体の含有率は2〜15%が好ましく、k=5以上体の高分子量体を全く含まないことがより好ましい。k=1体とk=2体の含有率の合計は10〜60%が好ましく、12〜50%がより好ましく、15〜45%がさらに好ましい。特にk=1体の含有率は10〜30%が好ましく、k=2体の含有率は5〜15%が好ましい。また、Mwは350〜500が好ましく、375〜475がより好ましい。分散度(Mw/Mn)は1.03〜1.10が好ましい。なお、ノボラックフェノール化合物(e)のGPCの測定条件は、オキサジン樹脂(A)のGPCの測定条件と同様である。
ノボラックフェノール化合物(e)を得るために使用されるフェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ナフタレンジオール等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらのフェノール類は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらのフェノール類のうち、好ましくはフェノールやアルキルフェノール等のモノフェノール類である。アルキルフェノールである場合のアルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が適する。
ノボラックフェノール化合物(e)を得るための架橋剤としては、下記式(4)で表されるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類や、下記式(5)で表されるアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類や、下記式(6)で表されるp−キシリレングリコール、p−キシリレングリコールジメチルエーテル、p−キシリレンジクロライド、4,4’−ジメトキシメチルビフェニル、4,4’−ジクロロメチルビフェニル、ジメトキシメチルナフタレン類、ジクロロメチルナフタレン類等の架橋剤や、下記式(7)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等の架橋剤や、シクロペンタジエンやジシクロペンタジエン等のシクロアルキルジエン類が挙げられるが、これらに限定されるわけではなく、これらの架橋剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。式(1)及び式(2)のXは、シクロアルキルジエン類を使用した場合は2価の脂肪族環状炭化水素基となり、式(4)又は式(5)の架橋剤を使用した場合は式(1a)で表される架橋基となり、式(6)又は式(7)の架橋剤を使用した場合は式(1b)で表される架橋基となる。これら架橋剤の中では、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、p−キシリレンジクロライド、4,4’−ジクロロメチルビフェニルが好ましく、ホルムアルデヒドが特に好ましい。ホルムアルデヒドを反応に用いる際の好ましい形態としては、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。
式(4)及び式(5)において、R3及びR4は式(1a)のR3及びR4とそれぞれ同義である。式(6)及び式(7)において、R5、R6及びA2は式(1b)のR5、R6及びA2とそれぞれ同義であり、Yは独立に水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を示す。
ノボラックフェノール化合物(e)を得るために使用される酸性触媒としては、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、トルエンスルホン酸等のプロトン酸、三弗化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化錫、塩化亜鉛、塩化鉄等のルイス酸、シュウ酸、モノクロル酢酸等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの酸性触媒は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これら酸性触媒の中では、リン酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸が好ましい。
上記ノボラックフェノール化合物(e)は、フェノール類とアルデヒド類のモル比を調整することと、得られたノボラックフェノール化合物(e)から低分子量成分を除去する方法や低分子量成分を後添加する方法によって得ることができる。また、特開2002−194041号や特開2007−126683号公報に示すような製造方法を利用して得ることもできる。
フェノール類と架橋剤のモル比は、架橋剤1モルに対するフェノール類のモル比(フェノール類/架橋剤)で示され、そのモル比が1以上の比率で製造されるが、モル比が大きい場合はk=0体、k=1体が多く生成され、逆にモル比が小さい場合はk=3体以上の高分子量体が多く生成し、k=0体、k=1体は少なくなる。また、オキサジン樹脂が特定の分子量分布を有するためには、ノボラックフェノール化合物(e)を特定の分子量分布にする必要がある。上記範囲となるようにするためには、フェノール類と架橋剤のモル比(フェノール類/架橋剤)は、好ましくは3以上6以下、より好ましくは4以上5以下である。このようにフェノール類と架橋剤のモル比を調整して得られたノボラックフェノール化合物(e)について、別のフェノール類を添加することにより、特定の分子量分布を有するノボラックフェノール化合物(e)を得ることができる。
上記別のフェノール類としては、ノボラックフェノール化合物(e)のk=0体やその濃度を高めたものや、ノボラックフェノール化合物(e)を得るために使用されるフェノール類として挙げたフェノール、アルキルフェノール等が使用できる。
オキサジン樹脂を得るために使用されるモノアミノ化合物は、上記式(21)で表され、アルデヒド類は、上記式(22)で表される。
式(21)中、R1は式(1)のR1と同義である。具体的には、R1がメチル基のメチルアミン、エチル基のエチルアミン、プロピル基のプロピルアミン、ブチル基のブチルアミン、フェニル基のアニリン、トリル基のメチルアニリン、キシリル基のジメチルアニリン、ベンジル基のベンジルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのモノアミノ化合物の内、芳香族モノアミン化合物が好ましく、アニリン、メチルアニリンがより好ましい。
式(22)中、R2は式(1)のR2と同義である。このアルデヒド類は、上記ノボラックフェノール化合物(e)を得るために用いるアルデヒド類と同様なものが使用される。これらアルデヒド類の中では、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましく、ホルムアルデヒドが特に好ましい。ホルムアルデヒドを用いる際の好ましい形態としては、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。
各原料の使用量は、ノボラックフェノール化合物(e)の水酸基1モル(当量)に対し、モノアミノ化合物は、0.7〜0.9モルが好ましく、0.8〜0.9モルがより好ましい。アルデヒド類は、1.5〜1.9モルが好ましく、1.7〜1.9モルがより好ましい。特に、アルデヒド類は、やや過剰に加えることがよい。理論量はジヒドロベンゾオキサジン環1モルに対し、モノアミノ化合物1モル、アルデヒド類2モルであるが、副反応として、ノボラックフェノール化合物の重合やモノアミノ化合物とアルデヒド類のみの反応生成物が生じる。また、分離可能な未反応物は、後処理工程で除去されるため、モノアミノ化合物やアルデヒド類は残ってもよい。これらの不純物の合計は5質量%以下が好ましい。
なお、ノボラックフェノール化合物(e)1モルはm×(k+2)モルの水酸基を有すると計算され、水酸基1モルは1当量と計算する。
製造方法としては特別な製造方法はなく、一般的に用いられる製造方法が利用できる。一般的な製造方法としては、ノボラックフェノール化合物(e)とモノアミノ化合物を溶媒下で加熱撹拌させた後、アルデヒド類を加え、20分〜24時間、70〜120℃に保持する方法が挙げられる。反応後、生成物をメタノール等の生成物に対する溶解力が低い貧溶媒中に投入し、再沈殿させる方法や溶媒抽出等の合成化学的手法で単離・精製し縮合水等の揮発成分を120℃以下の温度で減圧、乾燥除去することにより、本発明で用いるオキサジン樹脂(A)が得られる。
反応温度が70℃未満ではオキサジン環の生成反応が非常に遅くなり、実質的に反応が進行しない。反応温度が120℃を超えると、生成したオキサジン環が開環し、別のフェノール性水酸基近辺との間で結合反応を生じて高分子量化する副反応が促進され、不溶性ゲルを生成し易くなる。高温での反応では、このオキサジン環の開環架橋反応がオキサジン環生成反応と並行して起こりやすい。オキサジン環生成反応の向上とゲル発生の低減のため、反応温度は70〜110℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。
また、反応時聞に関しては、20分間以下では、オキサジン環の生成が充分ではなく、24時間以上では、溶媒中でも並行して徐々に生成したオキサジン環の開環架橋反応が起こる。このため、オキサジン環生成反応の向上とゲル発生の低減のため、反応時間は1〜10時間が好ましく、1.5〜6時間がより好ましい。
なお、反応により生成する水を除く工程をさらに含んでいてもよい。反応により生成する水を除くことで、オキサジン樹脂の合成反応時間を短縮させることが可能となり、反応の効率化を図ることができる。生成する水を除く方法は、特に限定されず、反応溶液中の溶媒と共沸させる方法等が挙げられる。また、反応工程中に反応容器内を減圧にすることで、生成する水を系外へ除去してもよい。
このようにして得られた反応混合液中にメタノール等の貧溶媒を投入することにより、樹脂成分を析出させてオキサジン樹脂が得られる。又は、反応終了後に、必要に応じて水洗浄又はアルカリ洗浄操作を行い、溶媒、水、モノアミノ化合物、及びアルデヒド類を除去することにより、オキサジン樹脂が得られる。
次に、本発明のオキサジン樹脂組成物に配合されるフェノール化合物(B)について説明する。フェノール化合物(B)は、特に限定されず、フェノール性水酸基を1個以上有する化合物であれば種々のものを適用することができ、フェノール性水酸基を2個以上有する多官能フェノール化合物が好ましい。フェノール化合物は単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。なお、後述のエポキシ樹脂用硬化剤のうちフェノール性水酸基を有する化合物は、フェノール化合物(B)に該当するものとして扱う。
オキサジン樹脂組成物において、オキサジン樹脂(A)とフェノール化合物(B)の配合比(A/B)は、質量基準で、99.5/0.5〜50/50が好ましく、99/1〜60/40がより好ましく、97/3〜70/30がさらに好ましく、95/5〜80/20が特に好ましい。フェノール化合物(B)はオキサジン樹脂(A)の硬化触媒として作用し、低温での硬化を促進する。配合量が多い場合、硬化物の架橋密度の低下を招き、満足する耐熱性が得られない恐れがある。また、オキサジン樹脂組成物にエポキシ樹脂(C)を配合する場合、フェノール化合物(B)はエポキシ樹脂(C)の硬化剤としても作用する。
フェノール化合物(B)としては、具体例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール類や、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類や、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等のヒドロキシナフタレン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
この他にも、フェノールノボラック樹脂(例えば、ショウノール(登録商標)BRG−555(アイカ工業株式会社製)等)、クレゾールノボラック樹脂(例えば、DC−5(新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型ノボラック樹脂(例えば、レヂトップ(登録商標)TPM−100(群栄化学工業株式会社製)等)、ナフトールノボラック樹脂等のフェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とアルデヒド類との縮合物、SN−160、SN−395、SN−485(新日鉄住金化学株式会社製)等のフェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類、ナフトール類及び/又はビスフェノール類とビフェニル系架橋剤との縮合物等のいわゆるノボラックフェノール化合物といわれるフェノール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ノボラックフェノール化合物の場合、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられ、その他、上記ビスフェノール類が挙げられる。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。ビフェニル系架橋剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のオキサジン樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ樹脂(C)を使用してもよい。使用できるエポキシ樹脂(C)としては、特に限定されず、公知のエポキシ樹脂であれば種々のものを適用することができる。例えば、ポリグリシジルエーテル化合物、ポリグリシジルアミン化合物、ポリグリシジルエステル化合物、脂環式エポキシ化合物、その他変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらのエポキシ樹脂は単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
エポキシ樹脂(C)の使用量は、オキサジン樹脂(A)とフェノール化合物(B)の合計量の100質量部に対して、0〜900質量部であり、0.01〜900質量部が好ましく、10〜500がより好ましく、100〜400がさらに好ましく、120〜400が特に好ましい。エポキシ樹脂(C)の使用量が多いと、架橋が密になり過ぎ、未硬化分が残る恐れがある。
ポリグリシジルエーテル化合物としては、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、エポトート(登録商標)YD−127、YD−128、YD−8125、YD−825GS(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDF−170、YDF−1500、YDF−8170、YDF−870GS(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、YSLV−80XY、YSLV−70XY(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビフェノール型エポキシ樹脂(例えば、YX−4000(三菱ケミカル株式会社製)、ZX−1251(新日鉄住金化学株式会社製)等)、ヒドロキノン型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDC−1312、ZX−1027(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(例えば、ZX−1201(新日鉄住金化学株式会社製)等)、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂(例えば、ZX−1355(新日鉄住金化学株式会社製)、エピクロン(登録商標)HP−4032D(DIC株式会社製)等)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(例えば、TX−0710(新日鉄住金化学株式会社製)、エピクロンEXA−1515(大日本化学工業株式会社製)等)、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂(例えば、YSLV−50TE、YSLV−120TE(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂(例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学株式会社製)等)、レゾルシノール型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1684(新日鉄住金化学株式会社製)、デナコールEX−201(ナガセケムテックス株式会社製)等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDPN−638(新日鉄住金化学株式会社製)、jER152、jER154(以上、三菱ケミカル株式会社製)、エピクロンN−740、N−770、N−775(以上、DIC株式会社製)等)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYDCN−700シリーズ(新日鉄住金化学株式会社製)、エピクロンN−660、N−665、N−670、N−673、N−695(以上、DIC株式会社製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬株式会社製)等)、アルキルノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1071T、ZX−1270、ZX−1342(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1247、GK−5855、TX−1210、YDAN−1000(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(例えば、エポトートZX−1142L(新日鉄住金化学株式会社製)等)、β−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ナフタレンジオールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN−300シリーズのESN−355、ESN−375(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、α−ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、ESN−400シリーズのESN−475V、ESN−485(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂(例えば、NC−3000、NC−3000H(以上、日本化薬株式会社製)等)、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、EPPN−501、EPPN−502(以上、日本化薬株式会社製)等)、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂(例えば、YDG−414(新日鉄住金化学株式会社製)等)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(例えば、エピクロンHP7200、HP−7200H(以上、DIC株式会社製)等)、アルキレングリコール型エポキシ樹脂(エポトートPG−207、PG−207GS(以上、新日鉄住金化学株式会社製)、SR−16H、SR−16HL、SR−PG、SR−4PG、SRSBA、SR−EGM、SR−8EGS(以上、坂本薬品工業株式会社製)等)、脂肪族環状エポキシ樹脂(例えば、サントート(登録商標)ST−3000、エポトートZX−1658、ZX−1658GS、FX−318(以上、新日鉄住金化学株式会社製)、HBPA−DGE(丸善石油化学株式会社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリグリシジルアミン化合物としては、具体的には、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYH−434、YH−434GS(以上、新日鉄住金化学株式会社製)、ELM434(住友化学株式会社製)、アラルダイト(登録商標)MY720、MY721、MY9512、MY9663(以上、ハンツマン・アドバンスト・ケミカルズ社製)等)、メタキシレンジアミン型エポキシ樹脂(例えば、TETRAD−X(三菱ガス化学株式会社製)等)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型エポキシ樹脂(例えば、TETRAD−C(三菱ガス化学株式会社製)等)、イソシアヌレート型エポキシ樹脂(例えば、TEPIC−P(日産化学工業株式会社製)等)、アニリン型エポキシ樹脂(例えば、GAN、GOT(以上、日本化薬株式会社製)等]、ヒダントイン型エポキシ樹脂(例えば、Y238(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等)、アミノフェノール型エポキシ樹脂(例えば、ELM120、ELM100(以上、住友化学株式会社製)、jER630(三菱ケミカル株式会社製)、アラルダイトMY0510、MY0600、MY0610(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリグリシジルエステル化合物としては、具体的には、ダイマー酸型エポキシ樹脂(例えば、エポトートYD−171(新日鉄住金化学株式会社製)、jER871(三菱ケミカル株式会社製)等)、ヘキサヒドロフタル酸型エポキシ樹脂(例えば、SR−HHPA(坂本薬品工業株式会社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、脂肪族環状エポキシ樹脂(例えば、セロキサイド(登録商標)2021、2021A、2021P、3000(以上、ダイセル化学工業株式会社製)、DCPD−EP、MCPD−EP、TCPD−EP(以上、丸善石油化学株式会社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他変性エポキシ樹脂としては、具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂(例えば、AER4152(旭化成株式会社製)等)、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエンゴム誘導体(例えば、PB−3600(ダイセル化学工業株式会社製)等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば、YR−102、YR−450(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)、リン含有エポキシ樹脂(例えば、エポトートFX−305、FX−289B、FX−1225、TX−1320A、TX−1328(以上、新日鉄住金化学株式会社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のオキサジン樹脂組成物には、エポキシ樹脂(C)を使用する場合、必要に応じて、エポキシ樹脂用硬化剤(D)を併用してもよい。併用できるエポキシ樹脂用硬化剤(D)としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤又はその他の硬化剤等の通常使用されるものが挙げられるが、これらのエポキシ樹脂用硬化剤は1種類だけ併用しても2種類以上併用してもよい。
上記のように、フェノール化合物(B)はエポキシ樹脂の硬化剤として作用するため、エポキシ樹脂用硬化剤(D)の使用量はその不足分を補う量でよく、オキサジン樹脂(A)とフェノール化合物(B)の合計量の100質量部に対して、0〜900質量部である。使用量が多いと、硬化速度が速すぎて成形が完了する前に硬化してしまう恐れがある。
酸無水物系硬化剤としては、具体的には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
その他の硬化剤として、具体的には、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物や、テトラフェニルホスフォニウムブロミド等のホスホニウム塩や、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のブレンステッド酸塩類や、アジピン酸ジヒドラジッド及びフタル酸ジヒドラジッド等の有機酸ヒドラジッド類や、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びカルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類や、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類や、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、ホウ酸等との塩であるイミダゾール塩類や、トリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類や、ジアザビシクロ化合物や、ジアザビシクロ化合物とフェノール類やフェノールノボラック樹脂類等との塩類や、3フッ化ホウ素とアミン類やエーテル化合物等との錯化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、オキサジン樹脂組成物には、必要に応じて、硬化促進剤(E)を使用することができる。硬化促進剤(E)としては、例えば、イミダゾール誘導体、第3級アミン類、ホスフィン類等のリン系化合物、金属化合物、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら硬化促進剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
硬化促進剤(E)の使用量は、オキサジン樹脂(A)とフェノール化合物(B)の合計量の100質量部に対して、0〜10質量部であり、0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5.0質量部がより好ましい。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮することができる。本発明のオキサジン樹脂組成物の硬化条件は、硬化促進剤を使用しない場合は200〜240℃、2〜5時間であり、硬化促進剤を用いる場合は170〜200℃、0.5〜5時間である。
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール骨格を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、ビス−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物や、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのイミダゾール誘導体の中では低温での硬化性で2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールが好ましい。
第3級アミン類としては、例えば、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙がられるが、これらに限定されるものではない。
金属化合物としては、例えば、オクチル酸スズ等が挙がられるが、これらに限定されるものではない。
アミン錯塩としては、3フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、3フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、3フッ化ホウ素クロロフェニルアミン錯体、3フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、3フッ化ホウ素アニリン錯体、又はこれらの混合物等の3フッ化ホウ素錯体類等が挙がられるが、これらに限定されるものではない。
これらの硬化促進剤の内、ビルドアップ材料用途や回路基板用途として使用する場合には、耐熱性、誘電特性、耐ハンダ性等に優れる点から、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジンやイミダゾール類が好ましい。また、半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルホスフィンやDBUが好ましい。また、3フッ化ホウ素錯体類を使用するとオキサジン樹脂の開環が優先的に起こり、生成するフェノール基がエポキシ基と反応して架橋密度が高くなり、より高い耐熱性が得られるため好ましい。
オキサジン樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶媒又は反応性希釈剤を用いることができる。
有機溶媒としては、特に規定するものではないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類や、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、パインオイル等のアルコール類や、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類や、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、反応性希釈剤としては、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の単官能グリシジルエーテル類や、レゾルシノールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の二官能グリシジルエーテル類や、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジルエーテル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの有機溶媒又は反応性希釈剤は、単独又は複数種類を混合したものを、オキサジン樹脂組成物中の有機化合物濃度として、90質量%以下で使用することが好ましく、その適正な種類や使用量は用途によって適宜選択される。例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶媒であることが好ましく、その使用量は不揮発分で40〜80質量%が好ましい。また、接着フィルム用途では、例えば、ケトン類、酢酸エステル類、カルビトール類、芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、その使用量は不揮発分濃度が30〜60質量%となる量が好ましい。
オキサジン樹脂組成物には、特性を損ねない範囲で他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を配合してもよい。例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂、インデン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
オキサジン樹脂組成物には、得られる硬化物の難燃性の向上を目的に、公知の各種難燃剤を使用することができる。使用できる難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられる。環境に対する観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が好ましく、特にリン系難燃剤が好ましい。これらの難燃剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
リン系難燃剤は、添加系のリン系難燃剤(リン含有添加剤)と反応性のリン化合物の2タイプに分けられ、反応性のリン化合物は、さらにリン含有エポキシ樹脂とリン含有硬化剤に分けられる。添加系のリン系難燃剤と反応性のリン化合物を比較した場合、反応性のリン化合物は、硬化の際にブリードアウトしない、相溶性がよい等の点から、難燃効果が大きく、反応性のリン化合物を使用する方が好ましい。
リン含有添加剤は、無機リン系化合物、有機リン系化合物のいずれも使用できる。無機リン系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(1)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(2)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(3)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物(例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、モノイソデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、イソステアリルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等)、縮合リン酸エステル類(例えば、PX−200(大八化学工業株式会社製)等)、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物(例えば、ジフェニルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド等)、ホスホラン化合物(例えば、トリフェニル(9H−フルオレン−9−イリデン)ホスホラン等)等の汎用有機リン系化合物や、含窒素有機リン系化合物(例えば、SPS−100、SPB−100、SPE−100(以上、大塚化学株式会社製)等)や、ホスフィン酸金属塩(例えば、EXOLIT(登録商標)OP1230、OP1240、OP930、OP935(以上、クラリアント社製)等)の他、リン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物(例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPOと略す)、ジフェニルホスフィンオキシド等)やリン含有フェノール化合物(例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−HQと略す)、10−(2,7−ジヒドロキシ−1−ナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下、DOPO−NQと略す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール等)等の有機リン系化合物や、それら有機リン系化合物をエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体であるリン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤に使用される反応性リン化合物としては、上記のリン原子に直結した活性水素基を有するリン化合物やリン含有フェノール類が好ましく、入手の容易さから、DOPO、DOPO−HQ、DOPO−NQ等がより好ましい。
リン含有エポキシ樹脂としては、例えば、前記のエポトートFX−305、FX−289B、FX−1225、TX−1320A、TX−1328等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
リン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、200〜800であることがよく、好ましくは300〜780であり、より好ましくは400〜760である。また、リン含有エポキシ樹脂のリン含有率が、0.5〜6質量%であることがよく、好ましくは2〜5.5質量%であり、より好ましくは3〜5質量%である。
リン含有硬化剤としては、上記のリン含有フェノール類の他に、特表2008−501063号公報や特許第4548547号公報に示すような製造方法で、例えば、DOPOとアルデヒド類とフェノール化合物とを反応することでリン含有フェノール化合物を得ることができる。この場合、リン系化合物は、フェノール化合物の芳香族環にアルデヒド類と介し縮合付加して分子内に組み込まれる。また、特開2013−185002号公報に示すような製造方法で、さらに芳香族カルボン酸類と反応させることで、リン含有フェノール化合物から、リン含有活性エステル化合物を得ることができる。また、特再公表WO2008/010429号公報に示すような製造方法で、リン含有ベンゾオキサジン化合物を得ることができる。
リン含有硬化剤のリン含有率が、0.5〜12質量%であることがよく、好ましくは2〜11質量%であり、より好ましくは4〜10質量%である。
リン化合物の配合量は、リン化合物の種類、オキサジン樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。リン化合物が反応性のリン化合物、すなわち、リン含有エポキシ樹脂やリン含有硬化剤の場合、オキサジン樹脂(A)、フェノール化合物(B)、難燃剤及び必要に応じて配合されるエポキシ樹脂(C)、エポキシ樹脂用硬化剤(D)、硬化促進剤(E)や、その他の充填材や添加剤等全てを配合したオキサジン樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、リン含有率は、0.2〜6質量%が好ましく、0.4〜4質量%がより好ましく、0.5〜3.5質量%がさらに好ましく、0.6〜3質量%が特にさらに好ましい。リン含有率が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。
ここで、リン含有エポキシ樹脂は、リン化合物とエポキシ樹脂(C)の両方に該当するものとして扱う。同様にリン含有硬化剤は、リン含有フェノール化合物の場合は、リン化合物とフェノール化合物(B)の両方に該当するものとして扱い、それ以外はリン化合物とエポキシ樹脂用硬化剤(D)の両方に該当するものとして扱う。従って、リン含有硬化剤を使用する場合は、他のフェノール化合物やエポキシ樹脂用硬化剤又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。同様に、リン含有エポキシ樹脂を使用する場合は、他のエポキシ樹脂又はリン化合物の使用は不要となる場合がある。
難燃剤の配合量としては、リン系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択される。例えば、オキサジン樹脂組成物中の有機成分(有機溶媒を除く)中のリン含有量は、好ましくは0.2〜4質量%であり、より好ましくは0.4〜3.5質量%であり、さらに好ましくは0.6〜3質量%である。リン含有量が少ないと難燃性の確保が難しくなる恐れがあり、多すぎると耐熱性に悪影響を与える恐れがある。
またリン系難燃剤を使用する場合は、難燃助剤として、例えば、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ素化合物、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛等を併用してもよい。
窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン[2,4,6−トリス(シアノアミノ)−1,3,5−トリアジン]、メラム[4,4’−イミノビス(1,3,5−トリアジン−2,6−ジアミン)]、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラム等の硫酸アミノトリアジン化合物、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(例えば、LA−7052(DIC株式会社製)等)、及びアミノトリアジン変性フェノール樹脂をさらに桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シアヌル酸化合物としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。窒素系難燃剤の配合量は、窒素系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、オキサジン樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。また窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリコーン系難燃剤の配合量は、シリコーン系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、オキサジン樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。またシリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属酸化物としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げられが、これらに限定されるものではない。金属炭酸塩化合物としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属粉としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。ホウ素化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。低融点ガラスとしては、例えば、水和ガラス、SiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、PSn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げられるが、これらに限定されるものではない。無機系難燃剤の配合量は、無機系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、オキサジン組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。有機金属塩系難燃剤の配合量は、有機金属塩系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、オキサジン樹脂組成物中の固形分(不揮発分)100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
ハロゲン系難燃剤としては、臭素化合物や塩素化合物が挙げられるが、毒性問題から塩素化合物は好ましくない。臭素化合物としては、例えば、p−ジブロモベンゼン、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラデカブロモ−p−ジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、2,2’−エチレンビス(4,5,6,7−テトラブロモイソインドリン−1,3−ジオン(例えば、SAYTEX(登録商標)BT−93(アルべマール社製)等)、エタン−1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)(例えば、SAYTEX 8010(アルベマール社製)等)や、臭素化エポキシオリゴマー(例えば、SR−T1000,SR−T2000(以上、阪本薬品工業株式会社製)等)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハロゲン系難燃剤の配合量は、ハロゲン系難燃剤の種類、オキサジン樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、オキサジン樹脂組成物中の固形分(不揮発分)に対して、ハロゲン含有率は5〜15質量%が好ましい。又はロゲン系難燃剤を難燃剤として使用する場合、難燃助剤として、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系化合物、酸化スズ、水酸化スズ等のスズ系化合物、酸化モリブテン、モリブテン酸アンモニウム等のモリブテン系化合物、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等のジルコニウム系化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム等のホウ素系化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、高分子量シリコーン等のケイ素系化合物、塩素化ポリエチレン等を併用してもよい。
オキサジン樹脂組成物には必要に応じて充填材を用いることができる。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、炭素、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セルロース繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、微粒子ゴム、熱可塑性エラストマー、顔料等が挙げられる。一般的に充填材を用いる理由としては耐衝撃性の向上効果が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物を用いた場合は、前述した通り難燃助剤として作用し難燃性が向上する効果がある。これら充填材の配合量はオキサジン樹脂組成物中の充填材を除く固形分(溶媒を除き、樹脂、硬化剤、硬化促進剤を含む)100質量部に対し、1〜150質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましい。配合量が多いと積層板用途として必要な接着性が低下する恐れがあり、さらに硬化物が脆く、十分な機械物性を得られなくなる恐れがある。また配合量が少ないと、硬化物の耐衝撃性の向上等、充填材の配合効果がでない恐れがある。
オキサジン樹脂組成物には、さらに必要に応じてシランカップリング剤、酸化防止剤、離型剤、消泡剤、乳化剤、揺変性付与剤、平滑剤、顔料等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量はオキサジン樹脂組成物に対し、0.01〜20質量%が好ましい。
オキサジン樹脂組成物を板状基板等とする場合、その寸法安定性、曲げ強度等の点で繊維状のものが好ましい充填材として挙げられる。より好ましくはガラス繊維を網目状に編み上げたガラス繊維基板が挙げられる。
オキサジン樹脂組成物は繊維状基材に含浸させることによりプリント配線板等で用いられるプリプレグを作成することができる。繊維状基材としてはガラス等の無機繊維や、ポリエステル樹脂等、ポリアミン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。オキサジン樹脂組成物からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば、オキサジン樹脂組成物を溶媒で粘度調整して作成した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80質量%とすることが好ましい。
また、プリプレグを硬化するには、一般にプリント配線板を製造するときに用いられる積層板の硬化方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。例えば、プリプレグを用いて積層板を形成する場合、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。そして、作成した積層物を加圧加熱することでプリプレグを硬化させ、積層板を得ることができる。その時、加熱温度を160〜220℃、加圧圧力を50〜500N/cm2、加熱加圧時間を40〜240分間とすることが好ましく、目的とする硬化物を得ることができる。加熱温度が低いと硬化反応が十分に進行せず、高いとオキサジン樹脂組成物の分解が始まる恐れがある。また、加圧圧力が低いと得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があり、高いと硬化する前に樹脂が流れてしまい、希望する厚みの硬化物が得られない恐れがある。さらに、加熱加圧時間が短いと十分に硬化反応が進行しない恐れがあり、長いとプリプレグ中のオキサジン樹脂組成物の熱分解が起こる恐れがあり、好ましくない。
オキサジン樹脂組成物は、公知のオキサジン樹脂組成物と同様な方法で硬化することによって硬化物を得ることができる。例えば、注型、注入、ポッティング、ディッピング、ドリップコーティング、トランスファ一成形、圧縮成形等や樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ等の形態とし積層して加熱加圧硬化することで積層板とする等の方法が好適に用いられる。その際の硬化温度は通常、100〜300℃の範囲であり、硬化時間は通常、1時間〜5時間程度である。
本発明のオキサジン樹脂硬化物は、積層物、成型物、接着物、塗膜、フィルム等の形態をとることができる。
本発明のオキサジン樹脂組成物は、シート状又はフィルム状に成形して用いることができる。この場合、従来公知の方法を用いてシート化又はフィルム化することが可能であるが、好適な成形方法の例としては、上記オキサジン樹脂組成物を溶媒に溶解し、得られた樹脂溶液を、表面が剥離処理された金属箔、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の基材上に従来公知の方法によりコーティングした後、乾燥し、基材から剥離することにより、絶縁シート、絶縁フィルム、接着シート又は接着フィルムとする方法がある。
接着シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等のオキサジン樹脂組成物に溶解しないキャリアフィルム上に、本発明のオキサジン樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥してシート状に成型する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で樹脂シートが形成されるものである。この際、オキサジン樹脂組成物を塗布するシートにはあらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくと、成型された接着シートを容易に剥離することができる。ここで接着シートの厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして得られた接着シートは通常、絶縁を有する絶縁接着シートとなるが、オキサジン樹脂組成物に導電性を有する金属や金属コーティングされた微粒子を混合することで、導電性接着シートを得ることができる。
次に、本発明のプリプレグや絶縁接着シートを用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一枚又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、オキサジン樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧量があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成型性を満足する条件で加圧することが望ましい。例えば、温度を160〜220℃、圧力を49.0〜490.3N/cm2(5〜50kgf/cm2)、加熱時間を40〜240分間にそれぞれ設定することができる。さらにこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作成することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片面又は両側の回路形成面に、プリプレグや絶縁接着シートにて絶縁層を形成するとともに、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板形成するものである。
絶縁接着シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の整理番号回路形成面に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に絶縁接着シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するとともに、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を絶縁接着シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることができる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。積層板にオキサジン樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂を前記のオキサジン樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜90分加熱乾燥してシート状に形成する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、さらにアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を形成することができる。またさらにこのプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の積層板を形成することができるものである。
また、プリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、さらにその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成型することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成するとともに、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の成型と同様の条件にて行うことができる。このようにして成形された多層積層板の表面に、さらにアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成を施して、プリント配線板を成型することができる。またさらにこのプリント配線板を内層材として前記の工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層板を形成することができるものである。
オキサジン樹脂組成物を用いて得られる封止材としては、半導体チップのテープ状封止材、ポッティング型液状封止剤、アンダーフィル用樹脂、半導体の層間絶縁膜用があり、これらに好適に用いることができる。
オキサジン樹脂組成物を半導体封止材料用に調製するためには、オキサジン樹脂組成物に、必要に応じて配合されるその他のカップリング剤、離型剤等の添加剤や無機充填材等を予備混合した後、押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合する手法が挙げられる。テープ状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を加熱して半硬化シートを作製し、封止剤テープとした後、この封止剤テープを半導体チップ上に置き、100〜150℃に加熱して軟化させ成形し、170〜250℃で完全に硬化させる方法を挙げることができる。さらにポッティング型液状封止剤として使用する場合には、前述の手法によって得られた樹脂組成物を必要に応じて溶媒に溶解した後、半導体チップや電子部品上に塗布し、直接、硬化させればよい。
オキサジン樹脂組成物を作成し、加熱硬化により硬化物を評価した結果、特定の分子量分布を有するノボラックフェノール化合物(e)とモノアミノ化合物とアルデヒド類から得られた特定の分子量分布を有し、且つ特定量の水酸基を有するオキサジン樹脂(A)は、オキサジン樹脂(A)以外のオキサジン樹脂と比較して、低温短時間の条件でも硬化が進行しやすく、その硬化物は耐熱性優れているだけでなく、工業的に有効な流動性も兼ね備えており、特に薄膜積層板において有用である。
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。
分析方法や測定方法を以下に示す。なお、当量の単位はいずれも「g/eq.」である。
粘度:JIS Z8803規格に準拠して測定した。具体的には、ICI粘度測定装置(東亜工業株式会社製、MODEL CV−1D)を用いて、120℃での粘度を測定した。
残存水酸基量:オキサジン樹脂の残存水酸基量(Y)は、理論オキサジン環当量(Zt)と実測したオキサジン環当量(Z)から下記計算式にて算出した。なお、オキサジン環当量(Z)は3級アミン価(AV)の値を用いた。3級アミン価の測定方法は、JIS K7237規格に準じたが、混合溶媒に使用するオルトニトロトルエンの代わりにクロロホルムを使用した。
Y=(1/Z)/(1/Zt)×100
Z=56110/AV
ゲルタイム:210℃に加熱したゲル化試験機(株式会社ユーカリ技研製、GT−D)の試料用くぼみに、0.1gの試料を乗せてから、溶融物の糸が引かなくなるまでの時間(ゲルタイム)を測定した。なお、撹拌はテフロン(登録商標)製の撹拌棒を使用し円を描きながら行った。
n=0体、n=1体、n=2体、n=3以上体、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分散度(Mw/Mn):GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC−8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgel(登録商標)G4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはTHFを用い、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を用いた。測定試料はサンプル0.05gを10mLのTHFに溶解し、マイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。データ処理は、東ソー株式会社製GPC−8020モデルIIバージョン6.00を使用した。n=0体、n=1体、n=2体、n=3以上体はピークの面積%から、Mn、Mw、Mw/Mnは標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製、A−500,A−1000,A−2500,A−5000,F−1,F−2,F−4,F−10,F−20,F−40、F−80、F−128)より求めた検量線より換算した。ノボラックフェノール樹脂のk=0体〜3以上体、Mn、Mw等の測定も同様である。
Tg:IPC−TM−650 2.4.25.cに準拠して、示差走査熱量測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)で測定し、Tgm(ガラス状態とゴム状態の接線に対して変異曲線の中間温度)の温度をガラス転移温度(Tg)とした。測定条件は10℃/分の速度で275℃まで昇温、10分保持した後、100℃/分で20℃まで冷却、20分保持した後、20℃/分で275℃まで昇温した。
IR:フーリエ変換型赤外分光光度計(PerkinElmer Precisely製、Spectrum One FT−IR Spectrometer 1760X)の全反射測定法(ATR法)により波数650〜4000cm−1の吸光度を測定した。
含浸性:組成物ワニスを320mm×155mmサイズのガラスクロスに含浸させた際にかかる時間で以下の判定を行った。
○:5分未満 ×:5分以上
樹脂含有率:単位面積あたりのプリプレグの重量(P)と単位面積あたりのガラスクロスの重量(G)から下記計算式で樹脂含有率(RC)を求めた。
RC=(P−G)/P×100
レジンフロー:IPC−TM−650 2.3.17.に準拠して測定した。
積層板合否判定:目視及び板厚測定の評価を行い、以下の判定を行った。
○:異常なし
×1:樹脂粘度が低いために積層板成形時の樹脂流れが多くなり、合格規定の厚みより薄くできてしまう。樹脂流れ性を小さくすることは困難であり、生産性を悪化させてしまう。
×2:配合ワニスをガラスクロスに含浸の際に、樹脂粘度が高いためにガラスクロスの表面にだけ樹脂が乗り、ガラスクロス内部まで樹脂が入らない。これによりプリプレグの粉落ち量が多くなり、また外観不良となり、製品として不合格になる。
×3:配合ワニスのゲル化時間が短く、樹脂が流れることなく硬化してしまう。それを成形した積層板は樹脂がない箇所が所々できてしまい、均一な積層板が得られない。
燃焼性:UL94規格に準拠して、垂直法により評価した。
比誘電率及び誘電正接:IPC−TM−650 2.5.5.9規格に準拠してマテリアルアナライザー(AGILENT Technologies社製)を用い、容量法により周波数1GHzにおける比誘電率及び誘電正接を求めることにより評価した。
銅箔剥離強さ及び層間接着力:JIS C6481規格に準拠して測定し、層間接着力は7層目と8層目の間で引き剥がし測定した。
合成例1 撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管及び滴下装置を備えたガラス製セパラブルフラスコに、フェノールを2500部、シュウ酸二水和物を7.5部仕込み、窒素ガスを注入しながら撹拌を行い、加熱を行って昇温した。次に、80℃にて撹拌しながら、37.4%ホルマリン474部を30分かけて滴下し反応させた。さらに反応温度を92℃に保ち3時間反応を行った。昇温を行い、反応生成水を系外に除去しながら110℃まで昇温した。残存フェノールを160℃にて減圧下回収を行った後、別途合成したk=0体(BPF)を少量添加し、フェノールノボラック樹脂(e−1)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂(e−1)は、水酸基当量:105、k=0体:67面積%、k=1体:22面積%、k=2体:7面積%、k=3以上体:4面積%、Mn:384、Mw:415だった。GPC測定チャートを図3に示す。図中、(a0)で示すピークがk=0体を示し、(b0)で示すピーク群がk=1体及びk=2体を示し、(c0)で示すピーク群がk=3以上体を示す。
合成例2
k=0体の添加量以外は、合成例1と同様にしてフェノールノボラック樹脂(e−2)を得た。得られたフェノールノボラック樹脂(e−2)は、水酸基当量:105、k=0体:41面積%、k=1体:38面積%、k=2体:14面積%、k=3以上体:7面積%、Mn:441、Mw:467だった。
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
[原料フェノール化合物]
(e−1):合成例1のフェノールノボラック樹脂
(e−2):合成例2のフェノールノボラック樹脂
BPF:ビスフェノールF(新日鉄住金化学株式会社製、SP−2000、水酸基当量:102、k=0体:97面積%、k=1体:3面積%、Mn:319、Mw:323)
PN1:フェノールノボラック樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、SP−2060、水酸基当量:105、k=0体:10面積%、k=1体:45面積%、k=2体:23面積%、k=3以上体:22面積%、Mn:528、Mw:586)
[フェノール化合物(B)]
PN2:フェノールノボラック樹脂(アイカ工業株式会社製、ショウノールBRG−557、軟化点:80℃、水酸基当量:105)
DCPD:ジシクロペンタジエン型ノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社製、GDP−6140、軟化点:130℃、水酸基当量:196)
[エポキシ樹脂(C)]
YDCN−700−7:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYDCN−700−7、エポキシ当量:202)
TX−1328A:リン含有エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、TX−1328A、エポキシ当量:234、リン含有率:3%)
[硬化促進剤(D)]
TBZ:2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール(登録商標)TBZ)
[その他]
FR:シクロホスファゼンオリゴマー(大塚化学株式会社製、SPB−100、リン含有率:13%)
実施例1
合成例1と同様な装置に、原料フェノール化合物として合成例1で得られたフェノールノボラック樹脂(e−1)を210部、アニリンを151部、トルエンを205部仕込み、窒素ガスを注入しながら撹拌を行い、加熱を行って昇温した。次に、50℃にて撹拌しながら、92%パラホルムアルデヒド107部を1時間かけて仕込んだ後、水10部を滴下した。さらに85℃に温度を保ち2時間反応を行った。昇温を行い、反応生成水を系外に除去しながら120℃まで昇温した。120℃に保持したまま残存アニリン、トルエンを減圧回収し、オキサジン樹脂(樹脂1)を得た。得られた樹脂1のGPC測定チャートを図1に示す。図中、(a)で示すピークがn=0体を示し、(b)で示すピーク群がn=1体及びn=2体を示し、(c)で示すピーク群がn=3以上体を示す。FT−IR測定チャートを図2に示す。
実施例2
フェノールノボラック樹脂(e−1)の代わりに、フェノールノボラック樹脂(e−2)210部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂2を得た。
実施例3
アニリンを162部、92%パラホルムアルデヒドを114部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂3を得た。
参考例1
ノボラックフェノール化合物(e−1)に代えてBPFを204部使用し、アニリンを193部、92%パラホルムアルデヒドを137部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂H1を得た。
参考例2
ノボラックフェノール化合物(e−1)に代えてBPFを204部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂H2を得た。
参考例3
ノボラックフェノール化合物(e−1)に代えてPN1を210部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂H3を得た。得られた樹脂H3のGPC測定チャートを図4に示す。図中、(a)で示すピークがn=0体を示し、(b)で示すピーク群がn=1体及びn=2体を示し、(c)で示すピーク群がn=3以上体を示す。
実施例1〜3で得られた樹脂1〜3及び参考例1〜3で得られた樹脂H1〜H3のn=0体、n=1体、n=2体、n=3以上体、Mn、Mw、及び、水酸基当量の各測定結果を表1に示す。
実施例4
樹脂1を95部、PN2を5部、120℃のホットプレート上で混合し十分に冷やした後、粉砕した配合樹脂の210℃でのゲルタイムと120℃での粘度を測定した。配合固形粉砕物を真空プレスで、130℃で15分間、200℃で2時間硬化させ、その硬化物のTgを測定した。その結果を表2に示す。
実施例5〜6及び比較例1〜3
樹脂として実施例2〜3で得られた樹脂1〜2と参考例1〜3で得られた樹脂H1〜H3を使用した以外は、表2の配合量で配合し、実施例4と同様にして硬化物を得た。実施例4と同様の試験を行い、その結果を表2に示す。
表1より、実施例の樹脂を使用するとゲルタイムが短く、且つ工業的に成形可能な粘度で、Tgが高い硬化物が得られた。ゲルタイムが短いということは、硬化開始温度が低く、硬化が進行しやすいといえる。従来のオキサジン樹脂を用いた硬化物は、水酸基を残して硬化性を改善できてもTgが低くなるか、流動性を損なう欠点を有している。しかし、実施例の硬化物は従来のオキサジン樹脂と同等のゲルタイム(硬化性)でありながら、Tgを損なうことなく成形することができ、従来の技術のトレードオフを解消できる。
実施例8
樹脂1のMEKワニス(不揮発分(NV.)75%)86.7部(固形分:65部)、YDCN−700−7のMEKワニス(NV.75%)33.3部(固形分:25部)、PN2のMEKワニス(NV.65%)15.4部(固形分:10部)を混合し、TBZのMEKワニス(0.05g/mL)を樹脂組成物が171℃において5分間でゲル化する量(表2に記載)を配合し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶媒(質量比=1/1)で調整して、NV.50%の組成物ワニスを得た。
得られた組成物ワニスをガラスクロスWEA 7628 XS13(日東紡績株式会社製、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環炉で9分間乾燥を行い、プリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC)を重ね、130℃×15分間及び200℃×20kg/cm2×120分間加熱、加圧を行い、積層板を得た。その積層板の含浸性、樹脂含有率、レジンフローの各試験を行い、積層板合否を判定した。
実施例9〜10及び比較例4〜6
樹脂として実施例2〜3で得られた樹脂2〜3と参考例1〜3で得られた樹脂H1〜H3を使用した以外は、表3の処方の配合量で配合し、実施例8と同様にして積層板を得た。実施例8と同様の試験を行い、その結果を表3に示す。なお、各樹脂のMEKワニスの不揮発分は75%である。
表3より、実施例の樹脂を使用すると触媒量が少なく、プリプレグの樹脂含有量とフロー性は適切で問題ない。比較例で示すとおり、従来の技術では、硬化性は満足できても成形特性を満足するオキサジン樹脂組成物は得られていなかった。しかし、実施例の樹脂は従来のオキサジン樹脂より効率よく積層板を製造することができる。
実施例11
樹脂1のMEKワニス(NV75%)80部(固形分:60部)、TX−1328AのMEKワニス(NV75%)100部(固形分:75部)、DCPDのMEKワニス(NV60%)20部(固形分:12部)、FR 15部を混合溶解し、MEK、プロピレングリコールモノメチルエーテルの混合溶媒(質量比=1/1)で調整して、NV50%の組成物ワニスを得た。
得られた組成物ワニスをガラスクロスWEA 7628 XS13(日東紡績株式会社製、0.18mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環炉で9分間乾燥を行い、プリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC)を重ね、130℃×15分間及び200℃×20kg/cm2×120分間加熱、加圧を行い、積層板を得た。その積層板のTg、難燃性、銅箔剥離強さ、層間接着力、比誘電率、誘電正接の各試験を行い、その結果を表4に示す。
実施例12〜13及び比較例7
表4の処方の配合量(部)で配合し、実施例11と同様にして積層板を得た。実施例11と同様の試験を行い、その結果を表4に示す。